(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065475
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】転写装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240508BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G21/16 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174354
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】須賀 智昭
【テーマコード(参考)】
2H171
2H200
【Fターム(参考)】
2H171FA03
2H171FA15
2H171GA09
2H171KA10
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB03
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC05
2H171QC22
2H171SA11
2H171SA12
2H171SA22
2H171SA28
2H200FA09
2H200GA12
2H200GA34
2H200GA44
2H200GA47
2H200GB22
2H200HA03
2H200HB12
2H200JA02
2H200JB06
2H200JB22
2H200JB32
2H200JC04
(57)【要約】
【課題】転写ベルトの寄りを良好に抑制することができる転写装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】ユニット支持筐体などの引き出し筐体113に回動自在に支持されたベルトユニットなどの二次転写ユニット40を加圧する加圧手段は、一対の回転アーム103などの加圧部材を有し、一方の回転アームで二次転写ユニット40の張架ローラの軸方向の一端側を加圧し、他方の回転アームで二次転写ユニット40の軸方向の他端側を加圧し、引き出し筐体113は、Y方向回りの二次転写ユニット40の姿勢を拘束せずに二次転写ユニット40を支持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写ローラを含む複数の張架ローラに張架された転写ベルトを有するベルトユニットと、
前記ベルトユニットを回転自在に支持するユニット支持筐体と、
前記ベルトユニットを加圧して前記転写ローラを、前記転写ベルトを介して像担持体に当接させて転写ニップを形成する加圧手段と、を備えた転写装置において、
前記加圧手段は、一対の加圧部材を有し、一方の加圧部材で前記ベルトユニットの前記張架ローラの軸方向の一端側を加圧し、他方の加圧部材で前記ベルトユニットの前記軸方向の他端側を加圧し、
前記ユニット支持筐体は、前記転写ニップにおける前記転写ベルトの移動方向回りの前記ベルトユニットの姿勢を拘束せずに前記ベルトユニットを支持することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写装置において、
前記ユニット支持筐体は、前記ベルトユニットの前記軸方向の一端側を回動自在に支持する第一支持部と、前記ベルトユニットの前記軸方向の他端側を回動自在に支持する第二支持部とを有し、
前記第一支持部と前記第二支持部とにより前記ベルトユニットを、前記移動方向回りに支持したことを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項2に記載の転写装置において、
前記一方の加圧部材は、前記第一支持部に回転自在に支持され、前記他方の加圧部材は、前記第二支持部に回転自在に支持されていることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項2に記載の転写装置において、
前記第二支持部は、前記ベルトユニットの被支持部が挿入される溝部を備え、
前記溝部は、前記転写ニップを形成した状態のときの前記加圧部材の前記ベルトユニットの加圧方向に前記被支持部が自由度を有するような溝であることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項4に記載の転写装置において、
前記溝部は、前記転写ローラの回転中心を中心とする円弧形状であることを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項1に記載の転写装置において、
複数の張架ローラのうちのひとつは、前記軸方向に対する傾きが調整可能に構成されていることを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項1に記載の転写装置において、
前記転写ベルトは、二次転写ベルトであることを特徴とする転写装置。
【請求項8】
転写装置を備えた画像形成装置において、
前記転写装置として、請求項1に記載の転写装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、転写ローラを含む複数の張架ローラに張架された転写ベルトを有するベルトユニットと、前記ベルトユニットを回転自在に支持するユニット支持筐体と、前記ベルトユニットを加圧して前記転写ローラを、前記転写ベルトを介して像担持体に当接させて転写ニップを形成する加圧手段と、を備えた転写装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、ベルトユニットたる二次転写ユニットが、加圧手段たる加圧装置が搭載されたユニット支持筐体たるフレームに回転自在に支持されるものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加圧手段によりベルトユニットを加圧して転写ニップを形成したときに、ベルトユニットにねじれが生じ、転写ベルトのベルト寄り速度が許容値を超え、転写ベルトが破損するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、転写ローラを含む複数の張架ローラに張架された転写ベルトを有するベルトユニットと、前記ベルトユニットを回転自在に支持するユニット支持筐体と、前記ベルトユニットを加圧して前記転写ローラを、前記転写ベルトを介して像担持体に当接させて転写ニップを形成する加圧手段と、を備えた転写装置において、前記加圧手段は、一対の加圧部材を有し、一方の加圧部材で前記ベルトユニットの前記張架ローラの軸方向の一端側を加圧し、他方の加圧部材で前記ベルトユニットの前記軸方向の他端側を加圧し、前記ユニット支持筐体は、前記転写ニップにおける前記転写ベルトの移動方向回りの前記ベルトユニットの姿勢を拘束せずに前記ベルトユニットを支持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、転写ベルトの寄りを良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】自然状態でねじれている二次転写ユニットの引き出し筐体への装着について説明する図。
【
図5】自然状態でねじれている二次転写ユニットの二次転写ローラを中間転写ベルトに当接させる様子を示す図。
【
図6】二次転写ユニットの自然状態のねじれが二次転写ローラの後側が手前側に比べて上方に位置するようなねじれの場合の二次転写ローラの中間転写ベルトへの当接について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。
図1は実施形態に係る画像形成装置としての電子写真方式のカラープリンタ(以下、「プリンタ」という)の概略構成図である。このプリンタ100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成するための四つの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kを備えている。また、中間転写装置としての転写ユニット30、二次転写ユニット40、被搬送物としての記録材Pを収納するカセット60、定着装置90なども備えている。
【0009】
画像形成部となる四つの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、粉体の現像剤として、互いに異なる色のY、M、C、Kのトナーを用いる。それ以外は同様の構成になっている。画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、像担持体たるドラム状の感光体2Y、2M、2C、2K、ドラムクリーニング装置3Y、3M、3C、3K、除電装置、帯電装置6Y、6M、6C、6K、現像装置8Y、8M、8C、8K等を備えている。
【0010】
感光体2Y、2M、2C、2Kの表面は、帯電装置6Y、6M、6C、6Kで一様帯電される。次に、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの上方に配設された光書込ユニット101から発せられるレーザー光などの露光光によって光走査されて各色用の静電潜像が形成される。この静電潜像は、各色のトナーを有する現像装置8Y、8M、8C、8Kによって現像されて各色の像としてのトナー像Tになる。感光体2にはトナー像が形成される。感光体2Y、2M、2C、2Kのトナー像Tは、無端状のベルト部材からなる中間転写ベルト31のおもて面上に一次転写されて担持される。
【0011】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの下方には、中間転写ベルト31を張架しながら図中時計回り方向に無端移動(回転走行)せしめる中間転写装置である転写ユニット30が配設されている。本実施形態では、中間転写ベルト31の表面移動方向をベルト移動方向aとする。
【0012】
転写ユニット30は、中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、四つの一次転写ローラ35Y、35M、35C、35K、転写前ローラ37などを備えている。中間転写ベルト31は、駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、一次転写ローラ35Y、35M、35C、35K及び転写前ローラ37に巻き掛けられて支持され張架されている。そして、駆動モータなどの駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動して搬送される。
【0013】
中間転写ベルト31のループ外側の下方には、ベルト部材であり転写ベルトである二次転写ベルト102を備えた二次転写ユニット40が配置されている。二次転写ベルト102は、二次転写ローラ41を含む複数の張架ローラに巻き掛けられている。
【0014】
二次転写ユニット40の下方には、記録材Pを複数枚重ねた束の状態で収容可能な収容部となるカセット60が配設されている。このカセット60は、束の一番上の記録材Pにローラ60aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、記録材Pをカセット60から二次転写ニップN2に向かう搬送路65に向けて送り出す。搬送路65に送り出された記録材Pは、レジストローラ対61によって二次転写ニップN2内で中間転写ベルト31のおもて面上のトナー像に同期するタイミングで二次転写ニップN2に送り出される。
【0015】
中間転写ベルト31のおもて面のトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって二次転写ニップN2で記録材P上に一括二次転写され、記録材Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。
【0016】
二次転写ニップN2よりも記録材搬送方向bの下流側には、定着装置90が配設されている。定着装置90は、定着ベルト94の支持ローラとして、加熱ローラ91、定着ローラ93、支持ローラ96、テンション部材でもあるテンションローラ95を備えている。定着装置90は、定着ベルト94を挟んで定着ローラ93に当接する加圧ローラ92も備えている。トナー像が転写された記録材Pは定着装置90に送り込まれ、定着ローラ93と加圧ローラ92とが接触する定着ニップに挟まれる。定着装置90は、ニップ部の加圧と熱源を内部に備えた加熱ローラ91から定着ベルト94によって熱を記録材Pに伝え、フルカラートナー像中のトナーを軟化させて定着する。定着後の記録材Pは、定着装置90内から排出されて機外へと排出される。
【0017】
図1において、二次転写装置400は、ベルトユニットたる二次転写ユニット40と、二次転写ユニット40を回転自在に支持するユニット支持筐体たる引き出し筐体113とを有している。
二次転写ユニット40は、二次転写ベルト102をベルト内周面側で支える5本の張架ローラを有している。5本の張架ローラは、具体的には、二次転写ローラ41、分離ローラ42、従動ローラ43、駆動ローラ44及び寄り止めローラ45である。二次転写ベルト102を外周面から加圧するテンションローラ46も有している。二次転写ユニット40は、装置本体に対して装置手前側(X方向)に引き出し可能なユニット支持筐体である引き出し筐体113に支持されている。
図1はプリンタの概略構成を正面から見た図であり、図に示すX、Y及びZ方向は次のとおりである。X方向はプリンタ前後で手前側方向、Y方向はプリンタ左右の右側方向、Z方向は鉛直上方向である。
【0018】
図2は、二次転写装置400の概略構成図である。
図2に示すX、Y及びZ方向は、
図1におけると同じである。左右中央の図は二次転写ユニット40をプリンタ左側から見た図、左側の図はプリンタ後側から見た図、右側の図はプリンタ前側から見た図である。
二次転写ユニット40は、二次転写ベルト102を張架する複数の張架ローラを支持するローラ支持部材としての一対のローラ支持板103を有している。
【0019】
中間転写ベルト31と二次転写ニップN2(
図1参照)を形成する二次転写ローラ41は、固定軸である二次転写ローラ軸106の周りに回転自由である。二次転写ローラ軸106は、加圧部材たる回転アーム108、109に接触面110、111で接しており、回転アーム108、109からの押圧力によって中間転写ベルト31に押圧されている。接触面110、111は二次転写ローラ41と中間転写ベルト31を挟んで二次転写ローラ41と対向する二次転写裏面ローラ33の中心同士を結ぶベクトルと概ね垂直を成すようにしている。接触面110、111は二次転写ユニット40の位置決めにあたっての基準平面として機能する。
【0020】
回転アーム108、109は引き出し筐体113と一体の支持部たる回転中心軸部材116、117によって中心軸周りで回転自由に支持される。回転アーム108、109と引き出し筐体113との間のスプリング114、115は回転アーム108、109を回動付勢する。回転アーム108、109は、接触面110、111を介して二次転写ユニット40を中間転写ベルト31に押圧する。
【0021】
第一支持部たる手前側の回転中心軸部材116には、二次転写ユニット40の軸部材118の手前側端部が支持される穴部116aを有している。軸方向の一端側である手前側の回転中心軸部材116は、軸部材118と手前側の回転アームとの回転中心が同一中心となるように、軸部材118と手前側の回転アーム108とを支持している。また、手前側の回転中心軸部材116は、二次転写ユニット40の軸部材118の手前側端部を首振り可能に支持している。二次転写ユニット40の軸部材118はローラ支持板103に両端部が支持された非回転軸であり、ローラ支持板103の間では
図1に示す従動ローラ43を回転自在に支持する。
【0022】
第二支持部たる後側の回転中心軸部材117は、二次転写ユニット40の軸部材118の後側端部を嵌合支持する溝部117aを有している。この溝部117aの一対の側面は、二次転写ローラ41の中心と同心のR形状となっており、溝部117aは、二次転写ローラ41の中心とした円弧形状となっている。軸部材118の後側端部は、二次転写ローラ41の中心と同心円状に相対的に移動可能に溝部117aに支持される。
【0023】
手前側の回転アーム108と後側の回転アーム109は、それぞれ別の加圧駆動装置により回転駆動され、各加圧駆動装置により回転アーム108,109の二次転写ユニット40への加圧力が調整可能となっている。
【0024】
本実施形態では、普通紙、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等、様々な種類の記録材Pが用いられる。そして、記録材Pの種類により最適な二次転写圧(ニップ圧)が異なる。そのため、本実施形態では、記録材の種類に応じて二次転写圧を調整する。例えば、本プリンタ本体が備える操作パネルをユーザーが操作して、カセット60にセットされた記録材Pの種類情報を入力する。本プリンタの制御部は、この入力された記録材Pの種類情報に基づいて、各加圧駆動装置の加圧モータの駆動時間を設定する。加圧モータがステッピングモータの場合は、の入力された記録材Pの種類情報に基づいてステップ数を設定する。
【0025】
設定された駆動時間(またはステップ数)駆動することで、回転アーム108,109の二次転写ローラ軸106への加圧力が、用紙の種類に対応する加圧力に調整される。これにより、二次転写ニップにかかる力が、用紙の種類に対応する力に調整され、用紙の種類に対応した二次転写圧になる。
【0026】
本実施形態では、各回転アーム108,109を二次転写ユニット40を支持する回転中心軸部材116,117に回転自在に取り付けることで、以下の利点を有する。すなわち、二次転写ユニットの回転中心と、回転アームの回転中心とを概ね一致でき、加圧力を調整によって回転アームの二次転写ローラ軸106への当接位置の変化を抑制できる。これにより、加圧力と回転アームの回転位置との関係の乱れを抑制でき、容易に加圧力の調整を行うことができる。
【0027】
特に、手前側では、軸部材118が回転軸中部材の軸中心に設けられた穴部116aに挿入される構成であり、二次転写ユニット40の回転中心と回転アーム108の回転中心とが一致する。これにより、手前側は、加圧力と回転アームの回転位置との関係の乱れを良好に抑制でき、容易に加圧力の調整を行うことができる。
【0028】
本実施形態では、二次転写ユニット40の軸部材118の手前側端部を首振り可能に支持し、二次転写ユニット40の軸部材118の後側端部を二次転写ローラ41の中心と同心円状に移動可能に支持している。これにより、二次転写ニップにおける二次転写ベルト102の移動方向(Y方向)回りの姿勢が拘束されずに、二次転写ユニット40が引き出し筐体113に支持される。その結果、装置内でX方向に対してZ方向に傾いた姿勢で二次転写ユニット40を支持することが可能となる。
【0029】
引き出し筐体113は、二次転写ユニット40の軸部材118のみを支持しており、二次転写ユニット40は、X軸方向回りの姿勢も拘束されずに引き出し筐体113に支持され、二次転写ユニット40は、軸部材118を支点にして回動可能である。
【0030】
二次転写ユニット40は、製造誤差等により、ユニット支持筐体にセット前のベルトユニット単体の状態(以下、自然状態という)でねじれている場合がある。この場合、手前側のローラ支持板103にX方向回りの姿勢と、後側のローラ支持板103のX方向回りの姿勢とが互いに異なる。その結果、これらローラ支持板103に支持されている二次転写ベルト102を張架している各ローラがX方向に対して傾き、二次転写ベルト102の回転時に二次転写ベルト102がX方向一方側に寄るベルト寄りが生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、二次転写ベルト102を張架しているローラのうちひとつを、X方向に対する傾きを調整可能となっている。そして、このローラのX方向に対する傾きを調整することで、二次転写ユニット40の自然状態のねじれによる二次転写ベルト102の寄りを抑制している。
【0031】
図3は、傾き調整について説明する図である。
本実施形態では、テンションローラ46が傾き調整可能となっており、このテンションローラ46の手前側は、傾き調整部材202を介して手前側のローラ支持板103に支持されている。なお、テンションローラ46以外のローラが、傾き調整可能なローラであってもよい。
傾き調整部材202は、手前側のローラ支持板103に設けられたピン203に回動自在に支持されている。また、傾き調整部材202には、傾き調整部材202の回転中心(ピン203)を中心としたR形状のネジ挿入穴205が設けられている。
【0032】
傾き調整部材202を、ピン203を支点にして回転させることで、テンションローラ46の手前側が図中矢印A方向に移動し、テンションローラ46のX方向に対する(軸方向)の傾きが調整される。例えば、二次転写ユニット40の自然状態のねじれにより、二次転写ベルト102が後側に寄る場合は、二次転写ベルト102のテンションローラ46への巻き付き箇所で、二次転写ベルト102が手前側に寄るようにテンションローラのX方向に対する傾きを調整する。傾き調整終了後は、ネジ204により傾き調整部材202を手前側のローラ支持板103に締結する。これにより、二次転写ユニット40の自然状態のねじれによる二次転写ベルト102のベルト寄りが抑制される。
【0033】
回転中心軸部材116、117が、軸部材118をYZ平面内で移動不能に支持し、二次転写ユニット40を引き出し筐体113に装着した状態で、X軸方向回りのみ二次転写ユニット40の姿勢を拘束しないようにした場合は、以下の不具合が発生する。すなわち、自然状態でねじれた二次転写ユニット40を、回転アーム108,109により二次転写ローラ41を二次転写ベルト102を介して中間転写ベルト31に当接させたときによじれが発生する。その結果、傾き調整部材202によりベルト寄りを抑制できている各ローラの最適な傾き関係が崩れてしまい、二次転写ベルト102のベルト寄りが悪化する。その結果、ベルト寄り速度が許容値を超え、二次転写ベルト102の両端の寄り止めガイドが、寄り止めローラ45の規制部に強く当たり、早期に摩耗し、二次転写ベルト102が破損するおそれがあるという不具合である。
【0034】
しかし、本実施形態では、次のようの軸部材118を支持し、二次転写ユニット40を引き出し筐体113に装着した状態で、Y方向回りにも二次転写ユニット40の姿勢を拘束せずに支持した。すなわち、手前側の回転中心軸部材116で軸部材118の手前側端部を首振り可能に支持し、後側の回転中心軸部材117で軸部材118の後側端部を二次転写ローラ軸中心回りに移動可能に支持したのである。これにより、二次転写ユニット40がY軸方向回りにも姿勢を拘束されずに支持される。その結果、X方向に対してZ方向に傾いた状態で、二次転写ユニット40を引き出し筐体113に支持することが可能となる。よって、回転アーム108,109により二次転写ローラ41を中間転写ベルト31に当接させたときのよじれが抑制され、ベルト寄りの悪化を抑制でき、ベルト寄り速度が許容値を超えるのを抑制できる。以下、図面を用いて、具体的に説明する。
【0035】
図4は、自然状態でねじれている二次転写ユニット40の引き出し筐体113への装着について説明する図である。
図4に示す実線が手前側を示しており、破線が後側を示している。
例えば、
図5に示すように、二次転写ユニット40がよじれていることで、二次転写ユニット40がX、YおよびZ方向いずれにも傾いていない場合、軸部材118の手前側と後側の位置がずれる。その結果、
図5(a)に示すように、そのままでは、軸部材118の手前側を回転中心軸部材116に支持した状態で、後側の軸部材118を、回転中心軸部材117の溝部117aに挿入できない。
【0036】
本実施形態では、軸部材118の手前側を回転中心軸部材116に対して首振り可能に支持することで、
図4(b)に示すように、二次転写ユニット40を、X方向に対してY方向に傾けて引き出し筐体113に装着できる。このように、二次転写ユニット40を、X方向に対してY方向に傾けることで、軸部材118の後側を、回転中心軸部材117の溝部117aに挿入でき、よじれた二次転写ユニット40を引き出し筐体113に支持できる。
【0037】
図5は、自然状態でよじれている二次転写ユニット40の二次転写ローラ41を、中間転写ベルト31に当接させる様子を示す図である。
図5(a1)、(a2)に示すように、二次転写ユニット40のよじれで、図中破線で示す二次転写ローラ41の後側が、図中実線で示す手前側に比べて下方に位置する場合がある。この場合は、二次転写ローラ41の手前側が後側よりも先に中間転写ベルト31に当接する。
本実施形態では、上述したように手前側の回転アーム108と、後側の回転アーム109とは、それぞれ別の加圧駆動装置により独立で駆動する構成となっている。そのため、二次転写ローラ41の手前側が中間転写ベルト31に当接したら、手前側の回転アーム108の回転駆動を停止し、後側の回転アーム109のみ回転駆動を続ける。
【0038】
このとき、二次転写ユニット40が、Y方向回りの姿勢が拘束されて引き出し筐体113に支持されている場合、二次転写ローラ41の後側が軸部材118を支点にしてX方向回りに回動する。その結果、二次転写ユニット40のよじれが変化し、各ローラの傾きの関係性が崩れベルト寄りが悪化し、ベルト寄り速度が許容値を超えるおそれがある。その結果、二次転写ベルト102の両端の寄り止めガイドが、寄り止めローラ45の規制部に強く当たり、早期に摩耗し、二次転写ベルト102が破損するおそれがある
【0039】
これに対し、本実施形態では、手前側の軸部材118を首振り可能に支持し、後側の軸部材118を二次転写ローラ41の回転中心と同心円状に移動可能に支持している。かかる支持により、Y方向回りに二次転写ユニット40の姿勢が拘束されずに、二次転写ユニット40が支持される。よって、二次転写ローラ41の手前側が中間転写ベルト31に当接した後は、二次転写ユニット40の後側の全体が、後側の回転アーム109の加圧力により
図5(a1)の矢印A1に示すように、持ち上げられるような形で、二次転写ユニット40のY方向回りの姿勢が変化する。これにより、
図5(b2)に示すように、二次転写ユニット40が、X方向に対してZ方向に傾いた姿勢となって、二次転写ローラ41のX方向全域が中間転写ベルト31に当接する。
【0040】
このように、二次転写ユニット40がX方向に対してZ方向に傾くだけであり、二次転写ユニット40のよじれが自然状態からほとんど変化しない。これにより、各ローラの傾きをベルト寄りが抑制される最適な関係性に維持でき、ベルト寄りの悪化を抑制でき、ベルト寄り速度を許容値以下に維持できる。
【0041】
図6は、二次転写ユニット40の自然状態のねじれが二次転写ローラ41の後側が手前側に比べて上方に位置するようなねじれの場合について説明する図である。
図6(a1)、(a2)に示すように、二次転写ユニット40の自然状態のねじれが二次転写ローラ41の後側が手前側に比べて上方に位置するようなねじれの場合、図中破線の二次転写ローラ41の後側が、図中実線の二次転写ローラ41の手前側よりも先に中間転写ベルト31に当接する。
【0042】
二次転写ローラ41の後側が中間転写ベルト31に当接後、二次転写ローラ41の手前側を中間転写ベルト31に当接すべく、手前側の回転アーム108の回転駆動を続けると、二次転写ローラ41の手前側は、軸部材118を支点にして
図6(a1)の反時計回りに回動する。このとき、二次転写ユニットは、中間転写ベルト31(二次転写裏面ローラ33)からの反力で、
図6(a2)の反時計回りに回動、すなわち、二次転写ユニット40がY方向回りに姿勢変化する。その結果、
図6(b1)、
図6(b2)に示すように、二次転写ローラ41の手前側が中間転写ベルト31に当接すると、二次転写ユニット40の後側が、手前側よりも下方に位置するように、二次転写ユニット40が引き出し筐体113に対して傾く。
【0043】
このように、二次転写ローラ41の後側が手前側よりも上方に位置するようなよじれのときも、二次転写ユニット40は、引き出し筐体113に対してY方向回りの姿勢が変化して二次転写ローラ41の全体が中間転写ベルト31に当接する。よって、各ローラの傾きの関係性が、ベルト寄りが抑制される最適な関係性に維持され、ベルト寄りの悪化を抑制できる。
【0044】
溝部117aは、上下方向(Z方向)に延びる溝であればよい。溝部117aが上下方向に延びる溝であれば、二次転写ユニット40は、Y方向回りの姿勢が拘束されない。その結果、二次転写ローラ41のX方向全域を中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成するときに、Y方向回りの姿勢が変化し、二次転写ユニットのよじれが自然状態から変化するのを抑制できる。
【0045】
しかし、溝部117aが、回転アーム108,109の加圧方向Fと略平行に延びる形状であれば、後側をスムーズに上下方向へ移動でき、二次転写ユニット40のよじれが、自然状態から変化するのを良好に抑制でき好ましい。また、上下方向(Z方向)に延びる溝に比べて、二次転写ローラ41の後側が中間転写ベルト31に当接したとき、二次転写ローラ41の手前側と後側のY方向の位置ずれを抑制できる。これにより、手前側の回転アーム108の接触面110の二次転写ローラ軸106に当接する当接位置に対する後側の回転アーム109の当接位置のズレを抑制できる。これにより、回転アームからの加圧力が、手前側と後側とで異なるのを抑制でき、二次転写ニップ圧の偏差が抑制され、良好な二次転写性を得ることができる。
【0046】
さらに、本実施形態のように、溝部117aを、二次転写ローラ41の回転中心を中心とする円弧形状とすることで、二次転写ローラ41が中間転写ベルト31に当接したとき二次転写ローラ41の手前側と後側のY方向の位置ずれをより一層抑制できる。これにより、転写ニップ圧の偏差をより一層抑制できる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0048】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
二次転写ローラ41などの転写ローラを含む複数の張架ローラに張架された二次転写ベルト102などの転写ベルトを有する二次転写ユニット40などのベルトユニットと、ベルトユニットを回転自在に支持する引き出し筐体113などのユニット支持筐体と、ベルトユニットを加圧して転写ローラを、転写ベルトを介して中間転写ベルト31などの像担持体に当接させて転写ニップを形成する加圧手段と、を備えた二次転写装置400などの転写装置において、加圧手段は、一対の回転アーム108,109などの加圧部材を有し、一方の加圧部材でベルトユニットの張架ローラの手前側などの軸方向の一端側を加圧し、他方の加圧部材でベルトユニットの後側などの軸方向の他端側を加圧し、ユニット支持筐体は、転写ニップにおける転写ベルトの移動方向(本実施形態ではY方向)回りのベルトユニットの姿勢を拘束せずにベルトユニットを支持する。
製造誤差等により、複数の張架ローラを支持するベルトユニットがユニット支持筐体にセット前のベルトユニット単体の状態(以下、自然状態という)でねじれている場合がある。ベルトユニットがねじれることで、転写ローラおよび各張架ローラが軸方向に対して傾き転写ベルトの回転時に転写ベルトが軸方向一方側に寄るベルト寄りが生じるおそれがある。そこで、少なくともひとつの張架ローラの軸方向に対する傾きを調整して、ベルトユニットの自然状態のねじれによるベルト寄りを抑制するようにしている。
ベルトユニットが自然状態でねじれているとき、複数の張架ローラの軸方向一端を支持するベルトユニットの軸方向一端側の側板と、複数の張架ローラの軸方向他端を支持する軸方向他端側の側板の軸方向回りの姿勢が異なる。そのため、転写ローラの軸方向一方側と他方側とで、転写ベルトの像担持体への当接方向の位置が異なる。一対の加圧部材によりベルトユニットの軸方向両側を加圧し、転写ベルトを像担持体に押し当てるときに、転写ベルトの軸方向一方側と他方側のうち、像担持体に近い側(以下、近接側という)が当接した後、像担持体に遠い側(以下、離間側という)が当接する。
このとき、ユニット支持筐体が、転写ニップにおける転写ベルトの移動方向回りのベルトユニットの姿勢を拘束し、上記移動方向から見たとき、ベルトユニットが軸方向に対して傾き不能に支持されている場合、転写ベルトの近接側が像担持体に当接した後、離間側の加圧部材の加圧力により、ベルトユニットにねじれを生じさせながら、ユニット支持筐体のベルトユニット支持部を支点にしてベルトユニットの離間側が回動し転写ベルトの離間側が像担持体に当接することになる。その結果、ベルトユニットのねじれが自然状態から変化してしまう。これにより、転写ローラおよび張架ローラの傾きの関係性が崩れてしまい、転写ベルトのベルト寄り速さが許容値を超えてしまうおそれがある。
これに対し、態様1では、転写ニップにおける転写ベルトの移動方向回りのベルトユニットの姿勢は拘束されずにユニット支持筐体にベルトユニットが支持されることで、ベルトユニットは、ユニット支持筐体に対して上記移動方向回りに姿勢変化可能となる。これにより、転写ベルトの軸方向一端側と他端側のうち、像担持体に近い側(近接側)が像担持体に当接した後、像担持体に遠い側(離間側)を像担持体に当接させるとき、ベルトユニットが、離間側の加圧部材の加圧力により上記移動方向回りに姿勢を変化させながら(上記移動方向から見たときベルトユニットが軸方向に対して傾きながら)転写ベルトの離間側が像担持体に近づいていき、転写ベルトの離間側が像担持体に当接する。このように、態様1では、ベルトユニットの上記移動方向回りの姿勢が変化することで、ベルトユニットの自然状態のねじれをほぼ維持して、転写ベルトの軸方向一端側と他端側とを像担持体に当接させることができ、転写ベルトのベルト寄り速度が許容値を超えるの抑制できる。
【0049】
(態様2)
態様1において、引き出し筐体113などのユニット支持筐体は、二次転写ユニット40などのベルトユニットの手前側などの軸方向の一端側を回動自在に支持する手前側の回転中心軸部材116などの第一支持部と、ベルトユニットの後側などの軸方向の他端側を回動自在に支持する後側の回転中心軸部材117などの第二支持部とを有し、第一支持部と第二支持部とによりY方向などの転写ニップにおける転写ベルトの移動方向回りの姿勢を拘束せずに支持した。
これによれば、実施形態で説明したように、転写ニップを形成したときに、二次転写ユニット40などのベルトユニットに新たなよじれが生じるのを抑制することができる。
【0050】
(態様3)
態様2において、回転アーム108などの一方の加圧部材は、第一支持部に回転自在に支持され、回転アーム109などの他方の加圧部材は、第二支持部に回転自在に支持されている。
これによれば、実施形態で説明したように、二次転写ユニット40の回動の中心と、一対の回転アーム108,109などの加圧部材の回転中心とを概ね一致させることができる。これにより、二次転写ニップ圧などの転写ニップ圧の調整時に、加圧部材の二次転写ローラとの当接位置が変化するのを抑制することができる。これにより、加圧部材の二次転写ローラとの当接位置の変化による加圧力の変動を抑制でき、精度よく転写ニップ圧の調整を行うことができる。
【0051】
(態様4)
態様2または3において、後側の回転中心軸部材117などの第二支持部は、二次転写ユニット40などのベルトユニットの軸部材118などの被支持部が挿入される溝部117aを備え、溝部117aは、前記転写ニップを形成した状態のときの回転アーム108,109などの加圧部材のベルトユニットの加圧方向に被支持部が自由度を有するような溝である。
これによれば、実施形態で説明したように、転写ニップを形成したときの手前側などの軸方向一端側と、後側などの軸方向他端側との転写ニップにおける転写ベルトの移動方向(Y方向)の位置ズレを抑制することができる。
【0052】
(態様5)
態様4において、溝部117aは、二次転写ローラ41などの転写ローラの回転中心を中心とする円弧形状である。
これによれば、実施形態で説明したように、溝部117aが加圧方向に延びる溝に比べて、転写ニップを形成したときの手前側などの軸方向一端側と、後側などの軸方向他端側との転写ニップにおける転写ベルトの移動方向(Y方向)の位置ズレを抑制することができる。
【0053】
(態様6)
態様1乃至5いずれかにおいて、複数の張架ローラのうちのひとつは、軸方向に対する傾きが調整可能に構成されている。
これによれば、
図3を用いて説明したように、二次転写ユニット40などのベルトユニットが自然状態のねじれによる転写ベルトのベルト寄りを抑制することができる。
【0054】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、転写ベルトは、二次転写ベルトである。
これによれば、二次転写ベルトのベルト寄りを抑制することができる。
【0055】
(態様8)
二次転写装置400などの転写装置を備えた画像形成装置において、転写装置として、態様1乃至8いずれかの転写装置を用いる。
これによれば、二次転写ベルト102などの転写ベルトのベルト寄りを抑制することができる。
【符号の説明】
【0056】
31 :中間転写ベルト(像担持体)
40 :二次転写ユニット(ベルトユニット)
41 :二次転写ローラ(転写ローラ)
42 :分離ローラ(張架ローラ)
43 :従動ローラ(張架ローラ)
44 :駆動ローラ(張架ローラ)
45 :寄り止めローラ(張架ローラ)
46 :テンションローラ(張架ローラ)
100 :プリンタ(画像形成装置)
102 :二次転写ベルト(転写ベルト)
103 :ローラ支持板
106 :二次転写ローラ軸
108 :回転アーム(加圧部材)
109 :回転アーム(加圧部材)
110 :接触面
111 :接触面
113 :引き出し筐体(ユニット支持筐体)
114 :スプリング
115 :スプリング
116 :回転中心軸部材(第一支持部)
116a :穴部
117 :回転中心軸部材(第二支持部)
117a :溝部
118 :軸部材
202 :傾き調整部材
203 :ピン
204 :ネジ
205 :ネジ挿入穴
400 :二次転写装置(転写装置)
N2 :二次転写ニップ(転写ニップ)
P :記録材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】