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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006623
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】冷凍喫食用フラワーペースト
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20240110BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240110BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20240110BHJP
【FI】
A23G3/34
A23L7/10 Z
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107699
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】岡本 千恵
(72)【発明者】
【氏名】福釜 佳行
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 聡
【テーマコード(参考)】
4B014
4B023
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GG14
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP12
4B023LC05
4B023LE26
4B023LK05
4B023LK07
4B023LK08
4B023LP15
4B032DB40
4B032DK12
4B032DK14
4B032DK18
4B032DK67
4B032DP73
(57)【要約】
【課題】冷凍温度域でもソフトで滑らかな食感であり、ベーカリー製品フィリング用に適した冷蔵から常温の温度域の物性を兼ね備えた、冷凍喫食用フィリング材を提供すること。
【解決手段】対水糖濃度が50~199質量%であることを特徴とする冷凍喫食用フラワーペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対水糖濃度が50~199質量%であることを特徴とする冷凍喫食用フラワーペースト。
【請求項2】
糖類の含有量が20~50%であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍喫食用フラワーペースト。
【請求項3】
糖組成における単糖類と2糖類の合計量の割合が51~95質量%であることを特徴とする請求項2に記載の冷凍喫食用フラワーペースト。
【請求項4】
油脂の含有量が5~29質量%であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍喫食用フラワーペースト。
【請求項5】
使用油脂のSFCが0℃で10未満であることを特徴とする請求項4に記載の冷凍喫食用フラワーペースト。
【請求項6】
セルロースを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍喫食用フラワーペースト。
【請求項7】
ベーカリー生地フィリング用であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍喫食用フラワーペースト。
【請求項8】
請求項1に記載の冷凍喫食用フラワーペーストをフィリングしてなるベーカリー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍したまま食べてもソフトな食感を有する、冷凍喫食用フラワーペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の嗜好の多様化から、これまでにないジャンルのベーカリー製品が次々と登場するようになり、新しい食感を付与するなど、意外性のある素材を組合せた製品が販売されている。近年では、通常、常温で食べるベーカリー製品を0~10℃程度のチルド条件で保存して食べるパン(チルドパン)が登場し人気を博している。ベーカリー製品の冷蔵保存は、澱粉質の老化が最も進行しやすい条件として敬遠されていたものであったため、チルドパンは驚きとともに受け入れられ、現在では一つの新しいジャンルを形成しつつある。
【0003】
一方、長期の保存を目的として、一度焼成したベーカリー製品を冷凍保管し、喫食時に解凍したり、再焼成したりすることは一般に行われていたものの、冷凍中のベーカリー製品、とくに水分含量の高いパン類やフィリングクリームは喫食不可能なほどの硬度となる場合もあることから、冷凍したまま食べることは全く想定されてこなかった。しかし、最近になり、ベーカリー製品の種類を選択したり、フィリングクリームに含まれる気泡の量を調整したりすることで冷凍したままであっても軽い食感とした製品が販売され、注目を集めている。ベーカリー製品の冷凍は、常温では賞味期限の短いものを長期にわたって保存できるほか、再焼成といった手間も必要ないことから、流通の面でもメリットが大きく、今後の期待が大きいものである。
【0004】
しかし、この「冷凍で食べるベーカリー製品」の検討において、ベーカリー生地に対する改良検討は多く行われてきたがフィリングクリームに対する検討は行われてこなかった。これは、上記のようにフィリングクリームに含まれる気泡の量を調整することで冷凍したままであっても軽い食感を得ることは容易だったからであり、またたとえ硬い食感であっても口溶けのよいアイスクリームやシャーベットなどの氷菓をそのままフィリングクリームとして使用するであることから違和感なく受け入れられていたためである。
【0005】
しかし、気泡の量を調整する方法では軽い食感ではあるが脆いためクリームのような滑らかな食感が得られないことに加え、焼込フィリングに使用すると突沸により焼流れや破裂を起こすため、このような用途には使用できないという問題があった。またアイスクリームやシャーベットなどの氷菓は、口溶けは優れるものの食感が硬く、ソフト性やなめらかさに極めて乏しいことに加え、0度を超えると融解してしまうためにベーカリー製品へのフィリング作業は焼成後に十分に冷えてからしかフィリングすることができず、もちろん焼込フィリングに使用することはそもそも不可能である。さらには氷菓は滑らかなクリーム状の物性であるのは製造直後だけであるため、フィリング作業時間も限られるなど、作業性が極めて悪い。
【0006】
このため、フィリングの美味しさと一緒になった菓子パンや、包餡成形後に焼成するあんぱんやクリームパンなどのベーカリー製品などでは、大量のフィリング材を必要とすることもあり、フィリングクリーム自体を冷凍状態でもソフトで滑らかな食感とする必要がある。
【0007】
このような冷凍状態でもソフトで滑らかな食感のクリームについては、単糖類や二糖類、あるいは糖アルコールを使用し、配合水の等量から2倍量の糖含量とすることで特定の水分活性としたクリーム(例えば特許文献1、2参照)や、配合水の2倍超の糖アルコールを使用したクリーム(例えば特許文献3参照)、さらには、澱粉を添加した加糖練乳や加糖濃縮乳に、ホイップしたクリームを混合したクリーム(例えば特許文献4参照)が提案されている。
【0008】
しかし、特許文献1~3のクリームは甘味が強すぎる問題があることに加え、冷蔵から常温の温度域で液状から流動性であるため、フィリングの際に包餡成形は不可能であり、またトッピングやサンドでも流れ落ちてしまい安定したフィリング作業ができない。さらには、該クリームをフィリングしたベーカリー製品はフィリング作業中から冷凍保管の期間中、さらには解凍した場合にベーカリー生地部分に液糖成分が移行して、ベーカリー生地部分もべたついた食感になり、包餡成形の焼込フィリングに使用した場合など、潰れによる変形が生じてしまう。
【0009】
また、特許文献4のクリームもまた、冷蔵から常温の温度域で液状ではないものの、軟らかすぎる問題は同じであり、またこのクリームは気泡で保形性をだしているため、焼込フィリングに使用すると突沸により焼流れや破裂を起こすため、このような用途には使用できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭53-104767号公報
【特許文献2】特開昭60-153756号公報
【特許文献3】特開昭62-151140号公報
【特許文献4】特開平07-008174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、冷凍温度域でもソフトで滑らかな食感であり、ベーカリー製品フィリング用に適した冷蔵から常温の温度域の物性を兼ね備えた、冷凍喫食用フィリング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、対水糖濃度を一定範囲に調整したフラワーペーストが上記問題を解決可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、対水糖濃度が50~199質量%であることを特徴とする冷凍喫食用フラワーペースト類を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷凍喫食用フラワーペースト類は、冷凍温度帯においても可塑性を有するため、冷凍したまま食べてもソフトで滑らかな食感である。また、冷蔵から常温の温度域も一定の保形性があるためベーカリー製品フィリング時の作業性も良好であり、焼込フィリングとしての使用も可能であり、さらにはベーカリー製品への浸み込みなどの品質劣化がない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の冷凍喫食用フラワーペースト類について述べる。
本発明におけるフラワーペースト類とは、澱粉類が糊化した糊化澱粉によるボディーを有するものであり、例えば、フラワーペースト、カスタード等が挙げられる。
【0015】
上記澱粉としては、一般に食品に使用される澱粉類、例えば小麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉などの穀粉や、馬鈴薯澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、うるち米澱粉、餅米澱粉等の澱粉を挙げることができる。
なお、本発明では、冷凍下での糊感のないソフトな食感を得ることができる点で、澱粉の一部または全部に糊化膨潤抑制澱粉を使用することが好ましい。
【0016】
上記糊化膨潤抑制澱粉とは、澱粉を加熱糊化した際に澱粉粒子の膨潤が抑制されて澱粉粒形を残存させるように何らかの方法で加工した化工澱粉を、さらに糊化して得られるものである。
すなわち、この糊化膨潤抑制澱粉は、糊化澱粉であるにもかかわらず澱粉粒形を存置している点に特徴がある。
【0017】
上記糊化膨潤抑制澱粉としては、具体的には、糊化架橋澱粉、糊化老化澱粉、糊化湿熱処理澱粉、糊化乳化剤処理澱粉等が挙げられるが、本発明では、好ましくは糊化架橋澱粉、特に好ましくは糊化リン酸架橋澱粉を使用する。
【0018】
また、上記糊化膨潤抑制澱粉の原料澱粉としては、一般に食品に使用される澱粉、例えば馬鈴薯澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、うるち米澱粉、餅米澱粉等を挙げることができるが、本発明では、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ、餅米澱粉等のアミロペクチン含有量の高い原料澱粉(ワキシースターチ)使用することが好ましい。
【0019】
本発明において、澱粉類の含有量に占める糊化膨潤抑制澱粉の割合は、乾燥重量において、25~95質量%が好ましく、より好ましくは50~90質量%である。糊化膨潤抑制澱粉の割合が25質量%未満であると、添加量によっては冷凍下での糊感のないソフトな食感を得ることが難しくなることがあり、また、フラワーペースト類保存時に経日的に老化が進みやすくなるおそれがあり、95質量%超であると、添加量によってはフィリング時の十分な硬さが保てないことがある。
【0020】
なお、本発明のフラワーペースト類における澱粉類の含有量は1~10質量%、好ましくは1.5~7質量%、さらに好ましくは3.1~5.5質量%となる量である。澱粉として上記に挙げた穀粉類には、澱粉以外の成分(例えばたんぱく質)を含むものもあるが、本発明においては、斯かる穀粉類については、澱粉以外の成分も含めて澱粉類としてみなして澱粉類の含有量を計算する。
【0021】
本発明の冷凍喫食用フラワーペースト類は、対水糖濃度が50~199質量%、好ましくは50~149質量%、より好ましくは50~99質量%であることを特徴とする。上記対水糖濃度が50質量%未満であると、冷凍温度域でソフトな食感が得られないことに加え、冷蔵から常温の温度域でも硬いことからベーカリー製品へのフィリング時に作業性が極めて悪くなってしまう。また199質量%超であると、甘味が強くなりすぎることに加え、冷蔵から常温の温度域で流動状になってしまうことからベーカリー製品へのフィリング時に作業性が極めて悪くなってしまうことに加え、ベーカリー製品の生地部分へ浸み込んでしまう問題もある。
なお、ここでいう対水糖濃度とは、フラワーペースト類に含まれる水の質量(配合する水及び配合材料に由来する水分の合計量)に対する糖(配合するすべての糖)の質量の割合を示すものである。
【0022】
本発明のフラワーペースト類の糖類の含有量は、固形分として、好ましくは20~50質量%、より好ましくは25~49質量%、更に好ましくは30~45質量%である。糖類の含有量が20質量%未満では、冷凍温度域でソフトな食感が得られないことに加え、甘味が感じられなくなってしまう。また、50質量%超では、冷蔵から常温の温度域で軟らかくなりすぎてフィリング時の作業性が悪くなってしまうことに加え、甘味が強く感じやすい等の問題が生じる。
【0023】
上記糖類としては、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
【0024】
なお、本発明のフラワーペースト類では、糖組成における単糖類と2糖類の合計量の割合が51~95質量%であることが、冷凍温度域でのソフト性の点、および冷凍温度域での甘味の強さと感じ方の点で好ましく、より好ましくは70~95質量%、さらに好ましくは75~95質量%である。
【0025】
また、本発明のフラワーペースト類は、糊感の低い食感とすることが可能である点で、セルロースを含有するものであることが好ましい。
本発明で使用することのできるセルロースとしては微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、粉末セルロースなどが挙げられるが、上記効果が最も高い点で粉末セルロースが好ましい。
本発明のフラワーペースト類における上記粉末セルロースの含有量は、好ましくは0.1~9質量%、更に好ましくは0.5~2質量%である。
【0026】
また、本発明のフラワーペースト類の水の含有量は、好ましくは30~70質量%、さらに好ましくは35~55質量%である。ここでいう水の含有量とは、配合する水の他、配合材料に由来する水分を含めたものである。
【0027】
本発明のフラワーペースト類は、なめらかな食感とすることが可能である点で、油脂の含有量は、5~29質量%、好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。該油脂の含有量が4質量%未満であると、なめらかな食感が得られにくいことに加え、冷凍温度域で硬い食感となりやすい。また、40質量%を超えると、乳化安定性が悪化し、べとつきやすく、油分が分離しやすくなることに加え、フラワーペースト類の口溶けがワキシーになる等の問題、さらにはフラワーペースト類及びベーカリー生地を焼成する際に激しい油分離が発生する。
なお、本発明のフラワーペースト類に、油脂を含有する副原料を使用した場合は、上記油脂の含有量には、それらの副原料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0028】
上記油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。これらの中でも、冷凍温度域でよりソフトな食感が得られる点で、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油などの常温で液状である油脂を使用することが好ましい。
【0029】
本発明のフラワーペースト類は、配合油脂のSFC(固体脂含量)が、冷凍温度帯でよりソフトな食感とするために、0℃で10未満であることが好ましく、さらに好ましくは0~8%、最も好ましくは0~5%である。
上記SFCは、次のようにして測定する。即ち、配合油脂を60℃に30分保持し、油脂を完全に融解し、そして0℃に30分保持して固化させる。さらに25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に30分保持後、SFCを測定する。
【0030】
また、本発明のフラワーペースト類は、実質的にトランス酸を含まないことが好ましい。水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常、構成脂肪酸中にトランス酸が10~50質量%程度含まれている。
一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
ここでいう「実質的にトランス酸を含まない」とは、油脂の全構成脂肪酸中、トランス酸の含有量が好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であることを意味する。
【0031】
本発明のフラワーペースト類には、通常フラワーペースト類の原料として使用し得るその他の食品素材や食品添加物を使用することが可能であり、例えば、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、グリセリン脂肪酸エステル・グリセリン酢酸脂肪酸エステル・グリセリン乳酸脂肪酸エステル・グリセリンコハク酸脂肪酸エステル・グリセリン酒石酸脂肪酸エステル・グリセリンクエン酸脂肪酸エステル・グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド・レシチン・リゾレシチン等の乳化剤、全卵・卵黄・卵白・乾燥全卵・乾燥卵黄・乾燥卵白・酵素処理卵黄・酵素処理全卵などの卵類、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳・バターゼラム等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、ホエー蛋白濃縮物・乳脂肪球皮膜蛋白質・トータルミルクプロテイン等の乳蛋白や動物蛋白、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、酵素、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、野菜類、肉類、魚介類等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
次に、本発明のフラワーペースト類の好ましい製造方法について述べる。
本発明のフラワーペースト類は、対水糖濃度が50~199質量%となるように、澱粉類、糖類及び水を含有するフラワーペースト類原料を混合し、加熱し、冷却することによって得ることができる。
【0033】
以下、油脂を含有するフラワーペーストの製造を例に、具体的な製造方法を述べる。
まず、糖類及び水に、必要に応じ水溶性成分を添加、混合し、水相を得る。別途油脂に、必要に応じ油溶性成分を添加、混合し、油相を得る。上記水相及び油相は60℃以上に加温することが好ましい。上記水相に上記油相を乳化混合して予備乳化組成物を作成する。なお澱粉類は、作業性の点から、油相に添加するのが好ましい。
【0034】
次いで、得られた上記予備乳化組成物を、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、好ましくは圧力0~80MPaの範囲で均質化した後、加熱する。加熱は、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT、HTST、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理、あるいは直火等を用いた加熱調理により行なうことができる。加熱温度は60~130℃が好ましく、加熱時間は0.5~30分が好ましい。また、加熱後には必要により再度均質化してもよい。
【0035】
次いで、均質化した後、加熱した上記予備乳化組成物を冷却する。冷却は急速冷却、徐冷却等のいずれでもよく、冷却の前、又は後にエージングを行ってもよい。更に、得られた本発明のフラワーペースト類は、必要により、冷蔵状態もしくは冷凍状態で保存してもよい。
なお、気泡を含有する工程を含めてもよいが、特にベーカリー生地フィリング用として使用する場合は突沸や変形を防止するため、これを行わないことが好ましい。
【0036】
このようにして得られた本発明のフラワーペースト類は、ベーカリー製品のフィリング材として広く使用することができる。
上記のベーカリー製品としては、例えば、クッキー、パイ、シュー、サブレ、スポンジケーキ、バターケーキ、ケーキドーナツ、蒸しケーキなどのケーキ類や、食パン、フランスパン、デニッシュ、スイートロール地、イーストドーナツ、蒸しパン等のパン類が挙げられる。
【0037】
フィリング方法としては、ベーカリー生地にフィリングしてから加熱してベーカリー製品とする方法と、ベーカリー生地を加熱後のベーカリー製品にフィリングする方法があるが、本発明のフラワーペースト類はフィリング時にも一定の硬さがあり、また常温から加熱時においても一定の保形性を有することから、ベーカリー生地にフィリングしてから加熱してベーカリー製品とする方法、すなわちベーカリー生地フィリング用であることが好ましい。
【0038】
ベーカリー生地にフィリングする方法としては、トッピング、サンド、注入、練り込み、折り込み、包餡等の方法があり、いずれの方法でも使用することができるが、包餡によることが好ましい。
なお、加熱後のベーカリー製品にフィリングする方法としては、トッピング、サンド、注入などの方法があり、いずれの方法でも使用することができる。
【0039】
次に、本発明のベーカリー製品について述べる。
本発明のベーカリー製品は、上記本発明のフラワーペースト類をフィリング材として使用したベーカリー製品である。
フィリング方法については上述のとおりである。
ベーカリー生地をベーカリー製品とする際の加熱方法としては焼成、フライ、蒸し、蒸し焼きなどの方法があるが、適宜組み合わせて行うことも可能である。
【0040】
焼成する場合の加熱条件は、通常のベーカリー製品と同様、160~250℃、特に170~220℃で行なうのが好ましい。
フライする場合の加熱条件は、通常のドーナツ等と同様、160~250℃、特に170~220℃で行なうのが好ましい。
蒸す場合の蒸し条件は、通常の蒸しケーキ等と同様、好ましくは80~120℃、特に90~100℃、湿度は好ましくは90~100%、さらに好ましくは95~100%で行うのが好ましい。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。
【0042】
<ペースト状フラワーペーストの製造>
〔実施例1〕
60℃に加温した菜種液状油(0℃におけるSFCは0)10質量%に、ゼラチン0.5質量%、ワキシーコーン由来の糊化リン酸架橋澱粉2.5質量%及び小麦粉1質量%を添加し分散させて油相とした。水33.4質量%、上白糖15質量%、高マルトース液糖(固形分75%、糖組成中に単糖と2糖類を合計して65%含有)25質量%、脱脂粉乳(乳糖53%含有)7.5質量%、卵黄(水分48質量%)5質量%、及び、香料0.1質量%を60℃で加熱混合し水相とした。この油相と水相とを60℃で乳化し、予備乳化物を得た。この予備乳化物を圧力3MPaで均質化し、加熱殺菌して厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填した。これを22℃まで冷却し、ペースト状である、本発明のフラワーペーストAを得た。得られたフラワーペーストAの詳細は表1に示した。
【0043】
〔実施例2〕
実施例1で使用した菜種液状油に代えてパーム油(0℃におけるSFCは68)を使用した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストBを得た。得られたフラワーペーストBの詳細は表1に示した。
【0044】
〔実施例3〕
上白糖15質量%を5質量%に変更し、水33.4質量%を43.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストCを得た。得られたフラワーペーストCの詳細は表1に示した。
【0045】
〔実施例4〕
上白糖15質量%を5質量%に、高マルトース液糖25質量%を40質量%に、水33.4質量%を28.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストDを得た。得られたフラワーペーストDの詳細は表1に示した。
【0046】
〔実施例5〕
上白糖15質量%を5質量%に、高マルトース液糖25質量%を45質量%に、水33.4質量%を23.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストEを得た。得られたフラワーペーストEの詳細は表1に示した。
【0047】
〔実施例6〕
上白糖15質量%を5質量%に、高マルトース液糖25質量%を50質量%に、水33.4質量%を18.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストFを得た。得られたフラワーペーストFの詳細は表1に示した。
【0048】
〔実施例7〕
上白糖15質量%を無添加に、高マルトース液糖25質量%を65質量%に、水33.4質量%を8.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストGを得た。得られたフラワーペーストGの詳細は表1に示した。
【0049】
〔実施例8〕
菜種液状油10質量%を20質量%に、水33.4質量%を23.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストHを得た。得られたフラワーペーストHの詳細は表1に示した。
【0050】
〔実施例9〕
菜種液状油10質量%を25質量%に、水33.4質量%を18.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストIを得た。得られたフラワーペーストIの詳細は表1に示した。
【0051】
〔実施例10〕
菜種液状油10質量%を30質量%に、水33.4質量%を13.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストJを得た。得られたフラワーペーストJの詳細は表1に示した。
【0052】
〔実施例11〕
油相に粉末セルロース1質量%を添加し、水33.4質量%を32.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で本発明のフラワーペーストKを得た。得られたフラワーペーストKの詳細は表1に示した。
【0053】
〔比較例1〕
上白糖15質量%を無添加に、水33.4質量%を48.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で比較例のフラワーペーストLを得た。得られたフラワーペーストLの詳細は表1に示した。
【0054】
〔比較例2〕
上白糖15質量%を無添加に、高マルトース液糖25質量%を70質量%に、水33.4質量%を3.4質量%に変更した以外は実施例1の配合・製法で比較例のフラワーペーストMを得た。得られたフラワーペーストMの詳細は表1に示した。
【0055】
〔比較例3〕
60℃に加温したパーム油25質量%に、キサンタンガム0.01質量部及びペクチン0.3質量部を添加し、油相とした。水30.59質量部、コーンスターチ4質量部、小麦粉3質量部、ゼラチン2質量部、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(固形分70%、糖組成中に単糖と2糖類を合計して96%含有)27質量部、脱脂粉乳3質量部、卵黄(水分48質量%)5質量部及び香料0.1質量%を60℃で加熱混合し、水相とした。この油相と水相とを60℃で乳化し、予備乳化物を得た。この予備乳化物を圧力3MPaで均質化し、加熱殺菌して厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填した。これを22℃まで冷却し、比較例のフラワーペーストNを得た。得られたフラワーペーストNの詳細は表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
<ベーカリー試験>
上記実施例1~11及び比較例1~3で得られたフラワーペーストA~Nを使用し、下記配合・製法により、フラワーペーストを包餡したベーカリー生地、及びベーカリー製品(ブッセ)を得た。
包餡する際には、各フラワーペーストを5℃で24時間冷蔵保存した後、これを絞り袋に入れ、板口金で生地に充填する際の物性を以下の評価基準に従って評価を行ない、その結果を表2に記した。
【0058】
得られたブッセについて、室温で30分放冷後、-20℃の冷凍庫で3週間冷凍保存し、冷凍庫から出して5分以内に冷凍状態のまま喫食した場合の食感、並びに、5℃の冷蔵庫で12時間調温して冷蔵状態で喫食した際の食感及び保形性について、以下の評価基準に従って評価を行ない、その結果を表2に記した。
【0059】
(ブッセ用生地の配合)
ブッセ用生地の原料として、薄力粉100質量部、グラニュー糖120質量部、全卵(正味)160質量部、ケーキ用起泡剤(株式会社ADEKA製「ジェノワーズ」)6質量部、製菓用液状油(株式会社ADEKA製「グラシュー」)10質量部、ベーキングパウダー1質量部を用いた。
【0060】
(ブッセ用生地の製法)
全卵、グラニュー糖、ケーキ用起泡剤をミキサーボールに入れ、縦型ミキサーを用いて中速で比重が0.35程度になるまで攪拌した後、薄力粉、ベーキングパウダーを加え、低速でよく混ぜ合わせた。この後、製菓用液状油を加え、比重が0.45程度になるまで攪拌し生地を調製した。
(ブッセの製法)
上記のようにして得られたブッセ用生地を、ロール紙を敷いた天板に流して、上火200℃、下火170℃で10分間焼成した。
焼成した生地をφ9.5cmのセルクルで抜き、わん型の焼き型に敷き入れ、ここにフラワーペーストを絞り、未焼成のブッセ用生地でフタをした。これを、95℃、6分30秒の条件で蒸し、ブッセを得た。
【0061】
・物性評価基準(板口金で生地に充填する際の物性)
◎:べたつきも無く、適度な硬さであり、極めて良好である。
○:やや軟らかいものの、良好である。
△:やや硬く、不良である。
×:硬く、不良である。
××:流動状であり、極めて不良である。
【0062】
・食感評価基準(冷凍状態のまま喫食した際の食感)
フラワーペースト部分の食感について、12人の専門パネラーにより、下記評価基準に従って官能評価を実施した。得られた12人のパネラーの合計点を評価点数として、結果を下記のようにして表2に示した。
54~60点:◎+、44~53点:◎、36~43点:○、18~35点:△、0~17点:×
【0063】
なお、評価に参加したパネラーは、本評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。また、本試験においては、評価結果が○以上のものを合格品として取り扱った。
5点:かみ通せる程度の硬さのソフト性で、なめらかな食感であり、すっと溶ける優れた口溶けを有する。
3点:かみ通せる程度の硬さのソフト性で、なめらかな食感であり、糊感のない良好な口溶けを有する。
1点:ざくざくとした硬い食感であり、滑らかさが感じられない。
0点:硬くて歯が立たない食感である。
【0064】
・食感評価基準(冷蔵状態で喫食した際の食感)
フラワーペースト部分の食感について、12人の専門パネラーにより、下記評価基準に従って官能評価を実施した。得られた12人のパネラーの合計点を評価点数として、結果を下記のようにして表2に示した。
54~60点:◎+、44~53点:◎、36~43点:○、18~35点:△、0~17点:×
【0065】
なお、評価に参加したパネラーは、本評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。また、本試験においては、評価結果が○以上のものを合格品として取り扱った。
5点:ソフトで滑らかな食感であり、口溶けも良好である。
3点:わずかに糊感があるが、なめらかな口当たりであり、口溶けも良好である。
1点:糊感があり、ねちゃつく食感である。
0点:流動状であり、べちゃつく食感である。
【0066】
・保型性評価基準(冷蔵状態で喫食した際の保形性)
保型性評価基準については、各ブッセを中央部で割断し、目視で確認した。
◎:冷凍開始前と同様の良好な保型性を有している。
○:冷凍開始前よりやや広がっているが、良好な保型性を有している。
○-:ややダレ気味であるが、生地に浸みこみは見られない。
△:ダレ気味であり、生地に浸みこみが多く、不良である。
×:流動状であり、生地に浸みこみが多く、極めて不良である。
【0067】
【表2】