(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006379
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】弱点部決定装置、弱点部決定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 29/00 20060101AFI20240110BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240110BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240110BHJP
【FI】
E02D29/00
G06Q50/08
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107201
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】奥津 大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇伸
【テーマコード(参考)】
2D147
5L049
【Fターム(参考)】
2D147AA00
5L049CC06
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】地下構造の弱点部を特定する手法を改善する技術を提供する。
【解決手段】
弱点部決定装置10は、第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造を含む地下領域における弱点部を決定する弱点部決定装置であって、第1の地下構造と第2の地下構造との間の接触面積である第1の接触面積を示す第1接触面積情報を取得し、第1接触面積情報に基づいて、第1の地下構造と第2の地下構造との間の拘束力を第1の拘束力として算出する第1算出部111と、第2の地下構造と前記第3の地下構造との間の接触面積である第2の接触面積を示す第2接触面積情報を取得し、第2接触面積情報に基づいて、第2の地下構造と第3の地下構造との間の拘束力を第2の拘束力として算出する第2算出部112と、第1の拘束力と第2の拘束力とを比較することにより、地下領域における弱点部を決定する弱点決定部113とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造を含む地下領域における弱点部を決定する弱点部決定装置であって、
前記第1の地下構造と前記第2の地下構造との間の接触面積である第1の接触面積を示す第1接触面積情報を取得し、前記第1接触面積情報に基づいて、前記第1の地下構造と前記第2の地下構造との間の拘束力を第1の拘束力として算出する第1算出部と、
前記第2の地下構造と前記第3の地下構造との間の接触面積である第2の接触面積を示す第2接触面積情報を取得し、前記第2接触面積情報に基づいて、前記第2の地下構造と前記第3の地下構造との間の拘束力を第2の拘束力として算出する第2算出部と、
前記第1の拘束力と前記第2の拘束力とを比較することにより、前記地下領域における弱点部を決定する弱点決定部と
を備える弱点部決定装置。
【請求項2】
前記第1算出部は、前記第1の接触面積の単位面積当たりの拘束力を示す情報を取得し、前記単位面積当たりの拘束力を前記第1の接触面積に乗じて前記第1の拘束力を算出し、
前記第2算出部は、前記第2の接触面積の単位面積当たりの拘束力を示す情報を取得し、前記単位面積当たりの拘束力を前記第2の接触面積に乗じて前記第2の拘束力を算出する、請求項1に記載の弱点部決定装置。
【請求項3】
前記第1算出部又は前記第2算出部は、前記地下領域の地盤からの拘束力を示す地盤拘束力情報をさらに取得し、前記地盤拘束力情報に基づいて前記第1の拘束力又は前記第2の拘束力を算出する、請求項1に記載の弱点部決定装置。
【請求項4】
前記第1算出部及び前記第2算出部が取得した前記第1の地下構造及び前記第2の地下構造の寸法と、前記弱点決定部が決定した前記弱点部とを対応付けるチャートを作成するチャート作成部をさらに備える、請求項3に記載の弱点部決定装置。
【請求項5】
前記第1の地下構造は、管路であり、
前記第3の地下構造は、壁であり、
前記第2の地下構造は、前記管路を前記壁に通すために前記壁に空いた開口部を埋める部材である、請求項1から4のいずれか一項に記載の弱点部決定装置。
【請求項6】
第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造を含む地下領域における弱点部を決定する弱点部決定装置が実行する方法であって、
前記第1の地下構造と前記第2の地下構造との間の接触面積である第1の接触面積を示す第1接触面積情報を取得し、前記第1接触面積情報に基づいて、前記第1の地下構造と前記第2の地下構造との間の拘束力を第1の拘束力として算出する第1算出ステップと、
前記第2の地下構造と前記第3の地下構造との間の接触面積である第2の接触面積を示す第2接触面積情報を取得し、前記第2接触面積情報に基づいて、前記第2の地下構造と前記第3の地下構造との間の拘束力を第2の拘束力として算出する第2算出ステップと、
前記第1の拘束力と前記第2の拘束力とを比較することにより、前記地下領域における弱点部を決定する弱点決定ステップと
を含む、弱点部決定方法。
【請求項7】
前記第1算出ステップは、前記第1の接触面積の単位面積当たりの拘束力を示す情報を取得し、前記単位面積当たりの拘束力を前記第1の接触面積に乗じて前記第1の拘束力を算出することを含み、
前記第2算出ステップは、前記第2の接触面積の単位面積当たりの拘束力を示す情報を取得し、前記単位面積当たりの拘束力を前記第2の接触面積に乗じて前記第2の拘束力を算出することを含む、請求項6に記載の弱点部決定方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1から4のいずれか一項に記載の弱点部決定装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱点部決定装置、弱点部決定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道、ガス、電気、通信のサービスの多くが地下に埋設された管路である地下管路を通じて提供されている。地下管路はマンホール(人孔とも称する)の壁、ビル等の建築物の地下部分に該当する空間の壁に接続部を介して接続される。地下管路が壁に接続される領域は無筋コンクリート、モルタル、レンガ、コンクリートブロック等で壁を築造して閉塞される。地下管路及び接続される地中構造物は、それぞれ単独で土圧、交通荷重、地震時の地盤変位などを考慮して設計されており、設計法は確立されている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本水道協会「水道施設耐震工法指針・解説 2009年版 I総論」、pp.87-92、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地震発生時の、接続部における地下管路と壁との挙動は異なり、相対変位が大きくなると変位を吸収することができなくなる。よって地下管路の突き出し・引き抜け、壁のひび割れ等の損傷が発生する場合がある。接続部が損傷すると、ひび割れ又は欠落箇所から地下水が構造物内に浸入し、その時に周辺の砂も引き込む可能性がある。砂が引き込まれると地盤内に空洞が発生し、該空洞が大きくなると地表からの荷重を支持できなくなって、陥没又は周辺構造物の傾き等の被害を引き起こす恐れがある。過去の大地震で地下管路が人孔内に突き出す被害も知られている。よって、接続部の耐荷重等を把握する必要があり、特に古い基準等で設計された既存の地下構造物の接続部について簡易に把握する技術が求められていた。例えば地下構造物の接続部と地盤をソリッド要素にモデル化した3次元有限要素解析による地震応答解析を行うことが考えられるが、大量の地下構造物の接続部について個々にモデル化し、計算することは時間、費用面で現実的ではなかった。このように、地下構造の弱点部を特定する手法を改善する技術が望まれていた。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、地下構造の弱点部を特定する手法を改善する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係る弱点部決定装置は、第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造を含む地下領域における弱点部を決定する弱点部決定装置であって、前記第1の地下構造と前記第2の地下構造との間の接触面積である第1の接触面積を示す第1接触面積情報を取得し、前記第1接触面積情報に基づいて、前記第1の地下構造と前記第2の地下構造との間の拘束力を第1の拘束力として算出する第1算出部と、前記第2の地下構造と前記第3の地下構造との間の接触面積である第2の接触面積を示す第2接触面積情報を取得し、前記第2接触面積情報に基づいて、前記第2の地下構造と前記第3の地下構造との間の拘束力を第2の拘束力として算出する第2算出部と、前記第1の拘束力と前記第2の拘束力とを比較することにより、前記地下領域における弱点部を決定する弱点決定部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る弱点部決定方法は、第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造を含む地下領域における弱点部を決定する弱点部決定装置が実行する方法であって、前記第1の地下構造と前記第2の地下構造との間の接触面積である第1の接触面積を示す第1接触面積情報を取得し、前記第1接触面積情報に基づいて、前記第1の地下構造と前記第2の地下構造との間の拘束力を第1の拘束力として算出する第1算出ステップと、前記第2の地下構造と前記第3の地下構造との間の接触面積である第2の接触面積を示す第2接触面積情報を取得し、前記第2接触面積情報に基づいて、前記第2の地下構造と前記第3の地下構造との間の拘束力を第2の拘束力として算出する第2算出ステップと、前記第1の拘束力と前記第2の拘束力とを比較することにより、前記地下領域における弱点部を決定する弱点決定ステップと、を含む。
【0008】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、本発明に係る弱点部決定装置として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地下構造の弱点部を特定する手法を改善する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る弱点部決定装置の概略構成を示す図である。
【
図2】第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造を含む地下領域を示す図である。
【
図3】第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造を含む地下領域を示す図である。
【
図4A】第1の地下構造としての管路の配列の例を示す図である。
【
図4B】第1の地下構造としての管路の配列の例を示す図である。
【
図5】単位面積当たりの拘束力を算出する実験を説明するための図である。
【
図6】単位面積当たりの拘束力を算出する実験を説明するための図である。
【
図7】単位面積当たりの拘束力を算出する実験を説明するための図である。
【
図8】単位面積当たりの拘束力を算出する実験を説明するための図である。
【
図9】チャート作成部が作成するチャートの一例を示す図である。
【
図10A】本実施形態に係る弱点部決定装置の動作の例を示す図である。
【
図10B】本実施形態に係る弱点部決定装置の動作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。各図面中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。以下に説明する実施形態は本開示の構成の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0012】
本実施形態に係る弱点部決定装置10は、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバなどのコンピュータである。
【0013】
<弱点部決定装置10の構成>
図1を参照して、本実施形態に係る弱点部決定装置10の構成の一例について説明する。
図1に示すように、弱点部決定装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、入力部14と、出力部15と、を備える。
【0014】
記憶部12は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどを含んでもよい。記憶部12に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、弱点部決定装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部12は、必ずしも弱点部決定装置10が内部に備える必要はなく、弱点部決定装置10の外部に備える構成としてもよい。
【0015】
通信部13には、少なくとも1つの通信インタフェースが含まれる。通信インタフェースは、例えば、LANインタフェースである。通信部13は、弱点部決定装置10の動作に用いられる情報を受信し、また弱点部決定装置10の動作によって得られる情報を送信する。
【0016】
通信部13は、弱点部決定装置10がネットワークを介して他の装置と情報の送受信を行うことを可能にする。ネットワークとは、インターネット、少なくとも1つのWAN(Wide Area Network)、少なくとも1つのMAN(Metropolitan Area Network)、又はこれらの組み合わせを含む。ネットワークは、少なくとも1つの無線ネットワーク、少なくとも1つの光ネットワーク、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。無線ネットワークは、例えば、アドホックネットワーク、セルラーネットワーク、無線LAN(Local Area Network)、衛星通信ネットワーク、又は地上マイクロ波ネットワークである。
【0017】
入力部14には、少なくとも1つの入力用インタフェースが含まれる。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又はマイクである。入力部14は、弱点部決定装置10の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。入力部14は、弱点部決定装置10に備えられる代わりに、外部の入力機器として弱点部決定装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0018】
出力部15には、少なくとも1つの出力用インタフェースが含まれる。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。出力部15は、VRゴーグル等のユーザが装着可能な装置を含んでよい。出力部15は、弱点部決定装置10の動作によって得られる情報を出力する。出力部15は、弱点部決定装置10に備えられる代わりに、外部の出力機器として弱点部決定装置10に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。
【0019】
制御部11は、制御演算回路(コントローラ)により実現される。該制御演算回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部11は、弱点部決定装置10の各部を制御しながら、弱点部決定装置10の動作に関わる処理を実行する。制御部11は、外部装置との情報の送受信を、通信部13及びネットワークを介して行うことができる。
【0020】
制御部11は、第1算出部111と、第2算出部112と、弱点決定部113と、チャート作成部114とを備える。
【0021】
第1算出部111は、第1の地下構造と第2の地下構造との間の接触面積である第1の接触面積を示す第1接触面積情報を取得し、第1接触面積情報に基づいて、第1の地下構造と第2の地下構造との間の拘束力を第1の拘束力として算出する。第1算出部111は、第1の接触面積の単位面積当たりの拘束力を示す情報を取得し、単位面積当たりの拘束力を第1の接触面積に乗じて第1の拘束力を算出する。
【0022】
第1の地下構造51、第2の地下構造52、及び第3の地下構造53のそれぞれは、地下にその少なくとも一部が埋設されている。本実施形態では、第1の地下構造51は管路、第2の地下構造は管路を地下空間内に通すための開口部材、第3の地下構造53は当該地下空間の壁である。管路は、通信ケーブル、電力ケーブル等が挿入される管路である。これに限られず、管路は水道管、ガス管等であってもよい。地下空間とはマンホール、ビル等の建築物の地下部分に該当する空間であるがこれに限られず、シェルター等であってもよい。開口部材は、管路を壁に通すために壁に空いた開口部を埋める部材である。開口部材は当該マンホールの壁に設けられ、マンホール内に管路を通す。開口部材は、管路が壁を垂直に貫通できるように管路を固定させる。壁は、より具体的には当該マンホールの側壁である。これに限られず、壁はマンホールの天井部又は床部であってもよい。
【0023】
図2は、第1の地下構造51としての管路51P、第2の地下構造52としての開口部材52S、及び第3の地下構造53としての壁53Wを含む地下領域を示す図である。
図2は、管路51Pの軸方向に垂直な方向(X軸方向)から当該地下領域を見た図である。
図2に示すように、地下領域に埋設された管路51Pは、開口部材52Sを介して壁53Wを貫通する。
図3は管路51Pの軸方向(Y軸方向)から
図2の構成を見た図である。
図2と
図3とにおいて、管路51PはZ軸方向に2本、X軸方向に2本の合計4本が並べられているが、管路51Pの本数はこれに限られない。また、
図2と
図3とにおいて、開口部材52Sの形状は直方体の形状であり、XZ平面における断面図が矩形状であるが、開口部材52Sの形状はこれに限られず、例えば円柱の形状であってもよい。
【0024】
本実施形態では、第1算出部111は以下の式により、第1の拘束力としての開口部材52Sと管路51Pとの間の拘束力B
pを算出する。以下の式1において、K
pは開口部材52Sと管路51Pとの接触面積の単位面積当たりの拘束力であり、
図2においても示す。A
pは開口部材52Sと管路51Pとの接触面積である第1の接触面積を示す。N
pHは管路51Pの水平方向、すなわち
図2又は
図3のXY平面に並んだ本数を示す。N
pVは管路51Pの鉛直方向、すなわち
図2又は
図3のYZ平面に並んだ本数を示す。D
pは管路51Pの外径を示す。L
mは管路51Pの軸方向に沿った開口部材52Sの奥行きの寸法であり、
図2においても示す。
【0025】
Bp=Kp・Ap=Kp・NpH・NpV・π・Dp・Lm (式1)
【0026】
開口部材52Sを通る管路51Pの配列は
図3に示すような矩形の配列に限られず、例えば
図4Aに示すような矩形ではない配列、
図4Bに示すような円形の配列であってもよい。この場合、上記式1のN
pHとN
pVとの代わりに、任意の手法で取得した管路51Pの本数を用いることで、
図4Aと
図4Bとで示すような管路51Pの配列についても拘束力B
pを算出することができる。上記式1の右辺においては、N
pHとN
pVとを乗じることで開口部材52Sを通る管路51Pの本数を算出しているが、これに限られず、管路51Pの本数は任意の式で算出されてよい。管路51Pの本数は、記憶部12又は外部装置に予め格納されたデータベースを参照して読み出すことで取得されてもよい。当該データベースは開口部材52Sの規格として、開口部材52Sが通す管路の本数を示す情報を含むことができる。
【0027】
第1算出部111は、第1の接触面積Apを示す第1接触面積情報を、記憶部12又は外部装置に予め格納されたデータベースを参照して読み出すことで取得できる。当該データベースは管路51Pの埋設工事時又は点検時に作成されたものであってもよい。第1算出部111は、開口部材52Sと管路51Pとの接触面積の単位面積当たりの拘束力Kpを示す情報を取得する。当該情報の取得には任意の手法が採用されてよく、例えば第1算出部111は、以下で説明する実験1によって得られた値を蓄積するデータベースであって、記憶部12又は外部装置に予め格納されたデータベースを参照して読み出すことで、当該情報を取得できる。
【0028】
第1算出部111は、上記式1の真ん中の辺に示す第1の接触面積Apを取得できない場合に、上記式1の右辺に示す計算を行ってよい。
【0029】
第1算出部111は、上記の式1におけるその他の値、すなわち、管路51Pの水平方向に並んだ本数NpHと、管路51Pの鉛直方向に並んだ本数NpVと、管路51Pの外径Dpと、管路51Pの軸方向に沿った開口部材52Sの奥行きの寸法Lmとを示す情報を、任意の手法によって取得できてよい。例えば、上述の第1の接触面積Apと同様に、記憶部12又は外部装置に予め格納されたデータベースを参照して読み出すことで取得できる。
【0030】
開口部材52Sと管路51Pとの接触面積の単位面積当たりの拘束力Kpは実験によって得られた値であってよい。本実施形態において拘束力とは、地震が発生したときに、第1の地下構造、第2の地下構造、第3の地下構造、及び地盤のうちのいずれか1つが、他のもう1つの第1の地下構造、第2の地下構造、第3の地下構造、又は地盤の動作を拘束する力をいう。以下において、当該実験を実験1として説明する。
【0031】
<実験1>
図5を参照して、開口部材52Sと管路51Pとの接触面積の単位面積当たりの拘束力K
pを算出する実験1の例を説明する。
図5において、管路51Tは、管路51Pと同じ素材、直径及び厚みを有する実験供試体としての部分管路である。開口部材52Tは開口部材52Sと同じ素材からなる実験供試体としての部材である。管路51Tが、開口部材52Tに挟み込まれ、拘束力が作用させられている。実験では、白抜き矢印で示す荷重が管路51Tにかけられる。実験の詳細については例えば以下の文献2に記載されているため、詳細な説明を省略する。
文献2:福元俊之、他1名「拘束応力下に於ける鋼・コンクリート接触面の摩擦・付着特性」、日本建築学会構造系論文集、第82巻、第736号、pp.940-948、2017年
【0032】
単位面積当たりの拘束力K
pは、実験により測定された、管路51Tにずれが生じた時点での最大荷重を管路51Tと開口部材52Tとの間の接触面積で除すことで求められる。
図6は、実験により測定された変位と荷重との関係の例を表すグラフである。矢印では最大荷重を示す。また、上記の文献2によると、コンクリートと鋼材との間の付着力は側圧に比例する。よって実験では、開口部材52Sと管路51Pとの寸法、土被り等に基づいて、管路51Pが実際に開口部材52Sから受ける圧力と、
図5に示す管路51Tが開口部材52Tから受ける圧力との比により、付着力が補正されてよい。
【0033】
このようにして得られた単位面積当たりの拘束力Kpが、管路51Tの素材、直径、厚み等の要素と開口部材52Tの素材等の要素との組み合わせごとに、データベースに蓄積される。第1算出部111は、当該データベースを参照して読み出すことで第1の接触面積の単位面積当たりの拘束力Kpを示す情報を取得できる。
【0034】
第1算出部111は、以下の式2により第1の拘束力を算出してもよい。式2は、式1には含まれていない、K
gp、A
gp及びL
gpを含む。K
gpは管路51Pと地盤との接触面積の単位面積当たりの拘束力を示し、A
gpは管路51P周面と地盤との接触面積を示し、L
gpは開口部材52Sから地盤中に出た管路51Pが、直接地盤と接触する部分の軸方向の所定の長さであり、
図2においても示す。当該長さは自由に設定されてよい。
【0035】
Bp=Kp・Ap+Kgp・Agp
=Kp・NpH・NpV・π・Dp・Lm
+Kgp・NpH・NpV・π・Dp・Lgp (式2)
【0036】
第1算出部111は、管路51P周面と地盤との接触面積Agpと、開口部材52Sから地盤中に出た管路51Pが直接地盤と接触する部分の軸方向の長さLgpとを示す情報を、任意の手法によって取得できてよい。例えば、上記第1の接触面積Apと同様に、記憶部12又は外部装置に予め格納されたデータベースを参照することで取得できる。
【0037】
管路51Pと地盤との単位面積当たりの拘束力Kgpは実験によって得られた値であってよい。例えば第1算出部111は、以下で説明する実験3と同様の実験を管路51Tについて行った結果を登録するデータベースを参照して読み出すことで、管路51Pと地盤との単位面積当たりの拘束力Kgpを示す情報を取得してもよい。
【0038】
第1算出部111は、上記の式2のように地盤に接触する管路51Pの表面積に、管路51Pと地盤との単位面積当たりの拘束力Kgpを乗じた結果を地盤拘束力情報として取得できる。このように第1算出部111は、地下領域の地盤からの拘束力を示す地盤拘束力情報をさらに取得し、地盤拘束力情報に基づいて第1の拘束力を算出できる。
【0039】
第2算出部112は、第2の地下構造と第3の地下構造との間の接触面積である第2の接触面積を示す第2接触面積情報を取得し、第2接触面積情報に基づいて、第2の地下構造と第3の地下構造との間の拘束力を第2の拘束力として算出する。第2算出部112は、第2の接触面積の単位面積当たりの拘束力を示す情報を取得し、単位面積当たりの拘束力を第2の接触面積に乗じて第2の拘束力を算出する。
【0040】
本実施形態では、第2算出部112は、以下の式3により、第2の拘束力としての開口部材52Sと壁53Wとの間の拘束力B
wを算出する。以下の式3において、K
wは開口部材52Sと壁53Wとの接触面積の単位面積当たりの拘束力であり、
図2においても示す。A
wは開口部材52S壁53Wとの接触面積である第2の接触面積を示す。K
gは開口部材52Sと地盤との接触面積の単位面積当たりの拘束力であり、
図2においても示す。A
gは開口部材52S周面と地盤との接触面積を示す。L
wは壁53Wの厚さであり、
図2においても示す。L
mは、上記式1と同様に、管路51Pの軸方向に沿った開口部材52Sの奥行きの寸法であり、
図2においても示す。W
oは開口部材52Sの水平方向、すなわち
図2又は
図3のXY平面における幅の寸法であり、
図3においても示す。h
oは開口部材52Sの鉛直方向、すなわち
図2又は
図3のZY平面における高さの寸法であり、
図3においても示す。
【0041】
Bw=Kw・Aw+Kg・Ag
={Kw・Lw+Kg(Lm-LW)}・2(Wo+ho) (式3)
【0042】
第2算出部112は、第2の接触面積Awを示す第2接触面積情報を、記憶部12又は外部装置に予め格納されたデータベースを参照して読み出すことで取得できる。当該データベースは開口部材52Sの埋設工事時又は点検時に作成されたものであってもよい。第2算出部112はまた、開口部材52Sと壁53Wとの接触面積の単位面積当たりの拘束力Kwと、開口部材52Sと地盤との接触面積の単位面積当たりの拘束力Kgとを示す情報を取得する。当該情報の取得には任意の手法が採用されてよく、例えば以下で説明する実験2及び実験3によって得られた値を蓄積するデータベースであって、記憶部12又は外部装置に予め格納されたデータベースを参照して読み出すことで取得できる。
【0043】
第2算出部112は、上記式1の真ん中の辺に示す第2の接触面積Aw及び開口部材52S周面と地盤との接触面積Agを取得できない場合に、上記式3の右辺に示すような計算を行ってよい。
【0044】
第2算出部112は、上記の式3におけるその他の値、すなわち、開口部材52S周面と地盤との接触面積Agと、壁53Wの厚さLwと、管路51Pの軸方向に沿った開口部材52Sの奥行きの寸法Lmと、開口部材52Sの水平方向の幅の寸法Woと、開口部材52Sの鉛直方向の高さの寸法hoとを示す情報を、任意の手法によって取得できてよい。例えば、記憶部12又は外部装置に予め格納されたデータベースを参照して読み出すことで取得できる。
【0045】
開口部材52Sと壁53Wとの接触面積の単位面積当たりの拘束力Kwは、以下で説明する実験2によって得られた値であってよい。例えば第2算出部112は、以下で説明する実験2の結果を登録するデータベースを参照して読み出すことで、開口部材52Sと壁53Wとの接触面積の単位面積当たりの拘束力Kwを示す情報を取得してもよい。
【0046】
<実験2>
図7を参照して、開口部材52Sと壁53Wとの接触面積の単位面積当たりの拘束力K
wを得る実験2の例を説明する。
図7の開口部材52Tは開口部材52Sと同じ素材からなる実験供試体としての部材である。壁53Tは、壁53Wと同じ素材から成る実験供試体としての部分壁である。開口部材52Tが、壁53Tに挟み込まれ、拘束力が作用させられている。実験では、白抜き矢印で示す荷重が開口部材52Tにかけられる。
【0047】
単位面積当たりの拘束力K
wは、実験により測定された、開口部材52Tにずれが生じた時点での最大荷重を壁53Tと開口部材52Tとの間の接触面積で除すことで求められる。また、上記実験1と同様に、開口部材52Sと壁53Wとの寸法、土被り等に基づいて、開口部材52Sが実際に壁53Wから受ける圧力と、
図7に示す開口部材52Tが壁53Tから受ける圧力との比により、付着力が補正されてよい。
【0048】
このようにして得られた単位面積当たりの拘束力Kwが、開口部材52Tの素材等の要素と壁53Tの素材等の要素との組み合わせごとに、データベースに蓄積される。第2算出部112は、当該データベースを参照して読み出すことで第2の接触面積の単位面積当たりの拘束力Kwを示す情報を取得できる。
【0049】
開口部材52Sと地盤との接触面積の単位面積当たりの拘束力Kgは、以下で説明する実験3によって得られた値であってよい。例えば第2算出部112は、以下で説明する実験3の結果を登録するデータベースを参照して読み出すことで、開口部材52Sと地盤との接触面積の単位面積当たりの拘束力Kgを示す情報を取得してもよい。
【0050】
<実験3>
図8を参照して、開口部材52Sと地盤との接触面積の単位面積当たりの拘束力K
gを得る実験3の例を説明する。
図8において、開口部材52Tは開口部材52Sと同じ素材からなる実験供試体としての部材である。
図8を参照すると、土槽に開口部材52Sの周囲の地盤と同様の地盤が埋め込まれており、開口部材52Tが土槽の側面から挿入され、地盤からの拘束力が作用させられている。実験では、白抜き矢印で示す荷重が開口部材52Tにかけられる。
【0051】
単位面積当たりの拘束力Kgは、実験により測定された、開口部材52Tにずれが生じた時点での最大荷重を地盤と開口部材52Tとの間の接触面積で除すことで求められる。
【0052】
このようにして得られた開口部材52Sと地盤との接触面積の単位面積当たりの拘束力Kgが、開口部材52Tの素材等の要素と地盤の種類等の要素との組み合わせごとに、データベースに蓄積される。第2算出部112は、当該データベースを参照して読み出すことで単位面積当たりの拘束力Kgを示す情報を取得できる。
【0053】
第2算出部112は、上記の式3のように地盤に接触する開口部材52Sの表面積に、それぞれ接触する開口部材52Sと地盤との単位面積当たりの拘束力を乗じた結果を地盤拘束力情報として取得できる。このように第2算出部112は、地下領域の地盤からの拘束力を示す地盤拘束力情報をさらに取得し、地盤拘束力情報に基づいて第2の拘束力を算出できる。
【0054】
第1算出部111及び第2算出部112は、第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造のそれぞれについて、材質の情報を示す材質情報を取得し、当該材質情報を第1の拘束力又は第2拘束力の算出に用いてもよい。第1算出部111及び第2算出部112は、材質情報が示す材質ごとに予め設定された任意の係数を上記の式1、式2又は式3において用いて、第1の拘束力又は第2拘束力を算出できる。当該係数は、第1の地下構造の材質と第2の地下構造との材質の組み合わせ、又は第2の地下構造の材質と第3の地下構造との材質の組み合わせに応じて予め決定されてよい。
【0055】
例えば管路51Pについて、材質情報として、鋼管、ビニル管等の管路の種類が含まれてよい。開口部材52S又は壁53Wについては、材質情報として、無筋コンクリート、モルタル、レンガ、コンクリートブロック等の種類が含まれてよい。これにより、地下構造の材質に応じてより精度よく拘束力を算出することができる。
【0056】
第1算出部111及び第2算出部112は、第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造の周囲の地盤の特性に関する地盤情報を取得し、当該地盤情報を第1の拘束力又は第2拘束力の算出に用いてよい。第1算出部111及び第2算出部112は、地盤情報が示す地盤の特性ごとに予め設定された任意の係数を上記の式1、式2又は式3において用いて、第1の拘束力又は第2拘束力を算出できる。地盤の特性とは例えば、岩盤層、砂層、粘土層等の地盤の種類、及び水分含有率等を含む。これにより、地盤の特性に応じてより精度よく拘束力を算出することができる。
【0057】
第1算出部111と第2算出部112とのそれぞれは、算出した第1の拘束力と第2の拘束力とを弱点決定部113に出力する。
【0058】
弱点決定部113は、第1の拘束力と第2の拘束力とを比較することにより、地下領域における弱点部を決定する。具体的には、弱点決定部113は、第1の拘束力Bpが第2の拘束力Bwより大きい場合は、弱点部を開口部材52Sと壁53Wとの境界であると決定する。弱点決定部113は、第2の拘束力Bwが第1の拘束力Bpより大きい場合は、弱点部を開口部材52Sと管路51Pとの境界であると決定する。このように弱点決定部113は、第1の地下構造及び第3の地下構造のうち、第2の地下構造に対する拘束力が弱い方との境界部を弱点部であると決定する。弱点決定部113は、決定した弱点部をチャート作成部114に出力する。
【0059】
チャート作成部114は、第1算出部111及び第2算出部112が取得した第1の地下構造及び第2の地下構造の寸法と、弱点決定部113が決定した弱点部とを対応付けるチャートを作成する。
図9は、チャート作成部114が作成するチャートの例を示す。
図9のチャートにおいて、開口部材寸法とは開口部材52Sの幅、高さ、又は管路51Pを挿入させる開口の数、当該開口の直径等の寸法を含む。これに限られず、開口部材寸法とはこれらの寸法を2つ以上組み合わせた合計の値であってもよい。管路本数とは、開口部材52Sを貫通する管路51Pの本数であり、
図3の例では4本である。開口部材寸法と管路本数とは、上述の第1算出部111と第2算出部112とが用いた式1から式3において用いられた値を含んでよい。
【0060】
一般的に開口部材寸法の値が大きい程、開口部材52Sと壁53Wとの間の第1の接触面積が大きくなり、同時に開口部材52Sを貫通可能な管路本数が増える。管路本数の値が大きい程、開口部材52Sと当該開口部材52Sを貫通する管路51Pとの間の第2の接触面積が大きくなる。
【0061】
図9のチャートのFの領域は、開口部材寸法の値が中央値付近の値から最大値までであり、管路51Pの本数が中央値に近い値から最多の本数に近い値までの場合の、弱点決定部113が決定した弱点部を示す。Gの領域は、開口部材寸法の値が最小値から最大値までであり、管路51Pの本数が最少の本数から最多の本数に近い値までの場合の、弱点決定部113が決定した弱点部を示す。
図9のEの領域は、開口部材寸法の値が中央値より小さく、管路51Pの本数が最少の本数に近い値から最多の本数までの場合であるが、この場合は管路51Pが開口部材52Sの寸法に合わず、開口部材52Sに管路51Pが収まらない組み合わせであるため、弱点決定部113による決定の結果が考慮されない領域である。このようにチャート作成部114は、規格化された管路51P及び開口部材52Sの寸法に合わせてチャートを作成できる。
【0062】
本実施形態では、領域Fでは、弱点決定部113によって、開口部材52Sと壁53Wとの間の第2の拘束力Bwが開口部材52Sと管路51Pとの間の第1の拘束力Bpよりも小さく、開口部材52Sと壁53Wとの間の境界が弱点部であると決定されている。領域Gでは、弱点決定部113によって、開口部材52Sと管路51Pとの間の第1の拘束力Bpが開口部材52Sと壁53Wとの間の第2の拘束力Bwよりも小さく、開口部材52Sと管路51Pとの間の境界が弱点部であると決定されている。
【0063】
チャート作成部114は、出力部25を介してユーザに対し当該チャートを表示できる。ユーザは、開口部材52Sの寸法と管路51Pとの本数を把握していれば、当該チャートを見て弱点部をすぐに判断できる。例えばユーザは
図9のチャートを見て、管路51Pの本数と開口部材52Sの寸法とに対応する点が領域Fに入る場合は、弱点部は開口部材52Sと壁53Wとの境界であるとすぐにわかる。この場合ユーザは、壁53Wの厚さを増やす補強を、壁53Wを有する構造物の内部から行う対策をとること、開口部材52Sの地震発生時の変位を抑制する部材を開口部材52Sに追加する対策をとること、両方の対策をとること等を検討できる。一方、管路51Pの本数と開口部材52Sの寸法とに対応する点が領域Gに入る場合は、弱点部は開口部材52Sと管路51Pとの境界であるとすぐにわかる。よって、ユーザは壁53W付近の管路51Pに管軸方向の変位を吸収する伸縮機能を有する継手を設置して外力を低減する対策をとること等を検討できる。
【0064】
チャートは
図9のような形式に限られず、第1の地下構造又は第2の地下構造の一方の寸法を固定して、他方の地下構造の寸法と、弱点部とを一覧的に表示される形式の情報であってもよい。
【0065】
<プログラム>
上述した弱点部決定装置10として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0066】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インタフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)等であり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インタフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インタフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インタフェースは、外部の装置と通信するためのインタフェースである。
【0067】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0068】
<弱点部決定装置10の動作>
次に、
図10A及び
図10Bを参照して、本実施形態に係る弱点部決定装置10の動作について説明する。弱点部決定装置10の動作は、本実施形態に係る弱点部決定方法に相当する。
【0069】
図10AのステップS1において、弱点部決定装置10の第1算出部111は、第1の地下構造と第2の地下構造との間の接触面積である第1の接触面積を示す第1接触面積情報を取得する。第1接触面積情報の取得には任意の手法が採用されてよい。第1算出部111は、上記式1又は式2の右辺で示すように、管路51Pと開口部材52Sとの接触面積を計算して算出した値を第1接触面積情報として取得してもよい。
【0070】
ステップS2において、第1算出部111は、第1の接触面積の単位面積当たりの拘束力Kpを示す情報を取得する。当該情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば第1算出部111は、上記実験1の結果を蓄積したデータベースを参照して読み出すことで当該情報を取得できる。
【0071】
ステップS3において、第1算出部111は、地下領域の地盤からの拘束力を示す地盤拘束力情報を取得する。本実施形態では、第1算出部111は、式2に示すように、地盤に接触する管路51Pの表面積に、管路51Pと地盤との単位面積当たりの拘束力を乗じた結果を地盤拘束力情報として取得する。
【0072】
ステップS4において、第2算出部112は、第2の地下構造と第3の地下構造との間の接触面積である第2の接触面積を示す第2接触面積情報を取得する。第2接触面積情報の取得には任意の手法が採用されてよい。第2算出部112は、上記式3の右辺で示すように、開口部材52Sと壁53Wとの接触面積を計算して算出した値を第2接触面積情報として取得してもよい。
【0073】
ステップS5において、第2算出部112は、第2の接触面積の単位面積当たりの拘束力を示す情報を取得する。当該情報の取得には任意の手法が採用されてよい。例えば第2算出部112は、上記実験2の結果を蓄積したデータベースを参照して読み出すことで当該情報を取得できる。
【0074】
ステップS6において、第1算出部111は、地下領域の地盤からの拘束力を示す地盤拘束力情報を取得する。本実施形態では、第2算出部112は、式3に示すように、地盤に接触する開口部材52Sの表面積に、開口部材52Sと地盤との単位面積当たりの拘束力を乗じた結果を地盤拘束力情報として取得する。例えば第2算出部112は、上記実験3の結果を蓄積したデータベースを参照して読み出すことで地盤拘束力情報を取得できる。
【0075】
ステップS7において、第1算出部111及び第2算出部112は、第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造のそれぞれについて、材質の情報を示す材質情報を取得する。
【0076】
ステップS8において、第1算出部111及び第2算出部112は、第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造の周囲の地盤の特性に関する地盤情報を取得する。
【0077】
ステップS9において、第1算出部111は、ステップS1から3、ステップS7及びステップS8で取得した各種情報に基づいて、上記式1又は2により第1の拘束力を算出する。第1算出部111は、ステップS7で取得した材質情報が示す第1の地下構造及び第2の地下構造の材質と、ステップS8で取得した地盤情報が示す地盤の特性とに応じて任意の係数を上記式1又は2に用いて、第1の拘束力を算出できる。第1算出部111は、算出した第1の拘束力を弱点決定部113に出力する。
【0078】
ステップS10において、第2算出部112は、ステップS4から8で取得した各種情報に基づいて、上記式3により第2の拘束力を算出する。第2算出部112は、ステップS7で取得した材質情報が示す第2の地下構造及び第3の地下構造の材質と、ステップS8で取得した地盤情報が示す地盤の特性とに応じて任意の係数を上記式3に用いて、第2の拘束力を算出できる。第2算出部112は、算出した第2の拘束力を弱点決定部113に出力する。
【0079】
ステップS11において、弱点決定部113は、第1の拘束力と第2の拘束力とを比較することにより、地下領域における弱点部を決定する。弱点決定部113は、決定した弱点部をチャート作成部114に出力する。
【0080】
ステップS12において、チャート作成部114は、第1算出部111及び第2算出部112が取得した第1の地下構造及び第2の地下構造の寸法と、弱点決定部113が決定した弱点部とを対応付けるチャートを作成する。チャート作成部114は、ユーザの要求に応じて作成したチャートを、出力部25を介して表示できる。その後、弱点部決定装置10の動作は終了する。
【0081】
上述の通り、本実施形態の弱点部決定装置10は、第1の地下構造、第2の地下構造、及び第3の地下構造を含む地下領域における弱点部を決定する装置である。弱点部決定装置10は、第1の地下構造と第2の地下構造との間の接触面積である第1の接触面積を示す第1接触面積情報を取得し、第1接触面積情報に基づいて、第1の地下構造と前記第2の地下構造との間の拘束力を第1の拘束力として算出する第1算出部111と、第2の地下構造と第3の地下構造との間の接触面積である第2の接触面積を示す第2接触面積情報を取得し、第2接触面積情報に基づいて、第2の地下構造と第3の地下構造との間の拘束力を第2の拘束力として算出する第2算出部112と、第1の拘束力と第2の拘束力とを比較することにより、地下領域における弱点部を決定する弱点決定部113とを備える。
【0082】
本実施形態によれば、互いに接触する第1の地下構造と第2の地下構造との間の拘束力、及び第2の地下構造と第3の地下構造との間の拘束力について比較し、地震の際に被害が発生することが想定される箇所を弱点部として決定できる。実際に地下空間に人が入って行う点検を要せずに、地震時への対策が必要な箇所を特定でき、コスト低減につながる。よって、地下構造の弱点部を特定する手法を改善する技術を提供できる。
【0083】
上述の通り、本実施形態の弱点部決定装置10において、第1算出部111は、第1の接触面積の単位面積当たりの拘束力を示す情報を取得し、単位面積当たりの拘束力を第1の接触面積に乗じて第1の拘束力を算出し、第2算出部112は、第2の接触面積の単位面積当たりの拘束力を示す情報を取得し、単位面積当たりの拘束力を第2の接触面積に乗じて第2の拘束力を算出する。
【0084】
本実施形態によれば、単位面積当たりの拘束力の値を用いて拘束力を算出し、当該算出した値を比較することで、第2の地下構造が接触する第1の地下構造又は第3の地下構造のどちらがより拘束力が弱いかを精度よく決定することができる。よって、地下構造の弱点部を特定する手法を改善する技術を提供できる。
【0085】
上述の通り、本実施形態の弱点部決定装置10において、第1算出部111又は第2算出部112は、地下領域の地盤からの拘束力を示す地盤拘束力情報をさらに取得し、地盤拘束力情報に基づいて第1の拘束力又は第2の拘束力を算出する。
【0086】
本実施形態によれば、地下構造の周囲の地盤からの拘束力をさらに加味することで、第2の地下構造が接触する第1の地下構造又は第3の地下構造のどちらがより拘束力が弱いかを精度よく決定することができる。よって、地下構造の弱点部を特定する手法を改善する技術を提供できる。
【0087】
上述の通り、本実施形態の弱点部決定装置10は、第1算出部111及び第2算出部112が取得した第1の地下構造及び第2の地下構造の寸法と、弱点決定部113が決定した弱点部とを対応付けるチャートを作成するチャート作成部114をさらに備える。
【0088】
本実施形態によれば、第1の地下構造及び第2の地下構造の寸法から弱点部を一覧的に確認可能なチャートを作成できる。寸法が予めわかっている規格化された地下構造については、ユーザによる弱点部の把握が容易となる。よって、地下構造の弱点部を特定する手法を改善する技術を提供できる。
【0089】
上述の通り、本実施形態の弱点部決定装置10において、第1の地下構造は、管路51Pであり、第3の地下構造は、壁53Wであり、第2の地下構造は、管路51Pを壁53Wに通すために壁53Wに空いた開口部を埋める部材である。
【0090】
本実施形態によれば、マンホールに接続される管路51Pと開口部材52S、及び壁53Wと開口部材52Sとについてそれぞれ拘束力を求め、比較することで地震時の弱点部が開口部材52Sの管路51P側と壁53W側とのどちらにあるかを特定できる。地下に複数存在するこれらの部位について容易に弱点部を特定し、メンテナンスの計画が立てやすくなる。よって、地下構造の弱点部を特定する手法を改善する技術を提供できる。
【0091】
本発明を諸図面や実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0092】
10 弱点部決定装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 出力部
51P 管路
52S 開口部材
53W 壁
111 第1算出部
112 第2算出部
113 弱点決定部
114 チャート作成部