(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066323
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】測定器およびこの測定器を用いたワーク測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 3/22 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G01B3/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175835
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】牧野 巧
(72)【発明者】
【氏名】菊池 真央
(72)【発明者】
【氏名】倉田 智陽
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA35
2F061DD22
2F061GG01
2F061SS03
2F061SS12
2F061SS14
(57)【要約】
【課題】 安価で使い勝手がよく、なおかつ、ワーク表面を連続倣い測定でも十分な精度と分解能を発揮できる測定器を提供する。
【解決手段】ダイヤルゲージは、本体ケースを貫通して軸方向に往復移動可能に設けられているスピンドルを有する。本体ケースの側面に突き出るようにステムが設けられている。ステムの内側にはスピンドルを軸受けするボールベアリングが設けられている。スピンドルの先端の測定子をワークの表面に接触させた状態でワークとダイヤルゲージとを相対移動させ、ワークの表面の凹凸形状、または、回転するワークの振れ量を連続倣い測定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体部を貫通して軸方向に往復移動可能に設けられているスピンドルを有する測定器であって、
前記筐体部は、前記スピンドルの直線移動をガイドする軸受け部を備え、
前記軸受け部は、ボールベアリングである
ことを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の測定器において、
前記筐体部の側面に突き出るように設けられ、前記スピンドルが挿通される筒孔を有する軸受筒部を有し、
前記軸受筒部の内周面と前記スピンドルの外周面との間に前記ボールベアリングが設けられている
ことを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項1に記載の測定器において、
前記スピンドルの先端部に取り付け可能であって、前記スピンドルの軸線に交差する方向に延在するレバー部の先端に測定子を有するレバー測定子を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の測定器を用いてワークを測定する測定方法であって、
前記スピンドルの先端の測定子をワークの表面に接触させた状態で前記ワークと当該測定器とを相対移動させて、
ワークの表面の凹凸形状、または、回転するワークの振れ量を連続倣い測定する
ことを特徴とするワーク測定方法。
【請求項5】
請求項3に記載の測定器を用いてワークを測定する測定方法であって、
前記レバー測定子の前記測定子をワークの表面に接触させた状態で前記ワークと当該測定器とを相対移動させて、
ワークの表面の凹凸形状、または、回転するワークの振れ量を連続倣い測定する
ことを特徴とするワーク測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
スピンドル直動式の小型測定器およびこの小型測定器を用いたワークの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
持ち運びに便利な小型測定器で、比較的安価で簡易ながらも高精度で分解能が高い測定器としててこ式ダイヤルゲージ(テストインジケータ)がある。てこ式ダイヤルゲージは、円周振れ、全振れ、平面度、平行度といった微小変位測定に優れ、製品の精密検査に使用される。
【0003】
てこ式ダイヤルゲージは、本体ケースに回転変位可能に軸支された軸状の測定子を有し、測定子の微小角度変位をてこの原理で拡大する。これにより、てこ式ダイヤルゲージは、高精度、高分解能の測定器となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
てこ式ダイヤルゲージ(テストインジケータ)は、高精度、高分解能の測定器なのであるが、その測定原理からどうしても測定範囲が微小に制限されるという欠点がある。てこ式ダイヤルゲージ(テストインジケータ)の測定範囲は、1mm程度であり、長めの測定子にしたとしても測定範囲は2mm程度が限界である。測定範囲が短い(狭い)測定器を使用するにあたっては、測定対象がその範囲内に制限されてしまうことはもちろんである。さらに、測定範囲が短い(狭い)測定器を使用するにあたっては、ワークと測定器とのセッティング(初期的な位置合わせ)においてワークの凹凸や振れ量が測定範囲を超えないように、厳密な調整が求められる。例えば、ユーザは、測定器(てこ式ダイヤルゲージ)をセッティングするにあたって、なるべく測定範囲の真ん中で初期位置を合わせるように測定器とワークとの相対位置や相対姿勢の調整が必要となる。したがって、高性能ではあるが測定範囲が極めて短いてこ式ダイヤルゲージを使用するには、測定前の準備段階に手間と時間を要し、測定効率が上がりにくいという問題が生じる。
【0006】
安価で使い勝手がよく、なおかつ、ワークの表面を連続倣い測定でも十分な精度と分解能を発揮できる測定器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の測定器は、
筐体部を貫通して軸方向に往復移動可能に設けられているスピンドルを有する測定器であって、
前記筐体部は、前記スピンドルの直線移動をガイドする軸受け部を備え、
前記軸受け部は、ボールベアリングである
ことを特徴とする。
【0008】
本発明では、
前記筐体部の側面に突き出るように設けられ、前記スピンドルが挿通される筒孔を有する軸受筒部を有し、
前記軸受筒部の内周面と前記スピンドルの外周面との間に前記ボールベアリングが設けられている
ことが好ましい。
【0009】
本発明では、
前記スピンドルの先端部に取り付け可能であって、前記スピンドルの軸線に交差する方向に延在するレバー部の先端に測定子を有するレバー測定子を備える
ことが好ましい。
【0010】
本発明の測定方法は、
前記測定器を用いてワークを測定する測定方法であって、
前記スピンドルの先端の測定子をワークの表面に接触させた状態で前記ワークと当該測定器とを相対移動させて、
ワークの表面の凹凸形状、または、回転するワークの振れ量を連続倣い測定する
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の測定方法は、
前記測定器を用いてワークを測定する測定方法であって、
前記レバー測定子の前記測定子をワークの表面に接触させた状態で前記ワークと当該測定器とを相対移動させて、
ワークの表面の凹凸形状、または、回転するワークの振れ量を連続倣い測定する
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】実験に使用した構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を説明する。
実施形態の説明としては、デジタル表示式のダイヤルゲージ100を例に説明する。
デジタル表示式のダイヤルゲージ100は、デジタルダイヤルゲージや、インジケータ、デジタルインジケータ、テストインジケータ、リニアゲージ、などと呼称されることもある。
また、本実施形態では、デジタルダイヤルゲージ100を例に説明するが、本発明は、スピンドル300の変位を歯車輪列で拡大して指針と文字盤とで表示するアナログ表示式のダイヤルゲージ(アナログダイヤルゲージ)100にも適用できる。
【0014】
図1は、ダイヤルゲージ100の外観図である。
ダイヤルゲージ100は、本体ケース(筐体部)200と、本体ケース200に軸方向進退可能に設けられたスピンドル(直動可動部材)300と、スピンドル300を先端側に向けて付勢する付勢手段(例えばバネ)(不図示)と、スピンドル300の変位(位置)を検出する変位検出器(エンコーダ)(不図示)と、を備えている。
【0015】
本体ケース200は、全体的に円筒形状のケース体である。本体ケース200の内側に前記付勢手段、変位検出器が設けられ、その他、演算処理や表示制御に必要な電気回路(電装部)が本体ケース200に収容されている。本体ケース200の正面蓋体にデジタル表示部210と各種のボタン220が配設されている。ボタン操作によって各種のモード選択ができる。
【0016】
例えば、測定モードであれば、デジタル表示部210の数値は測定値そのものである。測定値は、例えば、校正によって設定された基点(原点)からの差として表される。あるいは、ホールドモードのときは、測定値(表示値)を固定して表示する。例えば、最大値(Max)をホールド表示する場合や、最小値(Min)をホールド表示する場合がある。あるいは、最大値と最小値との真ん中の値(ここではこれを中間値とする)をホールド表示(中間値ホールド表示)することもできる。さらに、振れ測定における振れ幅(最大値-最小値、Tir)をホールド表示することもできる。
【0017】
スピンドル300は、先端に測定子(接触球)310を有し、本体ケース200を貫通するように軸方向進退可能に設けられている。(ダイヤルゲージのスピンドルは回転するわけではないが、スピンドルという名称が定着しているのでこれを用いる。スピンドルをロッドと言い換えてもよい。)
本体ケース200の上側側面に貫通孔(上貫通孔)があり、この上貫通孔に筒状の上側ブッシュ(上側軸受筒部)230が取り付けられ、上側ブッシュ230を閉塞するようにキャップ231が設けられている。ここでは、上側ブッシュ230は、いわゆる滑り軸受である。
【0018】
本体ケース200の下側側面に貫通孔(下貫通孔)があり、この下貫通孔には、筒状の下側ステム(下側軸受筒部)240が取り付けられている。
【0019】
ここで、下側ステム240とスピンドル300との間の軸受けは、ボールベアリング(リニアボールベアリング)250である。すなわち、下側ステム240とスピンドル300との間に、リテーナ251と、リテーナ251に保持されたボール252と、が配置されている。
図2は、ボールベアリング(リニアボールベアリング)250を例示した図である。ボールベアリング250によって、スピンドル300は、隙間(ガタ)が全くなく、かつ、極めて低摩擦で軸受け案内されている。
【0020】
図3は、本実施形態の使用例を例示する図である。
旋盤20で円筒(または円柱)形のワークWを回転させながら、ワークWの振れ(円周振れまたは全振れ)を測定する。ダイヤルゲージ100をスタンド10に取り付け、ワークWを旋盤20のチャックに取り付ける。
図3では,本体ケース200の背面の取付部201でスタンド10に取り付けているが、下側ステム240(の外側面)をホールドすることによってスタンド10に取り付ける方式もある。
ダイヤルゲージ100のスピンドル300(の延長線)が旋盤20の回転軸(の延長線)に対して垂直になるようにする。旋盤20の回転軸が水平であるならば、ダイヤルゲージ100のスピンドル300が鉛直線に平行になるようにダイヤルゲージ100をスタンド10に取り付ける。そして、鉛直線に沿って真上から、スピンドル300をワークWにアプローチさせるようにする。
【0021】
この状態で円筒(または円柱)形のワークWを回転させる。
スピンドル300の測定子310がワークWの表面に当たった状態でスピンドル300がワーク表面に追従し、ワークWの振れ(円周振れまたは全振れ)を測定する。旋盤20で回転するワークWの振れ量が仮に数mm程度であったとしても、ダイヤルゲージ100の測定範囲に十分に入る。したがって、ユーザは、測定器(ダイヤルゲージ)100をセッティングするにあたって、なるべく測定範囲の真ん中で初期位置を合わせようという気遣いは不要である。また、下側ステム240に設けたボールベアリング250によってスピンドル300の摺動案内を全く隙間がなく、かつ、極めて低摩擦としたから、スピンドル300が微小変位にも滑らかに追従し、高い分解能でワークWの振れ量を検出できる。
【0022】
(第二実施形態)
第二実施形態は、上記第一実施形態のダイヤルゲージにレバー測定子を付設した形態である。
レバー測定子400は、ダイヤルゲージ100の補助治具である。
レバー測定子400は、スピンドル300の軸線に交差する方向に延在するレバー部420を有し、レバー部420の先端に測定子430を有する。
図4は、レバー測定子400の外観図である。レバー測定子400は、スピンドル300の先端にネジ等によって着脱できる台座410と、この台座410に自由回転可能かつ所望の角度で固定することができるように支持された軸体であるレバー部420と、を有する。レバー部420の先端に測定子(接触球)430が設けられている。
【0023】
レバー部420の角度は、スピンドル300に交差する方向に自由に調整できる。したがって、ワークWの形状や配置の都合でスピンドル300を測定対象ポイントに垂直に当てられないような場合であっても(例えば孔の内側面)、レバー測定子400を差し入れることで測定することができるようになる。また、レバー部420は交換でき、例えば長さが異なるレバー部420に交換することでスピンドル300から離れた測定点であっても測定することができるようになる。
【0024】
本発明では、ダイヤルゲージのスピンドルをボールベアリングで軸受けし、スピンドル300の摺動案内を全く隙間がなく、かつ、極めて低摩擦としたから、スピンドル300が微小変位にも滑らかに追従し、高い分解能でワークWの微小凹凸や振れ量を検出できる。
この作用効果は、スピンドルの先端にレバー測定子を付設した場合も維持され、レバー測定子を使ってスピンドルの軸から離れた測定点を測定するような場合でも有効である。すなわち、レバー測定子を用いることで、スピンドルの軸から離れた測定点に対して、ワークの表面の凹凸形状または回転するワークの振れ量を連続倣い測定した場合でも、高い分解能、精度を発揮できる。そして、スピンドル直動方式であるダイヤルゲージ(インジケータ)には、てこ式ダイヤルゲージよりも長ストロークであるという利点がある。ダイヤルゲージ(インジケータ)の測定範囲としては、例えば5mmから10mm、さらにもっと長いものもある。よって、本発明の測定器(ダイヤルゲージ)によれば、スピンドルが直動するダイヤルゲージ(インジケータ)の利点である長ストロークを活かしつつ、てこ式ダイヤルゲージのように内側面のような測定しづらい箇所の表面性状測定を行うことができるようになる。
【0025】
従来、ダイヤルゲージというのは、スピンドルの上下動で、スピンドルの軸線上にあるワークにスピンドル先端の測定子を突き当ててワークの表面を測定することを想定している。スピンドルの軸線上にあるワークに突き当てる使用法であれば、その分解能、精度は、てこ式ダイヤルゲージと同等であり、連続的な表面倣い測定であっても0.01mmや0.001mmの分解能、精度をもつ。また、レバー測定子はダイヤルゲージの補助治具としてあったのであるが、従来のダイヤルゲージにレバー測定子を付設したものは、マスタ(あるいはゲージブロック)とワークWとの比較寸法測定のように一回ごとの測定でスピンドルの上下動が単発であることを主として想定しており、レバー測定子を付設した状態でワークW表面を連続倣い測定することは想定されていなかった。
ところが、近年、部品加工精度の要求が高くなっていること、部品検査項目が増加していること、人手が足りないこと、測定効率の向上が求められること、など部品検査の多種多様の要請から、長ストロークでてこ式ダイヤルゲージの代わりになるものとして、直動式ダイヤルゲージにレバー測定子を付けたものを使用する場合があった。また、ユーザによっては、直動式ダイヤルゲージはもっているが、てこ式ダイヤルゲージは持っていない場合もあるし、てこ式ダイヤルゲージは、てこの原理を用いる都合上測定子の長さごとに複数機種を揃えなければならず、費用と保管の負担がやや大きいということもある。しかし、従来のダイヤルゲージにレバー測定子を付設したものでワーク表面や回転するワークの振れ量を連続倣い測定した場合、分解能、精度がてこ式ダイヤルゲージに及ばないということがあった。
【0026】
本発明者らは、多種類の測定器とダイヤルゲージとの対比試験を行い、また、異種の測定器の部品を交換してみて分解能および精度の比較試験を行い、原因を調べた。
ここで、発明者らは、ダイヤルゲージのスピンドルの先端にレバー測定子を付けた場合、測定子とワークとの接点がスピンドル中心軸からずれた位置にあり、このため、すべり軸受に横方向の負荷がかかり、スピンドルの作動の抵抗が増加して精度に悪影響を及ぼす恐れがあることに気付いた。すなわち、従来のダイヤルゲージでは、スピンドルの軸受けは上側ブッシュも下側ステムもすべり軸受けとなっているが、すべり軸受けの場合、スピンドルとステム(あるいはブッシュ)との間には摩擦がある程度働く。また、すべり軸受けには原理的に隙間があり、この隙間が数ミクロン(μm)~数十ミクロン(μm)あるので、スピンドルが押し上げられたり押し下げられたりする軸方向進退の動作のときにわずかに傾斜が加わってしまう。とくに、レバー測定子を用いたときのように、測定子とワークとの接点がスピンドル軸から離れている場合には、ワークW(ワーク表面)からレバー測定子400の測定子430に掛かる力の方向はスピンドル300の軸線方向に一致するわけではなく、少しズレる。したがって、ダイヤルゲージの通常の測定動作でスピンドル300の軸線に沿って力が掛かる場合に比べ、レバー測定子400を使用する場合には、スピンドル300と軸受け(ステムやブッシュ)との隙間(ガタ)の影響が顕著に表れやすいと考えられる。そこで、本発明者らは、ダイヤルゲージ100の上側ブッシュ230と下側ステム240とのうちの一方、ここでは下側ステム240をボールベアリング250(転がり軸受け)とすることで、レバー測定子を用いるような測定の場合でも、長ストロークかつ高分解能高精度で微小変位を連続倣い測定できるダイヤルゲージ100を完成した。
【0027】
(実験例)
図5、
図6、
図7を参照して実験例を説明する。
図5は、実験に使用した構成を説明するための図である。
実験にあたっては、本発明の構成として上記第2実施形態で説明したダイヤルゲージ100を用意した。すなわち、下側ステム240にボールベアリング250を配置し、スピンドル300の先端にレバー測定子400を取り付けたダイヤルゲージ100である。ここでは、レバー測定子400のレバー部420の角度は90°に固定した。
比較対象(比較例)としては、従来のダイヤルゲージにレバー測定子400を取り付けたものである。すなわち、下側ステムはスピンドル300を滑り軸受けで軸受けしている。
【0028】
円筒形のワークWを旋盤20で回転させ、ワークWの振れ量を連続倣い測定で測定する。
ワークWの振れ量は予め既知であり、
図6の第1実験例ではワークWの振れ量は50μmである。また、
図7の第2実験例ではワークWの振れ量は10μmである。そして、ワークWの回転速さを20rpmから196rpmに変えながら、それぞれの測定器でワーク振れ量を測定した。
実験例では、円筒(円柱)ワークの外側面を測定したが、内周面を測定しても実験結果の意味合いは同じである。
【0029】
従来のダイヤルゲージ(比較例)では、ワークWの振れ量が50μmである第1実験例でも、ワークWの振れ量が10μmである第2実験例でも、測定誤差は10μm程度あり、ワークWの振れ量を正確に測定できているとは言い難い。
一方、本発明の構成によれば、第1実験例(
図6)でも第2実験例(
図7)でも測定誤差は2μm以内であり、これはワークWの回転が速くても遅くても変わらない。
【0030】
すなわち、本発明の構成によれば、スピンドルの先端にレバー測定子を付設したダイヤルゲージを用い、ワークWの表面の凹凸形状や回転するワークWの振れ量を連続倣い測定で高精度かつ高分解能に測定できる。また、スピンドル直動式のダイヤルゲージ100であれば、スピンドル300のストロークを長くとれるので、測定範囲が広くなる。
【0031】
本発明の測定器は、基本的にはダイヤルゲージ100の構成を踏襲しているから、ボールベアリング250の分のコスト増はあるものの、長ストロークで高精度、高分解能な他の測定装置に比べれば格段に安価である。
また、ダイヤルゲージ100は、正面蓋体にデジタル表示部210(あるいは指針と文字盤からなるアナログ表示部)が付いており、ダイヤルゲージ100だけを持ち運べばこれだけで測定ができる。
例えば、測定器本体部に加えて、制御ユニットや測定値検出カウンタ等を合わせて使用しないと測定できない他の測定装置に比べて本発明の測定器は取り扱いが簡便である。さらに、本発明の測定器は、長ストロークで高精度、高分解能であり、ワークWの表面凹凸や回転の振れなど微小変位を連続倣い測定することができるのである。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
下側ステム(下側軸受筒部)の内側にボールベアリングを設ける例を説明したが、上側ブッシュ(上側軸受筒部)の内側にボールベアリングを設けるようにしてもよい。あるいは、下側ステム(下側軸受筒部)と上側ブッシュ(上側軸受筒部)との両方にボールベアリングを設けてもよい。
実施形態の説明中で上や下というのは説明が分かりやすいようにつけたもので権利範囲を限定する意図はない。本明細書で下側ステムや上側ブッシュの名称を使用しているのはダイヤルゲージ部品の慣用的な名称にならっているもので、請求項にいう軸受筒部には下側ステムとしての下側軸受筒部も上側ブッシュとしての上側軸受筒部も含まれる。
【符号の説明】
【0033】
100 ダイヤルゲージ
200 本体ケース
210 表示部
220 ボタン
230 上側ブッシュ
231 キャップ
240 下側ステム
250 ボールベアリング
251 リテーナ
252 ボール
300 スピンドル
310 測定子
400 レバー測定子
410 台座
420 レバー部
430 測定子
20 旋盤
10 スタンド
W ワーク