IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ホッパー及びその運転方法 図1
  • 特開-ホッパー及びその運転方法 図2
  • 特開-ホッパー及びその運転方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063411
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ホッパー及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/42 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
B65G65/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171330
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】小出 克将
(72)【発明者】
【氏名】鈴江 晃也
(72)【発明者】
【氏名】小林 純一
(72)【発明者】
【氏名】森 勝弘
【テーマコード(参考)】
3F075
【Fターム(参考)】
3F075AA07
3F075BA01
3F075BB01
3F075CA01
3F075CA02
3F075CA06
3F075CA09
3F075CC09
3F075CD02
3F075DA09
3F075DA13
(57)【要約】
【課題】 効率的に居付きの問題を抑えることができるホッパー及びこのホッパーの運転方法を提供する。
【解決手段】 頂部から粉粒体を受け入れる略四角筒状の筒状部10と、筒状部10の下部に位置し、少なくとも1つの側面が傾斜面からなる傾斜部11とで構成されるホッパー1であって、傾斜部11を構成する4つの側面のうち、少なくとも1つの側面において傾斜部11の高さ方向の略中央に位置する水平中央線C上にエアノッカー又はバイブレーターなどの振動発生器12が設けられており、該4つの側面の各々における水平中央線Cよりも上側の領域に少なくとも1個のエアレーター13が設けられており、好ましくは水平中央線Cよりも上側の各々の領域において2m当たり1個以上2個以下のエアレーター13が設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部から粉粒体を受け入れる略四角筒状の筒状部と、該筒状部の下部に位置し、少なくとも1つの側面が傾斜面からなる傾斜部とで構成されるホッパーであって、前記傾斜部を構成する4つの側面のうち、少なくとも1つの側面において該傾斜部の高さ方向の略中央に位置する水平中央線上に振動発生器が設けられており、前記4つの側面の各々における前記水平中央線よりも上側の領域に少なくとも1個のエアレーターが設けられていることを特徴とするホッパー。
【請求項2】
前記ホッパーの底部にはコンベアが設けられており、その進行方向の前方側に対向する側面に前記振動発生器としてエアノッカー又はバイブレーターが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のホッパー。
【請求項3】
前記傾斜部の4つの側面の各々において、前記エアレーターは前記水平中央線よりも上側の領域2m当たり1個以上2個以下で設けられていることを特徴とする、請求項2に記載のホッパー。
【請求項4】
前記水平中央線が、前記傾斜部の高さ方向の真中から該高さの1/4ずつ上下に広げた範囲内にあることを特徴とする、請求項3に記載のホッパー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のホッパーの運転方法であって、水分率5%以上15%以下で且つ粒度30mmアンダーの粉粒体を少なくとも30質量%含む原料、中間物、又は製品を頂部から受け入れて一時的に貯留すると共に、底部から切り出すことを特徴とするホッパーの運転方法。
【請求項6】
前記原料、前記中間物、及び前記製品は、いずれも銅品位が10%以上60%以下であることを特徴とする、請求項5に記載のホッパーの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料、中間物、又は製品を貯めるホッパー及び該ホッパーの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硫化銅鉱を原料とする銅製錬法は、前段の乾式製錬工程(熔錬工程とも称する)と、後段の湿式製錬工程(電解工程とも称する)とから構成され、前段の乾式製錬工程では、主原料の銅品位20から30%程度の銅精鉱に対して銅以外の成分を分離することで最終的に銅品位99%まで濃縮した精製アノードを生成し、後段の湿式製錬工程では、この生成した精製アノードを電解製錬することで最終製品として銅品位99.99%の電気銅を生産している。
【0003】
上記の乾式製錬工程では、銅のロスを抑えつつ効率よく銅を濃縮するため、複数種類の炉を用いて段階的に処理が行われる。具体的には、先ず自熔炉に代表される熔錬炉において、銅精鉱を酸素及び空気と共に装入して酸化反応を生じさせることで、該銅精鉱に含まれる過半の鉄を別途添加した硅石と共にカラミ(スラグとも称する)として分離して銅品位60から65%程度のカワ(以下、マットとも称する)を生成する。次に、上記熔錬炉から抜き出したマットを転炉に装入すると共に羽口から空気を吹き込んで上記と同様に酸化反応を生じさせることで、カラミ(転炉スラグとも称する)を分離して最終的に銅品位98%程度の粗銅を生成する。最後に、上記転炉から抜き出した粗銅を精製炉に装入して酸素を還元除去することで銅品位99%の精製粗銅を生成する。この精製粗銅を鋳造することで精製アノードが生産される。
【0004】
上記の銅精錬で用いる転炉は略円筒形の容器を横向けにして回動可能に支持した横長炉からなり、これを中心軸のまわりに回動させることでその側面の炉口からマットを装入したりスラグや粗銅を排出したりすることが可能になる。このため、転炉での処理はバッチ操業となる。また、熔錬炉からのマットの受け入れから粗銅の生成までの転炉での処理は、該マットから上記転炉スラグ及び白カワを生成してこれらを層分離させる造かん期と、該造かん期で得た白カワから硫黄を分離して粗銅を生成する造銅期との2段階に分けて行われる。
【0005】
具体的には、先ず造かん期(造かん工程とも称する)では、例えば自熔炉から受け入れた銅品位60から65%のマットと、フラックスと称するSiOを主成分とする硅石とを転炉に装入した後、羽口から空気を吹き込むことによりマットを酸化処理する。これによりFe-SiO系の転炉スラグと、Fe分をほとんど含まない銅品位70%から80%程度の白カワとが生成される。転炉を傾けることでこの転炉スラグは炉口から抜き出される。次の造銅期(造銅工程とも称する)では、転炉内に残存している白カワに対して再び羽口から空気を吹き込んで酸化処理することで粗銅が生成される。得られた粗銅は転炉を傾けることで炉口からレードルに注ぎ込まれ、後段の精製炉に移送される。
【0006】
ところで、上記の転炉には、固体状のマット(以下、固ヒと称することがある)、二次原料として銅品位95%程度の故銅、銅品位10から60%程度で貴金属を多く含む銅滓・金銀滓等を上記の造かん工程の際に投入して上記の熔錬炉から抜き出した熔体状のマット(以下、熔ヒと称することがある)と共に処理することが一般的に行われている。この銅滓・金銀滓等には、外部から購入した購入銅滓や購入金銀滓のほか、焙焼基板屑等の各類の廃基板や、上記転炉の排ガス処理工程で回収した後に篩別機で篩分けされた煙灰等の繰り返し物を含む。これら銅滓・金銀滓等は上記転炉で処理される前にホッパー、サイロ、又はビン(以下、これらをまとめてホッパーと称する)に一時的に貯留される。そして、処理時にホッパーの底部から一定量ずつ切り出され、ベルトコンベア等の搬送手段により搬送されて該転炉の炉口上部に設けたシュートを介して炉内に投入される。
【0007】
上記の銅滓・金銀滓等のように、様々な性状、形態を有する粉粒体をホッパーに受け入れる場合は、該粉粒体がホッパー内面の特に傾斜部に付着して閉塞などの問題を生じることがあった。このため、ホッパーには粉粒体の付着を防止する様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、鉱工業における粉体や粉体混練物等の処理物を投入し、後工程へ処理物を供給するためのプラント用ホッパー装置において、該処理物のホッパー内面への固着を最小とすることで人為的労働量を削減し、ひいては人命に関わる事故の機会リスクを最小化する技術が開示されている。具体的には、この特許文献1の技術は、ホッパー本体を構成するガイド板に複数の開口を備えると共に、該ガイド板の内面で処理物が接触する部位に該開口を覆うようにポリウレア樹脂からなる剥離膜を設け、この剥離膜をその周囲の固定部のみで該ガイド板に拘束された状態で自己保持させると共に、該開口に臨む剥離膜に外側から衝撃力あるいは変形力を付与するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-118827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の転炉に二次原料として装入する銅滓・金銀滓等は、様々な種類の物質を含んでおり、同じ種類の物質であっても例えば受け入れるロットが異なれば水分率が5から15%程度の範囲内でばらつくことがある。このため、水分率が高い銅滓・金銀滓等をホッパーに受け入れる場合は、該ホッパーの内面のうち、特に下部の傾斜部分に銅滓・金銀滓等が付着して滞留するトラブル(居付きとも称する)が生じることがある。
【0010】
上記の居付きをそのままにしておくと、底部からの銅滓・金銀滓等の排出が不安定になったり、ホッパーの下部が閉塞したりするので、居付きが発生した時はできるだけ早めに付着物を落として居付きを解消するのが好ましい。この居付きの解消法としては、ホッパーの頂部から作業員が突き棒を操作してホッパー内面の付着物を潰したり剥がしたりして落とすことが考えられるが、この作業を行なう際は、ホッパー内から銅滓・金銀滓等を全て払い出して内部を空にしなければならない。このため、いわゆる荷切れ状態となって銅滓・金銀滓等の処理の機会損失となる。
【0011】
例えば、ホッパーの居付きを解消するため該ホッパー内面の付着物を突き棒で頂部から落とす作業が必要と判断した時点で該ホッパー内に3t程度の銅滓・金銀滓が残存している場合、転炉の次バッチ操業において7tの銅滓・金銀滓を処理することが可能な場合であっても、ホッパーを空にして上記居付き解消の作業を行なうために該ホッパーには新たに銅滓・金銀滓を受け入れることができなくなり、差分の4tについては処理の機会損失になる。上記の水分率5から15%程度の銅滓・金銀滓等のように、付着性の粉粒体を受け入れるホッパーにおいては、受け入れた粉粒体の居付きによる荷切れの発生を防ぎ、該粉粒体の処理の機会損失を軽減させるため、居付きが発生しにくいか、あるいは居付きが発生しても、これを自動的に落とす機能を有していることが求められている。
【0012】
上記した特許文献1のホッパー装置を用いることで、上記した居付きの問題をある程度抑えることができると思われるが、例えば既設の大容量のホッパーに特許文献1の技術を適用する場合は、該ホッパーの下部の傾斜部分に対して大規模な改造を行なうことが必要となり、容易に採用することができなかった。本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、既設のホッパーに採用する場合であっても、大規模な改造を特に行なうことなく効率的に居付きの問題を抑制することが可能なホッパー及びこのホッパーの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のホッパーは、頂部から粉粒体を受け入れる略四角筒状の筒状部と、該筒状部の下部に位置し、少なくとも1つの側面が傾斜面からなる傾斜部とで構成されるホッパーであって、前記傾斜部を構成する4つの側面のうち、少なくとも1つの側面において該傾斜部の高さ方向の略中央に位置する水平中央線上に振動発生器が設けられており、前記4つの側面の各々における前記水平中央線よりも上側の領域に少なくとも1個のエアレーターが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、既設のホッパーに採用する場合であっても、大規模な改造を行なうことなく効率的に居付きの問題を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態のホッパーの斜視図である。
図2図1のホッパーの下部に位置する傾斜部の正面である。
図3図1にホッパーに好適に用いられるエアレーターの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態のホッパー及びその運転方法について詳細に説明する。図1に示すように、この本発明の実施形態のホッパー1は、頂部から粉粒体を受け入れる略四角筒状の筒状部10と、この筒状部10の下部に位置し、互いに対向する1対の側面の幅が下方に向かうに従って徐々に狭くなる傾斜部11とで構成される。なお、傾斜部11の形状は少なくとも1つの側面が傾斜面からなるものであれば図1に示す形状に限定されるものではなく、4つの側面のうち1面のみが傾斜した略くさび形状の傾斜部でもよいし、互いに対向する2対の側面のそれぞれの幅がいずれも下方に向かうに従って徐々に狭くなるような略四角錘形状の傾斜部でもよい。
【0017】
本発明の実施形態のホッパー1においては、上記の傾斜部11の少なくとも1つの側面において、傾斜部11の高さ方向の略中央で水平方向に延在する水平中央線C上にエアノッカー又はバイブレーター等の振動発生器12が設けられている。また、傾斜部11は、図2に示すように、その4つの側面の各々における水平中央線Cよりも上方の領域に、少なくとも1個のエアレーター13が設けられている。
【0018】
かかる構成により、ホッパー1内において居付きの発生を抑えることができ、また、居付きが発生しても自動的にこの居付きを落とすことができる。すなわち、上記のように筒状部10と傾斜部11とで構成されるホッパー1においては、その頂部からバケットコンベアー等の搬送手段2を介してホッパー1内に装入される粉粒状の原料、中間物、又は製品は、鉛直方向に垂直な面で切断した断面積が下方に向かうに従って徐々に狭くなる傾斜部11内において圧密されるため居付きが生じやすく、特に、傾斜部11を構成する4つの側面のうち上記水平中央線C以下の領域で囲まれる部分では、ホッパー1内に貯留している上記の原料、中間物、又は製品の重力が加わることから、その圧密の程度は一層高くなるので居付きが特に発生し易くなる。
【0019】
これに対して、上記のように本発明の実施形態のホッパー1においては、傾斜部11の少なくとも1つの側面において水平中央線C上にエアノッカーやバイブレーターなどの振動発生器12がホッパー1の外側に設けられているので、居付きの発生を抑えることができ、居付きが発生してもこれを解消することができる。これらエアノッカーやバイブレーターは、ホッパー1の外側に取り付けるので既設のホッパー1でも比較的簡易に取り付けることができる。このように、振動発生器12は居付きを抑える効果が大きいものの、ホッパー1の側面に直接又は叩き台等を介して間接的に振動を加えるので設備に対する負担も大きい。そのため、4つの側面のうち1つの側面だけに設けるのが好ましい。
【0020】
このように、傾斜部11を構成する4つの側面のうち1つの側面だけに振動発生器12を設ける場合は、ホッパー1の底部に設けられているエプロンコンベアーなどのコンベア14の白矢印で示す進行方向の前方側に対向する側面に振動発生器12を設けることが好ましい。その理由は、ホッパー1内に貯められている原料、中間物、又は製品などが、このホッパー1内の底部に設けられているコンベア14によって切り出される場合は、このコンベア14の進行方向の前方側に向かって該原料、中間物、又は製品などが圧密されるので、傾斜部11を構成する4つの側面のうち、コンベア14の進行方向の前方側に対向する側面において最も居付きが発生し易いからである。
【0021】
なお、エアノッカーによりホッパー1を振動させる原理は、限定するものではないが、例えば、シリンダー内に定期的に圧縮空気を導入することで、該シリンダー内においてスプリングやマグネットで退避位置に保持されているピストンを該シリンダーから突出させ、これにより該ピストンの先端部でホッパーの外壁面を直接打撃することで振動させるか、あるいは該外壁面に取り付けた叩き台を打撃することで該外壁面を間接的に振動させるものである。
【0022】
一方、バイブレーターには、モーターの回転軸に設けたアンバランスウェイトの加振力により強力な振動を発生させる振動モーター式、円筒形の空間内にその接線方向からエアーを導入することで、該円筒形空間を画定する内壁面に設けた溝部に沿ってスチールボールを回転させ、その遠心力により振動を発生させるボール回転式、スプリングにより一方向に付勢されたピストンが収められているシリンダー内にエアーを導入することで振動を発生させるピストン式などがあり、いずれの方法のものも適用することができるが、これらの中では振動モーター式が好ましい。また、上記の水平中央線Cは、図2に示すように、傾斜部11の高さをHとしたとき、傾斜部11の高さ方向の真中から高さHの1/4ずつ上下に広げた範囲内にあることが好ましい。本発明においては、この高さ方向の真中から高さHの1/4ずつ上下に広げた範囲を略中央と定義する。
【0023】
本発明の実施形態のホッパー1は、上記の振動発生器12に加えてエアレーター13が傾斜部11に設けられており、これにより上記のエアノッカーやバイブレーター等の振動発生器12による居付き防止及び解消の効果をより促進することが可能になる。すなわち、ホッパー1内に貯められている原料、中間物、又は製品等は、上述したように傾斜部11の下方に向かって窄む形状と自重とに起因して圧密されることで一部が凝集することがあるが、上記の振動発生器12よりも上方にエアレーター13を設けることで、凝集体が原料、中間物、又は製品に含まれる場合であっても、これを解砕して流動性を高めた状態で、振動発生器12の振動の効果が及ぶ範囲に届けることができる。これにより、エアノッカーやバイブレーター等の振動発生器12の効果をより促進させることができ、居付きの発生をより確実に抑えることができる。
【0024】
なお、エアレーター13は、図3に示すように、皿状の弾性ディスク13aの周縁部を全周に亘ってホッパー1の傾斜部11の内壁面に当接させた状態で取り付けるものであり、この弾性ディスク13aの内側に図示しない空気供給源から供給管13bを介して空気を導入することで、その周縁部をわずかに浮かせて傾斜部11の内壁面に沿った360°の方向に空気を噴出させると共に、弾性ディスク13aの振動によりエアレーター13の周辺の粉粒体を直接振動させるものである。
【0025】
上記のように、一般的にエアレーター13は設備への負担が少ないという利点を有しているものの、エアノッカーやバイブレーター等の振動発生器12に比べると居付き発生の抑制の効果がややマイルドであり、その効果が及ぶ範囲が狭い傾向にある。このエアレーター13の特徴を活かして、上述したように、傾斜部11を構成する4つの側面の各々において、原料、中間物、又は製品の圧密の程度が比較的緩い水平中央線Cよりも上側の領域にエアレーター13を設けている。
【0026】
上記のように傾斜部11を構成する4つの側面の各々に設けられているエアレーター13は、これら4つの側面の各々において、上記の水平中央線Cよりも上側の領域2m当たり1個以上2個以下の割合で設けるのが好ましい。前述したように、エアレーター13の効果やこの効果の及ぶ範囲は、エアノッカーやバイブレーター等の振動発生器12に比べて一般的にマイルドで狭いので、1個のエアレーター13がカバーする上記領域の面積が2mを超えると、エアレーター13の効果が及びにくい領域が増大するおそれがある。逆に、エアレーター13の個数が2m当たり2個を超えると、費用が大きくなるので好ましくない。
【0027】
次に、上記した本発明の実施形態のホッパー1の運転方法について説明する。このホッパー1の運転方法は、水分率5%以上15%以下で且つ粒度30mmアンダーの粉粒体を少なくとも30質量%含む原料、中間物、又は製品を頂部から受け入れて一時的に貯留すると共に、底部のコンベア14を介してその進行方向の下流側に設けられている底部排出口15から切り出すものである。本発明の実施形態のホッパー1で居付きを生じさせやすい原料、中間物、又は製品を取り扱う場合であっても、上記の水分率及び粒度を有する粉粒体が上記の含有率の範囲内で含まれるのであれば居付きを発生させることなく安定的に運転することができる。逆に、水分率15%超のものは居付きの発生頻度が増加するおそれがある。
【0028】
上記の本発明の実施形態のホッパーの運転方法に適した水分率、粒度、及び含有率を有する原料、中間物、又は製品としては、例えば銅製錬転炉の二次原料として装入される銅滓・金銀滓を挙げることができる。この銅滓・金銀滓の銅品位は一般的に10%以上60%以下である。従って、銅品位10%以上60%以下の範囲内であれば、本発明の実施形態のホッパー1の運転方法を適用できると判断してもよい。
【実施例0029】
平面視横幅3m×平面視長さ4.2m×高さ4.6mの略四角筒状の筒状部と、その下部に位置し、最上部の平面視横幅3m×平面視長さ4.2m、最下部の平面視横幅0.7m×平面視長さ2mの略四角錐状の傾斜部とから構成される容量70mのホッパー(銅滓・金銀滓の貯留能力161t)を使用して銅滓・金銀滓を貯留すると共に、底部から切り出す運転を行った。上記傾斜部を構成する4つの側面のうち、ホッパーの底部に設けられているコンベアの進行方向の前方側に対向する側面において、該傾斜部の高さ方向の中央に位置する水平中央線上にバイブレーターとしてユーラステクノ株式会社製のユーラスバイブレーター(型式KEE-10-2C)を1個設けた。更に、上記の4つの側面の各々において、該水平中央線よりも上側の領域にエアレーターとしてミナギ株式会社製のブローディスク(型式BD-15S-B)を2個ずつ互いに取り付け高さが異なるようにして取り付けた。このとき、各側面において上記水平中央線よりも上側の領域2m当たり1個のエアレーターを取り付けたことになる。
【0030】
上記構造の本発明の実施例のホッパーに、水分率が5から10%で且つ粒度が30mmアンダーの粉粒体を30から40質量%含む、銅品位30から40%の銅滓・金銀滓を一時的に貯めると共に、その底部の排出口から転炉に向けて1日当たり5から8回の頻度で切り出す運転を行った。その際、バイブレーターは1回に付き5分間、1回/8Hの頻度で作動させ、エアレーターは常時作動させた。
【0031】
比較例1として、エアレーターを設けないことを除いて上記実施例と同様のホッパーを用いて上記実施例と同様に運転した。また、比較例2として、エアレーター及びバイブレーターを設けないことを除いて上記実施例と同様のホッパーを用いて上記実施例と同様にして運転した。
【0032】
その結果、実施例では、居付き落とし作業を要する程度の居付きは全く発生しなかった。これに対して、居付き落とし作業を要する程度の居付きが比較例1では平均して0.27回/日、比較例2では平均して0.86回/日の頻度で発生した。
【符号の説明】
【0033】
1 ホッパー
2 搬送手段
10 筒状部
11 傾斜部
12 振動発生器
13 エアレーター
13a 弾性ディスク
13b 供給管
14 コンベア
15 底部排出口
C 水平中央線
図1
図2
図3