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▶ 株式会社J−オイルミルズの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062646
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】フライ調理時の汚れ抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240501BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240501BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170628
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】土倉 則子
(72)【発明者】
【氏名】平岡 香織
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久美子
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
【Fターム(参考)】
4B026DG01
4B026DG04
4B026DG05
4B026DH05
4B026DK10
4B026DX01
4B035LC16
4B035LE03
4B035LG09
4B035LG12
(57)【要約】
【課題】
本発明は、フライ調理時の調理環境の汚れを防止するべく、汚れ抑制剤、汚れの発生を抑制可能な油脂組成物および汚れ抑制方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
フライ調理用の食用油脂に付加するためのフライ調理用汚れ抑制剤であって、構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、ポリグリセリンリシノレイン酸エステルとを有効成分とするフライ調理用汚れ抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライ調理用の食用油脂に付加するためのフライ調理用汚れ抑制剤であって、
構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、
ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルと
を有効成分とするフライ調理用汚れ抑制剤。
【請求項2】
前記植物性油脂が、あまに油である、請求項1に記載の前記汚れ抑制剤。
【請求項3】
構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、
ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルと
を含むフライ調理用油脂組成物。
【請求項4】
前記植物性油脂を0.05質量%以上0.35質量%以下、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05質量%以上0.25質量%以下、
前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを0.2質量%以上0.8質量%以下
含む請求項3に記載のフライ調理用油脂組成物。
【請求項5】
前記植物性油脂があまに油である、請求項4に記載のフライ調理用油脂組成物。
【請求項6】
構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、
ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルと
を含むフライ調理用油脂組成物を用いて揚げ種をフライ調理する、フライ調理における汚れ抑制方法。
【請求項7】
前記植物性油脂があまに油である、請求項6に記載のフライ調理における汚れ抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ調理時における調理環境の汚れを抑制する抑制剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
フライ調理時における課題として、油煙発生による換気扇の油汚れや油ハネによる調理場の油汚れの発生が挙げられる。家庭においては、この課題によってフライ調理離れが生じる一因となっている。
【0003】
特許文献1には、有機酸モノグリセリド0.005質量%以上10質量%以下、およびポリグリセリンの平均重合度6以上かつHLB5以上のポリグリセリン脂肪酸エステル0.005質量%以上10質量%を含む油脂組成物を用いてフライ調理することで揚げ種に対する吸油量および油ハネを抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-074999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、油煙の発生を抑制させてフライ調理時の調理環境の汚れを抑制するという課題については示唆も記載もない。
【0006】
そこで、本発明においては、フライ調理時の調理環境の汚れを防止するべく、フライ調理用汚れ抑制剤、フライ調理用油脂組成物およびフライ調理における汚れ抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
フライ調理用の食用油脂に付加するためのフライ調理用汚れ抑制剤であって、構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上のポリグリセリ脂肪酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとを有効成分とするフライ調理用汚れ抑制剤。
【0008】
構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、ポリグリセリンの平均重合度8以上HLB6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとを含むフライ調理用油脂組成物。
【0009】
構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとを含むフライ調理用油脂組成物を用いて揚げ種をフライ調理する、フライ調理における汚れ抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフライ調理用汚れ抑制剤によれば、フライ調理用の食用油脂に本発明のフライ調理用汚れ抑制剤を付加した油脂組成物にてフライ調理することで当該油脂組成物からの油煙発生および油ハネを抑制することができる。
本発明のフライ調理用油脂組成物によれば、フライ時における油煙発生および油ハネを抑制してフライ用調理によって調理環境が汚れることを防止できる。
本発明のフライ調理における汚れ抑制方法によれば、本発明のフライ調理用油脂組成物を用いて揚げ種をフライ調理することで油煙発生および油ハネを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のフライ調理用汚れ抑制剤、フライ調理用油脂組成物およびフライ調理における汚れ抑制方法について具体的な態様を説明する。以降の説明において、数値範囲の上限値および下限値を示した時には、上限値及び下限値を適時組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0012】
なお、本発明のフライ調理用汚れ抑制剤、フライ調理用油脂組成物およびフライ調理における汚れ抑制方法は、後述の実施形態および実施例に限定するものではなく、発明の特徴および効果を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。
【0013】
1.フライ調理用汚れ抑制剤
本発明のフライ調理用汚れ抑制剤は、フライ調理用の食用油脂に付加するためのフライ調理用汚れ抑制剤であって、構成脂肪酸総量に占めるα―リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとを有効成分とするものである。
【0014】
(フライ調理用の食用油脂)
前記フライ調理用の食用油脂は、後述する前記植物性油脂を除く植物性の食用油脂であればよく、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ヒマワリ油、サフラワー油、こめ油、ごま油、椿油、オリーブ油、グレープシード油などが挙げられ、好ましくは大豆油、菜種油、コーン油、ヒマワリ油、サフラワー油、こめ油、ごま油であり、より好ましくは大豆油、菜種油、コーン油であり、さらに好ましくは大豆油または菜種油である。これらの植物性の食用油脂は、適宜組み合わせて用いてもよい。
【0015】
(植物性油脂)
前記植物性油脂は、構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であり、40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、45質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、45質量%以上58質量%以下であることがさらに好ましい。なお、構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量は、例えば、日本油化学会が制定する「基準油脂分析試験法2.4.1.4-2013」に準じて測定することができる。
【0016】
前記植物性油脂としては、例えば、あまに油、えごま油、しそ油、チアシード油、藻類油および微生物油等が挙げられ、あまに油およびえごま油からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、あまに油であることがより好ましい。
【0017】
植物性油脂の含有量は、フライ調理用汚れ抑制剤中に10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上28質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上26質量%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上である。ポリグリセリンの平均重合度は、8.5以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。ポリグリセリンの平均重合度の上限値は、制限しないが、12以下であることが好ましい。HLBは、6.2以上であることが好ましく、6.5以上であることがより好ましい。HLBの上限値は、限定しないが、9以下であることが好ましい。なお、本明細書において「平均重合度」および「ポリグリセリンの平均重合度」は、いずれもポリグリセリンの平均重合度を意味する。「HLB」は、Hydrophile-Lipophile Balanceの略称である。
【0019】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸は、オレイン酸であることが好ましい。
【0020】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、フライ調理用汚れ抑制剤中に、12質量%以上25質量%以下であることが好ましく、15質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、16質量%以上18.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0021】
(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)
前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、ポリグリセリンの平均重合度が5以上であることが好ましく、5.5以上であることがより好ましい。ポリグリセリンの平均重合度の上限値は、限定しないが、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。
【0022】
前記ポリグリセリ縮合リシノレイン酸エステルの含有量は、フライ調理用汚れ抑制剤中に、45質量%以上65質量%以下であることが好ましく、50質量%以上63質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
前記フライ調理用汚れ抑制剤の有効添加量は、前記食用油脂100質量部に対して、0.5質量部以上で効果が得られ、0.7質量部以上で優れた効果が得られ、0.8質量部以上で格別な効果が得られる。添加量の上限値は、1.5質量部以下であり、1質量部以下であることが好ましい。
【0024】
2.フライ調理用油脂組成物
本発明のフライ調理用油脂組成物は、構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとを含むものである。
【0025】
本発明のフライ調理用油脂組成物は、ベース油脂として、前記植物性油脂を除く植物性の食用油脂を含んでいることが好ましい。前記植物性の食用油脂としては、既述のフライ調理用の食用油脂から適宜選択して用いることが可能であり、大豆油、菜種油、コーン油、ヒマワリ油、サフラワー油、こめ油、ごま油から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、大豆油、菜種油、コーン油から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、大豆油または菜種油を用いることがさらに好ましい。
【0026】
前記ベース油の含有量は、フライ調理用油脂組成物中に85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることがさらにより好ましい。含有量の上限値は、限定するものではないが、99.5質量%以下であることが好ましい。
【0027】
前記植物性油脂、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、1.フライ調理用汚れ抑制剤にて説明した内容と同じであるため割愛する。
【0028】
前記植物性油脂の含有量は、フライ調理用油脂組成物中に0.05質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.4質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以上0.3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、フライ調理用油脂組成物中に0.01質量%以上0.3質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.25質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量は、フライ調理用油脂組成物中に0.1質量%以上0.8質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上0.75質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上0.65質量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明のフライ調理用油脂組成物は、上述の成分以外にも、発明の効果を損ねない範囲において、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、上述以外の乳化剤、シリコーンなどが挙げられる。
【0032】
本発明のフライ調理用油脂組成物は、フライ調理に供した際に油煙の発生および油ハネが極めて少なく、その結果、調理環境に油汚れが発生することを抑制することができる。
【0033】
3.フライ調理における汚れ抑制方法
本発明のフライ調理における汚れ抑制方法は、構成脂肪酸総量に占めるα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下の植物性油脂と、ポリグリセリンの平均重合度8以上かつHLB6以上のポリグリセリン脂肪酸エステルと、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとを含むフライ調理用油脂組成物を用いて揚げ種をフライ調理するものである。
【0034】
前記植物性油脂、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルについては、既述の1.フライ調理用汚れ抑制剤にて説明した内容と同じであるため割愛する。
【0035】
前記揚げ種は、通常、フライ調理に供される食材であればよく、特に限定するものではないが、例えば、鶏肉、牛肉、豚肉、肉団子等の畜肉または畜肉加工品;エビ、イカ、ちくわ等の魚介類または魚介類加工品;たまねぎ、カボチャなどの野菜類;およびこれらの食品素材に衣が付された食材が挙げられる。
【0036】
前記フライ調理は、揚げ種の一部または全体が浸る程度の油脂組成物を熱媒体として揚げ種を加熱調理する調理方法である。加熱調理時の温度は、限定するものではないが、例えば、150℃以上220℃以下であり、170℃以上200℃以下であることが好適である。
【0037】
本発明のフライ調理時における汚れ抑制方法によれば、既述のフライ調理用油脂組成物を用いて揚げ種をフライ調理することにより、油煙の発生および油ハネを抑制することができる。その結果、調理環境に油汚れが発生することを防止できる。
【実施例0038】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0039】
本実施例に用いた材料を以下に説明する。
大豆油:AJINOMOTO大豆の油、株式会社J-オイルミルズ製
菜種油:AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製
あまに油:AJINOMOTOアマニ油、太田油脂株式会社製
ポリグリセリン脂肪酸エステル:リョートーポリグリエステルO-50D、三菱ケミカルフーズ株式会社製、ポリグリセリンの平均重合度10、HLB7.0、脂肪酸はオレイン酸
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル:SYグリスターCR-500、坂本薬品工業株式会社製、ポリグリセリンの平均重合度6、
【0040】
(実施例1 フライ調理用油脂組成物)
植物性の食用油脂に対して、本発明のフライ調理用汚れ抑制剤を配合し、本発明のフライ調理用油脂組成物を調製した。表1に比較例および実施例の油脂を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(実施例2 油煙の評価)
本実施例においては、表1に示した比較例および実施例の油脂を用いて、空加熱した際の油煙の発生量を評価した。以下の方法にて各油脂から発生した油煙量を測定し、得られた結果を表2に示す。
【0043】
<評価方法>
(1)600gの油脂を張り込んだ磁性皿を加熱機(東芝電気こんろ、株式会社東芝製)の上に載せた。
(2)前記磁性皿の上に換気扇カバー(カバー(換気扇カバー団地用)、株式会社エムエーパッケージング製)をかぶせた。
(3)加熱機の設定温度を180℃にセットして加熱を開始した。なお、油脂の温度は、0.5時間の時点で180℃に到達していた。
(4)加熱開始から、0時間、0.5時間、1時間、4時間および5時間経過した際の換気扇カバーの重量を測定した。
(5)(4)にて測定した換気扇カバーの重量と未使用時の換気扇カバーの重量との差から油煙量を算出した。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示すように、本発明のフライ調理用汚れ抑制剤を添加することにより、加熱時の油煙の発生を抑制できることが分かる。
【0046】
また、本発明のフライ調理用汚れ抑制剤は、フライ調理用油脂組成物のベース油脂にもちいた食用油脂の種類に拘わらず、油煙の発生を抑制できることが分かる。
【0047】
(実施例3 油ハネの評価)
本実施例においては、表1に示した比較例および実施例の油脂を用いて、エビの天ぷらをフライ調理した際の油ハネを評価した。以下の方法にてエビの天ぷらをフライ調理し、油脂液面からの油ハネ率を評価した結果を表3に示す。
【0048】
<フライ調理方法>
(1)てんぷら粉(昭和天ぷら粉 黄金、昭和産業株式会社製)に氷水を加えて1分間攪拌しバッター液を調製した。
(2)エビ(冷凍むきエビ、毎味水産株式会社製)を流水で洗い、ざるにあげて水をきった。
(3)エビ3つで25~30gとなるように揚げセットを決めた。
(4)内径14cmの片手鍋に300gの油脂を張り込み、170℃に加熱した。
(5)(3)で決めた揚げセット1つを(1)のバッター液にくぐらせ、(4)の油脂に入れた。
(6)すぐに片手鍋の上にA4普通紙を1枚載せた。この時、A4普通紙の表面と油脂液面との距離は4.5cmだった。
(7)エビを入れてから1分30秒経過したらA4普通紙を取り除き、エビの天ぷらを油脂から引き上げた。
(8)A4普通紙をトレース台に載せて写真を撮影した。
【0049】
<評価方法>
(1)撮影した画像をImageJ.JS(National Institutes of Health)に取り込んだ。
(2)ソフト上で片手鍋の開口部分にそって直径14cmの円を描いた。
(3)(2)の円内について油が付着した面積を円の面積で除した値を油ハネ率として算出した。
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示すように、本発明のフライ調理用汚れ抑制剤を添加したフライ調理用油脂組成物を用いてエビの天ぷらをフライ調理することによって、油ハネ率が抑制されていることが分かる。
【0052】
また、本発明のフライ調理用汚れ抑制剤は、フライ調理用油脂組成物のベース油脂に用いられる食用油脂の種類に拘わらず、油ハネを抑制できることが分かる。
【0053】
実施例から、本発明のフライ調理用汚れ抑制剤を含むフライ調理用油脂組成物を用いてフライ調理することにより、油煙の発生および油ハネを抑制して、調理環境に油汚れが生じることを防止できることが明らかとなった。