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特開2024-64723免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064723
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7008 20060101AFI20240507BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240507BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61K31/7008
A61P37/04
A61K8/60
A61Q19/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173522
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】水本 俊行
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 弘恭
(72)【発明者】
【氏名】エン チグン
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 大剛
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC642
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD192
4C083AD202
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD391
4C083AD392
4C083AD412
4C083AD512
4C083AD532
4C083AD552
4C083AD662
4C083BB55
4C083CC04
4C083CC32
4C083CC38
4C083DD31
4C083EE50
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA52
4C086MA57
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB21
(57)【要約】
【課題】安全性の高い天然物由来の化合物の中から免疫賦活作用、貪食能活性化作用またはTNF-α産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とする免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤を提供する。
【解決手段】本発明の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤の有効成分として、フルクトシルアルギニンを用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルクトシルアルギニンを有効成分とすることを特徴とする免疫賦活剤。
【請求項2】
フルクトシルアルギニンを有効成分とすることを特徴とする貪食能活性化剤。
【請求項3】
フルクトシルアルギニンを有効成分とすることを特徴とする腫瘍壊死因子(TNF-α)産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性の高い天然物由来の化合物を有効成分とする免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の健康に対する意識はますます高まりを見せている。一方で、現代社会には、不規則な生活習慣、食事の偏り、精神的ストレス等、免疫機構にダメージを与える要因が氾濫している。このようにして免疫力が低下することにより、癌、感染症、アレルギー症状等の各種疾患が誘発されることが知られている。
【0003】
免疫機構には多くの種類の細胞が関与しているが、特に白血球の役割は大きく、中でもマクロファージは免疫応答の初期段階での働きを含め、あらゆる段階に関与している重要な白血球の一種である。例えば、マクロファージは、生体内に侵入した細菌やウイルス等の異物を摂取し(貪食能)、また、摂取した抗原を細胞表面に表出させる(抗原提示能)働きを有する。近年、白血球の働きが物質レベルで解明されてきており、白血球の機能や細胞間相互作用は、白血球が分泌する微量タンパク質(サイトカイン)によって担われることが分かってきている。
【0004】
サイトカインには多くの種類があり、中でも、腫瘍壊死因子(TNF-α)に代表される炎症性サイトカインは、主にマクロファージから放出される。TNF-αの産生促進は、免疫賦活の指標の一つとされており、腫瘍に対する免疫作用の強化や、直接的な抗腫瘍効果、Th1細胞とTh2細胞とのバランス改善によるとされるアレルギー性疾患の改善効果や免疫賦活作用などが知られている(特許文献1)。
【0005】
そのため、このような貪食能を活性化し、あるいはTNF-αの産生を促進し、免疫力を賦活することができれば、発癌抑制、制癌作用、抗感染症、抗アレルギー作用、更には体調リズムの回復・恒常性維持など、様々な効果が期待できる。
免疫賦活作用、なかでも貪食能活性化作用を有するものとして、例えば、マタタビ果実抽出物(特許文献2)等が知られている。また、TNF-α産生促進作用を有するものとしては、土貝母抽出物(特許文献3)、紅藤抽出物(特許文献4参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-131568号公報
【特許文献2】特開2009-046420号公報
【特許文献3】特開2006-056854号公報
【特許文献4】特開2009-091302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全性の高い天然物由来の化合物の中から免疫賦活作用、貪食能活性化作用またはTNF-α産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とする免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、フルクトシルアルギニンを有効成分とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フルクトシルアルギニンを有効成分とすることにより、作用効果に優れた免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、フルクトシルアルギニン(Fructosyl Arginine)を有効成分とするものである。
【0011】
〔フルクトシルアルギニン〕
フルクトシルアルギニンは、糖質とアミノ酸との反応により生成されるアマドリ化合物の一種である。なお、本実施形態において、フルクトシルアルギニンには、Nα-[1-デオキシ-β-D-フルクトピラノース-1-イル]-L-アルギニン、及びNα-[1-デオキシ-α-D-フルクトピラノース-1-イル]-L-アルギニンのアノマー炭素の配置が異なる構造を有する2種のものが含まれる。
【0012】
フルクトシルアルギニンは、アルギニンと、グルコースとを、酸の共存下でメイラード反応させることにより製造することができる。
また、フルクトシルアルギニンは、フルクトシルアルギニンを含む天然物または天然物の加工物から単離・精製することにより得られるものであってもよい。上記天然物の加工物としては、フルクトシルアルギニンを含む天然物を加工したもののほか、アルギニンおよびグルコースを含む天然物を加工することでメイラード反応を進行させてフルクトシルアルギニンを生成させたものなどを挙げることができる。天然物の加工物の具体例としては、生薬が修治されたもの;天然物(植物、動物、担子菌類等を含む)に乾燥処理、加熱処理、熱湯処理、水蒸気処理、燻蒸処理、燻製処理、発酵処理等が施されたもの等が挙げられる。このような天然物または天然物の加工物から、常法に従って、フルクトシルアルギニンを含む成分を抽出し、さらに精製・単離を経てフルクトシルアルギニンを得ることができる。
【0013】
メイラード反応によりフルクトシルアルギニンを製造する場合、具体的には、まず、アルギニンとグルコースとを、反応溶媒としての酸に溶解させる。
【0014】
アルギニンとグルコースとの反応溶媒への添加量は、アルギニン100質量部に対してグルコース1~1000質量部であるのが好ましく、50~300質量部であるのが好ましい。
【0015】
上記酸としては、アルギニンとグルコースとのメイラード反応の進行を妨げない限り特に限定されるものではないが、一般に酢酸、酪酸等の有機酸を用いることができる。なお、水溶液中で両者を反応させると、その反応効率が低下するおそれがあるため、氷酢酸等の無水状態で液状を示す酸を反応溶媒として用いるのが好ましい。
【0016】
上記反応の温度条件としては、常温から沸点までの任意の温度であればよいが、反応速度、反応効率の点から60~80℃の温度条件であるのが好ましい。また、反応時間は、反応温度や反応溶媒として用いる酸の種類によって異なるが、通常5~300分程度であり、10~60分であるのが好ましい。
【0017】
反応終了後、不溶性の物質をろ過又は遠心分離して除去し、得られた濾液又は上清から反応溶媒を留去することにより、フルクトシルアルギニンを含む粗精製物を得ることができる。
【0018】
このようにして得られる粗精製物を精製処理に供することで、フルクトシルアルギニンを得ることができる。精製は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。
【0019】
例えば、上記粗精製物を、陽イオン交換樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、陽イオン交換樹脂の約2~6倍容量の水、陽イオン交換樹脂の約4~8倍容量のアンモニア水溶液の順で溶出させ、アンモニア水溶液で溶出される画分を得る。
【0020】
さらに、上記のようにして得られたアンモニア水溶液画分を、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等に基づく、ペーパークロマトグラフィー(PC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、オープンカラムクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分取HPLC、分取リサイクルHPLC等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製することにより、フルクトシルアルギニンを得ることができる。
【0021】
〔免疫賦活剤,貪食能活性化剤,TNF-α産生促進剤〕
以上のようにして得られるフルクトシルアルギニンは、優れた免疫賦活作用、貪食能活性化作用および腫瘍壊死因子(TNF-α)産生促進作用を有しているため、免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤の有効成分として用いることができる。言い換えると、免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤を製造するために、フルクトシルアルギニンを使用することができる。
【0022】
本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品、経口組成物等の幅広い用途に使用することができる。ここで、本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、それぞれ、フルクトシルアルギニンの免疫賦活作用、貪食能活性化作用およびTNF-α産生促進作用に関する表示を付した剤であることが好ましい。
【0023】
ここで、フルクトシルアルギニンが有する免疫賦活作用は、例えば、貪食能活性化作用および/またはTNF-α産生促進作用に基づいて発揮される。ただし、フルクトシルアルギニンが有する免疫賦活作用は、上記作用に基づいて発揮される免疫賦活作用に限定されるものではない。
【0024】
本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤の有効成分として、単離したフルクトシルアルギニンに替えて、フルクトシルアルギニンを含有する組成物を用いてもよい。ここで、本実施形態における「フルクトシルアルギニンを含有する組成物」には、フルクトシルアルギニンを含有する天然物を抽出原料として得られる抽出物、フルクトシルアルギニンを含有する天然物加工物、および当該天然物加工物を抽出原料として得られる抽出物などが含まれる。また、「抽出物」には、抽出処理により得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、または当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物などが含まれる。
【0025】
本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、フルクトシルアルギニンのみからなるものでもよいし、フルクトシルアルギニンを製剤化したものでもよい。
【0026】
本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、他の組成物(例えば、皮膚外用剤、経口組成物等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0027】
本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤を製剤化した場合、フルクトシルアルギニンの含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0028】
なお、本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、それぞれ、免疫賦活作用、貪食能活性化作用およびTNF-α産生促進作用の有効成分として、フルクトシルアルギニンのみを用いることができ、また、必要に応じて、免疫賦活作用、貪食能活性化作用またはTNF-α産生促進作用を有する他の天然抽出物等を、フルクトシルアルギニンとともに配合して有効成分として用いることができる。
【0029】
本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0030】
本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、有効成分であるフルクトシルアルギニンが有する貪食能活性化作用および/またはTNF-α産生促進作用を通じて、免疫力を賦活化することができる。ただし、本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、これらの用途以外にも貪食能活性化作用および/またはTNF-α産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0031】
また、本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、それぞれ優れた免疫賦活作用、貪食能活性化作用およびTNF-α産生促進作用を有するため、例えば、後述する皮膚外用剤や経口組成物に配合するのに好適である。この場合に、フルクトシルアルギニンをそのまま配合してもよいし、フルクトシルアルギニンから製剤化した免疫賦活剤、貪食能活性化剤またはTNF-α産生促進剤を配合してもよい。
【0032】
また、本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、それぞれ優れた免疫賦活作用、貪食能活性化作用およびTNF-α産生促進作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【0033】
〔皮膚外用剤への配合〕
フルクトシルアルギニンは、優れた免疫賦活作用、貪食能活性化作用およびTNF-α産生促進作用を有しているため、皮膚外用剤に配合するのに好適である。この場合、フルクトシルアルギニンをそのまま配合してもよいし、フルクトシルアルギニンを製剤化した免疫賦活剤、貪食能活性化剤またはTNF-α産生促進剤を配合してもよい。これにより、免疫賦活用途、貪食能活性化用途またはTNF-α産生促進用途に好適な皮膚外用剤とすることができる。換言すると、皮膚外用剤への配合は、免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤の好適な用途の一つである。
【0034】
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される医薬品、医薬部外品、化粧料等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、美容液、ローション、ジェル、美容オイル、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアトニック、ヘアローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0035】
皮膚外用剤における上記有効成分の配合量は、皮膚外用剤の種類に応じて適宜調整することができるが、例えば、フルクトシルアルギニンの好適な配合率(フルクトシルアルギニンの質量換算)は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
【0036】
本実施形態の皮膚外用剤は、フルクトシルアルギニンが有する免疫賦活作用、貪食能活性化作用またはTNF-α産生促進作用を妨げない限り、通常の皮膚外用剤の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0037】
本実施形態の皮膚外用剤は、フルクトシルアルギニンが有する免疫賦活作用、貪食能活性化作用およびTNF-α産生促進作用の少なくとも1以上の作用を通じて、免疫力を賦活化することができる。
【0038】
〔経口組成物への配合〕
フルクトシルアルギニンは、優れた免疫賦活作用、貪食能活性化作用およびTNF-α産生促進作用を有しているため、経口組成物に配合するのに好適である。この場合、フルクトシルアルギニンをそのまま配合してもよいし、フルクトシルアルギニンから製剤化した免疫賦活剤、貪食能活性化剤またはTNF-α産生促進剤を配合してもよい。これにより、免疫賦活用途、貪食能活性化用途またはTNF-α産生促進用途に好適な経口組成物とすることができる。換言すると、経口組成物への配合は、免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤の好適な用途の一つである。
【0039】
ここで、経口組成物とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「経口組成物」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。本実施形態に係る経口組成物は、当該経口組成物またはその包装に、フルクトシルアルギニンが有する好ましい作用を表示することのできる経口組成物であることが好ましく、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品および医薬品であることが特に好ましい。
【0040】
フルクトシルアルギニン、またはフルクトシルアルギニンから製剤化した免疫賦活剤、貪食能活性化剤もしくはTNF-α産生促進剤を経口組成物に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる経口組成物の一般的な摂取量を考慮して、フルクトシルアルギニンの成人1日あたりの摂取量が約0.01~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象となる経口組成物が顆粒状、錠剤状又はカプセル状の経口組成物の場合、フルクトシルアルギニン、またはフルクトシルアルギニンから製剤化した免疫賦活剤、貪食能活性化剤もしくはTNF-α産生促進剤の添加量は、添加対象経口組成物に対し、フルクトシルアルギニンの質量に換算して通常0.000001~100質量%であり、好ましくは0.00001~100質量%である。
【0041】
本実施形態の経口組成物は、フルクトシルアルギニンをその活性を妨げないような任意の経口組成物に配合したものであってもよいし、フルクトシルアルギニンを主成分とする栄養補助食品であってもよい。
【0042】
本実施形態の経口組成物を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類などの任意の助剤を添加して任意の形状の経口組成物にすることができる。
【0043】
フルクトシルアルギニンを配合し得る経口組成物は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などが挙げられる。これらの経口組成物にフルクトシルアルギニンを配合するときには、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【0044】
なお、本実施形態の免疫賦活剤、貪食能活性化剤およびTNF-α産生促進剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
【実施例0045】
以下、製造例、試験例、配合例等を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0046】
〔製造例1〕フルクトシルアルギニンの製造
グルコース(1.0g)とアルギニン(1.0g)とを精密分析用酢酸(10mL)に溶解させ、沸騰水浴上にて1時間加熱攪拌した。得られた溶液を濃縮し、乾燥した後、陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120B,オルガノ社製)を充填したカラムに供し、水、4容量%アンモニア水溶液の順にて溶出させ、アンモニア水溶液画分として粗フルクトシルアルギニン(1.07g)を得た。
【0047】
このようにして得られた画分を、順相カラムクロマトグラフィー(ChromatorexNH,富士シリシア化学社製)にて70%アセトニトリルを溶媒として分画し、フルクトシルアルギニン画分(1.03g)を得た。このようにして得られたフルクトシルアルギニン画分(1.03g)を下記条件の分取リサイクルHPLCにて精製し、フルクトシルアルギニン(315mg)を得た(試料1)。
【0048】
<HPLC条件>
固定相:JAIGEL GS-310(日本分析工業社製)
カラム長:500mm
カラム径:21.5mm
温度:室温
移動相:水
移動相流速:5mL/min
検出器:RI
【0049】
〔試験例1〕マクロファージ貪食能活性化作用試験
フルクトシルアルギニン(試料1)について、以下のようにしてマクロファージ貪食能活性化作用を試験した。
【0050】
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、セルスクレーパーにより回収した。回収した細胞を1.5×106 cells/wellの濃度になるように6wellプレートに1well当たり1.8mLずつ播種し、4時間培養した。
【0051】
培養終了後、10%FBS含有DMEMで溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表1を参照)を各wellに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有DMEMを用いて同様の操作を行った。
【0052】
培養終了後、培地を除去し、2000倍に希釈した蛍光ビーズ(Fluoresbrite YG carboxylate microspheres,2μm;Polyscience社製)を含む新しい10%FBS含有DMEMを各wellに1.0mL添加し、1時間37℃で静置培養した。培養終了後、培地を除去し、0.1%NaN-PBS(-)1mLを加え反応を止めた。次にPBS(-)1mLで洗浄後、セルスクレーパーにより回収した。細胞を単一にするためセルストレーナーを通し、フローサイトメトリー用のサンプルとした。
【0053】
マクロファージによるビーズ貪食はフローサイトメーター(FC500,Beckman Coulter社製)を用いて測定し、解析ソフト(Kaluza 1.3,Beckman Coulter社製)を用いて解析を行った。得られた結果から、下記式によりビーズ貪食能活性化率(%)を算出した。
【0054】
マクロファージ貪食能活性化率(%)= A / B × 100
A:被験試料添加時のビーズ貪食率(貪食細胞率または貪食能)
B:被験試料無添加時のビーズ貪食率(貪食細胞率または貪食能)
結果を表1に示す。なお、上記式および下記表1中、「貪食細胞率」は、全カウント細胞数のうち1つ以上ビーズを貪食していた細胞数を割合で表したものであり、「貪食能」は、貪食細胞率に貪食ビーズ数による係数を掛けたものである。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、フルクトシルアルギニン(試料1)は、優れたマクロファージ貪食能活性化作用を有することが確認された。また、マクロファージ貪食能活性化作用の程度は、フルクトシルアルギニンの濃度によって調節できることが確認された。
【0057】
〔試験例2〕腫瘍壊死因子(TNF-α)産生促進作用試験
フルクトシルアルギニン(試料1)について、以下のようにして腫瘍壊死因子(TNF-α)産生促進作用を試験した。
【0058】
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を、10%FBS含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて培養した後、セルスクレーパーにより回収した。回収した細胞を1.5×106 cells/wellの濃度になるように6wellプレートに1well当たり1.8mLずつ播種し、4時間培養した。
【0059】
培養終了後、10%FBS含有DMEMで溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表2を参照)を各wellに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の終濃度0.5%DMSOを含む10%FBS含有DMEMを用いて同様の操作を行った。培養終了後、各wellの培養上清中のTNF-α量を、サンドイッチELISA法を用いて測定し、測定結果から下記式によりTNF-α産生促進率(%)を算出した。
【0060】
TNF-α産生促進率(%)= A / B × 100
A:被験試料添加時のTNF-α量
B:被験試料無添加時のTNF-α量
結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示すように、フルクトシルアルギニン(試料1)は、優れたTNF-α産生促進作用を有することが確認された。
【0063】
〔配合例1〕
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
フルクトシルアルギニン 0.01g
ホホバオイル 4.00g
1,3-ブチレングリコール 3.00g
アルブチン 3.00g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
オリーブオイル 2.00g
スクワラン 2.00g
セタノール 2.00g
モノステアリン酸グリセリル 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
グリチルレチン酸ステアリル 0.10g
黄杞エキス 0.10g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
イチョウ葉エキス 0.10g
コンキオリン 0.10g
オウバクエキス 0.10g
カミツレエキス 0.10g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0064】
〔配合例2〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
フルクトシルアルギニン 0.05g
クジンエキス 0.1g
オウゴンエキス 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
スクワラン 10.0g
セタノール 3.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
油溶性甘草エキス 0.1g
1,3-ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0065】
〔配合例3〕
下記組成の美容液を常法により製造した。
フルクトシルアルギニン 0.01g
カミツレエキス 0.1g
ニンジンエキス 0.1g
キサンタンガム 0.3g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
カルボキシビニルポリマー 0.1g
1,3-ブチレングリコール 4.0g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
グリセリン 2.0g
水酸化カリウム 0.25g
香料 0.01g
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
エタノール 2.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0066】
〔配合例4〕
下記組成のヘアトニックを常法により製造した。
フルクトシルアルギニン 0.4g
酢酸トコフェロール 適量
セファラチン 0.002g
イソプロピルメチルフェノール 0.1g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.15g
グリセリン 15.0g
エタノール 15.0g
香料 適量
キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量
防腐剤(ヒノキチオール) 適量
可溶化剤(ポリオキシエチレンセチルエーテル) 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
【0067】
〔配合例5〕
下記組成のシャンプーを常法により製造した。
フルクトシルアルギニン 0.5g
マジョラム抽出物 1.0g
ウメ果実部抽出物 0.2g
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0g
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.0g
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0g
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0g
プロピレングリコール 2.0g
香料 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
【0068】
〔配合例6〕
常法により、以下の組成を有する錠剤を製造した。
フルクトシルアルギニン 5.0mg
ドロマイト(カルシウム20%、マグネシウム10%含有) 83.4mg
カゼインホスホペプチド 16.7mg
ビタミンC 33.4mg
マルチトール 136.8mg
コラーゲン 12.7mg
ショ糖脂肪酸エステル 12.0mg
【0069】
〔配合例7〕
常法により、以下の組成を有する経口液状製剤を製造した。
<1アンプル(1本100mL)中の組成>
フルクトシルアルギニン 0.3質量%
ソルビット 12.0質量%
安息香酸ナトリウム 0.1質量%
香料 1.0質量%
硫酸カルシウム 0.5質量%
精製水 残部(100質量%)