(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064195
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】移動体制御方法及び移動体制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20240507BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240507BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240507BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20240507BHJP
【FI】
B60W30/10
G05D1/02 H
G08G1/16 C
B60W30/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172608
(22)【出願日】2022-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 秀成
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】ラクシンチャラーンサク ポンサトーン
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA33
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD09
3D241CD11
3D241CE06
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC25Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL09
5H301AA01
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG16
(57)【要約】
【課題】目標経路に追従するように移動体を制御する際に、安全を確保しつつ、移動体がスタックすることを抑制する。
【解決手段】移動体制御システムは、移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、移動体の周囲のリスクを回避しつつ目的地へ向かう目標経路を算出する。第1領域が認識センサから視認できない不可視領域であるが、第1領域を回避することができない場合、移動体制御システムは、第1領域に向かう目標経路を暫定目標経路として生成する。そして、移動体制御システムは、第1領域に進入する前に減速しつつ暫定目標経路に追従するように移動体を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を制御する移動体制御方法であって、
前記移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、前記移動体の周囲のリスクを回避しつつ目的地へ向かう目標経路を算出することと、
第1領域が前記認識センサから視認できない不可視領域であるが、前記第1領域を回避することができない場合、前記第1領域に向かう前記目標経路を暫定目標経路として生成することと、
前記第1領域に進入する前に減速しつつ前記暫定目標経路に追従するように前記移動体を制御することと
を含む
移動体制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体制御方法であって、
前記移動体が前記第1領域に進入する前に、前記第1領域が前記認識センサから視認できる可視領域となるか否かを判定することと、
前記移動体が前記第1領域に進入する前に前記第1領域が前記可視領域となった場合、前記認識センサによる前記認識結果に基づいて、前記移動体が前記第1領域を走行可能か否かを判定することと、
前記移動体が前記第1領域を走行可能である場合、前記第1領域に進入する前記目標経路を算出することと
を更に含む
移動体制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体制御方法であって、
前記移動体が前記第1領域に進入する前に、前記第1領域が前記認識センサから視認できる可視領域となるか否かを判定することと、
前記移動体が前記第1領域に進入する前に前記第1領域が前記可視領域となった場合、前記認識センサによる前記認識結果に基づいて、前記移動体が前記第1領域を走行可能か否かを判定することと、
前記移動体が前記第1領域を走行することができない場合、前記移動体が前記第1領域に進入する前に前記移動体を停止させることと
を更に含む
移動体制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の移動体制御方法であって、
前記移動体が前記第1領域に進入する前に、前記第1領域が前記認識センサから視認できる可視領域となるか否かを判定することと、
前記移動体が前記第1領域に進入する前に前記第1領域が前記可視領域とならない場合、前記移動体が前記第1領域に進入する前に前記移動体を停止させることと
を更に含む
移動体制御方法。
【請求項5】
移動体を制御する移動体制御システムであって、
1又は複数のプロセッサを備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、前記移動体の周囲のリスクを回避しつつ目的地へ向かう目標経路を算出し、
第1領域が前記認識センサから視認できない不可視領域であるが、前記第1領域を回避することができない場合、前記第1領域に向かう前記目標経路を暫定目標経路として生成し、
前記第1領域に進入する前に減速しつつ前記暫定目標経路に追従するように前記移動体を制御する
ように構成された
移動体制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、目標経路に追従するように移動体を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プラント内の既設設備の異常時に、支援設備を待機位置から所定位置に移動させるための経路を生成する経路計画システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目標経路に追従するように移動体を制御することを考える。移動体に搭載された認識センサにより移動体の周囲の障害物等のリスクが認識され、認識されたリスクを回避するように目標経路が算出される。このとき、障害物等の向こう側の領域は、認識センサから見えない不可視領域(死角)となる。そのような不可視領域も障害物等と同等のリスクとみなされる場合、不可視領域に進入するような目標経路は生成されなくなる。但し、その場合、状況によっては目標経路が一切生成されなくなり、移動体がスタックしてしまう。
【0005】
本開示の1つの目的は、目標経路に追従するように移動体を制御する際に、安全を確保しつつ、移動体がスタックすることを抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点は、移動体を制御する移動体制御方法に関連する。
移動体制御方法は、
移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、移動体の周囲のリスクを回避しつつ目的地へ向かう目標経路を算出することと、
第1領域が認識センサから視認できない不可視領域であるが、第1領域を回避することができない場合、第1領域に向かう目標経路を暫定目標経路として生成することと、
第1領域に進入する前に減速しつつ暫定目標経路に追従するように移動体を制御することと
を含む。
【0007】
本開示の第2の観点は、移動体を制御する移動体制御システムに関連する。
移動体制御システムは、1又は複数のプロセッサを備える。
1又は複数のプロセッサは、
移動体に搭載された認識センサによる認識結果に基づいて、移動体の周囲のリスクを回避しつつ目的地へ向かう目標経路を算出し、
第1領域が認識センサから視認できない不可視領域であるが、第1領域を回避することができない場合、第1領域に向かう目標経路を暫定目標経路として生成し、
第1領域に進入する前に減速しつつ暫定目標経路に追従するように移動体を制御する
ように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第1領域が不可視領域であり、且つ、第1領域を回避することができない場合、第1領域に向かう暫定目標経路が生成される。移動体は、減速しつつ暫定目標経路に追従するように制御される。すなわち、移動体は、ゆっくりと第1領域に近づくように制御される。よって、移動体が第1領域に接近した後、第1領域の中に高いリスクが実際に存在することが検知されたとしても、移動体を迅速に停止させることが可能となる。言い換えれば、移動体の安全を確保しつつ、第1領域に進入することができるか否かを探ることが可能となる。移動体が第1領域に接近した後、移動体が第1領域を走行可能であることが判明する場合もある。その場合は、移動体は第1領域を通過して目的地に向かうことができる。このように、本開示によれば、移動体の安全を確保しつつ、移動体がスタックすることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両制御の概要を説明するための概念図である。
【
図2】車両制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】目標経路算出処理の一例を説明するための概念図である。
【
図4】不可視領域に対する自動運転制御を説明するための概念図である。
【
図5】第1領域に対する自動運転制御を説明するための概念図である。
【
図6】第1領域に対する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0011】
1.目標経路とリスク回避
自律的に移動可能な移動体について考える。移動体としては、車両、ロボット、飛翔体、等が例示される。車両としては、自動運転車両、月面探索車(月面ローバー)、等が例示される。ロボットとしては、物流ロボット、等が例示される。飛翔体としては、飛行機、ドローン、等が例示される。
【0012】
一例として、以下の説明においては、移動体が車両である場合について考える。一般化する場合には、以下の説明における「車両」を「移動体」で読み替え、「車両の走行」を「移動体の移動」で読み替えるものとする。
【0013】
図1は、車両1の制御の概要を説明するための概念図である。車両1は、出発地から目的地まで自律的に走行する。より詳細には、目的地に到達するための目標経路PTがリアルタイムに算出され、その目標経路PTに追従するように車両1は制御される。
【0014】
車両1の周囲には、車両1の走行を妨げるリスクが存在する可能性がある。典型的には、障害物が、車両1の走行を妨げるリスクとなる。そのようなリスクは、車両1に搭載された認識センサによって認識される。そして、認識センサによって認識されたリスクを回避するように目標経路PTが算出される。
【0015】
車両1が未知の環境を走行する場合もある。例えば、車両1が広大な不整地(uneven surface, uneven terrain)を走行する場合もある。不整地をオフロードと呼ぶこともできる。未舗装の不整地には、白線は存在しない。その代わり、不整地には、岩石、樹木、急坂、崖、丘陵、谷、穴、陥没、クレーター等、車両1の走行を妨げるリスクが存在する可能性がある。また、光源と地形により形成される影も、認識センサによる認識精度を低下させるため、車両1の走行を妨げるリスクとなる。尚、移動体が飛翔体である場合は、洞窟等が不整地に相当する。
【0016】
リスク値Uriskは、車両走行に関するリスクの大きさである。リスクポテンシャルは、リスク値Uriskを位置の関数として表す。言い換えれば、リスクポテンシャルは、リスク値Uriskの分布を示す。例えば、障害物OBSに関するリスクポテンシャルでは、リスク値Uriskは、障害物OBSの位置で最大となり、障害物OBSから離れるにつれて小さくなる。例えば、リスクポテンシャルは、ガウス分布(正規分布)で表される。分布の分散は、障害物OBSの種類毎に異なっていてもよい。分布の分散は、車両1の速度に応じて変動してもよい。例えば、速度が高くなるほど、分布の分散は大きくなってもよい。車両1の周囲の所定範囲が格子状に区切られ、各グリッド上でリスク値Uriskが与えられてもよい。その場合、リスクポテンシャルをリスクグリッドと呼ぶこともできる。
【0017】
車両1は、認識センサを用いて車両1の周囲のリスクを認識し、その認識結果に基づいて車両1の周囲のリスクポテンシャルをリアルタイムに算出する。更に、車両1は、リスクポテンシャルに基づいて、リスクを回避しつつ目的地へ向かう目標経路PTをリアルタイムに算出する。そして、車両1は、目標経路PTに追従するように自律的に走行する。
【0018】
2.車両制御システムの例
図2は、車両1を制御する車両制御システム10の構成例を示すブロック図である。典型的には、車両制御システム10は、車両1に搭載される。車両制御システム10は、センサ群20、走行装置30、及び制御装置100を含んでいる。
【0019】
センサ群20は、車両1に搭載されている。センサ群20は、車両1の周囲の状況を認識する認識センサ21を含んでいる。認識センサ21としては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。また、センサ群20は、車両1の状態を検出する車両状態センサ22を含んでいる。車両状態センサ22は、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等を含んでいる。
【0020】
走行装置30は、車両1を走行させる。より詳細には、走行装置30は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車両1の車輪を転舵する。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。走行装置30は、キャタピラにより車両1を走行させてもよい。
【0021】
制御装置100は、車両1を制御するコンピュータである。制御装置100は、1又は複数のプロセッサ110(以下、単にプロセッサ110と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置120(以下、単に記憶装置120と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ110は、各種処理を実行する。記憶装置120は、プロセッサ110による処理に必要な各種情報を格納する。
【0022】
車両制御プログラム130は、プロセッサ110によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ110が車両制御プログラム130を実行することにより、制御装置100の機能が実現される。車両制御プログラム130は、記憶装置120に格納される。あるいは、車両制御プログラム130は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0023】
制御装置100は、センサ群20を用いて、車両1の運転環境を示す運転環境情報200を取得する。運転環境情報200は、記憶装置120に格納される。運転環境情報200は、周辺状況情報、車両状態情報、地図情報、等を含んでいる。
【0024】
周辺状況情報は、認識センサ21による認識結果を示す情報であり、車両1の周囲の状況を示す。例えば、周辺状況情報は、カメラによって撮像される画像情報を含む。他の例として、周辺状況情報は、LIDARによって得られる点群情報を含む。周辺状況情報は、更に、車両1の周囲の物体に関する物体情報を含んでいる。物体は、車両1の走行を妨げる障害物を含む。物体情報は、車両1に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。例えば、カメラによって得られた画像情報を解析することによって、物体を識別し、その物体の相対位置を算出することができる。また、LIDARによって得られた点群情報に基づいて、物体を識別し、その物体の相対位置と相対速度を取得することもできる。
【0025】
車両状態情報は、車両1の状態を示す情報であり、車両状態センサ22から得られる。車両1の状態としては、速度、加速度、ヨーレート、舵角、等が挙げられる。
【0026】
地図情報は、車両1が走行するエリアの地図である。車両1が走行するエリアは、少なくとも車両1の出発地と目的地を含んでいる。地図情報は、3次元地形情報を含んでいてもよい。車両1が広大な不整地を走行する場合、地図情報はその不整地の地図を含む。地図情報は、既知のリスクの大まかな位置を示していてもよい。
【0027】
制御装置100は、車両1の走行を制御する車両走行制御を実行する。車両走行制御は、操舵制御、加速制御、及び減速制御を含む。制御装置100は、走行装置30を制御することによって車両走行制御を実行する。
【0028】
また、制御装置100は、運転環境情報200に基づいて自動運転制御を行う。より詳細には、制御装置100は、運転環境情報200に基づいて、車両1の走行プランを生成し、車両1が走行プランに従って走行するために必要な目標経路PTを算出する。そして、制御装置100は、車両1が目標経路PTに追従するように車両走行制御を行う。
【0029】
目標経路PTを算出する処理を、以下、「目標経路算出処理」と呼ぶ。目標経路算出処理において、制御装置100は、認識センサ21による認識結果、すなわち周辺状況情報(物体情報)に基づいて、車両1の周囲のリスクポテンシャルをリアルタイムに算出する(
図1参照)。車両1の周囲に複数のリスクが存在する場合、それぞれのリスクに関するリスクポテンシャルが加算される。そして、制御装置100は、リスクポテンシャルに基づいて、リスクを回避しつつ目的地へ向かう目標経路PTをリアルタイムに算出する。
【0030】
図3は、目標経路算出処理の一例を説明するための概念図である。本例では、目標経路PTは、「グローバル経路PG」、「準グローバル経路PS」、及び「ローカル経路PL」の三種類を含んでいる。
【0031】
グローバル経路PGは、目的地への大まかな目標経路PTであり、予め決定される。
【0032】
準グローバル経路PSは、車両1の周囲のリスクを回避しつつ目的地へ向かう目標経路PTである。つまり、準グローバル経路PSは、所定のグローバル経路PGになるべく沿いつつも、リスクを回避することができる目標経路PTである。制御装置100は、グローバル経路PGと認識センサ21による認識結果に基づいて、準グローバル経路PSを算出することができる。
図3に示されるように、例えば、準グローバル経路PSは、一定間隔で並ぶ複数の経路候補点(経由点)Cの集合で表される。つまり、準グローバル経路PSは、一定間隔で並ぶ複数の経路候補点Cをつなぎ合わせたものである。
【0033】
ローカル経路PLは、準グローバル経路PSよりも粒度の高い目標経路PTである。制御装置100は、準グローバル経路PSに基づいて、より粒度の高いローカル経路PLを算出する。より詳細には、ローカル経路PLは、準グローバル経路PSになるべく沿いつつも、車両1の走行安定性が確保されるように算出される。例えば、ローカル経路PLは、準グローバル経路PSよりも滑らかになるように算出される。滑らかなローカル経路PLを用いることにより、車両1の急操舵や横転を防止することができる。例えば、制御装置100は、準グローバル経路PSと車両1の目標ヨーレートを考慮して、準グローバル経路PSになるべく沿いつつ車両1の走行安定性を確保することができるローカル経路PLを算出する。
【0034】
準グローバル経路PSは、比較的長期的な走行計画に基づくロングレンジの目標経路PTであると言える。一方、ローカル経路PLは、比較的短期的な走行計画に基づくショートレンジの目標経路PTであると言える。ローカル経路PLは、準グローバル経路PSよりも短いが、準グローバル経路PSよりも粒度が高い。
【0035】
このように、制御装置100は、所定のグローバル経路PGを基準として、準グローバル経路PS及びローカル経路PLを段階的に算出する。そして、制御装置100は、ローカル経路PLに追従するように車両走行制御を行う。
【0036】
尚、GNSSを利用できない環境では、初期位置(出発地)に対する車両1の位置は、例えばデッドレコニングを通して把握される。具体的には、車両1の速度、舵角、等は車両状態情報から得られる。車両1が走行する路面の勾配は、加速度センサにより検出される加速度から算出可能である。速度、舵角、勾配、等に基づいて、車両1の移動距離や移動方向を算出することができる。移動距離や移動方向を一定周期毎に繰り返し算出することにより、車両1の位置が更新される。
【0037】
3.不可視領域に対する自動運転制御
図4は、不可視領域INVに対する自動運転制御を説明するための概念図である。上述の通り、制御装置100は、認識センサ21による認識結果に基づいて障害物OBS等のリスクを認識し、リスクを回避するように目標経路PTを算出する。このとき、障害物OBS等の向こう側の領域は、認識センサ21から見えない不可視領域INV(死角)となる。不可視領域INVをオクルージョン領域と言うこともできる。不可視領域に関しては、点群情報等の周辺状況情報を取得することができない。よって、不可視領域INVのリスクポテンシャルを算出することができない。
【0038】
リスクポテンシャルが不明である不可視領域INVを障害物OBS等と同等のリスクとみなすことが考えられる。つまり、不可視領域INVには障害物OBSが存在すると仮定することが考えられる。その場合、不可視領域INVに進入するような目標経路PTは生成されなくなる。不可視領域INVを回避することができる目標経路PTが生成可能であれば、そのような目標経路PTを用いることが好ましい。
【0039】
但し、状況によっては、不可視領域INVを回避することができる目標経路PTが見つからないこともある。例えば、
図4に示されるように、車両1が進行可能な方向の全てに障害物OBSが存在する場合、不可視領域INVを回避することができる目標経路PTは見つからない。仮に不可視領域INVに進入するような目標経路PTの生成が完全に禁止されると、目標経路PTが一切生成されなくなり、車両1がスタックしてしまう。
【0040】
そこで、本実施の形態によれば、車両1がスタックすることを抑制するために、つまり、車両1のスタック確率を低減するために、次のように自動運転制御が行われる。
【0041】
目的地に到達するために不可視領域INVを通過する以外の選択肢が無い場合、制御装置100は、不可視領域INVのリスクを比較的高く設定しつつ、不可視領域INVに進入するような目標経路PTの生成を許可する(禁止しない)。
図4の下段に示されるように、制御装置100は、不可視領域INVに向かい不可視領域INVに進入するような目標経路PTを「暫定目標経路PT’」として生成する。制御装置100は、暫定目標経路PT’に追従するように車両1を制御する。但し、不可視領域INVには潜在的なリスクが存在する可能性がある。そこで、制御装置100は、車両1が不可視領域INVに進入する前に車両1を減速させる。すなわち、制御装置100は、不可視領域INVにゆっくり近づくように車両1を制御する。
【0042】
車両1が不可視領域INVに近づくと、その不可視領域INVの中の詳細が認識センサ21によって認識可能となる場合もある。混乱を避けるため、車両1がある位置に存在するときの不可視領域INVを、便宜上、「第1領域R1」と呼ぶ。第1領域R1は、車両1が進行可能な方向のいずれかに存在している。車両1が第1領域R1に接近した後、第1領域R1が不可視領域INVでなくなる場合もある。
【0043】
図5は、第1領域R1に対する自動運転制御を説明するための概念図である。第1領域R1は回避可能であるか否か、第1領域R1が走行可能な領域であるか否か、等の観点から、様々なパターンが考えられる。
図5には、それら様々なパターンの場合の車速の推移も示されている。
【0044】
時刻taにおいて、制御装置100は、不可視領域INVである第1領域R1を回避する目標経路PTを生成することができるか否かを判定する。第1領域R1を回避する目標経路PTを生成することができる場合、制御装置100は、そのような目標経路PTを生成し、自動運転制御を継続する。
【0045】
一方、不可視領域INVである第1領域R1を回避する目標経路PTを生成することができない場合、制御装置100は、第1領域R1に向かう目標経路PTを暫定目標経路PT’として生成する。そして、制御装置100は、第1領域R1に進入する前に減速しつつ暫定目標経路PT’に追従するように車両1を制御する。車両1は、減速しながら第1領域R1にゆっくり近づく。
【0046】
車両1が第1領域R1に進入する前に、制御装置100は、第1領域R1が認識センサ21から視認できる「可視領域」となるか否かを判定する。例えば、時刻tbにおいて、第1領域R1が可視領域となる。制御装置100は、認識センサ21による認識結果に基づいて、車両1が第1領域R1を走行可能か否かを判定する。言い換えれば、制御装置100は、車両1が第1領域R1に安全に進入可能か否かを判定する。車両1が第1領域R1を走行可能である場合、制御装置100は、第1領域R1に進入する目標経路PTを算出し、その目標経路PTに追従するように車両1を制御する。一方、車両1が第1領域R1を走行することができない場合、制御装置100は、車両1が第1領域R1に進入する前に車両1を停止させる。
【0047】
尚、車両1が第1領域R1に接近しても、第1領域R1の中を観測することができない場合も考えられる。つまり、車両1が第1領域R1に進入する前に、第1領域R1が認識センサ21から視認できる可視領域とならない場合も考えられる。その場合、制御装置100は、車両1が第1領域R1に進入する前に車両1を停止させる。
【0048】
図6は、第1領域R1に対する自動運転制御を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS110において、制御装置100は、不可視領域INVである第1領域R1を回避する目標経路PTを生成することができるか否かを判定する。第1領域R1を回避する目標経路PTが生成可能である場合(ステップS110;Yes)、処理は、ステップS120に進む。一方、第1領域R1を回避する目標経路PTが生成不可能である場合(ステップS110;No)、処理は、ステップS130に進む。
【0050】
ステップS120において、制御装置100は、第1領域R1を回避する目標経路PTを生成し、自動運転制御を継続する。
【0051】
ステップS130において、制御装置100は、不可視領域INVである第1領域R1に向かう目標経路PTを暫定目標経路PT’として生成する。このとき、不可視領域INV内のリスクポテンシャルは仮定される。例えば、不可視領域INV内のリスクポテンシャルは、比較的高く設定される。他の例として、不可視領域INVの手前のリスクポテンシャルが不可視領域INV内のリスクポテンシャルとして用いられてもよい。
【0052】
ステップS140において、制御装置100は、第1領域R1に進入する前に減速しつつ暫定目標経路PT’に追従するように車両1を制御する。
【0053】
ステップS150において、制御装置100は、車両1が第1領域R1に進入する前に、第1領域R1が認識センサ21から視認できる可視領域となるか否かを判定する。車両1が第1領域R1に進入する前に、第1領域R1が可視領域となった場合(ステップS150;Yes)、処理は、ステップS160に進む。一方、車両1が第1領域R1に進入する前に、第1領域R1が可視領域とならない場合(ステップS150;No)、処理は、ステップS180に進む。
【0054】
ステップS160において、制御装置100は、認識センサ21による認識結果(すなわち周辺状況情報)に基づいて、車両1が第1領域R1を走行可能か否かを判定する。車両1が第1領域R1を走行可能である場合(ステップS160;Yes)、処理は、ステップS170に進む。一方、車両1が第1領域R1を走行することができない場合(ステップS160;No)、処理は、ステップS180に進む。
【0055】
ステップS170において、制御装置100は、第1領域R1に進入する目標経路PTを算出する。そして、制御装置100は、その目標経路PTに追従するように車両1を制御する。すなわち、制御装置100は、自動運転制御を継続する。
【0056】
ステップS180において、制御装置100は、車両1が第1領域R1に進入する前に車両1を停止させる。
【0057】
<効果>
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、第1領域R1が不可視領域INVであり、且つ、目的地に到達するために第1領域R1を回避することができない場合、第1領域R1に向かう暫定目標経路PT’が生成される。車両1は、減速しつつ暫定目標経路PT’に追従するように制御される。すなわち、車両1は、ゆっくりと第1領域R1に近づくように制御される。
【0058】
よって、車両1が第1領域R1に接近した後、第1領域R1の中に高いリスクが実際に存在することが検知されたとしても、車両1を迅速に停止させることが可能となる。言い換えれば、車両1の安全を確保しつつ、第1領域R1に進入することができるか否かを探ることが可能となる。車両1が第1領域R1に接近した後、車両1が第1領域R1を走行可能であることが判明する場合もある。その場合は、車両1は第1領域R1を通過して目的地に向かうことができる。このように、本実施の形態によれば、車両1の安全を確保しつつ、車両1がスタックすることを抑制することが可能となる。
【0059】
4.変形例
通常時、ローカル経路PL(
図3参照)の探索範囲は、デフォルト範囲に設定される。第1領域R1(不可視領域INV)に向かう暫定目標経路PT’を生成する際、制御装置100は、ローカル経路PLの探索範囲をデフォルト範囲より狭くしてもよい。第1領域R1(不可視領域INV)に向かう暫定目標経路PT’が生成されるような状況は、車両1が高リスクに囲まれているような状況である(
図4参照)。車両1が高リスクに囲まれている状況において、ローカル経路PLの探索範囲を狭くすることによって、小回りが利く車両走行制御を実現することが可能となる。
【0060】
尚、通常時には、比較的遠方のリスクに対しても敏感に対応することができるように、ローカル経路PLの探索範囲は必要以上に狭く設定されない。
【符号の説明】
【0061】
1…車両, 10…車両制御システム, 20…センサ群, 21…認識センサ, 22…車両状態センサ, 30…走行装置, 100…制御装置, 110…プロセッサ, 120…記憶装置, 130…車両制御プログラム, 200…運転環境情報, INV…不可視領域, PT…目標経路, PG…グローバル経路, PS…準グローバル経路, PL…ローカル経路