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特開2024-62848スラリー濃化システム、焼結鉱原料粒子の製造システム、焼結鉱の製造システム、スラリー濃化方法、焼結鉱原料粒子の製造方法及び焼結鉱の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062848
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】スラリー濃化システム、焼結鉱原料粒子の製造システム、焼結鉱の製造システム、スラリー濃化方法、焼結鉱原料粒子の製造方法及び焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/16 20060101AFI20240501BHJP
   C22B 1/20 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C22B1/16 K
C22B1/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170960
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】吉川 たかし
(72)【発明者】
【氏名】田中 一平
(72)【発明者】
【氏名】竹原 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 頌平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆英
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001CA33
4K001CA37
4K001CA39
4K001CA40
(57)【要約】
【課題】スラリーを濃化するに際して濃化後の濃度を安定的に調整することができるスラリー濃化システム、焼結鉱原料粒子の製造システム、焼結鉱の製造システム、スラリー濃化方法、焼結鉱原料粒子の製造方法及び焼結鉱の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、スラリー濃化システムが提供される。このスラリー濃化システムは、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は濃化部における濃化条件を決定する決定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー濃化システムであって、
濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、
前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、
前記測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化部における濃化条件を決定する決定部とを備える
スラリー濃化システム。
【請求項2】
請求項1に記載のスラリー濃化システムにおいて、
前記決定部は、さらに、前記濃化前スラリーの固形物質の濃度と前記濃化後スラリーの固形物質の濃度及び/又は前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量との関係を示す関係性モデルに基づいて、前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定する
スラリー濃化システム。
【請求項3】
請求項1に記載のスラリー濃化システムにおいて、
前記濃化部として、遠心分離装置を用いる
スラリー濃化システム。
【請求項4】
請求項1に記載のスラリー濃化システムにおいて、
前記測定部として、放射式γ線濃度計及び/又は超音波濃度計を用いる
スラリー濃化システム。
【請求項5】
請求項1に記載のスラリー濃化システムにおいて、
前記濃化前スラリーは、固形物質として製鉄所で発生する鉄化合物を含む
スラリー濃化システム。
【請求項6】
請求項1に記載のスラリー濃化システムにおいて、
前記濃化前スラリーは、製鉄所の製鋼スラリーを含む
スラリー濃化システム。
【請求項7】
請求項5に記載のスラリー濃化システムにおいて、
前記決定部において決定した量の前記希釈液を前記濃化後スラリーに添加して希釈後スラリーを得る希釈部をさらに備える
スラリー濃化システム。
【請求項8】
請求項7に記載のスラリー濃化システムにおいて、
前記希釈後スラリーは、製鉄所の鉄鉱石造粒において造粒改善に用いるためのものである
スラリー濃化システム。
【請求項9】
スラリー濃化方法であって、
濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定工程と、
前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化工程と、
前記測定工程において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化工程における濃化条件を決定する決定工程とを備える
スラリー濃化方法。
【請求項10】
焼結鉱原料粒子の製造システムであって、
濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、
前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、
前記測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化部における濃化条件を決定する決定部と、
前記濃化後スラリーに前記希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈部と、
鉄鉱石粉末に、前記希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒部とを備える
焼結鉱原料粒子の製造システム。
【請求項11】
焼結鉱原料粒子の製造方法であって、
濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定工程と、
前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化工程と、
前記測定工程において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化工程における濃化条件を決定する決定工程と、
前記濃化後スラリーに前記希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈工程と、
鉄鉱石粉末に、前記希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒工程とを備える
焼結鉱原料粒子の製造方法。
【請求項12】
焼結鉱の製造システムであって、
濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、
前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、
前記測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化部における濃化条件を決定する決定部と、
前記濃化後スラリーに前記希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈部と、
鉄鉱石粉末に、前記希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒部と、
前記焼結前粒子を焼結する焼結部とを備える
焼結鉱の製造システム。
【請求項13】
焼結鉱の製造方法であって、
濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定工程と、
前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化工程と、
前記測定工程において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化工程における濃化条件を決定する決定工程と、
前記濃化後スラリーに前記希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈工程と、
鉄鉱石粉末に、前記希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒工程と、
前記焼結前粒子を焼結する焼結工程とを備える
焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー濃化システム、焼結鉱原料粒子の製造システム、焼結鉱の製造システム、スラリー濃化方法、焼結鉱原料粒子の製造方法及び焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結鉱は、鉄鉱石粉と各種添加物を混合した後、原料粒子を造粒し、これを焼結することによって得られる(例えば、特許文献1参照)。このとき、鉄鉱石粉に対して鉄化合物を含む微粉を添加することにより、原料粒子の造粒性を向上させることができることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-66766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような微粉は、添加量が多いほど造粒性の向上に対する効果が高いが、脱水状態で添加すると造粒時の微粉分散性が劣り均一に造粒することが困難となる。そこで、本発明者らは、微粉を鉄鉱石粉に対してスラリーとして添加することについて検討した。その結果、微粉を低濃度で含むスラリーを用いると、多量の水分を添加することとなり、造粒が悪化するとともに焼結に用いる凝結材の使用量が増加するため、スラリーは微粉を濃化し、水分量が少ない状態で添加する必要があることが分かった。
【0005】
そこで、スラリー中の微粉を濃化すべく、例えばタンクにスラリーを貯めて静置し、微粉を自然沈降させる方法や、遠心分離装置(シックナー等)にスラリーを通す方法、デカンターを用いてスラリーを遠心分離する方法等を行うことが考えられる。
【0006】
造粒のためのスラリーとしては、製鉄所の製鋼スラリーが適切であると考えられるが、鉄鋼スラリー中の微粉の濃度は変動するため、上述した濃化方法で得られる濃化後スラリー中の微粉の濃度も変動する。一方、造粒時に添加する微粉の量によって造粒性の向上効果は異なるため、濃化後スラリー中の微粉の濃度を調整せずに添加すると、造粒性の向上効果を安定的に発揮させることができない。
【0007】
本発明では上記事情に鑑み、スラリーを濃化するに際して濃化後の濃度を安定的に調整することができるスラリー濃化システム、焼結鉱原料粒子の製造システム、焼結鉱の製造システム、スラリー濃化方法、焼結鉱原料粒子の製造方法及び焼結鉱の製造方法を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、スラリー濃化システムが提供される。このスラリー濃化システムは、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は濃化部における濃化条件を決定する決定部とを備える。
【0009】
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0010】
(1)スラリー濃化システムであって、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、前記測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化部における濃化条件を決定する決定部とを備えるスラリー濃化システム。
【0011】
(2)上記(1)に記載のスラリー濃化システムにおいて、前記決定部は、さらに、前記濃化前スラリーの固形物質の濃度と前記濃化後スラリーの固形物質の濃度及び/又は前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量との関係を示す関係性モデルに基づいて、前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するスラリー濃化システム。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)に記載のスラリー濃化システムにおいて、前記濃化部として、遠心分離装置を用いるスラリー濃化システム。
【0013】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のスラリー濃化システムにおいて、前記測定部として、放射式γ線濃度計及び/又は超音波濃度計を用いるスラリー濃化システム。
【0014】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のスラリー濃化システムにおいて、前記濃化前スラリーは、固形物質として製鉄所で発生する鉄化合物を含むスラリー濃化システム。
【0015】
(6)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のスラリー濃化システムにおいて、前記濃化前スラリーは、製鉄所の製鋼スラリーを含むスラリー濃化システム。
【0016】
(7)上記(5)又は(6)に記載のスラリー濃化システムにおいて、前記決定部において決定した量の前記希釈液を前記濃化後スラリーに添加して希釈後スラリーを得る希釈部をさらに備えるスラリー濃化システム。
【0017】
(8)上記(7)に記載のスラリー濃化システムにおいて、前記希釈後スラリーは、製鉄所の鉄鉱石造粒において造粒改善に用いるためのものであるスラリー濃化システム。
【0018】
(9)スラリー濃化方法であって、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定工程と、前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化工程と、前記測定工程において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化工程における濃化条件を決定する決定工程とを備えるスラリー濃化方法。
【0019】
(10)焼結鉱原料粒子の製造システムであって、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、前記測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化部における濃化条件を決定する決定部と、前記濃化後スラリーに前記希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈部と、鉄鉱石粉末に、前記希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒部とを備える焼結鉱原料粒子の製造システム。
【0020】
(11)焼結鉱原料粒子の製造方法であって、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定工程と、前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化工程と、前記測定工程において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化工程における濃化条件を決定する決定工程と、前記濃化後スラリーに前記希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈工程と、鉄鉱石粉末に、前記希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒工程とを備える焼結鉱原料粒子の製造方法。
【0021】
(12)焼結鉱の製造システムであって、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、前記測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化部における濃化条件を決定する決定部と、前記濃化後スラリーに前記希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈部と、鉄鉱石粉末に、前記希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒部と、前記焼結前粒子を焼結する焼結部とを備える焼結鉱の製造システム。
【0022】
(13)焼結鉱の製造方法であって、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定工程と、前記濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化工程と、前記測定工程において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて前記濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は前記濃化工程における濃化条件を決定する決定工程と、前記濃化後スラリーに前記希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈工程と、鉄鉱石粉末に、前記希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒工程と、前記焼結前粒子を焼結する焼結工程とを備える焼結鉱の製造方法。
もちろん、この限りではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スラリーを濃化するに際して濃化後の濃度を一定に調整することができるスラリー濃化システム、焼結鉱原料粒子の製造システム、焼結鉱の製造システム、スラリー濃化方法、焼結鉱原料粒子の製造方法及び焼結鉱の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係るスラリー濃化システムの概略図である。
図2】本実施形態に係るスラリー濃化システムの具体的な構成を説明するための図である。
図3】本実施形態に係るスラリー濃化システムの他の具体的な構成を説明するための図である。
図4】実施例で用いたスラリー濃化試験システムの概略図である。
図5】懸濁物質濃度計2Cの表示値対濃化前スラリーの固形物質の濃度のプロットである。
図6】濃化後スラリーの固形物質の濃度対濃化前スラリーの固形物質の濃度のプロットである。
図7】濃化後スラリーの固形物質の量対濃化前スラリーの固形物質の濃度のプロットである。
図8】必要な希釈液の量対濃化前スラリーの固形物質の濃度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、スラリー濃化システム、焼結鉱原料粒子の製造システム、焼結鉱の製造システム、スラリー濃化方法、焼結鉱原料粒子の製造方法及び焼結鉱の製造方法について具体的な例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲において適宜変更を加えて実施することができる。また、以下の実施形態において説明する各構成は互いに組み合わせて実施することができる。
【0026】
本発明において、「濃化」とは、スラリー中の固形物質の濃度を高めることをいう。「濃化」のための具体的な手段は特に限定されない。
【0027】
<スラリー濃化システム>
本実施形態に係るスラリー濃化システムは、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は濃化部における濃化条件を決定する決定部とを備えるものである。
【0028】
図1は、本実施形態に係るスラリー濃化システムの概略図である。図1に示されるスラリー濃化システム1は、測定部2と、濃化部3と、決定部4とを備えるものである。また、必須の構成要素ではないが、スラリー濃化システム1は、決定部4において決定した量の希釈液を濃化後スラリーに添加して希釈後スラリーを得る希釈部5を備えるものである。以下、この図1を用いて、本実施形態に係るスラリー濃化システムについて説明する。
【0029】
〔測定部〕
測定部2は、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定するものである。
【0030】
測定部2としては、スラリー中の懸濁物質(SS)濃度を測定することができる懸濁物質濃度計であれば特に限定されず、例えば放射式γ線濃度計、超音波濃度計、コリオリ式濃度計、レーザー式濃度計、濁度計等を用いることができる。なお、スラリー中では、炭酸カルシウム等が析出し付着しやすいため、測定部2としては、スラリー自体には非接触でスラリー配管外部に取り付けることでき、また、数%から40%程度の高濃度まで懸濁物質濃度を測定できることができる点で、放射式γ線密度計及び/又は超音波濃度計を用いることが好ましい。
【0031】
(濃化前スラリー)
濃化前スラリーは、本実施形態に係るスラリー濃化システムを用いて固形物質の濃度を高める対象としてのスラリーである。
【0032】
一実施形態において、濃化前スラリーは、固形物質として製鉄所で発生する鉄化合物を含んでいてよい。具体的に、濃化前スラリーとしては、特に限定されず、例えば製鉄所の製銑工程で発生する製銑スラリー、製鉄所の製鋼工程で発生する製鋼スラリー、製鉄所の圧延工程で発生する圧延スラリー等を用いることができるが、特に固形物質(懸濁物質)の粒子径が小さく造粒性の向上効果が大きいことから、製鋼スラリーを用いることが好ましい。
【0033】
〔濃化部〕
濃化部3は、濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得るものである。
【0034】
濃化部3としては、濃化前スラリーから、固形物質の濃度を高めることができるものであれば特に限定されないが、例えばタンク(自然沈降)、シックナー、遠心分離装置(デカンター等)等を用いることができる。中でも、濃化部3としては、遠心分離装置を用いることが好ましい。遠心分離装置による濃化は、タンクやシックナーによる濃化と異なり、短時間で処理ができ滞留時間が短いため、懸濁物質濃度の測定結果を経時やその時間での流入、流出を考慮して補正等することなく比較的容易に希釈液の制御に用いることができる。また、デカンター内の回転筒からケーシングに濃化後スラリーが高回転で排出される際に希釈液を添加することによって、希釈液による希釈を均一に行いやすい。なお、タンク、シックナー、遠心分離装置等は、供給スラリーの供給量範囲、濃度範囲等を考慮して、濃化後スラリーの設定濃度以上の濃度まで濃化できる装置を適宜選択すればよい。
【0035】
濃化部3では濃化後スラリー及び分離液が得られるが、固形物質回収や分離液排水工程の安定稼働等の観点から分離液中の固形物質濃度は低いことが好ましい。分離液中の固形物質濃度は、例えば濃化前スラリーの供給量や濃化部における濃化条件等で制御することができ、例えば遠心分離装置を用いる場合には回転数や差速、ダム高さ等を調整することで、制御することができる。遠心分離装置を用いる場合においては、特に遠心力1500G以上で分離を行うことが好ましい。
【0036】
〔決定部〕
決定部4は、上述した測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は濃化部における濃化条件を決定するものである。
【0037】
決定部4としては、濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は濃化部における濃化条件を決定するための演算ができるものであれば特に限定されず、各種演算装置を用いることができる。
【0038】
(希釈水の量の決定)
一実施形態において、決定部4は、さらに、濃化前スラリーの固形物質の濃度と濃化後スラリーの固形物質の濃度及び/又は濃化後スラリーに添加する希釈液の量との関係を示す関係性モデルに基づいて、濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定する。
【0039】
濃化前スラリーの固形物質の濃度と濃化後スラリーの固形物質の濃度との関係を示す関係性モデルを用いる場合、そのような関係性モデルとしては、例えば濃化前スラリーの固形物質の濃度と濃化後スラリーの固形物質の濃度との関係を示す関数若しくはルックアップテーブル、又は濃化前スラリーの固形物質の濃度と濃化後スラリーの固形物質の濃度との関係の学習済モデル等が挙げられる。このような関係性モデルによって、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定するだけで、濃化後スラリーの固形物質の濃度を特定することができる。そして、このようにして推測した濃化後スラリーの固形物質の濃度から、一定のスラリー濃度にするために濃化後のスラリーに対して添加する希釈液の量が算出できる。
【0040】
また、濃化前スラリーの固形物質の濃度と濃化後スラリーに添加する希釈液の量との関係を示す関係性モデルを用いる場合、そのような関係性モデルとしては、例えば濃化前スラリーの固形物質の濃度と濃化後スラリーに添加する希釈液の量との関係を示す関数若しくはルックアップテーブル、又は濃化前スラリーの固形物質の濃度と濃化後スラリーに添加する希釈液の量との関係の学習済モデル等が挙げられる。このような関係性モデルによって、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定するだけで、一定のスラリー濃度にするために濃化後のスラリーに対して添加する希釈液の量が直接算出できる。
【0041】
(濃化条件の決定)
一実施形態において、決定部4は、さらに、濃化前スラリーの固形物質の濃度及び濃化前スラリーの固形物質の濃度と、濃化部における濃化条件との関係を示す関係性モデルに基づいて、濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定する。
【0042】
濃化前スラリーの固形物質の濃度及び濃化前スラリーの固形物質の濃度と、濃化部における濃化条件との関係を示す関係性モデルを用いる場合、そのような関係性モデルとしては、例えば濃化前スラリーの固形物質の濃度及び濃化前スラリーの固形物質の濃度と、濃化部における濃化条件との関係を示す関数若しくはルックアップテーブル、又は濃化前スラリーの固形物質の濃度及び濃化前スラリーの固形物質の濃度と、濃化部における濃化条件との関係の学習済モデル等が挙げられる。このような関係性モデルによって、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定するとともに、所望の濃化後スラリーの固形物質を設定するだけで、所望の濃化後スラリーの固形物質を得るための濃化条件を特定することができる。
【0043】
具体的に、濃化条件としては、濃化前スラリーの供給量、遠心分離装置を用いる場合には回転数や差速、ダム高さ等を用いることができる。濃化条件としては、1つのみを用いてもよいし、2つ以上を用いてもよい。
【0044】
なお、これらの関係性モデルは、事前にスラリー濃化システム1を稼働して作成してもよいし、スラリー濃化システム1の稼働中に作成してもよい。また、スラリー濃化システム1の稼働中に、新たに測定した情報を用いて、現在用いている関係性モデルを補正したり、置換したりしてもよい。
【0045】
〔希釈部〕
希釈部5は、決定部4において決定した量の希釈液を濃化後スラリーに添加して希釈後スラリーを得るものである。
【0046】
(希釈液)
希釈液は、濃化後スラリーに添加することによってその中に含まれる固形物質の濃度を低下させるためのものである。
【0047】
具体的に、希釈液としては、添加することによって濃化後スラリーの固形物質の濃度を低下させることができるものであれば特に限定されず、例えば濃化前スラリーをはじめとする濃化後スラリーよりも固形物質の濃度の低いスラリーを用いてもよいし、工業用水、水道水、純水、混入しても問題のない排水等を用いてもよい。ただし、濃化前スラリーは、固形物質を含むため添加量の調整が複雑になることがあったり、添加のために用いる配管によっては詰まりが起こったりする可能性がある。また、排水は種類によるが懸濁物質を含む場合もあり、硬度成分の析出で添加のために用いる配管によっては詰まりの原因となる可能性がある。さらに、水道水、純水は高価である。これらのことから、希釈液としては、工業用水を用いることが好ましい。
【0048】
濃化後スラリーに対して希釈液を添加する箇所としては、特に限定されないが、例えば濃化部3としてデカンターを用いる場合、濃化後スラリーとの均一に混合する観点から、デカンターのケーシング内で回転筒から排出された濃化スラリーに添加することが好ましいが、デカンターから排出された後、貯水するための槽に移送(デカンターからの落下を含む)する途中で添加したり、貯水するための槽の中に添加したりしてもよい。
【0049】
希釈液の添加量の調整方法としては、特に限定されないが、例えばバルブの開度で調整してもよいし、また、ポンプのインバーター制御で調整してもよい。また、デカンターのケーシング内で回転筒から排出された濃化スラリーに添加する場合、希釈液はノズル等をつけて圧力の高い状態で噴霧することで濃化スラリーとの均一混合を促進することが好ましい。なお、この場合において、ノズル等に詰まり等が起きないよう注意する。
【0050】
このようにして得られた希釈後スラリーの用途としては、特に限定されないが、例えば製鉄所の鉄鉱石造粒において造粒改善に用いることができる。
【0051】
〔スラリー濃化システムの具体例1〕
図2は、本実施形態に係るスラリー濃化システムの具体的な構成を説明するための図である。
【0052】
図2に示されるスラリーシステム1Aは、懸濁物質濃度計2A、デカンター3A、演算・制御装置4A、バルブ5A、濃化前スラリー槽6A、希釈液槽7A、分離水槽8A、希釈後スラリー槽9A、ポンプ10A,11A,12A,13A、懸濁物質濃度計14Aを備える。
【0053】
濃化前スラリー槽6Aに貯留された濃化前スラリーは、ポンプ10Aによってデカンター3Aに移送される。この際、濃化前スラリー槽6Aとデカンター3Aをつなぐ配管には、懸濁物質濃度計2Aが設けられており、この懸濁物質濃度計2Aによって配管内部を流れるスラリーの固形物質濃度を測定する。一方、デカンター3Aに移送された濃化前スラリーは、デカンターによって水分の一部が除去されて、固形物質が濃化されて、濃化後スラリーが得られる。
【0054】
懸濁物質濃度計2Aで測定した固形物質の濃度の情報は、懸濁物質濃度計2Aと通信可能な状態で接続された演算・制御装置4Aに送信される。これを受信した演算・制御装置4Aでは、固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定する。具体的に、演算・制御装置4Aは、予め、濃化前スラリーの固形物質の濃度と濃化後スラリーの固形物質の濃度及び/又は濃化後スラリーに添加する希釈液の量との関係を示す関係性モデルを保持しており、測定した固形物質の濃度から、濃化後スラリーの固形物質の濃度を経由するか、又は直接濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定する。
【0055】
ここで、希釈液を貯留している希釈液槽7Aは、デカンター3Aと希釈液を移送するための配管によって接続されており、希釈液はこの配管に設けられたポンプ11Aによって移送される。また、この配管の途中にはバルブ5Aが設けられており、バルブ5Aの開閉によってデカンター3Aに移送する希釈液の量を調整する。このバルブ5Aは、演算・制御装置4Aと通信可能な状態で接続されており、この演算・制御装置によって、演算・制御装置4Aが決定した希釈液の量に基づいてその開閉や開閉の程度が制御されている。
【0056】
このようにして、デカンター3Aに移送された希釈液は、デカンター3Aで濃化された濃化後スラリーと混合され、希釈後スラリーとしてデカンター3Aから排出され、希釈後スラリー槽9Aへ貯留される。その後、希釈後スラリーは、懸濁物質濃度計14Aで固形物質の濃度を測定した後、ポンプ13Aによって次の工程へ移送される。
【0057】
一方で、デカンター3Aで濃化前スラリーから分離除去された水分は、分離水として分離水槽8Aに貯留された後、ポンプ12Aによって次の工程へ移送される。
【0058】
なお、濃化前スラリー槽6A、希釈液槽7A、分離水槽8A、希釈後スラリー槽9Aには、必要に応じて攪拌機(図示せず)を設けてよく、特に濃化前スラリー槽6A、希釈後スラリー槽9Aでは攪拌機によって固形物質の沈降や堆積を防止する。
【0059】
〔スラリー濃化システムの具体例2〕
図3は、本実施形態に係るスラリー濃化システムの他の具体的な構成を説明するための図である。
【0060】
図3に示されるスラリーシステム1Bは、懸濁物質濃度計2B、デカンター3B、演算・制御装置4B、バルブ5B、希釈前スラリー槽6B、希釈液槽7B、分離水槽8B、希釈後スラリー槽9B、ポンプ10B,11B,12B,13B、懸濁物質濃度計14Bを備える。
【0061】
ここで、スラリーシステム1Bは、スラリーシステム1Aと比較して、希釈液槽7Aに貯留された希釈液を、希釈後スラリー槽9Bへ移送し、この希釈後スラリー槽9Bで希釈を行う点で異なる。その他の構成は、スラリーシステム1Aと同様である。
【0062】
<スラリー濃化方法>
本実施形態に係るスラリー濃化方法は、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定工程と、濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化工程と、測定工程において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか。又は濃化工程における濃化条件を決定する決定工程とを備えるものである。
【0063】
このようなスラリー濃化方法は、例えば上述したスラリー濃化システムを用いて行うことができる。測定工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの測定部の動作と同様であり、濃化工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの濃化部における操作と同様であり、決定工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの決定部における操作と同様である。
【0064】
また、スラリー濃化方法は、決定工程において決定した量の希釈液を濃化後スラリーに添加して希釈後スラリーを得る希釈工程を備えてよい。希釈工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの希釈部における操作と同様である。
【0065】
<焼結鉱原料粒子の製造システム>
本実施形態に係る焼結鉱原料粒子の製造システムは、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は濃化部における濃化条件を決定する決定部と、濃化後スラリーに希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈部と、鉄鉱石粉末に、希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒部とを備えるものである。
【0066】
測定部、濃化部、決定部及び希釈部については、それぞれスラリー濃化システムにおける測定部、濃化部、決定部及び希釈部と同様である。
【0067】
造粒部としては、鉄鉱石粉末に、希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒することができるものであれば特に限定されないが、例えばドラムミキサー等を用いることができる。また、鉄鉱石粉末に、希釈後スラリーを添加、混練、混合する装置(レディゲミキサー等)と造粒する装置(ディスクペレタイザー、パンペレタイザー等)とを組み合わせて用いることもできる。
【0068】
造粒部において、鉄鉱石粉末に対して、希釈後スラリーを添加する際に、さらに石灰石や珪石、蛇紋岩等の副原料粉、ダスト、スケール、返鉱等の雑原料粉、粉コークス等の固体燃料等の添加剤をてんかしてもよい。
【0069】
<焼結鉱原料粒子の製造方法>
本実施形態に係る焼結鉱原料粒子の製造方法は、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定工程と、濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化工程と、測定工程において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は濃化工程における濃化条件を決定する決定工程と、濃化後スラリーに希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈工程と、鉄鉱石粉末に、希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒工程とを備えるものである。
【0070】
このような焼結鉱原料粒子の製造方法は、例えば上述した焼結鉱原料粒子の製造システムを用いて行うことができる。測定工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの測定部の動作と同様であり、濃化工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの濃化部における操作と同様であり、決定工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの決定部における操作と同様であり、希釈工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの希釈部における操作と同様である。また、造粒工程における具体的な操作は、焼結鉱原料粒子の製造システムの造粒部における操作と同様である。
【0071】
<焼結鉱の製造システム>
本実施形態に係る焼結鉱の製造システムは、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定部と、濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化部と、測定部において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は濃化部における濃化条件を決定する決定部と、濃化後スラリーに希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈部と、鉄鉱石粉末に、希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒部と、焼結前粒子を焼結する焼結部とを備えるものである。
【0072】
測定部、濃化部、決定部及び希釈部については、それぞれスラリー濃化システムにおける測定部、濃化部、決定部及び希釈部と同様である。造粒部については、焼結鉱原料粒子の製造システムにおける造粒部と同様である。
【0073】
焼結部としては、焼結前粒子を焼結することができるものであれば特に限定されないが、例えば焼結炉を用いることができる。具体的に、この焼結部は、例えば焼結前粒子を移動式のパレット上に積層した後、この積層原料の上層面に点火し、積層原料の上方から下方へ空気を吸引しながらコークス等を酸化させ、酸化時の発熱を利用して焼結鉱を製造するものである。
【0074】
<焼結鉱の製造方法>
本実施形態に係る焼結鉱の製造方法は、濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定する測定工程と、濃化前スラリーから、固形物質の濃度が高められた濃化後スラリーを得る濃化工程と、測定工程において測定した濃化前スラリーの固形物質の濃度に基づいて濃化後スラリーに添加する希釈液の量を決定するか、又は濃化工程における濃化条件を決定する決定工程と、濃化後スラリーに希釈液を添加して希釈後スラリーを得る希釈工程と、鉄鉱石粉末に、希釈後スラリーを添加して焼結前粒子を造粒する造粒工程と、焼結前粒子を焼結する焼結工程とを備えるものである。
【0075】
このような焼結鉱原料粒子の製造方法は、例えば上述した焼結鉱原料粒子の製造システムを用いて行うことができる。測定工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの測定部の動作と同様であり、濃化工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの濃化部における操作と同様であり、決定工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの決定部における操作と同様であり、希釈工程における具体的な操作は、スラリー濃化システムの希釈部における操作と同様である。また、造粒工程における具体的な操作は、焼結鉱原料粒子の製造システムの造粒部における操作と同様である。さらに、焼結工程における具体的な操作は、焼結鉱の製造システムの焼結部における操作と同様である。
【実施例0076】
以下、本発明について実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
<実施例>
〔実験装置〕
図4に示すスラリー濃化試験システムを構築した。図4は、実施例で用いたスラリー濃化試験システムの概略図である。具体的に、図4に示されるスラリー濃化試験システム1Cは、濃化前スラリー槽6C、ポンプ10C、懸濁物質濃度計2C及びデカンター3Cを備えるものである。
【0078】
このスラリー濃化試験システム1Cでは、濃化前スラリーが濃化前スラリー槽6Cに貯留されており、濃化前スラリーは、ポンプ10Cによってデカンター3Cに移送される。濃化前スラリーとデカンター3Cは配管によって接続されており、この配管の途中に懸濁物質濃度計2Cが配置されている。デカンター3Cは、濃化前スラリーを濃化して濃化後スラリーを得る。
【0079】
各構成要素としては、以下のものを用いた。
(濃化前スラリー槽6C)
・SUSタンク 200L
・付属攪拌機KP-4003
(ポンプ10C)
・兵神装備株式会社製 ヘイシンモーノポンプNHL15 PUN
(懸濁物質濃度計2C)
・ナノグレイ株式会社製 ガンマ線濃度計PH-1100A
(デカンター3C)
・巴工業株式会社製 デカンタ型遠心脱水機PTM006
・遠心力 1500G
・差速 40Δmin-1
・ダム高さ #4(最高高さ)
・供給量 300L/h
【0080】
〔実験〕
(実施例)
濃化前スラリーの固形物質の濃度を、17w/w%、20w/w%、24w/w%、28w/w%及び33w/w%に変化させて、濃化後スラリーの固形物質の濃度と1分間当たりの発生量を測定した。また、それぞれの場合において、濃化後スラリーの40%濃化スラリーとするために必要な希釈液の量を算出した。
【0081】
〔結果及び考察〕
(実施例)
表1に、実施例における濃化前スラリーの固形物質の濃度及び懸濁物質濃度計2Cの表示値を示す。
【表1】
【0082】
図5は、懸濁物質濃度計2Cの表示値対濃化前スラリーの固形物質の濃度のプロットである。
【0083】
表1及び図5から、懸濁物質濃度計2Cの表示値及び濃化前スラリーの固形物質の濃度は、比例関係であり、懸濁物質濃度計2Cによって濃化前スラリーの固形物質の濃度を測定することができることが実証された。
【0084】
また、表2に、濃化前スラリーの固形物質の濃度、濃化後スラリーの固形物質の濃度、濃化後スラリーの固形物質の質量及び必要な希釈液量を示す。
【0085】
【表2】
【0086】
図6は、濃化後スラリーの固形物質の濃度対濃化前スラリーの固形物質の濃度のプロットである。また、図7は、濃化後スラリーの固形物質の量対濃化前スラリーの固形物質の濃度のプロットである。さらに、図8は、必要な希釈液の量対濃化前スラリーの固形物質の濃度のプロットである。
【0087】
表1及び図6~8から、濃化前スラリーの固形物質の濃度と、濃化後スラリーの固形物質の濃度や量、必要な希釈液の量との間には、一定の関係性があることがわかった。
【符号の説明】
【0088】
1,1A,1B スラリー濃化システム
1C スラリー濃化試験システム
2 測定部
2A,2B,2C,14A,14B 懸濁物質濃度計
3 濃化部
3A,3B,3C デカンター
4 決定部
4A,4B 演算・制御装置
5 希釈部
5A,5B バルブ
6A,6B、6C 濃化前スラリー槽
7A,7B 希釈液槽
8A,8B 分離水槽
9A,9B 希釈後スラリー槽
10A,10B,10C,11A,11B,12A,12B,13A,13B ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8