(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006376
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】振動特性評価装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240110BHJP
B60B 19/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
B60B19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107198
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】望月 章志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
(72)【発明者】
【氏名】水上 雅人
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD18
2G024BA15
2G024CA13
2G024DA08
2G024EA01
2G024FA06
(57)【要約】
【課題】簡易な構造でオムニホイールの振動特性を評価することが可能な振動特性評価装置を提供する。
【解決手段】走行路51に設置された架台101と、ガイド部材37を備え、架台101の上部にてガイド部材37を走行路51に平行な方向にスライドさせるスライド機構102と、ガイド部材37に装着され、オムニホイール10を固定する車輪保持機構103と、を備える。車輪保持機構103は、オムニホイール10を軸支する車軸保持部27と、車軸保持部27とガイド部材37との間に設置され、走行路51の法線方向に向けてスライドするスライダー24a、24bと、オムニホイール10に生じる加速度を検出するセンサ28を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路に設置された架台と、
ガイド部材を備え、前記架台の上部にて前記ガイド部材を前記走行路に平行な方向にスライドさせるスライド機構と、
前記ガイド部材に装着され、全方位車輪を固定する車輪保持機構と、を備え、
前記車輪保持機構は、
前記全方位車輪を軸支する車軸保持部と、
前記車軸保持部と前記ガイド部材との間に設置され、前記走行路の法線方向に向けてスライドするスライダーと、
前記全方位車輪に生じる加速度を検出するセンサと、
を含む振動特性評価装置。
【請求項2】
前記車輪保持機構は、前記ガイド部材よりも前記走行路側に設置される
請求項1に記載の振動特性評価装置。
【請求項3】
前記車輪保持機構は、前記ガイド部材に対して設置する角度を変更可能である
請求項1または2に記載の振動特性評価装置。
【請求項4】
前記センサは、前記車軸保持部の近傍に設置される
請求項1または2に記載の振動特性評価装置。
【請求項5】
前記架台は、互いに対向配置される第1のフレーム部材及び第2のフレーム部材を含み、
前記スライド機構は、前記第1のフレーム部材と第2のフレーム部材の間に張架して前記ガイド部材に連結されるベルトと、
前記ベルトを前記第1のフレーム部材と第2のフレーム部材との間で移動させる駆動モータと、
を備えた請求項1または2に記載の振動特性評価装置。
【請求項6】
前記スライド機構は、前記ベルトの移動方向、及び移動速度を変更可能である
請求項5に記載の振動特性評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動特性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ設備を点検する場合に、作業者による狭い空間での点検作業は容易ではない。非特許文献1には、オムニホイール(全方位車輪)を用いた移動台車が提案されており、このような移動台車を用いることで狭い空間内を任意の方向に移動しながら点検作業を行うことができる。
【0003】
オムニホイールは、主車輪の外周部に補助ローラを備えているので、補助ローラのつなぎ目に段差が形成され、振動が発生しやすい構造である。
【0004】
また、移動台車が走行する走行路に凹凸や段差があった場合は、オムニホイール自体により生じる振動に加えて走行路からの振動が重畳され、より複雑に移動台車が振動するという問題が発生する。この振動入力を除去するために、振動を抑制する機構を搭載することが必要である。このため、オムニホイールに入力される振動を高精度に測定することが求められる。
【0005】
非特許文献2には、段差などの影響を低減するためにオムニホイール及び本体の揺れを抑制する除振機構を搭載した車両全体で、各部に生じる振動を評価する方法が開示されている。
【0006】
非特許文献3には、オムニホイール単体での振動特性を評価可能な振動特性評価装置が開示されている。非特許文献3では、車軸が上下方向に移動可能とされている車軸保持機構をリニアシャフトにより拘束した状態で、オムニホイールを含む車輪ユニットを駆動し、振動特性を評価している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K.Tadakuma,R.Tadakuma and J.Berengeres,”Development of Holonomic Omnidirectional Vehicle wiith“Omini-Ball”:Spherical Wheels,Proceedings of the 2007 IEEE/RSJInternational Conference on Intelligent Robotsand Systems, San Diego, CA, USA 2007).
【非特許文献2】https://www.imv.co.jp/e/products/vibrationtest/general-purpose/kseries/
【非特許文献3】佐藤他,“インフラ点検用移動ロボットの振動抑制に関す検討-振動特性評価装置の構築-”,日本機械学会北海道支部,第57回支部講演会講演論文集,日本機械学会,苫小牧市,2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献2に開示された技術は、オムニホイールで駆動する移動台車を上回る程度の大規模な加振機を必要とし、振動特性の評価装置が大規模化、高コスト化するという問題がある。
【0009】
非特許文献3に開示された技術は、オムニホイールを駆動する際に車輪ユニットを4本のシャフトで保持しており、車輪ユニットの移動時に車輪ユニットにねじれが発生するため、移動ストロークを長く設定することができない。更に、車軸保持機構全体がリニアシャフトにより保持された状態で、床面の状況に応じて車軸ユニットが上下に移動する構成となっている。このため、車軸保持機構にはリニアシャフトのねじれによる拘束が効きすぎないようにばね要素を付加する必要があり、上記した非特許文献2と同様に振動特性の評価装置が大規模化、高コスト化するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構造で、全方位車輪の振動特性を評価することが可能な振動特性評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の振動特性評価装置は、走行路に設置された架台と、ガイド部材を備え、前記架台の上部にて前記ガイド部材を前記走行路に平行な方向にスライドさせるスライド機構と、前記ガイド部材に装着され、全方位車輪を固定する車輪保持機構と、を備え、前記車輪保持機構は、前記全方位車輪を軸支する車軸保持部と、前記車軸保持部と前記ガイド部材との間に設置され、前記走行路の法線方向に向けてスライドするスライダーと、前記全方位車輪に生じる加速度を検出するセンサとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構造で全方位車輪の振動特性を評価することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る振動特性評価装置及び評価対象となるオムニホイールの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、車輪保持機構及び車輪保持機構に連結されたオムニホイールの斜視図である。
【
図5】
図5は、ガイド部材に対して車輪保持機構を取付角度0°で取り付ける様子を示す説明図である。
【
図6】
図6は、ガイド部材に対して車輪保持機構を取付角度45°で取り付ける様子を示す説明図である。
【
図7】
図7は、ガイド部材に対して車輪保持機構を取付角度90°で取り付ける様子を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施例1に係り取付角度0°としたときにオムニホイールに生じる加速度を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例1に係り取付角度90°としたときにオムニホイールに生じる加速度を示すグラフである。
【
図10】
図10は、オムニホイールが、アクリル棒が置かれている走行路を走行する様子を示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施例2に係りアクリル棒が設置されていない走行路をオムニホイールが走行したときに生じる加速度を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例2に係りアクリル棒が設置されている走行路をオムニホイールが走行したときに生じる加速度を示すグラフである。
【
図13】
図13は、本実施形態のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る振動特性評価装置100、及び評価対象となるオムニホイール10(全方位車輪)の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、振動特性評価装置100は、架台101と、スライド機構102と、車輪保持機構103と、制御装置104を備えている。
【0015】
架台101は、オムニホイール10が走行する走行路51に設置されている。架台101は、アルミニウムなどの剛性を有する金属材料で構成するとよい。架台101は、走行路51に立設された4本の支柱33と、各支柱33の頂部に設置され矩形状をなす4本のフレーム部材31a、31b、32a、32bを有している。4本のフレーム部材のうち、フレーム部材31a、31bは、矩形状の長辺を構成する。フレーム部材32a、32bは、矩形状の短辺を構成する。
【0016】
以下では、短辺を構成するフレーム部材32a、32aを、それぞれ第1のフレーム部材32a、第2のフレーム部材32bということにする。第1のフレーム部材32aと第2のフレーム部材32bは、走行路51の上方に設置され、互いに対向配置されている。即ち、架台101は、オムニホイール10(全方位車輪)の走行路51に設置され、互いに対向配置される第1のフレーム部材32a及び第2のフレーム部材32bを含む。
【0017】
スライド機構102は、2本のレール34a、34bと、ガイド部材37と、駆動モータ38と、主動プーリ35aと、従動プーリ35bと、ベルト36を備えている。
【0018】
2本のレール34a、34bは、第1のフレーム部材32aと第2のフレーム部材32bを連結するように配置される。
【0019】
ガイド部材37は平板形状を有しており、各レール34a、34bに勘合して摺動する摺動部37aを有している。即ち、ガイド部材37は、摺動部37aが各レール34a、34bに沿って摺動することにより、第1のフレーム部材32aと第2のフレーム部材32bの間をスライド移動可能とされている。
【0020】
ガイド部材37には、8個の貫通孔pが穿設されている。8個の貫通孔pは、中心から45°の間隔で円形状に形成されている。貫通孔pは、後述する連結板29と連結するために使用する。
【0021】
駆動モータ38は、第1のフレーム部材32aに設置されている。駆動モータ38は、制御装置104に接続されており、制御装置104の制御下で正転、逆転するように駆動する。即ち、駆動モータ38は、ベルト36を第1のフレーム部材32aと第2のフレーム部材32bとの間で移動させる。
【0022】
主動プーリ35aは、駆動モータ38の出力軸に連結されている。従動プーリ35bは、第2のフレーム部材32bに軸支されている。
【0023】
ベルト36は、主動プーリ35aと従動プーリ35bとの間に張架されている。ベルト36は、ガイド部材37に連結されている。
【0024】
従って、駆動モータ38を回転駆動させると主動プーリ35aが回転し、フレーム部材31a、31bの方向(架台101の長手方向)に沿ってベルト36が移動する。駆動モータ38を正転、逆転させることにより、ベルト36に連結されているガイド部材37を架台101の長手方向に沿ってスライド移動させることができる。
【0025】
即ち、スライド機構102は、第1のフレーム部材32aと第2のフレーム部材32bの間に張架されるベルト36、及びベルト36に連結されたガイド部材37を備え、ガイド部材37を第1のフレーム部材32aと第2のフレーム部材32bとの間で移動させる。
【0026】
図2は、制御装置104の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置104は、マイコン61と、コントローラ62と、表示部63と、ドライバ64を備えている。
【0027】
コントローラ62は、ユーザによる操作入力を受け付ける。コントローラ62は、ユーザが入力した速度設定値をマイコン61に出力する。速度設定値は、オムニホイール10の振動評価試験を実施する際の、オムニホイール10の走行速度の設定値を含む。コントローラ62は、例えばオムニホイール10の移動方向を決めるボタン、走行速度を10[cm/s]だけ減速するボタン、走行速度を10[cm/s]だけ上昇させるボタン、動作開始ボタン、緊急停止ボタンを備えている。
【0028】
マイコン61は、コントローラ62で設定された速度設定値に基づき、駆動モータ38を駆動させるためのPWM信号を出力する。マイコン61は、後述するセンサ28で検出された3次元方向の加速度信号を取得し、表示部63に出力する。
【0029】
ドライバ64は、マイコン61より出力されるPWM信号に基づいて、駆動モータ38に駆動信号を出力する。これにより、コントローラ62にて入力された速度となるように、駆動モータ38を回転させることができる。即ち、
図1に示したスライド機構102は、ベルト36の移動方向、及び移動速度を変更可能である。
【0030】
表示部63は、マイコン61で取得された加速度信号を画像表示する。
【0031】
図3は、車輪保持機構103及び車輪保持機構103に連結されたオムニホイール10の斜視図、
図4は同分解斜視図である。車輪保持機構103は、
図1に示したガイド部材37の下方に設置されている。即ち、車輪保持機構103は、ガイド部材37よりも走行路51側に設置されている。
【0032】
図3、
図4に示すように、オムニホイール10は二重の円盤形状をなしており、中央に開口部11(
図4参照)が形成されている。オムニホイール10は、開口部11に挿通される車軸21を中心として回転する。オムニホイール10の周囲には、補助ローラ14、15が設けられている。補助ローラ14、15が回転することによりオムニホイール10を軸方向(車軸21の長手方向)に移動させることが可能である。なお、
図4では一例として直径254[mm]のダブルオムニホイールを示している。
【0033】
図3、
図4に示すように、車輪保持機構103は、車軸21と、ベアリング部22、26と、固定プレート23と、固定部材25a、25bと、車軸保持部27と、2本のスライダー24a、24bと、連結板29(
図4では記載を省略)を備えている。
【0034】
車軸21は、オムニホイール10の中心に形成されている開口部11に貫通して、オムニホイール10を軸支する。
【0035】
車軸21は、ベアリング部22、固定プレート23の中央、及びベアリング部26を貫通しており、車軸保持部27にて軸支されている。即ち、車軸21は、2つのベアリング部22、26に対して回転可能に軸支されている。
【0036】
固定プレート23とベアリング部26との間には、2本のスライダー24a、24bと、2個の固定部材25a、25bが設けられている。
【0037】
図3に示すように連結板29は矩形平板形状をなしており、4個の貫通孔qが穿設されている。各貫通孔qは、連結板29の中心から90°ずつ異なる角度となるように穿設されている。各貫通孔qは、前述したガイド部材37(
図1参照)に形成された貫通孔pに位置合わせして、ネジで連結することができる。即ち、車輪保持機構103は、ガイド部材37に対して設置する角度を変更可能である。
【0038】
連結板29をガイド部材37の下方に配置し、4個の貫通孔qを8個の貫通孔pのいずれかと連結することにより、連結板29をガイド部材37に対して45°ずつ角度を変化させて連結することが可能になる。即ち、車輪保持機構103は、ガイド部材37に対して設置する角度を変更可能である。また、車輪保持機構103は、ガイド部材37よりも走行路51側(即ち、下方)に設置される。詳細については、
図5~
図7を参照して後述する。
【0039】
スライダー24aは、2本の棒状部材24a1と24a2をスライド移動可能に連結して構成されている。即ち、スライダー24aは、棒状部材24a2に対して棒状部材24a1がスライド移動することにより、上下方向の長さが変化する。
【0040】
スライダー24bについても同様に、2本の棒状部材24b1と24b2をスライド移動可能に連結して構成され、棒状部材24b2に対して棒状部材24b1がスライド移動することにより、上下方向の長さが変化する。
【0041】
即ち、車輪保持機構103は、2本のスライダー24a、24bのスライド移動によって上下方向に変位する。車輪保持機構103は、オムニホイール10が走行路51を走行する際に生じる上下方向の振動に対して拘束することなく滑らかに上下運動する。
【0042】
車軸保持部27は、車軸21を軸支する。車軸保持部27には三次元方向の加速度を検出するセンサ28が取り付けられている。即ち、センサ28は、オムニホイール10の近傍に設けられている。センサ28は、オムニホイール10(全方位車輪)に生じる加速度を検出する機能を備えている。
【0043】
車輪保持機構103は、ガイド部材37との位置関係を変更して取り付けることができる。
図5~
図7は、車輪保持機構103に搭載される連結板29と、ガイド部材37との連結状態を示す説明図である。
【0044】
図5は、オムニホイール10の面の方向が架台101の長手方向となっている状態を示す。即ち、連結板29と、ガイド部材37とのなす角度が0°の場合を示す。
図6は、連結板29と、ガイド部材37とのなす角度が45°の場合を示す。
【0045】
図7は、オムニホイール10の面の方向が架台101の長手方向に対して直角となっている状態を示す。即ち、連結板29と、ガイド部材37とのなす角度が90°の場合を示す。
【0046】
図1に示したように、ガイド部材37には、45°間隔で8個の貫通孔pが穿設され、
図3に示したように、連結板29には、90°間隔で4個の貫通孔qが穿設されている。従って、
図5~
図7に示すように各貫通孔p、qの位置をずらすことにより、連結板29とガイド部材37とのなす角度が0°、45°、90°のいずれかに設定することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、
図1に示したようにガイド部材37に8個の貫通孔pを設ける例について説明したが、8個以上の貫通孔pを穿設することにより、30°、60°などの取付角度に設定することも可能である。また、円周方向に長尺円弧状のスリットを設けることで連続的に取付角度を設定できるようにしてもよい。更に、ネジ止め以外にもストッパ付きのターンテーブルを用いてもよい。
【0048】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る振動特性評価装置100の動作について説明する。初めに、
図3、
図4に示したように振動特性の測定対象となるオムニホイール10の開口部11に車輪保持機構103の車軸21を挿通する。その結果、オムニホイール10は、車軸21により軸支される。
【0049】
この状態で、
図3に示した連結板29を、
図1に示したガイド部材37に対して、所望の角度、即ち
図5~
図7に示した0°、45°、90°のいずれかの角度となるように、ガイド部材37に形成された貫通孔pと連結板29に形成された貫通孔qを合わせて、貫通孔p、qにネジを挿通して固定する。その結果、ガイド部材37に車輪保持機構103を連結することができる。
【0050】
車輪保持機構103に設けられたスライダー24a、24bは、上下方向にスライド移動が可能とされている。従って、車輪保持機構103により軸支されたオムニホイール10は、走行路51(
図1参照)に接することになる。
【0051】
ユーザが制御装置104のコントローラ62(
図2参照)において駆動指令を入力すると、駆動モータ38が所望の方向に回転する。即ち、
図2に示すマイコン61に駆動指令が入力されると、操作指令信号がドライバ64に出力される。ドライバ64は、制御用のPWM信号をドライバ64に出力する。ドライバ64は、駆動モータ38が設定された方向、設定された速度となるように駆動モータ38を回転駆動させる。
【0052】
駆動モータ38が回転すると、
図1に示した主動プーリ35aが回転し、主動プーリ35aと従動プーリ35bの間に張架されたベルト36が架台101の長手方向に沿って移動する。ベルト36に連結されたガイド部材37は、ベルトの回転に伴って架台101の長手方向に沿って移動し、ひいてはガイド部材37に連結された車輪保持機構103がスライド移動する。即ち、車輪保持機構103に連結されているオムニホイール10が走行路51上を走行する。
【0053】
図3、
図4に示したように、車軸保持部27にはセンサ28が設置されている。従って、該センサ28により、オムニホイール10が走行路51上を走行した際に生じる三次元方向の加速度を検出することができる。
【0054】
発明者らは、上述した振動特性評価装置100を用いて、以下に示す実施例1、実施例2に示す実験を実施した。以下に、各実施例の実験結果について説明する。
【0055】
(実施例1)
本実施形態に係る振動特性評価装置100を用いて、比較的大型である直径254[mm]のダブルオムニホイールの振動特性を実験により評価した。オムニホイール10の取付角度を0°(
図5に示した状態)、及び90°(
図7に示した状態)とし、移動速度10[cm/s]で滑らかな走行路51を往復移動させた。走行時の上下方向の加速度時間応答をセンサ28にて測定した。
図8は取付角度0°のときの加速度応答を示すグラフ、
図9は取付角度90°のときの加速度応答を示すグラフである。
【0056】
オムニホイール10に起因する構造特有の振動は、オムニホイール10に設けられた補助ローラ14、15が走行路51に接地することで起きているものと考えられている。また、補助ローラ14、15はオムニホイール10に対して等間隔で取り付けられているため、発生する振動は等速度の走行であれば周期的に発生すると考えられる。
【0057】
取付角度0°の場合(
図8)と取付角度90°の場合(
図9)を比較すると、取付角度90°の場合では、一つの補助ローラが走行路51に接するだけなので、振動は小さくなるはずである。
図9のグラフからこのような傾向を読み取ることができる。従って、大型のオムニホイール10の形状に起因する振動特性が測定できていることが証明された。
【0058】
(実施例2)
発明者らは、実施例2として
図10に示すように走行路51に断面が四角形で長尺状のアクリル棒52を、走行路51の走行方向に対して直交する方向に設置し、オムニホイール10として、実施例1と同様の直径254mmのダブルオムニホイールを用いて振動特性を測定した。即ち、走行路51に疑似的に凹凸を発生させた状況下で、オムニホイール10の振動特性を測定した。
【0059】
オムニホイール10の取付角度を90°(
図7の状態)とし、移動速度30[cm/s]で走行路51を矢印Yの方向に往復移動させた。
図11は、アクリル棒52を設置しないときの加速度応答を示すグラフ、
図12は、アクリル棒52を設置したときの加速度応答を示すグラフである。
【0060】
図11に示すように取付角度90°の場合には、オムニホイール10の補助ローラが1個が地面に接するだけであるので、アクリル棒52が設置されていない場合、即ち、走行路51に凹凸がない場合は、振動はほぼ起きていない。
【0061】
これに対して、
図12に示すように、アクリル棒52が設置されている場合、即ち、走行路51に凹凸がある場合には、補助ローラが凹凸を乗り越える際に衝撃が発生していることが理解される。凹凸が存在することにより、瞬間的に振幅の大きい振動が発生すると考えられる。
【0062】
即ち、アクリル棒52を乗り越える際に、加速度応答にピークを有する波形が測定され、路面凹凸を走査した際のオムニホイールが受ける路面に起因する振動を測定できていることが理解される。
【0063】
このように、本実施形態に係る振動特性評価装置100は、走行路51に設置された架台101と、ガイド部材37を備え、架台101の上部にてガイド部材37を走行路51に平行な方向にスライドさせるスライド機構102と、ガイド部材37に装着され、オムニホイール10(全方位車輪)を固定する車輪保持機構103と、を備える。車輪保持機構103は、オムニホイール10を軸支する車軸保持部27と、車軸保持部27とガイド部材37との間に設置され、走行路51の法線方向に向けてスライドするスライダー24a、24bと、オムニホイール10に生じる加速度を検出するセンサ28を含む。
【0064】
本実施形態では、オムニホイール10をシャフトで固定する構成ではないため、シャフトのねじれにより移動が拘束されるという問題は生じない。このため、オムニホイール10の移動ストロークを長くすることができ、より高精度に振動特性を評価することが可能になる。
【0065】
本実施形態では、車輪保持機構103をガイド部材37の下方に設置するので、走行路51上にてオムニホイール10を走行させた際に、走行路51に凹凸が存在する場合でも、スライダー24a、24bにより凹凸による振動が吸収され、凹凸の影響を軽減できる。また、ガイド部材37に錘を載置することにより、オムニホイール10に搭載される筐体の重量を模擬することが可能になり、より高精度に振動特性を評価することができる。
【0066】
本実施形態では、ガイド部材37に対する車輪保持機構103の設置角度を変更することができる。このため、オムニホイール10を取付角度0°、45°、90°などの任意の角度で走行させることができ、取付角度ごとの振動特性を容易に取得することが可能になる。
【0067】
本実施形態では、センサ28をオムニホイール10の近傍に設置するので、オムニホイール10の構造に起因して生じる三次元方向の加速度を高精度に検出することが可能になる。このため、振動特性の測定精度を向上させることが可能になる。
【0068】
本実施形態では、第1のフレーム部材32aと第2のフレーム部材32bの間にベルト36を張架し、駆動モータ38を回転駆動させてベルト36を移動させ、ガイド部材37を移動させる。このため、車輪保持機構103を安定的に移動させることができ、オムニホイール10の振動特性をより高精度に取得することが可能になる。
【0069】
スライド機構102には、2本のレール34a、34b、及びガイド部材37を摺動させる摺動部37aを設けているので、車輪保持機構103を滑らかに移動させることが可能になる。
【0070】
本実施形態では、架台101をアルミニウムで構成しているので、振動特性評価装置100全体を剛性化することができる。装置全体を剛性化することにより、装置の固有振動数は、測定対象となるオムニホイール10の固有振動数よりも高い周波数領域に現れるため、振動特性の測定精度を向上させることが可能になる。また、剛性化することにより、例えば直径100[mm]を超える大型のオムニホイールを評価するために必要な移動ストロークを容易に得ることができる。
【0071】
また、
図1に示したガイド部材37の上面に錘を乗せることにより、オムニホイール10を備えた移動台車の重量を模擬できるようになり、より高精度な振動特性の評価が可能になる。
【0072】
実施例2に示したように、走行路51にアクリル棒52を設置することにより、オムニホイール10が凹凸面を走行したときの振動特性を容易に取得することが可能になる。また、アクリル棒52の幅を狭くすることにより、オムニホイール10に対してインパルス信号を与えたことになり、オムニホイール10単体の静的な固有振動モードの検出が可能になる。
【0073】
また、アクリル棒52を幅の広い板状にすることで、オムニホイール10が段差を乗り越える状況を模擬することができる。この場合には、オムニホイール10にステップ波を与えたことになり、オムニホイール10単体の振動特性の検出が可能になる。
【0074】
上記説明した本実施形態の制御装置104には、
図13に示すように例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid StateDrive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、制御装置104の各機能が実現される。
【0075】
なお、制御装置104は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、制御装置104は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0076】
なお、制御装置104用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 オムニホイール
11 開口部
14、15 補助ローラ
21 車軸
22、26 ベアリング部
23 固定プレート
24a、24b スライダー
27 車軸保持部
28 センサ
29 連結板
32a 第1のフレーム部材
32b 第2のフレーム部材
33 支柱
34a、34b レール
35a 主動プーリ
35b 従動プーリ
36 ベルト
37 ガイド部材
37a 摺動部
38 駆動モータ
51 走行路
52 アクリル棒
61 マイコン
62 コントローラ
63 表示部
64 ドライバ
100 振動特性評価装置
101 架台
102 スライド機構
103 車輪保持機構
104 制御装置