(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063614
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240502BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B60J1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171702
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 彩夏
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA02
4G061AA26
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB18
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA09
4G061DA14
(57)【要約】
【課題】モールレス仕様の車両に装着された場合であっても、面取り部からの割れが抑制された車両用窓ガラスを提供する。
【解決手段】第1主面、第2主面及び端面を有するガラス板を含む車両用窓ガラスであって、前記ガラス板は、前記第1主面が車外側、前記第2主面が車内側となるように車両に配置され、前記ガラス板は、前記端面の前記第1主面側の少なくとも一部が面取りされた第1面取り部と、前記端面の前記第2主面側の少なくとも一部が面取りされた第2面取り部と、を有し、前記第1面取り部がインク層で被覆された、車両用窓ガラス。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面、第2主面及び端面を有するガラス板を含む車両用窓ガラスであって、
前記ガラス板は、前記第1主面が車外側、前記第2主面が車内側となるように車両に配置され、
前記ガラス板は、前記端面の前記第1主面側の少なくとも一部が面取りされた第1面取り部と、前記端面の前記第2主面側の少なくとも一部が面取りされた第2面取り部と、を有し、
前記第1面取り部がインク層で被覆された、車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記第2面取り部がインク層で被覆された、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
【請求項3】
第1主面、第2主面及び端面を有する2枚のガラス板と、前記2枚のガラス板の間に挟持された中間膜と、を含む車両用窓ガラスであって、
前記2枚のガラス板はそれぞれ、前記第1主面が車外側、前記第2主面が車内側となるように車両に配置され、
前記2枚のガラス板はそれぞれ、前記端面の前記第1主面側の少なくとも一部が面取りされた第1面取り部と、前記端面の前記第2主面側の少なくとも一部が面取りされた第2面取り部と、を有し、
前記2枚のガラス板のうち車外側に位置するガラス板の前記第1面取り部が、インク層で被覆された、車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記車外側に位置するガラス板の前記第2面取り部、及び、前記2枚のガラス板のうち車内側に位置するガラス板の前記第1面取り部、の少なくとも一方がインク層で被覆された、請求項3に記載の車両用窓ガラス。
【請求項5】
前記中間膜は、前記ガラス板と接していない端面がインク層で被覆された、請求項4に記載の車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記車内側に位置するガラス板の前記第2面取り部が、インク層で被覆された、請求項3~5のいずれか1項に記載の車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の開口部に取り付けられる車両用窓ガラスには、自動車のボディとの隙間を埋めるモール部材が装着されている場合がある。従来、モール部材は、3面モールディングと呼ばれる、ガラスの両方の主面と端面とを覆う、略C字状の断面形状であった。
【0003】
これに対し、特許文献1では、いわゆる2面モールディングと呼ばれる、ガラス板の裏面、端面及び面取部を覆い、ガラス板の表面の全域が露出した、略L字状の断面形状のモール部材が開示されている。
さらに近年ではモールレスと称される、ガラス板の端面が露出され、モール部材が外部から視認できない仕様が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用窓ガラスにおいて、端面の面取りがダイヤモンドホイール等を用いて実施されると、面取りされた面にはマイクロクラックが生じる。これに対し、上記モールレスといった仕様であると、自動車のボディとガラスとの隙間に入り込んだ砂等により、マイクロクラックを起点とした割れが生じる懸念があることが分かった。また、ガラスの車体への取り付け等といった車両用窓ガラスのハンドリング時にも、面取り部の車体等への接触により、マイクロクラックを起点とした割れが生じやすくなる。
【0006】
そこで本発明は、モールレス仕様の車両に装着された場合であっても、面取り部からの割れが抑制された車両用窓ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討を行った結果、端面が面取りされたガラス板の、最も車外側に位置する面取り部をインク層で被覆することにより、その表面が平滑化して応力集中が緩和され、上記課題を解決できることが分かった。
【0008】
すなわち、本発明は下記[1]~[6]に関するものである。
[1] 第1主面、第2主面及び端面を有するガラス板を含む車両用窓ガラスであって、
前記ガラス板は、前記第1主面が車外側、前記第2主面が車内側となるように車両に配置され、
前記ガラス板は、前記端面の前記第1主面側の少なくとも一部が面取りされた第1面取り部と、前記端面の前記第2主面側の少なくとも一部が面取りされた第2面取り部と、を有し、
前記第1面取り部がインク層で被覆された、車両用窓ガラス。
[2] 前記第2面取り部がインク層で被覆された、前記[1]に記載の車両用窓ガラス。
【0009】
[3] 第1主面、第2主面及び端面を有する2枚のガラス板と、前記2枚のガラス板の間に挟持された中間膜と、を含む車両用窓ガラスであって、
前記2枚のガラス板はそれぞれ、前記第1主面が車外側、前記第2主面が車内側となるように車両に配置され、
前記2枚のガラス板はそれぞれ、前記端面の前記第1主面側の少なくとも一部が面取りされた第1面取り部と、前記端面の前記第2主面側の少なくとも一部が面取りされた第2面取り部と、を有し、
前記2枚のガラス板のうち車外側に位置するガラス板の前記第1面取り部が、インク層で被覆された、車両用窓ガラス。
[4] 前記車外側に位置するガラス板の前記第2面取り部、及び、前記2枚のガラス板のうち車内側に位置するガラス板の前記第1面取り部、の少なくとも一方がインク層で被覆された、前記[3]に記載の車両用窓ガラス。
[5] 前記中間膜は、前記ガラス板と接していない端面がインク層で被覆された、前記[4]に記載の車両用窓ガラス。
[6] 前記車内側に位置するガラス板の前記第2面取り部が、インク層で被覆された、前記[3]~[5]のいずれか1に記載の車両用窓ガラス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モールレス仕様の車両に装着された場合であっても、車外側に位置するガラス板の第1面取り部がインク層で被覆されることで、その表面が平滑化する。そのため、マイクロクラックに起因した応力集中が緩和され、車両用窓ガラスの面取り部から発生する割れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る車両用窓ガラスの一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、
図3のA-A線断面図の一部を拡大した模式断面図であり、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図14】
図14は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図である。
【
図15】
図15は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
<車両用窓ガラス>
・第1態様
本実施形態に係る車両用窓ガラス10は、ガラス板1が第1主面1aと第2主面1bと端面とを有し、第1主面1aが車外側、第2主面1bが車外側となるように車両に配置される。第1主面1aと第2主面1bとは対向しており、また、第1主面1aと第2主面1bとは、端面により接続されている。
【0014】
本実施形態に係る車両用窓ガラス10におけるガラス板及びインク層の一態様を示す、部分的な模式断面図を
図1に示す。これは、車両用窓ガラス10を構成するガラス板1が1枚の単板である場合である。
本実施形態におけるガラス板1の端面は、
図1に示すように、車両用窓ガラスを車両に配置した際に車外側に位置する第1主面1a側の少なくとも一部が面取りされた第1面取り部1cと、端面の第2主面1b側の少なくとも一部が面取りされた第2面取り部1dを有する。そのうち、少なくとも第1面取り部1cがインク層2で被覆される。
なお、本明細書において、ガラス板の第1主面1a及び第2主面1bとは面取りされた部分を含まない意である。すなわち、第1主面1aには第1面取り部1cは含まれず、第2主面1bには第2面取り部1dは含まれない。
【0015】
第1面取り部1c及び第2面取り部1dは、通常、ダイヤモンドホイール等を用いて形成される。面取り時の研削により、面取り部の表面にはマイクロクラックが生じる。これに対し、車両用窓ガラスの配置がモールレスといった仕様であると、車両のボディとガラスとの隙間に入り込んだ砂等により、マイクロクラックを起点とした割れが生じる懸念がある。また、ガラスの車体への取り付け等といった車両用窓ガラス10のハンドリング時にも、面取り部の車体等への接触により、マイクロクラックを起点とした割れが生じる懸念がある。特に第1面取り部1cは、車外側に位置することから、上記砂等との接触頻度や、上記ハンドリング時の車体等への接触頻度が高く、割れに対する懸念がより高い。
【0016】
これに対し、インク層2で少なくとも第1面取り部1cを被覆することにより、マイクロクラックによる凹凸のうち、特に凹部にインクが入り込み、第1面取り部1c全体の表面が平滑化される。この平滑化により、マイクロクラックに起因した応力集中が緩和され、その結果、面取り部から発生する割れを抑制できる。
【0017】
車両用窓ガラス10の面取り部のみの強度の評価は難しく、定量的な判断は難しい。しかしながら、定性的な判断として、インク層2による面取り部分の被覆によりマイクロクラックが露出しなくなることで、面取り部の強度は向上したものと判断できる。
【0018】
また、上記割れの抑制に加え、第2面取り部1dをインク層2で被覆した場合と比べて、車外側から車両用窓ガラス10を外観観察した場合にも、第2面取り部1dの表面で外光が乱反射することが抑制されるため、外観が良好となり審美性の観点から好ましい。
【0019】
図2は、本実施形態に係る車両用窓ガラスにおけるガラス板及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であり、
図1よりもさらに端面付近を拡大した図である。
本例は、ガラス板1の端面の、第1主面1a側が面取りされた第1面取り部1cに加え、第2主面1b側が面取りされた第2面取り部1dも、インク層2で被覆された例である。
ガラス板1の第1面取り部1c及び第2面取り部1dが共にインク層2で被覆されることにより、第1面取り部1cに加えて、第2面取り部1dにおけるマイクロクラックを起点とした割れを抑制できる。また、外観がより良好となり、審美性の観点からより好ましい。
【0020】
なお、
図1や
図2におけるガラス板1の端面形状は、平坦な領域がなく、単一の曲面を持つ形状である。しかしながら、本実施形態におけるガラス板1は、その端面形状が、平坦部と、2つの曲率の等しい曲面を持つ形状であってもよいし、さらには、面取り部分は曲面に限らず、平面による傾斜が形成された形状であってもよい。
【0021】
ガラス板1の端面が平坦部と2つの曲率の等しい曲面を持つ形状である場合、当該2つの曲面が第1面取り部1c及び第2面取り部1dとなり、インク層2で被覆される領域である。この場合、ガラス板1の端面の平坦部であって、第1面取り部1c及び第2面取り部1dと隣接する領域には、インク層2が被覆されていてもよい。
また、ガラス板1の端面が、平面による傾斜が形成された形状である場合、かかる傾斜部分が第1面取り部1c及び第2面取り部1dとなり、インク層2で被覆される領域である。
【0022】
第1面取り部1cは、ガラス板1の端面の第1主面1a側の少なくとも一部に形成されていればよいが、第1主面1a側のすべてに形成されていてもよい。第1面取り部1cが端面の第1主面1a側の全領域に形成されている場合、インク層2は、そのうち少なくとも一部の領域に形成されていればよく、少なくとも車両用窓ガラスを車両に設置した際に車外側に露出する領域に形成されていることが好ましい。
【0023】
第2面取り部1dは、ガラス板1の端面の第2主面1b側の少なくとも一部に形成されていればよいが、第2主面1b側のすべてに形成されていてもよい。第2面取り部1dが端面の第2主面1b側の全領域に形成されている場合、インク層2は、そのうち少なくとも一部の領域に形成されていることが好ましく、少なくとも車両用窓ガラスを車両に設置した際に、車両のボディとガラスとの隙間に砂等が入り込みやすい領域に形成されていることがより好ましい。
【0024】
本実施形態に係る車両用窓ガラス10におけるインク層2を構成するインクは特に限定されず、有機インク、無機インクのいずれをも使用でき、それぞれ、従来公知のものを使用できる。
【0025】
有機インクとは、顔料や染料といった着色剤を含み、例えば、上記着色剤を含む高分子系樹脂組成物より形成される。着色剤は、有機顔料や有機染料の他、無機顔料を用いてもよい。着色剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、高分子系樹脂組成物は、着色剤の他、必要に応じて樹脂、分散剤、溶剤等を含む。
【0026】
無機インクとは、例えば、顔料を含むガラスフリットを、有機成分との混合体としたペースト状、または液状のセラミックカラー組成物より形成される。顔料は無機顔料を使用し、ペースト状のセラミックカラー組成物をガラス板に塗布等し、熱処理により焼付けることで得られた焼成層がインク層2となる。
【0027】
車両用窓ガラス10が自動車用のフロントガラス、リアガラス、ルーフガラス等のように、主面の外周縁に黒色又は暗色の遮蔽層がある場合には、インク層2のインクも黒色又は暗色といった同系色が好ましく、また、顔料を含まない透明なインクも好ましい。
一方、車両用窓ガラス10が自動車用のドアガラス(サイドガラス)等のように、主面の外周縁に遮蔽層がない場合には、インク層2のインクは、白色や顔料を含まない透明が好ましい。
【0028】
黒色とする場合の顔料は、カーボンブラック、グラファイト、及び金属酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料又は染料が好ましい。
【0029】
金属酸化物からなる顔料としては、例えば、CuO・Cr2O3(ブラック)、CoO・Cr2O3(ブラック)、Fe2O3(ブラウン)、TiO2(ホワイト)、CoO・Al2O3(ブルー)、NiO・Cr2O3(グリーン)等が挙げられ、これらを組合せて使用してもよい。このような顔料を用いる場合、所望される色、光沢、及び不透明度、すなわち、透過率の特性を付与できる。
【0030】
金属酸化物を用いて黒色とする場合には、Cu、Fe、Co、Ni、Cr、Si、Mn、Al及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物顔料が好ましく、これらのうち2種以上を含む複合酸化物顔料がより好ましく、Cu(Cr,Mn)2O4、CuCrO4、Cr2O3:Fe2O3、Cr2O3:Fe2O3:CoO、(Fe,Mn)(Mn,Fe)2O4、(Co,Fe)(Fe,Cr)2O4、(Co,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)2O4、(Co,Fe)(Ni,Cr)2O4、及び(Cu,Fe,Mn)(Fe,Mn,Al)2O4からなる群より選ばれる少なくとも1種の複合酸化物顔料がさらに好ましい。
【0031】
インク層2の厚みは、インクの種類や車両用窓ガラスの種類や設置箇所等によって異なるために一概に言えず、適宜変更可能である。インク層の厚みは、JIS B 0601(1994年)に準拠し、表面粗さ測定機を用いた触針式の測定により得られる。なお、インク層の厚みとは、インク層の前駆体であるインク組成物の塗布後の厚みではなく、当該インク組成物を硬化した後のインク層の厚みである。
【0032】
インク層2が有機インクで構成される場合、インク層2の厚みは、例えば、1~30μmが好ましく、3~20μmがより好ましく、5~15μmがさらに好ましく、5~10μmが特に好ましい。具体的には、ホール等の欠陥を防ぎ、面取り部からの割れをより効果的に抑制する観点から、上記厚みは1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。また、インク層2を1回の印刷で形成させ、コストやタクトを減らす観点から、上記厚みは30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。
【0033】
インク層2が無機インクで構成される場合、インク層2の厚みは、例えば、3~30μmが好ましく、10~20μmがより好ましく、10~15μmがさらに好ましい。具体的には、例えば、酸性雨が浸み込んだ際の変色や透けを防ぐ観点から、上記厚みは3μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、応力の影響を防ぐ観点や、材料コストの観点から、上記厚みは30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。なお、インク層2の厚みは、インク層2の断面における任意の長さ100μmの範囲での平均である。
【0034】
インク層2の厚みは一定である必要はなく、第1面取り部1c内で厚みに差があってもよい。例えば、ガラス板1の端面が上方になるようにガラス板1を立て、インクジェット印刷によりインク層2を形成した場合には、液垂れにより、頂点となるガラス板1の端面の先端におけるインク層2の厚みが比較的薄くなりやすい。一方、ガラス板1の第1主面1a又は第2主面1bが上方になるようにガラス板1を寝かせて、インクジェット印刷によりインク層2を形成した場合には、液垂れにより、頂点となるガラス板1の端面の先端におけるインク層2の厚みが比較的厚くなりやすい。
ただし、上記はインク層2となるインク組成物の塗工方法や条件を調整し、インク層2の厚みを均一とすることを何ら排除するものではない。
【0035】
インク層2は、ガラス板1の第1面取り部1cや第2面取り部1dを被覆していればよいが、面取り部分以外の領域、すなわち第1主面1aや第2主面1bといった平面部分にも設けられていてもよい。
【0036】
本実施形態に係る車両用窓ガラス10におけるガラス板1は、有機ガラス、無機ガラスのいずれを用いてもよく、無機ガラスである場合、例えば、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。
【0037】
ガラス板1は、必要に応じて強化処理を行ったものを使用できる。特に、車両用窓ガラスが、自動車用窓ガラスであり、サイドガラスやリアガラスとして用いられる場合は、必要とされる安全基準に応じて強化処理が行われる場合がある。
【0038】
強化処理は化学強化処理でも物理強化処理、すなわち風冷強化処理でもよいが、強化処理時間やコストの点から物理強化処理が好ましい。
【0039】
物理強化処理は、ガラス板の表面と内部との温度差によってガラス板表面に圧縮応力層を生じさせることで、ガラス板表面を強化する処理方法である。具体的には、ガラスの徐冷点以上、例えば500℃~600℃以上に加熱したガラス板に冷却媒体を吹き付けて急冷させる等、徐冷以外の操作により、温度差による圧縮応力層を生じさせる。
【0040】
化学強化処理は、大きなイオン半径の金属イオンを含む金属塩の融液にガラス板を浸漬する等の方法で金属塩に接触させ、ガラス中の小さなイオン半径の金属イオンを大きなイオン半径の金属イオンで置換する処理である。典型的には、リチウムイオンに対してはナトリウムイオン又はカリウムイオンで、ナトリウムイオンに対してはカリウムイオンで、それぞれ置換する。
【0041】
化学強化処理を行う場合、金属塩の融液、すなわち溶融塩は従来公知のものを使用できる。化学強化処理の条件はガラス組成や溶融塩の種類等を考慮して適切に選択する。また、化学強化処理を多段階で行ってもよく、アルカリ溶液での洗浄やプラズマ照射による洗浄等を行ってもよい。
【0042】
ガラス板1の厚みは、車両用窓ガラス10の車両への設置箇所によっても異なるが、例えば、自動車用の窓ガラスの場合には、概ね0.2~5.0mmであり、0.3~3.0mmが好ましい。
【0043】
自動車用のフロントガラスの場合には、ガラス板1の単板ではなく、合わせガラスとすることが一般的であるが、合わせガラスとする場合の、車外側に位置するガラス板の厚みは、耐飛び石性能等の強度の観点から1.1mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましい。また、合わせガラスの軽量化の観点からガラス板の厚みは3.0mm以下が好ましく、2.8mm以下がより好ましい。
上記合わせガラスにおいて、車内側に位置するガラス板の厚みは、ハンドリング性の観点から0.3mm以上が好ましく、また、軽量化の観点から2.3mm以下がより好ましい。
なお、車両用窓ガラス10として合わせガラスを用いる場合の詳細は後述するが、合わせガラスとしてフロントガラスに用いる場合、車外側に位置するガラス板、及び車内側に位置するガラス板は共に、破損時のクラックがガラスの全面に走らないようにする観点から、いずれも強化処理されていない未強化ガラスであることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る車両用窓ガラスは、インク層2の他に、例えば、セラミックカラー層や導電層、ハンダ層等が形成されていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに低反射膜層や断熱膜層、UV(紫外光)カット膜層等を備えていてもよい。これらは、それぞれ従来公知のものを従来公知の方法で使用できる。
【0045】
・第2態様
本実施形態に係る車両用窓ガラス100は、合わせガラスを用いる。具体的には、車両用窓ガラス100は、第1主面、第2主面及び端面を有する2枚のガラス板と、2枚のガラス板の間に挟持された中間膜と、を含む。ガラス板はそれぞれ、第1主面と第2主面とは対向しており、また、第1主面と第2主面とは、端面により接続されている。
本実施形態に係る車両用窓ガラスが自動車用のフロントガラスである場合の一例を
図3に示すが、
図3のA-A線断面図の一部、すなわち、ガラス板の端面を含む端部に近い領域を拡大した模式断面図が
図4である。
【0046】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る車両用窓ガラス100が自動車用のフロントガラスである場合、車内側に位置するガラス板102の第2主面102b上の周縁部に、セラミックカラー層4が設けられていてもよい。セラミックカラー層4はガラス板102と自動車のボディとを接着して保持しているウレタンシーラント等の接着剤が、紫外線により劣化することを防止するための遮蔽層としての役割を担う。第2主面102b上の周縁部とは、ガラス板102の第2主面102bの外周に沿った、当該外周の近傍であるが、第2主面102bの最も外側である最外縁領域でなくともよく、例えば、第2主面102bの外周から1.5mm以内の領域にセラミックカラー層4が設けられていることが好ましい。
また、
図4とは異なり、車外側に位置するガラス板101の第1主面101a又は第2主面101bや、車内側に位置するガラス板102の第1主面102a上の周縁部にセラミックカラー層4が設けられていてもよい。
【0047】
セラミックカラー層4は、例えば、黒色又は暗色のセラミック製の被膜であり、可視光のみならず紫外光の透過をも遮られる。そのため、アンテナや電熱線等の導電層や、ミラーベースやブラケット等の実装部品が車外から視認されにくくなるように隠蔽し、外観の審美性の観点から好ましいことに加え、自動車のボディとガラスとを接着して保持している接着剤の紫外線による劣化を防止できる。
セラミックカラー層4は従来公知のものを、従来公知の方法により形成できる。なお、セラミックカラー層4の代わりに、有機インクや無機インクで遮蔽層を形成してもよい。
【0048】
車外側又は車内側のガラス板101,102の第1主面101a,102a上や第2主面101b,102b上に、先述したセラミックカラー層4が設けられている場合、第1面取り部101c,102cや第2面取り部101d,102dを被覆するインク層201,202と、セラミックカラー層4との間には、第1主面101a,102a又は第2主面101b,102bが露出している領域があってもよく、当該領域がなくてもよい。
【0049】
また、インク層201,202がガラス板101,102の第1面取り部101c,102cのみならず、第1主面101a,102aの一部を被覆していてもよく、その場合には、インク層201,202とセラミックカラー層4とは一部重複していてもよい。同様に、インク層201,202がガラス板101,102の第2面取り部101d,102dのみならず、第2主面101b,102bの一部を被覆していてもよく、その場合には、インク層201,202とセラミックカラー層4とは一部重複していてもよい。
インク層201,202とセラミックカラー層4とが一部重複している場合、セラミックカラー層4がガラス板101,102と直接接していると、良好な外観を得る観点から好ましい。インク層201,202とセラミックカラー層4とは、良好な外観を得る観点からは、重なっていることが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る車両用窓ガラス100は、合わせガラスを構成する2枚のガラス板のうち、少なくとも車外側に配置されるガラス板101が、上記「・第1態様」に記載されたガラス板1であって、その第1面取り部101cがインク層201で被覆されていればよい。
【0051】
本実施形態に係る車両用窓ガラス100において、2枚のガラス板101,102はそれぞれ、第1主面101a,102aが車外側、第2主面101b,102bが車内側となるように車両に配置される。2枚のガラス板101,102はそれぞれ、端面の第1主面101a,102a側の少なくとも一部が面取りされた第1面取り部101c,102cと、端面の前記第2主面101b,102b側の少なくとも一部が面取りされた第2面取り部101d,102dと、を有することが好ましく、少なくとも車外側に位置するガラス板101の第1面取り部101cはインク層201で被覆される。また、車外側に位置するガラス板101の第1面取り部101cに加え、車外側に位置するガラス板101の第2面取り部101d及び車内側に位置するガラス板102の第1面取り部102cの少なくとも一方がインク層201,202で被覆されていることが好ましく、さらに車内側に位置するガラス板102の第2面取り部102dもインク層202で被覆されていてもよい。
【0052】
本実施形態に係る車両用窓ガラス100における車内側に配置されるガラス板102は任意であるが、上記「・第1態様」に記載されたガラス板1が好ましい。
車外側及び車内側に配置される2枚のガラス板101,102の材質は同じであっても、異なっていてもよく、大きさや形状も同じであっても異なっていてもよいが、車両へ設置した際の形状加工が不要となる観点から、その平面形状は合同か、略合同が好ましい。車外側に位置するガラス板101の厚みは、例えば1.1mm以上3.5mm以下である。また、車内側に位置するガラス板102の厚みは、例えば0.5mm以上2.3mm以下である。
【0053】
車両用窓ガラス100が自動車用のフロントガラスである場合には、中間膜3を含めた車両用窓ガラス100全体の厚みは、例えば2.3mm以上8.0mm以下である。
【0054】
本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるインク層201,202も、上記「・第1態様」に記載されたインク層2と同じものを使用でき、好ましい態様も同様である。
【0055】
本実施形態に係る車両用窓ガラス100における中間膜3は、従来公知のものを使用でき、1層のみからなる膜でも、多層からなる膜でもよい。中間膜3を介して合わせガラスとすることにより、ガラス板101,102が破砕しても破片が中間膜3に付着することで、飛散し難くなる。
【0056】
中間膜3は、例えば、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。また、特許第6065221号公報に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物も好適に使用できる。
熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また「可塑化」とは、可塑剤の添加により可塑化されていることを意味する。また、中間膜3の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂等のように、可塑剤を含有していない樹脂であってもよい。
【0057】
これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂がより好ましい。
ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール系樹脂、PVAとn-ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(PVB)等が挙げられる。特に、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、PVBがより好ましい。なお、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0058】
また、中間膜3は、トリエチレングリコールビス2-エチルヘキサネート、テトラエチレングリコールジ-N-ヘプタノエート等の可塑剤を含んでいてもよい。
【0059】
中間膜3の厚みは、例えば、車両用窓ガラスが自動車用のフロントガラスである場合には0.2~1.0mmが好ましく、0.3~0.8mmがより好ましい。具体的には、合わせガラスを構成する2枚のガラス板の密着性や遮音性等の観点から、上記厚みは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。また、材料コストの観点から、上記厚みは1.0mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましい。
【0060】
図4は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び車内側のガラス板102の第1面取り部102cがインク層201,202で被覆された例である。かかる態様は、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び車内側のガラス板102の第1面取り部102cで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0061】
図5は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であり、
図4よりもさらに端面付近を拡大した図である。かかる態様は、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102cがインク層201,202で被覆された例である。かかる態様は、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102cで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0062】
図6は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、車外側のガラス板101の第1面取り部101c、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dがインク層201,202で被覆された例である。かかる態様は、車外側のガラス板101の第1面取り部101c、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0063】
図7は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dがインク層201.202で被覆された例である。かかる態様は、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0064】
図8は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、
図4で示した車両用窓ガラス100に比べて、中間膜3の端面の位置が、ガラス板の端部に近く、車外側のガラス板101の第2面取り部101dや車内側のガラス板102の第1面取り部102cの一部が中間膜3によって覆われているために、面取り部の露出が少ない例である。上記車外側のガラス板101の第2面取り部101dや車内側のガラス板102の第1面取り部102cの一部が中間膜3によって覆われていることは、車外側のガラス板101と車内側のガラス板102とをより強固に接着できるため、好ましい。
また、
図8のように、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び車内側のガラス板102の第1面取り部102cがインク層201,202で被覆された態様は、
図4と同様、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び車内側のガラス板102の第1面取り部102cで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0065】
図9は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、
図8と同様、中間膜3の端面の位置が、ガラス板の端部に近く、車外側のガラス板101の第2面取り部101dや車内側のガラス板102の第1面取り部102cの一部が中間膜3によって覆われているために、面取り部の露出が少ない例である。
図9のように、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス102板の第1面取り部102cがインク層201,202で被覆された態様は、
図5と同様、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102cで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0066】
図10は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、
図8と同様、中間膜3の端面の位置が、ガラス板の端部に近く、車外側のガラス板101の第2面取り部101dや車内側のガラス板102の第1面取り部102cの一部が中間膜3によって覆われているために、面取り部の露出が少ない例である。
図10のように、車外側のガラス板101の第1面取り部101c、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dがインク層201,202で被覆された態様は、
図6と同様、車外側のガラス板101の第1面取り部101c、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0067】
図11は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、
図8と同様、中間膜3の端面の位置が、ガラス板の端部に近く、車外側のガラス板101の第2面取り部101dや車内側のガラス板102の第1面取り部102cの一部が中間膜3によって覆われているために、面取り部の露出が少ない例である。
図11のように、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部101c及び第2面取り部102dがインク層201,202で被覆された態様は、
図7と同様、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dで外光が乱反射することを抑制でき、好ましい。
【0068】
図12は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、
図8のように面取り部の露出が少ないことに加え、中間膜3の端面もインク層で被覆される。中間膜3の端面もインク層で被覆されることは、雨水等が中間膜3の端部から侵入することを抑制する観点から好ましい。
また、
図12のように車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び車内側のガラス板102の第1面取り部102cがインク層201,202で被覆された態様は、
図4と同様、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び車内側のガラス板102の第1面取り部102cで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0069】
図13は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、
図9のように面取り部の露出が少ないことに加え、中間膜3の端面もインク層で被覆される。中間膜3の端面もインク層で被覆されることは、雨水等が中間膜3の端部から侵入することを抑制する観点から好ましい。
また、
図13のように車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102cがインク層201,202で被覆された態様は、
図5と同様、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102cで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0070】
図14は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100におけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、
図10のように面取り部の露出が少ないことに加え、中間膜3の端面もインク層で被覆される。中間膜3の端面もインク層で被覆されることは、雨水等が中間膜3の端部から侵入することを抑制する観点から好ましい。
また、
図14のように車外側のガラス板101の第1面取り部101c、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dがインク層201,202で被覆された態様は、
図6と同様、車外側のガラス板101の第1面取り部101c、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0071】
図15は、本実施形態に係る車両用窓ガラス100おけるガラス板、中間膜及びインク層の一態様を示す部分的な模式断面図であるが、
図11のように面取り部の露出が少ないことに加え、中間膜3の端面もインク層で被覆される。中間膜3の端面もインク層で被覆されることは、雨水等が中間膜3の端部から侵入することを抑制する観点から好ましい。
また、
図15のように車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dがインク層201,202で被覆された態様は、
図7と同様、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dで外光が乱反射することを抑制でき、かつ、強度低下を防ぐ観点から好ましい。
【0072】
上記の他、車外側のガラス板101の第1面取り部101cがインク層201で被覆され、車外側のガラス板101の第2面取り部101d、並びに、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dがインク層で被覆されず露出している態様や、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び第2面取り部101dがインク層201で被覆され、車内側のガラス板102の第1面取り部102c及び第2面取り部102dがインク層で被覆されず露出している態様、車外側のガラス板101の第1面取り部101c及び車内側のガラス板102の第2面取り部102dがインク層202,202で被覆され、車外側のガラス板101の第2面取り部101d及び車内側のガラス板102の第1面取り部102cがインク層で被覆されず露出している態様等、車外側のガラス板101の第1面取り部101cがインク層201で被覆されていれば、本実施形態に係る車両用窓ガラス100に含まれる。
【0073】
また、本実施形態に係る車両用窓ガラス100は、構成するガラス板の枚数が3枚以上からなる合わせガラスであってもよいが、軽量化の観点からは、2枚がより好ましい。
また、車両用窓ガラス100を構成するガラス板の枚数が3枚以上である場合でも、最も車外側に位置するガラス板の第1面取り部がインク層で被覆されていればよく、それ以外のガラス板の面取り部分に対するインク層での被覆の有無は任意である。
また、各ガラス板の材質は同じであっても、異なっていてもよく、大きさや形状も同じであっても異なっていてもよいが、車両へ設置した際の形状加工が不要となる観点から、その平面形状は合同か、略合同が好ましい。
【0074】
<車両用窓ガラスの製造方法>
・第1態様
本実施形態に係る車両用窓ガラスは、第1面取り部と第2面取り部とを有するガラス板を準備する工程、インク層となるインク組成物を準備する工程、及び、ガラス板の少なくとも第1面取り部にインク組成物を塗工し、硬化することでインク層を形成する工程を含む製造方法により得られる。
【0075】
第1面取り部と第2面取り部とを有するガラス板を準備する工程では、ガラス板を製造しても、市販のものを用いてもよい。また、市販のガラス板に対して、何等かの処理等を行ってもよい。
第1面取り部と第2面取り部は、従来公知の方法により形成できるが、例えば、ダイヤモンドホイール、回転砥石、レーザー等を用いることが出来る。
【0076】
インク層となるインク組成物を準備する工程では、インク層が有機インクからなる場合には、インク組成物は、インク層を構成するインクの他、樹脂、溶媒、分散剤等が含まれていてもよく、樹脂を含むインク組成物を高分子系樹脂組成物と称する。
【0077】
高分子系樹脂組成物における樹脂は、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等のいずれの性質を有する樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂が好ましい。
具体的には、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノキシ樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、透明ABS樹脂、セルロース類、ポリアセタール等の公知の樹脂が挙げられる。
また樹脂は、ホモポリマーからなる樹脂でも、これらの樹脂のモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマーからなる樹脂でもよい。バインダーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
光硬化性樹脂としては、UV光を照射することで樹脂が硬化するという性質を有することが、樹脂硬化プロセスの簡易化、焼成炉レスの観点から好ましい。上記で示した樹脂の中では、例えばアクリル系樹脂等に光重合開始剤を添加することで光硬化性樹脂とでき、これに光を照射することで光硬化膜が得られる。
【0079】
熱硬化性樹脂としては、ガラス板の徐冷点以上の焼成温度よりも低い温度で硬化することが、ガラス板の成形された形状保持の点から好ましい。具体的には、樹脂の熱硬化温度は500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。また、樹脂の硬化安定性やガラス板との密着性の観点から、樹脂の熱硬化温度は100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。
このような熱硬化性樹脂として、上記で示した樹脂の中では、例えばアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0080】
分散剤は特に限定されず、例えば、セルロース誘導体、有機酸、テルペン化合物等が挙げられる。有機酸は、例えば不飽和カルボン酸重合体が挙げられるが、その他の有機酸であってもよい。分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
溶媒は特に限定されず、例えば、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等の公知の溶媒が挙げられる。
アルコール類としては、例えばイソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等を使用できる。エステル類としては、例えば酢酸エチル等を使用できる。ケトン類としては、例えばメチルエチルケトンを使用できる。芳香族炭化水素系溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ソルベッソ(商標)100、ソルベッソ(商標)150等を使用できる。脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えばヘキサン等を使用できる。
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
高分子系樹脂組成物におけるインクである色材の含有量は、例えば0.1~10質量%が好ましく、樹脂の含有量は、例えば1~50質量%が好ましく、溶剤の含有量は、例えば20~80質量%が好ましい。
【0083】
インク層となるインク組成物を準備する工程では、インク層が無機インクからなる場合には、インク組成物は、無機顔料とガラスフリットとを、有機ビヒクルとの混合体としたペースト状セラミックカラー組成物が好ましい。ペースト状セラミックカラー組成物をガラス板に塗布等し、熱処理により焼付けることで焼成層であるインク層を形成できる。
【0084】
ペースト状セラミックカラー組成物は、ガラスフリットと顔料に加え、さらにフィラーを含むことが好ましい。
【0085】
ガラスフリットは各種特性を得るため、1種のガラスフリットを用いても、2種以上のガラスフリットを混合して用いてもよい。さらに同じ組成のガラスフリットで粒径の異なる2種以上を適時混合して使用してもよい。
【0086】
ガラスフリットの軟化点Tsは500℃~580℃が好ましく、520~540℃がより好ましい。2種以上のガラスフリットを混合して使用する場合には、1種以上が上記範囲内の軟化点であることがより好ましく、全てのガラスフリットの軟化点が上記範囲であることがさらに好ましい。
【0087】
ガラスフリットの粒径D50は0.1~3.0μmが好ましく、0.3~2.5μmがより好ましく、0.5~2.0μmがさらに好ましい。ここで、微粒化し過ぎることで比表面積が大きくなり、大気中の水分や炭酸ガスを吸着し、インク層を形成する際に発泡して、透過率や強度等の低下を招くのを防ぐ観点から、ガラスフリットの粒径D50は0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。
ガラスフリットの粒径D50は体積基準の粒度分布の累積メジアン径D50であり、レーザー回折散乱法により測定される。
【0088】
ガラスフリットの最大粒子径Dmaxは、ガラス板表面にスクリーン印刷する場合には、目詰まりを防止する観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。また粗大粒子が溶け残ることで、インク層の焼結性悪化や強度低下を防ぐ観点から、ガラスフリットの最大粒子径Dmaxは10μm以下がよりさらに好ましい。
【0089】
フィラーとしては、例えば結晶化促進剤や、低膨張フィラーと称されるもの、酸化剤等が挙げられる。
【0090】
結晶化促進剤は、インク層の結晶化領域を多くしたい場合に添加することが好ましい。セラミックカラー組成物が焼成される際に、ガラスフリットの結晶化温度よりも高い温度で熱処理されることで結晶化領域が形成される。セラミックカラー組成物に結晶化促進剤が含まれると、結晶化促進剤が結晶核となるために、上記結晶化温度よりも低い温度で結晶化が開始して結晶化領域が増える。
【0091】
結晶化促進剤の種類は、ガラスフリットの組成によって異なる。例えば、ガラスフリットがBiを含む場合には、ビスマスシリケート系の結晶化促進剤が好ましい。また結晶相が類似のパターンを有する場合、組成が異なっていても、結晶化が促進される場合もある。
【0092】
低膨張フィラーは、従来公知のものを使用でき、例えば、コージェライト、ジルコン、アルミナ、チタニア、リン酸ジルコニウム、シリカ、フォルステライト等が挙げられる。これらのうち1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、コージェライト、ジルコン及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することがさらに好ましい。
【0093】
有機ビヒクルとは、高分子化合物を溶媒に溶解させたものである。高分子化合物も溶媒も従来公知のものを使用できる。高分子化合物は、例えば、エチルセルロース、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ブチラール系樹脂等を使用できる。溶媒は、例えば、α-テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等を使用できる。
【0094】
ガラス板の少なくとも第1面取り部にインク組成物を塗工し、硬化することでインク層を形成する工程におけるインク組成物の塗工方法は、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、パッド印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、刷毛塗り等が挙げられ、特に限定されない。
【0095】
インクが熱硬化型であれば、インク組成物をガラス板表面に塗工した後、加熱により硬化を促進させてもよい。また、インクが光硬化型であれば、インク組成物をガラス板表面に塗工した後、紫外光等の光を照射することで硬化を促進させてもよい。
【0096】
インク組成物を塗工する際は、ガラス板1の端面が上方になるようにガラス板1を立て、インク組成物を塗工してもよく、ガラス板1の第1主面1aが上方になるようにガラス板1を寝かせて、インク組成物を塗工してもよい。ガラス板の第2面取り部1dにインク組成物を塗工する際には、ガラス板1の第2主面1bが上方になるようにガラス板1を寝かせてもよい。
【0097】
インク組成物を塗工する際のガラス板1の向きや、インク組成物の粘度等により、第1面取り部1cや第2面取り部1dにおけるインク層2の厚みを調整でき、厚みの均一不均一性も制御できる。
【0098】
無機インクからなるインク層を形成する際には、ガラス板への焼付のための熱処理が必要であるが、熱処理は、例えばIR炉等の加熱炉を用いる。この際に、ガラス板の徐冷点以上の焼成温度で熱処理することで、インク層の形成と同時にガラス板を曲げ成形してもよい。
【0099】
本実施形態に係る車両用窓ガラスの製造方法において、上記ガラス板の少なくとも第1面取り部にインク組成物を塗工し、硬化することでインク層を形成する工程の前に、ガラス板を予熱する工程を含むことが好ましい。これにより、インク組成物に含まれる溶媒等が早く揮発し、塗工されたインク組成物のガラス板表面への滲み拡がりを抑制でき、インク層2の厚みの調整や、厚みの均一不均一性の制御、印刷デザインの保持が容易となる。
【0100】
・第2態様
本実施形態に係る車両用窓ガラスは、従来公知の合わせガラスの製造方法と同様の方法で得られた合わせガラスに対し、少なくとも車外側に位置するガラス板の少なくとも第1面取り部にインク層を形成することで得られる。
その際のインク層の形成は、上記「・第1態様」と同様であり、好ましい態様も同様である。また、少なくとも車外側に位置するガラス板の少なくとも第1面取り部にインク組成物を塗工し、硬化することでインク層を形成する工程の前に、「・第1態様」と同様に、ガラス板を予熱する工程を含むことも好ましい。
【0101】
また、ガラス板の単板に対して面取り及びインク層の形成を行った後に、中間膜を介して、従来公知の方法により合わせガラスを得て、本実施形態に係る車両用窓ガラスとしてもよい。
【実施例0102】
以下に試験例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。例1~例4は参考実施例であり、例5及び例6は参考比較例である。これら試験例のガラス板はいずれも、100mm×100mm×2.0mmの平板状ガラスに対して第1面取り部と第2面取り部を設けたガラス板であって、実際の車両用窓ガラスのサイズより小さい。しかしながら、第1面取り部及び第2面取り部に対するインク層の被覆の有無による本発明の効果を検証するにあたって、車両用窓ガラスの大きさとした場合の実施例、比較例と同じ結果が得られると考えてよいことから、実施例、比較例として扱える。
【0103】
(例1)
車外側に位置するガラス板101として、厚み2mmのソーダライムガラス(AGC社製)に対し、端面の第1主面側及び第2主面側の両方をダイヤモンドホイールにより面取りすることで、第1面取り部及び第2面取り部を有するガラス板を得た。
車内側に位置するガラス板102として、厚み1.8mmのソーダライムガラス(AGC社製)について、上記と同様にして、面取りされたガラス板も用意した。そして、中間膜3として積水化学工業社製のS-LECを介して合わせガラスを作製した。
得られた合わせガラスに対し、車外側に位置するガラス板101の第1面取り部及び第2面取り部、並びに、車内側に位置するガラス板102の第1面取り部及び第2面取り部に対し、インク層201,202を形成し、合わせガラスを得た。
上記インク層の形成は、ガラス板の端面が上方になるように合わせガラスを立て、インク層を形成する面取り部に光硬化型の有機インク(Marabu Printing Inks製、DUV-C 489)を刷毛で塗布した後、紫外光を照射して硬化させることで形成した。インク層の厚みは、ガラス板の端面付近では、任意の長さ100μmの範囲で3.3~10.6μm、平均が約6.4μmであり、第1主面又は第2主面に近い部分では、任意の100μmの範囲で1.4~5.4μm、平均が約3.2μmであった。インク層の厚みは、KEYENCE社製VHXー8000デジタルマイクロスコープで計測した。また、インク層にホールがないことは、同様にKEYENCE社製VHXー8000デジタルマイクロスコープにより確認した。
【0104】
(例2)
車外側に位置するガラス板101の第1面取り部及び第2面取り部、並びに、車内側に位置するガラス板102の第1面取り部に対してインク層201,202を形成した以外は、例1と同様にして合わせガラスを得た。
【0105】
(例3)
車外側に位置するガラス板101の第1面取り部、並びに、車内側に位置するガラス板102の第1面取り部及び第2面取り部に対してインク層201,202を形成した以外は、例1と同様にして合わせガラスを得た。
【0106】
(例4)
車外側に位置するガラス板101の第1面取り部、及び、車内側に位置するガラス板102の第1面取り部に対してインク層201,202を形成した以外は、例1と同様にして合わせガラスを得た。
【0107】
(例5)
車内側に位置するガラス板102の第1面取り部に対してインク層202を形成した以外は、例1と同様にして合わせガラスを得た。
【0108】
(例6)
車外側に位置するガラス板101、車内側に位置するガラス板102のいずれにもインク層を形成しなかった以外は、例1と同様にして合わせガラスを得た。
【0109】
(評価)
例1~例6の合わせガラスに対し、車外面側から面取り部分の外観観察を行った。結果を表1に示すが、「○」とは、車外から観察した場合に外観が良好であったことを示し、「×」とは、車外から観察した場合に外観が好ましくないことを示す。外観が好ましくないとは、面取り部の白さが明確であったことを意味する。
【0110】
【0111】
例1~例4の合わせガラスは、車外側に位置するガラス板の第1面取り部がインク層で被覆されている。そのため、マイクロクラックによる凹凸の特に凹部が、インク層により平滑化されたことで、マイクロクラックに起因した応力集中が緩和され、その結果、面取り部から発生する割れが抑制される。一方、例5及び例6の合わせガラスは、自動車のボディとガラスとの隙間に入り込んだ砂等が最も当たりやすく、ハンドリング時にも車体等へ接触しやすい、車外側に位置するガラス板の第1面取り部分が、インク層で被覆されず露出したままである。そのため、例5及び例6の合わせガラスは、上記割れは依然として発生しやすい。
【0112】
なお、例1~例4はいずれも合わせガラスであるが、1枚のガラス板単板からなる車両用窓ガラスである場合でも、少なくとも第1面取り部がインク層で被覆されることでその表面が平滑化されることから、上記合わせガラスと同様、マイクロクラックに起因した応力集中が緩和され、面取り部から発生する割れが抑制される。
【0113】
また、例1~4の合わせガラスは、さらに外観観察として、車外から観察した場合に外観が良好な結果が得られた。