(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006444
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ヒートスプレッタ構造付き部材とその作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240110BHJP
C23C 16/27 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
C23C16/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107311
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
【テーマコード(参考)】
4K030
5F136
【Fターム(参考)】
4K030BA28
4K030CA04
4K030FA10
4K030JA01
5F136BA30
5F136EA23
5F136EA70
5F136FA24
5F136FA70
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より効率のよい放熱構造及び集積回路にダメージを与えることなく、簡易に形成できる放熱構造の作製方法を提供する。
【解決手段】集積回路部10が形成された基板部材31と、集積回路部10上に形成されたヒートスプレッタ構造部9と、を有するヒートスプレッタ構造付き部材34であって、集積回路部10が凹凸形状を形成しており、ヒートスプレッタ構造部9が、ダイヤモンド層6に集積回路部10の凹凸形状に嵌合する凸凹形状が形成されたものか又はダイヤモンド層6が形成されたシリコン基板8に集積回路部10の凹凸形状に嵌合する凸凹形状が形成されたものであり、集積回路部10の凹凸形状に、ヒートスプレッタ構造部9の凸凹形状を嵌合させて、ヒートスプレッタ構造部9が基板部材31に貼り合わせられたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路部が形成された基板部材と、前記集積回路部上に形成されたヒートスプレッタ構造部と、を有するヒートスプレッタ構造付き部材であって、
前記集積回路部が凹凸形状を形成しており、
前記ヒートスプレッタ構造部が、ダイヤモンド層に前記集積回路部の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状が形成されたもの、又は、ダイヤモンド層が形成されたシリコン基板であって、前記シリコン基板に前記集積回路部の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状が形成されたものであり、
前記集積回路部の凹凸形状に、前記ヒートスプレッタ構造部の凸凹形状を嵌合させて、前記ヒートスプレッタ構造部が前記基板部材に貼り合わせられたものであることを特徴とするヒートスプレッタ構造付き部材。
【請求項2】
前記ヒートスプレッタ構造部がウエーハであり、前記基板部材が前記集積回路部を有するウエーハであり、前記ウエーハ同士で貼り合わせられたものであることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッタ構造付き部材。
【請求項3】
前記ヒートスプレッタ構造部がチップであり、前記基板部材が前記集積回路部を有するウエーハであり、前記チップと前記ウエーハが貼り合わせられたものであることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッタ構造付き部材。
【請求項4】
前記ヒートスプレッタ構造部がチップであり、前記基板部材がチップであり、前記チップ同士で貼り合わせられたものであることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッタ構造付き部材。
【請求項5】
前記ダイヤモンド層がCVDダイヤモンド層であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のヒートスプレッタ構造付き部材。
【請求項6】
ヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法であって、
集積回路部が形成され、凹凸形状を有する基板部材を準備する工程と、
ダイヤモンド層が形成されたシリコン基板を準備する工程と、
前記ダイヤモンド層に前記集積回路部の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状を形成する、又は、前記シリコン基板に前記集積回路部の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状を形成する工程と、
前記集積回路部の前記凹凸形状に、前記ダイヤモンド層の前記凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせた後、表面のシリコン基板を除去して、前記基板部材にダイヤモンド層のみからなるヒートスプレッタ構造部を形成する工程、又は、前記集積回路部の前記凹凸形状に、前記シリコン基板の前記凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせて、ダイヤモンド層とシリコン基板からなるヒートスプレッタ構造部を形成する工程と、を有することを特徴とするヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法。
【請求項7】
前記凸凹形状形成工程で、前記集積回路部の凹凸形状に合わせてシリコン基板の少なくとも一部を除去して、凸凹形状を形成することを特徴とする請求項6に記載のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法。
【請求項8】
更に、前記ダイヤモンド層が形成されたシリコン基板を小片に切り出して、ダイヤモンドチップを形成する工程を有し、
前記ヒートスプレッタ構造部を形成する工程で、前記ダイヤモンド層又は前記シリコン基板の前記凸凹形状を前記集積回路部の凹凸形状に嵌合させるように、前記ダイヤモンドチップを並べて、前記ヒートスプレッタ構造部を前記基板部材に貼り合わせることを特徴とする請求項6又は7に記載のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法。
【請求項9】
更に、ヒートスプレッタ構造部を形成する工程の後、他のダイヤモンド層を成長させたシリコン基板を、前記シリコン基板を表側にして、前記基板部材上に並べた全ての前記ダイヤモンドチップを覆うように貼り付ける工程と、
前記シリコン基板を除去する工程と、を有する請求項8に記載のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法。
【請求項10】
更に、前記ダイヤモンド層が形成されたシリコン基板を小片に切り出して、ダイヤモンドチップを形成する工程と、
集積回路部が形成された基板部材を小片に切り出して、集積回路付きチップを形成する工程を有し、
前記ヒートスプレッタ構造部を形成する工程で、前記集積回路付きチップを並べてから、前記凸凹形状を前記集積回路部の凹凸形状に嵌合させるように、前記ダイヤモンドチップを貼り合わせて、前記ヒートスプレッタ構造部を前記基板部材に形成することを特徴とする請求項6又は7に記載のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法。
【請求項11】
更に、前記ヒートスプレッタ構造部を形成する工程の後、他のダイヤモンド層を成長させたシリコン基板を、前記シリコン基板を表側にして、前記基板部材上に並べた全ての前記ダイヤモンドチップを覆うように貼り付ける工程と、
前記シリコン基板を除去する工程と、を有する請求項10に記載のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートスプレッタ構造付き部材及びその作製方法に関する。半導体基板および半導体装置に関し、特に高性能化が進む半導体素子の放熱材料として高い熱伝導率を有するダイヤモンドを用いる際に、より効率のよい構造・手段を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
本格的なIoT時代を迎え、クラウドの積極的な活用によってデータセンターの容量(処理能力、データ保管能力)は拡張を続けており、また高性能化が続いている。高性能化に伴い、素子からの発熱の問題は以前にも増して重要となってきていると考えられる。実際に非特許文献1に示されているように、1個の素子で600Wくらいの消費電力となり、これに伴う熱コントロールが重要となっている。
【0003】
非特許文献1では、Compute TileとHBM(High Band pass Memory)の上に中間材(Thermal Interface Material)を通じて、ヒートスプレッタ(Integrated Heat Spreader)に接続されている。
【0004】
また一方で、5Gを迎え、移動体通信基地局や衛星通信システムなどの高周波増幅機として小型・軽量化が実現しやすい固体電力増幅器が幅広く用いられるようになってきている。これらにおいても先ほどと同様に増幅動作時に発生する自己発熱によって素子内での温度が上昇し、素子特性や信頼性が低下することが問題となっている。
【0005】
具体的な解決策として、一般的には銅のような熱伝導率の高い金属を素子(発熱体)に接続し(ヒートスプレッタ)、この金属にフィンを作るなどして空冷やあるいは冷却材(水冷など)で冷却し、温度上昇をコントロールする方法が一般的である。非特許文献2から、熱伝導率(単位W/mK)に着目すると、銅は386-402に対してダイヤモンドは1000-2000と高い熱伝導率であり、ダイヤモンドは素子放熱材として非常に有効であることがわかる。
【0006】
実際に、この高い熱伝導率に着目し、半導体素子の放熱材料としての使用が提案されている。特許文献1には、熱伝導率の高いダイヤモンドないしはダイヤモンド含有材を半導体素子の裏面に貼り付けるものが開示されている。
また、特許文献2には、半導体素子を集積した集積回路パッケージにおいてダイヤモンドを成長ないしはダイヤモンドを貼り付ける手法が開示されている。
また、ダイヤモンドの熱伝導機構そのものに着目して、ダイヤモンドを構成する炭素の同位体を制御して熱伝導率を向上させる方法に関して特許文献3には開示されている。
【0007】
以上のようにダイヤモンドを用いた放熱(ヒートスプレッタ)は高い熱伝導率をもつことから非常に注目されている。特許文献3のようにダイヤモンドの熱伝導率を極限にまで高める方法もあるが、実用的にはいかにして半導体素子にダイヤモンドを接触されるかが課題となる。
【0008】
特許文献2は、ダイヤモンドを集積回路に成長させるか、別基板に成長させた基板を貼りつけることが開示されている。しかし、ダイヤモンドの成長には単結晶・多結晶に関わらず800℃以上の温度とプラズマが必要であり、半導体集積回路上に成長させることは、素子保護の問題から制約が多いと考えられる。
【0009】
図6を元にして、ダイヤモンドを用いた集積回路へ形成されるヒートスプレッタについて説明する。
図6は、一般的なヒートシンクを含んだ構造の説明図である。
図6に示すように、一般的なヒートシンクを含んだ構造134は、CPUなどのコア(Core)103、Cash/HBM104-1、104-2を形成したラミネートやPCBなどの集積回路支持基板105上に中間材(ダミーシリコン)102を介在させて
ヒートスプレッタ(ヒートシンク)金属101が形成されてなる。
このように、現在の集積回路は、CPUなどのCoreとCasheやHBMなどのメモリをシリコンやその他の基板上に積層した構造が主流となってきている。その為に、素子によって(CPUかメモリかなど)高さが異なるために、集積したときの高さに違いが生じる。一般的には、
図6のようにこの段差を解消するために、ダミーシリコンやその他の材料を積層したのちに、ヒートスプレッタとしてCuのような金属を貼り合わせたり、特許文献2にあるようなダイヤモンドを貼り合わせたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-158726号公報
【特許文献2】特表2005-500668号公報
【特許文献3】特開2021-119602号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ISSCC2022,Wilfred Gomes,et.al.,“2.1 Ponte Vecchio: A Multi-Tile 3D Stacked Processor for Exascale Computing
【非特許文献2】AIST/分散型熱物性データベース(https://tpds.db.aist.go.jp/opendata/metal_tc.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
高性能・高機能化が進み高集積となっていくデータセンターなどで用いられる、高性能CPU/GPU/NPUでは素子の誤動作・信頼性低下を防ぐために放熱に対する対策が非常に重要である。
【0013】
本発明は、より効率のよい放熱構造、及び、集積回路にダメージを与えることなく、簡易に形成できる放熱構造の作製方法が課題である。
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、高性能化が進む半導体素子の放熱材料として高い熱伝導率を有するダイヤモンドを用いる際に、より効率のよい構造・手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、集積回路部が形成された基板部材と、前記集積回路部上に形成されたヒートスプレッタ構造部と、を有するヒートスプレッタ構造付き部材であって、前記集積回路部が凹凸形状を形成しており、前記ヒートスプレッタ構造部が、ダイヤモンド層に前記集積回路部の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状が形成されたもの、又は、ダイヤモンド層が形成されたシリコン基板であって、前記シリコン基板に前記集積回路部の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状が形成されたものであり、前記集積回路部の凹凸形状に、前記ヒートスプレッタ構造部の凸凹形状を嵌合させて、前記ヒートスプレッタ構造部が前記基板部材に貼り合わせられたものであることを特徴とするヒートスプレッタ構造付き部材を提供する。
【0015】
このようなヒートスプレッタ構造付き部材によれば、より放熱効率の高い素子を製造することができる。詳しくは、集積回路上に放熱用のダイヤモンドを積層する(ヒートスプレッタ)際に、あらかじめ別の基板に積層したダイヤモンドに集積回路の凹凸に合わせた形状を作製しておき、貼り合わせる。
ダイヤモンドを用いることで、ダイヤモンドのもつ高い熱伝導性を利用した放熱特性の向上が期待できる。また、シリコン基板上に成長させたダイヤモンドを使用し、シリコン基板を除去ないしは、部分的に除去したのちに貼り合わせる。このように加工しやすいシリコン基板を材料として使用することで、集積回路の凹凸があっても放熱特性を維持することが可能になる。
【0016】
このとき、前記ヒートスプレッタ構造部がウエーハであり、前記基板部材が前記集積回路部を有するウエーハであり、前記ウエーハ同士で貼り合わせられたものであることを特徴とする先に記載のヒートスプレッタ構造付き部材とすることができる。
【0017】
Wafer-to-Waferでの貼り合わせであれば、あらかじめシリコン基板上に作製された集積回路に合わせて、シリコンを加工して(厚さとXY方向の形状)おくことで効率よく貼り合わせを行うことができ、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【0018】
このとき、前記ヒートスプレッタ構造部がチップであり、前記基板部材が前記集積回路部を有するウエーハであり、前記チップと前記ウエーハが貼り合わせられたものであることを特徴とする先に記載のヒートスプレッタ構造付き部材とすることができる。
【0019】
chip-to-Waferとして、ダイヤモンドを成長したシリコン基板を集積回路の大きさに切り出し(ダイヤモンドチップ)を並べていく方法については、このダイヤモンドチップの小片をあらかじめ準備して、集積回路の凹部に貼り付けた後に、この上に集積回路全体を覆うようにダイヤモンドを成長したシリコン基板を貼りつけ、最後にシリコンを除去する。この作製方法により、集積回路にダメージを与えることなく、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【0020】
このとき、前記ヒートスプレッタ構造部がチップであり、前記基板部材がチップであり、前記チップ同士で貼り合わせられたものであることを特徴とする先に記載のヒートスプレッタ構造付き部材とすることができる。
【0021】
chip-to-chipとして、ダイヤモンドを成長したシリコン基板を集積回路の大きさに切り出し(ダイヤモンドチップ)を並べていく方法については、ダイヤモンドチップにフォトリソなどの方法で集積回路に合わせた形状を準備して貼り付け、そのあとに集積回路全体を覆うようにこの上に集積回路全体を覆うようにダイヤモンドを成長したシリコン基板を貼りつけ、最後にシリコンを除去する。
この作製方法により、集積回路にダメージを与えることなく、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【0022】
このとき、前記ダイヤモンド層がCVDダイヤモンド層であることを特徴とする先に記載のヒートスプレッタ構造付き部材とすることができる。
【0023】
シリコン基板上にCVD法で成長させたダイヤモンドとすることにより、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【0024】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、ヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法であって、集積回路部が形成され、凹凸形状を有する基板部材を準備する工程と、ダイヤモンド層が形成されたシリコン基板を準備する工程と、前記ダイヤモンド層に前記集積回路部の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状を形成する、又は、前記シリコン基板に前記集積回路部の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状を形成する工程と、前記集積回路部の前記凹凸形状に、前記ダイヤモンド層の前記凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせた後、表面のシリコン基板を除去して、前記基板部材にダイヤモンド層のみからなるヒートスプレッタ構造部を形成する工程、又は、前記集積回路部の前記凹凸形状に、前記シリコン基板の前記凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせて、ダイヤモンド層とシリコン基板からなるヒートスプレッタ構造部を形成する工程と、を有することを特徴とするヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法を提供する。
【0025】
このヒートスプレッタとしてシリコン基板上にダイヤモンドを成長させたヘテロ基板を準備し、この基板のダイヤモンド層に集積回路部の凹凸形状に嵌合する凸凹形状を形成するか、シリコン部をあらかじめ薄膜化したのちに、このシリコン部に、集積回路の形状に合わせてシリコンを加工しておく。
【0026】
前記シリコン部を薄膜化する際の厚さは、集積回路の凹凸に合わせておくことで、ヒートスプレッタが集積回路の各素子と密着することができ、熱伝導を効果的に行うことが可能になる。
【0027】
また前記のシリコン加工には、一般的なフォトリソ技術とそれに続くエッチング技術をそのまま使うことができる。また、薄膜化したウエーハのハンドリングには、あらかじめダイヤモンド側にダミー基板を貼り付けておく方法や、シリコンの外周部だけシリコンを厚く残しておく方法など、いくつかの手法があり、ここではその方法に限定はない。
【0028】
このようにして、あらかじめシリコンを加工しておくことで、ダイヤモンドと集積回路の間にあるシリコン層をできるだけ薄膜化することが可能になり、効率のよいヒートスプレッタが形成可能になる。
【0029】
この作製方法により、集積回路にダメージを与えることなく、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【0030】
このとき、前記凸凹形状形成工程で、前記集積回路部の凹凸形状に合わせてシリコン基板の少なくとも一部を除去して、凸凹形状を形成することが好ましい。
【0031】
この作製方法により、集積回路にダメージを与えることなく、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【0032】
このとき、更に、前記ダイヤモンド層が形成されたシリコン基板を小片に切り出して、ダイヤモンドチップを形成する工程を有し、前記ヒートスプレッタ構造部を形成する工程で、前記ダイヤモンド層又は前記シリコン基板の前記凸凹形状を前記集積回路部の凹凸形状に嵌合させるように、前記ダイヤモンドチップを並べて、前記ヒートスプレッタ構造部を前記基板部材に貼り合わせることを特徴とする先に記載のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法とすることができる。
【0033】
この作製方法により、集積回路にダメージを与えることなく、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【0034】
このとき、更に、前記ヒートスプレッタ構造部を形成する工程の後、他のダイヤモンド層を成長させたシリコン基板を、前記シリコン基板を表側にして、前記基板部材上に並べた全ての前記ダイヤモンドチップを覆うように貼り付ける工程と、前記シリコン基板を除去する工程と、を有することができる。
【0035】
この作製方法により、集積回路にダメージを与えることなく、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【0036】
このとき、更に、前記ダイヤモンド層が形成されたシリコン基板を小片に切り出して、ダイヤモンドチップを形成する工程と、集積回路部が形成された基板部材を小片に切り出して、集積回路付きチップを形成する工程を有し、前記ヒートスプレッタ構造部を形成する工程で、前記集積回路付きチップを並べてから、前記凸凹形状を前記集積回路部の凹凸形状に嵌合させるように、前記ダイヤモンドチップを貼り合わせて、前記ヒートスプレッタ構造部を前記基板部材に形成することもできる。
【0037】
この作製方法により、集積回路にダメージを与えることなく、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【0038】
このとき、更に、前記ヒートスプレッタ構造部を形成する工程の後、他のダイヤモンド層を成長させたシリコン基板を、前記シリコン基板を表側にして、前記基板部材上に並べた全ての前記ダイヤモンドチップを覆うように貼り付ける工程と、前記シリコン基板を除去する工程と、を有する先に記載のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法とすることができる。
【0039】
この作製方法により、集積回路にダメージを与えることなく、簡易に高い放熱構造を形成できる。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明のヒートスプレッタ構造付き部材であれば、ダイヤモンドを用いることで、ダイヤモンドのもつ高い熱伝導性を利用した放熱特性の向上が可能になる。
【0041】
また、ヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法であれば、集積回路にダメージを与えることなくダイヤモンド層を形成でき、簡易に高い放熱構造を形成できる。また、シリコン基板上に成長したダイヤモンド材料を利用でき、大口径基板を利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の説明図である。
【
図2】本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法の説明図である。
【
図3】本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法の説明図あって、Wafer-to-Waferの貼り合わせを示す図である。
【
図4】本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法の説明図であって、chip-to-Waferの貼り合わせを示す図である。
【
図5】本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法の説明図あって、chip-to-chipの貼り合わせを示す図である。
【
図6】一般的なヒートシンクを含んだ構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
上述のように、高い熱伝導率をもつ集積回路及びダメージを与えず、簡易なその作製方法の開発が求められていた。
【0045】
そこで、発明者らは、上記課題について検討を重ねた結果として、シリコン基板上に成長させたダイヤモンドを用いた、集積回路のヒートスプレッタ構造及びその作製方法により、高い熱伝導率をもつ集積回路及びダメージを与えず、簡易なその作製方法が可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0046】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材について
図1を参照しながら説明する。
【0047】
(ヒートスプレッタ構造付き部材)
図1に、本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の説明図を示す。
図1に示されるように、本発明のヒートスプレッタ構造付き部材34は、集積回路部10が形成された基板部材31と、集積回路部10上に形成されたヒートスプレッタ構造部9と、を有する。
【0048】
(基板部材)
基板部材31は、基板5と、基板5上に形成された集積回路部10とからなる。
基板5は、シリコン基板やラミネートやPCBなどの集積回路支持基板である。
例えば、基板部材31は、300mmφのシリコン基板と、シリコン基板上に作製されるCPUなどの集積回路とからなる。
【0049】
(集積回路部)
集積回路部10は、CPUなどのコア(Core)3と、Cash/HBM4-1、4-2とからなる。
Cash/HBM4-2は、Cash/HBM4-1上に積層されて形成され、コア3のみの部分に対して突出する構造とされている。これにより、集積回路部10は凹凸形状を形成している。
【0050】
(ヒートスプレッタ構造部)
ヒートスプレッタ構造部9は、ダイヤモンド層6が形成されたシリコン基板8であって、シリコン基板8に集積回路部10の凹凸形状に嵌合する凸凹形状が形成されたものである。
図1から分かるように、シリコン基板8には貫通穴が形成されており、ダイヤモンド層6はCash/HBM4-2に接触している。つまり、シリコン基板8は透かし彫りのように加工されている。
【0051】
ヒートスプレッタ構造付き部材34は、集積回路部10の凹凸形状に、ヒートスプレッタ構造部9の凸凹形状を嵌合させて、ヒートスプレッタ構造部9が基板部材10に貼り合わせられている。
【0052】
(ダイヤモンド層)
ダイヤモンド層6は、各種の合成法が知られているが、半導体基板用途では、マイクロ波プラズマやホットフィラメントなどのCVD(Chemical Vapor Deposition)法がある。この中でも大口径基板への適応が可能なホットフィラメント法が好ましいといえる。
【0053】
ホットフィラメント法とは、減圧した反応容器中に基板を入れて、ガスとしてメタンと水素を導入した状態で、基板上に設置したタングステンやチタンフィラメントに電流を印加して高熱にすることで、ガスを分解・活性化することでダイヤモンドを成長させる方法である。
【0054】
(ヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法)
次に、本発明の第一実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法について
図2を参照しながら説明する。
図2に、本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法の説明図を示す。
図2に示されるように、本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法は、基板部材準備工程と、ダイヤモンド層形成シリコン基板準備工程と、凸凹形状形成工程と、ヒートスプレッタ構造部形成工程と、を有する。
【0055】
(基板部材準備工程)
集積回路部10が形成され、凹凸形状を有する基板部材31を準備する工程である。
例えば、シリコン基板にフォトリソグラフィー法等の常法を用いて集積回路を形成することで、準備することができる。
【0056】
(ダイヤモンド層形成シリコン基板準備工程)
ダイヤモンド層6が形成されたシリコン基板7を準備する工程である。
シリコン基板上にCVD法で成長したダイヤモンドヘテロ基板を準備する。
ダイヤモンド層6が形成されたシリコン基板7は、ダイヤモンド層形成シリコン基板32である。
【0057】
(凸凹形状形成工程)
シリコン基板7に集積回路部10の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状を形成する工程である。シリコン基板7は、加工されたシリコン基板8とされる。
例えば、凸凹形状形成工程で、集積回路部10の凹凸形状に合わせてシリコン基板7の少なくとも一部を除去して、凸凹形状を形成する。
まず、シリコン基板7を薄膜化(集積回路の段差を元にして決める)して、集積回路の形状に合わせてフォトリソグラフィー法によりシリコンを除去する。
ダイヤモンド層6が形成され、加工されたシリコン基板8は、凸凹形状形成基板33とされる。
【0058】
(ヒートスプレッタ構造部形成工程)
集積回路部10の凹凸形状に、シリコン基板8の凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせて、基板部材31にダイヤモンド層6とシリコン基板8からなるヒートスプレッタ構造部9を形成する工程である。
この際、例えば、シリコン基板8をプラズマで表面を活性化しておくなどとしてよいし、接着剤のようなものを使用して貼り付けを行ってもよい。
【0059】
図3は、本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法の説明図あって、Wafer-to-Waferの貼り合わせを示す図である。
図3に示すように、ヒートスプレッタ構造部9がウエーハであり、基板部材31が集積回路部を有するウエーハであり、前記ウエーハ同士で貼り合わせられたものである。
【0060】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材について説明する。
本発明の第二実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材は、ヒートスプレッタ構造部9が、ダイヤモンド層6に集積回路部10の凹凸形状に嵌合する凸凹形状が形成されたものである他は、第一実施形態と同様な構成とされている。
また、本発明の第二実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法は、凸凹形状形成工程が、ダイヤモンド層に前記集積回路部の前記凹凸形状に嵌合する凸凹形状を形成する工程とされ、ヒートスプレッタ構造部を形成する工程が、前記集積回路部の前記凹凸形状に、前記ダイヤモンド層の前記凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせた後、表面のシリコン基板を除去して、前記基板部材にダイヤモンド層のみからなるヒートスプレッタ構造部を形成する工程とされた他は、第一実施形態と同様な構成とされている。
尚、シリコン基板の除去は、エッチングや研削・研磨により行う事ができる。
【0061】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法について説明する。
図4は、本発明の第三実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法の説明図あって、chip-to-Waferの貼り合わせを示す図である。
図4に示すように、ヒートスプレッタ構造部9がチップであり、基板部材31が集積回路部を有するウエーハであり、前記チップと前記ウエーハが貼り合わせられたものである。
【0062】
本発明の第三実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法は、chip-to-Waferの貼り合わせとされた他は、第一実施形態と同様な構成とされている。
第一実施形態は、wafer-to-waferの例であったが、chip-to-waferも可能である。集積回路がウエーハ状であるが、これに接合するダイヤモンドについては、第一実施形態と異なり、ヒートシンク用にダイ(チップ)としてあらかじめ準備をしておき、集積回路の上にそれを並べて接合する(接合方法は、ダイヤモンドダイの表面活性化でも、接着材でも構わない)方法である。この場合もあらかじめダイヤモンドを成長させたシリコン基板を薄膜化しておくことで、効率のよい放熱が可能になる。
【0063】
また、この場合、ダイヤモンド面とシリコン面のどちらを集積回路に接合させるかは任意に選択することが可能である。
【0064】
本発明の第三実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法は、更に、ダイヤモンド層6が形成されたシリコン基板8を小片に切り出して、ダイヤモンドチップ35を形成する工程を有する。
集積回路部10の凹凸形状に、ダイヤモンド層6又はシリコン基板8の凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせて、基板部材31にヒートスプレッタ構造部9を形成する工程で、ダイヤモンド層6又はシリコン基板8の凸凹形状を集積回路部10の凹凸形状に嵌合させるように、ダイヤモンドチップ35を並べて、ヒートスプレッタ構造部9を基板部材31に貼り合わせる。
これにより、chip-to-Wafer貼り合わせ基板36を作る。
【0065】
更に、集積回路部10の凹凸形状に、ダイヤモンド層6又はシリコン基板8の凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせて、基板部材31にヒートスプレッタ構造部9を形成する工程の後、他のダイヤモンド層を成長させたシリコン基板を、前記シリコン基板を表側にして、前記基板部材上に並べた全ての前記ダイヤモンドチップを覆うように貼り付ける工程と、前記シリコン基板を除去する工程と、を有することが好ましい。
このように、更に、その上に、全体を覆うように大きなダイヤモンド基板を接合してもよい。
【0066】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法について説明する。
【0067】
図5は、本発明のヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法の説明図あって、chip-to-chipの貼り合わせを示す図である。
図5に示すように、ヒートスプレッタ構造部9がチップであり、基板部材31がチップであり、前記チップ同士で貼り合わせられたものである。
【0068】
本発明の第四実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法は、chip-to-chipの貼り合わせとされた他は、第一実施形態と同様な構成とされている。
第一実施形態は、wafer-to-waferの例であり、第三実施形態は、chip-to-waferの例であったが、chip-to-chipも可能である。
集積回路チップ、ヒートシンク用にダイ(チップ)をあらかじめ準備をしておき、集積回路チップの上にダイ(チップ)を並べて接合(接合方法は、ダイヤモンドダイの表面活性化でも、接着材でも構わない)する方法である。この場合もあらかじめダイヤモンドを成長させたシリコン基板を薄膜化しておくことで、効率のよい放熱が可能になる。
【0069】
本発明の第四実施形態に係るヒートスプレッタ構造付き部材の作製方法は、更に、ダイヤモンド層6が形成されたシリコン基板8を小片に切り出して、ダイヤモンドチップ35を形成する工程と、集積回路部が形成された基板部材を小片に切り出して、集積回路付きチップ37を形成する工程とを有する。
集積回路部の凹凸形状に、ダイヤモンド層6又はシリコン基板8の凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせて、基板部材にヒートスプレッタ構造部9を形成する工程で、ダイヤモンド層6又はシリコン基板8の凸凹形状を集積回路部の凹凸形状に嵌合させるように、ダイヤモンドチップ35を並べて、ヒートスプレッタ構造部9を基板部材31に貼り合わせる。
これにより、chip-to-chip貼り合わせ基板38を作る。
【0070】
更に、集積回路部10の凹凸形状に、ダイヤモンド層6又はシリコン基板8の凸凹形状を嵌合させ、貼り合わせて、基板部材31にヒートスプレッタ構造部9を形成する工程の後、他のダイヤモンド層を成長させたシリコン基板を、前記シリコン基板を表側にして、前記基板部材上に並べた全ての前記ダイヤモンドチップを覆うように貼り付ける工程と、前記シリコン基板を除去する工程と、を有することが好ましい。
【実施例0071】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0072】
(実施例1)
300mmφシリコン基板上に熱フィラメント法にてダイヤモンド層を形成した。
ダイヤモンドは微結晶状であり、その厚さは0.05mmであった。
このようなシリコンウエーハを使用して、ダイヤモンドが形成された面と反対側のシリコンを研削で薄膜化した。このときフォトリソが可能なようにシリコンの外周部は元のままの厚さで残した。
フォトリソを行い、凸凹構造を形成した。
集積回路を作ってあるウエーハと貼り合わせを行い、ヒートスプレッタ構造を作製した。
【0073】
(実施例2)
300mmφシリコン基板上に熱フィラメント法にてダイヤモンド層を形成した。
ダイヤモンドは微結晶状であり、その厚さは0.05mmであった。
このようなシリコンウエーハを使用して、適度な大きさに切断して、ダイヤモンドが形成された面と反対側のシリコンを研削で薄膜化してチップ化して、フォトリソを行い、凸凹構造を形成した。
集積回路を作ってあるウエーハと貼り合わせを行い、ヒートスプレッタ構造を作製した。
【0074】
集積回路の性能評価テストにより、ヒートスプレッタ構造を作製しても集積回路にダメージのないこと、ヒートスプレッタ構造により放熱効率の高いことが分かった。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
3…CPUなどのコア(Core)、4-1…Cash/HBM、4-2…Cash/HBM、5…基板、6…ダイヤモンド層、7…シリコン基板、8…加工されたシリコン基板、9…ヒートスプレッタ構造部、10…集積回路部、31…基板部材、32…ダイヤモンド層形成シリコン基板、 33…凸凹形状形成基板、 34…ヒートスプレッタ構造付き部材、35…ダイヤモンドチップ、 36…chip-to-Wafer貼り合わせ基板、 37…集積回路付きチップ、38…chip-to-chip貼り合わせ基板、101…ヒートスプレッタ(ヒートシンク)金属、102…中間材(ダミーシリコン)、103…CPUなどのコア(Core)、104-1…Cash/HBM、104-2…Cash/HBM、105…ラミネートやPCBなどの集積回路支持基板、134…一般的なヒートシンクを含んだ構造。