(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006309
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】杭の設計方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/34 20060101AFI20240110BHJP
E02D 5/56 20060101ALI20240110BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20240110BHJP
E02D 27/26 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
E02D5/56
E02D27/12 Z
E02D27/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107078
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】518082507
【氏名又は名称】株式会社サイエンス構造
(71)【出願人】
【識別番号】506162493
【氏名又は名称】有限会社ピーステージ
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 治
(72)【発明者】
【氏名】海藤 靖子
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 裕次
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA16
2D041CA05
2D046CA03
2D046DA11
(57)【要約】
【課題】地盤調査データがなくても、杭を設計できるようにする。
【解決手段】杭の上部が位置する浅層部地盤に確保可能な浅層部N値に基づき浅層部地盤をモデル化する浅層部地盤モデル化工程(S31)と、杭の下部が位置する深層部地盤に要求される深層部N値に基づき深層部地盤をモデル化する深層部地盤モデル化工程(S32)と、杭の中間部が位置する中層部地盤にN値=0を設定して中層部地盤をモデル化する中層部地盤モデル化工程(S33)と、を含む。浅層部N値には表層改良によって得られるN値が設定される。深層部N値は、上部構造の総重量と杭の自重とによって生じる圧縮軸力に耐えうるN値に設定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に打ち込まれると共に、上部に接合された上部構造を支持する単杭である杭の設計方法であって、
該杭の前記上部が位置する浅層部地盤に確保可能な浅層部N値に基づき、前記浅層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの浅層部地盤水平バネを設定して、前記浅層部地盤をモデル化する浅層部地盤モデル化工程と、
前記杭の下部が位置する深層部地盤に要求される深層部N値に基づき、前記深層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの深層部地盤水平バネを設定して、前記深層部地盤をモデル化する深層部地盤モデル化工程と、
前記杭の中間部が位置する中層部地盤にN値=0を設定すると共に、前記中層部地盤内の適所に所定の間隔で1以上の中層部地盤水平バネを設定して、前記中層部地盤をモデル化する中層部地盤モデル化工程と、
前記上部構造から前記杭の杭頭に曲げモーメントとせん断力が印加された場合における前記杭の応力状態を解析する応力解析工程と、
前記杭が前記応力状態に耐えうるか否かを検定する検定工程と、を含み、
前記浅層部地盤は表層改良を予定される前記地盤の深度範囲に設定され、前記浅層部N値には前記表層改良によって得られるN値が設定されることを特徴とする杭の設計方法。
【請求項2】
前記杭は、鉛直方向に伸びる中空筒状の杭本体と、該杭本体の上端部から外径方向に放射状に突出し、且つ、突出量が前記杭の下部に向かって漸減する複数の補強用のリブプレートと、を備えており、
前記浅層部地盤は前記各リブプレートの少なくとも全体を埋設する深度範囲に設定されることを特徴とする請求項1に記載の杭の設計方法。
【請求項3】
前記浅層部地盤に設定される前記浅層部地盤水平バネの少なくとも1つは、前記リブプレートの下端以深に配置されることを特徴とする請求項2に記載の杭の設計方法。
【請求項4】
前記深層部N値は、前記上部構造の総重量と前記杭の自重とによって生じる圧縮軸力に耐えうるN値に設定され、
前記杭の軸方向全長は、前記杭の下端が、前記地盤において前記深層部N値が出現しうる深度に到達するように設定されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の杭の設計方法。
【請求項5】
前記杭は、地中へのねじ込み作用を有する先端翼を有した回転貫入型の鋼管杭であることを特徴とする請求項4に記載の杭の設計方法。
【請求項6】
地盤に打ち込まれると共に、フーチングを介して接合された上部構造を支持する杭の設計方法であって、
該杭の上部が位置する浅層部地盤が上部構造を支持するに当たって有するべき最低限度の浅層部N値に基づき、前記浅層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの浅層部地盤水平バネを設定して、前記浅層部地盤をモデル化する浅層部地盤モデル化工程と、
前記杭の下部が位置する深層部地盤に要求される深層部N値に基づき、前記深層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの深層部地盤水平バネを設定して、前記深層部地盤をモデル化する深層部地盤モデル化工程と、
前記杭の中間部が位置する中層部地盤にN値=0を設定すると共に、前記中層部地盤内の適所に所定の間隔で1以上の中層部地盤水平バネを設定して、前記中層部地盤をモデル化する中層部地盤モデル化工程と、
前記フーチングから前記杭の上部に曲げモーメントとせん断力が印加された場合における前記杭の応力状態を解析する応力解析工程と、
前記杭が前記応力状態に耐えうるか否かを検定する検定工程と、を含むことを特徴とする杭の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、杭の設計方法に関し、特に既製杭の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の基礎となる杭を設計するに当たっては、地盤に埋設される杭に作用する応力を解析し、当該応力に耐えうる杭を選定する必要がある。
特許文献1には、杭の変形性能を考慮しつつ、杭を設計する作業を自動化した杭の設計システムについて記載されている。特許文献1においては、コンクリート充填鋼管杭及び外殻鋼管付きコンクリートを設計対象とする。特許文献1に記載されているように、杭に作用する応力を解析するには、地盤調査を行って地盤のN値を求め、該N値に基づいてモデル化した地盤内に地盤水平バネを設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、地盤調査をしなければ杭を設計できなかった。このため、建築構造物の建築計画から杭の選定までに時間を要するという問題があった。また、建築構造物の建築計画の段階では、必要な杭のサイズが明らかとならないため、杭の構築に必要な敷地面積、工事期間、及び工事費用等が明確にならないという問題があった。
特許文献1には、杭の設計作業を自動化することが記載されているが、杭を設計する上で、地盤調査データがない場合の取り扱いについては考慮されていない。
本願発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、地盤調査データがなくても、杭を設計できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、地盤に打ち込まれると共に、上部に接合された上部構造を支持する単杭である杭の設計方法であって、該杭の前記上部が位置する浅層部地盤に確保可能な浅層部N値に基づき、前記浅層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの浅層部地盤水平バネを設定して、前記浅層部地盤をモデル化する浅層部地盤モデル化工程と、前記杭の下部が位置する深層部地盤に要求される深層部N値に基づき、前記深層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの深層部地盤水平バネを設定して、前記深層部地盤をモデル化する深層部地盤モデル化工程と、前記杭の中間部が位置する中層部地盤にN値=0を設定すると共に、前記中層部地盤内の適所に所定の間隔で1以上の中層部地盤水平バネを設定して、前記中層部地盤をモデル化する中層部地盤モデル化工程と、前記上部構造から前記杭の杭頭に曲げモーメントとせん断力が印加された場合における前記杭の応力状態を解析する応力解析工程と、前記杭が前記応力状態に耐えうるか否かを検定する検定工程と、を含み、前記浅層部地盤は表層改良を予定される前記地盤の深度範囲に設定され、前記浅層部N値には前記表層改良によって得られるN値が設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、地盤調査データがなくても、杭を設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態による設計対象となる杭、及び杭が支持する上部構造の一部を示す一部断面正面図である。
【
図2】(a)~(f)は、杭の施工方法の一例を示す模式図である。
【
図3】(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る杭の設計方法を示すフローチャートである。
【
図4】地盤に設定される地盤水平バネと、杭及び表層改良部分との位置関係を示す設定モデル図である。
【
図5】
図4に対応する杭及び地盤の解析モデルを示す図である。
【
図6】応力解析結果の一例を示す図であり、(a)は曲げモーメント図であり、(b)はせん断力図である。
【
図7】本発明の他の実施形態による設計対象となる杭、及び杭が支持する上部構造の一部を示す模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。また、特に矛盾が生じない限り、各実施形態に記載された構成を適宜組み合わせて実施できる。
【0009】
〔設計対象〕
図1は、本発明の一実施形態による設計対象となる杭、及び杭が支持する上部構造の一部を示す一部断面正面図である。図中、Axは、上部構造10と杭40の軸線であり何れも鉛直方向に伸びる。
上部構造10は、電波塔等の塔状構造物である。電波塔は、例えば携帯電話機用のアンテナ装置等の被支持物を支持する。上部構造10は杭40と直接に連結可能、且つ単一の杭40によって支持可能な構成を有する。上部構造10は、杭40と接合される台座11と、下端部が台座11と接合される管状の支柱21と、を有する。
【0010】
<台座>
台座11は、その全体が鋼材から構成されており、各部は溶接により接合され、一体化されている。台座11は、平板状のベースプレート13と、ベースプレート13の上面中央部から上方に突出する中空筒状のテーパ付鋼管15と、テーパ付鋼管15の外周囲に放射状に配置されると共に、隣接する2辺がベースプレート13の上面とテーパ付鋼管15の外周面とに夫々接合された複数の補強リブ17、17…とを有する。
ベースプレート13は、テーパ付鋼管15の下端から外径方向にフランジ状に突出する概略円盤状である。ベースプレート13は、テーパ付鋼管15の外周側の面内適所と内周側の面内適所とに貫通した複数の締結孔を夫々備えている。ベースプレート13は、ジョイントプレート30を介して杭40の最上部に配置されたトッププレート47と、ボルト及びナット等の締結部材F1、F2を用いて締結される。
テーパ付鋼管15は、上方に向けて内外径が漸減するテーパ状である。テーパ付鋼管15の上端は開口し、下端はベースプレート13に接合されて閉塞している。
補強リブ17、17…は、テーパ付鋼管15の外周面からの突出長が上方に向かって漸減する概略三角形状又は台形状の板状部材である。補強リブ17、17…は、テーパ付鋼管15の周方向に所定の間隔を空けて等間隔に複数個が配置されている。補強リブ17、17…は、テーパ付鋼管15の軸線Axに沿って垂直に伸びるように配置されている。補強リブ17、17…は、支柱21の水平変位(揺動)によって台座11に作用する曲げモーメントとせん断力に対して抵抗力を発揮する。
【0011】
<支柱>
支柱21は、その上部において携帯電話機用のアンテナ装置等(被支持物)を支持する。支柱21には、鋼管を用いることも可能である。しかし、杭40に作用する圧縮軸力を低減させるために、支柱21は、鋼管に比べて軽量、且つ極めて稀に発生する暴風に対して必要な曲げ耐力を発揮できる繊維強化プラスチック管、特に炭素繊維強化プラスチック管とすることが望ましい。
支柱21の中空部内には、その下端開口からテーパ付鋼管15が挿入され、支柱21の下端部において支柱21とテーパ付鋼管15とがオーバーラップする。支柱21とテーパ付鋼管15とは、例えば外周側からの操作のみで両者を締結可能なブラインドリベット等の締結部材F3を用いて緊結され、一体化される。
【0012】
<杭>
本実施形態において設計対象となる杭40(下部構造)は、回転貫入型の鋼管杭であり、その全体が鋼材から構成された既製杭である。杭40は、所定のN値を有する地盤(深層部地盤)によりその先端が支持される支持杭である。杭40は、概略円筒状の杭本体41と、杭本体41の下端部(先端部)に配置されて地中へのねじ込み作用を有する一対の先端翼43、43と、杭本体41の上端(杭頭)に接合されたトッププレート47と、隣接する2辺が杭本体41の外周面とトッププレート47の下面とに溶接により固定された複数のリブプレート49、49…と、を有する。更に、杭40は、杭本体41の下端から下方に突出する掘削刃45、45を備えてもよい。杭40を構成する各部材は溶接等により接合され、一体化されている。
【0013】
杭40は、地中への埋め込み長さに応じて、軸方向に分割された複数の分割体を軸方向に順次接合した構成を有する。一例として
図1に示す杭40は、杭40の先端部に位置して先端翼43、43と杭本体41の下端部を含む下部部材51と、杭40の上端部に位置してトッププレート47とリブプレート49、49…と杭本体41の上端部を含む上部部材53と、軸方向の中間部に位置して杭本体41の中間部分を構成する中間部材55と、を有する。下部部材51と中間部材55と上部部材53とは順次、継手(溶接継手又は機械式継手)41aにより接合されている。中間部材55は、杭40の軸方向全長に応じて省略されるか、又は1個以上が軸方向に設けられる。
【0014】
杭本体41は概略円筒状の鋼管から構成される。杭本体41は、必要な埋め込み長さによっては、複数の短尺な鋼管を継手41aにより接合して全長を長くした構成を有する。
図1には、杭本体41が軸方向に3分割された構成が示されている。
【0015】
先端翼43、43は、周方向に2分割された半円状又は扇状の鋼材から構成される。先端翼43、43は、杭本体41の軸線Axと直交する平面に対して、互いに異なる方向に傾斜した状態で杭本体41に溶接されている。先端翼43、43は、軸線Axを対称軸とする回転対称に配置できる。
図示する先端翼43、43は、杭本体41の外周面から外径方向に突出した半フランジ形状、或いは螺旋形状である。先端翼43、43は、杭40の埋め込み時には地中へのねじ込み作用を発揮する。先端翼43、43は、地盤内に設置された後には上部構造10と杭40の鉛直荷重に基づく押し込み方向(圧縮軸力)への支持力(支持耐力)を発揮する。また、先端翼43、43は、地盤100内に設置された後には杭40の引き抜きに対する抵抗力を発揮する。なお、先端翼43、43は、杭40の先端部において地中へのねじ込み作用と圧縮軸力への支持耐力、及び引き抜きに対する抵抗力を発揮できれば、この形状に限らない。
【0016】
トッププレート47は杭本体41の上端から外径方向にフランジ状に突出する概略円盤状である。トッププレート47は、杭本体41の上端開口を閉塞する。トッププレート47は、杭本体41の外周側の面内適所に貫通した複数の締結孔を備えている。トッププレート47は、ジョイントプレート30を介して台座11のベースプレート13と、ボルト及びナット等の締結部材F1、F2を用いて締結される。
リブプレート49、49……は、杭本体41の外周面からの突出長が下方に向かって漸減する概略逆三角形状又は倒立台形状の板状部材である。リブプレート49、49…は、杭本体41の周方向に所定の間隔を空けて等間隔に複数個が放射状に配置されている。リブプレート49、49…は、杭本体41の軸線Axに沿って垂直に伸びるように配置されている。リブプレート49、49……は、上部構造10の水平変位(揺動)に基づき杭40の頭部に作用する曲げモーメントとせん断力に対して抵抗力を発揮して、杭40の変形を阻止する。
【0017】
<杭の施工手順の概要>
図2(a)~(f)は、杭の施工方法の一例を示す模式図である。
図2(a)に示すように、杭40を地盤100に埋め込む際には、まず、地盤100の所定の面積範囲を地表面(GL=0)から所定深さ掘削して鋼管である杭本体41等の溶接、その他の作業を行う作業用ピット101を形成する。作業用ピット101は、杭40の施工に必要な各種の作業を行いうる大きさに形成される。また、作業用ピット101は後に表層改良される部分となるため、作業用ピット101は表層改良に必要な大きさを満足するように形成される。表層改良に必要な大きさとは、杭40の上端部に作用する応力を十分に低減するために必要な大きさである。
一例として、作業用ピット101(掘削部分)の三次元形状は概略円柱形状とされる。一例として、作業用ピット101の直径は、リブプレート49、49…を含む杭40の直径の4倍程度に設定される。一例として、作業用ピット101の深さは少なくとも上部部材53の軸方向長よりも深くなるように設定される。
【0018】
図2(b)に示すように、先端翼43、43のねじ込み作用を利用して、先端翼43、43及び杭本体41を回転させながら杭40を作業用ピット101の底面101aから地盤内に貫入させていく。必要により、杭40の埋め込み長さに応じて中間部材55を継手41aにより順次接合して長尺化しながら、杭40を地盤に貫入させる(
図2(c)参照)。
図2(c)に示すように、先端翼43、43が地盤100内の所定の深さまで到達した後、杭40の上部部材53を地盤内に埋設された杭40部分の上端部(ここでは中間部材55の上端部)に継手41aにより接合する。
図2(d)に示すように、杭40のトッププレート47に対して台座11のベースプレート13を、ジョイントプレート30を介して締結部材F1、F2を用いて締結する。
図2(e)に示すように、作業用ピット101内にコンクリート、ソイルセメント、セメント系固化剤、又はその他の材料を充填して硬化させることで、地盤100の表層改良部分103とする。
図2(f)に示すように、締結部材F3を用いて台座11のテーパ付鋼管15に支柱21を締結して、杭40によって上部構造10を支持する。
【0019】
図1及び
図2には、締結部材F1、F2を用いて台座11と杭40とを締結して接合する構成を示したが、台座11と杭40とは溶接により接合されてもよい。この場合、ジョイントプレート30とトッププレート47とを省略できる。即ち、杭40の上端を台座11のベースプレート13に溶接して、ベースプレート13とトッププレート47とを兼用する構成であってもよい。
【0020】
〔設計フロー:概要〕
図3(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る杭の設計方法を示すフローチャートである。
杭の設計方法においては、杭の仮選定工程(S1)と、杭の支持力・耐力の算出工程(S2)と、杭及び地盤のモデル化工程(S3)と、応力解析工程(S4)と、検定工程(S5)とが実施される。
【0021】
<杭に関わる各設計目標値>
杭に常時入力される荷重に対する設計目標値は、例えば以下のように設定される。
・長期許容支持力以下であること。
杭の地震に対する設計目標値は、例えば以下のように設定される。
・稀に発生する地震時において短期許容応力度以下であること。
・極めて稀に発生する地震時において終局耐力以下であること。
なお、極めて稀に発生する地震時に対しては、以下を考慮してもよい。
・軸力比±0.35の鉛直方向に作用する地震力を上下地震動として考慮する。
・水平力に加えて、極めて稀に発生する地震動時における地盤の応答変位を組合せて検討する。応力の組合せは、一例として曲げモーメントは水平力と応答変位の2乗和平方根とし、せん断力は水平力と応答変位の絶対値和とする。
上下動を考慮した地震動については、断面検定を行うことが望ましい。
地震動により杭頭に印加される外力については、時刻歴応答解析により設定することができる。
【0022】
杭の暴風に対する設計目標値は、例えば以下のように設定される。
・稀に発生する暴風時において短期許容応力度以下であること。
・極めて稀に発生する暴風時において終局耐力以下であること。
なお、暴風時は上下地震動及び地震動時の応答変位を考慮しない。
【0023】
ここで、上部構造に作用する水平力及び転倒モーメントは、極めて稀に発生する地震動よりも、極めて稀に発生する暴風時の方が大きい。後者は、杭の水平方向における許容応力に与える影響、特に杭上部の水平方向における許容応力に与える影響が大きい。このため、杭については、極めて稀に発生する暴風時についてのみ検討を行い、極めて稀に発生する地震動についての検討を省略してもよい。
【0024】
<<極めて稀に発生する地震時における地盤の応答変位>>
極めて稀に発生する地震については、地震による地盤の応答変位を考慮する。地表面からx[m]の位置における地盤の変位振幅は、「水道施設耐震工法指針・解説(2009年版)/日本水道協会」に基づき下式より算定する。
但し、
Uh(x):地表面からの深さx[m]における地盤の水平変位振幅[cm]
x:地表面からの深さ[m]
S’v:基盤地震動の速度応答スペクトル[cm/s]
TG:表層地盤の固有周期[s]
H:表層地盤の厚さ[m]
【0025】
<上部構造との関係>
上部構造から杭に印加される応力に基づく杭の挙動(応力状態)を解析するため、杭の設計に関わる各工程を実行するに当たって、所定の設計目標を満足した上部構造の設計が完了していることを前提とする。
上部構造の設計目標値は杭の設計目標値と同様に設定できる。即ち、稀に発生する地震時及び暴風時における上部構造の設計目標値は短期許容応力度以下、極めて稀に発生する地震時及び暴風時における上部構造の設計目標値は終局耐力以下と設定できる。なお、暴風時は上下地震動を考慮しなくてもよい。極めて稀に発生する地震時においては、軸力比±0.35の鉛直方向に作用する地震力を上下地震動として考慮してもよい。
地震時及び暴風時に、上部構造に働くせん断力Qと転倒モーメントMは、上部構造の最下位置において最大となる。構造物が、
図1に示すような、杭40と上部構造10とが直接に接合される構成を取る場合、上部構造の最下位置に作用する応力が杭頭に印加される。よって、予め、地震時及び暴風時に上部構造の最下位置に作用する応力(曲げモーメントMとせん断力Q)を算出しておく。
【0026】
<<上部構造に働く風圧力>>
稀に発生する暴風による風荷重は、建築基準法施行令第87条及び建設省告示平成12年第1454号に基づいて、下式より算定する。極めて稀に発生する風荷重は、稀に発生する風荷重を1.5625倍とした値(稀に発生する風の1.25倍の風速)を採用する。なお、極めて稀に発生する暴風とは、500年に一度程度発生する暴風を意味する。
稀に発生する暴風の風圧力は、
稀に発生する暴風の速度圧は、
【0027】
但し、
P:風荷重[kN]
A:受圧面積[m^2]
q:速度圧[N/m^2]
H:工作物の高さ[m]
Er:平均風速の高さ方向の分布を表す係数
Gf:ガスト影響係数
V0:基準風速[m/s]
Cf:風力係数
ZG:地表面粗度区分に応じて設定される数値
なお、Eとkzは建設省告示第1454号に従って算出するように同告示に規定された値である。
【0028】
本実施形態においては、上部構造の応力解析に使用する建築基準法施行令第87条の風圧力に関わる値については以下のように設定した。
地表面粗度区分については、本実施形態に係る設計方法を利用して設計された塔状構造物を日本国内の一般的な地域において構築可能であることを保証するために、対象となる塔状構造物が建設されうる地域で、上部構造が、極めて稀に発生する暴風の影響を一番大きく受ける区分である地表面粗度区分II(田畑や住宅が散在している箇所)と設定した。また、日本国内の一般的な地域に適用するために、風の基準風速V0を34[m/s]に設定した。なお、地表面粗度区分IIは地表面粗度区分III、IVの建設地に対しては安全側である。
【0029】
<<上部構造に働く地震力>>
地震力については、稀及び極めて稀に発生する地震による上部構造の応答値を時刻歴応答解析に基づき算出する。設計用入力地震動は、時刻歴応答解析建築物性能評価業務方法書に基づき、決定することができる。代表的には、告示波として八戸位相、神戸位相、乱数位相等、観測波として1940年エルセントロ、1968年八戸、1956年タフト等を入力地震動として用いることができる。
時刻歴応答解析ソフトウェアとしては、MidasIT社のMidas iGen等を用いることができる。
【0030】
<ステップS1:杭の仮選定工程>
以下に示す通り、地盤水平バネKの算定には杭の見付幅Bが必要となるため、解析対象とする杭40を仮選定する。
杭40を構成する鋼材の種類及び内外径については、鋼管杭の仕様に基づいて最適と考えられるものが仮選定される。
杭40の軸方向全長は、杭40の下端が、実際の地盤において、上部構造10の総重量と杭40の自重とによって生じる圧縮軸力を支持可能な耐力を発揮できる深層部N値が出現しうる地盤深度に到達するように設定される。
【0031】
<ステップS2:杭の支持力・耐力の算出工程>
設計目標として設定された条件に従って、杭の鉛直方向における支持耐力、及び水平方向における許容耐力、及び許容応力度を算出する。
常時における杭の設計支持力は、上部構造の全重量と、基礎自重との総和とする。構造物が、
図1に示すような、杭と上部構造とが直接に接合される構成を取る場合、基礎自重はゼロである。杭の仕様に従って、杭の鉛直方向における支持耐力を算出する。
また、杭の形状、ヤング係数、材料によって決まる基準強度等から、水平方向における杭の許容耐力、及び許容応力度を算出する。
【0032】
<ステップS3:杭及び地盤のモデル化工程>
図4は、地盤に設定される地盤水平バネと、杭及び表層改良部分との位置関係を示す設定モデル図である。
図5は、
図4に対応する杭及び地盤の解析モデルを示す図である。
図4及び
図5は、杭の軸方向全長を10.0mとした場合の例である。
図5においてZ000~Z100は地盤の深度を示し、K1~K8は地盤の各深度に設定された地盤水平バネ121~125及びそのバネ定数を示し、P1~P14は地盤の各深度に設定された杭40の節点を示す。各地盤水平バネは、これと対応する深度に配置された節点に夫々接続されている。
【0033】
杭及び地盤のモデル化工程では、地盤の各深度に設定(又は推定)されるN値に基づいて、適宜に選択された各深度の地盤内に地盤水平バネを設定し、地盤をモデル化する。また、杭40の節点Pを、地盤無いに設定される地盤水平バネの位置、数量、及び間隔等に応じて適宜設定して杭をモデル化する。
杭及び地盤のモデル化工程は、
図3(b)に示すように、杭40の上部40Aが位置する浅層部地盤111を浅層部N値によってモデル化する浅層部地盤モデル化工程(S31)と、杭40の下部40Bが位置する深層部地盤113を深層部N値によってモデル化する深層部地盤モデル化工程(S32)と、杭40の中間部40Cが位置する中層部地盤115を中層部N値によってモデル化する中層部地盤モデル化工程(S33)とを含む。各ステップS31~S33では、設定した地盤水平バネを、対応する深度に配置された各節点に接続する。
本例においては、設計GLから-2.5mの範囲において地盤を表層改良するため、当該部分を浅層部地盤とする。また、杭先端の上部2.0m~下部1.0mの範囲を深層部地盤とする。残部を中層部地盤とする。
【0034】
<<地盤水平バネKの算出式>>
浅層部地盤111、中層部地盤115、及び深層部地盤113内の適所には、各地盤に設定(又は推定)されるN値に基づいて夫々、浅層部地盤水平バネ121(121a~121e)、中層部地盤水平バネ125及び深層部地盤水平バネ123(123a~123c)が設定される。設定された地盤水平バネ121~125から算出される曲げモーメントとせん断力とに基づいて、杭40の応力解析や断面検定が行われる。
【0035】
杭のモデル化に用いる地盤水平バネKの算出は以下の要領で行う。
建築基礎構造設計指針に準拠し、Changの方法と同様の手法で単位長さのkh(水平地盤反力係数)を求め、これに杭の見付幅と分割長さを乗じて地盤水平バネKを求める。
水平地盤反力係数khは下式により算定する。
【0036】
但し、
kh:水平地盤反力係数[kN/m3]
α:評価法によって定まる係数
ξ:群杭の影響を考慮した係数。単杭である本例の場合は1.0
βk:液状化による低減係数。本例では1.0
E0:地盤の変形係数[kN/m2]。700×N値にて推定する。
【0037】
B:無次元化杭径(杭径をcmで表した無次元化杭径、mm)
係数αは、粘性土の場合α=60、砂質土の場合α=80とする。安全を考慮する場合、係数αは小さい方の値で計算する。本例では土質を粘性土と想定してα=60で計算する。
【0038】
地盤水平バネのバネ定数K[kN/mm]は下式により算定する。
但し、
h:負担長さ[m]
B:見付幅(杭本体の外径)[m]
【0039】
地盤水平バネ121の負担長さhは、当該地盤水平バネからその下方に隣接する地盤水平バネまでとすることができる。或いは、地盤水平バネ121の負担長さhは、下方に所定長(例えば0.5m)のように固定値とすることができる。
或いは、地盤水平バネの負担長さhを、上方に隣接する地盤水平バネとの中間位置から下方に隣接する地盤水平バネとの中間位置までのように設定してもよい。この場合、GL=0に設定される最上位の地盤水平バネの負担長さは、当該地盤水平バネの下方にのみ設定する。
バネ算定において、地盤水平バネが水平地盤反力係数Khの異なる層を跨ぐ場合は、支配長さに応じて水平地盤反力係数Khを按分計算する。
応力解析における杭の最下部の境界条件はピンローラとして扱う。
【0040】
<<地盤水平バネの設定間隔>>
各層の地盤111~115に設定する地盤水平バネ121~125は、杭の設置可否を検討するために必要な解析結果を得られる数量及び間隔にて設定される。杭40の挙動をより詳細に分析する必要がある場合には地盤水平バネ121~125の設定間隔は比較的狭くなるように設定され、杭40の挙動を簡略的に分析する場合には地盤水平バネ121~125の設定間隔は比較的広くなるように設定される。
地盤水平バネ121~125の設定間隔は、杭40が埋設される地盤の全深度において一定(例えばL[m])としてもよい。地盤水平バネ121~125の間隔は、地盤の深さに応じて変化させてもよい。地盤水平バネ121~125の間隔を層毎に異ならせてもよい。
浅層部地盤は、上部構造から伝達される応力の影響を大きく受けると共に、杭に働く応力が表層改良された地盤によって大きく減衰する部分であるため、浅層部地盤において地盤水平バネの設定間隔を短くして、上部構造から伝達される応力の影響をより詳細に解析するようにしてもよい。本例では、浅層部地盤の地盤水平バネの設定間隔を0.5m(L/2[m])とし、他の部位における地盤水平バネの設定間隔を1.0m(L[m])としている。
【0041】
本設計方法では、各地盤水平バネ121~125の応力負担長さの範囲に設定されたN値以上の値を、実際の地盤の各範囲が平均N値として有していれば、杭の安全性を保証する。ただし、最下位の地盤水平バネ123cについては、実際の地盤が杭40の下端からその下方にも地盤水平バネ123cが負担する応力負担長さ分(例えばL/2[m])の範囲における平均N値を満たすことを前提として、杭40の安全性を保証する。
【0042】
<<ステップS31:浅層部地盤モデル化工程>>
図4に示す浅層部地盤111は、
図2(f)の表層改良部分103に対応する。本実施形態に係る杭40の設計方法においては、浅層部地盤111に表層改良による地耐力増強処理が行われることを前提とする。
【0043】
浅層部地盤111の表層改良は、コンクリート、ソイルセメント、セメント系固化剤、又はその他の材料を用いて地盤を硬化することにより実施される。表層改良に用いられる材料は、杭40の施工時に地盤の浅層部を掘削した時の地盤状況に応じて最適なものが選定される。
例えば、浅層部地盤111が比較的軟弱であり、ソイルセメントでは応力を十分に低減できるバネ定数を生じるN値を得られない場合には、表層改良にコンクリート(生コンクリート)が用いられる。コンクリートを用いる場合は、概ねN値=50程度を確保できる。
例えば、浅層部地盤111が、コンクリートを用いなくとも、概ねN値=20~30程度を確保できる場合には、表層改良にソイルセメントが用いられる。
なお、杭40の設計時においては、表層改良に何れの材料が用いられるかは不明である。このため、杭40の設計時には、現場の浅層部地盤111にどのような改良が行われるかに関わらず、表層改良を実施することによって確実に保証可能なN値(例えばN値=20)を浅層部地盤111のN値として設定する。なお、安全側で設計するために、N値をより小さく、例えばN値=5のように設定してもよい。
【0044】
浅層部地盤111の最上位置は杭40のトッププレート47の上面位置であり、これを設計上のGL=0(Ground Line=0)とする。軸線Axに沿った方向におけるリブプレート49、49…の長さをRhとすれば、浅層部地盤111は、GL=0から、軸線Axに沿った方向におけるリブプレート49、49…の長さRhよりも深く、リブプレート49、49…の長さRhの2倍を超えない範囲にて設定される。即ち、浅層部地盤111の深度(高さ)Gdは、Rh<Gd≦2Rhに設定される。
【0045】
浅層部地盤111を地中深くまで設定すれば、その分、より小径且つ肉薄で安価な杭40を選定できる可能性はある。しかし、表層改良に多大なコストがかかれば、全体としては杭40を安価に設置できなくなる。従って、浅層部地盤111の深さは、最終的には、表層改良に係るコストと、設置する杭に係るコストとのバランスに基づき決定される。
一例として、リブプレート49、49…の長さRhが1.5mである場合、浅層部地盤111の長さ(深さ)Gdは、2.5m~3.0m程度に設定される。
【0046】
浅層部地盤モデル化工程では、杭40の上部40Aが位置する浅層部地盤111で確保されることが保証できる浅層部N値に基づき、浅層部地盤111内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの浅層部地盤水平バネ121を設定して、浅層部における地盤をモデル化する。
図4には浅層部地盤111に5つの地盤水平バネ121a~121eを設定した例を示す。
図5においてK1~K5が地盤水平バネ121a~121eに対応する。
【0047】
浅層部地盤水平バネ121の1つ(最上位に位置する浅層部地盤水平バネ121a)は、杭40の上端が位置する深度の地盤部分、即ちGL=0に配置される。該位置は、上部構造10から杭40に対して直接的に曲げモーメントMとせん断力Qが印加される部分である。
他の浅層部地盤水平バネ121のうちの少なくとも1つ(図では浅層部地盤水平バネ121d、121e)は、リブプレート49、49…の下端から浅層部地盤111の下端までの適所(リブプレートの下端以深)に設定される。即ち、浅層部地盤水平バネ121d、121eは、表層改良が行われているがリブプレート49、49…による補強が行われていない杭40の部分であって、杭40の断面検定に適した箇所に配置される。当該位置は、浅層部地盤111で減衰された曲げモーメントMとせん断力Qに対して、リブプレート49、49…による補強がなくても、杭40が許容応力範囲内にあることを評価するために重要な部位である。
浅層部地盤111の最下位に位置する浅層部地盤水平バネ121eについては、浅層部地盤111の最下位置までを負担長さとするように設定できる。
【0048】
<<ステップS32:深層部地盤モデル化工程>>
深層部地盤113には、所定の間隔で少なくとも2つの深層部地盤水平バネ123が設定される。
図4、及び
図5には深層部地盤113に3つの深層部地盤水平バネ123a~123cを設定した例を示す。
図5においてK6~K8が地盤水平バネ123a~123cに対応する。
【0049】
深層部地盤水平バネ123の1つ(最下位に位置する深層部地盤水平バネ123c)は、杭40の下端が位置する深度の地盤部分に配置される。該位置は、アンテナ装置等の被支持物の重量を含む上部構造10の重量と杭40の自重とによって生じる圧縮軸力の全体を支持する部分である。
【0050】
深層部地盤113には、アンテナ装置等の被支持物の重量を含む上部構造10の総重量と杭40の自重とによって生じる圧縮軸力を杭40が支持可能な耐力を発揮できるN値を深層部N値として設定する。なお、深層部N値は、水平方向に働く荷重に対して杭40の安全性を保持できる値であること、言い換えれば杭の設計目標値を超えないものである必要がある。
【0051】
上部構造10の総重量を軽量化できれば、深層部N値は比較的小さい値で足りる。例えば、上部構造10の支柱21を繊維強化プラスチック管等(望ましくは炭素繊維強化プラスチック管等)から構成して上部構造10の圧縮軸力を40kNに抑制した場合、この重量を支持可能な最低限の値としてN値=2を設定できる。なお、深層部地盤113についても、安全側となるようにN値を低めにして設計することが望ましい。
深層部地盤113に対しては、特に地盤改良等を行うことは前提としない。しかし、日本国内の一般的な地域であれば、その箇所がどのような軟弱地盤であっても、10m~15m程度掘削すればN値=2の地盤が現れることが経験的に判明している。本実施形態に係る設計方法では、このような地盤内に杭を設置可能であることを保証する。
深層部地盤113の範囲とN値は、打ち込む杭の規格や仕様、杭が要求する値等に応じて決定される。一例として深層部地盤113の範囲とN値は、杭先端より下方に1Dw、上方に1Dwの範囲の平均N値として設定することができる。
設定されたN値では必要な支持耐力を得られない場合、或いは、当該N値の地盤内に打ち込むに適した杭が存在しない場合は、N値をより大きく設定する。
【0052】
<<ステップS33:中層部地盤モデル化工程>>
中層部地盤115には、浅層部地盤111と深層部地盤113に設定した各地盤水平バネ121、123の間隔に応じて適宜の数量の中層部地盤水平バネ125、125…が設定される。
【0053】
中層部地盤115には、深層部地盤113のN値よりも小さいN値が設定される。好ましくは中層部地盤115には中層部N値としてN値=0が設定される。この場合、中層部地盤水平バネ125、125…のバネ定数Kはゼロとして応力解析される。
図5には、中層部地盤115のN値=0、バネ定数K=0となる例として、杭の節点P6~P11と接続される地盤水平バネの図示を省略している。
【0054】
ここで、強風等を受けて揺動する上部構造10から杭40に伝達される曲げモーメントやせん断力等の応力は、中層部地盤115のN値を0に設定しても、1以上に設定しても、杭40の先端部に向かって単調減少する。中層部地盤115に設定されるN値の大きさは、応力の減衰率を変化させる。
上部構造10から杭40に応力が伝達されるが、表層改良した浅層部地盤111は非常に変形しにくく、応力を十分に低減させることができる。このため、中層部地盤115のN値を0に設定しても、杭40の断面検定等に悪影響を及ぼす数値が算出されることはない。このように、中層部地盤115に設定されるN値の大きさは、上部から伝達される応力が杭40に与える影響を考慮するための値としての意義は小さくなる。
中層部地盤115に対しては、特に地盤改良等を行うことは前提としない。実際の地盤が軟弱な場合は中層部地盤のN値が非常に低くなる場合もあるが、設計段階で中層部地盤のN値をゼロに設定すれば、中層部地盤の実際のN値が非常に低い地域にも対応できる。実際の深層部地盤が、モデル化した深層部地盤に設定したN値を有していれば、浅層部地盤及び中層部地盤のN値が比較的小さい軟弱地盤に対しても、本設計方法により設計された杭40を設置可能なことが保証される。
【0055】
<ステップS4:応力解析工程>
<<応力解析ソフト>>
応力解析では、杭の水平方向の挙動を算出する。
杭の応力解析は、平面静的弾性解析とする。応力解析には、例えば株式会社構造システムの応力解析ソフトウェア「SNAP」を用いることができる。
応力解析に関わるプログラムは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入力手段としてのキーボードやマウス、表示手段としてのディスプレイ等を備えたコンピュータにインストールされて使用される。CPUがHDDに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、RAMをワークスペースとして制御プログラムを実行することにより、コンピュータが応力解析装置として機能し、応力解析に必要な各種の機能がコンピュータ上で実現される。
【0056】
<<入力する値>>
杭と上部構造を直接フランジにて接合する場合は、基礎自重がゼロとなるため、上部構造に作用する層せん断力が直接杭頭に作用する。従って、上部構造の最下位置に作用する応力(曲げモーメントMとせん断力Q)を杭頭に入力する。
応力解析ソフトウェアには、地盤の各深度における地盤水平バネのバネ定数K、杭の杭径、肉厚、腐食しろ、鋼材の材質(鋼材の設計基準強度)等、必要なデータを入力する。応力解析により、モデル化された杭の各節点における応力状態(曲げモーメントM、せん断力Q、変形量、回転量等)が算出される。
【0057】
<<応力解析結果>>
図6は、応力解析結果の一例を示す図であり、(a)はモーメント図であり、(b)はせん断力図である。本図は、極めて稀に発生する暴風時における解析結果を示す。
図6(a)に示すように、N値=0とした中層部地盤115では曲げモーメントが単調減少しており、上部構造から杭頭に印加される応力が浅層部地盤で十分に低減されていれば、中層部地盤の状態は杭の曲げ耐力に影響を与えないことがわかる。
【0058】
<ステップS5:杭の検定工程>
仮選定された杭が、設計目標値を満たしているか否かを検定する。
即ち、長期、地震時、風荷重時の各状況下において杭に作用する鉛直方向の軸力が、ステップS2にて算出した杭の支持耐力の範囲内にあるか検討する。
上記各状況下において杭に作用する水平方向の力(曲げモーメント(存在応力)、圧縮側と引張側の存在応力度、せん断応力度)が、夫々ステップS2にて算出した杭の許容耐力及び許容応力度の範囲内にあるか検討する。
杭に作用する各応力が、杭の支持耐力と許容応力度の範囲内にある場合は、仮選定されている杭を使用可能な杭として選定する(ステップS5にてOK)。
杭に作用する各応力が、杭の支持耐力と許容応力度を超える場合は(ステップS5にてNG)、ステップS1に戻り、他の杭を仮選定する。或いは、ステップS3にて、N値をより大きく設定する対応も取りうる。
【0059】
〔効果〕
本実施形態においては、表層改良を前提とした設計方法を採用することにより、設計段階では地盤調査データが得られない箇所であっても、杭の設置を予定する地域(日本国内、日本国外)に依らず、杭の設計を進めることができる。
即ち、地盤をモデル化するに際して、浅層部地盤に対しては表層改良によって確実に確保可能なN値を設定し、深層部地盤に対しては上部構造及び杭の自重を支持可能となる最低限のN値を設定する。このようにすることで、中層部地盤にN値=0を設定しても、言い換えれば杭の軸方向の中間部が位置する地盤がどのようなN値の層であっても、杭の耐力には問題がないことが保証される。従って、地盤調査結果がなくても、地盤の状況によらず、設置可能な杭の設計を進めることが可能となる。
【0060】
なお、杭の設計時点で、杭を設置する箇所のN値が不明でも、後に地盤調査が行われることでN値が判明した場合には、測定されたN値に基づく応力の再計算と杭の再検定を行い、当初の設計とは異なる直径や軸方向長を有する杭を、実際に設置する杭として選定してもよい。
何れの場合も、設計時点ではN値を小さめに(安全側に)設定することで、より安全に杭の設計が可能となる。
【0061】
このように、事前に地盤調査結果が得られない地域であっても、杭の設計を進めることが可能となるため、塔状構造物の建設に必要な土地の専有面積、土地の賃貸借の可否等を考慮した塔状構造物の建設可否を早期に判定できる。
【0062】
〔群杭への応用〕
図7は、本発明の他の実施形態による設計対象となる杭、及び杭が支持する上部構造の一部を示す模式的正面図である。本図には、地盤内に設定する地盤水平バネも示している。上述した杭の設計方法は群杭にも応用できる。
図示する下部構造60は、フーチング61と複数の杭40、40…とを含み構成されている。フーチング61は、その内部に埋設されたアンカーフレーム63、及びアンカーフレーム63から立設した複数のアンカーボルト65、65…を含む。下部構造60は、GLよりも上方に突出したアンカーボルト65、65…、及びナット67、67…を介して、上部構造10のベースプレート13と一体化される。
一例として、フーチング61は平面視で矩形状に成形され、フーチング61の4つの角部に夫々杭40、40…を配置することができる。これにより上部構造10は、フーチング61を介して複数の杭40…により支持される。杭40…とフーチング61とは、杭40の上端部を所定長だけフーチング内に埋め込むことにより一体化できる。或いは、杭40の上端部に杭40の周方向に沿って複数本の杭頭補強筋69、69…をフレア溶接して、杭頭補強筋をフーチング61内に定着させることで、杭40…とフーチング61とを一体化させてもよい。
【0063】
杭40…と上部構造10とがフーチング61を介して接合される場合は、地震時及び風荷重時に夫々の慣性力により上部構造から伝達される応力(曲げモーメントと、せん断力=ベースシアー)を、フーチング61に負担させる設計とできる。このような設計手法を採用することにより、杭40…については、主として長期軸力と地震時及び風荷重時に生じる水平力を負担させる設計とすることができる。即ち、群杭の場合でも、杭自体の設計を単杭と同様に行い得る。
【0064】
群杭の場合はフーチングが存在するため、各杭の頭部が位置する浅層部地盤111には表層改良を行わないことを前提とする。従って、浅層部地盤111には、塔状の建造物を構築するにあたって有するべき最低限度のN値(例えばN値=2)を設定することができる。
深層部地盤113には、上部構造10の重量とフーチング61の重量と杭40、40…の自重とによって生じる圧縮軸力を各杭が分担して支持可能な耐力を発揮できるN値を設定する。ただし、群杭は単杭に比べると各杭の杭径が細くなるため、各杭の杭先端が位置する地盤部分に必要なN値が大きくなる。例えば、深層部地盤113のN値=10のように設定される。
中層部地盤115には浅層部地盤111と深層部地盤113の双方よりも小さいN値(例えばN値=0)を設定することができる。なお、群杭の場合には中層部地盤を設定しない設計手法を採ることも可能である。即ち、中層部地盤に相当する部分の全体を浅層部地盤に含めて取り扱うことができる。
杭40の軸方向の全長は、深層部地盤113に要求されるN値を経験的に確保可能と考えられる深さ位置に杭先が位置する長さとする。
浅層部地盤水平バネ121aのひとつは、フーチング61との境界位置、即ちフーチングの下面位置に設定する。他の地盤水平バネ121b、121cは、杭の設置可否を検討するために必要な解析結果を得られる数量及び間隔にて設定される。より詳細な応力状態に関するデータが必要な場合は、地盤水平バネの間隔を短く設定する。
【0065】
図3(a)のステップS4の応力解析工程では、上部構造10の最下位置に生じるせん断力(ベースシアーQb)と、転倒モーメントMとから、各杭40、40…に生じる負担せん断力と曲げモーメントを応力解析から算出する。ステップS5の検定工程では、上記応力に対して、各杭の許容耐力(短期許容応力度、終局強度)が上回っているか否かを検定する。
このように、本発明の設計方法の基本的な考え方は群杭にも応用できる。
【0066】
〔他の種類の杭に対する適用〕
以上、好ましい実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明に関しては以下の変形例を採りうる。
本発明に係る設計方法は、その他の鋼製杭、木杭、既製コンクリート杭、場所打ちコンクリート杭にも適用可能である。
本発明に係る設計方法は、先端翼43、43を有さない形状の杭にも適用可能である。例えば、軸方向の全長に亘って一定の外径(外形状)を有するストレート杭、杭の先端部を円錐状等に拡大させた拡底杭、杭の頭部を拡径した拡頭杭などにも適用可能である。
なお、ストレート杭や拡頭杭の場合は、深層部地盤に要求されるN値が大きくなることが考えられる。この場合は、杭の軸方向全長を長くして必要なN値を確保できるようにするか、他の種類の杭を選定する。
【0067】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様に係る杭の設計方法は、地盤100に打ち込まれると共に、上部に接合された上部構造10を支持する単杭である杭40の設計方法である。
本設計方法は、杭の上部40Aが位置する浅層部地盤111に確保可能な浅層部N値に基づき、浅層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの浅層部地盤水平バネ121を設定して、浅層部地盤をモデル化する浅層部地盤モデル化工程(S31)と、杭の下部40Bが位置する深層部地盤113に要求される深層部N値に基づき、深層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの深層部地盤水平バネ123を設定して、深層部地盤をモデル化する深層部地盤モデル化工程(S32)と、杭の中間部40Cが位置する中層部地盤115にN値=0を設定すると共に、中層部地盤内の適所に所定の間隔で1以上の中層部地盤水平バネ125を設定して、中層部地盤をモデル化する中層部地盤モデル化工程(S33)とを含む。
更に本設計方法は、上部構造から杭の杭頭に曲げモーメントとせん断力が印加された場合における杭の応力状態を解析する応力解析工程(S4)と、杭が応力状態に耐えうるか否かを検定する検定工程(S5)と、を含む。
本設計方法においては、浅層部地盤は表層改良を予定される地盤の深度範囲に設定され、浅層部N値には表層改良によって得られるN値が設定されることを特徴とする。
【0068】
本態様によれば、地盤調査データがなくても、杭を設計できる。
即ち、上部構造から杭頭に大きな応力が印加されても、浅層部地盤のN値を大きくできれば、この応力は浅層部地盤内で十分に減衰される。そこで、本実施態様においては、浅層部地盤が表層改良されることを前提として、浅層部地盤には表層改良によって確実に確保可能なN値を設定する。
深層部地盤には、深層部地盤が有するべきN値を深層部N値として設定する。深層部N値は、例えば、上部構造の総重量と杭の自重とによって生じる圧縮軸力を支持可能な耐力を発揮できるN値である。
中層部地盤にはN値=0を設定する。中層部地盤にどのようなN値が設定されても、上部構造の変形に基づいて伝達される応力の大きさは、杭の下方に行くに連れて単調減少する。杭頭に印加される応力が浅層部地盤において十分に減衰されていれば、杭の中間部以下はせん断力に関わる許容応力度を満足できるから、N値=0を設定しても設計上問題はない。また、N値=0に設定すれば、実際の地盤よりも小さいN値を設定することになるから、杭を安全側で設計可能となる。
【0069】
<第二の実施態様>
本態様に係る杭の設計方法において、杭40は、鉛直方向に伸びる中空筒状の杭本体41と、杭本体の上端部から外径方向に放射状に突出し、且つ、突出量が杭の下部に向かって漸減する複数の補強用のリブプレート49、49…と、を備えており、浅層部地盤111は各リブプレートの少なくとも全体を埋設する深度範囲に設定されることを特徴とする。
本態様によれば、リブプレートと表層改良された表層改良部分103(浅層部地盤111)において、上部構造10から伝達される応力を減衰させることを前提とする。従って、中層部N値=0に設定しても、問題なく杭を設計可能となる。
【0070】
<第三の実施態様>
本態様に係る杭の設計方法において、浅層部地盤111に設定される浅層部地盤水平バネ121の1つ(浅層部地盤水平バネ121c)は、リブプレート49、49…の下端以深に配置されることを特徴とする。
【0071】
本態様においては、リブプレート49、49…による補強がなくなった杭部分においても、杭40(杭本体41)が許容応力範囲内にあることを評価するために重要な部位として、リブプレートの下端以深に浅層部地盤水平バネの1つを配置する。
【0072】
<第四の実施態様>
本態様に係る杭の設計方法において、深層部N値は、上部構造10の総重量と杭40の自重とによって生じる圧縮軸力に耐えうるN値に設定され、杭の軸方向全長は、杭の下端が、地盤100において深層部N値が出現しうる深度に到達するように設定されることを特徴とする。
上部構造の総重量と杭の自重とに基づいて、深層部地盤が有するべき深層部N値を決定できる。深層部N値を決定できれば、当該N値の地盤が現れる深度がどの程度であるかを経験的に判断することができる。従って、杭の軸方向全長を決定できる。つまり、地盤調査データがなくても、杭を設計できる。
ここで、上部構造を軽量化できれば圧縮軸力が低減されるため、要求される深層部N値は比較的小さくなる。つまり、上部構造の総重量によっては、本設計方法の適用可能地域を広くできる。
【0073】
<第五の実施態様>
本態様に係る杭の設計方法において、杭40は、地中へのねじ込み作用を有する先端翼43、43を有した回転貫入型の鋼管杭であることを特徴とする。
先端翼を有する杭は、杭の先端が発揮する支圧抵抗を大きくできるので、N値が比較的小さい地盤であっても、杭周面の摩擦抵抗のみに頼らずに、上部構造を支持できる。従って、本発明の実施形態に係る杭の設計方法では、杭の先端が岩盤等の支持層に到達することを前提としなくても、杭を設計可能となり、本実施形態に係る設計方法の適用地域を広くできる。本実施形態においては、設置する杭の全長を予測しやすくなる。
【0074】
<第六の実施態様>
本態様に係る杭の設計方法は、地盤100に打ち込まれると共に、フーチング61を介して接合された上部構造10を支持する杭40、40…の設計方法である。
本設計方法は、杭の上部が位置する浅層部地盤111が上部構造を支持するに当たって有するべき最低限度の浅層部N値に基づき、浅層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの浅層部地盤水平バネ121を設定して、浅層部地盤をモデル化する浅層部地盤モデル化工程(S31)と、杭の下部が位置する深層部地盤113に要求される深層部N値に基づき、深層部地盤内の適所に所定の間隔で少なくとも2つの深層部地盤水平バネ123を設定して、深層部地盤をモデル化する深層部地盤モデル化工程(S32)と、杭の中間部が位置する中層部地盤115にN値=0を設定すると共に、中層部地盤内の適所に所定の間隔で1以上の中層部地盤水平バネ125を設定して、中層部地盤をモデル化する中層部地盤モデル化工程(S33)と、を含む。
更に本設計方法は、フーチングから杭の上部に曲げモーメントとせん断力が印加された場合における杭の応力状態を解析する応力解析工程(S4)と、杭が応力状態に耐えうるか否かを検定する検定工程(S5)と、を含むことを特徴とする。
本態様によれば、第一の実施態様と同様に、地盤調査データがなくても、杭を設計できる。
【符号の説明】
【0075】
Ax…(杭、杭本体、及び上部構造の)軸線、10…上部構造、11…台座、13…ベースプレート、15…テーパ付鋼管、17…補強リブ、21…支柱、30…ジョイントプレート、40…杭(下部構造)、40A…上部、40B…下部、40C…中間部、41…杭本体、43…先端翼、45…掘削刃、47…トッププレート、49…リブプレート、51…下部部材(杭の下端部)、53…上部部材(杭の上端部)、55…中間部材(杭の中間部)、60…下部構造、61…フーチング、63…アンカーフレーム、65…アンカーボルト、67…ナット、69…杭頭補強筋、100…地盤、101…作業用ピット、103…表層改良部分、111…浅層部地盤、113…深層部地盤、115…中層部地盤、121、121a~121e…浅層部地盤水平バネ、123、123a~123c…深層部地盤水平バネ、125…中層部地盤水平バネ、F1~F3…締結部材