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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064988
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】焼結体及びこれを含む部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240507BHJP
   C04B 35/563 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
C04B35/563
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023120907
(22)【出願日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0140204
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケー エンパルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK enpulse Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ミン、キョンヨル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨンス
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ソンシク
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョンイン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジュンクン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スマン
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BB23
5F004CA02
5F004CA03
5F004DA01
5F004DA23
5F004DA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エッチング対象に均一なプラズマ分布を誘導することができ、プラズマ耐エッチング性が向上した焼結体及びこれを含む部品を提供する。
【解決手段】焼結体は、炭化ホウ素を含み、全結晶粒に対して結晶粒サイズが30μm超60μm以下である結晶粒の体積比が50%~70%であり、X線蛍光分析による、全体に対する炭素の含量が30重量%~43重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ホウ素を含み、
表面で観察する際、全結晶粒に対して結晶粒サイズが30μm超60μm以下である結晶粒の体積比が50%~70%である部分を含み、
X線蛍光分析による、全体に対する炭素の含量が30重量%~43重量%である、焼結体。
【請求項2】
全結晶粒に対して結晶粒サイズが10μm以下である結晶粒の体積比が0.01%~1%である、請求項1に記載の焼結体。
【請求項3】
全結晶粒に対して結晶粒サイズが60μm超80μm以下である結晶粒の体積比が12%~20%である、請求項1に記載の焼結体。
【請求項4】
平均結晶粒サイズが30μm~70μmである、請求項1に記載の焼結体。
【請求項5】
ホウ素及び炭素の含量が97重量%以上である、請求項1に記載の焼結体。
【請求項6】
チャンバの圧力が100mTorrであり、プラズマ電力が800Wであり、露出時間が300分であり、前記チャンバ内のCFガスの流量が50sccm、Arガスの流量が100sccm、Oガスの流量が20sccmであるプラズマエッチング条件において、下記式1によるエッチング率が1.8%以下である、請求項1に記載の焼結体。
[式1]
エッチング率={(エッチング前の厚さ-エッチング後の厚さ)/(エッチング後の厚さ)}×100%
【請求項7】
25℃の熱伝導度が23W/mK以上42W/mK以下である、請求項1に記載の焼結体。
【請求項8】
原料組成物を成形した成形体を500℃~1000℃の温度で熱処理する炭化ステップと、
前記炭化ステップの後に、2100℃~2300℃の温度で熱処理する第1焼結ステップと、
前記第1焼結ステップの後に、2200℃~2320℃の温度で熱処理する第2焼結ステップとを含み、
前記原料組成物は、炭化ホウ素、炭素系物質及び焼結特性改善剤を含む、焼結体の製造方法。
【請求項9】
前記原料組成物は、
炭化ホウ素、炭素系物質、焼結特性改善剤及び溶媒を含む原料スラリーを噴霧乾燥して得た原料顆粒である、請求項8に記載の焼結体の製造方法。
【請求項10】
前記第1焼結ステップ及び第2焼結ステップは0.2MPa以下の圧力で行われ、
前記第1焼結ステップは0.5時間~2時間行われ、
前記第2焼結ステップは1時間~3時間行われる、請求項8に記載の焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具現例は、プラズマ耐エッチング性が向上した焼結体及びこれを含むプラズマ処理装置の部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置は、チャンバの内部に上部電極及び下部電極が配置されており、下部電極上に半導体ウエハ、ガラス基板などが載置され、両電極間に電力を印加して動作する。上部電極と下部電極との間の電界によって加速された電子、電極から放出された電子、または加熱された電子が処理ガスの分子と電離衝突して、処理ガスのプラズマが発生する。このプラズマ中のラジカルやイオンのような活性種は、エッチング対象の表面に所望の微細加工を実現するようにし、例えば、エッチング加工を行うことができる。
【0003】
微細電子素子などの製造設計がますます微細化され、特にプラズマエッチングでは、より一層高い寸法精度が要求されており、顕著に高い電力が用いられている。このようなプラズマ処理装置には、プラズマの影響を受けるフォーカスリング(Focus Ring)が内蔵されている。
【0004】
プラズマ電力が高くなると、定在波が形成される波長効果、及び電極の表面において電界が中心部に集中する表皮効果などが形成され得る。これによって、プラズマ分布が、概ね、エッチング対象の中心部が極大となり、縁部位が最も低くなることで、基板上のプラズマ分布の不均一性がひどくなることがあり、微細電子素子の品質が低下するおそれがある。
【0005】
エッチング対象の外郭でエッチング対象を載置するフォーカスリングを介して、外郭の電場分布に影響を与えることができ、プラズマ分布の不均一性をある程度緩和することができる。しかし、プラズマ処理時間に比べてフォーカスリングのエッチング率が高い方であり、エッチングによってプラズマ分布にも影響を及ぼすことがある。このようなフォーカスリングの耐エッチング性及び交換周期を高めることができ、工程の効率化を達成することができる改善案が必要である。
【0006】
関連する先行技術として、韓国登録特許第10-2262340号に開示された"炭化ホウ素素材"、韓国公開特許第10-2020-0019068号に開示された"炭化ホウ素焼結体及びこれを含むエッチング装置"などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
具現例の目的は、エッチング対象に均一なプラズマ分布を誘導することができ、プラズマ耐エッチング性が向上した焼結体及びこれを含む部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、具現例に係る焼結体は、
炭化ホウ素を含み、
表面で観察する際、全結晶粒に対して結晶粒サイズが30μm超60μm以下である結晶粒の体積比が50%~70%である部分を含み、
X線蛍光分析による、全体に対する炭素の含量が30重量%~43重量%であってもよい。
【0009】
一具現例において、全結晶粒に対して結晶粒サイズが10μm以下である結晶粒の体積比が0.01%~1%であってもよい。
【0010】
一具現例において、全結晶粒に対して結晶粒サイズが60μm超80μm以下である結晶粒の体積比が12%~20%であってもよい。
【0011】
一具現例において、平均結晶粒サイズが30μm~70μmであってもよい。
【0012】
一具現例において、ホウ素及び炭素の含量が97重量%以上であってもよい。
【0013】
一具現例において、チャンバの圧力が100mTorrであり、プラズマ電力が800Wであり、露出時間が300分であり、前記チャンバ内のCFガスの流量が50sccm、Arガスの流量が100sccm、Oガスの流量が20sccmであるプラズマエッチング条件において、下記式1によるエッチング率が1.8%以下であってもよい。
【0014】
[式1]
エッチング率={(エッチング前の厚さ-エッチング後の厚さ)/(エッチング後の厚さ)}×100%
【0015】
一具現例において、25℃の熱伝導度が23W/mK以上42W/mK以下であってもよい。
【0016】
上記の目的を達成するために、具現例に係る焼結体の製造方法は、
原料組成物を成形した成形体を500℃~1000℃の温度で熱処理する炭化ステップと、
前記炭化ステップの後に、2100℃~2300℃の温度で熱処理する第1焼結ステップと、
前記第1焼結ステップの後に、2200℃~2320℃の温度で熱処理する第2焼結ステップとを含み、
前記原料組成物は、炭化ホウ素、炭素系物質及び焼結特性改善剤を含むことができる。
【0017】
一具現例において、前記原料組成物は、
炭化ホウ素、炭素系物質、焼結特性改善剤及び溶媒を含む原料スラリーを噴霧乾燥して得た原料顆粒であってもよい。
【0018】
一具現例において、前記第1焼結ステップ及び第2焼結ステップは0.2MPa以下の圧力で行われ、
前記第1焼結ステップは0.5時間~2時間行われ、
前記第2焼結ステップは1時間~3時間行われてもよい。
【0019】
上記の目的を達成するために、具現例に係る部品は、
前記の焼結体を含み、
プラズマ処理装置の内部に適用されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
具現例に係る焼結体は、粗大結晶粒による線欠陥が減少して、プラズマエッチング時に不純物パーティクルの発生を低減させることができ、優れたプラズマ耐エッチング性を有することができ、プラズマ耐エッチング性を安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は、実験例の電解エッチング前の実施例1の焼結体の表面を示した走査電子顕微鏡写真であり、(b)は、実験例の電解エッチング後の実施例1の焼結体の表面を示した走査電子顕微鏡写真であり、(c)は、実験例の電解エッチング後の実施例1の焼結体の表面の走査電子顕微鏡写真において識別可能な結晶粒を色で区別して示した図である。
図2】(a)は、実験例のプラズマエッチング後の実施例1のサンプルの状態を示した写真であり、(b)は、実験例のプラズマエッチング後の比較例1のサンプルの状態を示した写真である。
図3】(a)は、電解エッチング前の実施例1の焼結体の表面及び組成の測定位置を示した図であり、(b)は、電解エッチング後の実施例1の焼結体の表面及び組成の測定位置を示した図である。
図4】(a)は、プラズマエッチング前の実施例1の表面状態を示した図であり、(b)は、プラズマエッチング後の実施例1の表面状態を示した図である。
図5】(a)は、プラズマエッチング前の比較例1の表面状態を示した図であり、(b)は、プラズマエッチング後の比較例1の表面状態を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、一つ以上の具現例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、具現例は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。明細書全体にわたって類似の部分に対しては同一の図面符号を付した。
【0023】
本明細書において、ある構成が他の構成を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、それ以外の他の構成を除くものではなく、他の構成をさらに含むこともできることを意味する。
【0024】
本明細書において、ある構成が他の構成と「連結」されているとするとき、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、「それらの間に他の構成を介在して連結」されている場合も含む。
【0025】
本明細書において、A上にBが位置するという意味は、A上に直接当接してBが位置するか、またはそれらの間に他の層が位置しながらA上にBが位置することを意味し、Aの表面に当接してBが位置することに限定されて解釈されない。
【0026】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0027】
本明細書において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、または、A及びB」を意味する。
【0028】
本明細書において、「第1」、「第2」又は「A」、「B」のような用語は、特に説明がない限り、同一の用語を互いに区別するために使用される。
【0029】
本明細書において、単数の表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数又は複数を含む意味で解釈される。
【0030】
焼結体
前記の目的を達成するために、具現例に係る焼結体は、
炭化ホウ素を含み、
表面で観察する際、全結晶粒に対して結晶粒サイズが30μm超60μm以下である結晶粒の体積比が50%~70%である部分を含み、
X線蛍光分析による、全体に対する炭素の含量が30重量%~43重量%であってもよい。
【0031】
前記焼結体の炭化ホウ素は、実質的にBCであってもよい。
【0032】
前記焼結体は、炭化ホウ素をベースとして、炭化ホウ素と別個の所定の炭素を含み、一部のケイ素、炭化ケイ素(Si)、酸素、酸化ホウ素などをさらに含むことができる。前記焼結体の炭素、炭化ケイ素などは二次相の形態で存在することもできる。
【0033】
前記焼結体は炭化ホウ素結晶粒を含むことができ、前記炭化ホウ素結晶粒は、前記焼結体の表面でも観察され得る。
【0034】
前記焼結体は、従来の炭化ホウ素焼結体と比較して粗大な平均結晶粒サイズを有することができる。
【0035】
前記焼結体は、全結晶粒に対して結晶粒サイズが30μm超60μm以下である結晶粒の体積比が50%~70%であってもよく、または55%~65%であってもよい。
【0036】
前記焼結体は、全結晶粒に対して結晶粒サイズが10μm以下である結晶粒の体積比が0.01%~1%であってもよく、または0.01%~0.81%であってもよい。
【0037】
前記焼結体は、全結晶粒に対して結晶粒サイズが20μm以下である結晶粒の体積比が2%~14%であってもよく、または1%~10%であってもよい。
【0038】
前記焼結体は、全結晶粒に対して結晶粒サイズが60μm超80μm以下である結晶粒の体積比が12%~20%であってもよく、または14%~18%であってもよい。
【0039】
前記焼結体は、全結晶粒に対して結晶粒サイズが40μm超である結晶粒の体積比が44%~65%であってもよく、または49%~60%であってもよい。
【0040】
前記焼結体は、全結晶粒に対して結晶粒サイズが70μm超である結晶粒の体積比が8%~15%であってもよく、または9.1%~13.7%であってもよい。
【0041】
前記焼結体は、平均結晶粒サイズが30μm~70μmであってもよく、または45μm~65μmであってもよい。
【0042】
前記焼結体の結晶粒サイズの分析は、下記実験例に記載された方法を通じて行われ得、表面で観察したものを基準とすることができる。
【0043】
このような結晶粒の特徴を有する焼結体は、線欠陥が減少して、プラズマエッチング時に不純物パーティクルの発生を低減させることができ、優れたプラズマ耐エッチング性を有することができ、プラズマ耐エッチング性を維持するのに役立ち得る。
【0044】
前記焼結体は、ホウ素及び炭素(B、C)を基準として、純度が97%以上であってもよく、99%以上であってもよく、または99.2%以上であってもよい。
【0045】
前記純度は、X線蛍光分析(XRF)による重量を基準として評価する。
【0046】
前記焼結体は、X線蛍光分析(XRF)による、全体に対する炭素の含量が30重量%~43重量%であってもよく、または32重量%~40重量%であってもよい。このような炭素の含量は、炭化ホウ素(BC)の化学量論的炭素含量(21.72重量%)に炭素がさらに追加されたことを示すことができる。また、これは、製造時に焼結過程で炭化ホウ素の結合関係に一部変化が生じるか、または製造時に原料に添加された炭素系物質の影響によって現れる結果でもあり得る。
【0047】
前記焼結体は、X線蛍光分析による、全体に対するホウ素の含量が55重量%~68重量%であってもよく、または56重量%~66重量%であってもよい。このようなホウ素の含量は、上述したように、炭素がさらに追加されたことによるものであるか、または製造時に原料に添加された炭素系物質によって現れる結果であり得る。
【0048】
前記焼結体は、X線蛍光分析による、全体に対する酸素の含量が0.1重量%~0.9重量%であってもよく、または0.3重量%~0.7重量%であってもよい。
【0049】
前記焼結体は、X線蛍光分析による、全体に対するケイ素の含量が0.05重量%~0.5重量%であってもよく、または0.1重量%~0.4重量%であってもよい。
【0050】
前記焼結体は、このようなその他の元素の含量を有することによって、緻密化に肯定的な役割を行うことができる。
【0051】
前記焼結体は、金属性不純物が400ppm以下含まれてもよく、または200ppm以下含まれてもよい。前記金属性不純物は、ナトリウム、アルミニウム、カルシウム、鉄、ニッケルなどを含むことができる。
【0052】
前記焼結体は、曲げ強度が365MPa~547MPaであってもよく、または410MPa~502MPaであってもよい。
【0053】
前記焼結体は、ビッカース硬度が26.1GPa~39.1GPaであってもよく、または29.3GPa~35.9GPaであってもよい。
【0054】
前記焼結体は、圧縮強度が549MPa~823MPaであってもよく、または617MPa~755MPaであってもよい。
【0055】
前記焼結体は、弾性係数が308GPa~424GPaであってもよく、または347GPa~424GPaであってもよい。
【0056】
前記焼結体は、ポアソン比が0.175~0.263であってもよく、または0.197~0.241であってもよい。
【0057】
前記焼結体は、25℃の熱伝導度が23W/mK以上42W/mK以下であってもよく、または30W/mK~40W/mKであってもよい。
【0058】
前記焼結体は、25℃~400℃で熱膨張係数が3.34×10-6/K~5.02×10-6/Kであってもよく、または3.76×10-6/K~4.60×10-6/Kであってもよい。
【0059】
前記焼結体は、400℃~800℃で熱膨張係数が4.01×10-6/K~6.02×10-6/Kであってもよく、または4.52×10-6/K~5.52×10-6/Kであってもよい。
【0060】
前記焼結体は、比抵抗が0.05Ωcm~2Ωcmであってもよく、または0.1Ωcm~1Ωcmであってもよい。
【0061】
このような特徴を有する焼結体は、プラズマ処理装置の部品に適用する際に、良好な信頼性及び耐久性を示すことができ、プラズマ耐エッチング性の維持に役立ち得る。
【0062】
前記焼結体は、チャンバの圧力が100mTorrであり、プラズマ電力が800Wであり、プラズマ露出時間が300分であり、前記チャンバ内のCFガスの流量が50sccm、Arガスの流量が100sccm、Oガスの流量が20sccmであるプラズマエッチング条件において、下記式1によるエッチング率が1.8%以下であってもよい。
【0063】
[式1]
エッチング率={(エッチング前の厚さ-エッチング後の厚さ)/(エッチング後の厚さ)}×100%
【0064】
前記焼結体は、前記エッチング率が1.6%以下であってもよく、または1.55%以下であってもよい。
【0065】
前記焼結体は、このようなプラズマ耐エッチング性を有し、また、粗大結晶粒の特性を有することによって、プラズマ処理工程でパーティクルの発生を最大限抑制することができる。
【0066】
前記焼結体は、前記プラズマエッチング条件を基準として、化学気相蒸着法(CVD)により設けられた炭化ケイ素の前記エッチング率と比較して20%以上低減されたエッチング率を有することができ、または30%以上低減されたエッチング率を有することができる。
【0067】
前記焼結体は、相対密度が95%以上であってもよく、または97%以上であってもよい。前記相対密度は99.9%以下であってもよい。前記焼結体は、相対的に粗大な結晶粒サイズを示しながらも、優れた相対密度を有することができる。
【0068】
部品
前記の目的を達成するために、具現例に係る部品は、
前記の焼結体を含み、
プラズマ処理装置の内部に適用され得る。
【0069】
前記部品は、前記焼結体を、プラズマに露出され得る表面の一部に含んでいてもよく、または全域に含んでいてもよい。
【0070】
前記部品は、前記焼結体を表面に含むことができ、表面の内部は他のセラミック素材(炭化ケイ素、ケイ素など)を含むこともできる。
【0071】
前記部品は、プラズマエッチング過程でプラズマイオンの流れに影響を与えることができる部品であり得、例示的にフォーカスリングなどであってもよい。前記フォーカスリングは、プラズマ処理装置内にウエハが配置される際に、ウエハの縁部を支持するための支持体として適用され得る。
【0072】
前記部品は、前記の焼結体を含むことで、良好なプラズマ耐エッチング性を確保することができ、部品の交換頻度を低減することができ、収率に否定的な影響を与え得るパーティクルの発生を効果的に防止することができる。
【0073】
焼結体の製造方法
前記の目的を達成するために、具現例に係る焼結体の製造方法は、
原料組成物を成形した成形体を500℃~1000℃の温度で熱処理して、原料の一部が炭化した成形体を得る炭化ステップと、
前記炭化ステップの後に、2100℃~2300℃の温度で熱処理する第1焼結ステップと、
前記第1焼結ステップの後に、2200℃~2320℃の温度で熱処理する第2焼結ステップとを含み、
前記原料組成物は、炭化ホウ素、炭素系物質、焼結特性改善剤及び溶媒を含む原料スラリーを噴霧乾燥して得られる原料顆粒であってもよい。
【0074】
前記原料組成物の炭化ホウ素は粉末状であり得、粉末全体に対してホウ素及び炭素の含量が98重量%以上の純度を有する粉末であってもよい。
【0075】
前記原料組成物の炭素系物質は高分子樹脂であり得、高分子樹脂が炭化した形態であってもよい。例示的に、フェノール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などであってもよい。
【0076】
前記原料組成物の焼結特性改善剤は酸化ホウ素、バインダーなどを含むことができ、前記バインダーはアクリル系樹脂を含むことができる。
【0077】
前記原料組成物の溶媒は水、アルコール系物質などを含むことができ、前記原料スラリー全体を基準として60体積%~80体積%で含むことができる。
【0078】
前記原料スラリーは、ボールミルなどの撹拌過程を通じて製造され得、5時間~20時間の間高分子ボールなどを通じてボールミル撹拌過程が行われ得る。
【0079】
前記炭化ステップの成形体は、原料をモールドに注入し、加圧して得ることができ、冷間等方圧加圧(CIP)などを適用して得ることができる。このとき、圧力は100MPa~200MPaであってもよい。
【0080】
前記炭化ステップの成形体は、不必要な部分を除去する加工過程が適用され得る。
【0081】
前記第1焼結ステップの熱処理温度までの昇温は10時間~15時間行われてもよい。
【0082】
前記第1焼結ステップは0.5時間~2時間行われてもよい。
【0083】
前記第2焼結ステップの熱処理温度までの昇温は2時間~5時間行われてもよい。
【0084】
前記第2焼結ステップは1時間~3時間行われてもよい。
【0085】
前記第2焼結ステップの後に、常温に冷却する冷却ステップが行われ得、10時間~15時間行われてもよい。
【0086】
このような前記焼結ステップを通じて、相対的に粗大な結晶粒を有する焼結体を製造することができ、良好な緻密化度を達成することができる。
【0087】
前記第2焼結ステップを通じて得られた焼結体は、追加的に形状加工が適用され得る。
【0088】
前記第1焼結ステップは、前記熱処理温度に到達するまで所定の昇温速度が適用され得、前記昇温速度は1℃/分~10℃/分であってもよく、または2℃/分~5℃/分であってもよい。
【0089】
前記第2焼結ステップは、前記熱処理温度に到達するまで所定の昇温速度が適用され得、前記昇温速度は0.1℃/分~5℃/分であってもよく、または0.2℃/分~1℃/分であってもよい。
【0090】
前記第2焼結ステップの後に、冷却ステップで所定の降温速度が適用され得、前記降温速度は-10℃/分~-1℃/分であってもよく、または-5℃/分~-2℃/分であってもよい。
【0091】
前記第1焼結ステップ及び第2焼結ステップは、0.2MPa以下の圧力で行われ得、実質的に常圧(0.101MPa)で行われ得、0.05MPa以上の圧力で行われ得る。
【0092】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0093】
実施例1-焼結体の製造
全体100体積部に対して、China Abrasive社の炭化ホウ素粉末14体積部、エタノール溶媒70体積部を混合し、そして、前記粉末と溶媒を混合したものの100重量部に対して、フェノール樹脂19.2重量部、アクリル系バインダー2重量部を混合した組成物を配合機に入れ、ボールミル方式で混合して原料スラリーを用意した。この原料スラリーをノズルを介して噴霧乾燥処理して原料顆粒を得、モールドに装入して成形体を得た。この成形体を800℃の温度で熱処理して炭化ステップを行った。その後、昇温速度3℃/分で2200℃まで昇温させ、次いで、2200℃で1時間熱処理する第1焼結ステップを行った。その後、0.5℃/分で2300℃まで昇温させ、次いで、2300℃で2時間熱処理する第2焼結ステップを行った。その後、常温(25℃)まで3℃/分で冷却する冷却ステップを行って焼結体を製造した。
【0094】
比較例1-化学気相蒸着法で製造された炭化ケイ素
化学気相蒸着法(CVD)で製造されたKNJ社の炭化ケイ素を用意した。
【0095】
実験例-焼結体の電解エッチングを通じた結晶粒及び組成の分析
前記実施例1で製造された焼結体を、KOH2体積%溶液、流量12~20sccm、5秒、電圧40~51Vの条件下で電解エッチングを行い、その後、超音波洗浄を20分間行った。電解エッチングの前後の表面を、走査電子顕微鏡(SEM)を通じて、任意の3つの領域の表面位置を500~1000倍率で撮影し、結晶粒のサイズ別の体積比率を分析し、電解エッチングの前後において一部の位置(A、B、C、D、E、F)による組成を分析し、図1図3、表1、表2、表3などに示した。
【0096】
【0097】

【0098】

【0099】
図1(a)は、電解エッチング前の実施例1の焼結体の表面を示したものであり、図1(b)は、電解エッチング後の実施例1の焼結体の表面を示したものであり、図1(c)は、電解エッチング後の実施例1の焼結体の表面の識別可能な結晶粒を色で区別して示したものである。
【0100】
図3(a)は、電解エッチング前の実施例1の焼結体の表面及び組成の測定位置を示したものであり、図3(b)は、電解エッチング後の実施例1の焼結体の表面及び組成の測定位置を示したものである。
【0101】
表1及び図1の(a)~(c)を参照すると、実施例1の焼結体は、数十μmの粗大結晶粒が均一に分布しており、10μm以下の結晶粒はほとんどないことを確認することができる。
【0102】
表2、表3及び図3の(a)~(c)を参照すると、実施例1の焼結体は、電解エッチング前及びエッチング後の表面で炭化ホウ素だけでなく、炭化ケイ素、ガラス炭素などを確認することができる。
【0103】
実験例-X線蛍光分析(XRF)
前記実施例1及び比較例1の焼結体サンプルの組成のX線蛍光分光法(XRF)を、Rigaku社のZSX Primus機器を活用して行い、その結果を表4に示した。
【0104】
【0105】
表4を参照すると、実施例1の焼結体は、およそ60.91重量%のホウ素、38.35重量%の炭素を含み、一部の酸素、ケイ素などを含むことが分かる。
【0106】
実験例-プラズマエッチング率の測定
前記実施例1及び比較例1の焼結体サンプルのプラズマエッチング率を、次の条件で測定し、その結果を表4、表5、図4図5などに示した。
【0107】
プラズマエッチングの条件
チャンバの圧力:100mTorr、プラズマ電力:800W、露出時間:300分、CFガスの流量:50sccm、Arガスの流量:100sccm、Oガスの流量:20sccm
【0108】
図4の(a)は、プラズマエッチング前の実施例1の表面の状態を示したものであり、(b)は、プラズマエッチング後の実施例1の表面の状態を示したものである。
【0109】
図5の(a)は、プラズマエッチング前の比較例1の表面の状態を示したものであり、(b)は、プラズマエッチング後の比較例1の表面の状態を示したものである。
【0110】
【0111】
表5を参照すると、実施例1の場合、CVDで製造された炭化ケイ素よりもプラズマ耐エッチング性に優れることを確認することができる。
【0112】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】