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特開2024-6606液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006606
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240110BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107665
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】坂東 佳憲
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB07
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB34
2C056EB48
2C056EC07
2C056EC29
2C056EC37
2C056FA10
2C056HA05
2C056KB16
2C057AF23
2C057AG29
2C057AG30
2C057AG68
2C057AG75
2C057AK01
2C057AL11
2C057AL15
2C057AL25
2C057AL40
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】吐出量の違いによる吐出滴の温度差を低減でき、吐出量が変化した直後の吐出滴の温度変化を低減できるとともに、吐出量が変化したタイミングと、吐出量が変化したことを検知するタイミングとの時間差を低減できる液体吐出ヘッド。
【解決手段】液体流入口からノズルの方向へ液体が流れる流路と、前記流路中の所定の加熱点で液体を加熱する加熱部材230と、前記流路における2点間の圧力の差を測定する圧力測定部材と、前記加熱部材よりも前記流路の下流側に設けられ、前記流路中の液体の温度を測定する温度測定部材240と、を有する。圧力測定部材により測定された2点間の圧力の差は、流量の算出に用いられる。加熱部材は、温度測定部材により測定される温度が所定の値になるように制御される。所定の値は、算出された前記流量に基づいて変更される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流入口からノズルの方向へ液体が流れる流路と、
前記流路中の所定の加熱点で液体を加熱する加熱部材と、
前記流路における2点間の圧力の差を測定する圧力測定部材と、
前記加熱部材よりも前記流路の下流側に設けられ、前記流路中の液体の温度を測定する温度測定部材と、を有し、
前記圧力測定部材により測定された前記2点間の圧力の差は、流量の算出に用いられ、
前記加熱部材は、前記温度測定部材により測定される温度が所定の値になるように制御され、
前記所定の値は、算出された前記流量に基づいて変更されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記圧力の差を測定する2点が、前記流路の直線部分の側面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記圧力測定部材は、差圧計であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記圧力測定部材は、前記加熱部材よりも前記流路の上流側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記加熱部材は、
算出した前記流量が大きくなる変化が生じた場合、前記温度測定部材により測定される温度が大きくなるように制御され、
算出した前記流量が小さくなる変化が生じた場合、前記温度測定手段により測定される温度が小さくなるように制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記流路は、前記2点間に液体抵抗部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記液体抵抗部は、複数の穴からなり、穴の大きさは前記ノズルの径よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を用いた画像形成装置では、ノズルから吐出される液体(例えばインク)を所望の状態なるようにヒータ等の熱源を用いてインクを加温することが知られている。このような装置では、インクを所望の温度まで加温するために、インクの流量を求めて加熱量を制御する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、ノズルから吐出される液体の粘度を制御する液体粘度の制御装置が開示されている。特許文献1では、流量測定装置で測定された測定流量が理想流量に近づくようにヒータの出力を制御して液体の粘度を制御する液体粘度の制御装置が開示されており、特許文献1によれば、理想流量を得るための粘度制御を実際の流量に基づいて直接的に行うことができ、粘度制御の応答性を高めることができるとしている。
また特許文献1では、ヒータが液体を加熱する加熱点よりも流路の下流に温度センサを設けており、温度センサの出力を用いて流路を流れる液体の流量を測定し、測定流量がノズルから液体を吐出するための理想流量に近づくようにヒータの出力を制御することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、流量を求める際、ヒータよりも下流に設けた温度センサの情報を用いているため、ヒータの加熱量の変化が下流まで伝わる必要があり、ヒータの制御を行う時点と、その制御が反映された結果を検知する時点とで時間差が生じていた。このため、ヒータの制御を行ってから、その制御が反映された結果を検知するまでに待つ必要があった。このような場合、狙いとしない不適切な温度の液体が流れている期間が生じ、不適切な温度の液体がノズルまで流れ、吐出のばらつき等による画像の乱れが生じてしまう。
【0005】
また従来技術では、温度センサの温度情報だけでヒータの加熱量を制御しており、この場合、検知した温度が同じでも吐出量が異なると、流体を流れる液体の平均温度が異なり、液体を狙いの温度にすることができていなかった。例えば吐出量が多い場合、液体が速く流れるため、液体に加熱ムラが生じてしまうが、温度センサは温度分布の情報を取得できないため、吐出量の違いを考慮した制御ができていなかった。これにより、吐出量の違いにより吐出滴の温度差が生じていた。
【0006】
そこで本発明は、吐出量の違いによる吐出滴の温度差を低減でき、吐出量が変化した直後の吐出滴の温度変化を低減できるとともに、吐出量が変化したタイミングと、吐出量が変化したことを検知するタイミングとの時間差を低減できる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、液体流入口からノズルの方向へ液体が流れる流路と、前記流路中の所定の加熱点で液体を加熱する加熱部材と、前記流路における2点間の圧力の差を測定する圧力測定部材と、前記加熱部材よりも前記流路の下流側に設けられ、前記流路中の液体の温度を測定する温度測定部材と、を有し、前記圧力測定部材により測定された前記2点間の圧力の差は、流量の算出に用いられ、前記加熱部材は、前記温度測定部材により測定される温度が所定の値になるように制御され、前記所定の値は、算出された前記流量に基づいて変更されることを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出量の違いによる吐出滴の温度差を低減でき、吐出量が変化した直後の吐出滴の温度変化を低減できるとともに、吐出量が変化したタイミングと、吐出量が変化したことを検知するタイミングとの時間差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す外観斜視概略図である。
図2】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す分解斜視概略図である。
図3】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す外観正面概略図である。
図4】流路の一例を説明する概略図である。
図5】流路の一例を説明する他の概略図である。
図6図5のAA’断面概略図である。
図7】加熱領域の一例を説明する概略図である。
図8】インクの温度分布の一例を説明する概略図である。
図9】圧力差を測定する方法の一例(実施例1)を説明する概略図(A)及び圧力測定領域の一例を説明する図(B)である。
図10A】Q=0におけるP1、P2の測定例を説明する図である。
図10B】Q=Q1におけるP1、P2の測定例を説明する図である。
図10C】Q=Q2におけるP1、P2の測定例を説明する図である。
図11】比較例1における吐出滴温度を示す図である。
図12】実施例1における吐出滴温度を示す図である。
図13】圧力差を測定する方法の他の例(実施例2)を説明する概略図である。
図14】圧力差を測定する方法の他の例(実施例3)を説明する概略図(A)及び圧力測定領域の他の例を説明する図(B)である。
図15】圧力差を測定する方法の他の例(実施例4)を説明する概略図(A)及び圧力測定領域の他の例を説明する図(B)である。
図16】圧力差を測定する方法の他の例(実施例5)を説明する概略図である。
図17】圧力差を測定する方法の他の例(実施例6)を説明する概略図である。
図18】圧力差を測定する方法の他の例(実施例7)を説明する概略図である。
図19】圧力差を測定する方法の他の例(実施例8)を説明する概略図である。
図20】液体を吐出する装置の一例における概略図である。
図21】液体を吐出する装置の他の例における概略図である。
図22】液体吐出ユニットの一例における概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明の液体吐出ヘッドは、液体流入口からノズルの方向へ液体が流れる流路と、前記流路中の所定の加熱点で液体を加熱する加熱部材と、前記流路における2点間の圧力の差を測定する圧力測定部材と、前記加熱部材よりも前記流路の下流側に設けられ、前記流路中の液体の温度を測定する温度測定部材と、を有し、前記圧力測定部材により測定された前記2点間の圧力の差は、流量の算出に用いられ、前記加熱部材は、前記温度測定部材により測定される温度が所定の値になるように制御され、前記所定の値は、算出された前記流量に基づいて変更されることを特徴とすることを特徴とする。
【0012】
図1は、本実施形態の液体吐出ヘッドの外観斜視概略図であり、図2は、本実施形態の液体吐出ヘッドの分解斜視概略図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッド1は、例えば、ノズルカバー110、ベース部材120、アクチュエータユニット130a、130b、マニホールド部材140を有している。また、図示を省略しているが、液体吐出ヘッド1は、エレキ部材とカバー部材等を有している。
【0014】
マニホールド部材140は、例えば、マニホールド部材140a、140b、140cで構成される。マニホールド部材140aは、液体流入口202a、202bを有している。マニホールド部材140bは、ダンパ部材210、伝熱部材220、ヒータ230、温度測定部材240を有している。
【0015】
本実施形態では、液体流入口202a、202bから液体(例えばインク)が流入し、液体はマニホールド140内に形成された流路を流れる。次いで、液体はアクチュエータユニット130a、130bに流れ、更にベース部材120に流れる。ベース部材120にはノズルが形成されており、ベース部材120に流れた液体は、アクチュエータユニット130a、130bによって吐出力が印加されてノズルから液滴として吐出される。
【0016】
ヒータ230は、加熱部材の一例であり、流路中の所定の加熱点で液体を加熱する。所定の加熱点とあるのは、ヒータ230の中心や重心などのある一点のことであってもよいし、ヒータ230が設けられる領域であってもよい。またヒータ230は、伝熱部材220を介して流路中の液体を加熱する。ヒータ230が設けられている領域を加熱領域などと称してもよいが、ヒータ230は伝熱部材220を介して流路中の液体を加熱するため、本実施形態では、伝熱部材220が設けられている領域を加熱領域と称する。また、伝熱部材220とヒータ230をあわせて加熱手段と称してもよい。
【0017】
図3は、液体吐出ヘッド1を正面(側面と称してもよい)から見た場合の概略図である。特に制限されるものではないが、正面から見たときに、左側に伝熱部材220、ヒータ230、温度測定部材240が設けられ、右側にダンパ部材210が設けられている。本実施形態では、液体吐出ヘッド1の裏面(正面とは反対側の面)にも、伝熱部材220、ヒータ230、温度測定部材240とダンパ部材210が設けられている。また、本実施形態では、流路を挟んで加熱部材の反対側にダンパ部材210が設けられている。すなわち、裏面から見た場合、正面から見た場合と同様に、左側に加熱部材が設けられ、右側にダンパ部材210が設けられている。
【0018】
流路を挟んで加熱部材の反対側にダンパ部材210が設けられていることにより、コンプライアンスを確保しやすくなる。加熱による流量変化や液体の圧力変化に対応しやすくなり、ダンピングを効率的に実施することができる。
【0019】
図4は、マニホールド140内の流路を模式的に説明するための概略図である。液体流入口202aから流入した液体は、流路201を通ってノズルの方向へ流れる。図中、液体が流れる方向を白矢印で模式的に示している。特に制限されるものではないが、本実施形態では、領域で流路の幅が広がっているところに加熱部材やダンパ部材210が設けられている。このように、流路の幅が広がる領域に加熱部材やダンパ部材210を設けることで、効率よく加熱やダンピングを行うことができる。
【0020】
なお、ヒータ230とダンパ部材210は異なる破線で図示しており、これは異なる面に設けられていることを意味している。ヒータ230とダンパ部材210は流路を挟んで互いに反対側に設けられている。
【0021】
また、図中、液体の流れる方向を符号130で表記している。液体の流れる方向としては、アクチュエータユニット130a、130bのどちらであってもよいし、図中の左側がアクチュエータユニット130aに流れるようにし、図中の右側がアクチュエータユニット130bに流れるようにしてもよいし、130aと130bが逆であってもよいし、適宜変更することが可能である。このため、符号130aと符号130bと表記せずに、符号130で表記している。また、液体を循環させる場合の回収側では、図中の流路に液体が流れるため白矢印の方向が逆になる。
【0022】
図5は、マニホールド140内の流路を模式的に説明するための他の概略図である。流路201は、図4と同様に模式的に示している。図中、破線のR1は、圧力測定領域を示している。本実施形態において、圧力測定領域は、加熱部材が加熱する領域(加熱領域などとも称する)よりも上流側に設けられている。これにより、流量の算出精度を向上させることができる。圧力測定や流量の算出については後述する。
【0023】
図6は、図5のA-A’線に沿った断面概略図である。図示するように、加熱部材とダンパ部材210は流路201を挟んで互いに反対側に設けられている。上述したように、このような配置とすることで、加熱による流量変化や液体の圧力変化に対応しやすくなり、ダンピングを効率的に実施することができる。
【0024】
また図示するように、温度測定部材240が設けられている。温度測定部材240は、ヒータ230(加熱部材)よりも流路の下流側に設けられ、流路中の液体の温度を測定する。温度測定部材240としては、例えば温度センサを用いることができる。
【0025】
ここで、図7図8を用いて、温度測定の一例について説明する。
図7は、図6と同様に流路201を説明する図であり、ここではダンパ部材210を用いていない。図8は、図7におけるx=aの地点での液体(インク)の温度分布を示す図である。なお、図7図8は、本発明における制御をしなかった場合の例を説明する図である。
【0026】
図7に示すように液体を加熱する場合、x=aにおける液体の温度は例えば図8に示すような温度分布になる。ヒータ230の加熱によるz方向への温度の伝達は、ヒータ230の近傍に滞在する時間が長いほど、z方向の遠くまで伝わる。液体の吐出量が多い場合、液体が流路を流れる速度が速くなり、ヒータ230の近傍に滞在する時間が短くなる。一方、液体の吐出量が少ない場合、液体が流路を流れる速度が遅くなり、ヒータ230の近傍に滞在する時間が長くなる。このため、吐出量が多い場合、ヒータ230からの熱はz方向に伝わる距離が短くなる。これにより、図8に示すように、吐出量が多い場合(実線)は、吐出量が少ない場合(破線)に比べて、温度が低い分布になる。
【0027】
このようなことから、x=aの地点において、z方向に対して液体の温度を平均した場合、液体の吐出量が多い方が吐出量が少ない場合に比べて、流路中の液体の平均温度が低くなる。換言すると、x=aの地点において、z方向に対して液体の温度を平均した場合、液体の吐出量が少ない方が吐出量が多い場合に比べて、流路中の液体の平均温度が高くなる。
【0028】
従来技術では、吐出するときの液体の温度が所望の温度となるように、温度測定部材240で測定した温度情報のみを用いて測定した温度が温度測定部材240測定部での所望の温度となるようにヒータ230の加熱量を制御していた。この場合、測定した温度が同じでも、液体の吐出量が異なる場合、加熱後の液体の平均温度(z方向での平均温度)、つまり吐出するときの液体の温度が異なるという問題があった。例えば、図7に示すように温度測定部材240を設ける場合、温度測定部材240は一地点の温度しか測定できないため、図8に示すような温度分布は測定できない。そのため、温度測定部材240の温度が同じでも、x=aの地点での平均温度が吐出量によって異なる事態が生じる。つまり流量に関わらず温度測定部材240測定部での所望の温度が同じ場合、狙いから外れた不適切な温度の液体が流路を流れ、ノズルから吐出されることとなり、狙いとする吐出が実施しにくくなる。
【0029】
また、ヒータ230が加熱する領域よりも流路の下流側に温度測定部材240が設けられている場合、流量が変化したタイミングと、流量が変化したことよる影響を検知するタイミングとに時間差が生じる。温度測定部材240に基づいてヒータ230の加熱量を制御する場合、このような時間差のために、ヒータ230の加熱量の制御がうまくいかず、狙いから外れた不適切な温度の液体が流路を流れてしまう。
【0030】
そこで本発明では、温度測定部材240により測定される温度が温度測定部材240測定部で所定の値になるように、加熱部材による加熱を制御する際に、算出された流量に基づいて温度測定部材240測定部での所定の値を変更する。
【0031】
詳細例は後述するが、加熱部材の制御としては、例えば、温度測定部材により測定される温度が流量に関わらず同じ温度となるように制御し、流量が小さい場合に比べて流量が大きい場合の方が吐出するときの液体の温度が低い場合、流量が大きい場合、吐出量が多いと判断し、流量が小さい場合よりも温度測定部材により測定される温度が大きくなるようにする。一方、流量が小さい場合、吐出量が少ないと判断し、流量が大きい場合よりも温度測定部材により測定される温度が小さくなるようにする。例えばこのようにすることで、吐出量を考慮した加熱部材の制御を行うことができ、吐出量の違いによる加熱後の液体の平均温度の差を低減することができる。
【0032】
温度測定部材により測定される温度が所定の値になるようにするには、例えば、加熱部材の加熱量を制御することが挙げられる。例えば、加熱部材の加熱量を多くすることで、温度測定部材により測定される温度が大きくなるようにすることができる。所定の温度は、あらかじめ設定することができる。
【0033】
また本発明では、流路における2点間の圧力の差(2点間の圧力差とも称する)を求めることにより、流路中の液体の流量を算出する。2点間の圧力差はその2点間を流れる流量によって決まるため、流量が変化したタイミングと、その影響が2点間の圧力差に現れるタイミングとに時間差は生じない。すなわち、流路中の2地点の圧力を測定し、この圧力差により流量を算出することで、流路の流量が変化したタイミングを即時に検知することができる。流量の変化を即時に検知することで、加熱部材の制御を精度良く行うことができ、流路中の液体の温度を狙いの温度にしやすくなるとともに、吐出される液滴の温度を狙いの温度にしやすくなる。
【0034】
以下、2点間の圧力差から流量を求める方法について、複数の例を挙げつつ説明する。
圧力差を測定する領域(圧力測定領域などとも称する)としては、適宜選択することができ、例えば図5の領域R1が挙げられる。圧力測定領域は加熱領域よりも上流側であることが好ましい。圧力測定領域が加熱領域よりも上流側である場合、液体の粘度変化の影響を低減できる。
【0035】
図9は、2点間の圧力差から流量を求める方法の一例(実施例1)を説明するための図である。図9(A)は、流路の断面概略図である。本例では、静圧のみを測定できるように流路201の直線部における側面に圧力測定部材270a、270bが設けられている。本例の圧力測定部材270a、270bは、地点aと地点bの圧力を測定しており、これにより2点間の圧力差を求めることができる。
【0036】
なお、図9(A)に図示する軸(x、z)は、説明のために付している一例であって、これ以外にも軸(x、y)のケースもあり、適宜変更できる。後述の図13図16図17等も同様である。
【0037】
図9(B)は、圧力測定部材270a、270bを設ける位置、換言すると、地点aと地点bの位置の例を説明するための図である。図示するように、地点aと地点bの位置としては、例えば領域R2、領域R3、領域R4等が挙げられる。図9(A)は例えば領域R2もしくは領域R4としている。地点aと地点bは加熱領域、例えばヒータ230が設けられる領域よりも上流にあることが好ましい。この場合、加熱による液体の粘度変化の影響を避けることができ、より精度良く、圧力差から流量を算出することができる。
【0038】
地点aでの圧力をP1、地点bでの圧力をP2、想定の流入時の液体温度での液体の粘度をμ、圧力測定部材270a、270bのセンサ面の水頭差による圧力をPhとすると、地点aと地点bとの間の圧力損失ΔPは以下のように表される。なお、以下の式は動圧を含まない場合の式であり、Qは流量を表し、B1は定数である。
ΔP=B1×μ×Q
=P1-P2+Ph 式(1)
【0039】
上記の式を変形すると、以下のようになる。
Q=(P1-P2+Ph)/(B1×μ) 式(2)
このため、B1とPhをあらかじめ求めておくことで、2点間の圧力差を用いて流路中の液体の流量を求めることができる。
【0040】
なお、センサ面の水頭とは、流路中の液体が流動しているときの圧力測定部材のセンサ面における液体のエネルギーを液体の高さとして表したものである。センサ面の水頭差Phは、圧力測定部材270aの水頭と圧力測定部材270bの水頭の差である。センサ面の水頭差Phは、液体を満たした状態で流量が0の時のP1とP2から求めることができる。
【0041】
また、μは、想定の流入時の液体温度での液体の粘度を表している。この液体温度は、液体吐出ヘッドに流入する際の液体の温度を表している。そのため、用いる液体について、あらかじめ温度とそのときの粘度を求めておくことで、上記のμに値を代入することができる。なお、μについては、直接測定した流入する際の液体の温度を用いてμを定めてもよいし、多少の差異は生じるが、液体吐出ヘッド周囲の環境温度から推定した流入する際の液体の温度や温度測定部材の検出値からμを定めてもよい。また以下に説明するように、粘度μは定数としてもよい。
【0042】
従って、本実施形態では、2つの圧力測定部材270a、270bを用いて2地点の圧力を測定することで、2点間の圧力損失を測定でき、液体の流量を算出することができる。一般的な現象として、液体の流量が増えると2点間の圧力損失が増えるため、本実施形態では2地点の圧力を測定して液体の流量を算出している。
【0043】
なお、「2点間の圧力の差」が式(1)のP1-P2に相当し、「2点間の圧力損失」が式(1)のB1×μ×Qに相当するものとして、分けて考えている。
【0044】
上記式(1)や式(2)において、P1とP2の値そのものは、流量やその他の設定(例えば、基準となる圧力を設定している場所とその場所の圧力の値)によって変わる。そのため、流量Qが変化する場合としては、いくつかの場合が考えられる。例えば流量Qが増えた場合において、P1とP2の挙動としては以下の3つが挙げられる。
(ア)P1が大きくなる、かつ、P2が大きくなる
(イ)P1が大きくなる、かつ、P2が小さくなる
(ウ)P1が小さくなる、かつ、P2が小さくなる
ただし、(ア)~(ウ)のどの場合においても、P1-P2は共通して流量に比例して変化する。
【0045】
一例として、上記(ウ)の場合について、図10A図10Cを用いて説明する。図10A図10Cに示す例は、説明のため、水頭差Phが0の場合の例としている。また、図10A図10Cは、地点aよりも上流側で基準となる圧力を設定し、流量に関わらず圧力を固定とした場合の地点aと地点bの圧力の関係を示している。この例では、図示するように、流量が増えるとP1、P2ともに小さくなっている。
【0046】
まず図10Aは、流量Qが0(ゼロ)の場合の例であり、このときP1とP2は等しくなる。Q=0のときのP1の値(圧力)をP1(0)と表し、Q=0のときのP2の値(圧力)をP2(0)と表している。
【0047】
図10Bは、流量Qが0からQ1に変化した場合の例である。すなわち、流量が大きくなった場合の例である。このとき、例えば、地点aの圧力P1が小さくなり、P1(0)からP1(Q1)に小さくなる。また、地点bの圧力P2が小さくなり、P2(0)からP2(Q1)に小さくなる。図中、Q=0のときのP1とP2の値を白丸で表しており、Q=Q1のときのP1とP2の値を黒丸で表している。
【0048】
図10Bに示すように、下流側の地点bの圧力P2は、上流側の地点aの圧力P1よりも小さくなる。そのため、Q=Q1のときのP1-P2、すなわちΔP(Q1)は0よりも大きくなる。測定したP1-P2を式(2)に代入することで、Q1の絶対値もしくは相対値を求めることができる。
【0049】
図10Cは、流量Q1から流量Q2に変化した場合の例であり、流量が大きくなった場合の例である。図中、Q=Q1のときのP1とP2の値を白丸で表しており、Q=Q2のときのP1とP2の値を黒丸で表している。図示するように、地点aの圧力P1がQ=Q1のときよりも更に小さくなっており、地点bの圧力P2がQ=Q2のときよりも更に小さくなっている。そのため、Q=Q2のときのP1-P2、すなわちΔP(Q2)はΔP(Q1)よりも大きくなっている。
【0050】
そして、測定したP1-P2を式(2)に代入することで、Q2の絶対値もしくは相対値を求めることができ、Q2が所定の範囲に該当する場合、流量が増えたと判断でき、吐出量が増えたと判断できる。このような判断においては、Q2とQ1とを比較してQ2がQ1よりも大きくなった場合、吐出量が増えたとしてもよい。
【0051】
なお、上記(ア)と(イ)についても上記(ウ)と同様に、流量が大きくなることでΔPが大きくなる。
【0052】
また、本実施形態のように、2点間の圧力損失に基づいて流量を算出する方法によれば、粘度を定数と考えたとしても、液体吐出ヘッドに流入する液体の温度の影響を低減できると考えている。これについて以下説明する。
液体を所望の温度にするためには、液体吐出ヘッドに流入する液体の温度が低い場合、加熱手段の加熱量を増やす必要がある。一方、液体の粘度は、液体の温度が低い方が粘度は高くなるので、粘度を定数として考えた場合、圧力損失が増えることになる。つまり、粘度を定数と考えたとすると、液体吐出ヘッドに流入する液体の温度が低い場合、流量が多くなることと同様の意味になる。流量が多くなると、ヒータの温度を上げることになるので、加熱手段の加熱量を増やすことになる。そのため、粘度を定数として流量を算出したとしても、液体吐出ヘッドに流入する液体の温度が低い場合には加熱手段の加熱量を増やす方向の制御が行われるため、流入する液体の温度が与える影響は小さいといえる。
【0053】
実施例1において、圧力測定部材270a、270bは、流路の直線部分の側面に2つ設けられており、それぞれの地点の静圧を測定したが、もちろん動圧の影響を受ける部分に設けてもよい。その場合、地点aと地点bとの圧力差は、流量の2乗に比例する動圧を考慮して以下の式から算出する。なお、B2は定数、ρは液体の密度である。
P1-P2=B1×μ×Q+B2×ρ×Q-Ph 式(3)
静圧を測定している場合に比べて定数が増えているため、定数の同定の手間は増えているが、B1、B2、Phをあらかじめ求めておくことで、2点間の圧力差を用いて流路中の液体の流量を求めることができる。
【0054】
なお、動圧の影響を排除して静圧を測定する場合は、例えば流路の直線部分の側面に圧力測定部材270a、270bを設ける場合が挙げられる。また、「2点間の圧力の差」が式(3)のP1-P2に相当し、「2点間の圧力損失」が式(3)のB1×μ×Qに相当するものとして、分けて考えている。
【0055】
また図9(B)で説明したように、圧力測定部材は、加熱部材よりも流路の上流側に設けられることが好ましい。2点間の圧力損失は流量と粘度の影響を受ける。圧力測定領域が加熱領域よりも上流側である場合、加熱よる粘度変化の影響を避けられる。このため、圧力測定の2点間を流れる液体の粘度は、液体流入口での液体の温度などから求めた粘度とすることができ、流量の算出精度を向上させることができる。
【0056】
本発明では、圧力測定領域が加熱領域よりも下流側である場合を排除するものではないが、もし圧力測定領域が加熱領域よりも流路の下流側である場合、流量の算出精度を向上させにくくなる。圧力測定領域が加熱領域よりも流路の下流側である場合、加熱により液体の温度が変化し、液体の温度は流量や過熱状態の履歴の影響を受けるため、液体温度の推定精度が低下する。このため、流量の算出精度を向上させにくい。
【0057】
図11は、本発明に含まれない比較例1を説明する図である。図11では、横軸を時間、縦軸を温度とし、温度測定部材240の検知温度(狙い温度)を黒丸でプロットし、ノズルから吐出された液滴の温度(吐出滴温度)を×でプロットしている。
【0058】
比較例1は、実施例1において圧力測定部材を有していない例である。比較例1は、流量を考慮せず、温度測定部材240の温度が一定になるように加熱部材を制御した場合の例である。つまり、比較例1は、吐出量を考慮せず、温度測定部材240の温度の所定の値が一定になるように加熱部材を制御した場合の例である。
【0059】
図示するように、図中の左側は吐出量が小さく、中央は吐出量が多く、右側は吐出量が小さくなっている。つまり、最初は吐出量を小さくして液滴を吐出し、次いで吐出量を多くして液滴を吐出し、最後に再び吐出量を小さくして液滴を吐出した場合の測定結果である。
【0060】
図示するように、吐出量を多くしたときに、吐出滴温度が下がっていることが分かる。つまり、図中の中央における×でプロットした箇所が、図中の左側における×でプロットした箇所よりも下がっている。図中の中央における1つ目の×に対して2つ目の×が下がっており、1つ目の×と2つ目の×を結んだ線が負の傾きになっている。また、緩やかではあるが、2つ目の×から4つ目の×に向けて負の傾きになっている。上述したように、吐出量が多い場合、ヒータ230の近傍に液体が滞在する時間が短くなるため、z方向の平均温度が下がってしまう。吐出滴温度が大きく変化すると、吐出にばらつきが生じ、画像の乱れが生じる。
【0061】
図12は、本発明に含まれる実施例1を説明する図である。図12では、図11と同様に、横軸を時間、縦軸を温度とし、温度測定部材240の測定温度を黒丸でプロットし、ノズルから吐出された液滴の温度(吐出滴温度)を×でプロットしている。
【0062】
実施例1は、流量を考慮し、加熱部材を制御している。つまり、吐出量に応じて、温度測定部材240の測定温度の所定の温度を流量によって変化させた値になるように加熱部材を制御している。例えば、吐出量が多い場合はヒータ230の加熱量を多くし、温度測定部材240の測定温度が高くなるようにする。一方、吐出量が少ない場合はヒータ230の加熱量を少なくし、温度測定部材240の測定温度が低くなるようにする。
【0063】
図示するように、実施例1(図12)は比較例1(図11)に比べて、吐出量が多くなっても吐出滴温度の低下を抑えることができている。例えば、図中の中央(吐出量多)における1つ目の×に対して2つ目の×が低下することを抑えることができている。また、図中の左側(吐出量小)における1つ目の×が、比較例1に比べて低下を抑えられている。実施例1は比較例1に比べて、吐出滴温度のばらつきを抑えることができている。このため、吐出量が変化しても、吐出のばらつきを抑えることができ、画質を安定化することができる。
【0064】
また実施例1では、2点間の圧力差によって流量を算出しているため、流量が変化するタイミングと、流量の変化を検知するタイミングとに時間差は生じない。そのため、流路の流量が変化したタイミングを即時に検知することができる。これにより、加熱手段の制御において、時間遅れを少なくすることができる。このようなことも、図中の中央の1つ目の×と2つ目の×とに大きな差異が生じないようにでき、図中の左側の1つ目の×と2つ目の×とに大きな差異が生じないようにできたと考えられる。
【0065】
実施例1では、粘度μを定数と考えて制御と測定を行っている。上述したように、粘度μを定数として流量を算出したとしても、液体吐出ヘッドに流入する液体の温度による影響は低減できるといえる。
【0066】
このように本実施形態によれば、吐出量の違いによる吐出滴の温度差を低減でき、吐出量が変化した直後の吐出滴の温度変化を低減できるとともに、吐出量が変化したタイミングと、吐出量が変化したことを検知するタイミングとの時間差を低減できる。また本実施形態によれば、このように吐出量の違いによる吐出滴の温度差等を低減できるため、吐出のばらつきを抑えることができ、画質を安定化することができる。
【0067】
加熱部材の制御は、例えば制御部が行う。制御部は、液体吐出ヘッドに備えられていてもよいし、液体吐出ヘッドの外部に備えられていてもよい。例えば、液体吐出ヘッドを備える液体を吐出する装置に制御部が備えられる。制御部は、前記2点間の圧力の差に基づいて流量を算出し、算出した流量に基づいて加熱部材を制御する。また、制御部は、加熱部材を制御する際、算出した流量を用いるとともに、温度測定部材により測定される温度が所定の値になるように制御する。加熱部材がこのような制御が行われることにより、本発明の所期の効果が得られる。制御部としては、例えば公知のDFE、CPU等を用いることができる。
【0068】
加熱部材の制御としては、例えば加熱部材の加熱量を制御することが挙げられる。本実施形態では、加熱部材の加熱量を制御する際、温度測定部材により測定される温度の所定の値を流量によって変化させている。具体的は、加熱部材の加熱量は流量が多くなると温度測定部材により測定される温度の所定の値が高くなるように制御するようにしている。
【0069】
実施例1のように、加熱部材は、算出された流量が変化したときに、温度測定部材により測定される温度が所定の値に変化するように制御が行われることが好ましい。また加熱部材は、算出した流量が大きくなる変化が生じた場合、温度測定部材により測定される温度が大きくなるように制御され、算出した流量が小さくなる変化が生じた場合、温度測定手段により測定される温度が小さくなるように制御されることが好ましい。このような制御が行われることで、流量に応じた適切な加熱を行うことができ、吐出滴温度のばらつきを抑えることができる。これにより、画像の乱れをより抑制できる。
【0070】
図13は、実施例2を説明するための概略図であり、図9とは異なる構成で流量を算出する方法を説明するための図である。
実施例2は、マニホールド部材140aにおける流路に1つの圧力測定部材270を設けた場合の例である。実施例2では、圧力測定部材270として差圧計を用いており、地点aと地点bとの間の圧力差を1つの圧力測定部材270で測定している。実施例2では、圧力差の測定を1つの圧力測定部材を使って測定しているため、2つの圧力測定部材を用い、測定値の差分から圧力差を求める場合(実施例1)に比べて、測定誤差を低減することができる。2か所の圧力をそれぞれ測定し、その値から圧力差を求める場合(実施例1)、2か所の圧力それぞれに測定誤差が生じる。このため、差圧を直接測定する場合(実施例2)の方が、測定誤差を減らすことができる。
【0071】
また、地点aと地点bの絶対圧のレンジ(範囲)よりも、地点aと地点bの圧力差のレンジの方が小さい。2か所の絶対圧のレンジ(例えば充填時などでは数十kPaにもなる)よりも2点間の差圧のレンジ(せいぜい数kPa以下)の方が小さくなる。一般的に、圧力測定部材は測定する圧力の範囲が狭いほど感度を良くできるため、実施例2のように差圧タイプの圧力測定部材を用いることにより、圧力差を直接測定する方が測定精度を良くすることができる。
【0072】
実施例2では、差圧タイプの圧力測定部材を用いるので、上記の式(1)や式(2)におけるP1-P2の値を直接得ることができる。圧力測定部材として差圧計を用いる場合、水頭差Phは、液体を満たした状態で流量が0の時の差圧計の値から求めることができる。後述の実施例4も同様にして水頭差Phを求めることができる。
【0073】
なお、実施例2においては、図示するように、流路201に流量測定用の側路201aを設けることが好ましい。この側路201a中に圧力測定部材270を1つ設けて地点aと地点bとの間の圧力差を求めることが好ましい。
【0074】
実施例2のような圧力測定領域を設ける箇所は、適宜選択することができ、例えば図9(B)に示す領域R2~R4等が挙げられる。図13は、図9(B)に示す領域R2、R4とx軸、y軸を合わせている。領域R3を選択した場合、図12の軸を適宜変更すればよい。上述したように、流路の形状は図示されるものに限られない。
【0075】
図14は、実施例3を説明するための概略図であり、図13(実施例2)とは異なる構成で流量を算出する方法を説明するための図である。
図14(A)に示すように、実施例3では、マニホールド部材140aをマニホールド部材140dとマニホールド部材140eとで形成し、マニホールド部材140dとマニホールド部材140eの接合面に圧力測定部材270を設置している。実施例3のように、マニホールド部材140dとマニホールド部材140eの接合面に圧力測定部材270を設置する場合、配線などを設置しやすくなるという利点がある。
【0076】
実施例3においても実施例2と同様に、1つの圧力測定部材270を用いて地点aと地点bとの間の圧力差を求めることができる。
【0077】
図14(B)は、実施例3の圧力測定領域が設けられる箇所の一例を説明するための図である。特に制限されるものではないが、例えば領域R5が挙げられる。また、流路の形状は図示されるものに限られない。
【0078】
図15は、実施例4を説明するための概略図であり、図13(実施例2)とは異なる構成で流量を算出する方法を説明するための図である。
図15(A)に示すように、実施例4では、マニホールド部材140aとマニホールド部材140bの接合面に圧力測定部材270を設置している。実施例4のように、マニホールド部材140aとマニホールド部材140bの接合面に圧力測定部材270を設置する場合、配線などを設置しやすくなるという利点がある。
【0079】
実施例4においても、実施例3と同様に、1つの圧力測定部材270を用いて地点aと地点bとの間の圧力差を求めることができる。また、地点bと地点cは、ともに流路201の幅が拡大した領域にあるため、地点cの圧力をP3とすると、P3≒P2と考えることができる。このため、地点aと地点bとの間の圧力損失は、地点aと地点cとの間の圧力損失と同じであると考えることができる。この圧力損失ΔPは、上記の式(1)、式(2)を用いると以下のように表すことができる。式(2)’は式(2)と同じになる。
ΔP=B1×μ×Q
=P1-P2+Ph
≒P1-P3+Ph 式(1)’
Q=(P1-P2+Ph)/(B1×μ) 式(2)’
【0080】
図15(B)は、実施例4の圧力測定領域が設けられる箇所の一例を説明するための図である。特に制限されるものではないが、例えば領域R6が挙げられる。また、流路の形状は図示されるものに限られない。
【0081】
次に、本発明における他の実施形態について複数の例を挙げつつ説明する。
本実施形態では、流路における圧力差を測定する2点間に流体抵抗部が設けられている。流体抵抗部を設けることにより、流量変化の測定性能を向上させることができる。
【0082】
図16図19は、本実施形態に含まれる実施例5~8を説明するための概略図であり、それぞれ図9(A)、図13図14(A)、図15(A)に示される実施例1~4に対して流体抵抗部280を設けた図である。図16図19に示すように、地点aと地点bとの間に流体抵抗部280が設けられている。
【0083】
なお、図17において、流体抵抗部280は、圧力測定部材270が設けられた側路201aに設けられていないが、この場合も、圧力差を測定する2点間に流体抵抗部が設けられていることに含まれる。また、図19において、流体抵抗部280は、地点aと地点bとの間に設けられているともいえるし、地点aと地点cとの間に設けられているともいえる。この場合も、圧力差を測定する2点間に流体抵抗部が設けられていることに含まれる。
【0084】
流量による圧力損失は、地点aと地点bの間の抵抗が大きいほど大きくなる。そのため、抵抗が大きいほど流量の変化を圧力差として検知しやすくなる。つまり、流体抵抗部を設けることにより、圧力測定部材の性能が同じでも、流量変化の測定性能を向上させることができる。
【0085】
流体抵抗部280としては、例えば、絞り構造としてもよいし、多数の穴で形成されていてもよい。流体抵抗部280が多数の穴からなる場合、穴の大きさ(直径)はノズル径(ノズルの直径)よりも小さいことが好ましい。この場合、流体抵抗部280に対して異物フィルタとしての機能を付与することができ、異物によるノズル詰まりを低減することができる。
【0086】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図20及び図21を参照して説明する。図20は同装置の要部平面説明図、図21は同装置の要部側面説明図である。
【0087】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0088】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0089】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0090】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0091】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0092】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0093】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0094】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0095】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0096】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0097】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0098】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0099】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0100】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図22を参照して説明する。図22は同ユニットの要部平面説明図である。
【0101】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0102】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0103】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0104】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0105】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0106】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0107】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0108】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0109】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0110】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0111】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0112】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0113】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0114】
例えば、液体吐出ユニットとして、図21で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0115】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0116】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図22で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0117】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0118】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0119】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0120】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0121】
本発明の液体吐出ユニットは、例えば、液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと液体吐出ヘッドとを一体化した構成にすることができる。
【0122】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>液体流入口からノズルの方向へ液体が流れる流路と、
前記流路中の所定の加熱点で液体を加熱する加熱部材と、
前記流路における2点間の圧力の差を測定する圧力測定部材と、
前記加熱部材よりも前記流路の下流側に設けられ、前記流路中の液体の温度を測定する温度測定部材と、を有し、
前記圧力測定部材により測定された前記2点間の圧力の差は、流量の算出に用いられ、
前記加熱部材は、前記温度測定部材により測定される温度が所定の値になるように制御され、
前記所定の値は、算出された前記流量に基づいて変更されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
<2>前記圧力の差を測定する2点が、前記流路の直線部分の側面に設けられることを特徴とする<1>に記載の液体吐出ヘッド。
<3>前記圧力測定部材は、差圧計であることを特徴とする<1>に記載の液体吐出ヘッド。
<4>前記圧力測定部材は、前記加熱部材よりも前記流路の上流側に設けられることを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
<5>前記加熱部材は、
算出した前記流量が大きくなる変化が生じた場合、前記温度測定部材により測定される温度が大きくなるように制御され、
算出した前記流量が小さくなる変化が生じた場合、前記温度測定手段により測定される温度が小さくなるように制御される
ことを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
<6>前記流路は、前記2点間に液体抵抗部を有することを特徴とする<1>から<5>のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
<7>前記液体抵抗部は、複数の穴からなり、穴の大きさは前記ノズルの径よりも小さいことを特徴とする<6>に記載の液体吐出ヘッド。
<8><1>から<7>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
<9><1>から<7>のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、<8>に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【符号の説明】
【0123】
110 ノズルカバー
120 ベース部材
130a、130b アクチュエータユニット
140 マニホールド部材
140a~140e マニホールド部材
201 流路
201a 側路
202a、202b 液体流入口
210 ダンパ部材
220 伝熱部材
230 ヒータ
240 温度測定部材
270 圧力測定部材
280 液体抵抗部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0124】
【特許文献1】特許第5024413号公報
図1
図2
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図10A
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