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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062979
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】粒子捕捉デバイスおよび粒子捕捉方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001853
(22)【出願日】2024-01-10
(62)【分割の表示】P 2020553960の分割
【原出願日】2019-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2018207706
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大坂 享史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞等の粒子を捕捉して網羅的に解析するための、粒子捕捉デバイス、および粒子捕捉方法を提供する。
【解決手段】基板2と、粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜3と、前記粒子捕捉膜が前記基板と平行をなし、かつ、前記粒子捕捉膜と前記基板との間に空間が形成されるように、前記粒子捕捉膜に張力を付与した状態で前記粒子捕捉膜を支持する支持体4と、を含み、前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記支持体を拡張させる拡張部材を更に備える粒子捕捉デバイス1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜と、
前記粒子捕捉膜が前記基板と平行をなし、かつ、前記粒子捕捉膜と前記基板との間に空間が形成されるように、前記粒子捕捉膜に張力を付与した状態で前記粒子捕捉膜を支持する支持体と、を含み、
前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記支持体を拡張させる拡張部材を更に備える
粒子捕捉デバイス。
【請求項2】
基板と、
粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜と、
前記粒子捕捉膜が前記基板と平行をなし、かつ、前記粒子捕捉膜と前記基板との間に空間が形成されるように、前記粒子捕捉膜に張力を付与した状態で前記粒子捕捉膜を支持する支持体と、を含み、
前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記基板に対して前記支持体を傾斜させた状態で前記支持体を支持する傾斜支持部材を更に備える
粒子捕捉デバイス。
【請求項3】
基板と、
粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜と、
前記粒子捕捉膜が前記基板と平行をなし、かつ、前記粒子捕捉膜と前記基板との間に空間が形成されるように、前記粒子捕捉膜に張力を付与した状態で前記粒子捕捉膜を支持する支持体と、を含み、
前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記支持体に結合され、液体を吸収することにより体積を増す液体吸収性膨潤部材を更に備える
粒子捕捉デバイス。
【請求項4】
前記粒子捕捉膜は、
1個の前記粒子を捕捉可能な大きさを有する捕捉部と、
1個の前記粒子が通過できない大きさを有し、かつ、前記捕捉部と前記空間とを連通する連通孔と、を有する
請求項1から3のいずれか一項に記載の粒子捕捉デバイス。
【請求項5】
前記粒子捕捉膜は、
前記連通孔を有する第一層と、
前記連通孔に連なり、かつ、前記捕捉部の外形と同じ大きさの貫通孔を有する第二層と、を備える
請求項4に記載の粒子捕捉デバイス。
【請求項6】
前記空間は液体で満たされている
請求項1から5のいずれか一項に記載の粒子捕捉デバイス。
【請求項7】
基板と、
粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜と、
前記粒子捕捉膜を支持する支持体と、を用意し、
前記粒子捕捉膜が前記基板と平行をなし、かつ、前記粒子捕捉膜と前記基板との間に空間が形成されるように、前記粒子捕捉膜に張力を付与し、
前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記支持体を拡張させる拡張部材を更に備える
粒子捕捉方法。
【請求項8】
基板と、
粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜と、
前記粒子捕捉膜を支持する支持体と、を用意し、
前記粒子捕捉膜が前記基板と平行をなし、かつ、前記粒子捕捉膜と前記基板との間に空間が形成されるように、前記粒子捕捉膜に張力を付与し、
前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記基板に対して前記支持体を傾斜させた状態で前記支持体を支持する傾斜支持部材を更に備える
粒子捕捉方法。
【請求項9】
基板と、
粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜と、
前記粒子捕捉膜を支持する支持体と、を用意し、
前記粒子捕捉膜が前記基板と平行をなし、かつ、前記粒子捕捉膜と前記基板との間に空間が形成されるように、前記粒子捕捉膜に張力を付与し、
前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記支持体に結合され、液体を吸収することにより体積を増す液体吸収性膨潤部材を更に備える
粒子捕捉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子捕捉デバイスおよび粒子捕捉方法に関する。
本願は、2018年11月2日に日本に出願された、特願2018-207706号に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
細胞等の粒子を捕捉して網羅的に解析する需要がある。例えば、特許文献1には、細胞を捕捉可能なフィルムと、フィルムを下方から支持する支持構造と、を備えるデバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9638636号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フィルムの自重、素材の性質などによって、フィルムにたわみが生じることがある。フィルムにたわみが生じると、捕捉した粒子を顕微鏡下で観察する場合、たわみの影響により焦点がずれてしまう。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、捕捉した粒子を観察する際に焦点がずれることを抑制することが可能な粒子捕捉デバイスおよび粒子捕捉方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る粒子捕捉デバイスは、基板と、粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜と、前記粒子捕捉膜が前記基板と平行をなし、かつ、前記粒子捕捉膜と前記基板との間に空間が形成されるように、前記粒子捕捉膜に張力を付与した状態で前記粒子捕捉膜を支持する支持体と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、粒子捕捉膜が基板と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜と基板との間に空間が形成されるように、粒子捕捉膜に張力が付与されるため、粒子捕捉膜がたわむことを抑制することができる。したがって、捕捉した粒子を観察する際に焦点がずれることを抑制することができる。加えて、たわみ防止のための支持構造を有しない場合、粒子を捕捉するための有効エリアを可及的に大きくすることができる。加えて、支持構造の上に粒子が乗ってしまうことを抑制することができる。加えて、画像解析時に粒子が誤認識される可能性を低減することができる。
【0007】
上記の粒子捕捉デバイスにおいて、前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記基板と前記支持体とを嵌合させる嵌合構造を更に備えてもよい。
この構成によれば、嵌合構造を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜がたわむことを抑制することができる。
【0008】
上記の粒子捕捉デバイスにおいて、前記嵌合構造は、前記基板に設けられた凸部と、前記支持体に設けられ、前記凸部に嵌合する凹部と、を備えてもよい。
この構成によれば、凸部および凹部を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜がたわむことを抑制することができる。加えて、嵌合構造が、支持体に設けられた凸部と、基板に設けられた凹部とを備える場合と比較して、粒子捕捉デバイスを作製しやすい。
【0009】
上記の粒子捕捉デバイスにおいて、前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記支持体を拡張させる拡張部材を更に備えてもよい。
この構成によれば、拡張部材を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜がたわむことを抑制することができる。
【0010】
上記の粒子捕捉デバイスにおいて、前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記粒子捕捉膜を拡張させる膜拡張部材を更に備えてもよい。
この構成によれば、膜拡張部材を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜がたわむことを抑制することができる。
【0011】
上記の粒子捕捉デバイスにおいて、前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記基板に対して前記支持体を傾斜させた状態で前記支持体を支持する傾斜支持部材を更に備えてもよい。
この構成によれば、傾斜支持部材を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜がたわむことを抑制することができる。
【0012】
上記の粒子捕捉デバイスにおいて、前記粒子捕捉膜に前記張力が付与されるように、前記支持体に結合され、液体を吸収することにより体積を増す液体吸収性膨潤部材を更に備えてもよい。
この構成によれば、液体吸収性膨潤部材を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜がたわむことを抑制することができる。
【0013】
上記の粒子捕捉デバイスにおいて、前記粒子捕捉膜は、1個の前記粒子を捕捉可能な大きさを有する捕捉部と、1個の前記粒子が通過できない大きさを有し、かつ、前記捕捉部と前記空間とを連通する連通孔と、を有してもよい。
この構成によれば、捕捉部により1個の粒子を捕捉しつつ、連通孔を通じて粒子の分散液を流通させることができる。
【0014】
上記の粒子捕捉デバイスにおいて、前記粒子捕捉膜は、前記連通孔を有する第一層と、前記連通孔に連なり、かつ、前記捕捉部の外形と同じ大きさの貫通孔を有する第二層と、を備えてもよい。単一の層に捕捉部および連通孔を設ける場合と比較して、粒子捕捉デバイスを作製しやすい。
【0015】
上記の粒子捕捉デバイスにおいて、前記空間は液体で満たされていてもよい。
この構成によれば、粒子捕捉膜が液体に浸る場合であっても、粒子捕捉膜に前記張力が付与されるため、粒子捕捉膜の膨潤、液体の重さ、表面張力の影響などによって、粒子捕捉膜がたわむことを抑制することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る粒子捕捉方法は、基板と、粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜と、前記粒子捕捉膜を支持する支持体と、を用意し、前記粒子捕捉膜が前記基板と平行をなし、かつ、前記粒子捕捉膜と前記基板との間に空間が形成されるように、前記粒子捕捉膜に張力を付与することを特徴とする。
この方法によれば、粒子捕捉膜が基板と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜と基板との間に空間が形成されるように、粒子捕捉膜に張力が付与されるため、粒子捕捉膜がたわむことを抑制することができる。したがって、捕捉した粒子を観察する際に焦点がずれることを抑制することができる。加えて、たわみ防止のための支持構造を有しない場合、粒子を捕捉するための有効エリアを可及的に大きくすることができる。加えて、支持構造の上に粒子が乗ってしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る粒子捕捉デバイスの斜視図である。
図2】実施形態に係る粒子捕捉デバイスの上面図である。
図3図2のIII-III断面を含む図である。
図4図2のIV-IV断面を含む図である。
図5】粒子捕捉デバイスの一例を示す斜視図である。
図6A】実施形態に係る粒子捕捉膜の作製方法における、下地膜の形成工程の説明図である。
図6B】実施形態に係る粒子捕捉膜の作製方法における、第一の硬化性樹脂膜の形成工程の説明図である。
図6C】実施形態に係る粒子捕捉膜の作製方法における、第一層の形成工程の説明図である。
図6D】実施形態に係る粒子捕捉膜の作製方法における、第二の硬化性樹脂膜の形成工程の説明図である。
図6E】実施形態に係る粒子捕捉膜の作製方法における、第二層の形成工程の説明図である。
図6F】実施形態に係る粒子捕捉膜の作製方法における、粒子捕捉膜の説明図である。
図7A】実施形態に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、張力付与工程の前の粒子捕捉膜の説明図である。
図7B】実施形態に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、基板の凸部と支持体の凹部との嵌合工程の説明図である。
図8】実施形態の第一変形例に係る粒子捕捉デバイスの断面図である。
図9A】実施形態の第一変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、張力付与工程の前の粒子捕捉膜の説明図である。
図9B】実施形態の第一変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、拡張部材と支持体との接合工程の説明図である。
図10】実施形態の第二変形例に係る粒子捕捉デバイスの断面図である。
図11A】実施形態の第二変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、張力付与工程の前の粒子捕捉膜の説明図である。
図11B】実施形態の第二変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、膜拡張部材と支持体との接合工程の説明図である。
図12】実施形態の第三変形例に係る粒子捕捉デバイスの断面図である。
図13A】実施形態の第三変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、張力付与工程の前の粒子捕捉膜の説明図である。
図13B】実施形態の第三変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、傾斜支持部材と支持体との接合工程の説明図である。
図14】実施形態の第四変形例に係る粒子捕捉デバイスの断面図である。
図15A】実施形態の第四変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、張力付与工程の前の粒子捕捉膜の説明図である。
図15B】実施形態の第四変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、液体吸収性膨潤部材の膨出工程の説明図である。
図16】実施形態の第五変形例に係る粒子捕捉デバイスの断面図である。
図17A】実施形態の第五変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、張力付与工程の前の粒子捕捉膜の説明図である。
図17B】実施形態の第五変形例に係る粒子捕捉デバイスの製造方法における、凸部の湾曲凸部と支持体の湾曲凹部との嵌合工程の説明図である。
図18A】実施例の粒子捕捉デバイスの顕微鏡観察を行った結果を示す、粒子捕捉デバイスの中央部の写真である。
図18B】実施例の粒子捕捉デバイスの顕微鏡観察を行った結果を示す、粒子捕捉デバイスの縁部の写真である。
図19A】比較例の粒子捕捉デバイスの顕微鏡観察を行った結果を示す、粒子捕捉デバイスの中央部の写真である。
図19B】比較例の粒子捕捉デバイスの顕微鏡観察を行った結果を示す、粒子捕捉デバイスの縁部の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX方向、水平面内においてX方向と直交する方向をY方向、X方向及びY方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ方向とする。
【0019】
<粒子捕捉デバイス1>
図1は、実施形態に係る粒子捕捉デバイス1の斜視図である。
図1に示すように、粒子捕捉デバイス1は、基板2、粒子捕捉膜3、支持体4、嵌合構造5(図3参照)および吸引部6を備える。粒子捕捉デバイス1は、基板2と粒子捕捉膜3との間に、粒子の分散媒の流路10(空間)を形成する(図3参照)。例えば、粒子捕捉デバイス1は、水平面に平行な載置面に設置される。図中符号7は支持体4を保持する枠体、符号8は分散媒などの液体が排出される廃液部をそれぞれ示す。
【0020】
<粒子>
例えば、捕捉対象の粒子としては、細胞、細胞塊、樹脂粒子、金属粒子、ガラス粒子、セラミック粒子等が挙げられる。なお、捕捉対象の粒子はこれらに限定されない。
例えば、粒子の直径は、約1~500μmであってもよく、約1~200μmであってもよく、約1~100μmであってもよく、約1~50μmであってもよい。粒子の直径は、粒子の投影面積と同じ面積の円の直径を意味する。なお、粒子の直径は特に限定されない。
【0021】
<分散媒>
粒子を捕捉するにあたり、粒子は分散媒に懸濁された状態で粒子捕捉デバイス1に供給される。図3中矢印W1は、分散媒に懸濁された状態の粒子の供給方向を示す。
例えば、分散媒としては、水、緩衝液、等張液、培地等が挙げられる。なお、分散媒は特に限定されず、目的に応じて適宜用いることができる。
【0022】
<材質>
粒子捕捉デバイス1の材質は、粒子の観察を容易とする観点から、透明性のある材質であることが好ましい。更に、捕捉した粒子を、蛍光観察を指標として観察する場合には、自家蛍光の少ない材質であることが好ましい。例えば、粒子捕捉デバイス1の材質は、透明性があり、自家蛍光が少ないものを用いることができる。
粒子として細胞を捕捉する場合には、粒子捕捉デバイス1の材質は、細胞毒性を有さず、細胞の接着性が低いものであることが好ましい。
なお、粒子捕捉デバイス1の材質は特に限定されず、種々の材質を採用することができる。
【0023】
<基板2>
図2に示すように、基板2は、長方形板状を有する。例えば、基板2の長辺の長さは50mm~100mmである。例えば、基板2の短辺の長さは10mm~40mmである。
例えば、基板2の材質は、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、シクロオレフィンポリマー(COP)、エポキシ等の一般的な樹脂を用いることができる。
【0024】
<粒子捕捉膜3>
粒子捕捉膜3は、粒子を捕捉可能なフィルムである。図5に示すように、粒子捕捉膜3は、1個の粒子を捕捉可能な大きさを有する凹部15(以下「捕捉部15」という。)を備える。粒子捕捉膜3は、第一層11と第二層12とを備える。図3に示すように、第一層11は、捕捉部15と流路10とを連通する連通孔13を有する。連通孔13は、1個の粒子が通過できない大きさを有する。第二層12は、連通孔13に連なる貫通孔14を有する。貫通孔14は、捕捉部15の外形と同じ大きさを有する。捕捉部15は、第一層11の上面(第二層12と対向する面)と、第二層12の貫通孔14とによって形成される。図4においては、第一層11および第二層12の積層構造、捕捉部15、連通孔13などの図示を省略している。
【0025】
図5中符号Bは1個の粒子を示す。図5では、捕捉部15の形状は、円筒形を有する。
捕捉部15の形状は、1個の粒子を捕捉可能な形状であれば特に限定されない。例えば、捕捉部15の形状は、複数の面により構成される多面体(例えば、直方体、六角柱、八角柱等)であってもよく、逆円錐台形であってもよく、逆角錐台形(逆三角錐台形、逆四角錐台形、逆五角錐台形、逆六角錐台形、七角以上の逆多角錐台形)等であってもよく、これらの形状の二つ以上を組み合わせた形状であってもよい。例えば、捕捉部15の形状は、一部が円筒形であり、残りの部分が逆円錐台形であってもよい。例えば、捕捉部15の形状が円筒形、直方体である場合、捕捉部15の底部は通常、平坦であるが、曲面(凸面や凹面)であってもよい。
【0026】
捕捉部15の寸法は、捕捉部15に捕捉しようとする粒子の直径と捕捉部15の寸法の好適な比を考慮して適宜決定することができる。捕捉部15は、パターニングされ、形態、その密度等が制御されていることが好ましい。捕捉部15の形状や寸法は、捕捉部15に捕捉されるべき粒子の種類(粒子の形状や寸法等)を考慮して、1つの捕捉部15に1個の粒子が捕捉されるように、適宜決定することができる。
【0027】
1つの捕捉部15に、1個の粒子が捕捉されるようにするためには、捕捉部15の寸法は以下の通りであることが好ましい。捕捉部15の平面形状に内接する最大円の直径は、捕捉部15に捕捉しようとする粒子の直径の0.5~2倍の範囲であることが好ましく、0.8~1.9倍の範囲であることがより好ましく、0.8~1.8倍の範囲であることが更に好ましい。捕捉部15の深さは、捕捉部15に捕捉しようとする粒子の直径の0.5~4倍の範囲であることが好ましく、0.8~1.9倍の範囲であることがより好ましく、0.8~1.8倍の範囲であることが更に好ましい。
【0028】
例えば、捕捉しようとする粒子が直径約1~50μmの略球形である場合、粒子捕捉膜3の厚さ、捕捉部15の数、捕捉部15の寸法は以下の通りであることが好ましい。
粒子捕捉膜3の厚さは、1~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。
粒子捕捉膜3が有する捕捉部15の数は、1cmあたり、2,000~1,000,000個の範囲であることが好ましい。
【0029】
例えば、捕捉部15が円筒形の場合、捕捉部15の寸法は、直径1~100μmが好ましく、直径2~50μmがより好ましく、直径3~25μmが更に好ましい。捕捉部15の深さは、1~100μmが好ましく、2~70μmがより好ましく、3~50μmが更に好ましく、4~30μmが特に好ましい。捕捉部15の深さが1μm以上の場合、粒子を捕捉しやすく、実用化の観点から好ましい。捕捉部15の深さが100μm以下の場合、複数の粒子が捕捉されるおそれが低い観点から好ましい。
【0030】
連通孔13の寸法は、捕捉部15に捕捉しようとする粒子の直径と、捕捉部15の寸法と、連通孔13を移動させるべき粒子の分散媒の特性等を考慮して適宜決定することができる。連通孔13は、パターニングされ、形態、細孔の径、その密度等が制御されていることが好ましい。連通孔13が制御されている場合、粒子の分散媒の透過量の均等性を確保しやすいため好ましい。連通孔13は、パターニングにより作製されたものに限定されない。例えば、連通孔13は、多孔質膜等の多孔質材料を使用して形成したものであってもよい。
連通孔13の数、位置、形状、大きさ等は、粒子を通過せずに捕捉(捕捉部15の内部に格納)することができ、分散媒が移動可能な大きさであれば、特に限定されない。
【0031】
例えば、捕捉部15が円筒状である場合には、捕捉部15の底部に、捕捉部15の直径よりも小さい直径の円形状の連通孔13を複数個設けてもよい。連通孔13の形状は円形状に限定されない。例えば、連通孔13の形状は矩形状であってもよい。
例えば、捕捉しようとする粒子が直径約1~50μmの略球形である場合であって、連通孔13が円形状である場合、連通孔13の直径は、10nm~20μmが好ましく、50nm~15μmがより好ましく、100nm~10μmが更に好ましい。連通孔13が矩形状の場合、一辺は10nm~20μmが好ましく、50nm~15μmがより好ましく、100nm~10μmが更に好ましい。
【0032】
粒子捕捉膜3の材質は、割れ防止の観点から柔軟性を有するものを用いることが好ましい。例えば、粒子捕捉膜3の材質は、合成樹脂などのポリマーである。粒子捕捉膜3は捕捉部15および連通孔13などの微細構造を有するため、粒子捕捉膜3の材質が窒化シリコン(SiN)である場合、薄膜化したときに割れやすい。これに対し、粒子捕捉膜3の材質がポリマーであれば、薄膜化したときに割れにくい。
【0033】
<流路10>
図3に示すように、流路10は、粒子捕捉膜3の連通孔13を流入口とし、吸引部6を流出口とする。吸引部6から分散媒を吸引することにより、分散媒は、流路10を図3中矢印W1方向に向けて流れる。
【0034】
例えば、捕捉しようとする粒子が直径約1~50μmの略球形である場合、基板2と粒子捕捉膜3との間の距離は、100μm以上であってもよく、150μm以上であってもよく、200μm以上であってもよく、250μm以上であってもよく、300μm以上であってもよく、350μm以上であってもよい。基板2と粒子捕捉膜3との間の距離の上限は、粒子捕捉デバイス1の性能としては限定されない。粒子捕捉デバイス1の実用性等(分散媒の使用量、観察する顕微鏡のサイズ等)を考慮すると、基板2と粒子捕捉膜3との間の距離は、5mm以下が好ましい。
【0035】
<支持体4>
支持体4は、粒子捕捉膜3が基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、粒子捕捉膜3に張力を付した状態で粒子捕捉膜3を支持する。粒子捕捉膜3が基板2と平行をなすことには、粒子捕捉デバイス1の製造バラツキおよび寸法公差等を考慮して、粒子捕捉膜3が基板2と実質的に平行をなすことが含まれる。
【0036】
支持体4は、矩形枠状を有する。なお、支持体4の形状は、粒子捕捉膜3を支持する形状であれば、特に限定されない。
例えば、支持体4の材質は、基板2と同様の樹脂を用いることができる。粒子捕捉膜3と基板2との間の空間10は、粒子の分散媒が流通する流路10となる。空間10は、分散媒(液体)で満たされている。
【0037】
<嵌合構造5>
嵌合構造5は、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、基板2と支持体4とを嵌合させる。嵌合構造5は、互いに嵌合する凸部21および凹部22を備える。嵌合構造5は、基板2と支持体4との間に設けられる。
【0038】
凸部21は、基板2に設けられる。凸部21は、基板2の上面から上方に突出する。例えば、凸部21は、基板2と同一の部材で一体に形成される。
凹部22は、支持体4の下部内側に設けられる。例えば、支持体4の凹部22に、粒子捕捉膜3と共に凸部21を圧入する。これにより、粒子捕捉膜3に前記張力を付した状態で粒子捕捉膜3を支持することができる。
【0039】
<粒子捕捉デバイス1の製造方法>
粒子捕捉デバイス1の製造方法は、基板2、粒子捕捉膜3および支持体4を用意する予備工程と、粒子捕捉膜3に張力を付与する張力付与工程と、を含む。
【0040】
粒子捕捉デバイス1の材質は、粒子1個を捕捉し得る大きさの捕捉部15、及び分散媒が移動可能な大きさの連通孔13を形成する観点から、微細加工が容易である硬化性樹脂組成物(以下、「感光性樹脂組成物」ともいう。)を用いて重合したものであることが好ましい。
【0041】
硬化性樹脂組成物としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより架橋して硬化する性質を有するものであり、ネガタイプのフォトレジスト、ネガタイプのドライフィルムレジスト、微細な構造を有する微小樹脂成形等に使用されるものが好ましい。以下、硬化性樹脂組成物をフォトリソグラフィ法によって所望の形状に硬化させた硬化物のことを樹脂パターンともいう。
【0042】
硬化性樹脂組成物を、微小樹脂成形等の用途として使用する場合、まず、樹脂パターンを形成させる基材の表面に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤成分を揮発させて樹脂膜を作製する。次いで、その樹脂膜の表面に、形成させるパターンの形状となるフォトマスクを載置し、紫外線等の活性エネルギー線を照射する。その後、現像工程、及び必要に応じてポストベーク工程を経ることにより、基材の表面に樹脂パターンが形成される。この樹脂パターンを、本実施形態の粒子捕捉デバイス1に使用することができる。
【0043】
このような硬化性樹脂組成物としては、例えば、エポキシ官能性ノボラック樹脂と、トリアリールスルホニウム塩等のカチオン系光重合開始剤と、エポキシ官能基と反応可能な希釈剤とを含み、完全に硬化して、剥離しにくい樹脂となる光硬化性組成物;多官能性ビスフェノールAホルムアルデヒド-ノボラック樹脂と、酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートと、溶剤のPGMEAとを含み、厚膜形成可能な樹脂となる光硬化性組成物等、微小樹脂成形に一般的に用いられる樹脂組成物を採用できる。
【0044】
さらに、エポキシ樹脂と特定の酸発生剤とを組み合わせて硬化性樹脂組成物を調製し、この硬化性樹脂組成物を使用して樹脂パターンを形成すれば、高感度で、加熱硬化時の体積収縮が小さく、アスペクト比が高い形状の樹脂パターンを形成できる。
その他、硬化性樹脂組成物の詳細については、特開2008-180877号公報、特開2011-111588号公報等に記載の当業者公知の方法に基づいて実施可能であることが当業者には当然に理解される。
【0045】
<予備工程>
予備工程は、粒子捕捉膜作製工程、基板作製工程および支持体作製工程を含む。
粒子捕捉膜作製工程は、第一層11を形成する第一層形成工程と、第二層12を形成する第二層形成工程と、を含む。
【0046】
第一層形成工程では、支持板31上に、溶解可能な下地膜32を形成する(図6A参照)。次に、下地膜32上に第一の硬化性樹脂組成物を塗布して第一の硬化性樹脂膜33を形成する(図6B参照)。次に、第一の硬化性樹脂膜33を露光した後、現像することにより、連通孔13がパターニングされた第一層11を形成する(図6C参照)。
なお、第一層形成工程では、支持板31上に、下地膜32を形成することなく、第一の硬化性樹脂組成物を直接的に塗布して第一の硬化性樹脂膜33を形成してもよい。
【0047】
例えば、支持板31としては、シリコンウェハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板、ガラス基板等が挙げられる。第一の硬化性樹脂組成物としては、上述した感光性樹脂組成物が挙げられる。
【0048】
例えば、下地膜32としては、ポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、スチレン系エラストマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を用いることができる。これらの材料は、同種の液体に可溶な複数の材料の組み合わせであってもよい。例えば、下地膜32の材料は、下地膜32の強度や柔軟性の観点から、マンナン、キサンタンガム、又はグアーガム等のゴム成分を含んでもよい。
【0049】
連通孔13のパターニング方法は、露光・現像に限られず、インプリント法や誘導自己組織化(Directed Self Assembly,DSA)技術を用いた方法等も採用できる。また、第一の硬化性樹脂膜33の硬化方法は、露光でなくともよく、公知の方法が採用される。
【0050】
第二層形成工程では、第一層11上に、第二の硬化性樹脂組成物を塗布して第二の硬化性樹脂膜34を形成する(図6D参照)。次に、第二の硬化性樹脂膜34を露光した後、現像することにより、貫通孔14(捕捉部15)がパターニングされた第二層12を形成する(図6E参照)。
【0051】
第二の硬化性樹脂組成物としては、上述した感光性樹脂組成物が挙げられる。
捕捉部15のパターニング方法は、露光・現像に限られず、インプリント法や誘導自己組織化(Directed Self Assembly,DSA)技術を用いた方法等も採用できる。また、第二の硬化性樹脂組成物の硬化方法は、露光でなくともよく、公知の方法が採用される。
【0052】
第二層形成工程の後、下地膜32を溶解して、支持板31から第一層11を剥離する。
例えば、剥離剤に支持板31ごと浸漬することにより、下地膜32を溶解し、支持板31から第一層11を剥離する。これにより、粒子捕捉膜3を得る(図6F参照)。なお、第二層形成工程の後、支持板31自体を溶解してもよい。支持板31から第一層11を剥離する前に、支持体4を粒子捕捉膜3と接合してもよい。
【0053】
基板作製工程では、基板2上に、支持体4の凹部22に嵌合可能な凸部21を形成する。例えば、基板作製工程では、射出成形により、基板2上に凸部21を形成する。
【0054】
基板作製工程では、基板2上にピラー25を形成してもよい。例えば、基板作製工程では、射出成形により、基板2上にピラー25を形成する。なお、ピラーパターンの形成は、凸部21の形成と同じ工程で行ってもよい。ピラーパターン22の形成は任意であり、本工程は存在しなくてもよい。
【0055】
支持体作製工程では、支持体4において基板2と対向する部分(支持体4の下部)に、基板2の凸部21に嵌合する凹部22を形成する。例えば、支持体作製工程では、射出成形により、支持体4において基板2と対向する面(支持体4の下面)の内側(支持体4の下部内側)に凹部22を形成する。
【0056】
<張力付与工程>
張力付与工程では、粒子捕捉膜3が基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、粒子捕捉膜3に張力を付与する(図7A及び図7B参照)。図7Aでは、張力付与工程の前の粒子捕捉膜3のたわみを誇張して示しているが、これに限らない。張力付与工程の前に、粒子捕捉膜3はたわみを有しなくてもよい。
【0057】
張力付与工程では、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、基板2と支持体4とを嵌合させる。例えば、張力付与工程は、支持体4に粒子捕捉膜3を接合する膜接合工程(図7A参照)と、膜接合工程の後、粒子捕捉膜3が接合された支持体4を基板2に嵌合させる嵌合工程と、を有する。具体的に、嵌合工程では、基板2に設けられた凸部21に、粒子捕捉膜3が接合された支持体4に設けられた凹部22を嵌合させる(図7B参照)。例えば、支持体4の凹部22に、粒子捕捉膜3と共に凸部21を圧入することにより、粒子捕捉膜3に前記張力を付した状態で粒子捕捉膜3を支持することができる。
これにより、粒子捕捉膜3に前記張力を付した状態で、基板2、粒子捕捉膜3および支持体4を接合することができる。例えば、前記硬化性樹脂組成物を接着剤として用いてもよい。
【0058】
<粒子捕捉方法>
実施形態において、本発明は、基板2と、粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜3と、粒子捕捉膜3を支持する支持体4と、を用意し、粒子捕捉膜3が基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、粒子捕捉膜3に張力を付与する粒子捕捉方法を提供する。実施形態の粒子捕捉方法は、基板2、粒子捕捉膜3および支持体4を用意する予備工程と、粒子捕捉膜3に張力を付与する張力付与工程と、を含む方法、予備工程と張力付与工程とを含む粒子捕捉デバイス1の製造方法等といいかえることができる。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、粒子捕捉デバイス1は、基板2と、粒子を捕捉可能な粒子捕捉膜3と、粒子捕捉膜3が前記基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、粒子捕捉膜3に張力を付与した状態で粒子捕捉膜3を支持する支持体4と、を含むことで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、粒子捕捉膜3が基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、粒子捕捉膜3に張力が付与されるため、粒子捕捉膜3がたわむことを抑制することができる。したがって、捕捉した粒子を観察する際に焦点がずれることを抑制することができる。加えて、たわみ防止のための支持構造を有しない場合、粒子を捕捉するための有効エリアを可及的に大きくすることができる。加えて、支持構造の上に粒子が乗ってしまうことを抑制することができる。加えて、画像解析時に粒子が誤認識される可能性を低減することができる。
【0060】
上記の粒子捕捉デバイス1において、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、基板2と支持体4とを嵌合させる嵌合構造5を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、嵌合構造5を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜3がたわむことを抑制することができる。
【0061】
上記の粒子捕捉デバイス1において、嵌合構造5は、基板2に設けられた凸部21と、支持体4に設けられ、凸部21に嵌合する凹部22と、を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、凸部21および凹部22を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜3がたわむことを抑制することができる。加えて、嵌合構造5が、支持体4に設けられた凸部21と、基板2に設けられた凹部22とを備える場合と比較して、粒子捕捉デバイス1を作製しやすい。
【0062】
上記の粒子捕捉デバイス1において、粒子捕捉膜3は、1個の粒子を捕捉可能な大きさを有する捕捉部15と、1個の粒子が通過できない大きさを有し、かつ、捕捉部15と空間10とを連通する連通孔13と、を有することで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、捕捉部15により1個の粒子を捕捉しつつ、連通孔13を通じて粒子の分散液を流通させることができる。
【0063】
上記の粒子捕捉デバイス1において、粒子捕捉膜3は、連通孔13を有する第一層11と、連通孔13に連なり、かつ、捕捉部15の外形と同じ大きさの貫通孔14を有する第二層12と、を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、単一の層に捕捉部15および連通孔13を設ける場合と比較して、粒子捕捉デバイス1を作製しやすい。
【0064】
上記の粒子捕捉デバイス1において、空間10は液体で満たされていることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、粒子捕捉膜3が液体に浸る場合であっても、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるため、粒子捕捉膜3の膨潤、液体の重さ、表面張力の影響などによって、粒子捕捉膜3がたわむことを抑制することができる。
【0065】
<第一変形例>
次に、実施形態の第一変形例について図8図9A及び図9Bを用いて説明する。
第一変形例では、実施形態に対して、粒子捕捉膜3に張力を付与するための構成が特に異なる。図8図9A及び図9Bにおいて、実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図8は、実施形態の第一変形例に係る粒子捕捉デバイス101の断面図である。図8は、図4に相当する図である。
【0066】
図8に示すように、粒子捕捉デバイス101は、粒子捕捉膜3に張力が付与されるように、支持体4に結合され、圧入することにより支持体4を拡張する拡張部材120を備える。拡張部材120は、支持体4の内側に取り付けられている。拡張部材120は、支持体4を内面から拡張する。拡張部材120は、支持体4を内方から支持する。拡張部材120の下部外面は、上端が外方に位置し、かつ、下端が内方に位置するように傾斜している。第一変形例の支持体4の内面は、上端が外方に位置し、かつ、下端が内方に位置するように傾斜している。なお、拡張部材120が圧入することができれば、拡張部材120の外面は傾斜していなくてもよく、支持体4の内面は傾斜していなくてもよい。第一変形例の支持体4の内形は、拡張部材120の取付前において、拡張部材120よりも小さい(図9A参照)。第一変形例の支持体4は、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、連結部材(不図示)によって基板2に連結されている。
【0067】
第一変形例において、張力付与工程では、粒子捕捉膜3が基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、粒子捕捉膜3に張力を付与する。図9Aでは、張力付与工程の前の粒子捕捉膜3のたわみを誇張して示しているが、これに限らない。張力付与工程の前に、粒子捕捉膜3はたわみを有しなくてもよい。
【0068】
張力付与工程では、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、粒子捕捉膜3が接合された支持体4に拡張部材120を圧入することにより支持体4を拡張する。具体的に、支持体4に拡張部材120を圧入することにより、支持体4の内面に拡張部材120の外面を接合させる(図9B参照)。例えば、前記硬化性樹脂組成物を接着剤として用いてもよい。
【0069】
本変形例によれば、粒子捕捉デバイス101において、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、支持体4を拡張させる拡張部材120を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、拡張部材120を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜3がたわむことを抑制することができる。
【0070】
<第二変形例>
次に、実施形態の第一変形例について図10図11A及び図11Bを用いて説明する。
第二変形例では、実施形態に対して、粒子捕捉膜3に張力を付与するための構成が特に異なる。図10図11A及び図11Bにおいて、実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図10は、実施形態の第二変形例に係る粒子捕捉デバイス201の断面図である。図10は、図4に相当する図である。
【0071】
図10に示すように、粒子捕捉デバイス201は、粒子捕捉膜3に張力が付与されるように、支持体4に結合され、圧入することにより粒子捕捉膜3を拡張する膜拡張部材220を備える。膜拡張部材220は、支持体4の内側に取り付けられている。膜拡張部材220は、粒子捕捉膜3を内面から拡張する。膜拡張部材220は、支持体4を内方から支持する。膜拡張部材220の断面形状は、L字状を有する。なお、支持体4を内方から支持できれば、膜拡張部材220の断面形状はL字状を有していなくてもよい。
【0072】
膜拡張部材220の下部外面は粒子捕捉膜3を拡張可能な外形を有する。第二変形例の支持体4の内形は、膜拡張部材220の取付前において、膜拡張部材220よりも小さい(図11A参照)。なお、膜拡張部材220が支持できれば、支持体4の内形は膜拡張部材220よりも小さくてもよい。また、粒子捕捉膜3を拡張できれば、支持体4の内形は膜拡張部材220よりも小さくなくてもよい。
【0073】
第二変形例の支持体4の高さは、膜拡張部材220の下部外面の高さよりも低い。第二変形例の支持体4は、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、連結部材(不図示)によって基板2に連結されている。
【0074】
第二変形例において、張力付与工程では、粒子捕捉膜3が基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、粒子捕捉膜3に張力を付与する。図11Aでは、張力付与工程の前の粒子捕捉膜3のたわみを誇張して示しているが、これに限らない。張力付与工程の前に、粒子捕捉膜3はたわみを有しなくてもよい。
【0075】
張力付与工程では、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、粒子捕捉膜3が接合された支持体4に膜拡張部材220を圧入することにより粒子捕捉膜3を拡張する。具体的に、支持体4に膜拡張部材220を圧入することにより、支持体4の内面に膜拡張部材220の外面を接合させる(図11B参照)。第二変形例では、膜拡張部材220の下端部を、支持体4の下面よりも下方に突出させる(図11B参照)。例えば、前記硬化性樹脂組成物を接着剤として用いてもよい。
【0076】
本変形例によれば、粒子捕捉デバイス201において、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、粒子捕捉膜3を拡張させる膜拡張部材220を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、膜拡張部材220を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜3がたわむことを抑制することができる。
【0077】
<第三変形例>
次に、実施形態の第三変形例について図12図13A及び図13Bを用いて説明する。
第三変形例では、実施形態に対して、粒子捕捉膜3に張力を付与するための構成が特に異なる。図12図13A及び図13Bにおいて、実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図12は、実施形態の第三変形例に係る粒子捕捉デバイス301の断面図である。図12は、図4に相当する図である。
【0078】
図12に示すように、粒子捕捉デバイス301は、粒子捕捉膜3に張力が付与されるように、基板2に対して支持体4を傾斜させた状態で支持体4を支持する傾斜支持部材320を備える。傾斜支持部材320の内面は、鉛直線(基板2の一面の垂線)に対して傾斜している。傾斜支持部材320は、支持体4を外方から支持する。傾斜支持部材320の内面は、上端が内方に位置し、かつ、下端が外方に位置するように傾斜している。第三変形例の支持体4は、凹部22(図4参照)を有しない。
【0079】
第三変形例において、張力付与工程では、粒子捕捉膜3が基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、粒子捕捉膜3に張力を付与する。図13Aでは、張力付与工程の前の粒子捕捉膜3のたわみを誇張して示しているが、これに限らない。張力付与工程の前に、粒子捕捉膜3はたわみを有しなくてもよい。
【0080】
張力付与工程では、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、基板2に対して支持体4を傾斜させた状態で支持体4を傾斜支持部材320に支持させる。具体的に、基板2に固定された傾斜支持部材320の内面に、支持体4の外面を接合させる(図13B参照)。例えば、前記硬化性樹脂組成物を接着剤として用いてもよい。
【0081】
本変形例によれば、粒子捕捉デバイス301において、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、基板2に対して支持体4を傾斜させた状態で支持体4を支持する傾斜支持部材320を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、傾斜支持部材320を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜3がたわむことを抑制することができる。
【0082】
<第四変形例>
次に、実施形態の第四変形例について図14図15A及び図15Bを用いて説明する。
第四変形例では、実施形態に対して、粒子捕捉膜3に張力を付与するための構成が特に異なる。図14図15A及び図15Bにおいて、実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図14は、実施形態の第四変形例に係る粒子捕捉デバイス401の断面図である。図14は、図4に相当する図である。
【0083】
図14に示すように、粒子捕捉デバイス401は、粒子捕捉膜3に張力が付与されるように、支持体4に結合され、液体を吸収することにより体積を増す液体吸収性膨潤部材420を備える。液体吸収性膨潤部材420は、支持体4の下部外側の凹部422に取り付けられている。例えば、液体吸収性膨潤部材420の材質としては、水膨潤ゴム、ポリウレタン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。なお、液体吸収性膨潤部材420の材質は特に限定されず、液体を吸収することにより体積を増す性質を有していれば種々のものを採用することができる。第四変形例の支持体4は、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、連結部材(不図示)によって基板2に連結されている。
【0084】
第四変形例において、張力付与工程では、粒子捕捉膜3が基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、液体吸収性膨潤部材420に液体を吸収させることにより液体吸収性膨潤部材420の体積を増す。図15Aでは、張力付与工程の前の粒子捕捉膜3のたわみを誇張して示しているが、これに限らない。張力付与工程の前に、粒子捕捉膜3はたわみを有しなくてもよい。張力付与工程の前において、液体吸収性膨潤部材420は支持体4の下部外側の凹部422内に入り込んでいる。
【0085】
張力付与工程では、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、液体吸収性膨潤部材420に液体を吸収させることにより液体吸収性膨潤部材420の体積を増す。具体的に、液体吸収性膨潤部材420に液体を吸収させることにより液体吸収性膨潤部材420を支持体4の下部外側の凹部422外に膨出させる(図15B参照)。
【0086】
本変形例によれば、粒子捕捉デバイス401において、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、支持体4に結合され、液体を吸収することにより体積を増す液体吸収性膨潤部材420を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、液体吸収性膨潤部材420を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜3がたわむことを抑制することができる。
【0087】
<第五変形例>
次に、実施形態の第五変形例について図16図17A及び図17Bを用いて説明する。
第五変形例では、実施形態に対して、粒子捕捉膜3に張力を付与するための構成が特に異なる。図16図17A及び図17Bにおいて、実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図16は、実施形態の第五変形例に係る粒子捕捉デバイス501の断面図である。図16は、図4に相当する図である。
【0088】
図16に示すように、粒子捕捉デバイス501は、粒子捕捉膜3に張力が付与されるように、基板2と支持体4とを嵌合させる嵌合構造505を備える。嵌合構造505は、互いに嵌合する湾曲凸部521および湾曲凹部522を備える。嵌合構造505は、基板2(基板2に設けられた凸部21)と支持体4との間に設けられる。
【0089】
湾曲凸部521は、基板2の凸部21に設けられる。湾曲凸部521は、凸部21の上面から上方に突出する。湾曲凸部521は、上方に凸の湾曲形状を有する。例えば、湾曲凸部521は、凸部21と同一の部材で一体に形成される。
湾曲凹部522は、支持体4の下面に設けられる。湾曲凹部522は、湾曲凸部521に沿う湾曲形状を有する。
【0090】
第五変形例において、張力付与工程では、粒子捕捉膜3が基板2と平行をなし、かつ、粒子捕捉膜3と基板2との間に空間10が形成されるように、粒子捕捉膜3に張力を付与する。図17Aでは、張力付与工程の前の粒子捕捉膜3のたわみを誇張して示しているが、これに限らない。張力付与工程の前に、粒子捕捉膜3はたわみを有しなくてもよい。
【0091】
張力付与工程では、粒子捕捉膜3に前記張力が付与されるように、凸部21と支持体4とを嵌合させる。具体的に、凸部21に設けられた湾曲凸部521に、支持体4に設けられた湾曲凹部522を粒子捕捉膜3と共に嵌合させる(図17B参照)。例えば、支持体4の湾曲凹部522に、粒子捕捉膜3と共に湾曲凸部521を圧入することにより、粒子捕捉膜3に前記張力を付した状態で粒子捕捉膜3を支持することができる。これにより、粒子捕捉膜3に前記張力を付した状態で、凸部21、粒子捕捉膜3および支持体4を接合することができる。例えば、前記硬化性樹脂組成物を接着剤として用いてもよい。
【0092】
本変形例によれば、粒子捕捉デバイス501において、嵌合構造505は、基板2の凸部21に設けられた湾曲凸部521と、支持体4に設けられ、湾曲凸部521に嵌合する湾曲凹部522と、を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、湾曲凸部521および湾曲凹部522を利用した簡単な構成で粒子捕捉膜3がたわむことを抑制することができる。
【0093】
<他の変形例>
なお、上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、嵌合構造は、基板2に設けられた凸部と、支持体4に設けられ、凸部に嵌合する凹部と、を備えるが、これに限らない。例えば、嵌合構造は、支持体4に設けられた凸部と、基板2に設けられた凹部とを備えてもよい。
【0094】
上記実施形態においては、粒子捕捉膜3は、連通孔13を有する第一層11と、連通孔13に連なり、かつ、捕捉部15の外形と同じ大きさの貫通孔14を有する第二層12と、を備えるが、これに限らない。例えば、粒子捕捉膜3は、捕捉部15および連通孔13を有する単一の層であってもよい。
【0095】
上記実施形態においては、空間10は液体で満たされているが、これに限らない。例えば、空間10は液体で満たされていなくてもよい。
【0096】
なお、上記において実施形態又はその変形例として記載した各構成要素は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができるし、また、組み合わされた複数の構成要素のうち一部の構成要素を適宜用いないようにすることもできる。
【実施例0097】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
[実施例]
(粒子捕捉膜の製造)
《連通孔パターニング》
シリコン基板上に、下地剤をスピンコーター(1500rpm、20秒)で塗布し、ホットプレートにより90℃で1分間、150℃で1分間プリベークし、下地膜を形成した。
【0099】
前記下地膜上に感光性樹脂組成物(特開2008-180877号公報、特開2011-111588号公報参照。)をスピンコーター(1500rpm、20秒)で塗布し、ホットプレートにより60℃で2分間プリベークした。その後、i線ステッパー(型式「NSR―2205i14E」、ニコン製)を用いてパターン露光(GHI線、150mJ)を行い、ホットプレートにより90℃で3分間露光後加熱を行った。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いた浸漬法により、30秒間の現像処理を行った。次いで、現像後の樹脂パターンを、基板ごと、オーブンを用いて120℃で1分間ポストベークし、直径2μmの円筒状の連通孔樹脂パターンを得た。
【0100】
《凹部パターニング》
上記で得られた連通孔樹脂パターン上に、上記感光性樹脂組成物をスピンコーター(1100rpm、60秒)で塗布し、ホットプレートにより60℃で2分間、120℃で3分間プリベークした。その後、i線ステッパー(型式「NSR―2205i14E」、ニコン製)を用いてパターン露光(GHI線、60mJ)を行い、ホットプレートにより120℃で3分間露光後加熱を行った。その後、PGMEAを用いた浸漬法により、2分間の現像処理を行なった。次いで、現像後の樹脂パターンを、基板ごと、オーブンを用いて180℃で15分間ポストベークし、凹部パターンを得た。凹部は対辺の距離が25μmの正六角形形状とした。
【0101】
(粒子捕捉膜の剥離)
上記で得られた凹部がパターニングされた粒子捕捉膜を、剥離剤に浸漬し、上記下地膜を溶解することにより、シリコン基板から、連通孔樹脂パターン上に凹部パターンが形成された粒子捕捉膜を剥離した。
【0102】
(基板の製造)
基板は、熱可塑性樹脂を用い、射出成形により形成した。
【0103】
(支持体の製造)
支持体は、光硬化性樹脂を用い、光造形により形成した。支持体は、支持体の内面の上端が外方に位置し、かつ、支持体の内面の下端が内方に位置するように傾斜させた。
【0104】
(拡張部材の製造)
拡張部材は、光硬化性樹脂を用い、光造形により形成した。拡張部材は、拡張部材の下部外面の上端が外方に位置し、かつ、支持体の内面の下端が内方に位置するように傾斜させた。拡張部材の下部の外形は、支持体の内形よりも大きくした。
【0105】
(粒子捕捉膜及び基板の接合)
上記で得られた粒子捕捉膜に、凹部が開口する面が上面となるよう、支持体を接着剤で接合した。粒子捕捉膜が接合された支持体に拡張部材を圧入することにより、粒子捕捉膜を支持する支持体を拡張した。これにより、粒子捕捉膜に張力を付与した状態で、粒子捕捉膜を支持体に支持させた。支持体は、凹部が開口する面の反対側の面(他方面)が基板と対向し、粒子捕捉膜と基板との間に空間が形成されるように、硬化性樹脂組成物を用い基板に連結した。これにより、図8に示す形状(第一変形例の形状)の実施例の粒子捕捉デバイスを得た。
【0106】
[比較例]
粒子捕捉膜が接合された支持体に拡張部材を圧入する以外は、実施例と同様にして、比較例の粒子捕捉デバイスを作製した。比較例の粒子捕捉デバイスは、拡張部材を有しない。
【0107】
(粒子捕捉膜及び基板の接合)
上記で得られた粒子捕捉膜に、凹部が開口する面が上面となるよう、支持体を接着剤で接合した。支持体は、凹部が開口する面の反対側の面(他方面)が基板と対向し、粒子捕捉膜と基板との間に空間が形成されるように、硬化性樹脂組成物を用い基板に連結した。
これにより、比較例の粒子捕捉デバイスを得た。
【0108】
[実験例]
実施例、比較例の粒子捕捉デバイスのそれぞれに、リン酸緩衝生理食塩水を添加し、吸引部から吸引することで、粒子捕捉膜の上部および粒子捕捉膜と基板との間の流路内を満たした。続いて、倒立型顕微鏡(キーエンス製、BZ-9000)で倍率20倍の位相差対物レンズを用い、粒子捕捉デバイスの中央部に焦点を合わせ、画像を撮影した。その後、焦点の補正をせず、粒子捕捉デバイスの縁部の画像を撮影した。
【0109】
図18A及び図18Bは、実施例の粒子捕捉デバイスの顕微鏡観察を行った結果を示す写真である。図18Aは粒子捕捉デバイスの中央部の写真である。図18Bは粒子捕捉デバイスの縁部の写真である。
図19A及び図19Bは、比較例の粒子捕捉デバイスの顕微鏡観察を行った結果を示す写真である。図19Aは粒子捕捉デバイスの中央部の写真である。図19Bは粒子捕捉デバイスの縁部の写真である。
【0110】
図19A及び図19Bに示すように、比較例の粒子捕捉デバイスでは、中央部に焦点を合わせた後に縁部の撮影を行うと、粒子捕捉膜のたわみの影響により、焦点がずれていた。
これに対し、図18A及び図19Bに示すように、実施例の粒子捕捉デバイスでは、粒子捕捉膜のたわみを抑制し、焦点がずれることを抑制できることを確認できた。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0112】
1,101,201,301,401,501…粒子捕捉デバイス、2…基板、3…粒子捕捉膜、4…支持体、5…嵌合構造、10…流路(空間)、11…第一層、12…第二層、13…連通孔、14…貫通孔、15…凹部(捕捉部)、21…凸部、22…凹部、120…拡張部材、220…膜拡張部材、320…傾斜支持部材、420…液体吸収性膨潤部材、B…粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B