IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KOKUSAI ELECTRICの特許一覧

特開2024-65939基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム
<>
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図1
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図2
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図3
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図4
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図5
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図6
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図7
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図8
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図9
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図10
  • 特開-基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065939
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240508BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175067
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】うるし原 美香
(72)【発明者】
【氏名】平野 敦士
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆史
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA18
4K030BA40
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA06
4K030EA11
4K030FA10
4K030GA02
4K030KA41
4K030LA02
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC03
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC15
5F045AD01
5F045AE01
5F045BB02
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EE14
5F045EE17
5F045EF03
5F045EF09
5F045EK06
(57)【要約】
【課題】複数のプロダクトウエハの中で局所的に、端部のプロダクトウエハの面内均一性を向上できる。
【解決手段】(a)プロダクト領域とダミー領域とを内部に備え、側方に主排気部を有する処理室と、(b)処理室の内側に主排気部と対向配置され、プロダクト領域とダミー領域とに収容される基板に向かって第1原料を供給する第1噴射部と、(c)第1原料の流れの上流側に設けられ、プロダクト領域に収容される基板よりもダミー領域に収容される基板に向かって、第1原料を希釈するアシストガスをより多く供給する第2噴射部と、第1原料の流れの下流側に設けられプロダクト領域に収容される基板とダミー領域に収容される基板とに向かって不活性ガスを供給する第3噴射部と、のうちの少なくとも一方と、(d)ダミー領域にのみ不活性ガスを供給する第4噴射部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の基板が上下方向に沿って配列された状態で収容され、プロダクト領域とプロダクト領域の上側及び下側のうち少なくとも一方に設けられたダミー領域とを内部に備え、側方に主排気部を有する処理室と、
(b)上下方向に延在し、前記処理室の内側に前記主排気部と対向配置され、前記プロダクト領域と前記ダミー領域とに収容された前記基板に向かって第1原料を供給する第1噴射部と、
(c)前記処理室の内側に収容される前記基板の中心より前記第1原料の流れの上流側に設けられ、前記プロダクト領域に収容される前記基板よりも前記ダミー領域に収容される前記基板に向かって、前記第1原料を希釈するアシストガスをより多く供給する第2噴射部と、収容される前記基板の中心より前記第1原料の流れの下流側に設けられ前記プロダクト領域に収容される前記基板と前記ダミー領域に収容される前記基板とに向かって不活性ガスを供給する第3噴射部と、のうちの少なくとも一方と、
(d)前記ダミー領域にのみ不活性ガスを供給する第4噴射部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記第2噴射部と前記第3噴射部との両方が設けられ、
前記第4噴射部は、収容される前記基板の中心より前記第1原料の流れの下流側に配置される、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
収容される前記基板の中心より前記第1原料の流れの上流側に配置され、下側の前記ダミー領域である下ダミー領域に収容される前記基板に対してのみアシストガスを供給する噴射孔を有する第5噴射部と、を更に備え、
前記第2噴射部は、上側の前記ダミー領域である上ダミー領域に収容される前記基板に対してのみアシストガスを供給する噴射孔を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
上下方向に延在すると共に、前記処理室の内側に前記主排気部と対向配置され、少なくとも前記プロダクト領域に収容される前記基板に向かって第2原料を供給する第6噴射部と、
上下方向に延在すると共に、収容される前記基板の中心より前記第1原料の流れの上流側に配置され、少なくとも前記プロダクト領域に収容される前記基板に向かって、前記第1原料と異なると共に第2原料と異なるアシストガスを供給する第7噴射部と、
を更に有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
一対の前記第3噴射部が、前記主排気部と収容される前記基板の中心とを結ぶ仮想鉛直面の両側にそれぞれ設けられる、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第7噴射部は、前記第1噴射部から前記第1原料が供給されるとき、又は、前記第6噴射部から前記第2原料が供給されているときにアシストガスを供給する、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第6噴射部と前記第7噴射部とは、前記第1噴射部を挟むように配置され、
前記第7噴射部は、前記第1噴射部から第14族元素の原料ガスである前記第1原料が供給されているときにアシストガスを供給する、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第4噴射部は、前記第1原料の流れの下流側で、前記主排気部と収容される前記基板の中心とを結ぶ仮想鉛直面の外側に配置され、収容される前記基板の中心より外側の領域であって、収容される前記基板における前記第4噴射部が配置された側の周縁と前記基板の中心との間に位置する上流側の領域に向かって不活性ガスを噴射する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1噴射部における下側の前記ダミー領域である下ダミー領域よりも下側に、上下方向のガスの流れを妨げる仕切板が設けられる、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第4噴射部は、一対の前記第3噴射部の一方に隣接して設けられ、
前記処理室は、前記第3噴射部と前記第4噴射部との間に副排気部を有する、
請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記主排気部の前記処理室の周方向に沿った開口幅は、上側から下側に向かうに従って狭くなる、
又は、
前記主排気部を形成する前記処理室の側壁の一部に、前記側壁から外側に向かって突出し、突出長さが上側から下側に向かうに従って短くなる排気流量調整部を備える、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第3噴射部を備え、
前記第4噴射部は、前記第3噴射部よりも前記主排気部に近い位置に配置される、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第4噴射部は、上側の前記ダミー領域である上ダミー領域に収容される複数の前記基板のうち最上段を除く少なくとも1つの前記基板に対応して開口する上噴射孔と、下側の前記ダミー領域である下ダミー領域に収容される複数の前記基板のうち最下段を除く少なくとも2つの前記基板に対応して開口する下噴射孔とを有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記第3噴射部を備え、
前記第3噴射部は、収容される前記基板の面と略平行に開口する複数の水平噴射孔と、複数の前記水平噴射孔のうち最上段の前記水平噴射孔よりも高い位置に設けられ、斜め上方に向かって開口する傾斜噴射孔とを備える、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第1噴射部は、収容される前記基板の面と略平行な方向に沿って配列された1つ以上の噴射孔を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記第1噴射部は、複数の直線状の円管が前記処理室の円周方向に沿って配列されたノズルアレイである、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記第1噴射部と前記第6噴射部とは、前記第7噴射部を両側から挟むように配置され、
前記第1噴射部が酸化ガス及び還元ガスのうち一方を供給すると共に前記第6噴射部が酸化ガス及び還元ガスのうち他方を供給することによって、前記処理室の内側で酸素活性種又は水酸基ラジカルを生じさせることが可能に構成され、
前記第7噴射部は、前記第1噴射部及び前記第6噴射部のうち少なくとも一方がガスを供給するときに不活性ガスを供給可能に構成される、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記プロダクト領域に収容される基板のうち前記ダミー領域の側の端部に位置する基板の面内均一性は、0.2%以下である、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項19】
(A)プロダクト領域とプロダクト領域の上側及び下側のうち少なくとも一方に設けられたダミー領域とを内部に備え、側方に主排気部を有する処理室の内側に、複数の基板を上下方向に沿って配列された状態で収容する工程と、
(B)上下方向に延在し、前記処理室の内側において前記主排気部と対向配置された第1噴射部を用いて、前記プロダクト領域と前記ダミー領域とに収容された前記基板に向かって第1原料を供給する工程と、
(C)前記処理室の内側において前記基板の中心より前記第1原料の流れの上流側に設けられた第2噴射部を用いて、前記プロダクト領域に収容される前記基板より前記ダミー領域に収容される前記基板に向かって、前記第1原料を希釈するアシストガスをより多く供給することと、
前記基板の中心より前記第1原料の流れの下流側に設けられた第3噴射部を用いて、前記プロダクト領域に収容される前記基板と前記ダミー領域に収容される前記基板とに向かって不活性ガスを供給すること、
のうちの少なくとも一方を行う工程と、
(D)前記ダミー領域にのみ不活性ガスを供給する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項20】
(α)プロダクト領域とプロダクト領域の上側及び下側のうち少なくとも一方に設けられたダミー領域とを内部に備え、側方に主排気部を有する処理室の内側に、複数の基板を上下方向に沿って配列された状態で収容する処理と、
(β)上下方向に延在し、前記処理室の内側において前記主排気部と対向配置された第1噴射部を用いて、前記プロダクト領域と前記ダミー領域とに収容される前記基板に向かって第1原料を供給する処理と、
(γ)前記処理室の内側において前記基板の中心より前記第1原料の流れの上流側に設けられた第2噴射部を用いて、前記プロダクト領域に収容される前記基板より前記ダミー領域に収容される前記基板に向かって、前記第1原料を希釈するアシストガスをより多く供給することと、
前記基板の中心より前記第1原料の流れの下流側に設けられた第3噴射部を用いて、前記プロダクト領域に収容される前記基板と前記ダミー領域に収容される前記基板とに向かって不活性ガスを供給すること、
のうちの少なくとも一方を行う処理と、
(δ)前記ダミー領域にのみ不活性ガスを供給する処理と、
をプロセッサに実行させる、基板処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及び基板処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板処理装置の一例として、特許文献1~7のように、半導体装置を製造する半導体製造装置が知られている。半導体製造装置の一例として、縦型装置が知られている。縦型装置の基板処理装置として、反応管内に、基板としてのウエハを多段に保持する基板保持部材としてのボートが設けられると共に、複数の基板が保持された状態で反応管内の処理室において基板が処理される装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-167400号公報
【特許文献2】特開2011-249407号公報
【特許文献3】特開2021-52092号公報
【特許文献4】特開2014-236129号公報
【特許文献5】特開2019-165210号公報
【特許文献6】特開2021-150410号公報
【特許文献7】特開2022-52622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、処理室の端部に配置されるウエハに関して、処理によりウエハ上に形成される膜の厚さの面内均一性を十分に制御できない場合があった。
【0005】
本開示は、複数のプロダクトウエハの中で局所的に、端部のプロダクトウエハの面内均一性を向上できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)複数の基板が上下方向に沿って配列された状態で収容され、プロダクト領域とプロダクト領域の上側及び下側のうち少なくとも一方に設けられたダミー領域とを内部に備え、側方に主排気部を有する処理室と、
(b)上下方向に延在し、前記処理室の内側に前記主排気部と対向配置され、前記プロダクト領域と前記ダミー領域とに収容される前記基板に向かって第1原料を供給する第1噴射部と、
(c)前記処理室の内側に収容される前記基板の中心より前記第1原料の流れの上流側に設けられ、前記プロダクト領域に収容される前記基板よりも前記ダミー領域に収容される前記基板に向かって、前記第1原料を希釈するアシストガスをより多く供給する第2噴射部と、収容される前記基板の中心より前記第1原料の流れの下流側に設けられ前記プロダクト領域に収容される前記基板と前記ダミー領域に収容される前記基板とに向かって不活性ガスを供給する第3噴射部と、のうちの少なくとも一方と、
(d)前記ダミー領域にのみ不活性ガスを供給する第4噴射部と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数のプロダクトウエハの中で局所的に、端部のプロダクトウエハの面内均一性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る基板処理装置を、奥行方向に沿った垂直面で一部を切断して説明する正面図である。
図2】本実施形態に係る基板処理装置を、水平方向で切断して説明する、図1中の2-2線断面図である。
図3】本実施形態に係る基板処理装置の処理容器を、幅方向に沿った垂直面で切断して説明する、図2中の3-3線断面図である。
図4】本実施形態に係る基板処理装置の処理容器の内管に形成された主排気スリットと副排気スリットとを外管側から見て説明する側面図である。
図5】本実施形態に係る基板処理装置が備えるそれぞれのノズルの噴射孔を説明する正面図である。
図6】斜め上方に向かって開口する傾斜噴射孔を説明する断面図である。
図7】本実施形態に係る基板処理装置の制御部の制御系を説明するブロック図である。
図8】本実施形態に係る基板処理工程を説明するフローチャートである。
図9】実施形態に係る基板処理工程における成膜シーケンスを説明するタイミングチャートである。
図10図10(A)は、比較例に係る基板処理装置によって製造された半導体装置のプロダクトウエハの膜厚を説明するグラフであり、図10(B)は、本実施形態に係る基板処理装置によって製造された半導体装置のプロダクトウエハの膜厚を説明するグラフである。
図11】第1変形例に係る基板処理装置を、図1中の2-2線と同じ高さにおいて水平方向で切断して説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一態様について、主に図1図11を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
また、明細書中に特段の断りが無い限り、各要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、図面中では、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、明細書における重複説明を省略する。
【0011】
また、本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面上に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0012】
また、本明細書において用いる「剤」という用語は、ガス状物質及び液体状物質のうち少なくともいずれかを含む。液体状物質はミスト状物質を含む。すなわち、成膜剤、改質剤、エッチング剤は、ガス状物質を含んでいてもよく、ミスト状物質等の液体状物質を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0013】
また、本明細書における「1~2000Pa」のような数値範囲の表記は、下限値及び上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~2000Pa」とは「1Pa以上2000Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、数値に「0」が含まれる場合、「0」とは、そのガス等の物質が供給されない状態を意味する。例えば、ガスの供給流量に0slmが含まれる場合、0slmとは、ガスが供給されない状態を意味する。このことは、以下の説明において、他の物質においても同様である。
【0014】
<基板処理装置の全体構成>
まず、本実施形態に係る基板処理装置10の全体構成を、図1図10を参照して説明する。なお、装置の上下方向Hは鉛直方向を示し、装置の幅方向Wは水平方向を示し、装置の奥行方向Dは水平方向を示す。
【0015】
基板処理装置10は、図1に示されるように、各部を制御する制御部280及び処理炉202を備え、処理炉202は、加熱手段であるヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、図示しないヒータベースに支持されることにより装置上下方向に据え付けられている。ヒータ207は、処理ガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。なお、制御部280については、詳細を後述する。
【0016】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器を構成する反応管203が立てて配置されている。反応管203は、例えば石英(SiO)又は炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により形成されている。基板処理装置10は、いわゆるホットウォール型である。
【0017】
反応管203は、図2にも示されるように、円筒状の内管12と、内管12を囲むように設けられた円筒状の外管14とを有している。すなわち、外管14は、内管12と共に反応管203を構成する。外管14は、内管12を包囲することによって筒部との間に排気空間Sとしての間隙を形成する。内管12は、外管14と同心円状に配置される。内管12は、管部材の一例である。
【0018】
内管12は、上部が覆われると共に、内側に複数の基板を収容する筒部としての側壁を有する。具体的には、内管12は、図1に示したように、下端が開放され、上端が平坦状の壁体で閉塞された有天井形状で形成されている。また、外管14も、下端が開放され、上端が平坦状の壁体で閉塞された有天井形状で形成されている。更に、内管12と外管14との間に形成された排気空間Sには、図2に示したように、ノズル室としての供給バッファ222が形成されている。なお、供給バッファ222の詳細は、後述する。
【0019】
内管12の内部には、図1に示したように、基板としてのウエハ200を処理する処理室201が形成されている。また、この処理室201は、ウエハ200を水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で保持可能な基板保持具の一例であるボート217を収容可能とし、内管12は、収容されたウエハ200を包囲する。複数のウエハ200は、内管12の筒部の内側に、筒部の軸の方向に沿って並べられる。なお、内管12については、詳細を後述する。
【0020】
反応管203の下端は、円筒体状のマニホールド226によって支持されている。マニホールド226は、例えばニッケル合金やステンレス等の金属で構成されるか、又はSiO若しくはSiC等の耐熱性材料で構成されている。マニホールド226の上端部にはフランジが形成されており、このフランジ上に外管14の下端部が設置されている。このフランジと外管14の下端部との間には、Oリング等の気密部材220が配置されており、反応管203内を気密状態にしている。
【0021】
マニホールド226の下端の開口部には、シールキャップ219がOリング等の気密部材220を介して気密に取り付けられており、反応管203の下端の開口部側、すなわちマニホールド226の開口部が気密に塞がれている。シールキャップ219は、例えばニッケル合金やステンレス等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219は、SiO又はSiC等の耐熱性材料でその外側を覆うように構成してもよい。
【0022】
シールキャップ219上にはボート217を支持するボート支持台218が設けられている。ボート支持台218は、例えばSiOやSiC等の耐熱性材料で構成され断熱部として機能する。
【0023】
ボート217は、ボート支持台218上に立設されている。ボート217は、例えばSiOやSiC等の耐熱性材料で構成されている。図2に示すように、ボート217はボート支持台218に固定された図示しない底板とその上方に配置された天板とを有しており、底板と天板との間に複数本の支柱217aが架設されている。
【0024】
ボート217には、内管12内の処理室201で処理される複数枚のウエハ200が保持されている。図2に示すように、複数枚のウエハ200は、互いに一定の間隔をあけながら水平姿勢を保持し、かつ互いに中心を揃えた状態でボート217の支柱217aに支持されている。複数枚のウエハ200の積載方向は、反応管203の軸方向である。つまり、基板の中心がボート217の中心軸にあわせられ、ボート217の中心軸は反応管203の中心軸に一致する。
【0025】
シールキャップ219の下側には、ボートを回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267の回転軸265は、シールキャップ219を貫通してボート支持台218に接続されており、回転機構267によって、ボート支持台218を介してボート217を回転させることでウエハ200を回転させる。
【0026】
シールキャップ219は、反応管203の外部に設けられた昇降機構としてのエレベータ115によって垂直方向に昇降され、ボート217を処理室201に対して搬入、及び搬出することができる。
【0027】
マニホールド226には、処理室201の内部にガスを供給するガスノズル340a,340b,341a,341b,342c2,343a1,343a2,343b,342a2,342c1,342a1を支持する複数のノズル支持部が、マニホールド226を貫通するようにして設置されている。本実施形態では、4本のノズル支持部が設置されている。図1中では、ガスノズル341bとノズル支持部350aとのみが例示されている。ノズル支持部は、例えばニッケル合金やステンレス等の材料によって構成されている。
【0028】
ノズル支持部の一端には、処理室201の内部へガスを供給するガス供給管310a~310iが、それぞれ接続されている。また、ノズル支持部の他端には、ガスノズル340a,340b,341a,341b,342c2,343a1,343a2,343b,342a2,342c1,342a1が、それぞれ接続されている。ガスノズル340a,340b,341a,341b,342c2,343a1,343a2,343b,342a2,342c1,342a1は、例えばSiO又はSiC等の耐熱性材料によって構成されている。ガスノズル340a,340b,341a,341b,342c2,343a1,343a2,343b,342a2,342c1,342a1については、詳細を後述する。
【0029】
(ガス供給管)
ガス供給管310a,310fは、図2に示されるように、ノズル支持部を介し第一ガスノズル340a,340b,341a,341bと連通している。また、ガス供給管310eは、ノズル支持部を介して第七ガスノズル342a1と連通している。また、ガス供給管310c,310gは、ノズル支持部を介して第六ガスノズル342c1と連通している。
【0030】
また、ガス供給管310dは、ノズル支持部350dを介して第二ガスノズル342c2と連通している。また、ガス供給管310bは、ノズル支持部を介して第五ガスノズル342a2と連通している。また、ガス供給管310hは、ノズル支持部を介して第三ガスノズル343a1,343a2と連通している。また、ガス供給管310iは、ノズル支持部を介して第四ガスノズル343bと連通している。
【0031】
ガス供給管310aには、ガスの流れ方向において上流側から順に、処理ガスとしての第1原料ガスを供給する原料ガス供給源360a、流量制御器の一例であるマスフローコントローラ(MFC)320a、及び開閉弁であるバルブ330aがそれぞれ設けられている。
【0032】
ガス供給管310bには、上流方向から順に、処理ガスとしてのアシストガスを供給するアシストガス供給源360b、MFC320b、及びバルブ330bがそれぞれ設けられている。ガス供給管310cには、上流方向から順に、処理ガスとしての第2原料ガスを供給する原料ガス供給源360c、MFC320c、及びバルブ330cがそれぞれ設けられている。ガス供給管310dには、上流方向から順に、処理ガスとしてのアシストガスを供給するアシストガス供給源360d、MFC320d、及びバルブ330dがそれぞれ設けられている。
【0033】
ガス供給管310eには、上流方向から順に、処理ガスとしてのアシストガスを供給するアシストガス供給源360e、MFC320e、及びバルブ330eがそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310hには、上流方向から順に、処理ガスとしての不活性ガスを供給する不活性ガス供給源360h、MFC320h、及びバルブ330hがそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310eには、上流方向から順に、処理ガスとしての不活性ガスを供給する不活性ガス供給源360i、MFC320i、及びバルブ330iがそれぞれ設けられている。
【0034】
ガス供給管310aのバルブ330aよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管310fが接続されている。ガス供給管310fには、上流方向から順に、処理ガスとしての不活性ガスを供給する不活性ガス供給源360f、MFC320f、及びバルブ330fがそれぞれ設けられている。
【0035】
また、ガス供給管310cのバルブ330cよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管310gが接続されている。ガス供給管310gには、上流方向から順に、処理ガスとしての不活性ガスを供給する不活性ガス供給源360g、MFC320g、及びバルブ330gがそれぞれ設けられている。アシストガス供給源360b、360d、360e及び不活性ガス供給源360f、360g、360h、360iは、共通の供給元に接続されている。
【0036】
(第一ガスノズル340a,340b,341a,341bへの供給系)
主に、ガス供給管310a、ガス供給管310f、MFC320a、MFC320f、バルブ330a、及びバルブ330fにより、第1原料ガス供給系が構成される。原料ガス供給源360a及び不活性ガス供給源360fを第1原料ガス供給系に含めてもよい。
【0037】
(第二ガスノズル342c2への供給系)
主に、ガス供給管310d、MFC320d、及びバルブ330dにより、後述する2つのサイドダミー領域のうち上ダミー領域のみに対するアシストガス供給系が構成される。アシストガス供給源360dをアシストガス供給系に含めてもよい。
【0038】
(第三ガスノズル343a1,343a2への供給系)
主に、ガス供給管310h、MFC320h、及びバルブ330hにより、プロダクト領域とサイドダミー領域との両方に対する不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給源360hを不活性ガス供給系に含めてもよい。
【0039】
(第四ガスノズル343bへの供給系)
主に、ガス供給管310i、MFC320i、及びバルブ330iにより、サイドダミー領域のみに対するアシストガス供給系が構成される。不活性ガス供給源360iを不活性ガス供給系に含めてもよい。
【0040】
(第五ガスノズル342a2への供給系)
主に、ガス供給管310e、MFC320e、及びバルブ330eにより、2つのサイドダミー領域のうち下ダミー領域のみに対するアシストガス供給系が構成される。アシストガス供給源360eをアシストガス供給系に含めてもよい。
【0041】
(第六ガスノズル342c1への供給系)
主に、ガス供給管310c、ガス供給管310g、MFC320c、MFC320g、バルブ330c、及びバルブ330gにより、第2原料ガス供給系が構成される。原料ガス供給源360c及び不活性ガス供給源360gを第2原料ガス供給系に含めてもよい。
【0042】
(第七ガスノズル342a1への供給系)
主に、ガス供給管310b、MFC320b、及びバルブ330bにより、プロダクト領域とサイドダミー領域との両方に対するアシストガス供給系が構成される。アシストガス供給源360bをアシストガス供給系に含めてもよい。
【0043】
(排気系)
反応管203の外管14には、主排気口230が形成されている。主排気口230は、内管の排気口237よりも下方に形成される。反応管203の内管12には、主排気部としての主排気スリット236が形成されている。すなわち、反応管203は、側方に主排気スリット236を有する。
【0044】
図2に示すように、主排気口230は、平面視で、主排気スリット236と同一直線上に並ぶように配置される。図示を省略するが、反応管203の外管14には、一対の副排気口が形成されている。図2に示すように、一対の副排気口のそれぞれは、平面視で、対応する副排気スリット238と同一直線上に並ぶように配置される。副排気スリット238は、本開示の副排気部に対応する。
【0045】
主排気口230と一対の副排気口とは、排気空間Sと反応管203の外部とを連通する。主排気口230と一対の副排気口とは、本開示の排気ポートに対応する。主排気口230には、原料ガスを外部へ送る主排気ダクト231が接続される。また、図2に示すように、副排気口には、原料ガスを外部へ送る副排気ダクト232が接続される。
【0046】
主排気ダクト231には、処理室201の内部の圧力を検出する圧力センサ245、及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。真空ポンプ246の下流側の主排気ダクト231は、図示しない廃ガス処理装置等に接続されている。これにより、真空ポンプ246の出力及びAPCバルブ244の開度を制御することで、処理室201の内部の圧力が所定の圧力(すなわち、真空度)となるよう真空排気できるように構成されている。
【0047】
また、図示を省略するが、副排気ダクト232にも主排気ダクト231と同様、真空ポンプが、圧力センサ及びAPCバルブを介して接続されている。真空ポンプの下流側の副排気ダクト232は、図示しない廃ガス処理装置等に接続されている。
【0048】
主に、主排気ダクト231、APCバルブ244、圧力センサ245により、主排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めてもよい。また、主に、副排気ダクト232、副排気ダクト232に接続された不図示のAPCバルブ、副排気ダクト232に接続された不図示の圧力センサにより、副排気系が構成される。副排気ダクト232に接続された不図示の真空ポンプを排気系に含めてもよい。
【0049】
また、反応管203の内部には、温度検出器としての図示しない温度センサが設置されており、温度センサにより検出された温度情報に基づいて、ヒータ207への供給電力を調整することで、処理室201の内部の温度が所望の温度分布となるように構成されている。
【0050】
本明細書における処理温度とはウエハ200の温度又は処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0051】
この構成において、処理炉202では、バッチ処理される複数枚のウエハ200を多段に積載するボート217がボート支持台218によって処理室201の内部へ搬入される。そして、処理室201へ搬入されたウエハ200を、ヒータ207によって所定の温度に加熱する。このような処理炉を有する装置は、縦型バッチ装置と呼ばれる。処理室に収容される複数のウエハは、大きく、プロダクトウエハとサイドダミーウエハとに分類できる。プロダクトウエハは、実際にIC等の半導体素子が製作されるウエハである。プロダクトウエハは、配列されたウエハ全体の配列領域のうち、上下方向の中央に配置される。一方、サイドダミーウエハは、プロダクトウエハの代わりに用いられるウエハであり、配列されたウエハ全体の配列領域のうち、プロダクトウエハとしての品質が確保できない位置、例えばプロダクト領域を挟むように、上下方向の両端に配置される。
【0052】
(供給バッファ)
図2に示すように、供給バッファ222は、内管12の筒部の側壁に設けられ側壁から外側に突出する領域である。供給バッファ222は、隔壁18c,18dによって筒部の周方向に沿って3つに分割される。
【0053】
供給バッファ222の分割された部分のうち中央の部分222bに、第1原料ガスを供給する第一ガスノズル340a,340b,341a,341bが設けられる。供給バッファ222の中央の部分222bと筒部との境界位置において、筒部の周方向における両端を繋ぐ仮想円弧とウエハ200の中心C1とによって、扇形が形成される。本実施形態では、扇形の中心角θは、30度未満である。本開示では、扇形の中心角は、任意に設定できる。
【0054】
図3に示すように、供給バッファ222の中央の部分222bには、供給スリット235bが形成される。供給スリット235bは、中央の部分222bにおける装置の上下方向Hの全体と装置の幅方向Wの全体とに亘って開口する。このため、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bの装置の上下方向Hの全体と装置の幅方向Wの全体とが、筒部の内側のウエハ200に対向している。
【0055】
(排気スリット)
図2に示すように、主排気スリット236と副排気スリット238とを含む複数の排気スリットは、筒部の側壁に形成される。複数の排気スリットは、筒部の内側から原料ガスを排気する。本実施形態では、複数の排気スリットの個数は、1つの主排気スリット236と2つの副排気スリット238とによって、3つである。本開示では、複数の排気スリットの個数は、少なくとも2つ以上であればよい。
【0056】
(主排気スリット)
主排気スリット236は、ウエハ200の中心C1に対して供給バッファ222と反対側の筒部の側壁に形成される。本開示では、主排気スリット236は、必須ではない。
【0057】
(副排気スリット)
2つの副排気スリット238は、筒部の内側に設定される仮想鉛直面Aを両側から挟んで開口する。仮想鉛直面Aは、図2に示すように、平面視で供給バッファ222と筒部との境界部における筒部の周方向の中心と筒部の軸とを通るように設定される。筒部の軸は、ウエハ200の中心と重なる。
【0058】
2つの副排気スリット238は、一対の排気スリットとして、主排気スリット236と同じ高さで主排気スリット236を挟む。平面視で、副排気スリット238の中心とウエハ200の中心C1とを結ぶそれぞれの第1仮想線L1が設定される。本実施形態では、第1仮想線L1と仮想鉛直面Aとの間の角度は、鈍角である。なおこの角度は、供給バッファ222側を起点として測るものとする。本開示では、第1仮想線L1と仮想鉛直面Aとの間の角度は、鈍角に限定されない。
【0059】
図2に示すように、筒部の周方向における2つの副排気スリット238のそれぞれの幅は、主排気スリット236の幅よりも小さい。本開示では、副排気スリット238の幅は、主排気スリット236の幅以上であってもよい。
【0060】
図4に示すように、本実施形態では、主排気スリット236の筒部の周方向に沿った開口幅W1は、筒部の軸の方向に沿って、主排気口230と反対側(すなわち図4中の上側)から主排気口230側(すなわち図4中の下側)に向かうに従って狭くなる。同様に、一対の副排気スリット238のそれぞれの筒部の周方向に沿った開口幅は、筒部の軸の方向に沿って、副排気口と反対側から副排気口に向かうに従って狭くなる。
【0061】
本開示では、主排気スリット236と一対の副排気スリット238とのそれぞれの筒部の周方向に沿った開口幅は、任意に設定できる。なお、図4中では、見易さのため、カウンターバッファの図示を省略する。カウンターバッファについては後で説明する。
【0062】
<要部構成>
次に、本実施形態に係る基板処理装置10におけるそれぞれのガスノズルについて具体的に説明する。なお、図5中におけるガスノズル340a,340b,341a,341b,342c2,343a1,343a2,343b,342a2,342c1,342a1の配置位置は、説明のための模式的な配置位置であり、処理室201の内側における実際の配置位置とは異なる。
【0063】
(プロダクト領域及びサイドダミー領域)
まず、図5に示すように、処理室201は、プロダクトウエハが配置されるプロダクト領域Pと、サイドダミーウエハが配置される上ダミー領域TSD及び下ダミー領域BSDとを内部に備える。本実施形態では、上側であるトップ側のサイドダミーウエハが配置される領域である上ダミー領域TSDと、下側であるボトム側のサイドダミーウエハが配置される領域である下ダミー領域BSDとの2つのサイドダミー領域が設けられた場合が例示されているが、本開示では、サイドダミー領域は、プロダクト領域Pの上側及び下側のうち少なくとも一方に設けられればよい。その意味において、上ダミー領域TSDや下ダミー領域BSDは、サイドダミー(SD)領域と総称される。プロダクト領域Pと上ダミー領域TSDと下ダミー領域BSDとは、例えば、配列領域の長さを3等分するように配置されうる。
【0064】
本開示では、複数のプロダクトウエハのうち、上ダミー領域の側の端部に位置する一部のウエハを「トップ側のプロダクトウエハ」と称する。また、プロダクトウエハのうち、下ダミー領域の側の端部に位置する一部のウエハを「ボトム側のプロダクトウエハ」と称する。また、トップ側のプロダクトウエハとボトム側のプロダクトウエハとをまとめて「端部のプロダクトウエハ」とも称する。
【0065】
なお、サイドダミーウエハとプロダクトウエハとの間には、モニタウエハが配置される場合がある。モニタウエハは、半導体素子を製作する際、所望の成膜が行われたかをモニタするためのウエハである。本開示では、モニタウエハにプロダクトウエハと同様のパターンが形成される場合、モニタウエハが配置されるモニタ領域は、プロダクト領域Pに含まれ得る。一方、モニタウエハにプロダクトウエハと同等の表面積のパターンが形成されない、又はパターンが全く形成されない場合、モニタウエハが配置されるモニタ領域は、上ダミー領域TSD又は下ダミー領域BSDに含まれ得る。
【0066】
SD領域は、表面積がプロダクトウエハよりも小さいダミーウエハが配置された場合、表面反応の速度が遅くなり、処理ガスの消費量は、プロダクト領域における処理ガスの消費量より少ない。更に、処理室内には、上ダミー領域の更に上側に位置するトップ側空間と、下ダミー領域の下側に位置するボトム側空間とが形成される。このため、トップ側空間とボトム側空間とでは、処理ガスが、余剰ガスとして滞留し易い。この滞留によりトップ側及びボトム側のプロダクトウエハはエッジ側で膜厚が増加し面内均一性を悪化させうる。結果的に面間均一性をも悪化させうる。
【0067】
また、以下では、供給バッファ222内におけるそれぞれのガスノズルを、平面視でのウエハ200の中心C1より第1原料ガスの流れの上流側に配置されているガス噴射部と、下流側に配置されているガス噴射部とに大まかに分けて説明する。なお、本明細書では、上流側と下流側との境界線上の位置、すなわち、平面視でウエハ200の中心C1を含んで仮想鉛直面Aと直交する仮想線上の位置は、上流側又は下流側のいずれに含まれてもよい。また、平面視における、それぞれのガスノズルの配置位置は、筒状のノズルの中心の位置を意味する。
【0068】
[上流側のノズル]
供給バッファ222内の上流側には、第1噴射部としての第一ガスノズル340a,340b,341a,341b、第6噴射部としての第六ガスノズル342c1、第2噴射部としての第二ガスノズル342c2、第5噴射部としての第五ガスノズル342a2、及び第7噴射部としての第七ガスノズル342a1が配置される。
【0069】
(第1噴射部)
第一ガスノズル340a,340b,341a,341bは、上下方向に延在すると共に、図2に示すように、主排気スリット236と対向配置される。プロダクト領域Pとダミー領域との両方に対向する噴射孔を有する。第一ガスノズル340a,340b,341a,341bは、プロダクトウエハとダミーウエハとに対して上流側から第1原料ガスを供給する。
【0070】
図3に示すように、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bは、基板の面と略平行な方向に沿って配列された3つ以上の噴射孔を有する。なお、本開示では、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bの噴射孔の個数は、1つ以上であればよい。
【0071】
図2に示すように、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bは、複数の直線状の円管が処理室201の円周方向に沿って配列されたノズルアレイである。なお、本開示では、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bがノズルアレイであることは必須ではない。
【0072】
(リターンノズル)
図3に示すように、本実施形態では4つの第一ガスノズル340a,340b,341a,341bは、2つのリターンノズル340,341によって形成される。すなわち、4つの第1ノズルのうち図2中の下側の2つのガスノズル340a,340bは、1つのリターンノズル340によって形成されると共に、図2中の上側の2つのガスノズル341a,341bは、他の1つのリターンノズル341によって形成される。本開示では、1つのリターンノズルのみによって、2つのノズルが形成されてもよい。
【0073】
また、本開示では、第1ノズルの個数は、1つであってもよいし、或いは2つ以上の任意の複数の個数であってもよい。また、本開示では、複数のノズルは、リターンノズルであることは必須ではなく、例えば互いに独立した複数のノズルであってよい
【0074】
図3に示すように、2つのリターンノズルは、原料ガスがそれぞれ流通する往路管と復路管とを有する。2つのリターンノズルは、往路管の上端と復路管の上端とが連通される。2つのリターンノズルは、それぞれの復路管同士が隣接し、かつ、それぞれの往路管同士が離れて配置される。本実施形態では、往路管の内径と復路管の内径とは同じである。本開示では、往路管の内径と復路管の内径とは異なっていてもよい。
【0075】
(噴射孔)
2つのリターンノズル340,341の往路管と復路管とのそれぞれは、リターンノズルの長手方向に沿ってそれぞれ延びる3列以上の噴射孔234を有する。噴射孔234からは、同一の原料ガスが噴射される。第1原料ガスは、平面視において放射状に噴射される。
【0076】
なお、本開示では、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bが上下方向に沿って配置された3列以上の噴射孔を有することは必須ではなく、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bが、基板の面と平行な面内に、筒部の周方向に沿って並べられた3つ以上の噴射孔を有してもよい。また、本開示では、噴射孔の個数は、1つ、2つ、或いは、4つ以上、任意に設定できる。
【0077】
(仕切板)
図5に示すように、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bの下ダミー領域BSDよりも下側の側面には、仕切板359が、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bの側面から突出した状態で設けられる。仕切板359は、処理室201の内側で上下方向のガスの流れを妨げる。本実施形態では、仕切板359の形状として、図5中の第一ガスノズル340a,340b,341a,341bの左右両側に突出している場合が例示されたが、本開示では、これに限定されない。本開示では、仕切板359は、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bの周囲の少なくとも一部に設けられればよい。
【0078】
(第6噴射部)
第六ガスノズル342c1は、少なくともプロダクト領域Pに対向する噴射孔を有する。第六ガスノズル342c1は、プロダクトウエハとダミーウエハとに対して上流側から第2原料ガスを供給する。
【0079】
本実施形態では第六ガスノズル342c1の噴射孔がプロダクト領域Pとダミー領域との両方に設けられた場合が例示されたが、本開示では、第六ガスノズル342c1の噴射孔は、プロダクト領域Pにのみ設けられてもよい。また、本開示では、第六ガスノズル342c1は、必須ではない。
【0080】
(第2噴射部)
第二ガスノズル342c2は、上ダミー領域TSDの基板に対してのみアシストガスを供給する噴射孔を有する。第二ガスノズル342c2の噴射孔の個数は、1つ以上である。すなわち第二ガスノズル342c2は、1段以上のダミーウエハに対して上流側からアシストガスを供給する。本実施形態では第二ガスノズル342c2の噴射孔の個数が1つである場合が例示されたが、本開示では、1つ以上、任意に設定できる。
【0081】
本開示では、第二ガスノズル342c2は、サイドダミー領域に対しプロダクト領域Pよりも多くのアシストガスを噴射する。本実施形態では第二ガスノズル342c2の噴射孔が上ダミー領域TSDにのみ設けられた場合が例示されたが、本開示では、第二ガスノズル342c2の噴射孔は、プロダクト領域Pとダミー領域との両方に設けられてもよい。
【0082】
噴射孔がプロダクト領域Pとダミー領域との両方に設けられる場合、プロダクト領域Pよりも多くのアシストガスをダミー領域に噴射するように、例えば、サイドダミー領域側の噴射孔の個数は、プロダクト領域P側の噴射孔の個数より多く配置される。或いは例えば、サイドダミー領域側において一段に配置される噴射孔の個数が3つであると共に、プロダクト領域P側において一段に配置される噴射孔の個数が1つであるように、一段に配置される噴射孔の個数を変えてもよい。
【0083】
(第5噴射部)
第五ガスノズル342a2は、基板の中心より第1原料ガスの流れの上流側に配置され、下ダミー領域BSDの基板に対してのみアシストガスを供給する噴射孔を有する。第五ガスノズル342a2の噴射孔の個数は、2つ以上である。すなわち第五ガスノズル342a2は、2段以上のダミーウエハに対して上流側からアシストガスを供給する。本実施形態では第五ガスノズル342a2の噴射孔の個数が3つである場合が例示されたが、本開示では、2つ以上、任意に設定できる。
【0084】
本実施形態では、第二ガスノズル342c2と第五ガスノズル342a2との2本のノズルが上流側に配置されることによって、全てのウエハのそれぞれの膜厚を調整することができ、結果、ウエハ全体の面間均一性を調整できる。なお、本開示では、第五ガスノズル342a2は必須ではない。第五ガスノズル342a2が設けられない場合、第二ガスノズル342c2が、上ダミー領域TSDに対向する噴射孔と下ダミー領域BSDに対向する噴射孔との両方を有してもよい。また、本開示では、第二ガスノズル342c2は、下ダミー領域BSDに対向する噴射孔のみを有してもよい。
【0085】
(第7噴射部)
第七ガスノズル342a1は、少なくともプロダクト領域Pに対向する噴射孔を有する。本実施形態では第七ガスノズル342a1の噴射孔がプロダクト領域Pとダミー領域との両方に設けられた場合が例示されたが、本開示では、第七ガスノズル342a1の噴射孔は、プロダクト領域Pにのみ設けられてもよい。また、本開示では、第七ガスノズル342a1は、必須ではない。
【0086】
第七ガスノズル342a1は、プロダクトウエハとダミーウエハとに対して上流側からアシストガスを供給する。第七ガスノズル342a1のアシストガスは、第1原料ガスと第2原料ガスとのいずれとも異なる種類のガスである。第七ガスノズル342a1によって、全てのプロダクトウエハのそれぞれの面内均一性を調整できる。
【0087】
また、第七ガスノズル342a1は、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bから第1原料ガスが供給されると共に第六ガスノズル342c1から第2原料ガスが供給されているときにアシストガスを供給する。
【0088】
また、本実施形態では、第六ガスノズル342c1と第七ガスノズル342a1とは、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bを挟むように配置される。また、第七ガスノズル342a1は、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bから第14族元素の原料ガスである第1原料ガスが供給されているときにアシストガスを供給する。第14族元素の原料ガスは、例えば、C、Si、Ge、Sn、Pb等である。なお、本開示では、第1原料ガスは、第14族元素以外の原料ガスであってもよい。
【0089】
[下流側のノズル]
供給バッファ222内の下流側には、第3噴射部としての第三ガスノズル343a1,343a2、及び第4噴射部としての第四ガスノズル343bが配置される。
【0090】
(第3噴射部)
第三ガスノズル343a1,343a2は、プロダクト領域Pとダミー領域との両方に対向する噴射孔を有する。第三ガスノズル343a1,343a2は、プロダクトウエハとダミーウエハとに対して下流側から不活性ガスを供給する。第三ガスノズル343a1,343a2によって、全てのプロダクトウエハのそれぞれの面内均一性を調整できる。
【0091】
本実施形態では、一対の第三ガスノズル343a1,343a2が、主排気孔と基板の中心とを結ぶ仮想鉛直面Aを挟んで仮想鉛直面Aの両側にそれぞれ設けられる。なお、本開示では、第三ガスノズル343a1,343a2の個数は、一対に限定されず、1つであってもよいし、或いは、3つ以上であってもよい。
【0092】
第三ガスノズル343a1,343a2は、平面視で、第三ガスノズル343a1,343a2の噴射方向とウエハ200の中心C1とを結ぶ第2仮想線L2と仮想鉛直面Aとの間の角度(供給バッファ222側を起点とする)が鈍角である位置にカウンターノズルとして設けられる。カウンターノズルの第三ガスノズル343a1,343a2は、カウンターバッファ222dの内側にそれぞれ収容される。カウンターバッファ222dは、供給バッファ222と同様に、内管12の筒部の側壁に設けられ側壁から外側に突出する領域である。
【0093】
なお、本実施形態では、第二ガスノズル342c2と第三ガスノズル343a1,343a2との両方が設けられた場合が例示されたが、本開示では、第二ガスノズル342c2と第三ガスノズル343a1,343a2との両方が設けられることは、必須ではない。第二ガスノズル342c2と第三ガスノズル343a1,343a2とのうち少なくとも一方が設けられればよい。
【0094】
(水平噴射孔及び傾斜噴射孔)
図5に示すように、第三ガスノズル343a1,343a2は、複数の水平噴射孔354と傾斜噴射孔355とを備える。図6に示すように、水平噴射孔354は、基板の面と略平行に開口する。また、傾斜噴射孔355は、複数の水平噴射孔354のうち最上段の水平噴射孔354よりも高い位置に設けられる。傾斜噴射孔355は、図6中で斜め上方に向かって開口する。なお、本開示では、傾斜噴射孔355の個数は、1つに限定されず、複数であってもよい。
【0095】
(第4噴射部)
第四ガスノズル343bは、上ダミー領域TSDに対向する噴射孔と下ダミー領域BSDに対向する噴射孔との両方を有する。第四ガスノズル343bには、プロダクト領域Pに対向する噴射孔は形成されない。すなわち第四ガスノズル343bは、上ダミー領域TSDと下ダミー領域BSDとにのみ不活性ガスを噴射する。本開示では、第四ガスノズル343bの噴射孔の個数は、上ダミー領域TSDと下ダミー領域BSDとのそれぞれにおいて任意に設定できる。
【0096】
第四ガスノズル343bは、平面視で、第四ガスノズル343bの中心とウエハ200の中心C1とを結ぶ第2仮想線L2と仮想鉛直面Aとの間の角度(供給バッファ222側を起点とする)が鈍角である位置にカウンターノズルとして設けられる。すなわち、第四ガスノズル343bは、第1原料ガスの流れの下流側で、仮想鉛直面Aの外側に配置される。本開示では、第四ガスノズル343bの配置位置は、任意である。カウンターノズルの第四ガスノズル343bは、カウンターバッファ222eの内側に収容される。カウンターバッファ222eは、供給バッファ222と同様に、内管12の筒部の側壁に設けられ側壁から外側に突出する領域である。
【0097】
図2に示すように、第四ガスノズル343bは、ウエハ200の中心C1より外側の領域であってウエハ200の第四ガスノズル343bが配置された側の周縁との間の上流側の領域に向かって不活性ガスを噴射する。具体的には、図2中では第四ガスノズル343bの噴射方向として、ウエハ200の中心C1に向かう方向が点線で例示されている。しかし、図2中に一点鎖線で例示された第四ガスノズル343bの噴射方向のように、噴射方向が下流側では仮想鉛直面Aと交差することなく、ウエハ200の中心C1よりも上流側に向かうように、第四ガスノズル343bの噴射方向を構成することもできる。本開示では、第四ガスノズル343bの噴射方向は、任意である。
【0098】
第四ガスノズル343bは、一対の第三ガスノズル343a1,343a2のうち図2中の上側の一方の第三ガスノズル343a1,343a2に隣接して設けられる。なお、本明細書において「ノズル同士が隣接する」とは、隣接するノズル同士の間に排気孔が設けられる場合も含む。
【0099】
また、図2に示すように、処理室201は、第三ガスノズル343a1,343a2と第四ガスノズル343bとの間に副排気スリット238を有する。なお、本開示では、第三ガスノズル343a1,343a2と第四ガスノズル343bとの間の副排気スリット238は必須ではない。また、本実施形態では、第四ガスノズル343bは、第三ガスノズル343a1,343a2よりも主排気スリット236に近い位置に配置される。なお、本開示では、第四ガスノズル343bは、第三ガスノズル343a1,343a2よりも主排気スリット236から遠くてもよい。
【0100】
図5に示すように、第四ガスノズル343bは、上ダミー領域TSDに収容される複数の基板のうち最上段を除く少なくとも1つの基板に対応して開口する上噴射孔356を有する。また、第四ガスノズル343bは、下ダミー領域BSDに収容される複数の基板のうち最下段を除く少なくとも2つの基板に対応して開口する下噴射孔357を有する。
【0101】
なお、本開示では、上噴射孔356の配置位置は、最上段であってもよい。また、本開示では、下噴射孔357の配置位置は、最下段であってもよい。また、本開示では、下噴射孔357は、1つの基板にのみ対応して開口してもよい。
【0102】
(第四ガスノズル343bの噴射孔の直径)
本実施形態では、第四ガスノズル343bの噴射孔の孔径は、0.8mm以上、3.0mm以下であることが好ましい。孔径が、0.8mm以上、3.0mm以下であることによって、ボトム側の面内均一性を約0.1%、トップ側の面内均一性を約0.2%に実現できる。
【0103】
第四ガスノズル343bの噴射孔の孔径が、0.8mm未満である場合、ノズル内圧が高まることによって、ノズルの基部からガスが漏れ易くなる懸念が生じる。また、孔径が、3.0mmを超える場合、ノズル内を上昇してきた惰性によって、噴射孔を出たガスが、水平方向でなく上向きに放出される懸念が生じる。また、ノズルの頂部側と底部側との圧力差、すなわち噴出量の差が大きくなり易い。
【0104】
(面内均一性)
ここで、本実施形態における面内均一性の測定方法を説明する。まず、測定対象であるウエハ上に15個の測定点が設定される。15個の測定点は、ウエハの中心と、ウエハの中心から放射方向又は中心からの距離とが互いに異なる14個の測定点とを含む。
【0105】
そして、15個の測定点のそれぞれの膜厚が、分光エリプソメトリー法等の公知の方法で測定される。また、15個の測定値によって、膜厚の平均値が算出される。そして、15個の測定値の最大値、最小値及び平均値を用いた以下の式によって、測定対象のウエハの面内均一性[%]を算出できる。

面内均一性[%]=(最大値-最小値)/平均値×100

この定義による面内均一性は、非負の数であり0に近いほど均一性が良いことを示す。
【0106】
(第四ガスノズル343bの噴射孔の直径)
次に、第四ガスノズル343bの噴射孔の直径について説明する。ここで、第四ガスノズル343bの内圧がプロセス性能に対して与える影響が大きい場合、例えば、第四ガスノズル343bの基部からガスが漏れることによって、処理室201の内側におけるボトム側のガス濃度が変動し易い。第四ガスノズル343bの内圧がプロセス性能に対して与える影響を抑制するため、本実施形態では、第四ガスノズル343bの孔径を調整可能である。
【0107】
具体的には、第四ガスノズル343bの噴射孔の孔径を、0.8mm以上、3.0mm以下に設定できる。孔径が、0.8mm以上、3.0mm以下であることによって、ボトム側のプロダクトウエハの面内均一性を約0.1%、トップ側のプロダクトウエハの面内均一性を約0.2%に実現できる。
【0108】
孔径が、0.8mm未満である場合、ノズル内圧が高まることによって、ノズルの基部からガスが漏れ易くなる懸念が生じる。一方、孔径が、3.0mmを超える場合、ノズル内を上昇してきた惰性によって、噴射孔を出たガスが、水平方向でなく上向きに放出される懸念が生じる。また、ノズルのトップ側とボトム側との圧力差、すなわち噴出量の差が大きくなり易い。
【0109】
(制御部)
次に、制御部280について図7を参照しつつ説明する。図7は、基板処理装置10を示すブロック図であり、基板処理装置10の制御部280(すなわち、コントローラ)は、コンピュータとして構成されている。このコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、及びI/Oポート121dを備えている。
【0110】
RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。制御部280には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0111】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。
【0112】
プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順を制御部280に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、基板処理プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。
【0113】
本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(すなわち、ワークエリア)として構成されている。
【0114】
I/Oポート121dは、上述のMFC320a~320i、バルブ330a~330i、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ、回転機構267、エレベータ115等に接続されている。
【0115】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。
【0116】
CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC320a~320iによる各種ガスの流量調整動作、バルブ330a~330iの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作を制御するように構成されている。また、CPU121aは、圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、温度センサに基づくヒータ207の温度調整動作を制御するように構成されている。更に、CPU121aは、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、エレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0117】
制御部280は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置123を用意し、この外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態の制御部280を構成することができる。外部記憶装置としては、例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等が挙げられる。
【0118】
<基板処理方法>
次に、本実施形態に係る基板処理装置10を用いた基板処理方法を、図8を参照しつつ説明する。本実施形態では、半導体デバイスの製造工程の一例として、原料ガスと反応ガスとを交互に処理室201に供給することで膜処理を行うサイクル処理を説明する。
【0119】
サイクル処理では、ソースの一例としてシリコン(Si)原料ガスが用いられると共に、リアクタントとして窒素(N)含有ガスが用いられることによって、基板上でSi窒化膜(Si膜、以下、SiN膜ともいう)が形成される。
【0120】
SiN膜は、図8中のステップS3における成膜工程1と、ステップS4における成膜工程2と、ステップS5における成膜工程3と、ステップS6における成膜工程4とを非同時に行うサイクルを、1回以上の所定回数行うことによって形成される。
【0121】
成膜工程1は、内管12のウエハ200に対して原料ガスを供給する工程である。成膜工程2は、残留した原料ガスを内管12から除去する排気工程である。成膜工程3は、内管12のウエハ200に対してN含有ガスの反応ガスを供給する工程である。成膜工程4は、残留した反応ガスを内管12から除去する排気工程である。
【0122】
まず、図8中のステップS1において、ウエハ200をボート217に装填する。ボート217を内管12に搬入することによって、内管12の筒部の内側に基板を収容する。次に、図8中のステップS2において、ボート217を内管12に搬入後、内管12内の圧力及び温度を調整する。次に、成膜工程1~4の4つのステップを順次実行する。以下、それぞれのステップを詳細に説明する。
【0123】
(成膜工程1)
成膜工程1では、図8中のステップS3において、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bを用いて、ウエハ200に向かって第1原料ガスを噴射しつつ、主排気スリット236と2つの副排気スリット238とを用いて、噴射された原料ガスを筒部の外部に排気する。
【0124】
ガス供給管310aから供給される第1原料ガスとしては、例えばSiソースガスが挙げられる。また、第1原料ガスとしては、例えば、Si及びハロゲン含有ガスを用いることができる。Si及びハロゲン含有ガスとしては、例えば、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等の無機クロロシラン系ガスを用いることができる。Si及びハロゲン含有ガスとしては、これらのうちの1つ以上を用いることができる。第1原料ガスは、本開示の第1原料に対応する。なお、本開示では、第1原料はガスに限定されず、例えばミスト状物質等の液体状物質であってもよい。
【0125】
また、上流側からは、第二ガスノズル342c2、第五ガスノズル342a2、第七ガスノズル342a1を用いて、例えばN等のアシストガスをウエハ200に向かって噴射する。すなわち、本実施形態では、第七ガスノズル342a1は、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bから第1原料ガスが供給されるときに、アシストガスを供給する。また、下流側からは、第三ガスノズル343a1,343a2、第四ガスノズル343bを用いて、例えばN等の不活性ガスをウエハ200に向かって噴射する。
【0126】
(成膜工程2)
成膜工程2では、第1原料ガスとキャリアガスの供給を止める。真空ポンプ246等の排気ポンプとAPCバルブ244等とを制御することによって、反応管203の内部の圧力が所定の圧力(すなわち、真空度)となるよう真空排気する。図9に示すように、第二ガスノズル342c2、第五ガスノズル342a2からのアシストガス、及び、第三ガスノズル343a1,343a2、第四ガスノズル343bからの不活性ガスの供給は継続される。
【0127】
また、第七ガスノズル342a1からのNガスの流量を増加させることによって、パージ効果を高める。なお、成膜工程2では、不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったNガスをパージガスとして内管12内に供給すると、残留する原料ガスを排気する効果が更に高まる。成膜工程2の終了時、第七ガスノズル342a1からのNガスの流量は、元の流量まで減少される。
【0128】
(成膜工程3)
成膜工程3では、第2原料ガスとしての反応ガスを内管12内に供給する。反応体である反応ガスとしては、例えば、Si非含有ガス、酸化ガス、水素(H)等の還元剤である還元ガスを採用できる。或いは、例えば、N含有ガスを反応ガスとして採用できる。
【0129】
本実施形態では、例えば、ガス供給管310cから供給される第2原料ガスとしては、アンモニア(NH)ガスが挙げられる。NHガスとキャリアガスとを内管12内に供給しつつ、複数の排気スリットから排気する。NHガスの供給により、ウエハ200の下地膜上のSiを含む膜とNHガスとが反応する。反応によって、ウエハ200上にSiN膜が形成される。第2原料ガスは、本開示の第2原料に対応する。なお、本開示では、第2原料はガスに限定されず、例えばミスト状物質等の液体状物質であってもよい。
【0130】
成膜工程3では、第二ガスノズル342c2、第七ガスノズル342a1、第五ガスノズル342a2からのアシストガス、及び、第三ガスノズル343a1,343a2、第四ガスノズル343bからの不活性ガスの供給は継続される。すなわち、本実施形態では、第七ガスノズル342a1は、第六ガスノズル342c1から第2原料ガスが供給されているときに、アシストガスを供給する。
【0131】
(成膜工程4)
成膜工程4では、膜を形成後、真空ポンプ246等の排気ポンプとAPCバルブ244等とを制御することによって、反応管203の内部の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気する。第二ガスノズル342c2、第五ガスノズル342a2からのアシストガス、及び、第三ガスノズル343a1,343a2、第四ガスノズル343bからの不活性ガスの供給は継続される。
【0132】
また、第七ガスノズル342a1からのNガスの流量を増加させることによって、パージ効果を高める。なお、成膜工程4では、不活性ガス、例えばキャリアガスとして使ったNガスをパージガスとして内管12内に供給すると、残留するN含有ガスの反応ガスを内管12から排気する効果が更に高まる。成膜工程4の終了時、第七ガスノズル342a1からのNガスの流量は、元の流量まで減少される。
【0133】
本実施形態では、成膜工程1~4において、第七ガスノズル342a1は、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bから第1原料ガスが供給されるとき、又は、第六ガスノズル342c1から第2原料ガスが供給されているときにアシストガスを供給する。なお、本開示では、第七ガスノズル342a1は、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bから第1原料ガスが供給されるとき以外に、或いは、第六ガスノズル342c1から第2原料ガスが供給されているとき以外に、アシストガスを供給してもよい。
【0134】
そして、上述した成膜工程1~4を1サイクルとし、図8中のステップS7において、成膜工程1~4のサイクルを所定回数実施することにより、ウエハ200上に所定の膜厚のSiN膜を形成することができる。本実施形態では、成膜工程1~4は、複数回繰り返される。本開示では、成膜工程1~4は、繰り返されることなく、1回ずつ行われてもよい。
【0135】
上述の成膜処理が完了した後、図8中のステップS8において、内管12内の圧力を常圧(すなわち、大気圧)に復帰させる。具体的には、例えば、Nガス等の不活性ガスを内管12内へ供給して排気する。これにより、内管12内が不活性ガスでパージされ、内管12内に残留するガス等が内管12内から除去される。その後、内管12内の雰囲気が不活性ガスに置換され、内管12内の圧力が常圧に復帰される。
【0136】
そして、図8中のステップS9において、内管12からウエハ200を搬出すれば、本実施形態に係る基板処理が終了する。上記の一連の工程によって、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を構成できる。
【0137】
(解析例)
次に、本実施形態に係る基板処理装置10を用いて行われた基板処理方法によって得られたプロダクトウエハの面内均一性を測定した結果を解析例として、比較例の結果と共に説明する。比較例に係る基板処理装置は、本実施形態に係る基板処理装置10と比べ、第四ガスノズル343bが設けられていない点が異なる。比較例に係る基板処理装置の第四ガスノズル343b以外の構成は、本実施形態の基板処理装置と同様である。
【0138】
図10(A)及び図10(B)中では、測定によって得られた15点の膜厚のうちの最大値が上側の白丸のデータ点によって表されている。また、最小値が、図10(A)及び図10(B)中の下側の比較的小さい黒丸のデータ点によって表されている。すなわち、図10(A)及び図10(B)中では、横軸のそれぞれの位置に対応するプロダクトウエハの膜厚の最大値と最小値との膜厚差が、上側の白丸のデータ点と下側の比較的小さい黒丸のデータ点との間の長さによって例示されている。また、15点の膜厚の平均値が、図10(A)及び図10(B)中の最大値と最小値との間の比較的大きい黒丸のデータ点によって表されている。
【0139】
図10(A)に示すように、比較例の場合、上ダミー領域TSDの最上段のプロダクトウエハ、並びに、下ダミー領域BSDにおける最下段のプロダクトウエハ及び下から二番目のプロダクトウエハのそれぞれの膜厚差が比較的大きい。一方、図10(B)に示すように、本実施形態では、上ダミー領域TSDの最上段のプロダクトウエハ、並びに、下ダミー領域BSDにおける最下段のプロダクトウエハ及び下から二番目のプロダクトウエハのそれぞれの膜厚差は、比較例と比べ、減少した。
【0140】
下ダミー領域BSDにおける最下段のプロダクトウエハの面内均一性について、比較例では1.0%であったが、本実施形態では、0.2%と、比較例より0.8ポイント低下させることができた。また、上ダミー領域TSDの最上段のプロダクトウエハの面内均一性について、比較例では0.5%であったが、本実施形態では、0.1%と、比較例より0.4ポイント低下させることができた。すなわち、本実施形態では、プロダクト領域Pに収容される複数のウエハ200のうちサイドダミー領域の側の端部に位置する複数のウエハ200の面内均一性は、0.2%以下であった。
【0141】
また、解析例では、本実施形態のプロダクトウエハ全体の面間均一性は、比較例の場合と同等であった。すなわち、本実施形態によれば、プロダクトウエハ全体における面間均一性を確保しつつ、端部のプロダクトウエハの面内均一性を調整できることが分かった。
【0142】
(作用効果)
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0143】
本実施形態に係る基板処理装置10では、サイドダミー領域にのみ不活性ガスを供給する第四ガスノズル343bによって、端部のプロダクトウエハに向かって不活性ガスが直接供給されるので、端部のプロダクトウエハが増膜しても、膜厚を効率的に減らすことができる。このため、プロダクト領域Pに配列された複数のプロダクトウエハの中で局所的に、端部のプロダクトウエハの面内均一性を向上できる。
【0144】
特に、本実施形態では、基板上のガス流の下流側に設けられた第四ガスノズル343bが、上流側に設けられた第二ガスノズル342c2と第五ガスノズル34a2と組み合せられることによって、トップ側のプロダクトウエハの面内均一性とボトム側のプロダクトウエハの面内均一性と、プロダクトウエハ全体の面間均一性とを、それぞれ独立に制御できる。
【0145】
また、本実施形態では、第四ガスノズル343bが下流側に配置されることによって、ウエハ全体への影響を小さくすることができる。すなわち、第四ガスノズル343bからは端部のプロダクトウエハのみに対して不活性ガスが噴射されるので、プロダクトウエハ全体における面間均一性を調整するために他のノズルから噴射されるガスへの影響を低下させることができる。なお、本実施形態に係る基板処理装置10を用いた半導体装置の製造方法及び基板処理プログラムにおけるそれぞれの効果も、基板処理装置10の場合と同様である。
【0146】
また、本実施形態では、第二ガスノズル342c2と第三ガスノズル343a1,343a2との両方が設けられると共に、第四ガスノズル343bは、基板の中心より第1原料ガスの流れの下流側に配置される。上流側に配置された第二ガスノズル342c2と下流側に配置された第三ガスノズル343a1,343a2との両方によって、プロダクトウエハ全体の面内均一性が制御される。このため、第四ガスノズル343bによる端部のプロダクトウエハにおける面内均一性制御の確実性を向上できる。
【0147】
また、本実施形態では、基板処理装置は、基板の中心より第1原料ガスの流れの上流側に配置され、下ダミー領域BSDの基板に対してのみアシストガスを供給する噴射孔を有する第五ガスノズル34a2と、を更に備える。また、第二ガスノズル342c2は、上ダミー領域TSDの基板に対してのみアシストガスを供給する噴射孔を有する。このため、トップ側のプロダクトの面内均一性とウエハボトム側のプロダクトウエハの面内均一性とを、独立して制御できる。
【0148】
また、本実施形態では、基板処理装置は、第2原料ガスを供給する第六ガスノズル342c1と、上流側からアシストガスを供給する第七ガスノズル342a1とを更に有する。第七ガスノズル342a1によって、第1原料ガスと第2原料ガスとを希釈できるので、それぞれの原料ガスの供給効率を向上できる。また、第七ガスノズル342a1によって、成膜処理時のガス置換性を向上できると共に、供給バッファ222を出たガスが、処理室201内の渦や乱流等に起因して再び供給バッファ222に戻ること、すなわち戻り流を抑制することができる。
【0149】
また、本実施形態では、一対の第三ガスノズル343a1,343a2が、主排気孔と基板の中心とを結ぶ直線を挟んで直線の両側にそれぞれ設けられる。このため、不活性ガスを効率的に処理室201内に供給できるので、処理室内における渦の発生を抑制できると共に、全体的に窒素ガスの使用量を削減できる。
【0150】
また、本実施形態では、第七ガスノズル342a1は、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bから第1原料ガスが供給されるとき、又は、第六ガスノズル342c1から第2原料ガスが供給されているときにアシストガスを供給する。このため、原料ガスの供給効率の向上、ガス置換性の向上、及び戻り流の抑制のそれぞれを一層図ることができる。
【0151】
また、本実施形態では、第六ガスノズル342c1と第七ガスノズル342a1とは、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bを挟むように配置される。また、第七ガスノズル342a1は、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bから第14族元素の原料ガスである第1原料ガスが供給されているときにアシストガスを供給する。このため、原料ガスの供給効率の向上、ガス置換性の向上、及び戻り流の抑制のそれぞれを一層図ることができる。
【0152】
また、本実施形態では、第四ガスノズル343bは、第1原料ガスの流れの下流側で、仮想鉛直面Aの外側に配置される。また、第四ガスノズル343bは、ウエハ200の中心C1より外側の領域であって、ウエハ200における第四ガスノズル343bが配置された側の周縁とウエハ200の中心C1との間に位置する上流側の領域に向かって不活性ガスを噴射する。このため、第四ガスノズル343bによるウエハの減膜効果の最大化を図ることができる。
【0153】
また、本実施形態では、処理室201の内側で第一ガスノズル340a,340b,341a,341bの下ダミー領域BSDよりも下側の側面に、側面から突出し、上下方向のガスの流れを妨げる仕切板が設けられる。このため、排気される原料ガスの流量がより均等化されるので、複数のウエハ200の表面の間における膜の面間均一性が改善される。
【0154】
また、本実施形態では、第四ガスノズル343bは、一対の第三ガスノズル343a1,343a2の一方に隣接して設けられる。また、処理室201は、第三ガスノズル343a1,343a2と第四ガスノズル343bの間に副排気スリット238を有する。このため、排気される原料ガスの流量がより均等化されるので、複数のウエハ200の表面の間における膜の面間均一性が改善される。
【0155】
また、本実施形態では、1つの主排気スリット236の筒部の周方向に沿った開口幅は、筒部の軸の方向に沿って、主排気口230と反対側から主排気口230に向かうに従って(すなわち、上側から下側に向かうに従って)狭くなる。また、2つの副排気スリット238のそれぞれの筒部の周方向に沿った開口幅は、筒部の軸の方向に沿って、一対の副排気口のそれぞれと反対側から一対の副排気口に向かうに従って狭くなる。このため、軸の方向に沿って多段に積載されたウエハ200の間において、排気される原料ガスの流量がより均等化されるので、複数のウエハ200の表面の間における膜の面間均一性が改善される。
【0156】
また、本実施形態では、主排気部を形成する処理室201の側壁の一部に、前記側壁から外側に向かって突出し、突出長さが上下方向に沿って排気ポートと反対側から排気ポートに向かうに従って短くなる、排気流量調整部としてのフィン等の部材を備えてもよい。排気流量調整部によって、主排気口と副排気口とに近い底部側から排気される原料ガスの流量が、頂部側から排気される原料ガスの流量との間で、違いが小さくなるように抑制される。このため、上下方向に沿って多段に積載されたウエハ200の間において、排気される原料ガスの流量が均等化される。結果、複数のウエハ200の表面の間における膜の面間均一性が改善される。また、スリットの開口幅が軸の方向に沿って排気口と反対側から排気口に向かうに従って狭くなるように、筒部の側壁を加工する手間が不要である。
【0157】
また、本実施形態では、上流側に配置された第二ガスノズル342c2と下流側に配置された第三ガスノズル343a1,343a2との両方によって、プロダクトウエハ全体の面内均一性が制御される。また、第四ガスノズル343bは、第三ガスノズル343a1,343a2よりも主排気孔に近い位置に配置される。このため、第四ガスノズル343bによる端部のプロダクトウエハにおける面内均一性制御の確実性をより向上できる。
【0158】
また、本実施形態では、第四ガスノズル343bは、上ダミー領域TSDに収容される複数の基板のうち最上段を除く少なくとも1つの基板に対応して開口する上噴射孔を有する。また、第四ガスノズル343bは、下ダミー領域BSDに収容される複数の基板のうち最下段を除く少なくとも2つの基板に対応して開口する下噴射孔を有する。このため、上ダミー領域TSDと下ダミー領域BSDとにおける原料ガスの過剰な希釈が抑制される。また、サイドダミー領域とプロダクト領域Pとを跨ぐ活性種の拡散を軽減できる。このため、面間均一性を更に向上できると共に、安定化させることができる。
【0159】
また、本実施形態では、第三ガスノズル343a1,343a2は、基板の面と略平行に開口する複数の水平噴射孔と、複数の水平噴射孔のうち最上段の水平噴射孔よりも高い位置に設けられ、斜め上方に向かって開口する傾斜噴射孔とを備える。このため、上ダミー領域TSDとプロダクト領域Pとを跨ぐ活性種の拡散を一層軽減できる。
【0160】
また、本実施形態では、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bは、基板の面と略平行な方向に沿って配列された3つ以上の噴射孔を有する。このため、不活性ガスを効率的に処理室201内に供給できるので、処理室201内における渦の発生を抑制できる。
【0161】
また、本実施形態では、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bは、複数の直線状の円管が処理室201の円周方向に沿って配列されたノズルアレイである。このため、処理ガスを効率的に広い角度で面状に供給できるので、処理室201内における渦の発生を抑制できる。
【0162】
また、本実施形態では、トップ側のプロダクトウエハ及びボトム側のプロダクトウエハのうち少なくとも1つのプロダクトウエハにおける面内均一性は、0.2%以下である。これにより全てのプロダクトウエアが要求された面内均一性を満たすので高い歩留まりが達成されうる。
【0163】
<本開示の他の態様>
本開示は上記の開示した実施形態の態様によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本開示を限定するものであると理解すべきではない。本開示は上記の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0164】
(第1変形例)
例えば、本実施形態では、第四ガスノズル343bの配置位置は、下流側である場合が例示されたが、図11に示すように、本開示では、第四ガスノズル343bの配置位置は、下流側に限定されず、上流側であってもよい。第1変形例に係る基板処理装置の他の構成は、本実施形態の場合と同様であるため、重複説明を省略する。
【0165】
第1変形例のように、上流側に配置された第四ガスノズル343bであっても、本実施形態の場合と同様に、プロダクト領域Pに配列された複数のプロダクトウエハの中で局所的に、端部のプロダクトウエハの面内均一性を向上できる。また、変形例に係る基板処理装置の他の作用効果は、本実施形態の場合と同様である。
【0166】
(第2変形例)
また、本開示では、基板処理装置は、例えば酸化プロセス等、他のプロセスにも適用できる。例えば変形例において酸化プロセスが行われる場合、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bと第六ガスノズル342c1とは、第七ガスノズル342a1を両側から挟むように配置されてよい。そして、それぞれのノズルから噴射されるガスの種類を、本実施形態の場合とは異ならせてもよい。
【0167】
具体的には例えば、図11中のノズル342a1は、本実施形態の場合では第七ガスノズル342a1であったが、第2変形例では、第一ガスノズル340a,340b,341a,341bとして機能する。また、図11中のノズル340a,340b,341a,341bは、図2中の本実施形態の場合では第一ガスノズル340a,340b,341a,341bであったが、第2変形例では、第七ガスノズル342a1として機能する。
【0168】
第一ガスノズル340a,340b,341a,341bとしてのノズル342a1は、酸化ガス及び還元ガスのうち一方のガスを供給する。第六ガスノズル342c1としてのノズル342c1は、酸化ガス及び還元ガスのうち他方のガスを供給する。
【0169】
酸化剤である酸化ガスとしては、例えば、酸素(O)及び水素(H)含有ガスを用いることができる。O及びH含有ガスとしては、例えば、水蒸気(HOガス)、過酸化水素(H)ガス、水素(H)ガス+酸素(O)ガス、Hガス+オゾン(O)ガス等を用いることができる。また、酸化剤としては、O及びH含有ガスの他、例えば、酸素(O)含有ガスを用いることができる。O含有ガスとしては、例えば、Oガス、Oガス、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス等を用いることができる。なお、O及びH含有ガスも、O含有ガスの一種である。酸化剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0170】
なお、本明細書において「Hガス+Oガス」のような2つのガスの併記記載は、HガスとOガスとの混合ガスを意味する。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(すなわち、プリミックス)させた後に、処理室201内へ供給するようにしてもよく、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
【0171】
例えば、第2変形例での第一ガスノズル340a,340b,341a,341bとしてのノズル342a1は、酸化ガスとしてOガスを供給する。また、第六ガスノズル342c1としてのノズル342c1は、還元ガスとしてHガスを供給する。また、第2変形例での第七ガスノズル342a1としてのノズル340a,340b,341a,341bは、アシストガスとしてNガスを供給する。第2変形例では、酸化プロセス中、全てのガスは同時に、連続的にウエハに供給される。
【0172】
このため、第2変形例では、処理室201の内側で酸素活性種又は水酸基ラジカルを生じさせることが可能に構成される。また、変形例では、第七ガスノズル342a1は、酸化プロセスにおいて、第一ガスノズル340a,340b,341a,341b及び第六ガスノズル342c1のうち少なくとも一方がガスを供給するときに、不活性ガスを供給可能に構成できる。第2変形例に係る基板処理装置の他の構成は、本実施形態の場合と同様であるため、重複説明を省略する。
【0173】
その他、上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚又は数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0174】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0175】
また、例えば、本開示では、上記の実施形態で、CPU121aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した基板処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。
【0176】
また、基板処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0177】
また、上記各実施形態では、基板処理プログラムがROM又はストレージ等の記憶装置121cに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本開示では、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0178】
また、上記の開示した複数の実施形態、変形例及び態様に含まれる構成を部分的に組み合わせて本開示を構成してもよい。組み合わせによって構成された本開示において、実行される処理手順及び処理条件等は、例えば、本実施形態に係る態様において説明された処理手順及び処理条件と同様に構成できる。本開示は、上記に記載していない様々な実施形態等を含むと共に、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0179】
10 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201 処理室
236 主排気スリット(主排気部)
340a 第一ガスノズル(第1噴射部)
340b 第一ガスノズル(第1噴射部)
341a 第一ガスノズル(第1噴射部)
341b 第一ガスノズル(第1噴射部)
342c2 第二ガスノズル(第2噴射部)
343a1 第三ガスノズル(第3噴射部)
343a2 第三ガスノズル(第3噴射部)
343b 第四ガスノズル(第4噴射部)
P プロダクト領域
TSD 上ダミー領域
BSD 下ダミー領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11