(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063951
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】蒸留装置および蒸留装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 3/16 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B01D3/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172159
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣海 豪
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健大
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076BB04
4D076CC17
4D076CD25
4D076JA03
(57)【要約】
【課題】起動時間の短縮が可能な蒸留装置を提供する。
【解決手段】規則充填物を塔内に有し、塔内での気液の接触により高沸点成分を液側に、低沸点成分をガス側に濃縮する1以上の充填塔Dと、充填塔の下降液の少なくとも一部を気化し、その一部を上昇ガスとして充填塔に導入する1以上の蒸発器Rと、充填塔の上昇ガスの少なくとも一部を液化し、その一部を還流液として充填塔に導入する1以上の凝縮器Cと、少なくとも1つの蒸発器Rと、少なくとも1つの充填塔Dの上部との間に位置する液体供給経路L5と、液体供給経路に位置する1以上の液体貯留容器Hと、液体供給経路L5が接続される充填塔Dの下部に位置する1以上のガス供給経路L7とを備える蒸留装置1を選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則充填物を塔内に有し、塔内での気液の接触により高沸点成分を液側に、低沸点成分をガス側に濃縮する、1以上の充填塔と、
前記充填塔の下降液の少なくとも一部を気化し、その一部を上昇ガスとして前記充填塔に導入する、1以上の蒸発器と、
前記充填塔の上昇ガスの少なくとも一部を液化し、その一部を還流液として前記充填塔に導入する、1以上の凝縮器と、
少なくとも1つの前記蒸発器と、少なくとも1つの前記充填塔の上部との間に位置する液体供給経路と、
前記液体供給経路に位置する、1以上の液体貯留容器と、
前記液体供給経路が接続される前記充填塔の下部に位置する、1以上のガス供給経路と、を備える蒸留装置。
【請求項2】
前記液体供給経路に位置する、圧送装置を備える、請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項3】
前記液体供給経路と前記ガス供給経路とが接続された前記充填塔の上方に位置するガス排出経路と、
前記ガス排出経路に位置する気液分配器と、を備える、請求項1又は2に記載の蒸留装置。
【請求項4】
前記ガス排出経路に位置する、排気装置を備える、請求項3に記載の蒸留装置。
【請求項5】
前記液体供給経路と前記ガス供給経路とが接続された前記充填塔の、上部と下部との差圧を測定する差圧計を備える、請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項6】
充填塔の下部に位置する液体の少なくとも一部を蒸発器によって気化し、その一部を上昇ガスとして当該充填塔に導入し、前記充填塔の上部に位置する気体の少なくとも一部を凝縮器によって液化し、その一部を下降液として当該充填塔に導入する、充填式の充填塔を1以上備える蒸留装置を用いる蒸留方法であって、
当該蒸留装置を起動する際、
少なくとも1つの前記充填塔において、前記蒸発器に導入される液体の一部を起動用液体として当該充填塔の上部に供給し、起動用ガスを前記充填塔の下部から供給するとともに、
当該蒸留装置を定常運転する際、
前記起動用流体として用いた前記液体の一部を、前記蒸発器の外側に導出する、蒸留方法。
【請求項7】
前記起動用ガスとして用いたガスの一部を、前記充填塔の上方に排出する、請求項6に記載の蒸留方法。
【請求項8】
前記蒸留装置を起動する際、前記充填塔内の蒸留負荷が、ローディング点における蒸留負荷よりも大きい状態とする、請求項6又は7に記載の蒸留方法。
【請求項9】
前記充填塔の上部と下部との差圧を測定することで、当該充填塔内の蒸留負荷の状態を監視する、請求項8に記載の蒸留方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留装置および蒸留装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の蒸留装置の構成の一例を示す系統図である。
図3に示すように、従来の蒸留装置101は、気液の接触面積を大きくするため、金属製シート状の規則充填物を塔内に有する充填塔Dと、充填塔Dの上方に位置し、充填塔Dの塔頂から流れてくるガスを液化して還流液として戻すコンデンサ(凝縮器)Cと、充填塔Dの下方に位置し、充填塔Dの塔底の液をガス化して上昇ガスとして戻すリボイラRとを備える。蒸留装置101では、原料Fを充填塔Dに供給し、充填塔Dの塔内で気液の接触により高沸点成分を液側に、低沸点成分をガス側に濃縮する。そして、蒸留装置101では、充填塔Dの塔底の液の一部を製品Pとして取り出すとともに、コンデンサCにより液化した液の一部を排液W1として系外に排出する。
【0003】
一般的に、表面張力の大きい液体は、金属表面に対する濡れ性が良くないことが知られている。例えば、水を多く含んだ水溶液を蒸留する際、
図3に示すような、金属製シート状の規則充填物を有する充填塔Dを用いて運転すると、蒸留性能(充填物の性能)の指標である「理論段数1段と同等の性能となる充填高さ(HETP;Height Equivalent to a Theoretical Plate)」が200mm以上という、劣った数値となる(非特許文献1を参照)。
【0004】
これは、液の金属表面に対する濡れ性が悪いために充填物の表面全体へ液が広がらず、気液の接触面積が小さくなって蒸留分離が進みにくくなるためと推定されている。このような状態は、蒸留装置を起動する際、充填塔の塔内のガス負荷を単純に増加させていき、運転負荷となったところで定常状態を保つような方法で行うと、特に起きやすいことが知られている。
【0005】
ところで、メッシュ状の金属板を丸めた形状である不規則充填物ディクソンリングを用いた、塔径50mm以下のラボスケール充填塔では、起動する際にローディング点以上の通常運転負荷よりも大きい負荷を与えることで、充填物の表面全体に液膜を形成し、HETPが100mm以下の良好な蒸留性能が得られることが知られている(非特許文献2を参照)。一般的に、表面張力の大きな液体を蒸留する場合、規則充填物として主にメッシュ状充填物が用いられるが、メッシュ状金属板で製作された規則充填物を用いた充填塔においても、同様の起動操作を行うことで良好な蒸留性能が得られることが知られている。
【0006】
そこで、蒸留装置の起動時、「充填材の濡れ」を早期に実現するために、充填塔の過負荷運転を行う。この場合、充填塔内に通常よりも多くのホールドアップ(液量)とする必要がある。そのため、従来の蒸留装置では、起動時、通常運転よりも多くの上昇ガス、下降液を用いる運転を行う必要があった。
【0007】
すなわち、従来の蒸留装置では、定常運転に利用しないものの、起動時のために、リボイラRの蒸発能力及び凝縮器Cの凝縮能力を大きくする必要があった。また、凝縮器Cの冷却源として液体窒素等を用いる場合、その供給設備システム自体も、起動時に合わせて設計する必要があった。また、起動終了後、定常運転に移行する場合、充填塔内に存在する冷流体を回収するために、リボイラRを大型にする必要があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】廣瀬永一、亘理和夫、表面張力の大きい系での規則充填物と低液負荷の液分散器について、分離技術第44巻1号p.38-42
【非特許文献2】O.G.Dixon、High efficiency laboratory fractionation,I.Gauze Ring Packing and Flooding Technique for Laboratory Columns、J.S.C.L.,68,March,1949,p.88-91.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の蒸留装置及びその運転方法では、定常運転時の負荷よりも大きな負荷をリボイラRに一時的に与える必要があるため、リボイラRを構成する容器が大きくなってしまう。すなわち、規則充填物の表面上に液膜を広げるためにリボイラRを構成する容器に貯留する液を過剰量にしてから起動するため、装置全体での液保有量が多くなる。これにより、起動開始から充填塔内に定常の濃度分布が形成されるまでの「起動時間」が長くなってしまうという課題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、起動時間の短縮が可能な蒸留装置およびその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 規則充填物を塔内に有し、塔内での気液の接触により高沸点成分を液側に、低沸点成分をガス側に濃縮する、1以上の充填塔と、
前記充填塔の下降液の少なくとも一部を気化し、その一部を上昇ガスとして前記充填塔に導入する、1以上の蒸発器と、
前記充填塔の上昇ガスの少なくとも一部を液化し、その一部を還流液として前記充填塔に導入する、1以上の凝縮器と、
少なくとも1つの前記蒸発器と、少なくとも1つの前記充填塔の上部との間に位置する液体供給経路と、
前記液体供給経路に位置する、1以上の液体貯留容器と、
前記液体供給経路が接続される前記充填塔の下部に位置する、1以上のガス供給経路と、を備える蒸留装置。
[2] 前記液体供給経路に位置する、圧送装置を備える、[1]に記載の蒸留装置。
[3] 前記液体供給経路と前記ガス供給経路とが接続された前記充填塔の上方に位置するガス排出経路と、
前記ガス排出経路に位置する気液分配器と、を備える、[1]又は[2]に記載の蒸留装置。
[4] 前記ガス排出経路に位置する、排気装置を備える、[3]に記載の蒸留装置。
[5] 前記液体供給経路と前記ガス供給経路とが接続された前記充填塔の、上部と下部との差圧を測定する差圧計を備える、[1]に記載の蒸留装置。
[6] 充填塔の下部に位置する液体の少なくとも一部を蒸発器によって気化し、その一部を上昇ガスとして当該充填塔に導入し、前記充填塔の上部に位置する気体の少なくとも一部を凝縮器によって液化し、その一部を下降液として当該充填塔に導入する、充填式の充填塔を1以上備える蒸留装置を用いる蒸留方法であって、
当該蒸留装置を起動する際、
少なくとも1つの前記充填塔において、前記蒸発器に導入される液体の一部を起動用液体として当該充填塔の上部に供給し、起動用ガスを前記充填塔の下部から供給するとともに、
当該蒸留装置を定常運転する際、
前記起動用流体として用いた前記液体の一部を、前記蒸発器の外側に導出する、蒸留方法。
[7] 前記起動用ガスとして用いたガスの一部を、前記充填塔の上方に排出する、[6]に記載の蒸留方法。
[8] 前記蒸留装置を起動する際、前記充填塔内の蒸留負荷が、ローディング点における蒸留負荷よりも大きい状態とする、[6]又は[7]に記載の蒸留方法。
[9] 前記充填塔の上部と下部との差圧を測定することで、当該充填塔内の蒸留負荷の状態を監視する、[8]に記載の蒸留方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蒸留装置および蒸留方法は、起動時間の短縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である蒸留装置の構成の一例を示す系統図である。
【
図2】本発明の一実施形態である蒸留装置の構成の他の例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した一実施形態である蒸留装置及び蒸留方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
本明細書における用語の意味及び定義は、以下のとおりである。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
充填塔の上部(充填塔上部ともいう)とは、充填塔の中心から鉛直方向の上方向をいう。また、充填塔の下部(充填塔下部ともいう)とは、充填塔の中心から鉛直方向の下方向をいう。
ローディング現象とは、充填塔内で気液が向流に接触している状態において、液相の状態を一定に保ち、気相の流速を増大させると、ある流速に達したときに、塔内の液体ホールドアップが増加し始め、同時に圧力損失の増加率も増す状態をいう。また、ローディング点とは、ローディング現象が発生する点をいう。
Fファクター(Fs)とは、充填塔の運転負荷(蒸留負荷)を示す指標である。充填塔の通常の運転負荷は、Fs=1.0前後であり、1を超えると高運転負荷状態であることを示す。
【0016】
<蒸留装置>
先ず、本発明の一実施形態である蒸留装置の構成について、説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態である蒸留装置1の構成を示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態の蒸留装置1は、充填塔D、リボイラ(蒸発器)R、コンデンサ(凝縮器)C、予備液体容器(液体貯留容器)H、及び経路L1~L11を備えて、概略構成されている。
【0017】
充填塔Dは、軸方向が鉛直方向上下となるように配置された塔であり、塔内での気液の接触により、高沸点成分を液側に、低沸点成分をガス側に、それぞれ濃縮する。ここで、充填塔Dでは、上述した気液の接触面積を大きくするため、塔内に規則充填物を有する。
【0018】
規則充填物は、特に限定されるものではなく、蒸留する成分に応じて適宜選択できる。表面張力の大きな液体を蒸留する場合、規則充填物としては、メッシュ状の充填物を用いることが好ましい。
【0019】
充填塔Dの中央には、原料Fを充填塔D内に導入するための経路L1が接続されている。
充填塔Dの上部には、経路L2が位置する。ここで、経路L2の基端は充填塔Dの塔頂に接続されており、経路L2の先端は充填塔Dの上方に接続されている。また、経路L2には、コンデンサ(凝縮器)Cが配置されている。
【0020】
コンデンサ(凝縮器)Cは、経路L2に位置しており、充填塔Dの塔頂から流れてくる上昇ガスの少なくとも一部を液化し、その一部を還流液として充填塔Dの上方に導入する。コンデンサCの冷却源としては、例えば、液化ガスや水などを用いることができる。
【0021】
経路L2は、コンデンサCの一次側に位置する分岐点aにおいて、経路(ガス排出経路)L8と分岐する。また、経路L2は、コンデンサCの二次側に位置する分岐点bにおいて、経路L3と分岐する。
【0022】
経路L8は、充填塔Dの上方に位置し、分岐点aにおいて、経路L2から分岐するガス排出経路である。経路L8には、一次側から順に、仕切弁V1、気液分離器T、及び真空排気ポンプ(排気装置)P1が位置する。
【0023】
仕切弁V1は、流体の流れを仕切るバルブ(弁)である。仕切弁V1は、全閉状態(開度0%)から全開状態(開度100%)まで、任意の開度に調整できるものが好ましい。なお、以下に示す仕切弁V2~V6についても、同様である。
【0024】
仕切弁V1を開放状態(開度0%超)とすることで、充填塔Dの塔頂から経路L2を介して流れてくる上昇ガスのうち、少なくとも一部が経路L8に導入される。
【0025】
気液分離器Tは、経路L8において仕切弁V1の二次側に位置し、経路L8を流れる流体を液体と気体とに分離する機能を有する。気液分離器Tとしては、特に限定されるものではないが、内側の空間に気体を冷却するための冷却源を有し、液体を貯留可能な容器などを用いることができる。また、気液分離器Tには、経路L9が接続されている。
【0026】
経路L9は、気液分離器Tと充填塔Dとの間に位置する。また、経路L9には、仕切弁V2が位置する。仕切弁V2を開放状態とすることで、気液分離器Tによって分離した液体を充填塔Dの塔頂寄りの位置へ返送することができる。
【0027】
真空排気ポンプP1は、経路8において気液分離器Tの二次側に位置し、気液分離器Tによって分離された気体(ガス)を排ガスW2として系外に排出するためのポンプである。真空排気ポンプP1としては、特に限定されるものではないが、例えば、ロータリーポンプが挙げられる。
【0028】
経路L3は、分岐点bにおいて、経路L2から分岐する液排出経路である。コンデンサCによって液化した液体のうち、一部は還流液として経路L2を介して充填塔Dの上方に導入され、残部は排液W1として経路L3を介して系外に排出される。
【0029】
充填塔Dの下部には、経路L4が位置する。ここで、経路L4の基端は充填塔Dの塔底に接続されており、経路L4の先端は充填塔Dの下方に接続されている。経路L4には、リボイラ(蒸発器)Rが配置されている。また、経路L4は、リボイラRの一次側に位置する分岐点cにおいて、経路(製品導出経路)L11と分岐する。
【0030】
経路L11は、分岐点cにおいて、経路L4から分岐する液導出経路である。すなわち、経路L11は、充填塔Dの塔底に貯留される液体のうち、経路L4の導出される液体の一部を製品Pとして取り出すための経路である。
【0031】
リボイラ(蒸発器)Rは、経路L4に位置しており、充填塔Dの塔底から流れてくる下降液の少なくとも一部を気化し、その一部を上昇ガスとして充填塔Dの下方に導入する。すなわち、リボイラRは、液体を貯留する容器と、液体を加熱する加熱源とを有する。リボイラRの加熱源としては、例えば、コンデンサCの冷却源と同種のガスや、水、ヒーターなどを用いることができる。
【0032】
リボイラRを構成する容器には、経路(液体供給経路)L5と経路L10とが接続されている。
経路L5は、リボイラRと充填塔Dとの間に位置する液体供給経路であり、基端がリボイラRを構成する容器と接続されており、先端が充填塔Dの塔頂寄りの位置に接続されている。また、経路L5には、基端側(一次側)から順に、仕切弁V3、予備液体容器(液体貯留容器)H、仕切弁V5、揚液ポンプ(圧送装置)P2、液流量計Q2、及び流量調節弁CV1が位置する。
【0033】
予備液体容器Hは、経路L5においてリボイラRの二次側に位置し、内部に充填塔D内で蒸留されている液体と同じ物質をためておくことが可能な容器である。
【0034】
予備液体容器Hの大きさ(容量)は、特に限定されるものではなく、蒸留装置1の大きさに応じて、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、充填長30m、塔径0.2mの充填塔Dを用いて重水を濃縮する場合、通常運転時のホールドアップ液量が30L程度であれば、予備液体容器Hの容量を、50~100Lとすることができる。
【0035】
揚液ポンプP2は、予備液体容器Hの二次側に位置し、リボイラRを構成する容器や予備液体容器H内の液体を充填塔Dの塔頂寄りの位置まで揚液するポンプである。揚液ポンプP2は、特に限定されるものではないが、例えば、マグネットポンプを用いることができる。
【0036】
液流量計Q2は、揚液ポンプP2の二次側に位置し、経路L5内を流れる液体の流量を測定する。液流量計Q2は、特に限定されるものではないが、例えば熱伝導式を用いることができる。
【0037】
流量調節弁CV1は、液流量計Q2の二次側に位置し、流量によって開度を全閉(開度0%)から全開(開度100%)まで、連続的あるいは段階的に調節するバルブ(弁)である。なお、流量調節弁CV2も、同様である。
【0038】
本実施形態の蒸留装置1によれば、経路L5の仕切弁V3を開放状態とし、仕切弁V5を閉止状態とすることで、リボイラRを構成する容器内の液体の一部を予備液体容器Hに貯留することができる。
【0039】
また、本実施形態の蒸留装置1によれば、経路L5の仕切弁V3及び仕切弁V5を開放状態とすることで、リボイラRを構成する容器及び予備液体容器Hに貯留された液体の少なくとも一部を揚液ポンプ2によって充填塔Dの塔底寄りから塔頂寄りの位置まで揚液し、液流量計Q2及び流量調節弁CV2によって所要の流量で充填塔Dの塔頂寄りの位置に導入することができる。
【0040】
経路L5は、仕切弁V5と揚液ポンプP2との間に位置する合流点dにおいて、経路L10と合流する。また、経路L5は、揚液ポンプP2と液流量計Q2との間に位置する分岐点eにおいて、経路L6と分岐する。
【0041】
経路L6は、分岐点eにおいて、経路L5から分岐する液排出経路である。また、経路L6には、仕切弁V6が配置されている。仕切弁V6を開放状態とすることで、経路5を流れる液体の一部が経路L6を介して排液W3として系外に排出される。
【0042】
経路L10は、リボイラRと経路L5の合流点dとの間に位置する液体供給経路であり、基端がリボイラRを構成する容器と接続されており、先端が経路L5の合流点dに接続されている。また、経路L10には、仕切弁V4が配置されている。
【0043】
本実施形態の蒸留装置1によれば、仕切弁V4を開放状態とすることで、リボイラRを構成する容器内の液体の一部を、予備液体容器Hを介さずに揚液ポンプP2に供給することができる。すなわち、経路L10は、予備液体容器Hを迂回するバイパス経路である。
【0044】
充填塔Dの下部には、上昇ガスGを充填塔D内に導入するための経路(ガス供給経路)L7が接続されている。また、経路L7には、一次側から順に、ガス流量計Q3、流量調節弁CV2が位置する。
【0045】
ガス流量計Q3は、経路L7内を流れる気体(ガス)の流量を測定する。ガス流量計Q3は、特に限定されるものではないが、例えば差圧式を用いることができる。
【0046】
本実施形態の蒸留装置1によれば、経路L7、ガス流量計Q3、及び流量調節弁CV2を有するため、充填塔Dの下部(すなわち、塔頂寄りの位置)から、所要の流量に制御した上昇ガスGを充填塔D内に導入することができる。
【0047】
本実施形態の蒸留装置1は、充填塔Dの上部と下部との差圧を測定する差圧計Q1を備える。
【0048】
<蒸留方法>
次に、本発明の一実施形態である蒸留方法の構成について、上述した蒸留装置1を用いる場合を一例として説明する。
本実施形態の蒸留方法は、充填塔の下部に位置する液体の少なくとも一部をリボイラ(蒸発器)Rによって気化し、その一部を上昇ガスとして当該充填塔Dに導入し、充填塔Dの上部に位置する気体の少なくとも一部をコンデンサ(凝縮器)Cによって液化し、その一部を下降液として当該充填塔Dに導入する、充填式の充填塔Dを備える蒸留装置1を用いる蒸留方法であって、当該蒸留装置1を起動する際、充填塔Dにおいて、リボイラRに導入される液体の一部を起動用液体として当該充填塔Dの上部に供給し、上昇ガスGを起動用ガスとして充填塔Dの下部から供給するとともに、当該蒸留装置1を定常運転する際、起動用流体として用いた液体の一部を、リボイラRの外側に導出し、予備液体容器Hに貯留する。
以下、蒸留装置1を起動する際の起動方法、及び蒸留装置1の定常運転する際の運転方法について、純水の蒸留により重水素を濃縮する場合を一例として、具体的に説明する。
【0049】
(蒸留装置の起動方法)
本実施形態の蒸留方法では、蒸留装置1の起動時において、以下に示すステップ1、及びステップ2に示すような方法で、意図的に充填塔Dの高負荷運転状態を維持する操作を行う。
【0050】
「ステップ1」
先ず、充填塔Dの熱負荷を定常運転時よりも高負荷状態とする(すなわち、リボイラRの出力を上げる)とともに、充填塔Dの塔頂付近に接続された経路L5に位置する流量調節弁CV1の開度を調節して、蒸留する物質とほぼ同じ組成の液体(純水の蒸留により重水素を濃縮する場合、水)を、Fs換算で1.5以上のガスが全量液化した時の流量となるように調整して充填塔Dへ注入する。この液体は、仕切弁V3~V5を開放状態とし、充填塔Dに備え付けのリボイラRを構成する容器、あるいは予備液体容器Hから、経路L5及び揚液ポンプP2を用いて供給する。
【0051】
「ステップ2」
次いで、充填塔Dの塔底付近に接続された経路L7に位置する流量調節弁CV2の開度を調節して、上昇ガスGを起動用ガスとして充填塔D内へ導入する。上昇ガスGとしては、プロセス流体をガス化させたもの(純水の蒸留により重水素を濃縮する場合、水蒸気)や、窒素ガス及びアルゴンガスなどの水よりも沸点の低い不活性ガスを用いる。上昇ガスGは、Fs換算で1.5以上の流量となるように調整して注入する。導入された上昇ガスGは、真空排気ポンプP1により、充填塔Dの塔頂とコンデンサCとを接続する経路L2から分岐した経路L8から、排ガスW2として排気する。上昇ガスGの一部を排気する際は、気液分離器Tを通すことにより、経路L9を介して液体成分を充填塔Dに回収する。
【0052】
本実施形態の蒸留方法では、蒸留装置1を起動する際、充填塔D内の運転負荷(蒸留負荷)が、ローディング点における運転負荷(蒸留負荷)よりも大きい状態とする。
なお、充填塔D内の運転負荷(蒸留負荷)が、ローディング点以上に達したかの確認は、差圧計Q1を用いて充填塔Dの上部と下部との差圧を測定することで、確認できる。すなわち、差圧計Q1を用いて、充填塔D内の運転負荷(蒸留負荷)の状態を監視することができる。
【0053】
差圧計Q1の値は、充填塔D内の充填物の種類によって異なる。具体的には、純水の蒸留により重水素を濃縮する場合では、差圧計Q1の値が1kPa/m以上に到達した際、ローディング点以上に達したと判断する。
【0054】
次に、充填塔D内の運転負荷(蒸留負荷)が、ローディング点以上に達した後、充填塔D内の充填物上に液膜が形成されるのに十分な時間(純水の蒸留により重水素を濃縮する場合、2時間以上)が経過するまで、ステップ1及びステップ2を維持する。これにより、充填塔Dの蒸留性能が改善される。
【0055】
(定常運転への移行)
本実施形態の蒸留方法では、蒸留装置1の起動操作の完了後、定常運転状態、すなわち、通常の運転負荷(蒸留負荷;Fs=1.0前後)へ戻す操作を行う。
具体的には、起動操作の完了後にリボイラRの熱負荷を通常の運転負荷まで下げると、充填塔D内の充填物上に広がった液の大部分がリボイラRを構成する容器へと戻ってくるため、蒸留に必要な分の液体をリボイラRの容器内に残し、余剰の液体を予備液体容器Hに回収する。
【0056】
ところで、従来の蒸留装置の運転方法では、装置の起動時に通常運転時のホールドアップ(充填塔体積の3%程度)の2倍以上の液量をリボイラRの容器内に仕込む必要があった。
また、従来の蒸留装置の運転方法では、装置の起動時において、リボイラRに通常の運転負荷の1.5倍以上の負荷(Fs換算で1.5以上)を与えて上昇ガス量を増加させる必要があった。
【0057】
これに対して、本実施形態の蒸留方法では、仕込み時の保有液量を大幅に減らすことができる。この保有液量の減少によって起動時間を短縮できる。
また、本実施形態の蒸留方法では、装置の起動時において、リボイラRの必要熱負荷を70%以下に低減できる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の蒸留装置1及び蒸留方法(起動方法)によれば、リボイラRの液体保有量を低減し、起動時間を短縮できる。
【0059】
具体的には、例えば、充填長30m、塔径0.2mの充填塔を用いて重水を濃縮する場合、保有液量を30L程度減らすことが出来るため、2週間程度起動時間の短縮が可能となる。
リボイラRの必要熱負荷を小さくすることができるので、設備コストを抑えることができる。
【0060】
また、充填長30m、塔径0.2mの充填塔を用いて重水を濃縮する場合、通常運転時の熱負荷は22.5kW、起動運転時の熱負荷は50kWとなり、熱負荷を27.5kW程度小さくすることが可能となる。
【0061】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
本発明では、リボイラRの蒸発能力及びコンデンサCの凝縮能力は、定常運転時を想定して設計することが好ましい。
また、本発明では、充填塔D内の運転圧力が大気圧力よりも低い場合、充填塔D内の流体を真空排気ポンプP1で吸引してもよい。
【0063】
また、上述した実施形態の蒸留装置1では、リボイラRと予備液体容器Hとが仕切弁V3で区切られる構成を一例として説明したが、これに限定されない。リボイラRと予備液体容器Hとは仕切弁V3がない経路L5で直接接続される構成としてもよい。
【0064】
上述した実施形態では、充填塔Dを1つ備えた蒸留装置1を一例として説明したが、本発明は、これに限定されない。本発明は、充填塔の本数が2つ以上の場合においても成立し、各充填塔が、リボイラRを構成する容器と充填塔との間に位置する経路(液体供給経路)L5と、充填塔の塔底付近に接続された経路(ガス供給経路)L7とを備えることにより実施できる。
【0065】
この場合、各充填塔に同時に上昇ガスGを供給しても良い。
また、複数の充填塔で、経路(液体供給経路)L5、及び経路(ガス供給経路)L7を共有し、各充填塔に同時に液流体を供給しても良い。つまり、各充填塔の起動を同時に行っても良い。
【0066】
一方、各充填塔の一部から起動しても良い。この場合、既に起動した充填塔内の上昇ガスGの一部を起動対象の充填塔の上昇ガスGとして供給しても良い。また、既に起動した充填塔から予備液体容器Hに回収された液流体を起動対象の充填塔に供給しても良い。
【0067】
図2は、本発明の一実施形態である蒸留装置の他の例を示す系統図である。
図2に示すように、蒸留装置21は、充填塔Dに替えて直列に接続された充填塔D1~D3を経路5に替えて経路51~53を、経路7に替えて経路71~73を備える点で、
図1に示す蒸留装置1とは構成が異なる。なお、蒸留装置21のその他の構成は、蒸留装置1と同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図2に示すように、充填塔D1の上方には、経路L2及び経路L9が接続されている。
充填塔D1の中央には、原料Fを充填塔D内に導入するための経路L1が接続されている。
【0069】
充填塔D1と充填塔D2との間には、経路L12及び経路L21が位置する。
経路L12は、基端が充填塔D1の塔底に接続され、先端が充填塔D2の塔頂寄りに接続されている。これにより、経路L12は、充填塔D1の塔底に貯留される液体の一部を下降液として充填塔D2の塔頂寄りの位置に供給できる。
経路L21は、基端が充填塔D2の塔頂に接続され、先端が充填塔D1の塔底寄りに接続されている。これにより、経路L21は、充填塔D2の塔頂に貯留される気体の一部を上昇ガスとして充填塔D1の塔底寄りの位置に供給できる。
【0070】
充填塔D2と充填塔D3との間には、経路L23及び経路L32が位置する。
経路L23は、基端が充填塔D2の塔底に接続され、先端が充填塔D3の塔頂寄りに接続されている。これにより、経路L23は、充填塔D2の塔底に貯留される液体の一部を下降液として充填塔D3の塔頂寄りの位置に供給できる。
経路L32は、基端が充填塔D3の塔頂に接続され、先端が充填塔D2の塔底寄りに接続されている。これにより、経路L32は、充填塔D3の塔頂に貯留される気体の一部を上昇ガスとして充填塔D2の塔底寄りの位置に供給できる。
【0071】
充填塔D3の下方には、経路L4が接続されている。
また、経路L4には、分岐点c及びリボイラRが位置している。
【0072】
充填塔D1~D3の下部には、上昇ガスGを充填塔D1~D3内に導入するための経路(ガス供給経路)L71~73がそれぞれ接続されている。また、経路L71~73には、一次側から順に、ガス流量計Q3-1~3-3、流量調節弁CV2-1~2-3がそれぞれ位置する。
【0073】
リボイラRには、経路(液体供給経路)L51が接続されている。経路L51は、分岐点fで経路L53と、分岐点gで経路L52と、それぞれ分岐する。
【0074】
充填塔D1~D3の上部には、リボイラRあるいは予備液体容器H内に貯留される液体の一部を下降液として充填塔D1~D3内に導入するための経路(液体供給経路)L51~53がそれぞれ接続されている。また、経路L51~53には、一次側から順に、液流量計Q2-1~2-3、流量調節弁CV1-1~1-3がそれぞれ位置する。
【0075】
図2に示すように、3塔の充填塔D1~D3から構成される蒸留装置21の場合、充填塔D1~D3を同時に起動してもよいし、任意の一部の塔から順次起動してもよい。
【0076】
なお、
図2に示す蒸留装置21では、充填塔D3の塔底に貯留される液を、経路L51を介して予備液体容器Hに導入する場合を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、図示しない経路により、充填塔D1及び充填塔D2の一方または両方の塔底に貯留される液体を予備液体容器Hに導入する構成としてもよい。
【0077】
また、
図2に示す蒸留装置21では、充填塔D1にのみ、真空排気ポンプP1が接続される構成を一例として説明したが、充填塔D1及び充填塔D2の一方または両方の上部に接続する構成としてもよい。
【0078】
また、上述した実施形態の蒸留装置1、21では、純水の蒸留により重水素を濃縮する場合を一例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、酸素ガスを原料Fとし、複数の充填塔を連続的に用いることにより、酸素同位体を分離する装置・方法に適用してもよい。また、例えば、目的成分の濃度が低い炭化水素系物質含有水溶液の蒸留に適用してもよい。
【実施例0079】
以下、実施例によって本発明の効果を説明するが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0080】
<実施例>
図1に示す装置構成の充填長30m、塔径0.2mの金属製メッシュ状規則充填物を有する充填塔Dを備える蒸留装置1で、表面張力の大きな物質である純水を蒸留し、重水素を濃縮した。
蒸留装置の起動時に、以下の(1)、(2)に示すような方法で意図的に高運転負荷状態を維持する操作を行い、蒸留性能を改善後、通常の運転負荷(Fs=1.0前後)へ戻す操作を行った。
【0081】
(1)充填塔Dの塔頂付近に配置されている流量調節弁CV1を介して蒸留する物質とほぼ同じ組成の液体(水)をFs換算1.5以上のガスが全量液化した時の流量になる様に調整して充填塔へ注入した。この液体は、充填塔Dに備え付けのリボイラRもしくは予備液体容器Hから揚液ポンプP2を用いて供給した。
リボイラR及び予備液体容器Hは、液体の出し入れが可能な様に仕切弁V3~V5を設置しておき、起動操作の完了後にリボイラRの熱負荷を通常の運転負荷まで下げると、充填塔D内の充填物上に広がった液の大部分がリボイラRへ戻ってくるため、蒸留に必要な分の液体を残し、残りを予備液体容器Hに回収した。
【0082】
(2)充填塔Dの塔底付近に配置されている流量調節弁CV2を介して、上昇ガスGを充填塔Dへ注入した。この時の上昇ガスGは、プロセス流体をガス化させたもの(水蒸気)を用いた。上昇ガスGは、Fs換算で1.5以上の流量になるように調整して注入した。
注入した上昇ガスGは備え付けの真空排気ポンプP1により、排気した。排気の際は気液分離器Tを通すことにより、液体成分を充填塔Dに回収した。
【0083】
なお、高負荷運転により、ローディング点以上に達したかの確認は、充填塔Dに設けた差圧計Q1の値から判断した。
差圧計Q1の差圧の値が1kPa/m以上に到達したら、2時間以上(1)、(2)を維持した後、通常運転状態まで戻す操作(すなわち、リボイラRの熱負荷を通常の運転負荷まで下げる操作、あるいは、液体の注入及び上昇ガスGの注入を停止する操作)を実施した。
本操作にかかる時間は、合計で3時間程度であった。
【0084】
<比較例>
図3に示す装置構成の充填長30m、塔径0.2mの金属製メッシュ状規則充填物を有する充填塔Dを備える蒸留装置101で、表面張力の大きな物質である純水を蒸留し、重水素を濃縮した。
【0085】
蒸留装置の起動時に、リボイラRの熱負荷を、通常の運転負荷の1.5倍以上の負荷(Fs換算で1.5以上)まで徐々に上げていく操作を行い、その状態を2時間以上維持した後、通常の運転負荷(Fs=1.0前後)へ戻す操作を行った。
本操作にかかる時間は、合計で3時間程度であった。
【0086】
比較例の起動方法では、通常運転時リボイラRに最低限必要な液量に加えて、通常運転時のホールドアップ(充填塔体積の3%程度)の2倍以上の液量(60L以上)を、リボイラRを構成する容器内に仕込む必要があった。
これに対して、実施例では、通常運転時リボイラRに最低限必要な液量のみでよいため、通常運転時の保有液量を比較例よりも60L以上減らすことができた。この保有液量の減少によって、製品濃度に到達するまでの起動時間を1ヶ月以上低減できた。
【0087】
また、比較例では、リボイラRに運転負荷の1.5倍以上の負荷(Fs換算で1.5以上)を与えて上昇ガス量を増加させる必要があったが、本発明では、リボイラRの必要熱負荷を比較例の70%以下に低減できた。