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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064983
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】超音波発生装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20240507BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H04R1/34 330B
H04R17/00 330L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116713
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2022172901
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年5月11日、2023年度超音波研究会(US)の予稿集として、ウェブサイト(https://www.ieice.org/▲~▼us/)に公開。 令和5年5月18日、2023年度超音波研究会(US)において公開。
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 諭
(72)【発明者】
【氏名】横山 広大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遼
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】笠島 崇
(72)【発明者】
【氏名】森田 剛
(72)【発明者】
【氏名】家入 匠生
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019FF04
5D019GG04
(57)【要約】
【課題】超音波の出力を向上できる超音波発生装置を提供する。
【解決手段】、超音波発生装置10は、超音波を発生する超音波発生源11と、超音波発生源11から発生した超音波を集束する超音波集束部12と、超音波集束部12によって集束された超音波を伝送する導波路13と、を備え、超音波集束部12は、超音波発生源11と対向して配置された第一反射面16と、第一反射面16と対向して配置された第二反射面17とを有し、第一反射面16は、超音波発生源11から発生した超音波を第二反射面17に向かって反射させ、第二反射面17は、第一反射面16にて反射された超音波を導波路13に向かって反射して導波路13の内部に導入し、導波路13は、第一反射面16から第二反射面17とは反対側に突出し、第一反射面16から導波路13の外周面13Bに沿って第二反射面17側に凹んだ凹部40が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発生する超音波発生源と、
前記超音波発生源から発生した超音波を集束する超音波集束部と、
前記超音波集束部によって集束された超音波を伝送する導波路と、を備え、
前記超音波集束部は、前記超音波発生源と対向して配置された第一反射面と、前記第一反射面と対向して配置された第二反射面とを有し、
前記第一反射面は、前記超音波発生源から発生した超音波を前記第二反射面に向かって反射させ、前記第二反射面は、前記第一反射面にて反射された超音波を前記導波路に向かって反射して前記導波路の内部に導入し、
前記導波路は、前記第一反射面から前記第二反射面とは反対側に突出し、前記第一反射面から前記導波路の外周面に沿って前記第二反射面側に凹んだ凹部が形成されている、超音波発生装置。
【請求項2】
前記凹部は、空隙である、請求項1に記載の超音波発生装置。
【請求項3】
前記凹部は、充填剤によって満たされており、
前記充填剤の音響インピーダンスは、前記超音波集束部の音響インピーダンス、及び前記導波路の音響インピーダンスのいずれとも異なっている、請求項1に記載の超音波発生装置。
【請求項4】
前記導波路と前記超音波集束部とは同一材料により一体に形成されている、請求項1に記載の超音波発生装置。
【請求項5】
前記導波路と前記超音波集束部とは別体に形成されて接合されており、
前記凹部は、接合された前記導波路と前記超音波集束部との間に形成されている、請求項1に記載の超音波発生装置。
【請求項6】
前記超音波発生源は、前記超音波発生源と前記第一反射面との対向方向に直交する径方向における前記第二反射面の周囲を囲う形状であり、
前記凹部は、前記超音波発生源の内周縁を、前記対向方向に延長した第一領域よりも内周側の領域に配置されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の超音波発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、診断や治療などの様々な用途で用いられる超音波発生装置が知られている。例えば下記特許文献1には、超音波を発生する超音波発生源と、超音波発生源で発生した超音波を集束する超音波集束部と、超音波集束部によって集束された超音波を伝送する導波路と、を備えた超音波発生装置が記載されている。超音波発生源で発生した超音波は、導波路の先端まで伝送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/028249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような超音波発生装置は、超音波の出力を向上させたいという要望がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、超音波の出力を向上できる超音波発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波発生装置は、超音波を発生する超音波発生源と、前記超音波発生源から発生した超音波を集束する超音波集束部と、前記超音波集束部によって集束された超音波を伝送する導波路と、を備え、前記超音波集束部は、前記超音波発生源と対向して配置された第一反射面と、前記第一反射面と対向して配置された第二反射面とを有し、前記第一反射面は、前記超音波発生源から発生した超音波を前記第二反射面に向かって反射させ、前記第二反射面は、前記第一反射面にて反射された超音波を前記導波路に向かって反射して前記導波路の内部に導入し、前記導波路は、前記第一反射面から前記第二反射面とは反対側に突出し、前記第一反射面から前記導波路の外周面に沿って前記第二反射面側に凹んだ凹部が形成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、超音波出力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】超音波発生装置の基本構成を説明する図であって、超音波発生源から発生した超音波が第一反射面に向かって直進するイメージを示す図
図2】超音波発生装置の基本構成を説明する図であって、第一反射面にて反射された超音波が焦点に向かって集束するイメージを示す図
図3】実施例1における超音波発生装置を示す概略断面図
図4】実施例2における超音波発生装置を示す概略断面図
図5】実施例3における超音波発生装置を示す概略断面図
図6】実施例4における超音波発生装置を示す概略断面図
図7】実施例5における超音波発生装置を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
[1]本発明の超音波発生装置は、超音波を発生する超音波発生源と、前記超音波発生源から発生した超音波を集束する超音波集束部と、前記超音波集束部によって集束された超音波を伝送する導波路と、を備え、前記超音波集束部は、前記超音波発生源と対向して配置された第一反射面と、前記第一反射面と対向して配置された第二反射面とを有し、前記第一反射面は、前記超音波発生源から発生した超音波を前記第二反射面に向かって反射させ、前記第二反射面は、前記第一反射面にて反射された超音波を前記導波路に向かって反射して前記導波路の内部に導入し、前記導波路は、前記第一反射面から前記第二反射面とは反対側に突出し、前記第一反射面から前記導波路の外周面に沿って前記第二反射面側に凹んだ凹部が形成されている。このような構成によれば、超音波出力を向上できる。
[2]上記[1]に記載された超音波発生装置において、前記凹部は、空隙であるものとしてもよい。空気の音響インピーダンスは、超音波集束部及び導波路の音響インピーダンスと大きく異なる。したがって、導波路に伝搬する超音波への悪影響を効果的に抑制できる。
[3]上記[1] に記載された超音波発生装置において、前記凹部は、充填剤によって満たされており、前記充填剤の音響インピーダンスは、前記超音波集束部の音響インピーダンス、及び前記導波路の音響インピーダンスのいずれとも異なっているものとしてもよい。このような構成によれば、導波路に伝搬する超音波への悪影響を効果的に抑制できる。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載された超音波発生装置において、前記導波路と前記超音波集束部とは同一材料により一体に形成されているものとしてもよい。このような構成によれば、別体の導波路と超音波集束部とを接合した場合と比較して、導波路に導入される超音波の損失を低減できるから、超音波出力を向上できる。
[5]上記[1]から[3]のいずれかに記載された超音波発生装置において、前記導波路と前記超音波集束部とは別体に形成されて接合されており、前記凹部は、接合された前記導波路と前記超音波集束部との間に形成されているものとしてもよい。このような構成によれば、導波路は、超音波集束部と別の部材であるから、超音波発生源及び超音波集束部を共通化しつつ、用途に応じて導波路を変えることができる。したがって、用途に応じて最適な導波路を用いやすくできる。また、凹部によって、導波路に伝搬する超音波への悪影響を抑制できるから、超音波出力を向上できる。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載された超音波発生装置において、前記超音波発生源は、前記超音波発生源と前記第一反射面との対向方向に直交する径方向における前記第二反射面の周囲を囲う形状であり、前記凹部は、前記超音波発生源の内周縁を、前記対向方向に延長した第一領域よりも内周側の領域に配置されているものとしてもよい。このような構成によれば、凹部は、第一領域よりも内周側の領域に配置されているから、超音波発生源から発生して第一反射面へ向かう超音波の伝播領域に重ならない。したがって、凹部は、超音波発生源から発生する超音波の伝播を妨げないから、超音波出力を向上できる。
【0010】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について、図1図3を参照しつつ詳細に説明する。本実施例における超音波発生装置10は、超音波診断装置、超音波治療装置、キャビテーション発生装置、などに用いられる。
【0011】
まず、超音波発生装置10の基本構成について説明する。超音波発生装置10は、図1に示すように、超音波発生源11と、超音波集束部12と、導波路13と、を備えている。超音波発生源11は、超音波を発生する。超音波集束部12は、超音波発生源11から発生した超音波を集束する。導波路13は、超音波集束部12によって集束された超音波を伝送する。導波路13によって伝送された超音波は、対象物に照射される。対象物は特に限定されず、例えば生体内であってもよい。対象物に照射された超音波は、対象物で反射し、対象物の画像情報を乗せた超音波として導波路13内に戻る。対象物の画像情報を乗せた超音波は、導波路13及び超音波集束部12を介して超音波発生源11に戻る。画像情報を乗せた超音波に応じた電気信号は、信号送受信回路によって受信され、受信された信号に含まれる画像情報は、信号表示装置に表示される。なお、画像情報を含む超音波に基づいて画像表示を行う技術は、超音波診断装置などに用いられる公知技術を採用し得る。
【0012】
超音波発生源11は、例えば、圧電素子である。超音波発生源11は、所定の厚さ寸法を有する板状に形成されている。超音波発生源11は、第一主面14と、第一主面14とは反対側の第二主面15とを有している。第一主面14及び第二主面15には、図示しない電極が配置されている。第一主面14は、図示しない接着剤によって超音波集束部12に接着されている。
【0013】
超音波発生源11は、図示しない信号送受信回路から電気信号を与えられると超音波を発生する。超音波発生源11から発生した超音波は、図1に示すように、矢印A2方向に直進する平面波である。矢印A2は、超音波発生源11から発生した超音波の進行方向を示す。矢印A2は、軸A1と平行である。超音波発生源11は、例えば、30kHz以上の周波数で超音波を発生させる。以下、各構成部材において、図1の矢印A2が指し示す方向を上方、その反対方向を下方として説明する。
【0014】
超音波集束部12は、第一反射面16及び第二反射面17を備えている。第一反射面16は、超音波発生源11と対向して配置されている。第一反射面16と超音波発生源11との対向方向は、軸A1の延び方向と平行である。第一反射面16は、超音波集束部12の外部から見ると、上側(超音波発生源11とは反対側)に凸な放物面である。第一反射面16は、超音波集束部12の内部から見ると凹型である。第一反射面16の中心部は、第一反射面16の外周縁16Bよりも上方に位置している。第一反射面16は、軸A1を回転軸として構成される回転放物面である。
【0015】
第二反射面17は、第一反射面16と対向して配置されている。上記実施例において第二反射面17は、超音波集束部12の外部から見ると、下側(第一反射面16とは反対側)に凸な放物面である。第二反射面17は、超音波集束部12の内部から見ると凹型である。第二反射面17の中心部は、第二反射面17の外周縁17Bよりも下方に位置している。第二反射面17は、軸A1を回転軸として構成される回転放物面である。
【0016】
超音波発生源11から発生した超音波は、図2に示すように、第一反射面16で反射し、第一反射面16の焦点Fsに向かって集束する。焦点Fsを通過した超音波は、第二反射面17で反射し、第二反射面17の焦点Fsに向かって集束する。第二反射面17の焦点Fsは、第一反射面16の焦点Fsと一致している。第二反射面17で反射し、焦点Fsを通過した超音波は、平面波として導波路13の内部に導入される。焦点Fsは、軸A1上に位置している。
【0017】
次に、超音波発生装置10の詳細を説明する。超音波発生源11は、軸A1を中心とする円環状である。超音波発生源11は、第二反射面17の周囲を囲っている。超音波発生源11の第一主面14は、上下方向において、第二反射面17の外周縁17Bと同じ位置に配置されている。超音波発生源11の内周縁11Aは、第二反射面17の外周縁17Bから、軸A1と直交する径方向の外側に離間している。超音波発生源11の外周縁11Bは、第一反射面16の外周縁16Bから軸A1と直交する径方向の内側に離間している。第一反射面16の外周縁16B及び第二反射面17の外周縁17Bは、下側から見ると、軸A1を中心とする同心の円形状である。超音波発生源11の内周縁11A及び外周縁11Bは、第一主面14の外周縁及び内周縁である。
【0018】
超音波集束部12は、中実の金属(例えばジェラルミン)によって形成されている。超音波集束部12は、球の一部を構成するようなドーム状をなしている。超音波集束部12は、超音波発生源11との接着面18を有している。接着面18は、第二反射面17の外周縁17Bから第一反射面16の外周縁16Bまで軸A1に直交する径方向外側に広がっている。接着面18は、軸A1に直交する平坦面である。接着面18は、軸A1を中心として第二反射面17の周囲を囲う円環状である。第二反射面17は、接着面18よりも下側に形成されている。
【0019】
導波路13と超音波集束部12とは同一材料により一体に形成されている。導波路13は、第一反射面16の中心部から軸A1に沿って上方に突出している。導波路13の下端面は、導入面19である。導入面19は、後述する凹部40によって、第一反射面16の上端16Uよりも下方に位置している。超音波は、導入面19から導波路13の内部に導入される。導入面19は、軸A1と直交している。
【0020】
導入面19は、軸A1を中心とする円形状である。導入面19の軸A1に直交する径寸法B1は、第二反射面17の軸A1に直交する径寸法B2よりも小さい。導入面19の外周縁19Bは、軸A1と直交する方向において第二反射面17の外周縁17Bよりも内側に位置している。
【0021】
凹部40は、導波路13と第一反射面16との間に形成されている。凹部40は、第一反射面16から導波路13の外周面13Bに沿って下側(第二反射面17側)に凹んでいる。凹部40は、上方に開放されている。凹部40は、上方から見ると、導波路13の外周面13Bに沿って全周に連続した円環状をなしている。凹部40は、空気によって満たされている。凹部40があることによって、導波路13を通過する超音波の出力のピークは、凹部40がないものと比べて数倍になる。
【0022】
凹部40は、第1面41、第2面42及び第3面43を有している。第1面41は、凹部40の下面である。第2面42は、凹部40のうち軸A1を中心とする径方向内側の面である。第2面42は、第一反射面16の上端16Uと同じ高さ位置から下側の部分である。第3面43は、凹部40のうち軸A1を中心とする径方向外側の面である。
【0023】
第1面41は、軸A1と直交する平坦面である。第1面41は、上方から見ると、軸A1を中心とする円環状である。第2面42及び第3面43は、軸A1を中心とした円筒状である。第2面42は、導波路13の外周面13Bから連続して第1面41まで延びている。第3面43は、導波路13の外周面13Bから径方向の外側に離れた位置に形成されている。第3面43の上端は、第一反射面16の上端16Uと一致している。第3面43の軸A1に直交する径寸法B3は、後述する第一領域27の軸A1に直交する径寸法B6よりも小さい。第3面43の径寸法B3は、第3面43の上端から下端まで一定である。
【0024】
凹部40の幅寸法B4は、上端から下端まで一定である。凹部40の幅寸法B4は、第1面41と第2面42との間の軸A1に直交する方向の間隔である。凹部40の幅寸法B4は、凹部40の上端と下端とにおいて等しい。
【0025】
凹部40の深さ寸法B7は、ある程度深い方が好ましい。凹部40の深さ寸法B7は、凹部40の上端から下端までの軸A1に平行な距離である。凹部40の上端は、第3面43の上端である。凹部40の下端は、第2面42及び第3面43の下端と一致している。凹部40の深さ寸法B7は、超音波集束部12を構成する材料の音速、周波数、及び導波路13の太さ等に基づいて最適な寸法を設定するとよい。凹部40の深さ寸法B7は、例えば0.5mm以上であるとよい。凹部40の深さ寸法B7は、後述する第二領域29に触れない寸法に設定されている。
【0026】
凹部40は、超音波の伝播領域に重ならないように配置されている。具体的には、凹部40は、超音波発生源11から発生して第一反射面16へ向かう超音波の伝播領域と、第一反射面16から焦点Fsに集束する超音波の伝播領域と、に重ならない。
【0027】
超音波発生源11から発生して第一反射面16へ向かう超音波の伝播領域は、第一領域27よりも外周側の領域である。第一領域27は、超音波発生源11の内周縁11Aを、超音波発生源11と第一反射面16との対向方向に延長した領域である。第一領域27は、超音波発生源11の内周縁11Aを通って軸A1と平行をなす全ての直線によって構成されている。第一領域27は、軸A1を中心とした円筒形状をなしている。
【0028】
凹部40は、第一領域27よりも内周側に配置されている。凹部40の全体は、第一領域27から内側に離間している。
【0029】
第一反射面16から焦点Fsに集束する超音波の伝播領域は、第二領域29よりも外周側の領域である。第二領域29は、第一仮想線28から第一反射面16の焦点Fsへと延びる領域である。第二領域29は、第一仮想線28上の全ての点と焦点Fsとを通る線分によって構成されている。第一仮想線28は、第一領域27と第一反射面16とが交差する線である。第一仮想線28は、超音波発生源11の内周縁11Aを、第一反射面16上に軸A1と平行に投影した線である。第一仮想線28は、軸A1を中心とした円形状をなしている。第二領域29は、軸A1を中心とした直円錐の側面形状をなしている。第二領域29の軸A1に直交する径寸法B5は、下側から上側へ向かって次第に大きくなっている。
【0030】
凹部40は、第二領域29よりも内周側の領域の上部に配置されている。凹部40の全体は、第二領域29から離間している。凹部40の第3面43の径寸法B3は、第1面41より上側の第二領域29の径寸法B5よりも小さい。
【0031】
上記のように構成された実施例によれば、以下の効果を奏する。超音波発生装置10は、超音波発生源11と、超音波集束部12と、導波路13と、を備えている。超音波発生源11は、超音波を発生する。超音波集束部12は、超音波発生源11から発生した超音波を集束する。導波路13は、超音波集束部12によって集束された超音波を伝送する。超音波集束部12は、第一反射面16と、第二反射面17とを有している。第一反射面16は、超音波発生源11と対向して配置されている。第二反射面17は、第一反射面16と対向して配置されている。第一反射面16は、超音波発生源11から発生した超音波を第二反射面17に向かって反射させる。第二反射面17は、第一反射面16にて反射された超音波を導波路13に向かって反射して導波路13の内部に導入する。導波路13は、第一反射面16から第二反射面17とは反対側に突出している。導波路13と第一反射面16との間には、第一反射面16から導波路13の外周面13Bに沿って第二反射面17側に凹んだ凹部40が形成されている。この構成によれば、超音波出力を向上できる。発明者の検討の結果、第二反射面17を反射した波の広がりが小さい状態で導波路13内に進入することができる事や、第二反射面17を反射した波の一部が再度第一反射面16に反射されることで、第二反射面17を反射した波と干渉する事を抑制できる事が理由だと考察されている。
【0032】
凹部40は、空隙である。空気の音響インピーダンスは、超音波集束部12及び導波路13の音響インピーダンスと大きく異なる。したがって、導波路13に伝搬する超音波への悪影響を効果的に抑制できる。
【0033】
導波路13と超音波集束部12とは同一材料により一体に形成されている。この構成によれば、別体の導波路と超音波集束部とを接合した場合と比較して、導波路13に導入される超音波の損失を低減できるから、超音波出力を向上できる。
【0034】
超音波発生源11は、超音波発生源11と第一反射面16との対向方向に直交する径方向における第二反射面17の周囲を囲う形状である。凹部40は、超音波発生源11の内周縁11Aを、対向方向に延長した第一領域27よりも内周側の領域に配置されている。凹部40は、第一領域27よりも内周側の領域に配置されているから、超音波発生源11から発生して第一反射面16へ向かう超音波の伝播領域に重ならない。したがって、凹部40は、超音波発生源11から発生する超音波の伝播を妨げないから、超音波出力を向上できる。
【0035】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2に係る超音波発生装置10を図4によって説明する。本実施例の超音波発生装置10は、凹部40の第3面43を傾斜させた点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
本実施例に係る超音波発生装置10は、実施例1と同様に、超音波を発生する超音波発生源11と、超音波発生源11から発生した超音波を集束する超音波集束部12と、超音波集束部12によって集束された超音波を伝送する導波路13と、を備え、導波路13と第一反射面16との間には、第一反射面16から導波路13の外周面13Bに沿って下側に凹んだ凹部40が形成されている。
【0037】
凹部40は、実施例1と同様、第1面41、第2面42及び第3面43を有している。第3面43は、上端から下端に向かって導波路13に接近する傾斜面である。第3面43の径寸法B3は、第3面43の上端から下端に向かって次第に小さくなっている。凹部40の幅寸法B4は、上端から下端に向かって次第に小さくなっている。凹部40は、実施例1と同様、超音波の伝播領域に重ならないように配置されている。
【0038】
以上のように本実施例においては、実施例1と同様、導波路13と第一反射面16との間に凹部40が形成されているから、導波路13に伝搬する超音波への悪影響を抑制でき、もって超音波出力を向上できる。
【0039】
<実施例3>
次に、本発明を具体化した実施例3に係る超音波発生装置10を図5によって説明する。本実施例の超音波発生装置10は、凹部40の第2面42を傾斜させた点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
本実施例に係る超音波発生装置10は、実施例1と同様に、超音波を発生する超音波発生源11と、超音波発生源11から発生した超音波を集束する超音波集束部12と、超音波集束部12によって集束された超音波を伝送する導波路13と、を備え、導波路13と第一反射面16との間には、第一反射面16から導波路13の外周面13Bに沿って下側に凹んだ凹部40が形成されている。
【0041】
凹部40は、実施例1と同様、第1面41、第2面42及び第3面43を有している。第2面42は、上端から下端に向かって導波路13の太さを増す方向に傾いている。凹部40の幅寸法B4は、上端から下端に向かって次第に小さくなっている。導入面19の径寸法B1は、導波路13のうち第一反射面16より上側の部分の太さよりも大きい。凹部40は、実施例1と同様、超音波の伝播領域に重ならないように配置されている。
【0042】
以上のように本実施例においては、実施例1と同様、導波路13と第一反射面16との間に凹部40が形成されているから、導波路13に伝搬する超音波への悪影響を抑制でき、もって超音波出力を向上できる。
【0043】
<実施例4>
次に、本発明を具体化した実施例4に係る超音波発生装置10を図6によって説明する。本実施例の超音波発生装置10は、凹部40を充填剤45によって満たした点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0044】
本実施例に係る超音波発生装置10は、実施例1と同様に、超音波を発生する超音波発生源11と、超音波発生源11から発生した超音波を集束する超音波集束部12と、超音波集束部12によって集束された超音波を伝送する導波路13と、を備え、導波路13と第一反射面16との間には、第一反射面16から導波路13の外周面13Bに沿って下側に凹んだ凹部40が形成されている。
【0045】
凹部40は、充填剤45によって満たされている。充填剤45は、凹部40の全周にわたり下端から上端まで隙間なく充填されている。充填剤45の音響インピーダンスと超音波集束部12の音響インピーダンスは異なっている。充填剤45の音響インピーダンスと導波路13の音響インピーダンスとは異なっている。
【0046】
充填剤45は、合成樹脂製である。充填剤45としては、シリコンゴム等を用いてもよい。充填剤45は、材料をスラリー化して凹部40に充填してもよい。充填剤45は、液状やゲル状の材料を凹部40に流し込んで形成してもよい。充填剤45は、個体の部品を凹部40に嵌め込んで形成してもよい。例えば充填剤45は、中空のリング状をなす部品であってもよい。
【0047】
以上のように本実施例においては、実施例1と同様、導波路13と第一反射面16との間に凹部40が形成されているから、導波路13に伝搬する超音波への悪影響を抑制でき、もって超音波出力を向上できる。
【0048】
凹部40は、充填剤45によって満たされている。充填剤45の音響インピーダンスは、超音波集束部12の音響インピーダンス、前記導波路13の音響インピーダンスのいずれとも異なっている。この構成によれば、導波路13に伝搬する超音波への悪影響を効果的に抑制できる。
【0049】
<実施例5>
次に、本発明を具体化した実施例5に係る超音波発生装置10を図7によって説明する。本実施例の超音波発生装置10は、導波路13と超音波集束部12とを別体に形成し、接合部22にて導波路13と超音波集束部12とを接合した点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0050】
本実施例に係る超音波発生装置10は、実施例1と同様に、超音波を発生する超音波発生源11と、超音波発生源11から発生した超音波を集束する超音波集束部12と、超音波集束部12によって集束された超音波を伝送する導波路13と、を備え、導波路13と第一反射面16との間には、第一反射面16から導波路13の外周面13Bに沿って下側に凹んだ凹部40が形成されている。凹部40は、実施例1と同様、第1面41、第2面42及び第3面43を有し、超音波の伝播領域に重ならないように配置されている。
【0051】
導波路13は、超音波集束部12と別の部材である。導波路13は、中実の柱状である。導波路13は、接合部22にて超音波集束部12に接合されている。接合部22は、第一反射面16の中心部を凹ませて形成されている。接合部22は、接合面24と内周面25とを有している。
【0052】
接合面24は、接合部22の底面である。接合面24は、軸A1と直交する平坦面である。接合面24は、軸A1を中心とする円形状である。内周面25は、軸A1を中心とした円筒状である。
【0053】
導波路13の下端部は、導入部21である。導入部21は、導入面19を含んでいる。導入部21は、接合部22に差し込まれている。導入部21と接合部22とは、接着剤22Aによって固定されている。接着剤22Aは、熱によって軟化したり、融解したりしにくい材料を用いている。接合部22において導入面19と接合面24とは対向する。導入面19と接合面24との間は、超音波を伝搬する媒質26で満たされている。これによって、導入面19と接合面24との間に空隙が形成されることを防止できる。
【0054】
凹部40は、導波路13と超音波集束部12とを接合した状態において、接合部22の内周面25と導入部21との間に形成されている。接合面24のうち導入面19を囲う部分は、凹部40の第1面41を構成している。導入部21の外周面は、凹部40の第2面42を構成している。接合部22の内周面25は、凹部40の第3面43を構成している。
【0055】
第3面43の径寸法B3は、内周面25の軸A1に直交する径寸法と一致している。凹部40の幅寸法B4は、導入部21の外周面と接合部22の内周面25との間の軸A1に直交する方向の間隔と一致している。
【0056】
接着剤22Aは、凹部40を満たす充填剤である。接着剤22Aは、凹部40の全周にわたり下端から上端まで隙間なく充填されている。接着剤22Aの音響インピーダンスと超音波集束部12の音響インピーダンスとは異なっている。接着剤22Aの音響インピーダンスと導波路13の音響インピーダンスとは異なっている。
【0057】
以上のように本実施例においては、実施例1と同様、導波路13と第一反射面16との間に凹部40が形成されているから、導波路13に伝搬する超音波への悪影響を抑制でき、もって超音波出力を向上できる。
【0058】
導波路13と超音波集束部12とは別体に形成されて接合されている。凹部40は、接合された導波路13と超音波集束部12との間に形成されている。この構成によれば、導波路13は、超音波集束部12と別の部材であるから、超音波発生源11及び超音波集束部12を共通化しつつ、用途に応じて導波路13を変えることができる。したがって、用途に応じて最適な導波路13を用いやすくできる。また、凹部40によって導波路13に伝搬する超音波への悪影響を抑制できるから、超音波出力を向上できる。
【0059】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例において第一反射面16及び第二反射面17は放物面である。これに限らず、第一反射面及び第二反射面の両方もしくは一方は、厳密な放物面でなくともよく、近似的に放物面とみなせる形状であればよい。言い換えると、第一反射面及び第二反射面の両方もしくは一方は、超音波発生源から発生した超音波が第一反射面および第二反射面を経由して導波路へと到達するように湾曲した面であればよい。第一反射面及び第二反射面は、多数の微小な平面で構成されていてもよい。
(2)上記実施例において超音波発生源11は圧電セラミック材料からなる圧電素子である。これに限らず、超音波発生源は、他の圧電材料を用いることができる。超音波発生源は、例えば圧電セラミック材料の積層体などであってもよい。
(3)上記実施例において導入面19を第二反射面17に平行投影すると、導入面19の全体は第二反射面17内に収まっている。これに限らず、導入面の一部は第二反射面の外側にはみ出してもよい。
(4)上記実施例において導波路13および超音波集束部12はそれぞれ中実である。これに限らず、導波路及び超音波集束部は中実でなくてもよい。例えば、導波路及び超音波集束部の内部に、貫通孔や流路が形成されていてもよい。具体的には、導波路は、上下方向に延びた筒状をなしていてもよい。超音波集束部には、導波路の内部空間と連通して上下方向に貫通孔が形成されていてもよい。
(5)上記実施例において、超音波集束部12は球の一部を構成するようなドーム状をなしている。これに限らず、超音波集束部は、図示の断面形状を超音波発生源と第一反射面との対向方向と直交する方向(例えば紙面奥行き方向)に延ばした形状であってもよい。
(6)上記実施例において導波路13は、軸A1に沿って上方に延びた柱状をなしている。これに限らず、導波路は、図示の断面形状を超音波発生源と第一反射面との対向方向と直交する方向(例えば紙面奥行き方向)に延ばした壁状であってもよい。
(7)上記実施例において第二反射面17は、接着面18よりも下側に形成されている。これに限らず、第二反射面は接着面から上側に凹んでいてもよい。この場合、第二反射面は、超音波集束部の外部から見ると、上側(第一反射面側)に凸な放物面であってよい。この場合であっても、超音波発生源から発生した超音波は、第一反射面及び第二反射面で反射し、平面波として導波路の内部に導入される。またこの場合、超音波発生源は、中心部に開口を有さない円形の板状であってもよい。
(8)上記実施例において凹部40は、導波路13の外周面13Bに沿って全周に連続した環状をなしている。これに限らず、凹部は、導波路の外周面の周方向の一部に形成されたスリットであってもよい。この場合、凹部は、導波路の外周面に沿って所定の間隔をあけて複数形成されてもよい。
(9)上記実施例において第1面41は軸A1と直交する平坦面である。これに限らず、第1面は、軸を中心とした径方向に傾斜していてもよい。
(10)上記実施例において第2面42及び第3面43は上方から見ると導波路13と同心の円形状である。これに限らず、第2面及び第3面を上方からみた形状は、導波路と異なる形状であってもよく、略楕円形や略方形等であってもよい。
(11)上記実施例の第2面42及び第3面43は、図示断面において直線状をなしている。これに限らず、第2面及び第3面は図示断面において湾曲していてもよい。
(12)上記実施例5において導波路13と超音波集束部12とは圧入など、加圧によって固定されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…超音波発生装置
11…超音波発生源
11A…内周縁
11B…外周縁
12…超音波集束部
13…導波路
13B…外周面
14…第一主面
15…第二主面
16…第一反射面
16B…外周縁
16U…上端
17…第二反射面
17B…外周縁
18…接着面
19…導入面
19B…外周縁
21…導入部
22…接合部
22A…接着剤
24…接合面
25…内周面
26…媒質
27…第一領域
28…第一仮想線
29…第二領域
40…凹部
41…第1面
42…第2面
43…第3面
45…充填剤
A1…軸
A2…矢印
B1…導入面の径寸法
B2…第二反射面の径寸法
B3…第3面の径寸法
B4…凹部の幅寸法
B5…第二領域の径寸法
B6…第一領域の径寸法
B7…凹部の深さ寸法
Fs…焦点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7