(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065537
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】感光性組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 75/045 20160101AFI20240508BHJP
【FI】
C08G75/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174462
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】中 建介
(72)【発明者】
【氏名】松川 公洋
(72)【発明者】
【氏名】井本 裕顕
【テーマコード(参考)】
4J030
【Fターム(参考)】
4J030BA03
4J030BA04
4J030BA41
4J030BB07
4J030BC08
4J030BC43
4J030BF05
4J030BF07
4J030BG10
4J030BG25
4J030BG27
(57)【要約】
【課題】光照射及び低温加熱により高耐熱性及び自己修復性を示す硬化膜を与え得る感光性組成物を提供する。
【解決手段】重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)及びポリチオール化合物(B)を含む、感光性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)及びポリチオール化合物(B)を含む、感光性組成物。
【請求項2】
前記重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)が、下記式(1)で表されるシルセスキオキサンである、請求項1に記載の感光性組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基、又はR
4(R
5)
2SiO-で表される基であり;R
4は、重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基であり;R
5は、それぞれ独立して、炭素数1以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基であり;R
2及びR
3は、それぞれ独立して、炭素数1以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基であり;複数あるR
1は、互いに同一でも異なっていてもよく;複数あるR
2は、互いに同一でも異なっていてもよく;複数あるR
3は、互いに同一でも異なっていてもよく;R
4が複数ある場合、それらは、互いに同一でも異なっていてもよく;R
5が複数ある場合、それらは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)が、下記式(1a)で表されるシルセスキオキサンである、請求項1に記載の感光性組成物。
【化2】
【請求項4】
前記ポリチオール(B)の含有量が、前記ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)100質量部に対して5質量部以上40質量部以下である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項5】
有機溶剤(C)をさらに含有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性組成物を硬化させてなる、硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性組成物及び硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料はその優れた機械的特性や熱的特性などから、電子材料、自動車材料など様々な用途に利用されている。近年、各製品においては高性能化や高付加価値化が求められており、樹脂材料にもさらなる高性能化や高機能化が要求されている。
【0003】
高性能化の例として、高耐熱性付与が挙げられ、これまでにシルセスキオキサンを用いた例が報告されている。特許文献1には、耐熱性、透明性が高く、光半導体から発せられた光を長期間にわたりムラなく安定して色変換することができる硬化物を与える感光性組成物が提案されている。
【0004】
また、高機能化としては、硬化膜の表面につけられた傷が自ら修復する、又は簡易な処理を施すことで修復される自己修復性の付与などが挙げられる。非特許文献1には、ポリロタキサンを主成分とする自己修復材料の例が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】国立研究開発法人科学技術振興機構,“凹み傷も切り傷も自己修復できるコーティング材料を開発~車のコーティングから止血シートまで幅広い分野で製品化に繋がる可能性~”,[online],平成28年11月11日,[令和4年9月29日検索],インターネット<URL:https://www.jst.go.jp/pr/announce/20161111/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、光硬化性又は低温硬化性、耐熱性及び自己修復性等の特性を1つ又は2つ示す樹脂材料は各々報告されているが、製品の更なる高付加価値化のためには、これら3つの特性を総合的に有することが求められている。特に、近年では、成形後の性能及び機能だけでなく、製造工程における省エネルギー化も注目を浴びている。そのため、硬化性組成物には、硬化により硬化物を製造する際に、光で硬化すること又は一般的な硬化温度である約230℃よりも低い温度で硬化することも求められている。
【0008】
本発明の課題は、光照射及び低温加熱により高耐熱性及び自己修復性を示す硬化膜を与え得る感光性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサンとポリチオールとを含む組成物が、光照射及び低温加熱により硬化し、高耐熱性及び自己修復性を示す硬化膜を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の構成を含む。
【0010】
〔1〕
重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)及びポリチオール化合物(B)を含む、感光性組成物。
〔2〕
前記重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)が、下記式(1)で表されるシルセスキオキサンである、〔1〕に記載の感光性組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基、又はR
4(R
5)
2SiO-で表される基であり;R
4は、重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基であり;R
5は、それぞれ独立して、炭素数1以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基であり;R
2及びR
3は、それぞれ独立して、炭素数1以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基であり;複数あるR
1は、互いに同一でも異なっていてもよく;複数あるR
2は、互いに同一でも異なっていてもよく;複数あるR
3は、互いに同一でも異なっていてもよく;R
4が複数ある場合、それらは、互いに同一でも異なっていてもよく;R
5が複数ある場合、それらは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
〔3〕
前記重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)が、下記式(1a)で表されるシルセスキオキサンである、〔1〕又は〔2〕に記載の感光性組成物。
【化2】
〔4〕
前記ポリチオール(B)の含有量が、前記ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)100質量部に対して5質量部以上40質量部以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の感光性組成物。
〔5〕
有機溶剤(C)をさらに含有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感光性組成物。〔6〕
〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の感光性組成物を硬化させてなる、硬化膜。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光照射及び低温加熱により高耐熱性及び自己修復性を示す硬化膜を与え得る感光性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.感光性組成物
本発明の一実施形態に係る感光性組成物は、重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)及びポリチオール(B)を含む。本実施形態に係る感光性組成物がこれらの成分を含むことにより、光照射及び低温加熱のような温和な条件下でチオール-エン反応を進行させることができ、オリゴマー化又はポリマー化が進行する。また、重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサンを使用することで、高耐熱性及び自己修復性といった各種特性を硬化膜に付与することができる。
【0013】
なお、本明細書において、重合性二重結合とは、炭素-炭素二重結合を意味する。また、本明細書において、光照射及び低温加熱により硬化膜を与えるとは、光照射に加え、従来一般的とされる硬化温度である約230℃よりも低い温度(例えば200℃、180℃、150℃、120℃、又は100℃等の温度)での加熱により、組成物中の重合性化合物が重合し、硬化膜が形成されることを意味する。
【0014】
1-1.ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)
重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)(以下、「ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)」、「成分(A)」などと称することがある。)は、ダブルデッカー型シルセスキオキサン骨格に、重合性二重結合を有する官能基が2つ以上置換されてなる化合物である限り、特に限定されない。ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)が有する重合性二重結合の数は、好ましくは2以上6以下、より好ましくは2以上4以下、さらに好ましくは2である。好適なダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0015】
【0016】
一般式(1)中、R1は、重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無
置換の炭化水素基、又はR4(R5)2SiO-で表される基である。一般式(1)中に2つあるR1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0017】
なお、本明細書において、炭化水素基には、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。脂肪族炭化水素基は、直鎖状のものに限られず、分岐構造を有していてもよく、環状構造を有していてもよい。また、芳香族炭化水素基は、単環式、多環式、又は縮合環式であってよく、複素環式の芳香族炭化水素基であってもよい。
また、本明細書において、炭化水素基の炭素数は、炭化水素基が置換基を有する場合には、置換基の炭素数も含むものとする。
【0018】
R1で表される重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基における重合性二重結合の数は、特に限定されず、通常1以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。
【0019】
R1で表される重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基の炭素数は、炭化水素基が脂肪族炭化水素基である場合、好ましくは2以上16以下、より好ましくは2以上12以下、さらに好ましくは2以上8以下である。炭化水素基が芳香族炭化水素基である場合、炭化水素基の炭素数は、通常3以上20以下、好ましくは6以上20以下、より好ましくは6以上16以下、さらに好ましくは6以上12以下である。
【0020】
R1で表される重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の無置換の脂肪族炭化水素基としては、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルアリル、2-メチル-1-プロペニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、6-ヘプテニル、7-オクテニル、8-ノネニル、9-デセニル、10-ウンデセニル、11-ドデセニル、12-トリデセニル、13-テトラデセニル、14-ペンタデセニル、15-ヘキサデセニル、16-ヘプタデセニル、17-オクタデセニル、18-ノナデセニル、及び19-イコセニル等が挙げられる。
【0021】
R1で表される重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の芳香族炭化水素基としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-ピレニル、2-ピレニル、4-ピレニル、1-トリフェニレニル、2-トリフェニレニル、2-トリアジニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、及び2-ピラジニル等の無置換の芳香族炭化水素基に後述する炭素数2以上6以下のアルケニルが置換した基が挙げられる。
【0022】
R1で表される重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、及びn-ヘキシル等の炭素数1以上6以下のアルキル;ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルアリル、2-メチル-1-プロペニル、4-ペンテニル、及び5-ヘキセニル等の炭素数2以上6以下のアルケニル;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル等の炭素数3以上6以下のシクロアルキル;フェニル、1-ナフチル、及び2-ナフチル等の炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基;フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード等のハロゲノ;前記炭素数1以上6以下のアルキルを有する炭素数1以上6以下のアルコキシ;前記炭素数3以上6以下のシクロアルキルを有する炭素数3以上6以下のシクロアルコキシ;並びにRCOO-又はROCO-で表される基(Rは、上述した炭素数1以上6以下のアルキル、炭素数3以上6以下のシクロアルキル、又は炭素数6
以上10以下の芳香族炭化水素基である。);等が挙げられる。
【0023】
R1がR4(R5)2SiO-で表される基である場合、R4は、重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基であり、R5は、それぞれ独立して、炭素数1以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基である。一般式(1)中、R4が複数ある場合、それらは、互いに同一でも異なっていてもよく、R5が複数ある場合、それらは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0024】
R4で表される重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基は、R1で表される重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0025】
R5で表される炭素数1以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基の炭素数は、炭化水素基が脂肪族炭化水素基である場合、好ましくは2以上16以下、より好ましくは2以上12以下、さらに好ましくは2以上8以下である。炭化水素基が芳香族炭化水素基である場合、炭化水素基の炭素数は、通常3以上20以下、好ましくは6以上20以下、より好ましくは6以上16以下、さらに好ましくは6以上12以下である。
【0026】
R5で表される炭素数1以上20以下の無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、及びn-ドコシル等のアルキル;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル等のシクロアルキル;並びにプロパルギル等のアルキニル;等が挙げられる。また、炭素数1以上20以下の無置換の炭化水素基は、これらの他にも、上述した重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の無置換の脂肪族炭化水素基であってもよい。
【0027】
R5で表される炭素数3以上20以下の無置換の芳香族炭化水素基としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-ピレニル、2-ピレニル、4-ピレニル、1-トリフェニレニル、2-トリフェニレニル、2-トリアジニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、及び2-ピラジニル等が挙げられる。
【0028】
R5で表される炭素数1以上20以下の炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、R1で表される重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の炭化水素基が有していてもよい置換基として説明したものが挙げられる。
【0029】
R1は、上述したもののうち、重合性二重結合を有する炭素数2以上20以下の無置換の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、ビニル又はアリルであることがより好ましく、ビニルであることがさらに好ましい。また、一般式(1)中に2つあるR1は、互いに同一であることが好ましい。
【0030】
一般式(1)中、R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基である。一般式(1)中に2つあるR2は、互いに同一でも異なっていてもよい。また、一般式(1)中に8つあるR3は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0031】
R2及びR3で表される炭素数1以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基は、R5で表される炭素数1以上20以下の置換又は無置換の炭化水素基と同義である。
【0032】
R2は、上述したもののうち、炭素数1以上20以下の無置換の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、又はイソブチルであることが好ましく、メチル又はエチルであることがより好ましく、メチルであることがさらに好ましい。また、一般式(1)中に2つあるR2は、互いに同一であることが好ましい。
【0033】
R3は、上述したもののうち、炭素数3以上20以下の無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニルであることがより好ましい。また、一般式(1)中に8つあるR3は、互いに同一であることが好ましい。
【0034】
特に好ましいダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)としては、下記式(1a)で表される化合物(一般式(1)において、R1がビニル、R2がメチル、R3がフェニルである化合物)が挙げられる。
【0035】
【0036】
ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)は、公知の方法又は公知の方法に準じた方法により製造することができる。公知の方法としては、例えば特開2006-022207号公報に記載の方法が挙げられる。ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)としては、市販の化合物を使用してもよい。
【0037】
1-2.ポリチオール(B)
ポリチオール(B)(以下、「成分(B)」と称することがある。)は、1分子当たり2つ以上のチオール基(メルカプト基)を有する化合物であれば、特に限定されない。ポリチオール(B)が有するチオール基(メルカプト基)の数は、通常2以上10以下、好ましくは2以上6以下、より好ましくは2以上4以下である。ポリチオール(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0038】
ポリチオール(B)としては、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール等のポリオールと、メルカプト酢酸及び3-メルカプトプロピオン酸等のチオール基(メルカプト基)含有カルボン酸とのエステル;前記ポリオールのメルカプトアルキルエーテル;並びにポリメルカプトアルカン;等が挙げられる。
【0039】
ポリチオール(B)の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトチオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールポリ(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピル)エーテル、エチレングリコールビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(2-メルカプトエチル)エーテル、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、及び1,10-デカンジチオール等が挙げられる。
【0040】
本実施形態に係る感光性組成物において、ポリチオール(B)の含有量は、特に限定されないが、光硬化性及び低温硬化性の観点から、ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上40質量部以下である。
【0041】
1-3.有機溶剤(C)
本実施形態に係る感光性組成物は、さらに有機溶剤(C)(以下、「成分(C)」と称することがある。)を含有していてもよい。有機溶剤(C)としては、ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)及びポリチオール(B)を溶解できるものが好ましい。有機溶剤(C)としては、炭化水素系溶剤(例えば、ヘキサン、ベンゼン、及びトルエンなど)、エーテル系溶剤(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン、及びシクロペンチルメチルエーテル(CPME)など)、ハロゲン化炭化水素系溶剤(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、及びクロロベンゼンなど)、ケトン系溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンなど)、アルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、及びtert-ブチルアルコールなど)、ニトリル系溶剤(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、及びベンゾニトリルなど)、エステル系溶剤(例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチルなど)、カーボネート系溶剤(例えば、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートなど)、アミド系溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンなど)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶剤(例えば、HCFC-141b及びHCFC-225など)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶剤(例えば、炭素数2以上6以下のHFCsなど)、パーフルオロカーボン系溶剤(例えば、パーフルオロペンタン及びパーフルオロヘキサンなど)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶剤(例えば、フルオロシクロペンタン及びフルオロシクロブタンなど)、酸素含有フッ素系溶剤(例えば、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、及びフルオロアルコールなど)、及び芳香族系フッ素溶剤(例えば、α,α,α-トリフルオロトルエン及びヘキサフルオロベンゼンなど)が挙げられる。有機溶剤(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
本実施形態に係る感光性組成物が有機溶剤(C)を含有する場合、有機溶剤(C)の含有量は、感光性組成物全量に対して、通常0質量%超95質量%以下であり、好ましくは50質量%以上95質量%以下、より好ましくは70質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上90質量%以下である。
【0043】
1-4.その他の成分
本実施形態に係る感光性組成物は、基材への塗布及び硬化により硬化膜を形成するにあたり、塗布均一性及び硬化膜と基材との密着性を向上させるために、各種の添加剤を含有
していてもよい。添加剤としては、ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)以外の重合性二重結合を有する化合物;界面活性剤(レベリング剤);シランカップリング剤等の密着性向上剤;酸化防止剤;分子量調整剤;紫外線吸収剤;凝集防止剤;及び水;等が主に挙げられる。
【0044】
1-4-1.ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)以外の重合性二重結合を有する化合物
本実施形態に係る感光性組成物は、ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)以外の重合性二重結合を有する化合物(以下、「その他の重合性二重結合を有する化合物」と称することがある。)を含んでいてもよい。その他の重合性二重結合を有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0045】
その他の重合性二重結合を有する化合物が有する重合性二重結合の数は、好ましくは2以上8以下、より好ましくは2以上6以下、さらに好ましくは2以上4以下である。
【0046】
その他の重合性二重結合を有する化合物としては、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール等のポリオールと、アクリル酸及びメタクリル酸等の重合性二重結合含有カルボン酸とのエステル;前記ポリオールのビニルエーテル、アリルエーテル、及びブテニルエーテル等のアルケニルエーテル;トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、及びトリアリルイソシアヌレート等の重合性二重結合含有イソシアヌレート;アクリル酸ビニル及びアクリル酸アリル等のアクリル酸アルケニル;メタクリル酸ビニル及びメタクリル酸アリル等のメタアクリル酸アルケニル;並びにジビニルベンゼン及びトリビニルベンゼン等の芳香族ビニル;等が挙げられる。
【0047】
1-4-2.界面活性剤
本実施形態に係る感光性組成物は、感光性組成物の基材への濡れ性、レベリング性、又は塗布性を向上させる観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0048】
界面活性剤としては、ポリフローNo.45、ポリフローKL-245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、及びポリフローNo.95(いずれも商品名;共栄社化学(株)製);ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK346、BYK-UV3500、及びBYK-UV3570(いずれも商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製);KP-341、KP-358、KP-368、KF-96-50CS、及びKF-50-100CS(いずれも商品名;信越化学工業(株)製);サーフロンSC-101、及びサーフロンKH-40(いずれも商品名;AGCセイミケミカル(株)製);フタージェント222F、フタージェント251、及びFTX-218(いずれも商品名;(株)ネオス製);EFTOP EF-351、EFTOP EF-352、EFTOP EF-601、EFTOP EF-801、及びEFTOP EF-802(いずれも商品名;三菱マテリアル(株)製);メガファック(登録商標)F-410、メガファック(登録商標)F-430、メガファック(登録商標)F-444、メガファック(登録商標)F-472SF、メガファック(登録商標)F-475、メガファック(登録商標)F-477、メガファック(登録商標)F-552、メガファック(登録商標)F-553、メガファック(登録商標)F-554、メガファック(登録商標)F-555、メガファック(登録商標)F-556、メガファック(登録商標)F-558、メガファック(登録商標)F-563、メガファック(登録商標)R-94、メガファック(登録商標)RS-75、及びメガファック(登録商標)RS-72-K(いずれも商品名;DIC(株)製);TEGO Rad 2200N及びTEGO Rad 2250N(いずれも商品名;エボニック デグサ ジャパン(株)製);並びにサイラプレーン(登録商標)FM-0511(商品名;JNC(株)製);等の市販品が好ましく例示される。
【0049】
本実施形態に係る感光性組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、感光性組成物全量に対して0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0050】
1-4-3.カップリング剤
本実施形態に係る感光性組成物は、感光性組成物から形成される硬化膜と基材との密着性を向上する観点から、カップリング剤を含有することが好ましい。カップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0051】
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系及びチタネート系の化合物を用いることができる。カップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン系カップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤;並びにテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤;等を挙げることができる。これらの中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。市販のカップリング剤としては、サイラエースS510(JNC(株)製)、及びサイラエースS530(JNC(株)製)等が挙げられる。
【0052】
本実施形態に係る感光性組成物が密着性向上剤を含有する場合、密着性向上剤の含有量は、感光性組成物全量に対して0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0053】
1-4-4.酸化防止剤
本実施形態に係る感光性組成物は、硬化膜の透明性を向上する観点、及び硬化膜が高温に晒された場合の黄変を防止する観点から、酸化防止剤を更に含有することが好ましい。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0054】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられ、耐光性の観点から、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤である。酸化防止剤の具体例としては、Irganox1010、Irganox1010FF、Irganox1035、Irganox1035FF、Irganox1076、Irganox1076FD、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1726、Irganox1425WL、Irganox1520L、Irganox245、Irganox245FF、Irganox259、Irganox3114、Irganox565、及びIrganox565DD(いずれも商品名;BASFジャパン(株)製);並びにADK STAB AO-20、ADK STAB AO-30、ADK STAB AO-50、ADK STAB AO-60、及びADK STAB AO-80(いずれも商品名;(株)ADEKA製);等が挙げられる。これらの中でも、好ましい酸化防止剤は、Irganox1010、及びADK STAB AO-60である。
【0055】
本実施形態に係る感光性組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、感光性組成物全量に対して0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0056】
1-4-5.分子量調整剤
本実施形態に係る感光性組成物は、重合により生成するポリマーの分子量が高くなることを抑制し、優れた保存安定性を発現する観点から、分子量調整剤を含有することが好ましい。分子量調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0057】
分子量調整剤としては、メルカプタン類(ただし、ポリチオール(B)に該当するものを除く。)、キサントゲン類、キノン類、及びヒドロキノン類等が挙げられる。分子量調整剤の具体例としては、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、アントラキノン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、3,6-ジヒドロキシベンゾノールボルナン、4-メトキシフェノール、2,2’,6,6’-テトラtert-ブチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナ-ト]、4-tert-ブチルピロカテコール、N-ヘキシルメルカプタン、N-オクチルメルカプタン、N-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、フェノチアジン、及び2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン等が挙げられる。これらのうち、分子量調整剤は、優れた保存安定性を発現するという点から、ナフトキノン系分子量調整剤であることが好ましく、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンであることがより好ましい。
【0058】
1-4-6.紫外線吸収剤
本実施形態に係る感光性組成物は、硬化により形成される硬化膜の透明性の低下を抑制する観点から、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0059】
紫外線吸収剤の具体例としては、TINUVIN P、TINUVIN 120、TINUVIN 144、TINUVIN 213、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 571、及びTINUVIN 765(いずれも商品名;BASFジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0060】
本実施形態に係る感光性組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、感光性組成物全量に対して0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0061】
1-4-7.凝集防止剤
本実施形態に係る感光性組成物は、有機溶剤(C)を含有する場合、ダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)、ポリチオール(B)、及び必要に応じて含まれるその他の成分と有機溶剤(C)とをなじませ(相溶化させ)、凝集を防止する観点から、凝集防止剤を含有することが好ましい。凝集防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0062】
凝集防止剤の具体例としては、DISPERBYK-145、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-182、DISPERBYK-184、DISPERBYK-185、DISPERBYK-2163、DISPERBYK-2164、BYK-220S、DISPERBYK-191、DISPERBYK-199、及びDISPERBYK-2015(いずれも商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製);FTX-218、フタージェント710FM、及びフタージェント710FS(いずれも商品名;(株)ネオス製);フローレンG-600、及びフローレンG-700(いずれも商品名;共栄社化学(株)製);等が挙げられる。
【0063】
本実施形態に係る感光性組成物が凝集防止剤を含有する場合、凝集防止剤の含有量は、感光性組成物全量に対して0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0064】
1-5.感光性組成物の保存
本実施形態に係る感光性組成物は、-30℃以上25℃以下の温度範囲で保存すると、組成物の経時安定性が良好となり好ましい。保存温度が-20℃以上10℃以下であれば、析出物の発生もなくより好ましい。
【0065】
2.感光性組成物から得られる硬化膜
本実施形態に係る感光性組成物は、重合性二重結合を2つ以上有するダブルデッカー型シルセスキオキサン(A)、ポリチオール(B)、並びに必要に応じて有機溶剤(C)及びその他の成分を混合することにより得ることができる。
【0066】
上記のようにして調製された感光性組成物が溶液状である場合には、これをそのままワニスとして硬化膜の製造に用いることができ、溶液状でない場合には、調製された感光性組成物にさらに有機溶剤(C)を加えて溶液状にしたものをワニスとして硬化膜の製造に用いる。このワニスに光照射を行った後に基材表面に塗布し、又はワニスを基材表面に塗布して得られた塗膜に光照射を行い、その後、例えば加熱等によりワニスを乾燥させることで、感光性組成物の硬化膜を形成することができる。ワニスに照射する光としては、例えば紫外線が挙げられる。ワニスへの紫外光照射は、スポットUV照射装置といった公知の方法により行うことができる。基材表面へのワニスの塗布は、ドロップキャスト法、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、及びスリットコート法等従来から公知の方法により行うことができる。次いで、得られた塗膜をホットプレート、又はオーブン等で仮焼成する。仮焼成条件は各成分の種類及び配合割合によって異なるが、通常70℃以上150℃以下の温度で、オーブンなら5~15分間、ホットプレートなら1~5分間である。その後、塗膜を硬化させるために本焼成される。本焼成条件は、各成分の種類及び配合割合によって異なるが、通常80℃以上130℃以下、好ましくは90℃以上110℃以下の温度で、オーブンなら30~90分間、ホットプレートなら5~30分間であり、加熱処理することによって硬化膜を得ることができる。
【0067】
このようにして得られた硬化膜は耐熱性に優れているのみならず、自己修復性も有している。また、本実施形態の好適な態様においては、硬化膜は、高い透明性も有している。
したがって、本実施形態に係る感光性組成物から得られる硬化膜は、例えばLED発光体の保護膜として好適に使用することができる。
【実施例0068】
次に本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0069】
以下、実施例及び比較例で用いた化合物について説明する。
<成分(A):ダブルデッカー型シルセスキオキサン>
・XQ1089(商品名):JNC(株)製、式(1a)で表される化合物。
【0070】
<成分(B):ポリチオール>
・EGMP-4(商品名):SC有機化学(株)製、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)。
・TMMP(商品名):SC有機化学(株)製、(1)2-エチル-2-{[(3-スルファニルプロパノイル)オキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル=ビス(2-エチル-2-{[(3-スルファニルプロパノイル)オキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル=ビス(3-スルファニルプロパノアート)(主成分)と(2)2-エチル-2-[({3-[(3-スルファニルプロパノイル)スルファニル]プロパノイル}オキシ)メチル]プロパン-1,3-ジイル=ビス(3-スルファニルプロパノアート)と(3)2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジイル=ビス(3-スルファニルプロパノアート)の3成分系混合物。
・Multhiol Y-4(商品名):SC有機化学(株)製、3-{3-(3-メルカプト-プロポキシ)-2,2-ビス[(3-メルカプトプロポキシ)メチル]プロポキシ}-1-プロパンチオールを主成分とする、前記主成分は(1)テトラキス[(アリルオキシ)メチル]メタンを主成分とするペンタエリスリトールと3-クロロ-1-プロペンの反応生成物と(2)S-チオ酢酸との反応生成物のアルカリ処理物である。
【0071】
<成分(C):有機溶剤>
・THF:富士フイルム和光純薬(株)製、テトラヒドロフラン(商品名)。
【0072】
<その他の成分>
・TAIC(商品名):三菱ケミカル(株)製、トリアリルイソシアヌレート。
【0073】
(ワニスの作製)
実施例1~8及び比較例1として、表1に示した組成となるように、ワニスを調製した。ガラススクリュー管に各成分を入れ、攪拌・溶解させワニスとした。
表中、各成分の含有量は、ワニス全量を100質量%としたときの含有量である。
【0074】
(硬化膜の作製)
ワニスに、スポットUV照射装置[スポットキュアSP-11(商品名)、ウシオ電機(株)製]で紫外光(波長365nm)を紫外線積算露光量が140J/cm2となるよう照射した。これを各種基材上にドロップキャスト法で100~200nmの厚さに塗工し、ホットプレートにて100℃で15分間乾燥させ、硬化膜を得た。得られた硬化膜の厚みを表1に示す。ここで、硬化が生じず、液状のままだったものは膜形成×とした。
【0075】
(自己修復性の評価)
得られた硬化膜にスパチュラで傷を付け、1日後に目視による観察を行った。傷が消えていた場合を〇、残っていた場合を×とした。
【0076】
(耐熱性の評価)
得られた硬化膜の耐熱性をTG-DTAによる熱重量減少量によって評価した。30℃から550℃まで10℃/分で昇温し、測定を行った。100℃時点の重量減少量を基準値とし、300℃での重量減少量を求めた。300℃での重量減少量が10%未満の場合は〇とし、10%以上の場合は×とした。
【0077】
(透明性の評価)
得られた硬化膜の透明性をUV-VISによる透過率によって評価した。波長400nmにおける透過率が90%以上の場合は〇とし、90%未満の場合は×とした。
【0078】
【0079】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1~8の感光性組成物は、光照射と150℃以下の低温加熱で硬化膜を与え、得られた硬化膜が高い耐熱性と自己修復性を示すことが分かる。一方、比較例1はこれらの特性の内、1つ以上を満たしていないことが分かる。
【0080】
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本明細書に記載された各実施形態は、その趣旨を逸脱しない範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。