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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064313
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20240507BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20240507BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240507BHJP
   G02B 1/16 20150101ALI20240507BHJP
   G02B 7/14 20210101ALI20240507BHJP
   G02B 13/00 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/36
G02B1/14
G02B1/16
G02B7/14 A
G02B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172809
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 佳史
【テーマコード(参考)】
2H052
2H087
2K009
【Fターム(参考)】
2H052AB01
2H052AB14
2H052AB30
2H052AC04
2H052AC07
2H052AC18
2H052AC33
2H052AD29
2H052AF14
2H087KA09
2H087LA01
2H087NA18
2H087PA03
2H087PA18
2H087PB04
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA13
2H087QA14
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA44
2H087RA45
2K009AA15
2K009BB02
2K009BB11
2K009CC03
2K009DD03
2K009DD04
2K009EE03
(57)【要約】
【課題】同軸落射照明時のフレアの発生を抑制可能な光学装置を提供する。
【解決手段】光学装置は、対物レンズと撮像装置との間の光路に設けられ、対物レンズを介して入射した光を撮像装置の撮像面に結像する結像レンズと、対物レンズの光軸に沿って設けられたビームスプリッタと、ビームスプリッタを介して撮像対象を照明可能に構成され、結像レンズが配置された光路とは異なる光路に配置された同軸落射照明光学系と、ダンパ面を有する光ダンパと、を備える。ビームスプリッタ、結像レンズ及び撮像装置は、対物レンズの光軸に沿って配置されている。同軸落射照明光学系の光軸は、対物レンズの光軸と直交する。ビームスプリッタ及び光ダンパは、同軸落射照明光学系の光軸に沿って配置されている。ダンパ面の法線方向は、対物レンズの光軸と直交し、同軸落射照明光学系の光軸に対して傾斜し、同軸落射照明光学系の光軸に対して直交しない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと撮像装置との間の光路に設けられ、前記対物レンズを介して入射した光を前記撮像装置の撮像面に結像する結像レンズと、
前記対物レンズの光軸に沿って設けられたビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタを介して撮像対象を照明可能に構成され、前記結像レンズが配置された光路とは異なる光路に配置された同軸落射照明光学系と、
ダンパ面を有する光ダンパと
を備え、
前記ビームスプリッタ、前記結像レンズ及び前記撮像装置は、前記対物レンズの光軸に沿って配置され、
前記同軸落射照明光学系の光軸は、前記対物レンズの光軸と直交し、
前記ビームスプリッタ及び前記光ダンパは、前記同軸落射照明光学系の光軸に沿って配置され、
前記ダンパ面の法線方向は、前記対物レンズの光軸と直交し、前記同軸落射照明光学系の光軸に対して傾斜し、前記同軸落射照明光学系の光軸に対して直交しない
光学装置。
【請求項2】
対物レンズと撮像装置との間の光路に設けられ、前記対物レンズを介して入射した光を前記撮像装置の撮像面に結像する結像レンズと、
前記対物レンズの光軸に沿って設けられたビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタを介して撮像対象を照明可能に構成され、前記結像レンズが配置された光路とは異なる光路に配置された同軸落射照明光学系と、
ダンパ面を有する光ダンパと
を備え、
前記ビームスプリッタ及び前記同軸落射照明光学系は、前記対物レンズの光軸に沿って配置され、
前記結像レンズの光軸は、前記対物レンズの光軸と直交し、
前記撮像装置、前記ビームスプリッタ及び前記光ダンパは、前記結像レンズの光軸に沿って配置され、
前記ダンパ面の法線方向は、前記対物レンズの光軸と直交し、前記結像レンズの光軸に対して傾斜し、前記結像レンズの光軸に対して直交しない
光学装置。
【請求項3】
前記結像レンズを収容する筐体を備え、
前記筐体は、前記対物レンズを着脱可能に構成されている
請求項1又は2記載の光学装置。
【請求項4】
前記ビームスプリッタは、
樹脂フィルム又は薄板ガラスからなるフィルム基材からなる
請求項1又は2記載の光学装置。
【請求項5】
前記フィルム基材の屈折率をn、厚みをt、前記撮像装置の画素ピッチをp、前記撮像装置の画素値の補間処理の単位画素数をN×Nとすると、
である
請求項4記載の光学装置。
【請求項6】
前記ビームスプリッタは、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に設けられたコーティング膜を有する
請求項4記載の光学装置。
【請求項7】
前記コーティング膜は、前記フィルム基材の両面に設けられ、
前記フィルム基材の一方の面に設けられたコーティング膜と、前記フィルム基材の他方の面に設けられたコーティング膜とは、コーティングの結果生じる応力の符号が同じである
請求項6記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡、画像測定装置、画像測定プローブ等で用いられる光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対物レンズと撮像装置との間の光路に設けられた結像レンズと、対物レンズの光軸に沿って設けられたビームスプリッタと、ビームスプリッタを介して撮像対象を照明可能に構成され、結像レンズが配置された光路とは異なる光路に配置された同軸落射照明光学系と、を備える光学装置が知られている。この様な光学装置では、同軸落射照明光学系からビームスプリッタを透過した不要光の一部が結像レンズを介して撮像装置に照射されてしまい、フレアが発生してしまう。
【0003】
そこで、特許文献1においては、ビームスプリッタを透過した不要光を植毛布に照射し、不要光を吸収させることによって、フレアの防止を試みている。しかしながら、植毛布はコンタミを生じるばかりでなく、反射率がゼロでないことから、同軸落射照明の明るさを確保しようとするとフレアが発生し、その効果は十分でない。
【0004】
また、特許文献2においては、ビームスプリッタを透過した不要光を、ビームスプリッタ(文献ではハーフミラーと記載)と略平行または直角な方向へと反射させることで、フレアの防止を試みている。しかしながら、特許文献2においては、反射された光が結像系の光軸を含む面内へと入り込むため、新たなフレア光となってしまう。例えばビームスプリッタと略平行な方向へ反射された光は結像レンズに入射し、フレアとして映り込みやすい。ビームスプリッタと直角な方向へ反射された光も、対物レンズに入射することで照明ムラを生じたり、枠やスペーサなどの部材に当たった光が反射・散乱されることでフレアとして映り込んだりする。特に光学装置全体の小型化を図ろうとすると、屈折力の大きいレンズが密に並ぶので、上記フレア光が集光作用を受け、却って目立つといった事象が起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-140032号公報
【特許文献2】実開平7-014412号公報
【特許文献3】特開2015-127776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、同軸落射照明時のフレアの発生を抑制可能な光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の実施形態に係る光学装置は、対物レンズと撮像装置との間の光路に設けられ、前記対物レンズを介して入射した光を前記撮像装置の撮像面に結像する結像レンズと、前記対物レンズの光軸に沿って設けられたビームスプリッタと、前記ビームスプリッタを介して撮像対象を照明可能に構成され、前記結像レンズが配置された光路とは異なる光路に配置された同軸落射照明光学系と、ダンパ面を有する光ダンパと、を備える。前記ビームスプリッタ、前記結像レンズ及び前記撮像装置は、前記対物レンズの光軸に沿って配置されている。前記同軸落射照明光学系の光軸は、前記対物レンズの光軸と直交する。前記ビームスプリッタ及び前記光ダンパは、前記同軸落射照明光学系の光軸に沿って配置されている。前記ダンパ面の法線方向は、前記対物レンズの光軸と直交し、前記同軸落射照明光学系の光軸に対して傾斜し、前記同軸落射照明光学系の光軸に対して直交しない。
【0008】
本発明の他の実施形態に係る光学装置は、対物レンズと撮像装置との間の光路に設けられ、前記対物レンズを介して入射した光を前記撮像装置の撮像面に結像する結像レンズと、前記対物レンズの光軸に沿って設けられたビームスプリッタと、前記ビームスプリッタを介して撮像対象を照明可能に構成され、前記結像レンズが配置された光路とは異なる光路に配置された同軸落射照明光学系と、ダンパ面を有する光ダンパと、を備える。前記ビームスプリッタ及び前記同軸落射照明光学系は、前記対物レンズの光軸に沿って配置されている。前記結像レンズの光軸は、前記対物レンズの光軸と直交する。前記撮像装置、前記ビームスプリッタ及び前記光ダンパは、前記結像レンズの光軸に沿って配置されている。前記ダンパ面の法線方向は、前記対物レンズの光軸と直交し、前記結像レンズの光軸に対して傾斜し、前記結像レンズの光軸に対して直交しない。
【0009】
本発明によれば、同軸落射照明時のフレアの発生を抑制可能な光学装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光学装置の断面図である。
図2】同光学装置の模式図である。
図3】同光学装置のビームスプリッタの側面図である。
図4】同光学装置のビームスプリッタの一部を拡大した側面図である。
図5】同光学装置の撮像装置側から見た模式図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る光学装置の模式図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る光学装置の模式図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る光学装置の模式図である。
図9】本発明の第5の実施形態に係る光学装置の模式図である。
図10】本発明の第6の実施形態に係る光学装置の模式図である。
図11】本発明の第6の実施形態に係る光ダンパの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る光学装置について説明する。
【0012】
尚、本明細書において「レンズ」と言った場合、特に断りがない場合には、1枚のレンズを意味していても良いし、複数枚のレンズの組み合わせを意味していても良い。また、「レンズ」が複数枚のレンズの組み合わせを意味する場合、これら複数枚のレンズの少なくとも一部は、接合レンズを構成していても良いし、お互いに離間していても良い。例えば、「対物レンズ」及び「結像レンズ」は、1枚のレンズを意味していても良いし、複数枚のレンズの組み合わせを意味していても良い。ただし、両凸レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、メニスカスレンズ等、曲面が規定されたものについては、1枚のレンズを意味することとする。
【0013】
また、本明細書において「レンズ群」と言った場合には、複数枚のレンズの組み合わせを意味することとする。これら複数枚のレンズの少なくとも一部は、接合レンズを構成していても良いし、お互いに離間していても良い。
【0014】
[第1の実施形態]
次に、図1図5を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。尚、以下の実施形態はあくまでも一例であり、本発明を限定する意図で示されるものではない。また、以下の図面は模式的なものであり、説明の都合上、一部の構成等が省略される場合がある。また、複数の実施形態について共通する部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る光学装置100は、対物レンズ10を着脱可能に構成されている。また、光学装置100は、対物レンズ10に近い側から、対物レンズ10の光軸A1に沿って順に配置された第1レンズ群20、ビームスプリッタ30、第2レンズ群40及び撮像装置50を備える。第1レンズ群20は、例えば接合レンズ21によって構成されている。接合レンズ21は、例えば両凸レンズからなる第1レンズ211と、メニスカス凹レンズからなる第2レンズ212とから構成されている。
【0016】
また、光学装置100は、同軸落射照明光学系EPを備える。同軸落射照明光学系EPの光軸A2は、光軸A1と直交する。光軸A1と光軸A2とは、ビームスプリッタ30の反射面において交わる。同軸落射照明光学系EPは、光軸A2に沿って、ビームスプリッタ30から遠い側から順に配置された光源60及び照明レンズ群70を備える。照明レンズ群70は、例えばコンデンサレンズ71と平凸レンズ72とから構成されている。同軸落射照明光学系EPは、ビームスプリッタ30、第1レンズ群20及び対物レンズ10を介して、撮像対象を照明可能に構成されている。同軸落射照明光学系EPの光軸A2(照明レンズ群70の光軸A2)に沿って、ビームスプリッタ30に対し、光源60及び照明レンズ群70と反対側の位置には、光ダンパ80が設けられている。
【0017】
対物レンズ10、第1レンズ群20、ビームスプリッタ30及び第2レンズ群40は、円筒状の筐体91に取り付けられている。倍率の異なる対物レンズ10を任意に交換可能とするため、対物レンズ10は、筐体91の下端に着脱可能に取り付けられている。筐体91の上端には、撮像装置50を筐体91に固定する固定部材92が取り付けられている。尚、図示はしないが、適宜ローパスフィルタや色補正フィルタ(NDフィルタ、IRカットフィルタなど)、波長板や検光子などの偏光フィルタ、撮像装置50のセンサ面の保護目的のカバーガラスなどの平行平板が光学系内に含まれていてもよい。
【0018】
光源60及び照明レンズ群70は、筐体91の一方の側面に固定部材93によって固定されている。光ダンパ80は、筐体91の他方の側面に固定部材94によって固定されている。筐体91の下端には、対物レンズ10を取り囲むように、リング照明110が装着されている。リング照明110は、対物レンズ10の下端を取り囲むように環状に配置され、下方内側に向けて照明光を照射するLED等からなる複数の光源111と、これら光源111を支持し、光源111の上方を覆うカバー112と、を備える。
【0019】
図2は、図1の光学装置100の光線を含めた模式的な構成を示す図である。以下、対物レンズ10、第1レンズ群20、ビームスプリッタ30及び第2レンズ群40については、撮像対象120側を前段、撮像装置50側を後段とし、同軸落射照明光学系EPについては、光源60側を前段、撮像対象120側を後段として、各部を説明する。
【0020】
対物レンズ10は、例えば内側に射出瞳を有する。対物レンズ10の後端から出射される、各物体高における主光線は、対物レンズ10から遠ざかるほど光軸から離れる。第1レンズ群20は、対物レンズ10の後段に配置される。第1レンズ群20は、全体として正の屈折力を有する接合レンズ21を有する。接合レンズ21は、例えば正の屈折力を有する第1レンズ211と、負の屈折力を有する第2レンズ212とを組み合わせて構成されている。
【0021】
ビームスプリッタ30は、第1レンズ群20の後段に設けられる。ビームスプリッタ30は、この実施形態では、例えば、図3に示すように、樹脂フィルム又は薄型ガラスからなるフィルム基材31からなる。フィルム基材31には、一方又は両方にコーティング膜32,33が設けられていても良い。
【0022】
第2レンズ群40(図2)は、ビームスプリッタ30の後段に設けられる。第2レンズ群40は、対物レンズ10、第1レンズ群20及びビームスプリッタ30を介して入射した光を撮像装置50の受光面に所望の大きさで結像させる結像レンズとして機能する。第2レンズ群40は、負の屈折力を有するレンズ及び正の屈折力を有するレンズを含んでいても良い。また、第2レンズ群40は、撮像装置50の受光面に形成される像を拡大又は縮小するためのチューブレンズを含んでいても良い。
【0023】
撮像装置50は、第2レンズ群40の後段に設けられる。撮像装置50は、例えば、所定の画素数を有するCMOS、CCD等の撮像素子である。撮像装置50は、例えばPYTHON1300(画素サイズ4.8μm)(オン・セミコンダクター(株)製)等を用いることが出来る。
【0024】
光源60は、この実施形態では、チップLED等の小型の光源を有する。照明レンズ群70は、例えば光源60のフーリエ変換像を生成するコンデンサレンズ71(平凸レンズ)及びこのフーリエ変換像を伝達する平凸レンズ72を有する。
【0025】
光ダンパ80は、ダンパ面81を有する。同軸落射照明光学系EPからビームスプリッタ30を透過した不要光の一部は、光ダンパ80のダンパ面81で吸収される。また、この様な不要光の、ダンパ面81で吸収しきれなかった部分は、ダンパ面81で、第1レンズ群20にも第2レンズ群40にも進入しない方向(例えば、光軸A1と直交する方向)に散乱される。第1実施形態においては、ダンパ面81に、黒色化の表面処理が行われている。光ダンパ80がアルミで構成される場合、この表面処理は、黒色アルマイト処理であっても良い。光ダンパ80がニッケル、ステンレス、真鍮等で構成される場合、この表面処理は、レイデント(登録商標)処理であってもよい。また、この表面処理は、クロムメッキ等であっても良い。
【0026】
次に、各部を更に詳細に説明する。
【0027】
[第1レンズ群20]
対物レンズ10の内部に射出瞳が設けられる場合、大きい物体高に対応する位置からの主光線、すなわち光軸から離れた位置からの軸外主光線は、対物レンズから遠ざかるほど光軸から離れる。対物レンズ10からビームスプリッタ30に直に軸外主光線が入射する場合、ビームスプリッタ30に入射する光の光束径が大きくなるため、必要径および把持機構(ビームスプリッタ30を把持する機構。上記特許文献3、図4の、偏光ビームスプリッタ28を把持する機構を参照。)が大きくなり、光学系全体の大型化の要因となっていた。ビームスプリッタ面(ビームスプリッタ30の反射面)が光軸A1に対して45°の傾きを持つ場合、必要径が大きいことは同時に光軸A1方向へも光学系が長尺化することを意味し、この意味でも光学系が大型であった。しかしながら、本実施形態では、対物レンズ10の後段に正の屈折力を有する第1レンズ群20が設けられているので、主光線が光軸に近づく方向に屈折されてビームスプリッタ30に入射する。このため、ビームスプリッタ30に入射する光の光束径が小さくなり、ビームスプリッタ30に必要な面積を、第1レンズ群20が無い場合よりも縮小することが出来る。これにより、ビームスプリッタ30を小型化することが出来る。尚、ビームスプリッタ面が光軸A1に対して45°の傾きを持つ場合、ビームスプリッタ30の径が小さいことは、光軸A1方向にも光学系が短縮されることと同義であり、この意味でも光学系全体の小型化に効果が大きい。
【0028】
同様の理由で、ビームスプリッタ30を透過した光が入射する第2レンズ群40の必要径も大きくする必要がなく、小型・軽量化を行うことが出来る。
【0029】
また、収差補正の観点からも、第2レンズ群40の構成レンズ枚数が少なくてよく、小型・軽量化に寄与する。撮像装置50の受光面に像を形成する際に、第2レンズ群40によって光を大きく屈折させることは大きな収差の発生を伴う。一般に、像高の変化と、主光線角度変化がそれぞれ大きいほど大きく屈折させる必要があり、伴って収差も大きくなる。これは、小型の撮像装置50を用いるほど、顕著である。
【0030】
対物レンズ10からビームスプリッタ30に第1レンズ群20を介さず軸外主光線が入射する場合、光束は主光線が対物レンズ10から遠ざかるほど光軸から離れ、大きな像(無限遠に像を形成する場合も含む)を形成するものとなる。従って、撮像装置50が小型である場合、第2レンズ群40は径が大きくなるばかりでなく、受光面に像を形成する際に像高を大きく変化させ、かつ、主光線の角度も大きく変化させねばならない。これにより収差が大きく発生することになるので、収差の補正のためにより多くのレンズ枚数を必要とし、第2レンズ群が更に大型化する。特に、軸外収差である、歪曲、コマ収差、非点収差、倍率色収差を抑制することが難しい。従って、収差補正に多くのレンズ枚数を必要とし、撮像装置50を含めた小型・軽量化が困難である。
【0031】
一方、本実施形態においては第1レンズ群20で主光線方向を光軸に近づける方向に屈折させ、また像高の小さい像を形成するために、小型の撮像装置50を用いる場合でも像高の変化と、主光線角度変化が小さくなる。すなわち第2レンズ群40において、光線を大きく屈折させる必要がないため、収差発生が小さいことで収差補正に要するレンズ枚数も少なく出来る。ひいては、第2レンズ群40を小さくでき、撮像装置50を含めた光学系の小型・軽量化を行うことが出来る。
【0032】
更に、第1レンズ群20により光束が集束されているため、同軸落射照明光学系EPについても、小型化を図ることが出来る。通常、同軸落射照明は被写体面に光源像または光源のフーリエ変換像をリレーすることで一様な照明を得るが、対物レンズ10とビームスプリッタ30と同軸落射照明光学系EPとが第1レンズ群を介さずに配置されている場合、リレーすべき光源像は像高の大きなものを必要とする。従って、大きな光源を用いるか、同軸落射照明光学系EPが光源像を大きく拡大するものとする必要があり、いずれの場合も同軸落射照明光学系EPが大径化する。
【0033】
一方、本実施形態によれば、第1レンズ群20によりリレーすべき光源像が縮小されているので、同軸落射照明光学系EPも小さくすることが出来る。
【0034】
また、対物レンズ10の内部に射出瞳が設けられる場合、対物レンズ10からビームスプリッタ30に向けて出射される主光束は拡がる。従って、対物レンズ10から出射された光線は、物体高に応じて、様々な入射角でビームスプリッタ30に入射することが考えられる。ここで、ビームスプリッタ30の光学特性(例えば、透過率、反射率又はその他の光学特性)は、光線の入射角に応じて異なる。従って、ビームスプリッタ30の光学特性が物体高によって変わってしまう場合がある。
【0035】
ここで、図2に太線矢印で示すように、本実施形態において、各物体高の主光線について着目すると、対物レンズ10の後段で一端拡がったのち、第1レンズ群20によって光軸に平行な状態へと近づけられるので、ビームスプリッタ30に対する各物体高の主光線の入射角をほぼ一定とすることが出来る。これにより、ビームスプリッタ30の光学特性が物体高によって変わることを抑制することが出来る。
【0036】
また、対物レンズ10を筐体91から取り外すと、筐体91の内部に埃等が入り込み易い。特に薄型のビームスプリッタ30を使用した場合は、これを破損させずに埃等を除去することは困難である。しかしながら、本実施形態によれば、ビームスプリッタ30の前段に第1レンズ群20が配置されているので、対物レンズ10を筐体91から取り外した場合でも、第1レンズ群20によって、埃等が筐体91の内部に入り込むのを防止することが出来る。更に、埃の除去も容易であるという効果がある。
【0037】
第1レンズ群20は、対物レンズ10からの出射光に加え、同軸落射照明光学系EPからの出射光を透過させる。以下、同軸落射照明光学系EPから第1レンズ群20へ照明光が照射されることによる第1レンズ群20の色収差及び反射の影響について考察する。
【0038】
第1レンズ群20は、ビームスプリッタ30を配置するスペースを確保するため、比較的大きなバックフォーカスを必要とする。このため、第1レンズ群20の焦点距離は、ある程度長くする必要がある。この場合、焦点距離に比例した大きさの色収差が発生する。これによって、例えば同軸落射照明が色の滲んだ照明となったり、平面を照明した場合でも位置毎に色が異なる、いわゆる色ムラが発生したりするなどの不具合が生じ易い。従って、第1レンズ群20はこれを抑えられるよう、低分散硝材の凸レンズと、高分散硝材のメニスカス凹レンズからなる接合レンズで構成されていることが好ましい。
【0039】
色収差の一般則(例えば、https://en.wikipedia.org/wiki/Achromatic_lens)から、両凸レンズはクラウンガラス、メニスカス凹レンズはフリントガラスから選ばれると良い。アッベ数の条件としては、両凸レンズのアッベ数ν(フラウンホーファーd線におけるものとして、以下逐一断わらない)はν≧50、メニスカス凹レンズのアッベ数νはν≦50となるように、選ばれることが望ましい。
【0040】
また、本実施形態では、対物レンズ10とビームスプリッタ30の間に第1レンズ群20を配置しているので、同軸落射照明光学系EPからの照明光が第1レンズ群20で反射することにより発生するフレアを抑制することが望ましい。このためには、接合レンズ21の表面に反射防止コーティングを施し、第1レンズ211と第2レンズ212の接合面のフレネル反射を低減させることが有効である。
【0041】
一般に、屈折率の異なるレンズの境界で発生するフレネル反射の反射率Rは、nを第1レンズ211の屈折率、nを第2レンズ212の屈折率とすると、下記数1で示される。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、通常の反射防止コーティングは、反射率Rを0.25%程度まで低減可能である。反射率Rをこの程度の大きさとするためには、n及びnが、下記数2で示される条件を満たす様に構成されていると良い。
【0044】
【数2】
数2から、「n-nが0.1×(nとnの平均)以下である」という条件が導かれる。
【0045】
本実施形態では、例えば、第1レンズ211が、屈折率1.516、アッベ数64.1のガラスからなる両凸レンズ、第2レンズ212が、屈折率1.593、アッベ数35.3のガラスからなるメニスカス凹レンズとすることが出来る。この場合、両凸レンズのアッベ数νはν≧50、平凹レンズのアッベ数νはν≦50なので、色収差に関する条件を満たす。また、第1レンズ211と第2レンズ212の屈折率の差(n-n)が、0.077、平均値の0.1倍が0.155となるので、上述した反射率の条件を満たす。
【0046】
[ビームスプリッタ30]
本実施形態では、図3に示す様に、ビームスプリッタ30としてフィルム基材31を使用している。ビームスプリッタ30にフィルム基材31を使用することで、プレート型およびキューブ型のものを使用するよりも軽量化及び小型化を図ることが可能である。しかしながら、フィルム基材31を使用した場合、表裏面の反射によるゴースト像が発生する可能性がある。すなわち、図4に示すように、ビームスプリッタ30に入射する光線は、A点で入射して、フィルム基材31で屈折し、B点から出射すると共に、B点で反射した一部の光がCで反射してD点から出射される。B点から出射される光が実像、D点から出射される光線がゴースト像となる。B点から出射される実像の光線と、D点から出射されるゴースト像の光線との距離QDは、フィルム基材31の厚みをt、屈折率をn、フィルム基材31への入射角を45°、屈折角をθとすると、下記の式で表される。
【0047】
【数3】
【0048】
ここで、撮像装置50の各画素から得られた信号は、ノイズの影響を除去したり、ジャギーの発生を防ぐ目的で、複数画素を単位として補間処理される。例えば、バイキュービック補間を考えると、白黒画像の場合には、周囲3×3画素から補間処理され、カラーベイヤーの場合には、周囲4×4画素から補間処理される。例えば、画素ピッチp=4.8μmのカラーCMOSセンサの場合、補間処理の範囲は、(4×4.8)×(4×4.8)=19.2μm×19.2μmとなる。従って、実像とゴースト像の距離QDが、この補間処理の範囲内に収まっていれば、実像とゴースト像とは平均化されて、実質的に二重画像の発生はなくなる。そこで、撮像装置50の画素ピッチをp、画素値の補間処理の単位画素数をN×Nとすると、フィルム基材31の厚みt及び屈折率nは、下記数4の条件を満たす様に設定することが望ましい。
【0049】
【数4】
【0050】
本実施形態では、例えば、屈折率n=1.51、厚みt=20μmのガラスリボン(日本電気硝子(株)製)を使用すると、0.74951×20μm=14.99μmとなるので、数4の条件を満たし、ゴースト像の発生を防止することが出来る。
【0051】
ビームスプリッタ30のフィルム基材31としては、アクリル、ポリスチレン、セロファン、ニトロセルロース、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂フィルム、又は10μm~30μmのガラスリボン(日本電気硝子(株)製)からなる薄板ガラス等を用いることが出来る。
【0052】
ここで、ビームスプリッタ30を構成するフィルム基材31の一面又は両面にコーティング処理を施すことにより、フィルム基材31の光学特性等を変化させることが考えられる。しかしながら、上述の通り、対物レンズ10の内部に射出瞳が設けられる場合、物体高によりコーティング処理面への入射角が異なることで、ビームスプリッタ30の光学特性が物体高によって変わってしまう。この様な場合、コーティング処理によって視野全体に均一な光学特性等を得ることが困難になってしまう。
【0053】
しかしながら、本実施形態では、第1レンズ群20によって主光線が光軸に近づく方向へ屈折を受けることで、ビームスプリッタ30に対する各物体高の主光線の入射角をほぼ一定とすることが出来る。これにより、ビームスプリッタ30の光学特性が物体高によって変わることを抑制することが出来る。この様な構成では、例えば図3に示すように、フィルム基材31の一面又は両面にコーティング処理を施す場合には特に、フィルム基材31の光学特性及び環境耐性を好適に制御可能である。
【0054】
例えば、フィルム基材31の同軸落射照明光学系EP側の面に形成されるコーティング膜32は、ビームスプリッタコート膜としても良い。ビームスプリッタコート膜は、例えばフィルム基材31の屈折率と比較して高屈折率材料の1/4波長厚みを持った単層膜であっても良い。高屈折材料としては、例えば、NbO、Ta、TiO、ZrO、Al、ZnS等の誘電体材料を使用することが出来る。また、フィルム基材31の同軸落射照明光学系EPとは反対側の面に形成されるコーティング膜33は、例えば増透膜としても良い。増透膜は、例えばフィルム基材31の屈折率と比較して低屈折材料の1/4波長厚みを持った単層膜であっても良い。低屈折率材料としては、例えば、MgF、SiO等の誘電体材料を使用することが出来る。
【0055】
ここで、フィルム基材31に真空蒸着等のコーティング処理によって、コーティング膜32,33を形成した場合、熱膨張率の差に伴う応力等の影響により、フィルム基材31に反り、しわ等が発生してしまう可能性がある。反りやしわがあると、完成時の光学特性を悪化させるばかりでなく、組立性が著しく悪化する。フィルム基材31が薄くなるほど剛性がなくなるので、その影響は特に顕著である。従ってコーティング膜32,33の材料は、この様な影響を抑制可能となる様に選択することが望ましい。表1は、両面とも単層膜でコーティング処理を行う場合に、コーティング処理に適した材料と応力との関係の例を示している。
【0056】
【表1】
【0057】
例えば、フィルム基材31の一方の面に、ビームスプリッタコート膜として、引張応力が生じるTiO、Al等の高屈折率膜をコーティングした場合には、フィルム基材31の他方の面にも、引張応力が生じる、MgF等の低屈折率膜をコーティングする。また、例えば、フィルム基材31の一方の面に、ビームスプリッタコート膜として、圧縮応力が生じるTa、ZrO、ZnS等の高屈折率膜をコーティングした場合には、フィルム基材31の他方の面にも、圧縮応力が生じる、SiO等の低屈折率膜をコーティングする。
【0058】
尚、これらは一例であり、コーティング時の条件によって発生する応力の符号が変わる場合は、応力の符号に応じて他方の面にコーティングする最適な物質も変わりうる。例えば、高屈折率材料のNbはイオンアシスト法を用いる場合は引張応力、イオンアシスト法を用いない場合は圧縮応力を生じることが知られている。前者をビームスプリッタコートに用いる場合には、他方の面に増透膜としてMgFの単層膜を、後者をビームスプリッタコートに用いる場合には、他方の面に増透膜としてSiOの単層膜を、コーティングするようにしても良い。
【0059】
これにより、両面のコーティング膜32,33の応力同士が相殺されて、フィルム基材31の反り、及びしわを防止することが出来る。また、樹脂のフィルム基材31の表面が露出していると、静電気を帯びて埃が付きやすく、湿気吸収により変形・変質しやすいという問題がある。コーティングによって、そのような問題を防止する効果も得られる。尚、コーティング膜は、単層で形成する他に、多層膜で形成するようにしても良い。この場合、更に光学性能及び環境耐性を高めることが出来る。また、コーティング膜32,33は、ハードコート膜、金属膜等であっても良い。上記、多層膜、ハードコート膜、金属膜などの場合も、発生する応力の符号に応じて、両面で同符号の応力が発生するように、コーティングの種類および方法が選ばれていれば、更に良い。多層膜においては、積層する材質をそれぞれ逆符号の応力を発生するようなものとして、片面ごとに応力低減を図るのも良い。例えば、引張応力を生じるAlを1層目に蒸着し、圧縮応力を生じるTaを2層目、引張応力を生じるMgFを3層目に蒸着するなどの方法でも、応力低減を図り、反りやしわの発生を防ぐことが出来る。
【0060】
[同軸落射照明光学系EP]
本実施形態では、同軸落射照明光学系EPとして、チップLEDからなる光源60(図2)と、コンデンサレンズ71及び平凸レンズ72を含む照明レンズ群70と、を使用している。コンデンサレンズ71は、光源60からの光を集光し、そのフーリエ変換像を形成する。フーリエ変換像は、後段の平凸レンズ72を通して伝達され、ビームスプリッタ30にて反射したのち、第1レンズ群20と対物レンズ10を経て、被写体面にリレーされる。一般にチップLEDは位置によるムラが大きいが、そのフーリエ変換像にはムラが小さいため、上記のように構成することで、被写体面でムラを低減した照明光を生成することが出来る。
【0061】
尚、照明レンズ群70には、拡散板、マイクロレンズアレイ(フライアイレンズ)等が含まれていても良いし、ムラの低減のためにコンデンサレンズ71と平凸レンズ72との面間を変更しフーリエ変換像の被写体面へのリレー関係を崩す(デフォーカス)のも良い。
【0062】
[光ダンパ80]
図5は、光ダンパ80を撮像装置50側から光軸A1方向に見た模式図である。光ダンパ80は、図5に示すように、ダンパ面81を有する。ダンパ面81の法線方向NRは、対物レンズ10の光軸A1と直交している。また、ダンパ面81の法線方向NRは、同軸落射照明光学系EPの光軸A2に対して傾斜し、光軸A2と直交していない。ダンパ面81の表面は、例えば反射率を低下させる処理が施されていると良い。このような処理としては、例えば、黒色塗料を塗布したり、ブラスト処理によるマット化、又は酸・アルカリ等による化学的な表面改質、レーザによる粗面化処理、植毛布等の光を吸収しやすい材料を取り付ける等の処理が可能である。
【0063】
尚、上述したダンパ面81の法線方向NRは、適宜調整可能である。
【0064】
[効果]
本実施形態に係る光学装置100は、光ダンパ80を備える。また、ダンパ面81の法線方向NRは、対物レンズ10の光軸A1と直交している。また、ダンパ面81の法線方向NRは、同軸落射照明光学系EPの光軸A2に対して傾斜し、光軸A2と直交していない。この様な構成によれば、上述の通り、同軸落射照明光学系EPからビームスプリッタ30を透過した不要光の一部を、光ダンパ80のダンパ面81で吸収することが可能である。また、上述の通り、この様な不要光の、ダンパ面81で吸収しきれなかった部分は、ダンパ面81で、第1レンズ群20にも第2レンズ群40にも進入しない方向(例えば、光軸A1と直交する方向)に散乱させることが可能である。これにより、同軸落射照明光学系EPからビームスプリッタ30を透過した不要光が、ダンパ面81を介して第1レンズ群20又は第2レンズ群40に進入するのを防止することが出来る。この結果、対物レンズ10側での照明ムラやフレアの発生、及び撮像装置50側でのフレアの発生を防止することが出来る。
【0065】
[第2の実施形態]
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
第2の実施形態に係る光学装置100Aは、基本的には、第1の実施形態に係る光学装置100と同様に構成されている。ただし、光学装置100Aは、同軸落射照明光学系EPの光源60Aとして、例えばCOB(Chip-on-Board)LED等の面発光光源を使用している。また、光学装置100Aでは、同軸落射照明光学系EPが、照明レンズ群70を備えていない。この様な構成によれば、照明レンズ群70を省略して、更なる小型化を図ることが出来る。尚、光源60Aとして、有機EL等の他の面発光素子を使用するようにしても良い。
【0067】
尚、図6には光ダンパ80を図示していないが、全ての実施形態を通じて、光学装置は、光ダンパ80又はこれに対応する構成を備える。
【0068】
[第3の実施形態]
次に、図7を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。以下の説明において、第1及び第2の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0069】
第3の実施形態に係る光学装置100Bは、基本的には、第1の実施形態に係る光学装置100と同様に構成されている。ただし、光学装置100Bでは、ビームスプリッタ30の反射側に第2レンズ群40及び撮像装置50を配置し、ビームスプリッタ30の透過側に同軸落射照明光学系EPを配置している。即ち、光学装置100Bでは、対物レンズ10に近い側から、対物レンズ10の光軸A1に沿って、第1レンズ群20、ビームスプリッタ30、照明レンズ群70及び光源60が設けられている。また、光学装置100Bでは、第2レンズ群40の光軸A3が、光軸A1と直交する。光軸A1と光軸A3とは、ビームスプリッタ30の反射面において交わる。また、光軸A3に沿って、ビームスプリッタ30から遠い側から順に、撮像装置50及び第2レンズ群40が設けられている。第2レンズ群40の光軸A3に沿って、ビームスプリッタ30に対し、撮像装置50及び第2レンズ群40と反対側の位置には、光ダンパ80が設けられている。
【0070】
この様な構成において、光ダンパ80は、ビームスプリッタ30で反射した光源60からの不要光を散乱又は吸収する。
【0071】
一般に、ビームスプリッタ30は、製造上、透過特性を制御し易いので、同軸落射照明光学系EPの光源光量が少ない場合等には、本実施形態は有用である。
【0072】
尚、第3の実施形態に係る光学装置100Bは、第2の実施形態に係る光学装置100Aと同様に、同軸落射照明光学系EPの光源60として、COBLED等の面発光光源を備えていても良い。
【0073】
[第4の実施形態]
次に、図8を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。以下の説明において、第1乃至第3の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0074】
第4の実施形態に係る光学装置100Cは、基本的には、第2の実施形態に係る光学装置100Aと同様に構成されている。ただし、光学装置100Cは、フィルム基材31からなるビームスプリッタ30のかわりに、ビームスプリッタ30Aを備える。ビームスプリッタ30Aは、キューブ型のガラスで構成されている。キューブ型ガラスの接合面には、コーティングによって半透膜を形成している。ビームスプリッタ30Aを構成するキューブ型のガラスの重量は、一辺の長さの三乗に比例する。従って、キューブ型のガラスは、フィルム基材よりも重くなる。ただし、第4実施形態に係る光学装置100Cは、第1レンズ群20を備えるため、ビームスプリッタ30Aは、比較的小型に構成することが出来る。従って、ビームスプリッタ30Aは、比較的軽量に構成することが出来る。また、本実施形態によれば、フィルム基材を用いた場合のような、ゴースト像の発生が抑えられる。
【0075】
尚、この実施形態では、ビームスプリッタ30Aを構成するガラスの分散によっても、色収差が発生する。そのため、実施例1と比べて第1レンズ群20が補正すべき色収差が大きくなり、第1レンズ群20を構成するガラスのアッベ数の差は大きくする必要がある。また、第1レンズ群20の後段がガラスに置き換わることは、空気換算したバックフォーカスが短くなるのと同義なので、対応して凸レンズを先行させ、凸レンズのパワーを強めることで、バックフォーカスを短くしている。
【0076】
ビームスプリッタ30Aは屈折率1.516、アッベ数64.1のガラスで構成され、第1レンズ群20Aが、屈折率1.516、アッベ数64.1のガラスから成る両凸レンズ(第1レンズ221)と、屈折率1.673、アッベ数32.1のガラスから成るメニスカス凹レンズ(第2レンズ222)による接合レンズ22で構成されている。この場合にも、前述した色収差の低減条件、及び屈折率差の条件を満足する。また、フレネル反射の反射率は、0.24%と、反射防止マルチコートと同様のレベルで低減される。
【0077】
尚、第1の実施形態に係る光学装置100及び第3の実施形態に係る光学装置100Bも、第4の実施形態に係る光学装置100Cと同様に、フィルム基材31からなるビームスプリッタ30のかわりに、キューブ型のガラスからなるビームスプリッタ30Aを備えていても良い。但しその場合、ビームスプリッタ30Aを構成するガラスの分散によっても、色収差が発生する。第1レンズ群20で補正する色収差は大きくなり、第1レンズ群20を構成するガラスのアッベ数の差は大きくする必要がある。
【0078】
[第5の実施形態]
次に、図9を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。以下の説明において、第1乃至第4の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0079】
第5の実施形態に係る光学装置100Dは、基本的には、第4の実施形態に係る光学装置100Cと同様に構成されている。この場合にも、第4の実施形態と同様、キューブ型のビームスプリッタ30Aを使用している。第1レンズ群のバックフォーカスが更に大きくなるよう、凹レンズ先行としている。ただし、第1レンズ群の焦点距離が長くなることで先述の通り色収差が発生しやすくなる上、ビームスプリッタ30Aを構成するガラスの分散によっても、色収差が発生する。そのため、補正する色収差は大きくなり、第1レンズ群20を構成するガラスの屈折率差、アッベ数の差は大きくする必要がある。
【0080】
光学装置100Dでは、第1レンズ群20Bが、屈折率1.883、アッベ数40.8のガラスから成るメニスカス凹レンズ(第1レンズ231)と、屈折率1.487、アッベ数70.2のガラスから成る平凸レンズ(第2レンズ232)と、を含む接合レンズ23で構成されている。
【0081】
第1レンズ群20Bと、第2レンズ群40との間の間隔、すなわちビームスプリッタ30Aを配置するスペースは比較的大きく確保したい場合に、この構成が有用である。この実施形態では、ビームスプリッタを配置するスペースを確保しつつ、色収差を、比較的好適に低減することが可能である。
【0082】
尚、第1乃至第3の実施形態においても、第5の実施形態に係る光学装置100Dと同様に、第1レンズ群20が、メニスカス凹レンズと、平凸レンズと、を含む接合レンズで構成されていても良い。
【0083】
[第6の実施形態]
次に、図10及び図11を参照して、本発明の第6の実施形態について説明する。以下の説明において、第1乃至第5の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0084】
上述の通り、第1乃至第5の実施形態では、ビームスプリッタ30,30Aが、第1レンズ群20と第2レンズ群40との間の光路に設けられている。しかしながら、第1、第2、第4及び第5の実施形態において、ビームスプリッタは、対物レンズ10と撮像対象との間に設けられていても良い。以下、第6の実施形態として、この様な例について説明する。
【0085】
図10に示す様に、第6の実施形態に係る光学装置100Eは、対物レンズ10と撮像対象120との間に設けられた筐体82を備える。筐体82は、ビームスプリッタ30Bと、同軸落射照明光学系EPと、を収容している。ビームスプリッタ30Bは、ビームスプリッタ30又はビームスプリッタ30Aと同様に構成されていても良い。また、筐体82は、光ダンパとしても機能する。また、筐体82は、光学装置100Eから取り外し可能に構成されている。
【0086】
図10には、対物レンズ10の光軸A1と、同軸落射照明光学系EPの光軸A2と、光軸A1,A2と直交する方向D1と、を例示している。筐体82は、図11に示す様に、光軸A2と交差する壁部83,84と、方向D1と交差する壁部85,86と、を備える。壁部84は、光軸A1方向から見て、壁部85,86と直交する。壁部85,86は、光軸A1方向から見て、お互いに平行である。壁部83は、光軸A1方向から見て、壁部85,86に対して直交しない。また、壁部83は、光軸A1方向から見て、壁部84と平行でない。
【0087】
図10の例では、同軸落射照明光学系EPが、ビームスプリッタ30Bに対して、壁部84側に設けられている。また、壁部83の、ビームスプリッタ30B側の面は、光ダンパのダンパ面81として機能する。
【0088】
尚、第6の実施形態に係る光学装置100Eにおいては、対物レンズ10と第2レンズ群40(図10においては不図示)との間の光路に、ビームスプリッタ30,30Aが設けられていなくとも良い。
【0089】
第6の実施形態に係る光学装置100Eは、同軸落射照明光学系EPが不要な場合に筐体82を取り外して、コンパクトな観察系として使用することが可能である。また、ビームスプリッタ30,30Aが設けられない場合、筐体82を取り外すことで、ビームスプリッタによって観察に使用される光量が減る影響を受けなくなるので、明るい像を得ることも出来る。
【0090】
尚、図示の例では、筐体82の一部が光ダンパのダンパ面として機能する。しかしながら、筐体82と光ダンパとは、別体であっても良い。また、筐体82は、別体として構成された光ダンパを収容していても良い。
【0091】
[第7の実施形態]
第1乃至第6の実施形態では、上述の通り、光ダンパ80のダンパ面81に、黒色化の表面処理が行われている。しかしながら、上述の通り、ダンパ面81には、レーザによる粗面化処理が行われていても良い。これにより、処理された表面が、可視光より細かいサイズの微細構造を構成していても良い。レーザによる処理は、黒化処理によって反射・散乱の度合いを小さくできるばかりでなく、経時変化が非常に小さいという特徴を持つ。
【0092】
[第8の実施形態]
第1乃至第6の実施形態では、上述の通り、光ダンパ80のダンパ面81に、黒色化の表面処理が行われている。しかしながら、上述の通り、ダンパ面81には、黒色の塗料が塗布されていても良い。この様な黒色の塗料は、例えば、キャノンGT-7IIFine等の塗料であっても良いし、和ズミ等であっても良い。この様な方法は、安価に実現可能である。
【0093】
[第9の実施形態]
第1乃至第6の実施形態では、上述の通り、光ダンパ80のダンパ面81に、黒色化の表面処理が行われている。しかしながら、上述の通り、ダンパ面81には、ブラスト処理による粗面化が行われていても良い。また、粗面化後にメッキを行い、黒色化しても良い。この様な方法は、安価に実現可能である。また、粗面化によってダンパ面81における反射率を低減可能である。
【0094】
[第10の実施形態]
第1乃至第6の実施形態では、上述の通り、光ダンパ80のダンパ面81に、黒色化の表面処理が行われている。しかしながら、上述の通り、ダンパ面81には、化学的処理による粗面化が行われていても良い。光ダンパ80がアルミで構成される場合、塩酸に酸化還元電位が貴な金属イオンを添加し、光ダンパ80をその溶液中に浸漬するのでもよい。また、粗面化後にメッキを行い、黒色化しても良い。化学的処理によれば、ダンパ面81を、ムラなく粗面化させることが可能である。
【0095】
[第11の実施形態]
第1乃至第6の実施形態では、上述の通り、光ダンパ80のダンパ面81に、黒色化の表面処理が行われている。しかしながら、ダンパ面81には、遮光紙・遮光布を貼り付けても良い。この様な方法は、特に安価に実現可能である。
【0096】
[その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0097】
例えば、第1乃至第11の実施形態では、第1レンズ群20を省略しても良い。また、第1乃至第11の実施形態に係る光学装置100,100A,100B,100C,100D,100Eは、対物レンズ10を含んでいない。即ち、対物レンズ10は、光学装置100,100A,100B,100C,100D,100Eの構成要素ではない。しかしながら、第1乃至第11の実施形態に係る光学装置100,100A,100B,100C,100D,100Eは、対物レンズ10を含んでいても良い。
【符号の説明】
【0098】
EP…同軸落射照明光学系、10…対物レンズ、20…第1レンズ群、30,30A…ビームスプリッタ、40…第2レンズ群、50…撮像装置。60,60A…光源、70…照明レンズ群、80…光ダンパ、81…ダンパ面、100,100A,100B,100C,100D,100E…光学装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11