(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065618
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/127 20060101AFI20240508BHJP
A01F 12/60 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A01D41/127 100
A01F12/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174574
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】関 正裕
【テーマコード(参考)】
2B396
【Fターム(参考)】
2B396JA04
2B396JC08
2B396KE01
2B396LA02
2B396LC09
2B396LN02
2B396LN13
2B396LP03
2B396LR03
2B396MA02
2B396MC02
2B396ML02
2B396PA02
2B396PC01
2B396PC07
2B396QA13
2B396QA24
2B396QA27
2B396QC04
2B396QE02
2B396QE31
2B396QG05
2B396RA11
(57)【要約】
【課題】圃場の収穫量を算出するにあたり、算出精度の低下を防止する。
【解決手段】制御部100は、圃場での収穫開始時に、堆積高さ検出センサ81~83の検出穀粒量を取得し、該検出穀粒量に基づいて、穀粒タンク10内の残留穀粒の有無を判定し、穀粒タンク10内に残留穀粒があると判定したとき、検出穀粒量に基づいて穀粒タンク10内の残留穀粒量を算出し、圃場の収穫量から減算する。
【選択図】
図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫した穀粒を貯留する穀粒タンクと、
前記穀粒タンク内の穀粒量を検出する穀粒量検出手段と、
前記穀粒量検出手段の検出穀粒量に基づいて圃場の収穫量を算出する制御部と、を備えるコンバインであって、
前記制御部は、
前記圃場での収穫開始時に、前記穀粒量検出手段の検出穀粒量を取得し、該検出穀粒量に基づいて、前記穀粒タンク内の残留穀粒の有無を判定する残留穀粒判定手段と、
前記穀粒タンク内に残留穀粒があると判定したとき、前記穀粒量検出手段の検出穀粒量に基づいて、前記穀粒タンク内の残留穀粒量を算出し、前記圃場の収穫量から減算する収穫量減算処理手段と、を備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記穀粒量検出手段は、前記穀粒タンク内の穀粒の堆積高さを検出することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記穀粒タンク内の穀粒に作用するように駆動して穀粒の表層を均す均平手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記穀粒タンク内の穀粒を排出する穀粒排出装置をさらに備え、
前記穀粒排出装置の穀粒排出動作中又は穀粒排出動作後に前記均平手段が駆動されることを特徴とする請求項3に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の収穫量を算出するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
作物を収穫して脱穀した穀粒を貯留する穀粒タンクと、穀粒タンクに貯留された穀粒の収量を測定する収量センサとを有し、収量センサのセンサ値などに基づいて圃場の収穫量や収量率(単位面積当たりの収穫量)を算出するコンバインが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種のコンバインでは、複数の圃場を跨って収穫する場合、例えば、圃場A、圃場Bの順番で収穫する場合、圃場Aで収穫した穀粒が穀粒タンクに残った状態で圃場Bの収穫を開始すると、圃場Aで収穫した穀粒が圃場Bで収穫したものとされ、算出される圃場Bの収穫量が実際の収穫量よりも多くなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、収穫した穀粒を貯留する穀粒タンクと、前記穀粒タンク内の穀粒量を検出する穀粒量検出手段と、前記穀粒量検出手段の検出穀粒量に基づいて圃場の収穫量を算出する制御部と、を備えるコンバインであって、前記制御部は、前記圃場での収穫開始時に、前記穀粒量検出手段の検出穀粒量を取得し、該検出穀粒量に基づいて、前記穀粒タンク内の残留穀粒の有無を判定する残留穀粒判定手段と、前記穀粒タンク内に残留穀粒があると判定したとき、前記穀粒量検出手段の検出穀粒量に基づいて、前記穀粒タンク内の残留穀粒量を算出し、前記圃場の収穫量から減算する収穫量減算処理手段と、を備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のコンバインであって、前記穀粒量検出手段は、前記穀粒タンク内の穀粒の堆積高さを検出することを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項2に記載のコンバインであって、前記穀粒タンク内の穀粒に作用するように駆動して穀粒の表層を均す均平手段をさらに備えることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項3に記載のコンバインであって、前記穀粒タンク内の穀粒を排出する穀粒排出装置をさらに備え、前記穀粒排出装置の穀粒排出動作中又は穀粒排出動作後に前記均平手段が駆動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、圃場での収穫開始時に、穀粒タンク内に残留穀粒があると判定したとき、穀粒量検出手段の検出穀粒量に基づいて、穀粒タンク内の残留穀粒量を算出し、圃場の収穫量から減算するので、圃場の収穫量を算出するにあたり、穀粒タンク内の残留穀粒に起因して算出精度が低下することを防止できる。
また、請求項2の発明によれば、穀粒量検出手段は、穀粒タンク内の穀粒の堆積高さを検出するので、穀粒タンク内の穀粒残量を精度良く検出できる。
また、請求項3の発明によれば、穀粒タンク内の穀粒に作用するように駆動して穀粒の表層を均す均平手段を備えるので、穀粒の堆積高さを検出する穀粒量検出手段の検出精度を向上させることができる。
また、請求項4の発明によれば、穀粒排出装置の穀粒排出動作中又は穀粒排出動作後に均平手段が駆動されるので、穀粒タンク内の残留穀粒を均平化し、その堆積高さを精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圃場作業管理システムを搭載したコンバインの平面図である。
【
図6】品質計測後の穀粒還元経路を示す脱穀部の正面断面図である。
【
図11】コンバインの制御構成を示すブロック図である。
【
図12】グリッドマップの塗り潰し処理を示す説明図である。
【
図13】液晶モニタの表示画面(初期のグリッドマップによる圃場区画表示状態)を示す説明図である。
【
図14】液晶モニタの表示画面(圃場区画の確定操作待ち状態)を示す説明図である。
【
図15】液晶モニタの表示画面(再生成したグリッドマップによる圃場区画表示状態)を示す説明図である。
【
図16】(A)~(E)は矩形圃場の外形マップ作成手順を示す
【
図17】(A)~(E)は農道ターン圃場の外形マップ作成手順を示す
【
図18】(A)~(C)は欠損型圃場の外形マップ作成手順を示す
【
図19】(A)は最小2乗法による直線推定の説明図、(B)は曲線の接合点分割及び区間直線補間の説明図である。
【
図21】均平装置の第1撹拌部及び第2撹拌部の連結構造及び駆動構成を示す模式図である。
【
図22】圃場区画推定制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図23】グリッド生成制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図24】収量計算の処理手順を示すフローチャートである。
【
図25】予測制御(コンバイン用)の処理手順を示すフローチャートである。
【
図26】タンク残量補正制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図27】均平処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図28】液晶モニタの表示画面(起動状態)を示す説明図である。
【
図29】液晶モニタの表示画面(メニュー表示状態)を示す説明図である。
【
図30】液晶モニタの表示画面(履歴選択ダイアログAの表示状態)を示す説明図である。
【
図31】液晶モニタの表示画面(履歴選択ダイアログBの表示状態)を示す説明図である。
【
図32】液晶モニタの表示画面(履歴選択ダイアログCの表示状態)を示す説明図である。
【
図33】圃場作業管理制御の処理手順を示すフローチャート(1/3)である。
【
図34】圃場作業管理制御の処理手順を示すフローチャート(2/3)である。
【
図35】圃場作業管理制御の処理手順を示すフローチャート(3/3)である。
【
図36】予測制御(トラクタ・田植機用)の処理手順を示すフローチャートである。
【
図37】運搬収量補正の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び
図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、汎用コンバインであり、左右一対のクローラ式走行装置である走行装置2に支持された機体3を有している。機体3の前方には、圃場の穀稈を刈取る刈取部5が昇降自在に設けられており、機体3の前方一側には、オペレータが着座してコンバイン1を操縦する運転操作部6が設けられている。機体3の他側方には、刈取部5で刈取り・搬送された穀稈を脱穀処理及び選別処理する脱穀部7が設けられている。運転操作部6の後方には、脱穀部7で脱穀・選別された穀粒を貯留する穀粒タンク10が配置されており、穀粒タンク10の後方には、穀粒タンク10内に貯留された穀粒を機外に排出するための排出オーガ11が設けられている。
【0009】
刈取部5は、圃場の穀稈を分草するデバイダ12と、デバイダ12によって分草された穀稈を刈取るレシプロ式の刈刃13と、刈刃13の後方側に配設されたバケット状のプラットホーム14と、これらデバイダ12及び刈刃13の上方に配設され、穀稈を後方に掻き込むリール15と、を備えており、リール15によってプラットホーム14に掻き込まれた穀稈を、刈刃13が刈取るように構成されている。刈刃13によって刈り取られた穀稈は、プラットホーム14内のプラットホームオーガ16によって横送りされ、収穫した穀物をフィーダ17によって脱穀部7の扱室19内へ穀稈ごと投入するように構成されている。
【0010】
図2~
図4に示すように、脱穀部7は、刈取部5によって刈り取られた穀稈が投入される扱室19と、扱室19の下方に配置される選別室9と、を有し、扱室19において穀稈の脱穀処理を行なうと共に、選別室9において脱穀された処理物の選別処理を行なう。扱室19内には、その外周面にらせん状の案内板20aが取付けられた扱胴20が回転自在に収納されており、案内板20aには、穀稈を引っ掛けて扱胴20と共に回転させる突起状の扱歯20bが複数設けられている。また、扱室19は、その下方側(扱胴20の下方部分)が扱胴20の外周に沿った半円筒状の受網21によって形成されており、扱室19に投入された穀稈は、扱歯20bによって扱胴20と一緒に回転させられ、案内板20aによって機体後方側に搬送されながら、受網21によって擦り付けられて脱穀される。
【0011】
選別室9は、受網21の下方側に配設された揺動選別体22と、揺動選別体22の前部下方側から後部上方側に向かって選別風を送風する唐箕ファン23及び送風ファン24と、を有している。揺動選別体22は、上下二段構造となっており、上段のフィードパン25、チャフシーブ26及びストローラック27と、下段のグレンシーブ29、チャフシーブ30及びストローラック31と、からなり、これらが上段及び下段にて連続して設けられ、前後に揺動されることで処理物が比重選別される。
【0012】
フィードパン25は、波板状の移送板であって、受網21から漏下する処理物及び後述する二番物を受け止めて後方移送する。チャフシーブ26、30は、前後方向に所定間隔を存して並設される複数のフィンによって構成され、後方移送されたこれら処理物を唐箕ファン23及び送風ファン24の選別風によって風選別すると共に篩選別し、更に所定の目合の金網部材からなるグレンシーブ29を通過した穀粒は、一番物として一番ラセン32に落下する。
【0013】
一方、揺動選別体22の終端部まで移送された処理物は、ストローラック27、チャフシーブ30及びストローラック31を介して二番ラセン33に落下する。また、ストローラック31にて落下規制された長藁は、その終端まで移送され、機外に排出される。なお、扱室19及び選別室9は、機体3に開閉自在に支持されたサイドカバー36を上方に開くことで、作業者はアクセスすることができる。
【0014】
図3~
図5に示すように、一番ラセン32には、穀粒タンク10に一番物である穀粒を揚送するための揚穀装置37が連動連結され、二番ラセン33には、二番物を扱室19の一側方に配置した還元室39に揚送還元する還元装置40が連動連結されている。還元室39内には、扱胴20と平行な還元横ラセン41が軸装されており、還元横ラセン41によって、還元装置40から還元室39の後端部に還元された二番物が扱胴20の搬送方向とは逆方向、即ち後方から前方に向けて搬送される。
【0015】
還元室39は、その前端部に扱室19の脱穀始端部に臨む扱室還元口42を有し、還元横ラセン41によって還元室39の前端部まで搬送された二番物は、還元横ラセン41の前端に固定された跳出板43によって跳ね出されて、扱室還元口42を通って扱室19に還元される。
【0016】
図3~
図5に示すように、揚穀装置37の上端部前方には、貯留横ラセン45及び品質計測部50が配置されている。貯留横ラセン45は、左右方向に沿って配置されており、揚穀装置37の上端部から前方に跳ね出される穀粒を受け止めて右側方へ搬送し、穀粒タンク10内に落下させる。また、品質計測部50は、貯留横ラセン45の前方に配置され、揚穀装置37の上端部から前方に跳ね出される穀粒を選択的に受け入れ、その品質を計測する。つまり、品質計測部50は、穀粒タンク10よりも上流側の穀粒流路で穀粒の品質計測を行う。これにより、穀粒タンク10内で品質計測を行う従来に比べ、品質計測のタイミングを早めることができる。
【0017】
図4~
図7に示すように、品質計測部50は、選別された穀粒を貯留部61に貯留し、貯留した多数の穀粒を対象として品質計測を行う貯留計測式穀粒計測装置60と、選別された1又は数個の穀粒を対象として品質計測を行う単粒計測式穀粒計測装置である水分センサ70(水分測定手段)と、を備える。
【0018】
貯留計測式穀粒計測装置60は、揚穀装置37の上端部から前方に跳ね出される穀粒を受け入れる穀粒入口62と、穀粒入口62を開閉する入口シャッタ63と、穀粒入口62から受け入れた穀粒を貯留する貯留部61と、貯留部61の下部に形成され、貯留部61内の穀粒を揺動選別体22上に還元する穀粒出口64と、穀粒出口64を開閉する底シャッタ65と、貯留部61の一側部に設けられ、透明部材66を介して貯留部61内の穀粒を視認可能な撮像室67と、撮像室67内に配置され、透明部材66を介して貯留部61内の穀粒を照らすLEDなどの発光素子68と、撮像室67内に配置され、発光素子68で照らされた貯留部61内の穀粒を撮像するカメラ69と、を備える。
【0019】
貯留計測式穀粒計測装置60による品質計測を行う場合は、底シャッタ65を閉じた状態で入口シャッタ63を開き、穀粒入口62から穀粒を受け入れ、受け入れた穀粒を貯留部61に貯留する。貯留部61内の穀粒が所定量に達したら、透明部材66を介して貯留部61内の穀粒を発光素子68で照らしつつ、発光素子68で照らされた貯留部61内の穀粒をカメラ69で撮像する。撮像後は、底シャッタ65を開いて貯留部61内の穀粒を揺動選別体22上に還元するとともに、入口シャッタ63を閉じる。カメラ69が撮像した穀粒画像は、例えば、運転操作部6に設けられる液晶モニタ101(タッチパネル付き液晶パネル)に表示される。
【0020】
水分センサ70は、貯留部61の他側部に設けられている。水分センサ70の穀粒取込部71は、穀粒入口62から貯留部61至る穀粒貯留経路に配置されており、穀粒貯留経路を通る穀粒の一部を分岐させて水分センサ70の計測部72に取り込み、取り込んだ穀粒の水分率計測を行う。また、計測後の穀粒は、排出口73から排出され、揺動選別体22上に還元される。
【0021】
具体的に説明すると、本実施形態の水分センサ70は、一対のサンプリングスクリュー74で構成される穀粒取込部71と、水分計(図示せず)などを内装した計測部72と、を備える。穀粒取込部71は、一対のサンプリングスクリュー74に乗った穀粒を一対のサンプリングスクリュー74の所定方向の回転駆動に基づいて一粒ずつ計測部72内に送り込む。計測部72は、送り込まれた穀粒を破砕する破砕部(図示せず)と、破砕した穀粒を挟むように配置された一対の電極間(図示せず)で穀粒の水分を計測する水分計と、を備える。水分計は、一対の電極間の電気抵抗や静電容量の変化に基づいて穀粒の水分率を計測する。水分計の計測結果は、例えば、液晶モニタ101に表示される。
【0022】
図8~
図10に示すように、穀粒タンク10の内部には、穀粒タンク10の底部に配置され、穀粒タンク10内の穀粒を排出オーガ11に対して排出する排出横ラセン46と、穀粒タンク10内の穀粒堆積高さを検出する第1~第3の堆積高さ検出センサ81~83(堆積高さ検出手段)と、穀粒タンク10内の穀粒を撹拌して穀粒の堆積面を均平化する均平装置90とが設けられている。
【0023】
第1及び第2の堆積高さ検出センサ81、82は、穀粒の堆積面に向けてレーザ光を照射し、その反射光の戻り時間に基づいて穀粒の堆積高さを検出するレーザ測距センサである。また、第3の堆積高さ検出センサ83は、上下方向に並ぶ複数の検出部83aを備え、検出部83aに対する穀粒の接触又は近接を検出する接触式センサ(例えば、静電容量センサ)である。
【0024】
第1の堆積高さ検出センサ81は、穀粒タンク10の天井部に設けられ、下方に向けて照射するレーザ光の反射光に基づいて穀粒堆積高さを検出するが、穀粒堆積高さが低く、且つ穀粒タンク10内に塵埃が舞う状況では、レーザ光が減衰して検出精度が低下する可能性があり、また、穀粒堆積高さが満杯に近い状況では、堆積面までの距離が近くなり過ぎて検出精度が低下する可能性がある。
【0025】
第2の堆積高さ検出センサ82は、穀粒タンク10の前壁部の中間高さ(タンク高さの1/3程度)に設けられ、斜め下方に向けて照射するレーザ光の反射光に基づいて穀粒堆積高さを検出する。このような第2の堆積高さ検出センサ82によれば、第1の堆積高さ検出センサ81の検出精度が低下する低堆積状況でも穀粒堆積高さを精度良く検出できる。
【0026】
第3の堆積高さ検出センサ83は、穀粒タンク10の天井部に吊り下げ状に設けられ、上下方向に並ぶ複数の検出部83aによって穀粒堆積高さを検出する。このような第3の堆積高さ検出センサ83によれば、第1の堆積高さ検出センサ81の検出精度が低下する満杯に近い状況でも穀粒堆積高さを精度良く検出できる。
【0027】
均平装置90は、均平駆動モータ93の駆動に応じて穀粒タンク10内の穀粒に作用するように動作し、穀粒の表層(堆積面)を均す。このような均平装置90によれば、体積高さ検出センサ81~83によって穀粒の堆積高さを検出する際に、穀粒の表層を可及的に平らにすることで、堆積高さの検出精度を向上させることが可能になる。なお、均平装置90の詳細は後述する。
【0028】
図9に示すように、コンバイン1には、機体3の位置情報を取得する位置情報取得手段としてGNSSユニット102を備える。GNSSユニット102としては、例えば、数cmの誤差で高精度な測位が可能なRTK-GNSS測位システムが採用される。RTK-GNSS測位システムは、固定設置された基地局と、移動する移動局(コンバイン1)とのそれぞれで、GPSなどのGNSS測位を行い、基地局から移動局に送信される補正信号でリアルタイムに測位データを補正することで、誤差数cmの高精度な測位を実現するものである。また、移動局に所定の間隔をあけて2つのGNSSアンテナを設置すれば、移動局の絶対位置だけでなく、2つの測位結果に基づいて、移動局の進行方向(方位)も高精度に検出することが可能になる。
【0029】
図11に示すように、コンバイン1には、圃場作業管理システムに必要な各種の制御を行う制御部100が設けられている。制御部100の入力側には、前述した水分センサ70、液晶モニタ101のタッチパネル、堆積高さ検出センサ81~83及びGNSSユニット102の他に、後述する収量計算の実行をON/OFFする測定スイッチ103と、収量計算を中断する測定中断スイッチ104と、収穫する作物を設定する作物設定スイッチ105と、水分センサ70による水分測定を強制的に実行させる強制水分測定スイッチ106と、刈取クラッチ及び脱穀クラッチをON/OFF操作するパワークラッチスイッチ107と、排出オーガ11による穀粒排出をON/OFFする穀粒排出スイッチ108と、車速を検出する車速センサ109と、燃料タンク(図示せず)内の燃料の残量を検出する燃料残量検出センサ116と、後述するグリッドサイズを調整するグリッド調整ボタン110とが接続されている。
【0030】
また、制御部100の出力側には、前述した液晶モニタ101及び均平駆動モータ93の他に、刈取クラッチをON/OFFさせる刈取クラッチ駆動モータ111と、脱穀クラッチをON/OFFさせる脱穀クラッチ駆動モータ112と、
排出クラッチをON/OFFさせる排出クラッチ駆動モータ113とが接続されている。また、制御部100は、スマートフォンなどの外部通信装置114と通信可能であり、外部通信装置114を介してクラウド115に各種のデータを保存することができる。
【0031】
制御部100は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能的な構成として、走行状態判別手段と、収穫走行経路特定手段と、グリッドマップ生成手段と、グリッド塗り潰し手段と、圃場外形取得手段と、長辺判定手段と、グリッドサイズ変更手段と、収穫体積算出手段と、収穫重量算出手段と、残留穀粒判定手段と、収穫量減算処理手段と、穀粒排出時均平処理手段とを備える。また、圃場外形取得手段を実現する具体的な機能構成として、閉じ図形判定手段と、可否選択手段と、仮想線分生成手段と、圃場外形マップ算出手段とを備える。
【0032】
走行状態判別手段は、収穫走行と非収穫走行とを判別する。例えば、パワークラッチスイッチ107において刈取クラッチ及び脱穀クラッチがON操作され、且つ車速センサ109が所定以上の車速を検出したとき、収穫走行状態であると判定する。
【0033】
収穫走行経路特定手段は、GNSSユニット102が取得した機体位置情報と走行状態判別手段の判別結果とに基づいて機体3の収穫走行経路を特定する。例えば、
図12に示すように、収穫走行経路と非収穫走行経路を識別可能な状態で、収穫走行及び非収穫走行を含むすべての走行経路を方向座標群として記憶する。
【0034】
グリッドマップ生成手段は、圃場をグリッドGで示すグリッドマップGMを生成する。初期のグリッドマップGMは、例えば、方位を基準とし、東西方向及び南北方向に並ぶグリッドGで構成される。初期のグリッドGは、例えば、収穫物の条間に相当する0.3m×0.3mの正方形グリッドである。
【0035】
グリッド塗り潰し手段は、収穫走行経路上のグリッドDを塗り潰す。例えば、
図13に示すように、液晶モニタ101にグリッドマップGMを表示し、リアルタイムで収穫走行経路上のグリッドGを塗り潰し表示する。このとき、コンバイン1の収穫作業幅を考慮し、
図12に示すように、収穫作業幅と重なるグリッドGを塗り潰す。コンバイン1による収穫作業では、通常、圃場の外周側から反時計回りで収穫走行が行われるので、グリッドGの塗り潰し表示に基づいて、圃場の外形を認識できるだけでなく、収穫作業の進捗状況を容易に把握できる。
【0036】
圃場外形取得手段は、圃場の外形情報(以下、圃場区画情報と称する場合がある)を取得する。例えば、圃場外形マップ算出手段が算出した圃場外形マップを取得する。なお、圃場外形マップ算出手段による圃場外形マップの算出については後述する。
【0037】
長辺判定手段は、圃場の外形の長辺を判定する。グリッドマップ生成手段は、長辺判定手段による判定が終わると、グリッドGの並び方向が長辺の方向に対して平行又は直角となるグリッドマップGMを再生成し、液晶モニタ101に表示させる。例えば、
図15に示すように、液晶モニタ101が、縦方向よりも横方向が長い横長モニタである場合は、グリッドGが縦方向及び横方向に並ぶように表示し、グリッドマップGMの再生成後は、表示するグリッドGの並び方向を変更せず、長辺が横方向に沿うように圃場外形マップを表示させる。これにより、横長な液晶モニタ101に合わせて圃場外形マップを効率良く表示できる。
【0038】
グリッドサイズ変更手段は、グリッド調整ボタン110の操作に応じてグリッドGのサイズを変更する。例えば、圃場が大きい場合は、グリッドGを粗くして処理を軽減し、圃場が小さい場合は、グリッドGを細かくして高精度なグリッドマップ表示を行うことができる。
【0039】
閉じ図形判定手段は、収穫走行経路が閉じ図形であるか否か、又は収穫走行経路及び非収穫走行経路を含む走行経路が閉じ図形であるか否かを判定する。このとき、閉じ図形判定手段は、塗り潰されたグリッドGの形状に基づいて閉じ図形であるか否かを判定する。
【0040】
可否選択手段は、圃場外形マップの元となる収穫走行経路の可否をオペレータに選択させる。例えば、収穫走行経路が閉じ図形であると判定された後、
図14に示すように、液晶モニタ101の画面に可否を問う区画確定ボタン(OKボタンB1及びキャンセルボタンB2を含む)をポップアップ表示する。なお、図示しない強制確定ボタンが操作された場合は、閉じ図形とならない収穫走行経路を元に圃場外形マップの算出が実行される。
【0041】
仮想線分生成手段は、圃場外形マップの元となる収穫走行経路が閉じ図形でない場合、収穫走行経路の端部と端部との間に仮想線分を生成し、収穫走行経路を強制的に閉じ図形とする。例えば、
図16の(A)に示すように、GNSSの通信不良などに起因して収穫走行経路の一部が途切れている場合、
図16の(B)に示すように、閉じ図形となるように途切れた部分(断裂部分)のグリッドGを塗り潰す処理を行う。また、農道において旋回を行う農道ターンで収穫走行を行う場合、
図17の(A)に示すように、収穫走行経路が閉じ図形とはならないため、
図17の(B)に示すように、収穫走行経路を示す2本の直線の一端部同士及び他端部同士を最短の直線で結ぶようにグリッドGを塗り潰す処理を行う。
【0042】
圃場外形マップ算出手段は、収穫走行経路に基づいて圃場外形マップを算出する。例えば、本実施形態の圃場外形マップ算出手段には、グリッドマップGMにおける閉じ図形の外枠領域を確定する処理と(
図16の(C)、
図17の(C))、外枠領域に含まれる方向座標群を抽出する処理と(
図16の(D)、
図17の(D))、抽出した方向座標群の途切れた部分を追加方向座標群で連結する処理と(
図16の(E)、
図17の(E))、連結処理した方向座標群に基づいて圃場区画の輪郭線を生成する処理と(
図19の(A)、(B))が含まれる。
【0043】
圃場区画の輪郭線を生成する処理は、例えば、圃場の輪郭に相当する方向座標群から最小2乗法で直線を推定する処理を基本とし(
図19の(A))、曲線となる場合は、曲線を接合点で分割し、分割区間を直線で補間する処理を行う(
図19の(B))。その後、隣接する直線の交点を計算し、交点間を直線で結んだ多角形を生成し、これを圃場区画の輪郭線(圃場外形マップ)とする。
【0044】
また、本実施形態の圃場外形マップ算出手段は、
図18に示すような欠損型圃場の圃場外形マップも算出することができる。このような欠損型圃場では、
図18の(A)に示すように、圃場に進入した後、圃場の出っ張り部分を時計回り方向で収穫してから、反時計方向で回り刈りをする場合があり、このような収穫走行経路の方向座標群を連結処理すると、
図18の(B)に示すように、一部が交差した輪郭線となってしまう。本実施形態の圃場外形マップ算出手段は、
図18の(C)に示すように、閉じ図形の外枠領域に含まれる方向座標群の向きを刈取走行方向(反時計回り)に統一する整列処理を行う。これにより、欠損型圃場であっても正確な圃場外形マップを算出することが可能になる。
【0045】
収穫体積算出手段は、作物の種類に拘らず、第1~第3の堆積高さ検出センサ81~83の検出結果も基づいて、穀粒タンク10内の作物の収穫体積を算出(テーブル参照を含む)する。例えば、第2の堆積高さ検出センサ82の検出高さが第1閾値以下の場合、第2の堆積高さ検出センサ82の検出高さに基づいて作物の収穫体積を算出し、第2の堆積高さ検出センサ82の検出高さが第1閾値を超え、且つ第1の堆積高さ検出センサ81の検出高さが第2閾値(第2閾値>第1閾値)以下の場合は、第1の堆積高さ検出センサ81の検出高さに基づいて作物の収穫体積を算出し、第1の堆積高さ検出センサ82の検出高さが第2閾値を超える場合は、第3の堆積高さ検出センサ83の検出高さに基づいて作物の収穫体積を算出する。
【0046】
収穫重量算出手段は、収穫体積算出手段が算出した収穫体積と、水分センサ70の検出結果と、作物設定スイッチ105で設定された作物のかさ密度とに基づいて、穀粒タンク10内の作物の収穫重量を算出する。かさ密度は、単位体積あたりの重量を示すデータであり、制御部100は、作物設定スイッチ105で設定可能な作物毎のかさ密度を予め記憶している。また、かさ密度は、水分量(水分率)に応じて変化するため、水分センサ70の検出結果に基づいて収穫重量を増減させる。なお、制御部100は、作物設定スイッチ105により作物の種類が変更された場合、収穫重量の算出に用いるかさ密度を変更するだけでなく、水分センサ70の検出結果から作物の水分量を算出する際に用いる検量線も作物の種類に応じて変更する。
【0047】
残留穀粒判定手段は、圃場での収穫開始時に、堆積高さ検出センサ81~83のセンサ値を取得し、該センサ値に基づいて穀粒タンク10内の残留穀粒の有無を判定する。例えば、圃場A、圃場Bの順番で収穫する場合、通常は、圃場Aで収穫した穀粒タンク10内の穀粒をすべて運搬車に排出してから圃場Bに移動して収穫作業を開始するが、排出中に運搬車の積載量が一杯になると、圃場Aで収穫した穀粒が穀粒タンク10内に残った状態で圃場Bに移動する可能性があり、このような残留穀粒の有無を残留穀粒判定手段が判定する。
【0048】
収穫量減算処理手段は、穀粒タンク10内に残留穀粒があると判定したとき、堆積高さ検出センサ81~83のセンサ値に基づいて穀粒タンク10内の残留穀粒量を算出し、圃場の収穫量から減算する。例えば、
図20に示すように、圃場A、圃場Bの順番で収穫する場合、圃場Aで収穫した穀粒が穀粒タンクに残った状態で圃場Bの収穫を開始すると、圃場Aで収穫した穀粒が圃場Bで収穫したものとされ、算出される圃場Bの収穫量が実際の収穫量よりも多くなる可能性があるが、穀粒タンク10内の残留穀粒量を算出し、圃場Bの収穫量から減算処理(例えば、算出した残留穀粒量の分だけ、圃場Bにおける収穫量計算のセロ点をオフセット調整)することで、圃場Bの収穫量を算出する際、穀粒タンク10内の残留穀粒に起因して算出精度が低下することを防止できる。なお、本実施形態では省略するが、算出した残留穀粒量は、圃場Aの収穫量として加算処理することが望ましい。
【0049】
穀粒排出時均平処理手段は、排出オーガ11の穀粒排出動作中(又は穀粒排出動作後)に均平装置90を駆動させる。つまり、穀粒排出中に運搬車の積載量が一杯になって穀粒排出を中断した場合、穀粒タンク10内の残留穀粒の表層が均平装置90によって均平化されるので、残留穀粒の堆積高さを堆積高さ検出センサ81~83によって精度良く検出することができ、その結果、収穫量減算処理理の処理精度を向上させることができる。
【0050】
ここで、本実施形態の均平装置90について、
図8~
図10、
図21を参照して詳細に説明する。均平装置90は、穀粒タンク10内に上下方向に並んで配置され、穀粒タンク10内の穀粒に対する作用高さが異なる複数の撹拌部91、92を備える。例えば、本実施形態の均平装置90は、穀粒タンク10内に上下方向に並んで直列状に配置される上側撹拌部91及び下側撹拌部92を備える。このような均平装置90によれば、穀粒タンク10内の穀粒の堆積高さが所定高さを超えたら、下側撹拌部92を駆動状態から停止状態に切り換えることにより、均平装置90の駆動負荷を低減し、駆動源の出力不足による均平不良を防止できる。なお、所定高さは、例えば、上側撹拌部91による撹拌作用が始まる高さとすることができる。
【0051】
均平装置90は、電動モータである均平駆動モータ93を駆動源として駆動される。
図21に示すように、上側撹拌部91及び下側撹拌部92は、いずれも均平駆動モータ93によって回転駆動されるが、下側撹拌部92は、一方向回転クラッチ94を介して均平駆動モータ93の駆動力が伝達される。つまり、制御部100は、均平駆動モータ93の正逆転切換制御に基づいて、下側撹拌部92を駆動状態と停止状態とに切り換えることができる。このような均平装置90によれば、均平駆動モータ93を正逆転切換制御するだけの簡易な制御処理に基づいて、下側撹拌部92を駆動状態と停止状態とに切り換え、均平装置90の駆動負荷を低減させることが可能になる。
【0052】
具体的な構成を説明すると、上側撹拌部91及び下側撹拌部92は、それぞれ、上下方向に沿う回転軸91a、92aと、回転軸91a、92aから水平方向に延在する複数の撹拌棒91b、92bとを備える。上側撹拌部91の回転軸91a(以下、上側回転軸91aと称する場合がある。)及び下側撹拌部92の回転軸92a(以下、下側回転軸92aと称する場合がある。)は、上下方向に直列状に並び、連結部95を介して連結される。上側回転軸91aの上端部は、軸受91cを介して穀粒タンク10の天板部に回転可能に支持されるとともに、一対のギヤ96、97を介して均平駆動モータ93に動力伝達可能に接続される。下側回転軸92aの下端部は、軸受92cを介して穀粒タンク10の底板部に回転可能に支持される。
【0053】
複数の撹拌棒91b、92bは、回転軸91a、91bに対して、軸方向(高さ方向)に所定の高さ間隔、かつ軸周り方向に所定の角度間隔で設けられる。例えば、本実施形態の回転軸91a、92aには、
図8及び
図9に示すように、高さが異なるようにそれぞれ3本の撹拌棒91b、92bが設けられており、これらの撹拌棒91b、92bは、
図10に示すように、平面視において軸周り方向に90°の角度間隔を有する。
【0054】
連結部95は、回転軸91a、92a同士を独立して回転及び停止が可能な状態で連結させる。具体的に説明すると、連結部95は、
図21に示すように、下側回転軸92aの上端部に一体回転可能に設けられる内側ジョイント95aと、上側回転軸91aの下端部に一体回転可能に設けられ、所定の間隔を介して内側ジョイント95aの外周側を覆う外側ジョイント95bと、内側ジョイント95aの外周部と外側ジョイント95bの内周部との間に、軸方向に所定の間隔を介して並設される一対の軸受95cとを備える。そして、内側ジョイント95aの外周部と外側ジョイント95bの内周部との間で、かつ一対の軸受95cの間に、前述した一方向クラッチ94が設けられる。
【0055】
図21に示すように、均平駆動モータ93を正転方向に駆動させると、上側回転軸91aが太線矢印で示す方向(以下、太線矢印方向と称する場合がある。)に回転する。この回転方向では、一方向クラッチ94が噛み合い状態となるため、下側回転軸92aも上側回転軸91aと一体的に太線矢印方向に回転する。一方、均平駆動モータ93を逆転方向に駆動させると、上側回転軸91aが細線矢印で示す方向(以下、細線矢印方向と称する場合がある。)に回転する。この回転方向では、一方向クラッチ94が非噛み合い状態となるため、下側回転軸92aは回転しない。これにより、均平駆動モータ93の正逆転切換制御に基づいて、下側撹拌部92を駆動状態と停止状態とに切り換えることが可能になる。
【0056】
つぎに、上述した機能的な構成を実現する制御部100の処理手順について、
図22~
図27に示すフローチャートを参照して説明する。
【0057】
図22に示すように、制御部100は、圃場区画推定制御において、まず、グリッドGが東西方向及び南北方向に並ぶ仮のグリッドマップGMを生成した後(S101)、GNSSユニット102による機体位置情報を取得し(S102)、収穫走行経路を示す方向座標群を生成するとともに、収穫走行経路上のグリッドGを塗り潰す(S103)。
【0058】
つぎに、制御部100は、強制確定ボタンの操作を判断し(S104)、この判断結果が有りの場合は、ステップS105~S107をスキップしてステップS108にジャンプし、判断結果が無しの場合は、塗り潰し領域が閉じ図形か否かを判断する(S105)。制御部100は、この判断結果がNOの場合、ステップS102に戻り、判断結果がYESの場合は、区画確定ボタンを表示し(S106)、区画確定ボタンの操作を判断する(S107)。制御部100は、区画確定ボタンのOKボタンB1が操作されたと判断した場合は、ステップS108に進み、区画確定ボタンのキャンセルボタンB2が操作されたと判断した場合は、ステップS102に戻る。
【0059】
制御部100は、ステップS108に進むと、前述した圃場外形マップの算出に関する複数の処理(S108~S114)を順次実行する。これらの処理には、収穫走行経路を示すグリッド線分の断裂部分を補完して閉じ図形とする処理と(S108:
図16の(B)、
図17の(B)に相当する処理)、閉じ図形の外枠領域を抽出する処理と(S109:
図16の(C)、
図17の(C)に相当する処理)、外枠領域に含まれる外枠線分(方向座標群)を抽出する処理と(S110:
図16の(D)、
図17の(D)に相当する処理)、外枠線分の収穫走行方向を統一する処理と(S111:
図18の(C)に相当する処理)、外枠線分のうち近接する線分を連結する処理と(S112:
図16の(E)に相当する処理)、外枠線分のうち乖離した線分を連結する処理と(S113:
図17の(E)に相当する処理)、圃場区画の輪郭線を生成する処理(S114:
図19に相当する処理)が含まれる。
【0060】
図23に示すように、制御部100は、グリッド生成制御において、圃場区画情報(圃場外形マップ)を取得した後(S201)、圃場区画の最も長い辺を判別し(S202)、最も長い辺を基準としてグリッドGが並ぶグリッドマップGMを再生成する(S203)。これにより、
図15に示すように、横長な液晶モニタ101に合わせて圃場区画を効率良く表示することが可能になる。
【0061】
図24に示すように、制御部100は、収量計算において、測定スイッチ103のON操作に基づいて測定開始を判断し(S301)、この判断結果がYESの場合は、作物設定スイッチ105の設定を読み込み(S302)、設定された作物を判断する(S303)。制御部100は、設定作物が大豆の場合、水分センサ70の検量線として大豆用の検量線を設定するともに、かさ密度として大豆用の係数を読み込み(S304)、設定作物が稲の場合、水分センサ70の検量線として稲用の検量線を設定するともに、かさ密度として稲用の係数を読み込み(S305)、設定作物が麦の場合、水分センサ70の検量線として麦用の検量線を設定するともに、かさ密度として麦用の係数を読み込む(S306)。なお、本実施形態では、作物設定スイッチ105によって設定される作物として、大豆、稲、麦の3種類を例示しているが、設定作物の種類に制限はなく、トウモロコシ等の他の作物も設定することができる。
【0062】
つぎに、制御部100は、第1~第3の堆積高さ検出センサ81~83及び水分センサ70の検出値を読み込んだ後(S307)、穀粒タンク10内の収穫量(体積)、現在までの累積収穫量(体積)、及び圃場の予想収穫量(体積)を計算する(S308)。ここで、圃場の予想収穫量(体積)は、現在までの累積収穫量(体積)と現在までの累計収穫面積(グリッドマップGMから算出)に基づいて単位面積当たりの収穫量(体積)を算出し、単位面積当たりの収穫量(体積)と圃場の全体面積(圃場外形マップから算出)との乗算により求められる。
【0063】
つぎに、制御部100は、穀粒水分の平均値を計算した後、穀粒水分の平均値及びかさ密度に基づいて単位体積当たりの重量を換算し、この換算重量及び収穫量(体積)に基づいて、穀粒タンク10内の収穫量(重量)、現在までの累積収穫量(重量)、及び圃場の予想収穫量(重量)を計算する(S309)。制御部100は、これらの計算値を記憶した後(S310)、上位ルーチンに復帰する。
【0064】
図25に示すように、制御部100は、予測制御において、GNSSユニット102による機体位置情報、第1~第3の堆積高さ検出センサ81~83による収穫情報、算出した圃場区画情報などを取得した後(S401)、収穫走行経路の塗り潰し範囲から累計収穫面積を算出し(S402)、単位面積当たりの収穫量、作業時間及び消費燃料を算出する(S403)。その後、制御部100は、圃場の全体面積と、単位面積当たりの収穫量、作業時間及び消費燃料に基づいて、圃場全体における予想収穫量、予想燃料使用量、予想総作業時間、予想終了時刻、収穫作業の進捗度、予想排出回数などを算出する(S404)。これらの算出結果は、液晶モニタ101に表示したり、外部に送信することができる。
【0065】
図26に示すように、制御部100は、タンク残量補正制御において、測定停止状態から測定開始状態への切り換えがあったか否かを判断し(S501)、この判断結果がYESの場合は、堆積高さ検出センサ81~83のセンサ値を取得した後(S502)、穀粒タンク10内に残留穀粒があるか否かを判断する(S503)。制御部100は、ステップS503の判断結果がYESの場合、堆積高さ検出センサ81~83のセンサ値に基づいて、穀粒タンク10内の残留穀粒量を算出するとともに(S504)、圃場の収穫量から残留穀粒量を減算するタンク残量減算処理(例えば、オフセットによるゼロ点調整)を実行する(S505)。また、制御部100は、ステップS503の判断結果がNOの場合、タンク残量減算処理を実行しない(S506)。
【0066】
図27に示すように、制御部100は、均平処理において、排出クラッチ状態を判断し(S601)、排出クラッチがOFF状態であると判断した場合は、均平駆動モータ93を停止させて上位ルーチンに復帰する(S602)。制御部100は、ステップS601において、排出クラッチがON状態(穀粒排出動作中)であると判断した場合は、均平駆動モータ93の駆動電流値を所定値(負荷判定値)と比較する(S603)。また、制御部100は、ステップS603において、均平駆動モータ93の駆動電流値が所定値未満であると判断した場合は、穀粒タンク10内の穀粒の堆積高さを所定高さ(堆積高さ判定値)と比較する(S604)。そして、制御部100は、ステップS603の判断結果が所定値未満で、かつステップS604の判断結果が所定高さ未満であった場合、均平駆動モータ93を正転駆動させ、上側撹拌部91及び下側撹拌部92を撹拌動作させる(S605)。また、制御部100は、ステップS603の判断結果が所定値以上、又はステップS604の判断結果が所定高さ以上であった場合、均平駆動モータ93を逆転駆動させ、上側撹拌部91の撹拌動作を継続させるも、下側撹拌部92の撹拌動作は停止させる(S606)。
【0067】
つぎに、作業開始時に選択可能な複数のモード(メニュー)について、
図28~
図32を参照して説明する。
【0068】
図28に示すように、制御部100は、システム起動に応じて液晶モニタ101に初期画面を表示させる。また、制御部100は、システム起動状態で所定のメニュー表示操作が行われると、
図29に示すように、液晶モニタ101にメニューボックスMを表示させる。このメニューボックスMには、選択可能なメニューとして、「プログラム終了」、「キャンセル」、「新規区画推定」(新規マップ作成モード)、「既存区画で新規収穫」(既存マップ使用モード)、「以前の収穫を継続」及び「以前の区画推定を継続」(マップ作成再開モード)が表示される。なお、制御部100は、「キャンセル」が選択操作された場合、メニュー表示を終了させる。
【0069】
「プログラム終了」は、外形マップの作成中、外形マップを使用した収穫作業中、収穫作業終了後など、任意のタイミングで選択操作することができる。制御部100は、外形マップの作成中に「プログラム終了」が選択操作されると、それまでに取得した外形マップ作成情報(既存の区画推定情報)をマップ作成中断履歴データとして記憶する。また、制御部100は、外形マップを使用した収穫作業の管理中に「プログラム終了」が選択操作されると、使用した外形マップ情報(既存の収穫区画情報)や収穫作業の進捗情報(既存の収穫情報)をマップ作成・使用履歴データとして記憶する。
【0070】
「新規区画推定」は、既存の外形マップが存在しない圃場で新規に収穫作業を行う場合に選択操作される。制御部100は、「新規区画推定」が選択操作されると、前述した圃場区画推定制御(
図22)及びグリッド生成制御(
図23)に基づいて新たな外形マップを作成し、新たに作成した外形マップを使用した収穫作業の管理を行う。
【0071】
「以前の区画推定を継続」は、外形マップ作成中に中断した収穫作業を再開する場合に選択操作される。制御部100は、「以前の区画推定を継続」が選択操作されると、外形マップの作成を中断したときのマップ作成中断履歴データを利用し、外形マップの作成を再開させる。例えば、制御部100は、「以前の区画推定を継続」が選択操作されると、
図30に示すように、1又は複数のマップ作成中断履歴データを含む履歴選択ダイアログAを表示させ、1又は複数のマップ作成中断履歴データから選択されたマップ作成中断履歴データに基づいて、外形マップの作成を再開させる。
【0072】
「既存区画で新規収穫」は、既存の外形マップが存在する圃場で新規に収穫作業を行う場合に選択操作される。制御部100は、「既存区画で新規収穫」が選択操作されると、既存の外形マップを使用した収穫作業の管理を行う。例えば、制御部100は、「以前の区画推定を継続」が選択操作されると、
図31に示すように、1又は複数のマップ作成・使用履歴データを含む履歴選択ダイアログBを表示させ、1又は複数のマップ作成・使用履歴データから選択されたマップ作成・使用履歴データに対応する外形マップを使用して収穫作業の管理を行う。
【0073】
「以前の収穫を継続」は、中断した収穫作業(外形マップを使用した収穫作業管理)を再開する場合に選択操作される。制御部100は、「以前の収穫を継続」が選択操作されると、収穫作業を中断したときのマップ作成・使用履歴データを利用し、収穫作業の管理を再開する。例えば、制御部100は、「以前の収穫を継続」が選択操作されると、
図32に示すように、1又は複数のマップ作成・使用履歴データを含む履歴選択ダイアログCを表示させ、1又は複数のマップ作成・使用履歴データから選択されたマップ作成・使用履歴データを利用し、収穫作業の管理を再開させる。
【0074】
つぎに、上述のようなモードを実現する制御部100のメインルーチン(圃場作業管理制御)について、
図33~
図36に示すフローチャートを参照して説明する。圃場作業管理制御は、コンバイン1に限らず、トラクタや田植機でも実行することができる。この場合、トラクタや田植機では、コンバイン1で作成した外形マップ情報や各種の履歴情報を共有することができる。コンバイン1、トラクタ及び田植機間のデータのやり取りは、クラウド115を介して行うことを想定しているが、無線LANなどの無線通信で直接データのやり取りを行うようにしてもよいし、USBメモリなどの記憶媒体を介してデータのやり取りを行うようにしてもよい。
【0075】
なお、圃場作業管理制御のフローチャートは、
図33~
図35に3分割して示す。また、圃場作業管理制御のステップS720では、
図26に示すタンク残量補正制御がサブルーチンとして実行され、圃場作業管理制御のステップS722では、
図22に示す圃場区画推定制御と
図23に示すグリッド生成制御が実行され、圃場作業管理制御のステップS725では、
図24に示す収量計算と
図25に示す予測制御(コンバイン用)が実行され、圃場作業管理制御のステップS735では、
図36に示す予測制御(トラクタ・田植機用)が実行されるものとする。
【0076】
図33に示すように、制御部100は、圃場作業管理制御において、まず、液晶モニタ101に機種選択メニュー(図示せず)を表示させ(S701)、ユーザによる選択操作を待つ(S702)。機種選択メニューには、選択可能な機種として、「コンバイン」、「トラクタ」、「田植機」などが表示される。制御部100は、いずれかの機種が選択されると、液晶モニタ101に選択された機種の型式選択メニュー(図示せず)を表示させ(S703)、ユーザによる選択操作を待つ(S704)。制御部100は、いずれかの型式が選択されると、選択された型式の機体固有情報(作業幅、GNSS基準位置など)をクラウド115などから取得する(S705)。その後、制御部100は、選択された機種がコンバインかそれ以外であるかを判断し(S706)、判断結果がコンバイン以外の場合は、ステップS726に進み、判断結果がコンバインの場合は、
図34に示すステップS708に進む。なお、ステップS726に進んだ場合については後述する。
【0077】
図34に示すように、制御部100は、ステップS708に進むと、液晶モニタ101に前述したメニューボックスM(
図29)を表示させ、ユーザによるメニュー選択操作を待つ(S709)。制御部100は、ステップS709において「新規区画推定」が選択操作されたと判断したら、
図35に示すステップS720に進む。また、制御部100は、ステップS709において「プログラム終了」が選択操作されたと判断したら、ここまでの圃場作業において取得又は生成した全ての情報を履歴データとして記憶し(S710)、プログラム(圃場作業管理制御)を終了する。また、制御部100は、ステップS709において「キャンセル」が選択操作されたと判断したら、ステップS701の上流位置までジャンプする。
【0078】
また、制御部100は、ステップS709において「以前の区画推定を継続」が選択操作されたと判断したら、液晶モニタ101に前述した履歴選択ダイアログA(
図30)を表示させ(S711)、ユーザによる選択操作を待つ(S712)。制御部100は、いずれかの区画推定履歴(マップ作成中断履歴データ)が選択されると、選択された区画推定履歴を利用して外形マップの作成を再開することとし(S713)、
図35のステップS720に進む。
【0079】
また、制御部100は、ステップS709において「既存区画で新規収穫」が選択操作されたと判断したら、液晶モニタ101に前述した履歴選択ダイアログB(
図31)を表示させ(S714)、ユーザによる選択操作を待つ(S715)。制御部100は、いずれかの区画使用履歴(マップ作成・使用履歴データ)が選択されると、選択された区画使用履歴に対応する外形マップを利用した収穫作業を開始することとし(S716)、
図35に示すステップS724の上流位置にジャンプする。
【0080】
また、制御部100は、ステップS709において「以前の収穫を継続」が選択操作されたと判断したら、液晶モニタ101に前述した履歴選択ダイアログC(
図32)を表示させ(S717)、ユーザによる選択操作を待つ(S718)。制御部100は、いずれかの収穫履歴(マップ作成・使用履歴データ)が選択されると、選択された収穫履歴から収穫作業を再開することとし(S719)、
図35に示すステップS724の上流位置にジャンプする。
【0081】
図35に示すように、制御部100は、ステップS720に進むと、
図26に示すタンク残量補正制御をサブルーチンとして実行した後、プログラム終了操作判断(S721)及び区画推定(外形マップ作成)の終了判断(S723)を行いつつ、
図22に示す圃場区画推定制御と
図23に示すグリッド生成制御をサブルーチンとして実行する(S722)。制御部100は、区画推定が終了する前にプログラム終了操作があった場合、ここまでの圃場作業において取得又は生成した全ての情報を履歴データとして記憶し(S710)、プログラム(圃場作業管理制御)を終了する。また、制御部100は、区画推定が終了したと判断すると、プログラム終了操作判断(S724)を行いつつ、
図24に示す収量計算と
図25に示す予測制御(コンバイン用)をサブルーチンとして実行する(S725)。なお、制御部100は、ステップS724においてプログラム終了操作があったと判断すると、ここまでの圃場作業において取得又は生成した全ての情報を履歴データとして記憶し(S710)、プログラム(圃場作業管理制御)を終了する。
【0082】
図33に戻ると、制御部100は、ステップS706の判断結果がコンバイン以外のとき、液晶モニタ101にトラクタ・田植機用のメニューボックス((図示せず)を表示させ(S726)、ユーザによるメニュー選択操作を待つ(S727)。なお、トラクタ・田植機では、外形マップの作成は行わず、コンバイン1で作成した外形マップを利用し、圃場作業管理(グリッドの塗り潰しによる作業推定など)を行うものとする。なお、制御部100は、ステップS727において「プログラム終了」が選択操作されたと判断したら、ここまでの圃場作業において取得又は生成した全ての情報を履歴データとして記憶し(S710)、プログラム(圃場作業管理制御)を終了する。また、制御部100は、ステップS727において「キャンセル」が選択操作されたと判断したら、ステップS701の上流位置までジャンプする。
【0083】
制御部100は、ステップS727において「既存区画で新規作業」が選択操作されたと判断したら、液晶モニタ101に履歴選択ダイアログD(図示せず)を表示させ(S728)、ユーザによる選択操作を待つ(S729)。制御部100は、いずれかの区画使用履歴が選択されると、選択された区画使用履歴に対応する外形マップを利用した圃場作業を開始可能とし(S730)、ステップS734に進む。
【0084】
また、制御部100は、ステップS727において「以前の作業を継続」が選択操作されたと判断したら、液晶モニタ101に履歴選択ダイアログE(図示せず)を表示させ(S731)、ユーザによる選択操作を待つ(S732)。制御部100は、いずれかの作業履歴が選択されると、選択された作業履歴から収穫作業を再開可能とし(S733)、ステップS734に進む。
【0085】
また、制御部100は、ステップS734に進むと、プログラム終了操作判断(S734)を行いつつ、
図36に示す予測制御(トラクタ・田植機用)をサブルーチンとして実行する(S735)。なお、制御部100は、ステップS734においてプログラム終了操作があったと判断すると、ここまでの圃場作業において取得又は生成した全ての情報を履歴データとして記憶し(S710)、プログラム(圃場作業管理制御)を終了する。
【0086】
図36に示すように、制御部100は、予測制御(トラクタ・田植機用)において、GNSSユニット102による機体位置情報、各種機体センサによる機体情報、既存の圃場区画情報などを取得した後(S801)、作業走行経路の塗り潰し範囲から累計作業面積を算出し(S802)、単位作業面積における作業時間、消費燃料、消費資材などを算出する(S803)。その後、制御部100は、圃場全体における予想燃料使用量、予想資材使用量、予想作業時間、予想終了時刻、作業の進捗度などを算出する(S804)。これらの算出結果は、液晶モニタ101に表示したり、外部に送信することができる。
【0087】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、コンバイン1の走行軌跡に基づいて圃場の外形マップを作成可能な圃場作業管理システムであって、外形マップを新たに作成する新規マップ作成モードと、外形マップの作成を中断したときのマップ作成中断履歴データを利用し、外形マップの作成を再開するマップ作成再開モードと、作成済みの外形マップを使用して圃場作業を管理する既存マップ使用モードと、を備え、コンバイン1の作業開始時に、新規マップ作成モード、マップ作成再開モード、既存マップ使用モードのいずれかを選択して実行可能としたので、外形マップの作成を中断した圃場で収穫を行う場合に、最初から外周走行を行う必要がなくなり、作業効率を向上させることができる。また、前回中断した位置まで空走行する必要がないので、収穫量や収量率の算出精度が低下することも防止できる。また、作成済みの外形マップを使用して圃場作業を管理する既存マップ使用モードを備えるので、外形マップを作成済みの圃場では、外形マップの作成処理が不要となり、処理負担を軽減できる。
【0088】
また、マップ作成再開モードを実行する際には、1又は複数のマップ作成中断履歴データを表示し、1又は複数のマップ作成中断履歴データから選択されたマップ作成中断履歴データに基づいて、外形マップの作成を再開するので、複数の圃場のマップ作成中断履歴データが存在する場合であっても、適切なマップ作成中断履歴データを選択して外形マップの作成を再開できる。
【0089】
また、既存マップ使用モードを実行する際には、作成済みの外形マップを作成又は使用したときの1又は複数のマップ作成・使用履歴データを表示し、1又は複数のマップ作成・使用履歴データから選択されたマップ作成・使用履歴データに対応する作成済みの外形マップを使用して圃場作業を管理するので、複数の圃場の外形マップが存在する場合であっても、マップ作成・使用履歴データから適切な外形マップを選択して圃場作業を管理できる。
【0090】
また、圃場作業管理システムは、作業する作業車両を変更可能であり、複数の作業車両において、作成済みの外形マップ又はマップ作成・使用履歴データを共有可能としたので、例えば、コンバイン1で作成した外形マップなどをトラクタや田植機で利用し、作業効率や作業精度の向上が図れる。また、コンバイン1同士でもデータ共有を可能とすることで、途中から違うコンバイン1で収穫を行う場合にも、共有データを活用して作業効率の向上が図れる。また、違うコンバイン1で作成したデータを共有するにあたり、外形マップデータのズレは、トラクタや田植機で行う場合と比較して少ないという利点がある。つまり、コンバイン1は、植付穀稈を基準に収穫走行するため、途中で機械を変えて収穫しても、トラクタや田植機のように基準が無く走行する場合に比べ、ズレを抑制することができる。
【0091】
また、コンバイン1は、圃場での収穫開始時に、穀粒タンク10内に残留穀粒があると判定したとき、穀粒量検出手段の検出穀粒量に基づいて、穀粒タンク10内の残留穀粒量を算出し、圃場の収穫量から減算するので、圃場の収穫量を算出するにあたり、穀粒タンク10内の残留穀粒に起因して算出精度が低下することを防止できる。
【0092】
また、穀粒量検出手段は、穀粒タンク10内の穀粒の堆積高さを検出するので、穀粒タンク10内の穀粒残量を精度良く検出できる。
【0093】
また、コンバイン1は、穀粒タンク10内の穀粒に作用するように駆動して穀粒の表層を均す均平装置90を備えるので、穀粒の堆積高さを検出する穀粒量検出手段の検出精度を向上させることができる。
【0094】
また、均平装置90は、排出オーガ11の穀粒排出動作中に駆動されるので、穀粒タンク10内の残留穀粒を均平化し、その堆積高さを精度良く検出できる。
【0095】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されないことを勿論であり、構成の変更や追加を適宜行うことができる。例えば、、上述した実施形態では、作業車両作(コンバイン1)に搭載された圃場作業管理システムを例示したが、圃場作業管理システムは、作業車両と通信可能なタブレット、スマートフォンなどの外部端末を用いて構成し、外部端末で外形マップの作成や各種データの管理を行うようにしてもよい。また、均平装置90を駆動させるタイミングは、排出オーガ11の穀粒排出動作中に限定されず、収穫中にも駆動させて圃場の収量の検出精度を向上させたり、排出オーガ11の穀粒排出動作後に駆動させたり、その他の条件に基づいて駆動させてもよい。以下、具体例を
図37のフローチャートに沿って説明する。
【0096】
図37は、運搬車に排出した収穫量を外部端末に送信する際に、穀粒タンク10内に残留穀粒があった場合の残量減算処理を示している。この図に示すように、制御部100は、定期的に堆積高さ検出センサ81~83のセンサ値を取得し(S901)、取得したセンサ値に基づいて穀粒タンク10内の穀粒量であるタンク収穫量を算出する(S902)。制御部100は、排出オーガ11による穀粒排出及び排出終了を判断し(S903)、この判断結果がYESになると、堆積高さ検出センサ81~83のセンサ値に基づいて穀粒タンク10内に残留穀粒があるか否かを判断し(S904)、この判断結果がNOの場合は、外部端末に送るべきタンク収穫量を補正することなくプログラムを終了する。一方、制御部100は、ステップS904の判断結果がYESの場合、均平装置90を所定時間駆動させた後(S905、S906)、堆積高さ検出センサ81~83のセンサ値を取得し(S907)、取得したセンサ値に基づいて穀粒タンク10内の残留穀粒量を算出するとともに(S908)、算出した残留穀粒量をタンク収穫量から減算処理する(S909)。
【符号の説明】
【0097】
1 コンバイン
10 穀粒タンク
11 排出オーガ(穀粒排出装置)
81~83 堆積高さ検出センサ(穀粒量検出手段)
90 均平装置(均平手段)
100 制御部
101 液晶モニタ
102 GNSSユニット