(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064990
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】焼結体及び焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240507BHJP
C04B 35/14 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
C04B35/14
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122686
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0140205
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケー エンパルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK enpulse Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ミン、キョンヨル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨンス
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ソンシク
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ナヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョンイン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジュンクン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウジン
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BB29
5F004CA02
5F004CA03
5F004DA01
5F004DA23
5F004DA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた耐プラズマ特性を示す石英ガラスベースの焼結体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】焼結体は、酸化ケイ素及び炭素を含み、ラマンスペクトルにおいて、1311cm
-1~1371cm
-1の波数でDバンドピーク、及び1572cm
-1~1632cm
-1の波数でGバンドピークを有し、前記Dバンドピークまたは前記Gバンドピークは、前記ラマンスペクトルの1027cm
-1~1087cm
-1の波数で存在する第5ピークよりも大きい強度を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素及び炭素を含み、
ラマンスペクトルにおいて、1311cm-1~1371cm-1の波数でDバンドピーク、及び1572cm-1~1632cm-1の波数でGバンドピークを有し、
前記Dバンドピークまたは前記Gバンドピークは、前記ラマンスペクトルの1027cm-1~1087cm-1の波数で存在する第5ピークよりも大きい強度を有する、焼結体。
【請求項2】
前記DバンドピークまたはGバンドピークは、762cm-1~822cm-1の波数で存在する第4ピークよりも大きい強度を有する、請求項1に記載の焼結体。
【請求項3】
前記ラマンスペクトルにおいて、1212cm-1~1262cm-1の波数の平均強度が前記第5ピークの強度よりも大きい、請求項1に記載の焼結体。
【請求項4】
前記DバンドピークとGバンドピークの強度の比率Id/Igは0.9以上1.5以下である、請求項1に記載の焼結体。
【請求項5】
前記炭素の含量は、全体に対して0.01重量%以上1.5重量%以下である、請求項1に記載の焼結体。
【請求項6】
チャンバ内のプラズマエッチングの条件でエッチングした後の厚さの減少率が、エッチング前に対して1.38%以下であり、
前記プラズマエッチングの条件は、チャンバの圧力が100mTorr、プラズマ電力が800W、露出時間が300分、CF4の流量が50sccm、Arの流量が100sccm、O2の流量が20sccmである、請求項1に記載の焼結体。
【請求項7】
ASTM E1164に準拠したCIE L*a*b*色空間のL*値が0以上85以下である、請求項1に記載の焼結体。
【請求項8】
原料組成物を顆粒の形態に形成する顆粒ステップと、
前記顆粒の形態の原料組成物を成形し、炭化及び焼結する焼結ステップとを含み、
前記原料組成物は、酸化ケイ素、炭化用樹脂及び補助添加剤を含む、焼結体の製造方法。
【請求項9】
前記原料組成物全体に対して、前記炭化用樹脂の含量は0.1重量%以上8重量%以下である、請求項8に記載の焼結体の製造方法。
【請求項10】
前記補助添加剤は、
ポリアクリル酸系樹脂、ポリカルボン酸系樹脂、C10-C40のアルカン、脂肪酸アミド及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つを含む、請求項8に記載の焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具現例は、酸化ケイ素を含み、炭素を一部含む焼結体及び焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つである乾式エッチング方法として用いられるプラズマ処理方法は、フッ素系ガスなどを通じて目的物をエッチングする方法である。最近、電子素子の製造において設計がますます微細化され、特にプラズマ処理では、より一層高い寸法精度が要求されており、高い電力が用いられている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置には、プラズマに影響を受ける石英ガラス(quartz glass)部品が内蔵されていることがある。石英ガラスは、比較的不純物の発生が少ないため、エッチング対象物を汚染させることを防止することができる。プラズマ処理装置内のこのような石英ガラス関連の部品の寿命を延ばすために様々な研究が進められており、石英ガラスの限界点を改善して部品の寿命及び耐久性の向上のための方案に対して考慮する必要がある。
【0004】
前述した背景技術は、発明者が具現例の導出のために保有していた、または導出過程で習得した技術情報であって、必ずしも本発明の出願前に一般公衆に公開された公知技術であるとは限らない。
【0005】
関連する先行技術として、韓国登録特許第10-2388688号に開示された"合成クォーツ製造方法"、韓国公開特許第10-2006-0057618号に開示された"SiO2成形体、その製造方法及び用途"がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
具現例の目的は、優れた耐プラズマ特性を示す石英ガラスベースの焼結体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、具現例に係る焼結体は、
酸化ケイ素及び炭素を含み、
ラマンスペクトルにおいて、1311cm-1~1371cm-1の波数でDバンドピーク、及び1572cm-1~1632cm-1の波数でGバンドピークを有し、
前記Dバンドピークまたは前記Gバンドピークは、前記ラマンスペクトルの1027cm-1~1087cm-1の波数で存在する第5ピークよりも大きい強度を有することができる。
【0008】
一具現例において、前記DバンドピークまたはGバンドピークは、762cm-1~822cm-1の波数で存在する第4ピークよりも大きい強度を有することができる。
【0009】
一具現例において、前記ラマンスペクトルにおいて、1212cm-1~1262cm-1の波数の平均強度が前記第5ピークの強度よりも大きくてもよい。
【0010】
一具現例において、前記DバンドピークとGバンドピークの強度の比率Id/Igは0.9以上1.5以下であってもよい。
【0011】
一具現例において、前記焼結体は、圧縮強度が380MPa以上580MPa以下であってもよい。
【0012】
一具現例において、前記炭素の含量は、全体に対して0.01重量%以上1.5重量%以下であってもよい。
【0013】
一具現例において、前記焼結体は、チャンバ内のプラズマエッチングの条件でエッチングした後の厚さの減少率が、エッチング前に対して1.38%以下であり、
前記プラズマエッチングの条件は、チャンバの圧力が100mTorr、プラズマ電力が800W、露出時間が300分、CF4の流量が50sccm、Arの流量が100sccm、O2の流量が20sccmであってもよい。
【0014】
上記の目的を達成するために、具現例に係る焼結体の製造方法は、
原料組成物を顆粒の形態に形成する顆粒ステップと、
前記顆粒の形態の原料組成物を成形し、炭化及び焼結する焼結ステップとを含み、
前記原料組成物は、酸化ケイ素、炭化用樹脂及び補助添加剤を含むことができる。
【0015】
一具現例において、前記原料組成物全体に対して、前記炭化用樹脂の含量は0.1重量%以上8重量%以下であってもよい。
【0016】
一具現例において、前記顆粒ステップは、
前記原料組成物を噴霧乾燥して行われてもよい。
【発明の効果】
【0017】
具現例に係る石英ガラスベースの焼結体は、従来の合成石英ガラスと比較して向上したプラズマ耐食性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実験例で行った実施例1(E1)及び比較例1、2(CE1、CE2)のラマン分光法によって、波数による強度を示したラマンスペクトルのグラフである。
【
図2】実施例1(E1)及び比較例1、2(CE1、CE2)のサンプル写真である。
【
図3】実験例で行った実施例1(E1)及び比較例1、2(CE1、CE2)のXPS分析においてF1sスキャン(Scan)の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、一つ以上の具現例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、具現例は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。明細書全体にわたって類似の部分に対しては同一の図面符号を付した。
【0020】
本明細書において、ある構成が他の構成を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、それ以外の他の構成を除くものではなく、他の構成をさらに含むこともできることを意味する。
【0021】
本明細書において、ある構成が他の構成と「連結」されているとするとき、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、「それらの間に他の構成を介在して連結」されている場合も含む。
【0022】
本明細書において、A上にBが位置するという意味は、A上に直接当接してBが位置するか、またはそれらの間に他の層が位置しながらA上にBが位置することを意味し、Aの表面に当接してBが位置することに限定されて解釈されない。
【0023】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0024】
本明細書において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、または、A及びB」を意味する。
【0025】
本明細書において、「第1」、「第2」又は「A」、「B」のような用語は、特に説明がない限り、同一の用語を互いに区別するために使用される。
【0026】
本明細書において、単数の表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数又は複数を含む意味で解釈される。
【0027】
焼結体
前記の目的を達成するために、具現例に係る焼結体は、
酸化ケイ素及び炭素を含み、
ラマン分光法を通じて得られるラマンスペクトルにおいて、1311cm-1~1371cm-1の波数でDバンドピーク、及び1572cm-1~1632cm-1の波数でGバンドピークを有し、
前記Dバンドピーク及び/又は前記Gバンドピークは、前記ラマンスペクトルの1027cm-1~1087cm-1の波数で存在する第5ピークよりも大きい強度を有することができる。
【0028】
石英ガラスは、酸化ケイ素(SiO2)で構成されるガラスであって、低い熱膨張係数、化学的耐久性などにより半導体工程において重要な素材であるといえる。
【0029】
具現例では、所定の炭素がSi-O非晶質網目構造において一種の欠陥(defect)として適用され得る石英ガラス焼結体を発明し、従来の石英ガラスとは異なるラマンスペクトル、色度、透過率、反射率、プラズマ耐エッチング性、圧縮強度などを有することができる。
【0030】
前記焼結体のラマンスペクトルは、サーモサイエンティフィック(Thermo scientific)社のラマン分光測定装置DxR2を用いて得ることができ、具体的な条件は、下記実験例で後述する。
【0031】
一般の石英ガラス(CE1、CE2)のラマンスペクトルと、具現例の焼結体(E1)のラマンスペクトルとを
図1に比較した。これを参照すると、一般の石英ガラス及び具現例の焼結体のラマンスペクトルは、共通してSi-O関連のピークを有することを確認することができる。
【0032】
具体的に、421cm-1~441cm-1の波数に存在し、SiO2の振動と関連する第1ピーク、478cm-1~498cm-1の波数に存在し、4員(membered)、3員(membered)環で酸素原子の呼吸振動と関連する第2ピーク、582cm-1~622cm-1の波数に存在し、3員(membered)環で酸素原子の呼吸振動と関連する第3ピーク、762cm-1~822cm-1の波数に存在し、Si-O-Siブリッジの曲げと関連する第4ピーク、1027cm-1~1087cm-1の波数に存在し、Si-Oのストレッチングと関連する第5ピークを確認することができる。
【0033】
具現例の焼結体は、一般の合成石英ガラスと比較して、前記第5ピークの強度、及び1057cm-1以上の波数において傾向が異なることが分かる。一般の石英ガラスは、ラマンスペクトルの1192cm-1の波数付近で第6ピークが存在するが、具現例は、欠陥性(defective)炭素の影響により、この一帯で明確なピークが現れないことを確認できる。具現例の焼結体は、プラズマ耐エッチング性を向上させることができる構造的な差が存在することを確認できる。
【0034】
前記焼結体のラマンスペクトルにおいて前記Dバンドピークまたは前記Gバンドピークは、前記ラマンスペクトルの1027cm-1~1087cm-1の波数で存在する第5ピークよりも大きい強度を有することができる。前記Dバンドピークまたは前記Gバンドピークは、前記第5ピークよりも1.5倍以上の強度を有してもよく、2倍以上の強度を有してもよく、5倍以下の強度を有してもよい。このようなラマンスペクトルを示す焼結体は、欠陥性炭素により、さらに向上したプラズマ耐エッチング性を示すことができる。
【0035】
前記焼結体のラマンスペクトルにおいて前記DバンドピークまたはGバンドピークは、762cm-1~822cm-1の波数で存在する第4ピークよりも大きい強度を有することができる。前記Dバンドピークまたは前記Gバンドピークは、前記第4ピークよりも1.2倍以上の強度を有してもよく、1.5倍以上の強度を有してもよく、4倍以下の強度を有してもよい。このようなラマンスペクトルを示す焼結体は、欠陥性炭素により、さらに向上したプラズマ耐エッチング性を示すことができる。
【0036】
前記焼結体のラマンスペクトルにおいて前記DバンドピークとGバンドピークとの強度の比率Id/Igは0.9以上であってもよく、1.5以下であってもよい。このようなラマンスペクトルを示す焼結体は、欠陥性炭素がSi-Oの網目構造内に準安定的に位置することができる。
【0037】
前記焼結体のラマンスペクトルにおいて前記第5ピークの強度は、合成石英ガラス、商用石英ガラス(NIKON社のNIFS-S製品、TOSOH社のN製品)の第5ピークの強度よりも大きくなり得る。前記焼結体のラマンスペクトルにおいて1200cm-1~1700cm-1の波数による強度を積分したものは、600cm-1~1100cm-1の波数による強度を積分したものよりも大きくなり得る。このようなラマンスペクトルを示す焼結体は、特有の構造により、さらに向上したプラズマ耐エッチング性を示すことができる。
【0038】
前記焼結体のラマンスペクトルにおいて1212cm-1~1262cm-1の波数の平均強度が、1027cm-1~1087cm-1の波数で存在する第5ピークの強度よりも大きくなり得る。このようなラマンスペクトルを示す焼結体は、特有の構造により、さらに向上したプラズマ耐エッチング性を示すことができる。
【0039】
前記焼結体は、実質的に長範囲規則(long-range order)がなく、一部の短範囲規則が存在する非晶質構造を有することができる。
【0040】
前記焼結体は、CF4などのエッチングガスと焼結体の表面の炭素が一部反応して安定した高分子層を形成することもでき、プラズマ耐エッチング性をさらに向上させることができる。
【0041】
前記焼結体は、圧縮強度が380MPa以上580MPa以下であってもよく、または400MPa以上550MPa以下であってもよい。このような圧縮強度を有する焼結体は、プラズマエッチング装置内で安定的に位置することができる。
【0042】
前記焼結体の炭素の含量は、全体に対して0.01重量%以上1.5重量%以下であってもよく、0.2重量%以上1.3重量%以下であってもよく、または0.3重量%以上1重量%以下であってもよい。このような炭素含量を有することによって、非晶質石英ガラスの構造内に適切に分布することができ、プラズマ耐食性を確保することができる。
【0043】
前記焼結体は、前記酸化ケイ素、炭素以外のその他の不純物を含むことができる。
【0044】
前記焼結体の酸化ケイ素は、原料の酸化ケイ素成分であるSiO2に近接することができる。
【0045】
前記焼結体のケイ素の含量は、40重量%以上49重量%以下であってもよい。
【0046】
前記焼結体の酸素の含量は、47重量%以上56重量%以下であってもよい。
【0047】
前記焼結体は、チャンバ内のプラズマエッチングの条件でエッチングした後の厚さの減少率が、エッチング前に対して1.38%以下であってもよく、または1.35%以下であってもよい。前記厚さの減少率は、次のように計算され得る。
【0048】
[式1]
厚さの減少率%={(エッチング前の厚さ-エッチング後の厚さ)/エッチング前の厚さ}×100%
【0049】
前記プラズマエッチングの条件は、チャンバの圧力が100mTorr、プラズマ電力が800W、露出時間が300分、CF4の流量が50sccm、Arの流量が100sccm、O2の流量が20sccmである条件であってもよい。
【0050】
前記焼結体は、このような厚さの減少率(エッチング率)を有することによって、従来の石英ガラスと比較してさらに向上したプラズマ耐エッチング性を示すことができる。
【0051】
前記焼結体は、前記のようなプラズマエッチングの条件でエッチングした後の重量減少率が、エッチング前に対して1.4%以下であってもよく、または1.38%以下であってもよい。前記重量減少率は、次のように計算され得る。
【0052】
[式2]
重量減少率%={(エッチング前の重量-エッチング後の重量)/エッチング前の重量}×100%
【0053】
前記焼結体は、このような重量減少率を有することによって、従来の石英ガラスと比較してさらに向上したプラズマ耐エッチング性を示すことができる。
【0054】
前記焼結体は、前記のようなプラズマエッチングの条件でエッチングした後に生成されるフッ素の含量が、合成石英ガラスに比べて低くなり得る。
【0055】
前記焼結体は、前記のようなプラズマエッチングの条件でエッチングした後の炭素の減少量が、合成石英ガラスに比べて低くなり得る。
【0056】
前記焼結体は、25℃で比抵抗が4.1×1015Ωcm以上であってもよく、または4.4×1015Ωcm以上であってもよい。前記焼結体は、25℃で比抵抗が6.0×1015Ωcm以下であってもよく、または5.8×1015Ωcm以下であってもよい。
【0057】
前記焼結体は、ASTM E1164に準拠したCIE L*a*b*色空間のL*値が0以上であってもよく、10以上であってもよく、または15以上であってもよい。前記L*値は85以下であってもよく、60以下であってもよく、または35以下であってもよい。
【0058】
前記焼結体は、ASTM E1164に準拠したCIE L*a*b*色空間のa*値が1以上であってもよく、または2以上であってもよい。前記a*値は8以下であってもよく、または5以下であってもよい。
【0059】
前記焼結体は、ASTM E1164に準拠したCIE L*a*b*色空間のb*値が2以上であってもよく、または5以上であってもよい。前記b*値は20以下であってもよく、または15以下であってもよい。
【0060】
前記焼結体のこのようなL*、a*、b*値の範囲は、欠陥性炭素の影響によるものと考えられ、特に、一般の石英ガラスと比較してL*値で明確な差があり、暗色、黒色をさらに多く帯びることができる。このようなL*、a*、b*値の範囲を有する焼結体は、さらに向上したプラズマ耐食性を期待することができる。
【0061】
前記焼結体のCIE L*a*b*色空間の値は、下記実験例で記載したような方法で測定することができる。
【0062】
前記焼結体は、550nmの波長の光の反射率が1%以上であってもよく、または2%以上であってもよい。前記反射率は8%以下であってもよく、または6.5%以下であってもよい。
【0063】
前記焼結体は、550nmの波長の光の透過率が0.5%以上であってもよく、または1%以上であってもよい。前記透過率は30%以下であってもよく、または10%以下であってもよい。
【0064】
前記焼結体のこのような反射率及び透過率は、欠陥性炭素の影響によるものと考えられ、特に、一般の石英ガラスと比較して光の透過率で明確な差があり、透過率がさらに低い。このような光学特性を有する焼結体は、さらに向上したプラズマ耐食性を期待することができる。
【0065】
前記焼結体の反射率、透過率などの光学特性は、下記実験例で記載したような方法で測定することができる。
【0066】
前記焼結体の純度は、炭素、ケイ素、酸素を含むものを基準として99重量%以上であってもよく、または99.99重量%以上であってもよい。前記純度は99.9999重量%以下であってもよい。
【0067】
前記焼結体は、炭素以外に、マグネシウム、カリウム、カルシウム、クロム、鉄、ニッケル、バリウムなどの金属不純物を少量含むことができる。
【0068】
前記焼結体のマグネシウムの含量は、全重量に対して100ppb以上2500ppb以下であってもよい。
【0069】
前記焼結体のカリウムの含量は、全重量に対して500ppb以上2500ppb以下であってもよい。
【0070】
前記焼結体のカルシウムの含量は、全重量に対して1000ppb以上12000ppb以下であってもよい。
【0071】
前記焼結体のクロムの含量は、全重量に対して100ppb以上1000ppb以下であってもよい。
【0072】
前記焼結体の鉄の含量は、全重量に対して800ppb以上5000ppb以下であってもよい。
【0073】
前記焼結体のニッケルの含量は、全重量に対して50ppb以上800ppb以下であってもよい。
【0074】
前記焼結体のバリウムの含量は、全重量に対して100ppb以上2000ppb以下であってもよい。
【0075】
前記焼結体は、このような所定の金属不純物と調和をなし、良好な耐久性を期待することができる。
【0076】
プラズマ耐エッチング性部品
前記の目的を達成するために、具現例に係るプラズマ耐エッチング性部品は、前記焼結体を含むことができる。例示的に、前記焼結体をプラズマ耐エッチング性部品の全域に含んでいてもよく、または前記プラズマ耐エッチング性部品の表面に所定の厚さのコーティング層として含んでいてもよい。前記コーティング層の厚さは、プラズマエッチングの程度を考慮して調整することができ、50mm以上1000mm以下であってもよい。
【0077】
前記プラズマ耐エッチング性部品は、例示的にフォーカスリングであってもよく、その他のプラズマエッチング装置内でプラズマエッチングに影響を受ける部品に該当し得る。
【0078】
焼結体の製造方法
前記の目的を達成するために、具現例に係る焼結体の製造方法は、
原料組成物を顆粒の形態に形成する顆粒ステップと、
前記顆粒の形態の原料組成物を成形し、炭化及び焼結する焼結ステップとを含み、
前記原料組成物は、酸化ケイ素、炭化用樹脂及び補助添加剤を含むことができる。
【0079】
前記顆粒ステップは、酸化ケイ素、炭化用樹脂、補助添加剤、溶媒などを含む原料組成物のスラリーを、所定の粒子サイズの顆粒の形態に形成するステップである。前記顆粒ステップを通じて、次のステップの焼結性を向上させることができ、原料成分がより均質に分布するようにすることができる。
【0080】
前記顆粒ステップは、前記原料組成物を噴霧乾燥して行われ得る。例示的に、溶媒を含む原料組成物のスラリーが噴射ノズルを介して微粒化(atomization)され、気液混合及び溶媒が蒸発して、乾燥された顆粒が形成され得る。
【0081】
前記顆粒ステップで得られた原料顆粒の粒子サイズは5μm以上95μm以下であってもよい。
【0082】
前記原料組成物の酸化ケイ素(SiO2)は粉末状であってもよい。
【0083】
前記原料組成物の炭化用樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、フェノール系樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)などを含むことができ、例示的にポリビニルアルコール系樹脂を含むことができる。
【0084】
前記原料組成物の補助添加剤は、ポリアクリル酸系樹脂、ポリカルボン酸系樹脂、C10-C40のアルカン(パラフィン)、脂肪酸アミドなどを含むことができる。前記補助添加剤は、バインダー、分散剤などの役割を行うことができる。
【0085】
前記原料組成物の溶媒は、アルコール系溶媒、水などを含むことができる。
【0086】
前記原料組成物全体に対して、前記炭化用高分子樹脂の含量は0.1重量%以上8重量%以下であってもよく、または0.3重量%以上6重量%以下であってもよい。このような含量を有することによって、後続過程を通じて製造される焼結体の非晶質石英ガラスの構造内に欠陥性炭素が適切に分布することができ、プラズマ耐食性を向上させることができる。
【0087】
前記原料組成物全体に対して、前記補助添加剤の含量は1重量%以上8重量%以下であってもよく、または2重量%~6重量%であってもよい。
【0088】
前記焼結ステップの成形は、目的とする部品の形状を含むモールド内に前記顆粒の形態の原料組成物を注入して行われ得る。
【0089】
前記焼結ステップの炭化は、700℃以上1100℃以下の温度で熱処理して行われ得る。
【0090】
前記焼結ステップの焼結は、1100℃以上1300℃以下の温度で1時間以上10時間以下熱処理して行われ得る。
【0091】
前記焼結ステップの焼結を通じて得られた焼結体は、上述した特徴を有することができる。
【0092】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0093】
実施例1-欠陥性炭素を含む石英ガラス焼結体の製造
全体に対して、Sukgyung AT社の酸化ケイ素粉末95重量%、炭化用樹脂としてKURARAY社のPVA205ポリビニルアルコール樹脂及びPVA217ポリビニルアルコール樹脂1重量%(PVA205:PVA217を19.6:80.4の重量比で混合)、補助添加剤としてCeluna D-305、Celuna P-222、Hymicron L-271、HS551を含む物質4重量%、及び溶媒残量を混合した原料組成物を用意し、噴霧乾燥装置を通じて約40~60μmの粒子サイズの顆粒が形成されるようにした。この顆粒をフォーカスリングモールド内に注入して成形し、1260℃の温度で6時間焼結して焼結体を製造した。
【0094】
比較例1-合成された石英ガラス
NIKON社の純度99.9%の石英ガラスNIFS-Sを備えた。
【0095】
比較例2-溶融法で製造された石英ガラス
TOSOH社の純度99.9%の石英ガラスNを備えた。
【0096】
実験例-ラマン分析
前記実施例1の焼結体及び比較例の石英ガラスを、Horiba Jobin Yvon社のラマン分光測定装置LabRam Aramisを用いて、以下の測定条件でラマン分光法を行い、ラマンスペクトルを
図1に示した。
励起波長:514nm、出力:5mW、解像度:1.5cm
-1、スキャン範囲:1×1μm、測定時間:300秒
【0097】
図1を参照すると、実施例1(E1)の焼結体と比較例1、2(CE1、CE2)の石英ガラスがいずれも、非晶質SiO
2関連の一部の共通したピーク(431cm
-1、488cm
-1、602cm
-1、792cm
-1、1057cm
-1)を示したが、1057cm
-1を超える波数で差を確認することができる。実施例1の場合、およそ1341cm
-1、1602cm
-1の波数でそれぞれ炭素関連のDバンドピーク、Gバンドピークが現れ、比較例では、炭素を一部含むにもかかわらず、このようなピークが現れなかった。
【0098】
実験例-色度、透過率及び反射率の測定
前記実施例1の焼結体と比較例の石英ガラスの色度及び反射率を、ASTM E1164に準拠してKONICA MINOLTA社のCM-5機器を用いて、以下の条件で測定し、サンプル写真を撮影し、その結果を
図2及び表1に示した。
光源:キセノンランプ(D65)、視野角:10°、波長の間隔:10nm、波長の範囲:360~740nm
【0099】
また、前記実施例1の焼結体及び比較例の石英ガラスの透過率を、JASCO社のV-730機器を用いて、以下の条件で測定し、その結果を表1に示した。
波長の範囲:200~1100nm、スキャニング速度:400nm/min
【0100】
【0101】
表1を参照すると、実施例1の場合、欠陥性炭素の影響により、CIE L*a*b*色空間のL*値、透過率が比較例に比べて著しく低いことを確認することができ、
図2に示されたように、実施例1の焼結体(E1)のサンプルは、比較的黒色を帯びることが分かる。
【0102】
実験例-プラズマ耐食性の測定
前記実施例1の焼結体及び比較例の石英ガラスのプラズマ耐食性を以下の条件で測定し、その結果を表2に示した。
チャンバの圧力:100mTorr、プラズマ電力:800W、露出時間:300分、CF4ガスの流量:50sccm、Arガスの流量:100sccm、O2ガスの流量:20sccm
【0103】
【0104】
表2を参照すると、実施例1の焼結体が比較例の石英ガラスと比較して、厚さの減少率、重量減少率が低く、優れたプラズマ耐エッチング性を有することを確認した。
【0105】
実験例-プラズマエッチングの前後のXPS分析
前記実施例1の焼結体及び比較例の石英ガラスの前記プラズマ耐食性の測定前後に、X線光電子分光法(XPS)をThermo VG Scientific社のSigma Probe装備を用いて行い、その結果を
図3及び表3に示した。
【0106】
【0107】
図3及び表3を参照すると、実施例1の焼結体は、比較例の石英ガラスと比較して、プラズマエッチング前後の炭素変化量が相対的に少ないことを確認することができ、エッチングガスと反応して生成されたFも低いことが分かる。
【0108】
実験例-XRF及びICP-MS分析
前記実施例1の焼結体及び比較例の石英ガラスのX線蛍光分光法(XRF)を、Rigaku社のZSX Primus機器を活用して分析を行い、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を、Thermo Fisher Scientific社のHR-ICP/MS装備を用いて不純物の含量を測定し、その結果を表4及び表5にそれぞれ示した。
【0109】
【0110】
表4を参照すると、XRF分析による実施例1の焼結体及び比較例の石英ガラスがいずれも、類似の炭素、酸素、ケイ素の含量を有することを確認できる。
【0111】
【0112】
表5を参照すると、ICP-MSによる結果から、実施例1の焼結体の場合、比較例と比較して、マグネシウム、カリウム、カルシウム、クロム、鉄、ニッケル、バリウムの含量がさらに多いことが分かる。
【0113】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
【外国語明細書】