(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062917
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】HLA-DR β鎖に対する新規な抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240501BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240501BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240501BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240501BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240501BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61P35/02
A61K47/64
A61K47/68
A61K39/395 N
A61K39/395 T
C12N15/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034860
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2022170772
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】前仲 勝実
(72)【発明者】
【氏名】前田 直良
(72)【発明者】
【氏名】露木 貴浩
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA38
4C076AA45
4C076AA53
4C076AA67
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076CC27
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】ATLを含む血液がんの新規な治療剤を開発すること。
【解決手段】HLA-DR β鎖に特異的に結合する抗体であって、a)それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域の3つの相補性決定領域(CDR)、および/またはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)領域の3つのCDRを含む、またはb)それぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域の3つのCDR、およびそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域の3つのCDRを含む抗体、またはその抗原結合断片等が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA-DR β鎖に特異的に結合する抗体であって、
a)それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域の3つの相補性決定領域(CDR)、および/またはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)領域の3つのCDRを含む、または
b)それぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域の3つのCDR、およびそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域の3つのCDRを含む
抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項2】
a’)配列番号7で示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号7で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および/または配列番号8で示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号8で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、または
b’)配列番号15で示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号15で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号16で示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号16で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、
請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
HLA-DR β鎖への結合について請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片と競合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
HLA-DR β鎖への結合について請求項2記載の抗体またはその抗原結合断片と競合する抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
HLA-DR β鎖に特異的に結合する抗体であって、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むエピトープまたは配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むエピトープに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
抗体がヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
抗体がヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項2記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、血液がんの治療のための医薬組成物。
【請求項9】
抗体薬物コンジュゲートの形態である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
血液がんが、白血病、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫からなる群から選ばれる、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項11】
非ホジキンリンパ腫が成人T細胞白血病またはバーキットリンパ腫である、請求項10記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HLA(ヒト白血球型抗原)-DR β鎖に対する新規な抗体、当該抗体を含む医薬組成物、および当該抗体の利用法、特に血液がんの治療、とりわけ成人T細胞白血病(Adult T-cell leukemia、ATL)の治療における当該抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ATLは、日本の九州地方をはじめ、世界の一部の地域にのみ発症者が多く見られる特有の血液がんであり、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)がT細胞に感染することによって引き起こされることが分かっている。HTLV―1はレトロウイルスに分類され、感染後ウイルス遺伝子が染色体内に挿入されるため、感染者は生涯ウイルス保有者となる。潜伏期間が長く、数十年を経て約1~3%の感染者がATLを発症する。発症平均年齢は66歳(2007年時点)である。しかしながら、一度発症すると平均50%生存期間は13か月であり、一時的に奏効するが、再燃、再発がきわめて早く起こる予後不良の疾患である。病型は、末梢血リンパ球数、予後不良因子、転移の有無等により、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型の4つに分類され、初診時に既に他の組織や器官への転移が認められる場合も多い。
【0003】
ATLの化学療法としては、多剤併用化学療法、例えば、VCAP療法(ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾロン)、AMP療法(ドキソルビシン、ラニムスチン、プレドニゾロン)およびVECP療法(ビンデシン、エトポシド、パラプラチン、プレドニゾロン)を組み合わせたLSG15療法などがある。また、発症年齢やATL病型により、造血幹細胞移植を選択する場合がある。また、ATLの治療を目的として、ATL細胞の細胞表面分子を標的とした抗体が開発されており、例えば、抗CCR4抗体Mogamulizumab、抗CD2抗体Siplizumab、抗CD25抗体Daclizumab、抗CD30抗体との薬物複合体Brentuximab vedotin、抗CD52抗体Alemtuzumab、抗CD71抗体JST-TFR09およびA24、抗CD122抗体Hu-Mikβ1などが論文報告されている。さらに、ATL細胞の細胞死を誘導するのに有効なHLA-DR β鎖に対する抗体フラグメント(ダイアボディ)および抗体が報告されているが、抗原エピトープ等の詳細な報告はない(非特許文献1および2)。現在ATLの治療に使用されているのは抗CCR4抗体Mogamulizumabのみであり、それ以外にATLに対する有効な治療法、および治療薬は無く、完治できない。したがって、今もなお、ATLの新規な治療剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】The Journal of Biochemistry, Volume 145, Issue 6, June 2009, Pages 799-810
【非特許文献2】PLoS ONE 2016, 11, e0150496
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ATLを含む血液がんの新規な治療剤を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ATLを含む血液がんの治療に有効な新規な抗体を見出した。該抗体は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIIのHLA-DRのβ鎖に特異的に結合する抗体であり、ATL細胞の増殖を抑制し、ATL細胞移植マウスにおける腫瘍の成長を抑制することが分かった。該抗体は、今までに報告されている抗HLA-DR β鎖抗体とは異なる配列を含む新規な抗体であり、さらに、本発明者らは該抗体のエピトープも同定した。かくして、本発明が完成された。
【0007】
したがって、本発明は以下の態様を提供する。
[1]HLA-DR β鎖に特異的に結合する抗体であって、
a)それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域の3つの相補性決定領域(CDR)、および/またはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)領域の3つのCDRを含む、または
b)それぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域の3つのCDR、およびそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域の3つのCDRを含む
抗体、またはその抗原結合断片。
[2]a’)配列番号7で示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号7で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および/または配列番号8で示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号8で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、または
b’)配列番号15で示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号15で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号16で示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号16で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、
[1]記載の抗体またはその抗原結合断片。
[3]HLA-DR β鎖への結合について[1]記載の抗体またはその抗原結合断片と競合する抗体またはその抗原結合断片。
[4]HLA-DR β鎖への結合について[2]記載の抗体またはその抗原結合断片と競合する抗体またはその抗原結合断片。
[5]HLA-DR β鎖に特異的に結合する抗体であって、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むエピトープまたは配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むエピトープに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
[6]抗体がヒト化抗体またはキメラ抗体である、[1]記載の抗体またはその抗原結合断片。
[7]抗体がヒト化抗体またはキメラ抗体である、[2]記載の抗体またはその抗原結合断片。
[8][1]~[7]のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、血液がんの治療のための医薬組成物。
[9]抗体薬物コンジュゲートの形態である、[8]記載の医薬組成物。
[10]血液がんが、白血病、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫からなる群から選ばれる、[8]記載の医薬組成物。
[11]非ホジキンリンパ腫が成人T細胞白血病またはバーキットリンパ腫である、[10]記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ATLを含む血液がんの治療に有効な新規な抗HLA-DR β鎖抗体、および当該抗体を含む血液がんの治療に有効な医薬組成物が提供される。さらに、前記抗体または医薬組成物を投与することを特徴とする、ATLを含む血液がんの治療方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、c19抗体およびc33抗体のVH領域およびVL領域を示す。
【
図2】
図2は、c19抗体およびc33抗体による組換えHLA-DR β鎖の検出結果を示す。
【
図3】
図3は、c19抗体およびc33抗体の表面プラズモン共鳴解析結果を示す。
【
図4】
図4は、全長およびN末端欠損HLA-DR β鎖組換えタンパク質の発現、および当該組換えタンパク質に対するc19抗体およびc33抗体によるウェスタンブロッティングの結果を示す。
【
図5-1】
図5-1は、c19抗体によるin vitroでのATL細胞増殖抑制試験結果を示す。
【
図5-2】
図5-2は、c33抗体によるin vitroでのATL細胞増殖抑制試験結果を示す。
【
図6】
図6は、c19抗体を用いた細胞凝集試験の結果を示す。
【
図7】
図7は、c19抗体によるin vivoでの腫瘍成長抑制試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、HTLV-1感染によりがん化したT細胞(本明細書において、「ATL細胞」ともいう)をラットに接種して、ATL細胞表面分子に対する抗体を取得し、そのうち、ATL細胞に対して結合性を示すクローンを選択し、2種のモノクローナル抗体を得、その配列を決定した。本願明細書において、これらの抗体をc19抗体およびc33抗体と称する。
【0011】
c19抗体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域および配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、それぞれ配列番号1、配列番号2、および配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)(すなわち、VH CDR1-3)を含み、該VL領域は、それぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列を含む3つのCDR(すなわち、VL CDR1-3)を含む。
【0012】
c33抗体は、配列番号15で示されるアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号16で示されるアミノ酸配列を含むVL領域を含み、該VH領域は、それぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1-3を含み、該VL領域は、それぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1-3を含む。
【0013】
c19抗体およびc33抗体は、ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen;HLA)クラスIIの一つ、HLA-DRのβ鎖に特異的に結合する抗体である。HLA-DRは、約34kDaのα鎖および約28kDaのβ鎖で構成されるヘテロ二量体である。主に単球、マクロファージ、樹状細胞、B細胞等を含む抗原提示細胞の細胞表面に発現しているが、活性化されたT細胞やNK細胞等の細胞表面にも発現する抗原である。また、がん化した血液細胞でも発現が見られ、ATLの良く知られたマーカーの一つである。
【0014】
c19抗体およびc33抗体は、その抗原結合特異性を保持する範囲内において1以上のアミノ酸変異を含む変異体であってもよい。本明細書において、「アミノ酸変異」には、アミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加が含まれる。アミノ酸置換は、保存的置換または非保存的置換のいずれであってもよく、好ましくは保存的置換である。アミノ酸の保存的置換とは、アミノ酸の化学的性質に基づいて同じ群に分類されるアミノ酸への置換をいい、当業者によく知られている。例えば、一の非極性(疎水性)アミノ酸から別の非極性(疎水性)アミノ酸への置換(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、メチオニン間の置換)、一の極性中性アミノ酸から別の極性中性アミノ酸への置換(例えば、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン間の置換)、一の酸性アミノ酸から別の酸性アミノ酸への置換(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸間の置換)、一の塩基性アミノ酸から別の塩基性アミノ酸への置換(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン間の置換)などが挙げられる。アミノ酸置換には、非天然アミノ酸への置換も包含される。
【0015】
本明細書において、「抗原結合特異性を保持する」とは、変異体抗体が、抗原に特異的に結合する能力を保持することをいい、好ましくは、そのオリジナル抗体の抗原結合特異性と同等またはそれ以上の抗原結合特異性を有すること、例えば、オリジナル抗体の抗原結合特異性の約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上の抗原結合特異性を有することをいう。抗原結合特異性は、ELISA法、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット法等などの当該分野で既知の結合アッセイにより確認することができる。
【0016】
c19抗体、c33抗体またはその変異体は、好ましくは、血液がんに対する抗がん活性を有する。本明細書において、「抗がん活性」とは、イン・ビトロまたはイン・ビボにおいて、がん細胞の増殖を抑制する活性をいう。すなわち、c19抗体、c33抗体またはその変異体は、HLA-DR β鎖に特異的に結合して、好ましくは、がん化細胞の増殖を抑制する。本願明細書において「抑制」とは、がん化細胞の増殖を阻害してがん化細胞数の増加を抑えること、および/または、がん化細胞の死を誘導してがん化細胞数を減少させることを意味する。本明細書において、「がん化細胞」は、がん化した血液細胞であり、例えば、がん化した未熟または成熟リンパ球等が挙げられ、好ましくはがん化した成熟T細胞、がん化した成熟B細胞、さらに好ましくはATL細胞、バーキットリンパ腫細胞である。c19抗体およびその変異体は、特に顕著な抗がん活性を有する。
【0017】
したがって、c19抗体およびc33抗体の変異体は、HLA-DR β鎖に特異的に結合する能力を保持する範囲において1以上のアミノ酸変異を有しており、好ましくは、抗がん活性を有する範囲において1以上のアミノ酸変異を有していてもよい。c19抗体およびc33抗体の変異体は、好ましくは、そのオリジナル抗体の同等またはそれ以上の抗がん活性を有していてもよい。本明細書において、「同等またはそれ以上の抗がん活性」とは、例えば、オリジナル抗体の抗がん活性の約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上の抗がん活性をいう。
【0018】
本発明の一の態様において、c19抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH CDR1-3、あるいはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL CDR1-3を含む。好ましくは、c19抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1-3、あるいはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL CDR1-3を含む。
【0019】
さらに好ましくは、c19抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH CDR1-3、およびそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL CDR1-3を含む。またさらに好ましくは、c19抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1-3、およびそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL CDR1-3を含む。
【0020】
本発明の別の態様において、c33抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH CDR1-3、およびそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL CDR1-3を含む。好ましくは、c33抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1-3、およびそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL CDR1-3を含む。
【0021】
本発明の一の態様において、c19抗体またはその変異体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、あるいは配列番号8で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む。好ましくは、c19抗体またはその変異体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH、あるいは配列番号8で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVLを含む。
【0022】
さらに好ましくは、c19抗体またはその変異体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、および配列番号8で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む。またさらに好ましくは、c19抗体またはその変異体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH、および配列番号8で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVLを含む。
【0023】
本発明の別の態様において、c33抗体またはその変異体は、配列番号15で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、および配列番号16で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む。好ましくはc33抗体またはその変異体は、配列番号15で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH、および配列番号16で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVLを含む。
【0024】
本明細書において、「配列同一性」は、常法により2つの配列を最適にアラインメントして決定すればよい。例えば、BLAST、FASTAなどの当該分野で既知の配列アライメントアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0025】
さらに、本発明の一の態様において、c19抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1-3、またはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1-3を含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。好ましくは、c19抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列からなるVH CDR1-3、またはそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列からなるVL CDR1-3を含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。さらに好ましくは、c19抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1-3、およびそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1-3を含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。またさらに好ましくは、c19抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号1~3で示されるアミノ酸配列からなるVH CDR1-3、およびそれぞれ配列番号4~6で示されるアミノ酸配列からなるVL CDR1-3を含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。
【0026】
本発明の別の態様において、c33抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1-3、およびそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1-3を含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。好ましくは、c33抗体またはその変異体は、それぞれ配列番号9~11で示されるアミノ酸配列からなるVH CDR1-3、およびそれぞれ配列番号12~14で示されるアミノ酸配列からなるVL CDR1-3を含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。
【0027】
本発明の一の態様において、c19抗体またはその変異体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列を含むVH、あるいは配列番号8で示されるアミノ酸配列を含むVLを含み、かつ上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸範囲を含む。好ましくは、c19抗体またはその変異体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるVH、あるいは配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるVLを含み、かつ上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸範囲を含む。さらに好ましくは、c19抗体またはその変異体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列を含むVH、および配列番号8で示されるアミノ酸配列を含むVLを含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。またさらに好ましくは、c19抗体またはその変異体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるVH、および配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるVLを含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。
【0028】
本発明の別の態様において、c33抗体またはその変異体は、配列番号15で示されるアミノ酸配列を含むVH、および配列番号16で示されるアミノ酸配列を含むVLを含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。好ましくは、c33抗体またはその変異体は、配列番号15で示されるアミノ酸配列からなるVH、および配列番号16で示されるアミノ酸配列からなるVLを含み、かつ、上記アミノ酸配列において0~数個のアミノ酸変異を含む。
【0029】
本明細書において、「数個」とは、1~10個程度をいい、アミノ酸配列長にもよるが、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個であってもよい。
【0030】
本発明では、c19抗体が、HLA-DR β鎖上の配列:EESVRF(配列番号17)(配列番号19で示されるHLA-DR β鎖の全長アミノ酸配列において64番目~69番目のアミノ酸)を含むポリペプチド(エピトープ)を特異的に認識して結合することが見出された。したがって、本発明のさらなる態様において、配列番号17で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体が提供される。例えば、配列番号17で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体は、上記したc19抗体の変異体であってもよい。配列番号17で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドは、例えば、配列番号17で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。
【0031】
本発明では、c33抗体が、HLA-DR β鎖上の配列:LWQPKREC(配列番号18)(配列番号19で示されるHLA-DR β鎖の全長アミノ酸配列において37番目~44番目のアミノ酸)を含むポリペプチド(エピトープ)を特異的に認識して結合することが見出された。したがって、本発明のさらなる態様において、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体が提供される。例えば、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体は、上記したc33抗体の変異体であってもよい。配列番号18で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドは、例えば、配列番号18で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。
【0032】
本発明のまたさらなる態様において、HLA-DR β鎖への結合について、上記c19抗体、c33抗体またはその変異体と競合する抗体が提供される。本明細書において、「競合する」とは、結合アッセイにおいて、ある抗体(競合抗体)またはその抗原結合断片の存在により、HLA-DR β鎖またはそのポリペプチド(抗原または抗原ポリペプチド)と、上記c19抗体、c33抗体またはその変異体との結合が低減することをいう。競合結合アッセイとしては、当該分野で既知の方法を用いることができ、例えば、ELISA法、表面プラズモン共鳴(SPR)法、フローサイトメトリー、共免疫沈降法、プルダウンアッセイ法、ラベル転移反応法、相互作用マッピング法などを用いてもよい。上記の競合抗体は、上記c19抗体、c33抗体またはその変異体と、抗原または抗原ポリペプチドとの結合を、例えば、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、さらに好ましくは少なくとも約60%、またさらに好ましくは約70%、またさらに好ましくは約80%、またさらに好ましくは約90%低減させる。
【0033】
上記競合抗体はまた、上記のc19抗体のエピトープまたはc33抗体のエピトープ(すなわち、配列番号17または配列番号18で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド)の全部または一部に結合する抗体であってもよい。さらに、HLA-DR β鎖またはHLA-DR β鎖ポリペプチド上の当該エピトープに近接する領域に結合する抗体もまた、上記競合抗体になり得る。さらに、上記競合抗体はまた、上記のc19抗体またはc33抗体のエピトープへの結合について、上記c19抗体、c33抗体またはその変異体と競合する抗体であってもよい。
【0034】
上記c19抗体、c33抗体またはその変異体、上記c19またはc33抗体のエピトープに結合する抗体、および上記競合抗体(以下、まとめて「本発明の抗体」ともいう)は、単離された抗体であり、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよく、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0035】
さらに、本発明の抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または多重特異性抗体であってもよい。ヒト化抗体は、一般に、非ヒト動物抗体由来の相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域とからなる可変領域、およびヒト抗体由来の定常領域からなる抗体をいう。ヒト化抗体は、所望により、ヒト抗体由来のフレームワーク領域の残基が対応する非ヒト動物抗体由来の残基によって置換されていてもよく、また、ヒト抗体およびCDRが由来する非ヒト動物抗体のどちらにも見出されない残基を有していてもよい。キメラ抗体は、一般に、非ヒト動物抗体由来の可変領域と、ヒト抗体由来の定常領域からなる抗体をいう。これらの抗体の作製は、当該分野で既知の方法によって行うことができる。
【0036】
本発明のさらなる態様において、本発明の抗体の抗原結合断片が提供される。本明細書において、「抗体結合断片」とは、抗体の一部分を含むポリペプチドであり、抗原に結合できるものをいう。本発明の抗体の抗原結合断片は、好ましくは、血液がんに対する抗がん活性を有する。
【0037】
本発明の抗体の抗原結合断片としては、例えば、限定するものではないが、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fab3、Fv(可変領域断片)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体(ナノボディ)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディなどが挙げられる。これらの抗原結合断片の作製は、当該分野で既知の方法によって行うことができる。
【0038】
さらに、本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸も、本発明に含まれる。
【0039】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、当該分野で既知の方法によって作製することができる。例えば、抗原(HLA-DR β鎖またはその部分ペプチド)で動物を免疫し、血清からポリクローナル抗体を取得することができる。また、免疫した動物から分離したリンパ球を用いてハイブリドーマを作製することで、モノクローナル抗体を取得することができる。ハイブリドーマ法は、後記する実施例のように、ATL細胞で免疫した動物から出発して行うことができる。組換え抗体作製法では、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合断片をコードするDNAを適当なベクターに組み込み、宿主細胞(例えば哺乳動物細胞、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞など)に導入し、本発明の抗体またはその抗原結合断片を組換え抗体として産生させる。または、ファージディスプレイ法により、抗体遺伝子ライブラリーから抗体を得ることもできる。
【0040】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、HLA-DR β鎖に特異的に結合して、好ましくは、がん化細胞の増殖を抑制することから、血液がんの予防または治療に有用である。したがって、本発明のさらなる態様において、有効量の本発明の抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む、血液がんの予防または治療法が提供される。本発明の抗体またはその抗原結合断片の有効量は、当業者によって適宜決定される。投与経路もまた、当業者によって適宜決定すればよいが、例えば、限定するものではないが、経口、経鼻、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、腫瘍内等が挙げられる。
【0041】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、そのままの形態で投与してもよいが、1以上の薬剤と結合された抗体薬物コンジュゲート(ADC)の形態で投与してもよい。特に、c33抗体またはその変異体またはその抗原結合断片を用いる場合は、ADCの形態が好ましい。本発明の抗体またはその抗原結合断片と結合させる薬剤としては、治療対象となる血液がんのいずれかの治療薬を用いればよく、例えば、限定するものではないが、モノメチルアウリスタチンE(Monomethyl auristatin E;MMAE)、エムタンシン(DM1)、オゾガマイシン、メルタンシン、エキサテカン等の化学療法剤が挙げられる。
【0042】
本発明のまたさらなる態様において、有効成分として本発明の抗体またはその抗原結合断片を含む血液がんの予防または治療のための医薬組成物が提供される。医薬組成物は、上記したADCの形態で本発明の抗体またはその抗原結合断片を含んでいてもよい。医薬組成物は、本発明の抗体またはその抗原結合断片の他に、医薬上許容される担体、安定化剤、賦形剤、溶解補助剤、潤沢化剤、基材、結合剤、懸濁剤、コーティング剤、糖衣剤、粘着増強剤、分散剤、崩壊剤、流動化剤等の添加剤を含んでいてもよい。医薬上許容される担体としては、例えば、限定するものではないが、生理食塩水、ショ糖、緩衝液、グリコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアミノ酸、植物油等が挙げられる。安定化剤としては、例えば、シクロデキストリン、セルロース、亜硫酸塩等、賦形剤としては、例えば、乳糖、セルロース、デンプン等、溶解補助剤としては、例えば、非イオン界面活性剤、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等が挙げられる。その他、添加剤として、例えば、限定するものではないが、クエン酸水和物、水酸化ナトリウム、塩酸、ポリソルベート、トレハロース水和物、クエン酸ナトリウム水和物等が挙げられる。上記担体および添加剤は、医薬組成物の投与形態または投与経路によって適宜選択すればよい。医薬組成物は、常法によって製剤化することによって製造することができる。
【0043】
医薬組成物の投与形態としては、例えば、限定するものではないが、錠剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤、徐放性錠剤、徐放性カプセル、腸溶剤、注入剤、点鼻剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。医薬組成物の投与経路は、例えば、限定するものではないが、経口、経鼻、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、腫瘍内等が挙げられる。
【0044】
本発明の抗体またはその抗原結合断片または上記医薬組成物の投与対象は、哺乳動物である。哺乳動物としては、例えば、限定するものではないが、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ等が挙げられ、好ましくはヒトである。
【0045】
本発明の抗体またはその抗原結合断片、または上記医薬組成物の投与量は、投与対象の年齢、体重、性別、健康状態等を考慮して適宜決定することができる。例えば、限定するものではないが、1回量で約1~5mg/kg体重の抗体を1~4週間間隔で5~10回点滴静注してもよい。
【0046】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、がん化細胞の細胞表面分子であるHLA-DR β鎖に結合する活性を有するため、血液がんの検出ツールまたは標的化剤として用いることもできる。例えば、血液がんの診断や血液がんの治療において、腫瘍部位の検出または標的化に用いることができる。血液がんの検出ツールとして用いる場合、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、検出を容易にするために標識されていてもよい。かかる標識としては、例えば、限定するものではないが、放射性物質、蛍光色素、化学発光物質、酵素等を用いることができる。
【0047】
血液がんとしては、例えば、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫等が挙げられ、好ましくは、非ホジキンリンパ腫である成人T細胞白血病やバーキットリンパ腫が挙げられる。
【実施例0048】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1:モノクローナル抗体の作製
(1)ラットの免疫
ATL細胞株TL-OmI(新潟大学藤井雅寛教授より贈与)をアジュバント(Difco Laboratories)とともにWistarラット(メス、7週齢)(日本SLC)の皮下に免疫し、3週間後腸骨リンパ節を採取し、リンパ球を分離した。なお、本明細書において、ATL細胞株とは、ATL患者より樹立されたT細胞株をいう。
【0050】
(2)モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの樹立
分離したリンパ球とマウスミエローマ細胞X63/Ag8-653(北海道大学薬学部にて保管)を混合し、PEG1500(Roche)の存在下で融合させ、GIT培地(コージンバイオ)、5%BM Condimed H1(Roche)、HAT Supplement(Thermo Fisher Scientific)、HT Supplement(Thermo Fisher Scientific)、10%胎仔ウシ血清(FBS)(BioWest)、ペニシリン(100単位/ml)/ストレプトマイシン(100μg/mL)(WAKO)を用いて37℃、5%CO2下、96穴プレートで培養した。さらに48穴プレートへスケールアップし、24穴プレート培養時からHAT SupplementをHT Supplement(Thermo Fisher Scientific)に切り替えて培養を継続した。さらに12穴プレート、6穴プレートへとスケールアップし、最終的にHT Supplementを加えず培養し、ハイブリドーマを樹立した。
【0051】
(3)陽性クローン細胞のスクリーニング
ATL細胞株TL-OmIおよび急性T細胞性白血病株MOLT-4(新潟大学藤井雅寛教授より贈与)にハイブリドーマ培養上清を添加し、TL-OmIにのみ細胞凝集(アグリゲーション)を誘導するクローンを選択することによりスクリーニングを行った。
【0052】
(4)モノクローナル抗体の精製
樹立したハイブリドーマを、ハイブリドーマ用無血清培地(WAKO)で培養し、培養上清500mLを回収後、Protein G Sepharose 4 Fast Flow(Cytiva)、さらにHiLoad 26/60 Superdex 75カラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーによりモノクローナル抗体c19およびc33を精製した。精製にはAKTApurifier(GE)を使用した。
【0053】
(5)免疫グロブリンサブタイプの同定
Rapid Rat Immunoglobulin Isotyping Kit(Antagen)を用いて、免疫グロブリンサブタイプを同定した。PBS(-)で0.5~2μg/mLに希釈したモノクローナル抗体液を100μL使用した。各モノクローナル抗体の重鎖、軽鎖はそれぞれ、c19はIgG2b、kappa、c33はIgG2a、kappaであった。
【0054】
(6)モノクローナル抗体の配列決定
モノクローナル抗体c19およびc33を産生するハイブリドーマからRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてmRNAを抽出し、BcaBESTTM RNA PCR Kit(TAKARA)を用いてcDNAを合成後、PCR法により抗体の可変領域を含む重鎖(VH)および軽鎖(VL)の遺伝子を増幅し、塩基配列を確認した。PCRは、2.5mM dNTP(TAKARA)、TAKARA Ex Taq(TAKARA)、Ex Taq Buffer(TAKARA)、表1に示されるラットIgG VHに特異的なプライマーセット(配列番号20~43に示される24種のForwardプライマー、および配列番号44~47に示される4種のReverseプライマー)、または表2に示されるラットIgG VLに特異的なプライマーセット(配列番号48~73に示される26種のForwardプライマー、および配列番号74~78に示される5種のReverseプライマー)を用いて、c19重鎖、軽鎖は、(1)95℃ 2分、(2)95℃ 30秒、(3)59.9℃ 1分、(4)68℃ 1分、(2)-(4)を35回繰り返し、(5)68℃ 4分、c33重鎖、軽鎖は、(1)95℃ 2分、(2)95℃ 30秒、(3)55℃ 1分、(4)68℃ 1分、(2)-(4)を35回繰り返し、(5)68℃ 4分の条件で行った。増幅した遺伝子配列、および該遺伝子配列から推定されるアミノ酸配列は下記する通りである。増幅した遺伝子は、DNA Ligation Kit <Mighty Mix>(TAKARA)を用いて、クローニング用T-Vector pMD20プラスミド(TAKARA)にクローニングした。大腸菌株DH5αをpMD20プラスミドで形質転換し、100μg/mLアンピシリン入りLB寒天(Sigma)プレートでコロニー形成後、ピックアップして100μg/mLアンピシリン入りLB液体培地で培養後、プラスミドDNAをQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて抽出した。
【0055】
さらに、各モノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH領域)におけるフレームワーク領域(HFR1-3)および相補性決定領域(CDR1-3)、軽鎖可変領域(VL領域)におけるフレームワーク領域(LFR1-3)および相補性決定領域(CDR1-3)をChothiaのナンバリングスキームにしたがって決定した(
図1)。
【0056】
【0057】
【0058】
c19重鎖可変領域の遺伝子配列(配列番号79)
GAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTAGTGCAGCCTGGAAGGTCCCTGAATCTCTCCTGTGCAGCCTCAGGATTCAGTTTCAGTAACTATTACATGGCCTGGGTCCGCCAGGCTCCAACGAAGGGTCTGGAGTGGGTCGCATCCATTAGTCCTAGTGGTGGTAGTACTTACTATCCAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACTATCTCCAGAGATGATGCAAAAAGCACCCAATACCTGCAAATGGACAGTCTGAGGCCTGAGGACACGGCCACTTATTACTGTGCTTCAGTAGCTTCAGTGGTGACTTACTACTGGTACTTTGACTTCTGGGGCCCAGGAACCATGGTCACCGTGTCCTCA
c19軽鎖可変領域の遺伝子配列(配列番号80)
GACGTCCAGTTGACCCAGTCTCCTTCATTCCTGTCTGCATCTGTGGGAGACAGAGTCACTATCAACTGCAAAGCAAGTCAGAATATTAACAAGTACTTAGACTGGTATCAGCAAAAGCTTGGTGAAGCTCCCAAACTCCTGATGTATAATACAAACAGTTTGTATCCAGGAATCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGTACTGATTTCACACTTACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATGTTGCCACATATTTCTGCCTTCAGCATAACAGTGGGTGGGCGTTCGGTGGAGGCTCCAGGCAGGAACTGAAACGTAAT
【0059】
c33重鎖可変領域の遺伝子配列(配列番号81)
GAGGTGCAGCTAAAAGAGTCAGGACCTGGTCTGGTGCAGCCCTCACAGACCCTGTCTCTCACCTGCACTGTCTCTGGGTTCTCACTAACCAGCTATCATGTAAGCTGGGTTCGCCAGCCTCCTGGAAAGAGTCTGGTGTGGGTGGGAACAATATGGGCTGGTGGAGGTACAAGTTATAATTCGGCTGTACAATCCCGACTGAGCATCAGCCGGGACACCTCCAAGAGCCAAGTTTTCTTAAAAGTGAACAGTCTGCAACCTGAAGACACAGGCACTTACTACTGTGCCAGACTTTATATAGGTACAATTGGGGTATTTGATCACTGGGGCCAAGGAGCCATGGTCACCGTCTCCTCA
c33軽鎖可変領域の遺伝子配列(配列番号82)
GACGTTGTGCTGACTCAGTCTCCAACCACCCTGTCTGTGACTCCAGGAGAGACAGTCAGTCTCTCCTGCAGGGCTAGCCATAGTATTGGCACAAATCTACACTGGTATCAGCAAAAAACAAATGAGTCTCCAAGGGTTCTCATCAAGTATGCTTCCCAGTCCATCTCTGGGATCCCCTCCAGGTTCAGTGCCAGTGGATCAGGGACAGATTTTACTCTCAACATCAACAATGTGGAGTTTGATGATGTCTCAAGTTATTTTTGTCTACAGACTCAAAGCTGGCCCCTCACGTTCGGTTCTGGGACCAAACTGGAGATCAAACGGGCT
【0060】
c19重鎖可変領域 (122アミノ酸)(配列番号7)
EVQLVESGGGLVQPGRSLNLSCAASGFSFSNYYMAWVRQAPTKGLEWVASISPSGGSTYYPDSVKGRFTISRDDAKSTQYLQMDSLRPEDTATYYCASVASVVTYYWYFDFWGPGTMVTVSS
c19重鎖可変領域CDR1(配列番号1)
GFSFSNY
c19重鎖可変領域CDR2(配列番号2)
SPSGGS
c19重鎖可変領域CDR3(配列番号3)
VASVVTYYWYFDF
c19軽鎖可変領域 (108アミノ酸)(配列番号8)
DVQLTQSPSFLSASVGDRVTINCKASQNINKYLDWYQQKLGEAPKLLMYNTNSLYPGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYFCLQHNSGWAFGGGSRQELKRN
c19軽鎖可変領域CDR1(配列番号4)
KASQNINKYLD
c19軽鎖可変領域CDR2(配列番号5)
NTNSLYP
c19軽鎖可変領域CDR3(配列番号6)
LQHNSGWA
【0061】
c33重鎖可変領域 (119アミノ酸)(配列番号15)
EVQLKESGPGLVQPSQTLSLTCTVSGFSLTSYHVSWVRQPPGKSLVWVGTIWAGGGTSYNSAVQSRLSISRDTSKSQVFLKVNSLQPEDTGTYYCARLYIGTIGVFDHWGQGAMVTVSS
c33重鎖可変領域CDR1(配列番号9)
GFSLTSY
c33重鎖可変領域CDR2(配列番号10)
WAGGG
c33重鎖可変領域CDR3(配列番号11)
LYIGTIGVFDH
c33軽鎖可変領域 (109アミノ酸)(配列番号16)
DVVLTQSPTTLSVTPGETVSLSCRASHSIGTNLHWYQQKTNESPRVLIKYASQSISGIPSRFSASGSGTDFTLNINNVEFDDVSSYFCLQTQSWPLTFGSGTKLEIKRA
c33軽鎖可変領域CDR1(配列番号12)
RASHSIGTNLH
c33軽鎖可変領域CDR2(配列番号13)
YASQSIS
c33軽鎖可変領域CDR3(配列番号14)
LQTQSWPLT
【0062】
実施例2:モノクローナル抗体の結合分子の決定
(1)モノクローナル抗体c33の結合分子の同定
ATL細胞株TL-OmIの細胞溶解液(20mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl、10%グリセロール、1%Triton X-100、cOmplete protease inhibitor cocktail(Roche))と、c33抗体、またはアイソタイプコントロールIgG2bを1時間混合後、Protein A/G PLUS-Agarose(Santa Cruz Biotechnology)を加えてさらに1時間撹拌し、免疫沈降を行った。沈降物を1Xドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド(SDS)ローディングバッファー(50mM Tris(pH6.8)、10%グリセロール、1%SDS、および0.05%ブロモフェノールブルー、1%β-メルカプトエタノール)で溶解し、95℃で5分加熱後、SDS-PAGEで分離し、CBB(WAKO)で染色後、c33抗体による免疫沈降に特異的なバンドを切り出し、Sequa-brene 10μg/u溶液に短時間浸漬・乾燥後、サンプルの2/3程度を2片に切断し、N末端解析に用いた。装置用カラムは、Wakosil PTH-GR(S-PSQ)(WAKO)、シーケンサ装置はPPSQ-53A(Shimadzu)を用いた。その結果、ヒト白血球抗原(HLA)-DR β鎖を同定した。
【0063】
(2)HLA-DR β鎖の遺伝子クローニング
ATL細胞株TL-OmIからRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてmRNAを抽出し、BcaBESTTM RNA PCR Kit(TAKARA)を用いてcDNAを合成後、PCR法によりHLA-DRβ鎖特異的なプライマー(Forwardプライマー:atggtgtgtctgaagctccctg(配列番号83)およびReverseプライマー:tcagctcaggaatcctgttg(配列番号84))、および2.5mM dNTP(TAKARA)、TAKARA Ex Taq(TAKARA)、Ex Taq Buffer(TAKARA)を用いて全長を増幅した。大腸菌での発現のため、シグナルペプチド以外の細胞外領域をForwardプライマー:ccccgaattcgggggacacccgaccacgtttc(配列番号85)およびReverseプライマー:caagctcgagcttgctctgtgcagattcag(配列番号86)を用いて増幅し、塩基配列を確認した。PCRは、(1)95℃ 2分、(2)95℃ 30秒、(3)56℃ 1分、(4)68℃ 1分、(2)-(4)を35回繰り返し、(5)68℃ 4分の条件で行った。増幅したHLA-DRβ鎖細胞外領域の遺伝子配列(594塩基)、そこから推定されるアミノ酸配列(198アミノ酸)は下記する通りである。増幅したHLA-DRβ鎖細胞外領域遺伝子、ならびに大腸菌発現用pET-26bプラスミド(Merck)をEcoRI(TAKARA)、およびXhoI(TAKARA)制限酵素切断部位で消化し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて精製した。DNA Ligation Kit <Mighty Mix>(TAKARA)を用いて増幅したHLA-DRβ鎖細胞外領域遺伝子をpET-26bプラスミドに挿入し、ヒスチジンタグとの融合タンパク質として発現できるようにした。100μg/mLアンピシリン入りLB寒天プレートでコロニー形成後、ピックアップして100μg/mLアンピシリン入りLB液体培地で培養後、プラスミドDNAをQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて抽出した。
【0064】
増幅したHLA-DRβ鎖細胞外領域の遺伝子配列(594塩基)(配列番号87)
GGGGACACCCGACCACGTTTCCTGTGGCAGCCTAAGAGGGAGTGTCATTTCTTCAATGGGACGGAGCGGGTGCGGTTCCTGGACAGATACTTCTATAACCAGGAGGAGTCCGTGCGCTTCGACAGCGACGTGGGGGAGTTCCGGGCGGTGACGGAGCTGGGGCGGCCTGACGCTGAGTACTGGAACAGCCAGAAGGACATCCTGGAGCAGGCGCGGGCCGCGGTGGACACCTACTGCAGACACAACTACGGGGTTGGTGAGAGCTTCACAGTGCAGCGGCGAGTCCAACCTAAGGTGACTGTATATCCTTCAAAGACCCAGCCCCTGCAGCACCACAACCTCCTGGTCTGCTCTGTGAGTGGTTTCTATCCAGGCAGCATTGAAGTCAGGTGGTTCCTGAACGGCCAGGAAGAGAAGGCTGGGATGGTGTCCACAGGCCTGATCCAGAATGGAGACTGGACCTTCCAGACCCTGGTGATGCTGGAAACAGTTCCTCGAAGTGGAGAGGTTTACACCTGCCAAGTGGAGCACCCAAGCGTGACAAGCCCCCTCACAGTGGAATGGAGAGCACGGTCTGAATCTGCACAGAGCAAG
HLA-DRβ鎖細胞外領域の推定アミノ酸配列(198アミノ酸)(配列番号88)
GDTRPRFLWQPKRECHFFNGTERVRFLDRYFYNQEESVRFDSDVGEFRAVTELGRPDAEYWNSQKDILEQARAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
【0065】
(3)HLA-DRβ鎖の組換えタンパク質の発現・精製
HLA-DRβ鎖細胞外領域遺伝子をクローニングしたpET-26bプラスミドで、大腸菌株BL21(DE3)pLysS(Merck)を形質転換した。培養後、1mM IPTGにより遺伝子発現を誘導し、封入体画分にタンパク質が発現していることを確認した。封入体を6Mグアニジン塩酸塩/1M DTTで可溶化後、リフォールディングバッファー(1M L-Arg、Cystamine、Cysteamine、1M Tris-Cl(pH8.0)、0.5M EDTA)で巻き戻し、HiLoad 26/60 Superdex 75カラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーによりリフォールディングしたHLA-DRβ鎖を精製した。精製にはAKTApurifier(GE)を使用した。なお、pET-26bプラスミドの挿入部位のC末端側にはHisタグ配列があるため、HLA-DRβ鎖はHisタグとの融合タンパク質として発現させた。
【0066】
(4)ウェスタンブロット
精製したHLA-DR β鎖を10μg用いて、SDS-PAGE、ならびにウェスタンブロットを行った。c19抗体およびc33抗体1μgを一次抗体、抗ラットIgG-Alexa Fluor 680(Invitrogen)を二次抗体として用いて約25kDaのバンドを検出した。また、抗体Hisタグ抗体1μgを一次抗体、抗マウスIgG-Alexa Fluor 680(Invitrogen)を二次抗体として用いて約25kDaのバンドを検出した。Odyssey CLx Infrared Imaging System(LI-COR Biosciences)により解析した。その結果、HLA-DR β鎖はc19抗体およびc33抗体のいずれでも検出された(
図2)。したがって、c19抗体およびc33抗体がHLA-DR β鎖に特異的に結合することが分かった。
【0067】
(5)フローサイトメーター
ATL細胞株TL-OmI、ST1、KOB、MT-1、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)感染細胞株C5/MJ、HUT-102、SLB-1、MT-2、MT-4、バーキットリンパ腫細胞株BJAB、Daudi、Raji、急性T細胞性白血病細胞株CCRF-CEM、Jurkat、MOLT-4 1x106個から、c19抗体およびc33抗体1μgを一次抗体、抗ラットIgG-PEを二次抗体として用いてHLA-DRβ鎖を検出した。FACSCalibur(BD)により解析した。細胞は、RPMI-1640(WAKO)、10%FBS(BioWest)、ペニシリン(100単位/ml)/ストレプトマイシン(100μg/mL)(WAKO)を用いて、37℃、5%CO2で培養した。また、コントロールとして、市販の抗HLA-DR α鎖抗体L243を用いて同様の実験を行った。その結果、急性T細胞性白血病細胞株以外の全ての細胞株においてc19抗体およびc33抗体が結合したことが示され、HLA-DRβ鎖の発現が確認された。また、L243についても、急性T細胞性白血病細胞株以外の全ての細胞株において結合したことが示され、HLA-DRα鎖の発現が確認された。なお、HTLV-1感染細胞株とは、ATL患者から樹立されたリンパ球細胞株と、正常リンパ球細胞を共培養した結果、正常リンパ球細胞にウイルスが感染してがん化(トランスフォーム)したものである。
【0068】
実施例3:表面プラズモン共鳴解析
BiacoreT200のCM5センサーチップ上のカルボキシメチルデキストランマトリックスを、1:1の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩/N-ヒドロキシスクシンイミドにより活性化させ、フローセル1と3には10mM酢酸ナトリウム(pH5.5)に溶解したウシ血清アルブミン(10μM)を、フローセル2と4には10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)に溶解したHLA-DRβ鎖(50μM)をアミンカップリング法により固定化した。カップリング反応に使用されなかったCM5センサーチップ上のカルボキシ末端は、10mMエタノールアミンでブロッキングした。1×HBS-P+バッファーで希釈したc19モノクローナル抗体(0.3125nM、0.625nM、1.25nM、2.5nM、5nM)、またはc33モノクローナル抗体(5nM、10nM、20nM、40nM、80nM)をそれぞれアナライトとして、フローセルに30μl/分の流速で流すことにより相互作用測定を行った(アナライトの添加時間は120秒、解離時間は600秒)。センサーチップの再生化は、10mM Gly-HCl(pH1.5)を30秒(流速30μl/分)流すことで行った。Kinetics解析の結果、c19モノクローナル抗体とHLA-DRβ鎖の見かけの解離定数は0.33nM、c33モノクローナル抗体とHLA-DRβ鎖の見かけの解離定数は4.50nMであった(
図3)。
【0069】
実施例4:エピトープマッピング
実施例2-(2)と同様の条件で、N末端から順次、7アミノ酸残基、15アミノ酸残基、25アミノ酸残基、34アミノ酸残基、38アミノ酸残基、40アミノ酸残基、48アミノ酸残基、74アミノ酸残基、および107アミノ酸残基を欠損している9つのN末端欠損HLA-DRβ鎖を増幅し、塩基配列を確認した。Forwardプライマーは、各N末端欠損HLA-DRβ鎖に特異的な配列とし、下記の配列(配列番号89~97)を用いた。Reverseプライマーとして、配列番号86(caagctcgagcttgctctgtgcagattcag)の共通配列を用いた。
【0070】
Forwardプライマー
HLA-DRβ鎖(8-198アミノ酸):cagcgaattcgctgtggcagcctaagagggag(配列番号89)
HLA-DRβ鎖(16-198アミノ酸):atgcgaattcgcatttcttcaatgggacgg(配列番号90)
HLA-DRβ鎖(26-198アミノ酸):gaacgaattcgttcctggacagatacttctataac(配列番号91)
HLA-DRβ鎖(35-198アミノ酸):ctccgaattcggaggagtccgtgcgcttcgac(配列番号92)
HLA-DRβ鎖(39-198アミノ酸):gcgcgaattcgcgcttcgacagcgacgtggg(配列番号93)
HLA-DRβ鎖(41-198アミノ酸):gtccgaattcggacagcgacgtgggggagttc(配列番号94)
HLA-DRβ鎖(49-198アミノ酸):cgccgaattcggcggtgacggagctggggc(配列番号95)
HLA-DRβ鎖(75-198アミノ酸):caccgaattcggtggacacctactgcagac(配列番号96)
HLA-DRβ鎖(108-198アミノ酸):gggcgaattcgcccctgcagcaccacaacc(配列番号97)
【0071】
増幅された遺伝子配列から推定されるアミノ酸配列は以下の通りである。
HLA-DRβ鎖(8-198アミノ酸)(配列番号98)
LWQPKRECHFFNGTERVRFLDRYFYNQEESVRFDSDVGEFRAVTELGRPDAEYWNSQKDILEQARAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
HLA-DRβ鎖(16-198アミノ酸)(配列番号99)
HFFNGTERVRFLDRYFYNQEESVRFDSDVGEFRAVTELGRPDAEYWNSQKDILEQARAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
HLA-DRβ鎖(26-198アミノ酸)(配列番号100)
FLDRYFYNQEESVRFDSDVGEFRAVTELGRPDAEYWNSQKDILEQARAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
HLA-DRβ鎖(35-198アミノ酸)(配列番号101)
EESVRFDSDVGEFRAVTELGRPDAEYWNSQKDILEQARAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
HLA-DRβ鎖(39-198アミノ酸)(配列番号102)
RFDSDVGEFRAVTELGRPDAEYWNSQKDILEQARAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
HLA-DRβ鎖(41-198アミノ酸)(配列番号103)
DSDVGEFRAVTELGRPDAEYWNSQKDILEQARAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
HLA-DRβ鎖(49-198アミノ酸)(配列番号104)
AVTELGRPDAEYWNSQKDILEQARAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
HLA-DRβ鎖(75-198アミノ酸)(配列番号105)
VDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
HLA-DRβ鎖(108-198アミノ酸)(配列番号106)
PLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSK
【0072】
実施例2-(3)と同様の条件で、各N末端欠損HLA-DRβ鎖組換えタンパク質の発現・精製を行い、実施例2-(3)で得られた全長HLA-DRβ鎖組換えタンパク質と共に、実施例2-(4)と同様の条件で、抗Hisタグ抗体1μgを一次抗体、抗マウスIgG-Alexa Fluor 680(Invitrogen)を二次抗体として用いて全ての組換えタンパク質発現を確認した(
図4)。さらに、c19モノクローナル抗体とc33モノクローナル抗体を用いてウェスタンブロットを行った結果、c19モノクローナル抗体に対するHLA-DRβ鎖の結合部位は、N末端はアミノ酸番号35付近、C末端はアミノ酸番号40付近にあり、またc33モノクローナル抗体に対するHLA-DRβ鎖の結合部位は、N末端はアミノ酸番号8付近、C末端はアミノ酸番号15付近にあることが分かった(
図4)。以下に推定されるそれぞれのモノクローナル抗体の結合部位(エピトープ)のアミノ酸配列を示す。
c19モノクローナル抗体が結合するアミノ酸配列:EESVRF(配列番号17)
c33モノクローナル抗体が結合するアミノ酸配列:LWQPKREC(配列番号18)
【0073】
なお、上記エピトープ配列は、HLA-DR β鎖のアミノ酸配列(配列番号19)においてそれぞれ、アミノ酸番号64~69(c19モノクローナル抗体のエピトープ)およびアミノ酸番号37~44(c33モノクローナル抗体のエピトープ)に相当する。
【0074】
HLA-DR β鎖の全長アミノ酸配列(266アミノ酸)(配列番号19)
MVCLKLPGGSCMTALTVTLMVLSSPLALSGDTRPRFLWQPKRECHFFNGTERVRFLDRYFYNQEESVRFDSDVGEFRAVTELGRPDAEYWNSQKDILEQARAAVDTYCRHNYGVGESFTVQRRVQPKVTVYPSKTQPLQHHNLLVCSVSGFYPGSIEVRWFLNGQEEKAGMVSTGLIQNGDWTFQTLVMLETVPRSGEVYTCQVEHPSVTSPLTVEWRARSESAQSKMLSGVGGFVLGLLFLGAGLFIYFRNQKGHSGLQPTGFLS
シグナルペプチド:アミノ酸番号1~29の29アミノ酸
細胞外領域:アミノ酸番号30~227の198アミノ酸
細胞膜領域+細胞内領域:アミノ酸番号228~266の39アミノ酸
【0075】
実施例5:細胞増殖抑制試験(in vitro)および細胞凝集試験
(1)細胞増殖抑制試験
ATL細胞株TL-OmI、ST1、KOB、T細胞性急性白血病細胞株CCRF-CEM 2x10
4個を96穴プレートに播種し、c19抗体およびc33抗体を異なる希釈倍率(c19抗体濃度0.128、1.28、12.8、128μg/ml、または3.125、6.25、12.5、25μg/ml;c33抗体濃度0.298、2.98、29.8、298μg/ml)で添加し、37℃、5%CO
2で培養した。添加72時間後、Cell Proliferation Reagent WST-1試薬(Roshe)を添加し、PerkinElmer EnSpireを用いて450nmで吸光度を測定した。結果を
図5-1および
図5-2に示す。抗体無添加の場合の細胞増殖率を100%とし、各濃度の抗体添加時の相対値(%)を示した。c19抗体の添加により、ATL細胞株TL-OmI、ST1、KOBの増殖が濃度依存的に抑制された(
図5-1)が、急性T細胞性白血病細胞株CCRF-CEMに対しては濃度依存的な増殖抑制効果を示さなかった。一方、c33抗体の添加は、いずれの細胞株に対しても増殖抑制効果を示さなかった(
図5-2)。
【0076】
(2)細胞凝集試験
ATL細胞株TL-OmI、ST1、KOB、MT-1、急性T細胞性白血病細胞株CCRF-CEM、MOLT-4 2x10
4個を96穴プレートに播種し、c19抗体3.125μg/mL(low conc.)または12.5μg/mL(high conc.)を添加し、37℃、5%CO
2で培養した。24時間後、細胞凝集を確認した。対照として、抗体と同容量のPBSまたはコントロールIgGを添加して同様に試験した。その結果、ATL細胞にc19抗体を添加した場合、細胞凝集が観察されたが、急性T細胞性白血病細胞では細胞凝集は見られなかった(
図6)。また、in vitroの細胞抑制試験の結果と共に考察すると、おそらく細胞表面上のHLA-DR β鎖の発現量(または発現数)と細胞凝集の度合いに相関性があり、凝集の度合いが多いほど抗体が抗原により多く結合していると考えられる。
【0077】
実施例6:マウス腫瘍移植モデルにおける腫瘍成長抑制効果(in vivo)
ATL細胞株TL-OmI 1x10
7個をNOD/Shi-scid,IL-2Rγ
null(NOG)マウス(メス、6週齢)(実験動物中央研究所)の皮下に接種し、腫瘍体積が約200mm
3に達した後、精製したc19モノクローナル抗体を0.5mg/kgまたは5mg/kgで4回(ATL細胞接種後10日目、13日目、16日目、19日目)尾静脈接種した。抗体のアイソタイプコントロールとして、ラットIgG2bを同容量で使用した。投与開始後から2週間、経時的に腫瘍径および体重を測定した。その結果、コントロールと比べて、c19抗体を投与した場合に腫瘍体積の増加が抑えられた(
図7)。なお、腫瘍体積は、腫瘍の長径と短径を測定し、長径×短径×短径/2から算出した。コントロール群と比較して、c19投与群で体重変化に大きな違いは観察されなかった。
【0078】
実施例7:補体依存性細胞傷害活性
ATL細胞株TL-OmIをアジュバント(Difco Laboratories)とともにWistarラット(メス、7週齢)(日本SLC)の皮下に免疫し、3週間後に血液を採取し、血漿成分を分離した。この血漿をTL-OmIに添加することで細胞死(細胞溶解)が観察されたことから、補体依存性細胞傷害活性が確認された。また、実施例1で得られた精製したc19モノクローナル抗体をTL-OmIに添加し、非免疫ラット由来の血漿成分を添加することでも細胞死が観察されたことから、c19モノクローナル抗体の補体依存性細胞傷害活性が確認された。
本発明の新規な抗HLA-DR β鎖抗体は、ATLを含む血液がんの治療に用いることができ、がん化細胞、特にATL細胞の増殖を抑制することができる。また、本発明の新規な抗HLA-DR β鎖抗体は、ATLを含む血液がんの検出ツールとして、または抗がん剤等の他の薬剤との抗原薬物複合体(ADC)として使用することもできる。