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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006465
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240110BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240110BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20240110BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/22
C08K5/5415
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107343
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横倉 亜唯
(72)【発明者】
【氏名】姜 東哲
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴耶
(72)【発明者】
【氏名】西山 智雄
(72)【発明者】
【氏名】畠山 恵一
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002BG041
4J002BG051
4J002BH021
4J002CC031
4J002CC161
4J002CC181
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD131
4J002CF211
4J002CF281
4J002CK021
4J002CL001
4J002CM041
4J002DE286
4J002EX037
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD160
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ05
4M109AA01
4M109CA01
4M109CA21
4M109CA22
4M109EA02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB08
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB13
4M109EB16
4M109EB18
(57)【要約】
【課題】硬化物からの有機イオンの溶出が抑制された樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を封止材として用いる半導体装置の提供。
【解決手段】ハイドロタルサイト化合物と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物と、硬化性樹脂と、を含む、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロタルサイト化合物と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物と、硬化性樹脂と、を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイト化合物のMgイオンとAlイオンとのモル比(Mg/Al)が2.5以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ハイドロタルサイト化合物は未焼成ハイドロタルサイト化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ハイドロタルサイト化合物の層間距離が7.5Å以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物はエポキシ基をさらに含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ハイドロタルサイト化合物の質量Aに対する前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物の質量Bの比(B/A)が0.5~10である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
素子と、前記素子を封止している請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等の素子を基板上に配置し、素子の周囲を樹脂組成物の硬化物で封止した状態の半導体パッケージが電子機器類に広く使用されている。
これまでの半導体パッケージは、ワイヤ、端子等の素子を基板と電気的に接続する材料として金が主に用いられてきたが、近年は金価格の高騰等により、銅、アルミニウム等の金以外の金属を使用する場合が増えている。一方、半導体パッケージの封止材としては、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が広く用いられている。エポキシ樹脂はエピクロロヒドリンを用いて合成される場合が多く、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物中に塩素が存在する場合がある。銅、アルミニウム等の金属は金と比較して化学的反応性に富んでいるため、塩素による腐食が進みやすい。
そこで、樹脂組成物中の塩素イオンをトラップする材料としてハイドロタルサイト化合物を用いることが試みられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-1902号公報
【特許文献2】特開2009-29919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の半導体パッケージの構造及び用途の多様化に伴い、塩素イオン以外にもカルボン酸等の有機イオンの溶出の抑制が求められる場合が生じている。
本開示は上記事情に鑑み、硬化物からの有機イオンの溶出が抑制された樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を封止材として用いる半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>ハイドロタルサイト化合物と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物と、硬化性樹脂と、を含む、樹脂組成物。
<2>前記ハイドロタルサイト化合物のMgイオンとAlイオンとのモル比(Mg/Al)が2.5以上である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ハイドロタルサイト化合物は未焼成ハイドロタルサイト化合物である、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記ハイドロタルサイト化合物の層間距離が7.5Å以上である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5>前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物はエポキシ基をさらに含有する、<1>~<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<6>前記ハイドロタルサイト化合物の質量Aに対する前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物の質量Bの比(B/A)が0.5~10である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<7>前記硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<8>素子と、前記素子を封止している<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の硬化物と、を有する半導体装置。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、硬化物からの有機イオンの溶出が抑制された樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を封止材として用いる半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0008】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0009】
<樹脂組成物>
本開示の樹脂組成物は、ハイドロタルサイト化合物と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物と、硬化性樹脂と、を含む。
【0010】
本発明者らの検討の結果、ハイドロタルサイト化合物とケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物とを含む樹脂組成物は、ハイドロタルサイト化合物を含むがケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物を含まない樹脂組成物に比べて硬化物からの有機イオンの溶出が抑制されることがわかった。
この理由は明らかではないが、例えば、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物がハイドロタルサイト化合物の陰イオンをトラップする能力を補完する何らかの役割を果たしていることが考えられる。例えば、ケイ素原子に結合したアルコキシ基に由来する無機材料と化学結合する性質が硬化物からの有機イオンの溶出の抑制に寄与していることが考えられる。
【0011】
(ハイドロタルサイト化合物)
本開示においてハイドロタルサイト化合物とは、下記一般式(1)で表される化合物を意味する。
本開示では、天然ハイドロタルサイトと合成ハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト様化合物)のいずれもハイドロタルサイト化合物と称する。
【0012】
〔M 1-x (OH)〕(Ax/n・mHO) ・・・(1)
【0013】
式(1)中、Mは2価の金属を表す。Mは3価の金属を表す。x及びmは各々独立に正数を表す。AはCO、HPO、又は飽和脂肪族モノカルボン酸を表す。nはAの価数を表す。
【0014】
式(1)中、Mで表される2価の金属としては、Mg、Fe、Zn、Ca、Cu、Co等が挙げられ、Mg、Zn又はCaであることが好ましく、Mgであることがより好ましい。
で表される3価の金属としては、Al、Ce、Fe、Mn、In、Cr等が挙げられ、Al又はCeであることが好ましく、Alであることがより好ましい。
xは正数を表し、0<x≦0.50であることが好ましく、0.20≦x≦0.33であることがより好ましい。
mは正数を表し、0<m≦2であることが好ましい。
AはCO、HPO、又は飽和脂肪族モノカルボン酸を表し、COであることが好ましい。
【0015】
陰イオンの捕捉機能の観点から、ハイドロタルサイト化合物はAl及びMgを含有するハイドロタルサイト化合物であることが好ましく、下記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0016】
Mg1-xAl(OH)(COx/2・mHO ・・・(2)
【0017】
式(2)において、xはMgのAlへの置換量を表す正数であり、0<x≦0.50であることが好ましく、0.20≦x≦0.33であることがより好ましい。
mは0を超える正数であり、0<m≦2であることが好ましい。
【0018】
式(2)で表されるハイドロタルサイト化合物は、[Mg1-xAl(OH)]で表される複数の水酸化物シートが層状に重なり、水酸化物シートと水酸化物シートとの間(層間)に陰イオン(炭酸イオン)と水分子とが入っている構造を有することが好ましい。水酸化物シートは、2価金属(Mg)の一部が3価金属(Al)に置き換わっているため、全体として正に荷電する。静電的なバランスは、層間に陰イオンが取り込まれることによって保たれると考えられている。このような性質により、式(2)で表される未焼成ハイドロタルサイト化合物は樹脂組成物中の陰イオンを効果的に捕捉できると考えられる。
【0019】
Al及びMgを含有するハイドロタルサイト化合物は、本開示の構成による効果が達成される限りにおいて、Mg又はAlの一方又は両方の一部が他の金属元素に置き換わった化合物であってもよい。
【0020】
Al及びMgを含有するハイドロタルサイト化合物中のMgイオンとAlイオンとのモル比(以下、Mg/Al比ともいう)は、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、2.8以上であることがさらに好ましい。Mg/Al比が大きいほど、結晶中の層間距離が長くなる傾向にある。層間距離が長いと効率的に陰イオンを捕捉できると考えられる。
【0021】
一般的には、MgイオンよりもAlイオンの方が水溶液中での陰イオンを捕捉しやすいため、ハイドロタルサイト化合物のMg/Al比が小さい(すなわち、Alの比率が大きい)方がイオントラップ機能を向上させるうえで有利と考えられる。
これに対して本開示の樹脂組成物の硬化物のような固体材料中では、ハイドロタルサイト化合物のMg/Al比が大きい方がイオントラップ機能を向上させるうえで有利と考えられる。この理由は、Mg/Al比を大きくして層間距離を拡げることによるイオントラップ機能の向上効果がMg/Al比を小さくしてAlの比率を高めることによるイオントラップ機能の向上効果を上回るためと考えられる。
なお、水酸化物シートの間に陰イオンがトラップされた状態の構造は安定性が高いため、水酸化物シートの層間距離が広くても陰イオンの脱離は生じにくいと推測される。
【0022】
ハイドロタルサイト化合物のMg/Al比は、4.0以下であることが好ましい。Mg/Al比が4.0以下であると、適度な層状構造が維持され、効率的に陰イオンを捕捉できると考えられる。
ハイドロタルサイト化合物のMg/Al比は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)によって測定することができる。
ハイドロタルサイト化合物のMg/Al比は、例えば、ハイドロタルサイト化合物の原料として使用するMg塩とAl塩のモル比を調整することで所望の値に設定することができる。
【0023】
ハイドロタルサイト化合物は、層状構造を維持して陰イオンを捕捉する機能を発揮する観点から未焼成ハイドロタルサイトであることが好ましい。
ハイドロタルサイト化合物は、未焼成ハイドロタルサイト化合物と、未焼成ハイドロタルサイト化合物の焼成物である焼成ハイドロタルサイト化合物との組み合わせであってもよい。
ハイドロタルサイト化合物が未焼成であるか否かは、例えば、X線回折において確認することができる。すなわち、X線回折において層方向ピークである001面のピークと、002面のピークとが共に観察される場合は、ハイドロタルサイト化合物が未焼成であると判断する。より具体的には、X線回折において層方向ピークである001面、002面のピークが共に5°~45°付近におよそ等間隔で観察される場合は、ハイドロタルサイト化合物が未焼成であると判断する。
【0024】
陰イオンを効果的に捕捉する観点からは、ハイドロタルサイト化合物は粒子状であることが好ましい。ハイドロタルサイト化合物が粒子状である場合、その平均粒子径は5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。ハイドロタルサイト化合物の平均粒子径は0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましい。
ハイドロタルサイト化合物が二次粒子の状態である場合、上記の平均粒子径は二次粒子の平均粒子径を表す。
【0025】
ハイドロタルサイト化合物が二次粒子の状態である場合、ハイドロタルサイト化合物の一次粒子径は、50nm以上であることが好ましい。これにより、第一のハイドロタルサイト化合物の二次凝集が抑制され、二次粒子の平均粒子径を上記範囲内に調整しやすい。
【0026】
本開示においてハイドロタルサイト化合物の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、株式会社堀場製作所、LA920)を用いて得られる体積基準の粒度分布において小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)とする。
【0027】
ハイドロタルサイト化合物の比表面積は10m/g~100m/gであることが好ましく、10m/g~80m/gであることがより好ましい。
本開示においてハイドロタルサイト化合物の比表面積は、液体窒素温度(77K)での多点法による窒素吸着測定より得た吸着等温線からBET式により求めた値とする。
【0028】
ハイドロタルサイト化合物の層間距離は、イオントラップ機能の観点から、7.5Å以上であることが好ましく、7.6Å以上であることがより好ましく、7.7Å以上であることがさらに好ましく、7.8Å以上であることがさらに好ましい。ハイドロタルサイト化合物の層間距離は、例えば、9.0Å以下であってもよい。
ハイドロタルサイト化合物の層間距離の上記値は、XRD測定により得られる層方向ピークの一つである003面ピークを用いてブラッグの条件式から算出する。
【0029】
ハイドロタルサイト化合物の樹脂組成物中の含有量は、特に制限されない。充分な耐湿信頼性を実現する観点からは、ハイドロタルサイト化合物の含有量は、樹脂組成物中の硬化性樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。
他の成分とのバランスの観点からは、ハイドロタルサイト化合物の含有量は、樹脂組成物中の硬化性樹脂の合計100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0030】
(ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物)
本開示においてシリコーン化合物とは、シロキサン結合からなる主鎖を持つ重合体を意味する。ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物とは、主鎖の末端又は側鎖の少なくとも一部においてケイ素原子にアルコキシ基が結合しているシリコーン化合物を意味する。
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物として具体的には、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部がアルコキシ基に置き換えられたシリコーン化合物が挙げられる。
【0031】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物は、主鎖の末端の少なくとも一部がアルコキシ基であることが好ましい。
【0032】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物は、主鎖が分岐した構造を有していても分岐した構造を有していなくてもよい。硬化物からの有機イオンの溶出を抑制する観点からは、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物は主鎖が分岐した構造を有していることが好ましい。
【0033】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物は、エポキシ基をさらに含有することが好ましい。
エポキシ基及びケイ素原子に結合したアルコキシ基を有するシリコーン化合物は、エポキシ基に由来する有機材料と化学結合する性質と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基に由来する無機材料と化学結合する性質とを併せ持つ。この性質がハイドロタルサイト化合物との併用によって硬化物からの有機イオンの溶出を抑制する作用をより高めると考えられる。
【0034】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物は、下記式(a)で表される構造及び式(b)で表される構造を有するシリコーン化合物であってもよい。
【0035】
【化1】
【0036】
式(a)及び式(b)において、Rは炭素数1~12の置換または非置換の1価の炭化水素基を示す。シリコーン化合物中のRは、すべて同じでも異なっていてもよい。Xはエポキシ基を含む1価の有機基を示す。シリコーン化合物中のXは、すべて同じでも異なっていてもよい。
【0037】
式(a)で表される構造及び式(b)で表される構造を有するシリコーン化合物は、下記式(c)で表される構造をさらに有するシリコーン化合物であってもよい。
【0038】
【化2】
【0039】
式(c)において、Rは炭素数1~12の置換または非置換の1価の炭化水素基を示す。シリコーン化合物中のRは、同一でも異なっていてもよい。
【0040】
式(a)~(c)におけるRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、中でもメチル基及びフェニル基が好ましい。
式(b)におけるXとしては、2,3-エポキシプロピル基、3,4-エポキシブチル基、4,5-エポキシペンチル基、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられ、中でも3-グリシドキシプロピル基が好ましい。
【0041】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物が式(a)で表される構造及び式(b)で表される構造を有するシリコーン化合物である場合、シリコーン化合物の主鎖の末端の少なくとも一部がアルコキシ基であることが好ましい。
【0042】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値で、1000~30000であることが好ましく、2000~20000であることがより好ましく、3000~10000であることがさらに好ましい。
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物のエポキシ当量(エポキシ基1個あたりの分子量)は、樹脂組成物の流動性の観点からは500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。硬化物表面への染み出し抑制の観点からは4000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。
【0043】
硬化物の機械強度の観点からは、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物の軟化点は40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。
樹脂組成物中での分散性の観点からは、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物の軟化点は120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。
【0044】
硬化物からの有機イオンの溶出を効果的に抑制する観点からは、樹脂組成物中のケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物の量は、ハイドロタルサイト化合物の質量Aに対するアルコキシ基を含有するシリコーン化合物の質量Bの比(B/A)が0.5~10となる量であることが好ましく、1~7となる量であることがより好ましく、1~3となる量であることがさらに好ましい。
【0045】
硬化物からの有機イオンの溶出を効果的に抑制する観点からは、樹脂組成物中のケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物の含有率は、硬化性樹脂の合計100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。
他の成分とのバランスの観点からは、樹脂組成物中のケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物の含有率は、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
【0046】
(硬化性樹脂)
樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂のいずれであってもよく、量産性の観点からは、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0047】
樹脂組成物の特性のバランスの観点からは、硬化性樹脂はエポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤との組み合わせであることが好ましい。
【0048】
エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはアクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性のバランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0050】
エポキシ樹脂が固体である場合、エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。エポキシ樹脂の軟化点又は融点は、成形性と耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、示差走査熱量測定(DSC)又はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。
【0051】
エポキシ樹脂の硬化剤として具体的には、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。これらの中でもフェノール硬化剤が好ましい。
【0052】
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等と、から合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンと、から共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、硬化剤の官能基当量は70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
【0054】
硬化剤の軟化点又は融点は、特に制限されない。硬化剤の軟化点又は融点は、成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
【0055】
エポキシ樹脂と硬化剤(硬化剤を複数種用いた場合はすべての硬化剤)との当量比、すなわちエポキシ樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える観点からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましく、0.7~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0056】
樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から樹脂組成物全体の0.5質量%~30質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましく、5質量%~15質量%であることがさらに好ましい。
【0057】
(無機充填材)
樹脂組成物は、無機充填材を含んでもよい。樹脂組成物が無機充填材を含むことで、封止組成物の吸湿性が低減し、硬化状態での強度が向上する傾向にある。
本開示において、ハイドロタルサイト化合物は「無機充填材」に含まれないものとする。
【0058】
無機充填材としては溶融シリカ、湿式シリカ、乾式シリカ、アルミナ、ジルコン、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア等が挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材の材質としては、例えば、水酸化アルミニウム、複合金属水酸化物、硼酸亜鉛及びモリブデン酸亜鉛が挙げられる。これらの中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナ及び窒化ホウ素が好ましい。
【0059】
無機充填材は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。無機充填材を2種以上併用する場合としては、例えば、成分、最大粒子径、形状等が異なる無機充填材を2種以上用いる場合が挙げられる。
無機充填材の形状は特に制限されず、例えば、粉状、球状、繊維状等が挙げられる。封止組成物の成形時の流動性及び金型摩耗性の点からは、球状であることが好ましい。
【0060】
無機充填材の粒子径は特に制限されず、樹脂組成物の用途等に応じて選択できる。
例えば、無機充填材の平均粒子径は1μm~30μmの範囲から選択してもよく、5μm~20μmの範囲から選択してもよい。
無機充填材の平均粒子径は、ハイドロタルサイト化合物の平均粒子径と同様にして測定される。
無機充填材は二次粒子の状態であってもよい。
樹脂組成物は、平均粒子径の異なる複数種の無機充填材を含んでもよい。
【0061】
樹脂組成物に含まれる無機充填材の含有率は、樹脂組成物全体の60質量%~98質量%の範囲内であることが好ましく、70質量%~97質量%の範囲内であることがより好ましく、80質量%~95質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0062】
(硬化促進剤)
樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含有してもよい。
硬化促進剤の種類は、特に制限されず、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン(トリブチルホスフィン等)、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の三級ホスフィンなどの、有機ホスフィン;前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート等のテトラ置換ホスホニウムのテトラフェニルボレート塩、テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物との塩などの、テトラ置換ホスホニウム化合物;ホスホベタイン化合物;ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などが挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物が好ましい。
硬化促進剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
硬化促進剤の含有率は、硬化性樹脂の合計100質量部に対して0.1質量部~10質量部であることが好ましい。
【0064】
(シラン化合物)
樹脂組成物は、シラン化合物をさらに含有してもよい。
シラン化合物として具体的には、ジメトキシジフェニルシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。シラン化合物は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0065】
樹脂組成物がシラン化合物を含有する場合、シラン化合物の含有率は、樹脂組成物の全体に対して0.1質量%~3質量%以下であることが好ましい。
【0066】
(離型剤)
樹脂組成物は、離型剤をさらに含有してもよい。離型剤の種類は特に制限されず、公知の離型剤を使用することができる。離型剤として具体的には、高級脂肪酸、カルナバワックス及びポリエチレン系ワックスが挙げられる。離型剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
樹脂組成物が離型剤を含有する場合、離型剤の含有率は、硬化性樹脂の合計100質量部に対して0.1質量部~10質量部であることが好ましい。
【0067】
(着色剤)
樹脂組成物は、着色剤を含有してもよい。着色剤として具体的には、カーボンブラックが挙げられる。
【0068】
樹脂組成物が着色剤を含有する場合、着色剤の含有率は、硬化性樹脂の合計100質量部に対して0.1質量部~10質量部であることが好ましい。
【0069】
(ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有しないシリコーン化合物)
樹脂組成物は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有しないシリコーン化合物を含有してもよい。このようなシリコーン化合物として具体的には、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有しないシリコーンオイル、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有しないシリコーンゴム等が挙げられる。ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有しないシリコーン化合物は、エポキシ基等の反応性官能基を有していてもよい。
樹脂組成物は、常温(25℃)で固体のシリコーン化合物と、常温で液体のシリコーン化合物とを含んでもよい。例えば、常温で固体のケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物と、常温で液体のケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有しないシリコーン化合物とを含んでもよい。
【0070】
樹脂組成物がケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有しないシリコーン化合物を含有する場合、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有しないシリコーン化合物の含有率は、硬化性樹脂の合計100質量部に対して0.1質量部~20質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
【0071】
<樹脂組成物の作製方法>
樹脂組成物の作製方法は特に制限されず、公知の方法により行うことができる。例えば、所定の配合量の原材料の混合物をミキサー等によって充分混合した後、熱ロール、押出機等によって混練し、冷却、粉砕等の処理を経ることによって作製することができる。 本開示の樹脂組成物は、常温(25℃)で固体であっても液体であってもよく、常温(25℃)で固体であることが好ましい。
【0072】
<半導体装置>
本開示の半導体装置は、素子と、前記素子を封止している上述した樹脂組成物の硬化物と、を含む。
【0073】
樹脂組成物を用いて素子(電子部品)を封止する方法は特に限定されず、公知の方法を適用することが可能である。例えば、低圧トランスファ成形法が一般的であるが、インジェクション成形、圧縮成形、注型等を用いてもよい。
【0074】
半導体装置の形態は特に制限されない。例えば、IC(Integrated Circuit、集積回路)、LSI(Large-Scale Integration、大規模集積回路)等として好適である。
【実施例0075】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、表中の数値は特に断りのない限り「質量部」を意味する。また、表1中の空欄は、未配合、未測定又は未評価を意味する。
【0076】
(樹脂組成物の調製)
表1に示す配合の材料を予備混合(ドライブレンド)した後、二軸混練機(内部温度:約100℃)で混練した。エポキシ樹脂と硬化剤の当量比は1:1とした。混練後の混合物を冷却し、粉砕して粉末状の樹脂組成物を製造した。
【0077】
表1中の材料の詳細は、それぞれ以下の通りである。
エポキシ樹脂1:ビスフェノール型エポキシ樹脂、融点66℃、エポキシ当量192g/eq
エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂、軟化点106℃、エポキシ当量186g/eq
硬化剤:フェノール硬化剤としてのヒドロキシベンズアルデヒド・フェノール重縮合物とホルムアルデヒド・フェノール重縮合物の混合物、軟化点80℃、水酸基当量104g/eq
硬化促進剤:トリn-ブチルホスフィンの1,4-ベンゾキノン付加体
シラン化合物1:γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
シラン化合物2:ジメトキシジフェニルシラン
離型剤:モンタン酸エステルワックス
着色剤:カーボンブラック
ハイドロタルサイト化合物:Mg/Al=3.0のハイドロタルサイト様化合物、平均粒子径:0.4μm、比表面積:15m/g
シリコーン化合物1:側鎖型エポキシ-ポリエーテル変性シリコーンオイル
シリコーン化合物2:式(a)~(c)で表される構造を有し、末端の少なくとも一部がケイ素原子に結合したアルコキシ基であり、エポキシ当量が1660g/eqであり、軟化点が80℃であるシリコーン化合物
無機充填材1: 平均一次粒子径12nmの乾式シリカ粒子
無機充填材2: 平均粒子径(D50)19.4μmの溶融シリカ粒子
無機充填材3: 平均粒子径(D50)8.5μmのアルミナ粒子
【0078】
(硬化物の作製)
上記で得られた樹脂組成物を用いて、トランスファ成形機により、金型温度175℃~180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形し、次いで、175℃で6時間の後硬化を実施して、硬化物の試験片を得た。
【0079】
(抽出液の評価)
耐圧容器中にイオン交換水50gと樹脂組成物の硬化物の粉砕粉5gを投入し、121℃、2気圧下で20時間放置後の抽出液のイオン濃度(ppm)をイオンクロマトグラフィーを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0080】
(スパイラルフロー)
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、樹脂組成物をトランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒間の条件で成形して流動距離(cm)を求めた。
【0081】
(熱時硬度)
樹脂組成物をトランスファ成型機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒間の条件で成形した。その後、金型を成型機から速やかに取り出して型開きしてから10秒後に試験金型中央のカル部にショアD硬度計の針を押し付けて熱時硬度を求めた。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示すように、樹脂組成物がハイドロタルサイト化合物とケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物とを含む実施例1は、樹脂組成物がハイドロタルサイト化合物を含むがケイ素原子に結合したアルコキシ基を含有するシリコーン化合物を含まない比較例1に比べて硬化物からの有機イオン(HCOO及びCHCOO)の溶出が抑制されていた。