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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065906
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】メタサーフェス構造及びガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G01N21/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174993
(22)【出願日】2022-10-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイト掲載日「2021年11月2日」、ウェブサイトのアドレス「https://www.bookpark.ne.jp/cm/ieej/detail/IEEJ-BTE2021-11P2-SS2-5-PDF」、公開のタイトル「紫外プラズモン共鳴を用いたオゾン・アンモニアガスセンサ素子の開発」 オンライン開催日「2021年11月11日」、シンポジウム名「Future Technologies from HIMEJI 2021 電気学会センサ・マイクロマシン部門主催 第38回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム」、オンライン開催のアドレス「https://sensorsymposium.org/2021/FT2021_Program_Handout_V4.pdf」、公開のタイトル「紫外プラズモン共鳴を用いたオゾン・アンモニアガスセンサ素子の開発」
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】岩見 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】池沢 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 凌
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕治
(72)【発明者】
【氏名】大石 和城
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC01
2G059CC08
2G059EE01
2G059HH03
2G059JJ30
2G059KK01
2G059LL02
(57)【要約】
【課題】金属部品の腐食の原因となるオゾンまたはアンモニアの経時的な検出を高感度に行うこと。
【解決手段】ガス中のオゾンまたはアンモニアの検出に供される紫外領域の光により表面プラズモン共鳴を誘起するガスセンサ素子1は、紫外領域の光が照射されるガラス基板2と、このガラス基板2上に一対に立設されるAlからなる金属部3と、を備える。ガラス基板2及び金属部3には、ガラス基板2の表面に対する前記光の入射角度が変更可能に、前記光が照射される。前記一対の金属部3の間隙であるギャップ30には検出対象のガスが供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中のオゾンまたはアンモニアの検出に供される紫外領域の光により表面プラズモン共鳴を誘起するメタサーフェス構造であって、
前記紫外領域の光が照射されるガラス基板と、
このガラス基板上に立設されるAlからなる金属部と、
を有し、
前記ガラス基板及び前記金属部には、当該金属部の表面に対する前記光の入射角度が変更可能に、前記光が照射され、
前記金属部の近傍には、前記ガスが供されること
を特徴とするメタサーフェス構造。
【請求項2】
前記金属部は、前記ガラス基板上にて対向して一対に立設され、
一対の前記金属部の間隙には、前記ガスが供されること
を特徴とする請求項1に記載のメタサーフェス構造。
【請求項3】
前記金属部の表面に対する前記光の入射角度は、0°以上90°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のメタサーフェス構造。
【請求項4】
前記金属部は、前記ガラス基板の表面からの高さが55nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のメタサーフェス構造。
【請求項5】
前記ガスの流れに沿う前記ガラス基板の奥行き長さは、350nm以上800nm以下であることを特徴とする請求項4に記載のメタサーフェス構造。
【請求項6】
前記金属部の表面は不動態化処理されたことを特徴とする請求項1または2に記載のメタサーフェス構造。
【請求項7】
請求項1または2に記載のメタサーフェス構造を有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項8】
前記ガラス基板を透過した前記光を検出する検出器を備えたことを特徴とする請求項7に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタサーフェスを利用した紫外線分光共鳴によるガスセンシング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧機器内部におけるオゾンやアンモニア等のガスの発生は、酸を生成して部品腐食・故障につながるため問題となっている。これらのガスの検出のため従来はガス検知管などが使用されてきたが,経時的な測定が難しく、初期検出には向いていない。また、半導体式・電気化学式のガスセンサは周囲の環境に測定結果が依存するため,高電圧機器内部での使用は難しい。
【0003】
光学式ガスセンサは、非接触で周囲の環境に影響されにくく、経時的な測定も可能なので高電圧機器内部での測定に適している。さらに、微細加工技術を用いて作成される特異な光学特性をもつメタサーフェス(メタ表面)を光学式ガスセンサと組み合わせて用いることで高感度化が可能となる。特に、前記メタサーフェスに赤外光を照射して金属表面にプラズモン共鳴を発生させ、表面近傍のブタンの分子振動と共鳴させることで20ppmの濃度検出が可能となる(非特許文献1)。
【0004】
前記メタサーフェスはメタ原子を平面基板上に並べて2次元化した平面型のメタマテリアルと定義される(特許文献2)。前記メタマテリアルはフォトニック結晶と異なり周期性を必要としないので、メタ原子の配列は周期的である必要はなくランダムであってもよい。前記メタサーフェスは、波長以下の極めて薄い平面構造でありながらも、バルク光学素子では実現できない機能を持つ平面光学素子である。前記メタサーフェスの動作モードは反射型、透過型および吸収型に分類できる。前記メタサーフェスとしては、材料に金属を含むプラズモニックメタサーフェスと金属を含まない誘電体メタサーフェスがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】D. Su, et al.: “Ultrasensitive and Selective Gas Sensor Based on a Channel Plasmonic Structure with an Enormous Hot Spot Region”, ACS Sensors, Vol.4, No.11 pp.2900-2907 (2019)
【非特許文献2】高原淳一,岩見健太郎,岩長祐伸、「メタマテリアル、メタサーフェスの設計・作製と応用技術」、(株)R&D支援センター、2020年7月30日発行
【非特許文献3】B. M. Cheng, et al.: “Absorption Cross Sections of NH3, NH2D, NHD2, andND3 in the Spectral Range 140-220 nm and Implications for Planetary Isotopic Fractionation”, The Astrophysical Journal, Vol.647, pp.1535-1542 (2006)
【非特許文献4】L. T. Molina, et al.: “Absolute absorption cross sections of ozone in the 185- to 350-nm wavelength range”, Journal of Geophysical Research, Vol.91, No. D12 pp.14501-14508(1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紫外域に吸光波長を持つオゾンやアンモニアに対応した高感度の光学式ガスセンサ素子は開発されていない。また、前記金属板をAuで構成した場合、プラズモン共鳴を紫外域で誘起することは難しい。そのため、吸光波長を紫外域に持つオゾンとアンモニアのセンシングに用いることができない。
【0007】
本発明は、以上の事情を鑑み、金属部品の腐食の原因となるオゾンまたはアンモニアの経時的な検出を高感度に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の一態様は、ガス中のオゾンまたはアンモニアの検出に供される紫外領域の光により表面プラズモン共鳴を誘起するメタサーフェス構造であって、前記紫外領域の光が照射されるガラス基板と、このガラス基板上に立設されるAlからなる金属部と、を有し、前記ガラス基板及び前記金属部には、当該金属部の表面に対する前記光の入射角度が変更可能に、前記光が照射され、前記金属部の近傍には、前記ガスが供される。
【0009】
本発明の一態様は、前記メタサーフェス構造において、前記金属部は、前記ガラス基板上にて対向して一対に立設され、一対の前記金属部の間隙には、前記ガスが供される。
【0010】
本発明の一態様は、前記メタサーフェス構造において、前記金属部の表面に対する前記光の入射角度は、0°以上90°以下である。
【0011】
本発明の一態様は、前記メタサーフェス構造において、前記金属部は、前記ガラス基板の表面からの高さが55nm以上100nm以下である。
【0012】
本発明の一態様は、前記メタサーフェス構造において、前記ガスの流れに沿う前記ガラス基板の奥行き長さは、350nm以上800nm以下である。
【0013】
本発明の一態様は、前記メタサーフェス構造において、前記金属部の表面は不動態化処理される。
【0014】
本発明の一態様は、前記メタサーフェス構造を有するガスセンサである。
【0015】
本発明の一態様は、前記ガスセンサにおいて、前記ガラス基板を透過した前記光を検出する検出器を備える。
【発明の効果】
【0016】
以上の本発明によれば、金属部品の腐食の原因となるオゾンまたはアンモニアの経時的な検出を高感度に行えるので、当該金属部品を有する機器の劣化を予兆的に捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1におけるガスセンサ素子の斜視図。
図2】光学式ガスセンサの概略図。
図3】赤外領域及び紫外領域におけるオゾン及アンモニアの吸収断面積の値。
図4】実施形態1の金属部の高さHを変化させたときの透過率スペクトル。
図5】(a)実施形態1における入射光角度による透過率スペクトルの依存性、(b)図1のy方向ピッチPyによる透過率スペクトルの依存性。
図6】実施形態1における入射光角度が10°でy方向ピッチPyを変化させたときの透過率スペクトル。
図7】本発明の実施形態2におけるガスセンサ素子の斜視図
図8】実施形態2のガスセンサ素子のx方向ピッチPxを変化させたときの透過率。
図9図8の計算結果から得た吸収ピークでの最小透過率Tmin[-]と半値全幅FWHM[nm]を用いた性能指数FOM。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0019】
[実施形態1]
図1に示された本発明のメタサーフェス構造の一態様が適用された実施形態1のガスセンサ素子1は、紫外領域において表面プラズモン共鳴を誘起可能なAl(アルミニウム)若しくはその同族元素を用いて紫外領域に吸収ピークを得る。特に、ガスセンサ素子1は紫外線波長帯に吸収スペクトルの発現するガス種であるオゾン若しくはアンモニアの検出またはオゾン及びアンモニアの同時検出に有効である。
【0020】
ガスセンサ素子1は、紫外領域の光が照射されるガラス基板2と、このガラス基板2上に対向して立設されるAlからなる一対の金属部3と、を有するメタサーフェス構造を単位構造とし、この単位構造が同一平面(ガラス基板2)上に周期配列される。
【0021】
ガラス基板2は、ガラス等の光透過性の材料であればよく、例えば、フッ化カルシウム、サファイア、石英、酸化ガリウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛系等が適用される。
【0022】
金属部3としては、Al若しくはその同族元素(Tl、In、Ga)等からなる金属板、または、Al若しくはその同族元素(Tl、In、Ga)以外の金属元素からなる金属板の表面に形成されるAl若しくはその同族元素(Tl、In、Ga)等からなる金属膜が挙げられる。また、金属部3の表面は酸化膜や窒化膜等により不動態化処理してもよい。さらに、金属部3の厚みは、不動態を含めた構造体として、負の誘電率を有していればよい。
【0023】
ガラス基板2及び一対の金属部3には、図2のガスセンサ4の光源41からの前記光がガラス基板2の表面に対する前記光の入射角度が変更可能に照射される。金属部3の表面に対する前記光の入射角度は例えば0°以上90°以下の範囲で調整される。
【0024】
前記一対の金属部3の間隙であるギャップ30には前記検出に供される対象ガスが流通する。図1に記載のHは金属部3の高さ、Ldは金属部3の奥行き長さ、Px及びPyは単位構造のピッチを示す。この構造を垂直配向MIM(金属誘電体金属)構造とする。金属部3としてはAlが適用される。ガラス基板2の上方の後述(図2)の光源41からは紫外領域の光が入射され、ギャップ30内で表面プラズモン共鳴が誘起される。ガラス基板2及び金属部3の構造寸法や前記光の入射角の調整により吸収スペクトルが制御される。そして、前記対象ガスの吸光波長と前記表面プラズモン共鳴の波長とを一致させることで、ギャップ30内に流入した対象ガスの吸光が増強され、前記ガス種の検知の高感度を図ることができる。尚、MIM構造は、実質的に垂直であれば良く、図1のようなガラス基板2上に金属部3が垂直に立設された態様に限定することなく、ガラス基板2に対して金属部3が縦断面台形状若しくは縦断面すり鉢状の態様としてもよい。
【0025】
図2はガスセンサ素子1が適用される光学式のガスセンサ4の概略図である。
【0026】
ガスセンサ4は、前記光を照射する光源41と、当該光を検出する検出器42と、光源41と検出器42との間に配される測定セル43と、を備える。測定セル43には、図1のガスセンサ素子1がさらに配置される。
【0027】
検出器42は、測定セル43内のガスセンサ素子1のガラス基板2を透過した前記光を検出して、測定セル43内を流通するガスに含まれるオゾン及びアンモニアを検知する。
【0028】
検出器42としては周知の受光素子が適用される。前記受光素子としては、外部光電効果(光電子放出)を利用した光電管、光電子増倍管等が例示される。半導体の内部光電効果を利用した受光素子としては、フォトトランジスタ、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光導電セル、イメージセンサ、光電池等が例示される。光吸収による熱を検出する受光素子としては、放射用熱電対、サーモパイル等が例示される。その他の受光素子としては、焦電効果を利用した焦電検出器や音響フォノンが挙げられる。
【0029】
検出光の強度Iは、以下の式(1)で示される入射光強度I、吸収断面積σ、ガス濃度c、光路長Lに基づくLambert-Beerの式により、面積とガスの濃度の積σcに依存することが分かる。
【0030】
【数1】
【0031】
吸収断面積σは、ガス種及び波長に依存する値であり、式(1)からガス濃度cを算出できる。また、吸収断面積σの値が大きいほど低濃度での検知が可能である。
【0032】
本実施形態のガスセンサ4は高感度化のためにガスセンサ素子1の表面プラズモン共鳴を利用する。表面プラズモン共鳴とは、ガスセンサ素子1での金属部3の表面の電子の振動が伝搬光によって励起され共振する現象である。表面プラズモン共鳴の下では金属部3の表面に電場増強効果が生じ、前記対象ガスの吸光波長とプラズモン共鳴波長が重なり合うと、電場増強効果により当該対象ガスの吸光が増強される。この表面プラズモン共鳴により実質的に吸収断面積を大きくすることが可能となり、低濃度の検出に期待できる。
【0033】
図3は、紫外領域におけるオゾン及びアンモニアの吸収断面積を示す(非特許文献3,4)。同図の曲線は紫外領域での吸収断面積を示し、直線の値は赤外領域での最大の吸収断面積の値を示す。紫外領域ではオゾン及びアンモニアの吸光波長がそれぞれ独立していることが分かる。オゾン及びアンモニアの吸収断面積のピーク値と赤外領域でのブタンの吸収断面積のピーク値(4.4×10-19cm)を比較すると、オゾンは約26.6倍、アンモニアは約45.5倍の値を示した。したがって、特許文献1と同等の電場増強効果を得られた場合、紫外領域においてオゾンは255.5nmで約0.75ppm、アンモニアは193.8nmで約0.44ppmの濃度の検出が可能であると推測できる。
【0034】
図4は、Alからなる金属部3の高さHを変化させたときの透過率スペクトルを示す。金属部3の高さHを55nm以上100nm以下の間で変化させることで、200~300nmの波長帯で透過率スペクトルを制御可能であることが分かった。
【0035】
紫外領域における共鳴モードが奥行き方向の定在波モードであることが分かったため、図1の金属部3の奥行き方向に沿う表面(z-y面)に対する入射光角度θ[deg]を確保することで共鳴モードを変化させて透過率スペクトルの制御が可能であるかを調べた。入射光角度θを変化させた場合でのy方向ピッチPyの透過率スペクトルの依存性の解析結果を図5に示した。また、入射光角度θ[deg]を設定した場合、透過率ディップがスプリットすることが分かった。
【0036】
図6は、入射光角度が10°でy方向ピッチPyを変化させたときの透過率スペクトルを示す。この結果から、y方向ピッチPyを変化させることで透過率スペクトルを約60nmシフト可能であり、同図から350nm以上800nm以下のy方向ピッチPy(図1の前記ガスの流れ(金属部3の奥行き長さLd)に沿うガラス基板2の奥行き長さ)で190~260nmの波長帯で吸収スペクトルの制御が可能であることが分かった。
【0037】
以上のように実施形態1のガスセンサ素子1及びこれを備えたガスセンサ4によれば、金属部品の腐食の原因となるガスの経時的な検出を高感度に行えるので、当該金属部品を有する機器の劣化を予兆的に捉えることができる。特に、当該ガス中にオゾンとアンモニアのどちらか一方のみしか含まれなくとも、そのどちらか一方のみのガスを検出できる。また、ガス中にオゾンとアンモニアが共存する場合にはオゾンガスとアンモニアガスの同時検出も行える。尚、図3~4の実施例は金属部3にAlを利用したものであるがAlと同族元素のTl、In、Gaを適用したものであっても同様の効果が得られるものと考えられる。
【0038】
[実施形態2]
図7は紫外プラズモン共鳴を用いた本発明の一態様である実施形態2における光学式のガスセンサ素子1の斜視図である。
【0039】
ガスセンサ素子1は、ガラス基板2上に金属部3を一枚立設したメタサーフェス構造を単位構造とし、この単位構造が実施形態1と同様に同一平面上に周期配列される。高感度化を行うためにガスセンサ素子1を構成する金属には、実施形態1と同様に紫外域でプラズモン共鳴を誘起可能な屈折率を有するAl若しくはその同族元素(Tl、In、Ga)等が適用される。ガラス基板2及び金属部3には上方の光源41から紫外領域の光が入射されて金属部3の表面でプラズモン共鳴が誘起される。金属部3の構造寸法や前記光の入射角の調整により吸収スペクトルの制御が行われる。検出対象ガスの吸光波長とプラズモン共鳴波長を一致させることで、金属部3の奥行き方向(y方向ピッチPy方向)に流入する対象ガスの吸光を増強され、前記ガス種の検知の高感度化が図られる。
【0040】
ガスセンサ素子1でプラズモン共鳴が誘起可能か調査して最適な寸法の設計を行った。電磁場解析ソフトを用いてガスセンサ素子1に光を通した時の透過率と電場分布を計算することでプラズモン共鳴の誘起可能な寸法を調査した。解析の際に各寸法が吸収スペクトルにどのように影響を与えるか調べるため,全ての寸法でパラメータマッピングを行った。
【0041】
結果として図8に示すように図7のガラス基板2のx方向ピッチPxを制御することで、1つの寸法のみでオゾンとアンモニアの吸光波長に一致した波長でプラズモン共鳴を誘起可能であることが分かった。
【0042】
また、図9図8の計算結果から得た吸収ピークでの最小透過率Tmin[-]と半値全幅FWHM[nm]を用いた性能指数FOMを示す。性能指数は以下の式(2)から算出できる。
【0043】
【数2】
【0044】
非特許文献1の素子構造を用いた場合でも同様に計算を行った結果、本実施形態でのガスセンサ素子1の構造を用いた場合の方が高い性能指数を得ることが分かった。
【0045】
以上のように実施形態1,2のメタサーフェス構造が適用された検出手段によれば、オゾンガス及びアンモニアガスを一つのメタサーフェス構造で同時に検出可能であるので、2つの以上のセンサを有することなく、インフラ用電気設備機器の劣化状態を複合的に診断でき、オゾン及びアンモニアの同時計測監視が必要な化学反応プロセス、浄化設備等の利便性が高まる。
【符号の説明】
【0046】
1…ガスセンサ素子
2…ガラス基板
3…金属部、30…ギャップ
4…ガスセンサ、41…光源、42…検出器、43…測定セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9