(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066091
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜装置の駆動方法、及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20240508BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20240508BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240508BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20240508BHJP
【FI】
C23C14/50 B
C23C14/50 A
C23C14/04 A
H01L21/68 R
H10K71/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175379
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加勢 翔也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 洋介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功康
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG32
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA03
4K029DB06
4K029HA04
4K029JA01
4K029JA06
4K029KA01
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA01
5F131CA07
5F131CA22
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB34
(57)【要約】
【課題】吸着部材に対して、基板を安定した状態で吸着させることのできる成膜装置、成膜装置の駆動方法、及び成膜方法を提供する。
【解決手段】基板の成膜側の面とは反対側の面を吸着する静電チャック31と、静電チャック31に対する前記基板の吸着の前及び後の少なくともいずれかに、前記基板の周縁を支持する第1の支持部材41と、前記基板の成膜側の面に沿う第1方向に伸び、前記基板の成膜側の面を支持する第2の支持部材71と、第2の支持部材71を前記第1方向にスライドさせる第1の駆動部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の成膜側の面とは反対側の面を吸着する吸着部材と、
前記吸着部材に対する前記基板の吸着の前及び後の少なくともいずれかに、前記基板の周縁を支持する第1の支持部材と、
前記基板の成膜側の面に沿う第1方向に伸びた部分、及び、前記基板の成膜側の面に接触して前記基板を支持する接触部を有する第2の支持部材と、
前記第2の支持部材を前記第1方向にスライドさせる第1の駆動部と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第2の支持部材を前記基板の成膜側の面に交差する第2方向に移動させる第2の駆動部を備えることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1の支持部材に前記基板が支持された状態で、前記第1の駆動部により前記第2の支持部材がスライドし、
前記第2の支持部材がスライドした後に、前記第2の駆動部により前記第2の支持部材が前記第2方向に移動して前記接触部が前記基板に接触することを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第2方向に平行に見た場合に、前記接触部は、前記第1の支持部材に支持された前記基板と重なる第1の位置と重ならない第2の位置との間を移動することを特徴とする請求項2または3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第2の支持部材は複数設けられ、それぞれ独立にスライドすることを特徴とする請求項1,2または3に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第2の支持部材は複数設けられ、
複数の前記第2の支持部材の1つが、前記第1の支持部材に支持された前記基板の、前記第1方向における一方の側に配され、
複数の前記第2の支持部材の他の1つが、前記第1の支持部材に支持された前記基板の、前記第1方向における反対の側に配されていることを特徴とする請求項1,2または3に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第2の支持部材の前記1つに含まれる前記第1方向に伸びた部分と、前記第2の支持部材の前記別の1つに含まれる前記第1方向に伸びた部分とは、前記第1方向に交差する方向にずれるように、複数の前記第2の支持部材が配されていることを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第2の支持部材の前記1つに備えられる前記接触部と、前記第2の支持部材の前記別の1つに備えられる前記接触部とは、前記第1方向に平行な直線上に配されていることを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1の支持部材を昇降させる昇降部を備え、
前記第1の駆動部は、前記昇降部による前記第1の支持部材の昇降時には、前記基板の移動を妨げない位置に前記第2の支持部材を移動させ、前記吸着部材による前記基板を吸着する前に前記基板を支持する位置に前記第2の支持部材を移動させることを特徴とする請求項1,2または3に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記吸着部材は、内部に電極を有しており、前記電極に電圧が印加されることで静電吸着力を生ずるように構成されることを特徴とする請求項1,2または3に記載の成膜装置
。
【請求項11】
マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部を磁気浮上によって浮上した状態で移動させるマスク駆動部と、を備え、
前記吸着部材が前記基板を吸着した状態で、前記マスク駆動部が前記マスク保持部を移動させることで、前記基板と前記マスクとのアライメントを行うことを特徴とする請求項1,2または3に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記吸着部材により吸着された基板に対して、薄膜を形成する成膜源を備えることを特徴とする請求項1,2または3に記載の成膜装置。
【請求項13】
基板の成膜側の面とは反対側の面を吸着する吸着部材と、
前記基板の周縁を支持する第1の支持部材と、
前記基板の成膜側の面に沿う第1方向に伸び、前記基板の成膜側の面を支持する第2の支持部材と、
を備えた成膜装置の駆動方法であって、
前記第1の支持部材が前記基板の周縁を支持する支持工程と、
前記支持工程の後に、前記第1の支持部材に支持された前記基板の移動を妨げない位置に前記第2の支持部材を移動させた状態で、前記第1の支持部材に支持された前記基板を前記吸着部材に近づける接近工程と、
前記接近工程の後に、前記基板を支持する位置に前記第2の支持部材を移動させるスライド工程と、
前記スライド工程の後に、前記吸着部材によって前記基板を吸着する吸着工程と、
前記吸着工程の後に成膜を行う成膜工程と、を有する
ことを特徴とする成膜装置の駆動方法。
【請求項14】
前記吸着工程の後であって、前記成膜工程を開始する前に、前記第2の支持部材をスライドさせることで、退避位置に前記第2の支持部材を移動させる退避工程を有することを特徴とする請求項13に記載の成膜装置の駆動方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載された成膜装置の駆動方法を用いて、基板に成膜を行うことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜装置の駆動方法、及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成膜装置において、基板の成膜側の面とは反対側の面を吸着する吸着部材を備える技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、基板の大判化が進んでおり、吸着部材に基板を吸着する前の状態において、基板が大きく撓んでいると、吸着部材に対して基板を適切に吸着するのが難しいことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の成膜装置は、
基板の成膜側の面とは反対側の面を吸着する吸着部材と、
前記吸着部材に対する前記基板の吸着の前及び後の少なくともいずれかに、前記基板の周縁を支持する第1の支持部材と、
前記基板の成膜側の面に沿う第1方向に伸びた部分、及び、前記基板の成膜側の面に接触して前記基板を支持する接触部を有する第2の支持部材と、
前記第2の支持部材を前記第1方向にスライドさせる第1の駆動部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明によれば、吸着部材に対して、基板を安定した状態で吸着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0009】
(実施例)
図1~
図9を参照して、本発明の実施例に係る成膜装置について説明する。なお、
図1,3~5、及び7~9においては、各部材の動作を分かり易くするために、一体的に動作する部材について同種のハッチングを付している。これらの図においては、各部材を断面的に示しているが、各部材については、紙面の手前側と奥側の異なった位置に配され得るため、ハッチングが付されているからと言って、必ずしも断面を示したものではない。
【0010】
<成膜装置の構成>
特に、
図1を参照して、成膜装置1の全体構成について説明する。
図1は成膜装置全体の概略構成図である。成膜装置1は、チャンバ10と、チャンバ10内に備えられる成膜源20とを備えている。チャンバ10内は、真空雰囲気や不活性ガス雰囲気に維持可能に構成される。成膜源20としては、成膜材料を蒸発又は昇華させる蒸発源の他、スパッタリングによって成膜を行うためのスパッタリングカソードなどを採用することができる。
【0011】
チャンバ10の上部には、成膜対象である基板Sと、基板Sに対して所望のパターンの薄膜を形成するために基板Sの成膜側の面に配されるマスクMとを位置合わせするための各種機構が備えられている。なお、本実施例では、成膜源20が配されたチャンバ10に、この各種機構が備えられる構成を示すが、基板SとマスクMとを位置合わせするためのチャンバと成膜源が備えられるチャンバとを別々に設ける構成を採用してもよい。この場合には、位置合わせ用のチャンバ内において、基板SとマスクMが位置合わせされた後に、成膜源を備えるチャンバに、これら基板SとマスクMが搬送されて成膜が施される。
【0012】
以下、基板SとマスクMとを位置合わせするための各種機構について説明する。チャンバ10の天井部には、各種機構を支持するためのベース部材11及び支持プレート12が固定されている。
【0013】
ベース部材11には、吸着部材としての静電チャック31を鉛直方向に昇降させる第1の昇降機構30が取り付けられている。この第1の昇降機構30は、静電チャック31を保持する保持部材32と、保持部材32を昇降させるための軸部材33と、軸部材33を昇降させる駆動源34とを備えている。保持部材32は、鉛直方向に垂直な昇降プレート32aを備えている。昇降機構の具体的な構成については、ボールネジ機構など各種公知技術を採用し得るので、その詳細な説明は省略する。静電チャック31は、内部に電極31aを有しており、電極31aに電圧が印加されることで静電吸着力を生ずるように構成されている。なお、静電吸着力を生じさせる方式としては、クーロン力タイプ、ジョンソン・ラーベック力タイプ、及びグラジエント力タイプなど、各種公知の方式を採用し得る。この静電チャック31によって、基板Sの成膜側の面とは反対側の面が吸着されて、基板Sは保持される。
【0014】
第1の昇降機構30における保持部材32の昇降プレート32aには、基板Sを鉛直方向に昇降させる第2の昇降機構(昇降部)40が設けられている。この第2の昇降機構40は、基板Sの成膜側の面の周縁を支持する第1の支持部材41と、第1の支持部材41を昇降させるための軸部材42と、軸部材42を昇降させる駆動源43とを備えている。昇降機構の具体的な構成については、ボールネジ機構など各種公知技術を採用し得るので、その詳細な説明は省略する。第2の昇降機構40を動作させない状態で、第1の昇降機構30により昇降プレート32aを昇降させると、静電チャック31と基板Sは一体的に昇降する。一方、第2の昇降機構40を動作させることで、静電チャック31に対して、基板Sを相対的に昇降させることができる。
【0015】
また、成膜装置1は、マスクMの位置を調整するマスク駆動部としてのマスク調整機構
50を備えている。このマスク調整機構50は、チャンバ10の天井部に固定された支柱部51と、支柱部51の下端に設けられたマスク台受け部52と、支柱部51に固定された磁気発生用コイルボックス53とを備えている。マスクMを保持するマスク保持部としてのマスク台54の周縁には磁石55が設けられている。この磁石55が、マスク台受け部52と磁気発生用コイルボックス53との間の隙間に配されるようにマスク台54は配置される。そして、磁気発生用コイルボックス53による磁界が制御されることで、マスク台54は磁気浮上によって浮いた状態で、水平方向の位置が調整される。すなわち、鉛直方向に対して垂直かつ互いに直交する方向をX,Y方向とし、鉛直方向を中心に回転する方向をθ方向とすると、磁気発生用コイルボックス53による磁界の制御を行うことで、マスク台54をX,Y,θ方向に位置調整することができる。
【0016】
マスク調整機構50は、マスクMを昇降させる第3の昇降機構も有している。この第3の昇降機構は、チャンバ10の天井部に固定された支持プレート12に取り付けられており、マスクMを支持する支持部材56と、支持部材56を昇降させるための軸部材57と、軸部材57を昇降させる駆動源58とを備えている。昇降機構の具体的な構成については、ボールネジ機構など各種公知技術を採用し得るので、その詳細な説明は省略する。このマスク昇降機構は、チャンバ10内に搬送されたマスクMを受け取って、マスクMをマスク台54に載置するために用いられる。
図1においては、マスク台54にマスクMが載置された状態を示している。
【0017】
また、ベース部材11には、基板SとマスクMとの位置合わせを行った後に、基板Sと静電チャック31を介してマスクMを磁力によって吸着する磁気吸着部材61を鉛直方向に昇降させる第4の昇降機構60が取り付けられている。この第4の昇降機構60は、磁気吸着部材61を保持する保持部材62と、保持部材62を昇降させる駆動源63とを備えている。昇降機構の具体的な構成については、ボールネジ機構など各種公知技術を採用し得るので、その詳細な説明は省略する。
【0018】
更に、本実施例においては、基板Sの成膜側の面のうち周縁よりも内側の位置を支持する第2の支持部材71を駆動する駆動機構70を備えている。この駆動機構70は、チャンバ10の天井部に固定された支持プレート12に取り付けられている。
図2を参照して、駆動機構70について、より詳細に説明する。なお、
図2においては、駆動機構70において、動作に関連する構成を簡略的に示した図である。
図1,3~5、及び7~9においては、駆動機構70について、より簡略的に示している。
【0019】
駆動機構70は、第2の支持部材71を、基板Sの成膜側の面に沿う第1方向(本実施例では水平方向)にスライド移動させると共に、基板Sの成膜側の面に交差する第2方向(本実施例では鉛直方向)に移動させる機能を備えている。第2の支持部材71は、基板Sの成膜側の面に沿う第1方向に伸び、基板Sの成膜側の面を支持する役割を担っている。
【0020】
駆動機構70は、第2の支持部材71を第1方向に移動させる(スライドさせる)ための第1の駆動部としてのラックアンドピニオン機構72と、第2の支持部材71を第2方向に移動させるための第2の駆動部としてのボールネジ機構73とを備えている。ラックアンドピニオン機構72は、先端にピニオン72aが設けられた軸部材72bと、軸部材72bを回転させるモーターなどの駆動源72cとを備えている。また、第2の支持部材71に、ピニオン72aに噛み合うように設けられるラック71aが設けられている。ボールネジ機構73は、ボールネジ73aと、ボールネジ73aを回転させるモーターなどの駆動源73bと、ボールネジ73aの正逆回転によって昇降するナット73cとを備えている。
【0021】
ナット73cに対して、ラックアンドピニオン機構72における駆動源72cが固定されており、駆動源72cはナット73cと共に昇降する。また、ナット73cに固定されたガイド部材73dに対して、第2の支持部材71が第2方向にスライド可能に設けられている。これにより、第2の支持部材71もナット73cと共に昇降する。
【0022】
以上の構成により、第2の支持部材71は、ラックアンドピニオン機構72によって第1方向に移動し、ボールネジ機構73によって第2方向に移動する。なお、本実施例においては、第1の駆動部がラックアンドピニオン機構72の場合を示したが、第1の駆動部は、これに限らずボールネジ機構など各種の公知技術を採用することができる。また、本実施例においては、第2の駆動部がボールネジ機構73の場合を示したが、第2の駆動部は、これに限らずラックアンドピニオン機構など各種の公知技術を採用することができる。
【0023】
そして、第2の支持部材71には、基板Sを支持するために、基板Sの成膜側の面に接触する複数の接触部71bが設けられている。なお、接触部71bは、ピン状の部材により構成される。これら複数の接触部71bの基板Sへの接触部位は、成膜領域間の境界部分など、成膜されない部分にするのが望ましい。このように、第2の支持部材71は、基板Sの成膜側の面に沿う第1方向に伸びた部分(第2の支持部材71の本体部分)と、基板Sの成膜側の面に接触して基板Sを支持する接触部71bとを有している。
【0024】
また、成膜装置1は、成膜源20、及び上記の各種機構等の動作を制御するための制御装置90も備えている(
図1参照)。各種装置を制御するための制御装置は公知技術であるので、詳細な説明は省略するが、制御装置90は、CPU等のプロセッサ、半導体メモリやハードディスクなどの記憶デバイス、入出力インタフェースを備えている。
【0025】
<成膜装置における基板とマスクとの位置合わせまでの動作>
特に、
図3~9を参照して、成膜装置1における基板とマスクとの位置合わせまでの動作(成膜装置の駆動方法)について説明する。
図3~5、及び
図7~9は、
図1のうち、チャンバ10の天井部付近の各種機構が設けられた部分を示したものである。
図6は、基板S、第1の支持部材41及び駆動機構70について、上方から見た位置関係を動作順に示したものである。
【0026】
まず、チャンバ10内にマスクMが搬送されて、第3の昇降機構によって、マスク台54にマスクMが載置される。そして、搬送ロボットのハンド部80によって、基板Sがチャンバ10内に搬送され、第2の昇降機構40における第1の支持部材41に基板Sが載置される(
図6(a)参照)。これにより、第1の支持部材41によって、基板Sの成膜側の面の周縁が支持される(
図3及び
図6(b)参照)。以上が支持工程である。このとき、基板Sは、自重によって、その中央が鉛直方向下向きに湾曲するように撓んだ状態となる。なお、この一連の動作の期間中においては、駆動機構70によって、第2の支持部材71は、基板Sの昇降動作を妨げない位置に移動している(
図3及び
図6(a)(b)参照)。
【0027】
支持工程の後に、第1の支持部材41に支持された基板Sの移動を妨げない位置に第2の支持部材71を移動させた状態で、第1の支持部材41に支持された基板Sを静電チャック31に近づける接近工程が行われる。本実施例においては、第2の昇降機構40によって、第1の支持部材41に支持された基板Sが上昇し、基板Sの周縁は静電チャック31に接した状態となる。この接近工程の後に、基板Sを支持する位置に第2の支持部材71が移動する(スライド工程)。より具体的には、ラックアンドピニオン機構72によって、第2の支持部材71が第1方向に移動して、複数の接触部71bが基板Sの中央(周縁よりも内側の位置)の直下に移動する(
図4参照)。その後、ボールネジ機構73によ
って、第2の支持部材71が上昇して基板Sの中央に接した状態となる(
図5及び
図6(c)参照)。つまり、第2の支持部材71における基板Sを支持する部位(接触部71b)が、基板Sの成膜側の面のうち周縁よりも内側の位置において基板Sを支持する。以上により、基板Sの中央が第2の支持部材71によって持ち上げられるため、基板Sの撓みが抑制された状態となる。なお、「基板Sの成膜側の面のうち周縁よりも内側の位置」とは、基板Sの重心(中心)に限られることはなく、基板の中央(周縁を除く領域)の位置であることを意味する。
【0028】
ここで、
図6を参照して、第2の支持部材71に関して、より詳細に説明する。第2の支持部材71においては、第2方向に平行に見た場合に、接触部71bが、第1の支持部材41に支持された基板Sと重なる第1の位置(
図6(c)参照)と重ならない第2の位置(
図6(a)(b)参照)との間を移動するように構成されている。また、第2の支持部材71は、第1の支持部材41に支持された基板Sの幅方向両側(第1方向における一方の側と、その反対の側)に対となるように配されている。
図6に示す例では、第2の支持部材71は、3対(計6個)設けられている。そして、第1の支持部材41に支持された基板Sの幅方向両側に対となるように配された第2の支持部材71の本体部分(第1方向に伸びた部分)は、幅方向に垂直な方向(第1方向に交差する方向)にずれた状態で配されている。なお、
図6(c)中の距離Gは、ずれ量を示している。その一方で、それぞれの第2の支持部材71に備えられる接触部71bは、幅方向(第1方向)に平行な直線(
図6(c)中、点線で示す直線L参照)上に配されている。
【0029】
以上のように、本実施例においては、第2の支持部材71は複数設けられている。そして、これら複数の第2の支持部材71は、それぞれ独立に移動可能に構成されている。つまり、制御装置90によって、複数の第2の支持部材71は、それぞれ独立に移動するように構成されている。この理由について説明する。上記の通り、複数の接触部71bによる基板Sへの接触部位は、成膜領域間の境界部分など、成膜されない部分にするのが望ましい。一般的に、ディスプレイ装置に用いられる基板Sの場合、1枚の基板Sから複数のディスプレイが切り出される。この場合、スクライブライン(切り取り線)に相当する部位に対しては接触部71bが接触して支持することができるが、それ以外の部分は回路素子が形成されているため接触部71bを接触させるのは望ましくない。例えば、
図6に示す基板Sが上下に2分割される構成の場合、上下に3つ並ぶ第2の支持部材71のうち、真ん中の第2の支持部材71における接触部71bにより基板Sを支持することができるが、上下の第2の支持部材71によって基板Sを支持するのは望ましくない。これに対して、
図6に示す基板Sが上下中の3分割される構成の場合、上下に3つ並ぶ第2の支持部材71のうち、上下の第2の支持部材71における接触部71bにより基板Sを支持することができるが、真ん中の第2の支持部材71によって基板Sを支持するのは望ましくない。また、
図6に示す基板Sが上下方向に4分割される構成の場合には、全ての第2の支持部材71における接触部71bにより基板Sを支持することができる。このように、複数の第2の支持部材71をそれぞれ独立に移動可能に構成することによって、分割の仕方が異なる基板Sに応じて、必要な第2の支持部材71のみを稼働させることで、適切な位置で基板Sを支持することが可能となる。
【0030】
また、本実施例では、上記の通り、第1の支持部材41に支持された基板Sの幅方向両側に対となるように配された第2の支持部材71の本体部分は、幅方向に垂直な方向にずれた状態で配されているのに対して、それぞれの第2の支持部材71に備えられる接触部71bは、幅方向に平行な直線上に配されている。この理由について説明する。それぞれの第2の支持部材71に備えられる接触部71bを、幅方向に平行な直線上に配する理由は、上記の通り、スクライブライン(切り取り線)に相当する部位に対して接触部71bを接触させて支持するのが望ましいためである。そして、成膜装置1においては、一つのチャンバ内に複数の成膜ステージを設けることがある。この場合、基板SとマスクMとを
位置合わせするための各種機構と成膜源20も複数設ける必要がある。
図6(c)は各種機構(いずれも同一の機構)を複数並べた場合の一部の構成を示している。図示のように、同一の機構を並べて配置した場合、図中左側の機構における複数の接触部71bと、図中右側の機構における複数の接触部71bは、一直線上に並ぶことになる。このとき、第2の支持部材71の本体部分についても一直線上に並ぶ構成を採用した場合には、左側の機構の第2の支持部材71の本体部分と右側の機構の第2の支持部材71の本体部分が第2の位置に移動した状態でも干渉しないように、両者の機構の間隔を広くする必要がある。これに対して、第2の支持部材71の本体部分が、幅方向に垂直な方向にずれて配される構成を採用することで、図中、太い点線で示すように、両者の機構における第2の支持部材71の本体部分が第2の位置に移動した場合でも、干渉することなく、両者の機構の間隔を狭くすることが可能となる。従って、装置の小型化を図ることができる。
【0031】
そして、
図5に示すように、第2の支持部材71によって、基板Sが支持された後に、静電チャック31によって基板Sを吸着する吸着工程が行われる。すなわち、基板Sの撓みが抑制された状態で、静電チャック31に設けられた電極31aに電圧が印加されることで、基板Sは静電吸着力によって、静電チャック31に吸着される。このように、第1の支持部材41は、吸着部材としての静電チャック31に対する基板Sの吸着の前及び後の少なくともいずれかに、基板Sの周縁を支持する。また、第2の支持部材71は、静電チャック31に対する基板Sの吸着前の際に、基板Sの成膜側の面のうち周縁よりも内側の位置を支持する。そして、基板Sが静電チャック31に吸着された後、基板SとマスクMとの位置合わせを行うためのアライメント動作が行われる。
【0032】
基板SとマスクMを位置合わせするアライメント動作に関しては、各種公知の方法を採用し得るが、ここでは代表的な一例を説明する。一般的に、アライメントを行うために、基板SとマスクMにはそれぞれアライメント用のマーク(不図示)が設けられる。そして、チャンバ10に固定されたカメラCによって、両者のマークが撮影されて、両者の位置ずれ量が判定される。そして、これらの位置ずれがなくなる(通常は、位置ずれ量が閾値内に収まる)ように、基板S及びマスクMのうちの少なくともいずれか一方の水平方向の位置が調整される。また、短時間で高精度なアライメントを実現するために、大まかに位置合わせを行うラフアライメントと、高精度に位置合わせを行うファインアライメントがなされるのが一般的である。ラフアライメントにおいては、低解像だが広視野のカメラCが用いられ、ファインアライメントにおいては、狭視野だが高解像のカメラCが用いられる。また、上記のアライメント用のマークも、通常、ラフアライメント用とファインアライメント用に別々のマークが用いられる。
【0033】
具体的には、静電チャック31に基板Sが吸着された後に、第1の昇降機構30によって、静電チャック31と基板Sが一体的に下降して、基板SとマスクMが接した状態となる(
図7参照)。この状態で、カメラCから得られた撮影情報によって、制御装置90は基板SとマスクMの位置ずれ量を判定する。その後、第1の昇降機構30によって、静電チャック31と基板Sが一体的に上昇して、基板SがマスクMから僅かに離れた状態となる(
図8参照)。この状態で、ラフアライメントがなされる。すなわち、位置ずれ量に基づいて、本実施例の場合には、マスク調整機構50により、マスク台54の水平方向(X,Y,θ方向)の調整がなされることで、基板SとマスクMのラフアライメントが行われる。
【0034】
ラフアライメントが行われた後に、再び、第1の昇降機構30によって、静電チャック31と基板Sが一体的に下降して、基板SがマスクMに接した状態となる。その後、ラフアライメントと同様の順序でファインアライメントが行われる。一般的には、基板SとマスクMとの位置ずれ量が閾値の範囲内になるまでファインアライメントが繰り返される。なお、ここでは、基板SとマスクMとを接触させた状態で、これらの位置ずれ量を判定し
た後に、これらを離間させてラフアライメント及びファインアライメントを行う場合を説明した。しかしながら、第1の昇降機構30によって、静電チャック31と基板Sを一体的に下降させて、基板SとマスクMとを僅かに離れた状態として、これらの位置ずれ量を判定し、そのままラフアライメント及びファインアライメントを行うこともできる。
【0035】
ファインアライメントが終了した後、第4の昇降機構60によって磁気吸着部材61が下降する。これにより、マスクMが基板S及び静電チャック31を介して磁気吸着部材61に吸着される。これにより、基板SとマスクMとが接した状態で固定された状態となる(
図9参照)。その後、成膜源20によって、基板Sの表面(成膜面)上に、マスクMに形成された所望のパターン(開口部)の薄膜が形成される。このように、吸着工程の後に成膜を行う成膜工程が行われる。なお、吸着工程の後であって、成膜工程を開始する前に、退避位置である第2の位置に第2の支持部材71を移動させる退避工程が行われる。
【0036】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施例の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を示し、有機EL表示装置の製造方法を例示する。
【0037】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図10(a)は有機EL表示装置150の全体図、
図10(b)は1画素の断面構造を表している。
【0038】
図10(a)に示すように、有機EL表示装置150の表示領域151には、発光素子を複数備える画素152がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域151において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子152R、第2発光素子152G、第3発光素子152Bの組み合わせにより画素152が構成されている。画素152は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0039】
図10(b)は、
図10(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素152は、複数の発光素子からなり、各発光素子は、基板153上に、第1電極(陽極)154と、正孔輸送層155と、発光層156R、156G、156Bのいずれかと、電子輸送層157と、第2電極(陰極)158と、を有している。これらのうち、正孔輸送層155、発光層156R、156G、156B、電子輸送層157が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層156Rは赤色を発する有機EL層、発光層156Gは緑色を発する有機EL層、発光層156Bは青色を発する有機EL層である。発光層156R、156G、156Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極154は、発光素子毎に分離して形成されている。正孔輸送層155と電子輸送層157と第2電極158は、複数の発光素子152R、152G、152Bで共通に形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極154と第2電極158とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極154間に絶縁層159が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層140が設けられている。
【0040】
図10(b)では正孔輸送層155や電子輸送層157は一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によっては、正孔ブロック層や電子ブロック層を備える複数の層で形成されてもよい。また、第1電極154と正孔輸送層155との間には第1電極15
4から正孔輸送層155への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極158と電子輸送層157の間にも電子注入層が形成することもできる。
【0041】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0042】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極154が形成された基板153を準備する。
【0043】
第1電極154が形成された基板153の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極154が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層159を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0044】
絶縁層159がパターニングされた基板153を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持台及び静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層155を、表示領域の第1電極154の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層155は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層155は表示領域151よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0045】
次に、正孔輸送層155までが形成された基板153を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持台及び静電チャックで保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板153の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層156Rを成膜する。
【0046】
発光層156Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層156Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層156Bを成膜する。発光層156R、156G、156Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域151の全体に電子輸送層157を成膜する。電子輸送層157は、3色の発光層156R、156G、156Bに共通の層として形成される。
【0047】
電子輸送層157まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極158を成膜する。
【0048】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層140を成膜して、有機EL表示装置150が完成する。
【0049】
絶縁層159がパターニングされた基板153を成膜装置に搬入してから保護層140の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本実施例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0050】
<本実施例に係る成膜装置の優れた点>
本実施例に係る成膜装置1によれば、第2の支持部材71を設けたことで、静電チャック31に基板Sが吸着される前の状態で、基板Sの撓みを抑制することができる。これにより、静電チャック31に対して、基板Sを安定した状態で吸着させることができる。すなわち、基板Sが、波打ったり一部が変形したりした状態で静電チャック31に吸着してしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:成膜装置 10:チャンバ 11:ベース部材 12:支持プレート 20:成膜源 30:第1の昇降機構 31:静電チャック 31a:電極 32:保持部材 32a:昇降プレート 33:軸部材 34:駆動源 40:第2の昇降機構 41:第1の支持部材 42:軸部材 43:駆動源 50:マスク調整機構 51:支柱部 52:マスク台受け部 53:磁気発生用コイルボックス 54:マスク台 55:磁石 56:支持部材 57:軸部材 58:駆動源 60:第4の昇降機構 61:磁気吸着部材
62:保持部材 63:駆動源 70:駆動機構 71:第2の支持部材 71a:ラック 71b:接触部 72:ラックアンドピニオン機構 72a:ピニオン 72b:軸部材 72c:駆動源 73:ボールネジ機構 73a:ボールネジ 73b:駆動源
73c:ナット 73d:ガイド部材 80:ハンド部 90:制御装置 C:カメラ
M:マスク S:基板