(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066502
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】トリアルコキシシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/04 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
C07F7/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185777
(22)【出願日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2022174914
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】七里 明音
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ21
4H049VR11
4H049VR43
4H049VS99
4H049VU20
4H049VV05
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】簡易な手法でトリアルコキシシランを効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】ケイ素粒子とアルコール溶媒とを粉砕装置を用いて湿式で粉砕混合して、メカノケミカル反応によりトリアルコキシシランを得る反応工程を含み、アルコール溶媒は、炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコール溶媒である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアルコキシシランの製造方法であって、
ケイ素粒子とアルコール溶媒とを粉砕装置を用いて湿式で粉砕混合して、メカノケミカル反応により前記トリアルコキシシランを得る反応工程を含み、
前記アルコール溶媒は、炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコール溶媒であることを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のトリアルコキシシランの製造方法において、
前記アルコール溶媒は、イソプロピルアルコール又は2-ブタノールであることを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のトリアルコキシシランの製造方法において、
前記粉砕装置は、容器内に粉砕媒体としての複数のボールを有する遊星ボールミルであって、
前記反応工程は、200rpm~580rpmの回転数で粉砕混合する工程であることを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のトリアルコキシシランの製造方法において、
前記容器及び前記各ボールは、ステンレス鋼製であることを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のトリアルコキシシランの製造方法において、
前記反応工程は、前記ケイ素粒子及び前記アルコール溶媒と共に銅粒子を粉砕混合する工程であることを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のトリアルコキシシランの製造方法おいて、
前記銅粒子の量は、4.2原子%~40原子%であることを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のトリアルコキシシランの製造方法において、
前記反応工程の前に、前記ケイ素粒子と前記銅粒子とを粉砕装置を用いて乾式で粉砕混合させる前処理工程を含むことを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のトリアルコキシシランの製造方法において、
前記前処理工程は、容器内に粉砕媒体としての複数のボールを有する遊星ボールミルにより、前記ケイ素粒子と前記銅粒子とを粉砕混合させる工程であって、前記銅粒子の量が多いほど、高い回転数で粉砕混合する工程であることを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載のトリアルコキシシランの製造方法において、
前記反応工程における粉砕時間は、30分間~140分間であることを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1つに記載のトリアルコキシシランの製造方法において、
前記反応工程は、前記ケイ素粒子及び前記アルコール溶媒と共に金属ハロゲン化物を粉砕混合する工程であることを特徴とするトリアルコキシシランの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、トリアルコキシシランの製造方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシシランは、シリコン樹脂の基幹材料やコーティング剤の材料等として有用である。アルコキシシランは、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、及びテトラアルコキシシランとあるが、特にトリアルコキシシランは、モノアルコキシシランやジアルコキシシランと比べて化学的に安定であるとともに、反応性が高いケイ素-水素結合を有するため、テトラアルコキシシランと比較してもその需要性は高く、安価で効率の良い製造方法が求められている。
【0003】
従来、トリアルコキシシランの製造方法としては、クロロシラン類と低級アルキルアルコールを原料とする方法が知られているが、クロロシラン類がコスト高である上、目的とするアルコキシシランの他に塩化水素が副生するため、生成物の精製が困難で、かつ反応装置が腐食する等の欠点があった。
【0004】
一方、特許文献1のように、ケイ素と銅とを接触させて熱処理を施し、ケイ素とアルコールとを気相反応させてトリアルコキシシランを生成する方法も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ケイ素の表面に形成されている酸化膜をフッ化水素酸によるエッチングにより除去する必要があり、手間がかかるだけでなく、危険性を伴っている。
【0007】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするとこは、簡易な手法でトリアルコキシシランを効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題に対して、本発明者らが鋭意検討したところ、ケイ素粒子とアルコールとを機械的エネルギーを利用して粉砕混合することで、メカノケミカル反応によりアルコキシシランが得られることが分かった。特に、立体的な構造を有するアルコールを用いれば、トリアルコキシシランが生成され易いことが分かった。
【0009】
すなわち、前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、トリアルコキシシランの製造方法を対象として、ケイ素粒子と溶媒とを粉砕装置を用いて湿式で粉砕混合して、ケイ素粒子とアルコール溶媒とを粉砕装置を用いて粉砕混合して、メカノケミカル反応により前記トリアルコキシシランを得る反応工程を含み、前記アルコール溶媒は、炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコール溶媒である、という構成とした。
【0010】
この構成によると、アルコールが直鎖状ではなく分岐状であるため、アルコールは立体構造を有している。アルコールが立体構造を有していれば、立体構造が立体障害となって、ケイ素とアルコールとの反応が穏やかに進むため、生成されるアルコキシシランが、テトラ体に至ることなく、トリ体の状態に留まりやすくなると考えられる。したがって、前記の構成により、トリアルコキシシランを効率的に製造することができる。
【0011】
また、未処理のケイ素粒子の表面には、基本的に酸化膜が形成されているが、粉砕装置により粉砕すれば、酸化されていない面が露出し続けるため、ケイ素粒子から酸化膜を除去するエッチング処理を行うことなく、未反応のケイ素とアルコールとを反応させて、トリアルコキシシランを製造することができる。
【0012】
したがって、簡易な手法でトリアルコキシシランを効率的に製造することができる。
【0013】
前記トリアルコキシシランの製造方法において、前記アルコール溶媒として、イソプロピルアルコールを用いると、特に安価にトリアルコキシシランを効率的に製造することができる。
【0014】
また、本発明者らが、さらに検討したところ、粉砕装置として、容器内に粉砕媒体としての複数のボールを有する遊星ボールミルを用いて、200rpm~580rpmの回転数で粉砕混合すると、トリアルコキシシランをより効率的に製造することができることが分かった。
【0015】
すなわち、回転数が高すぎると、頻繁に機械的エネルギーが付与されるため、反応が進みすぎてテトラアルコキシシランが生成されやすくなる。一方で、回転数が低すぎると、機械的エネルギーが不足して、アルコキシシラン自体が生成されなくなるおそれがある。このため、200rpm~580rpmの回転数とすることで、効率的にトリアルコキシシランを製造することができる。
【0016】
前記トリアルコキシシランの製造方法において、前記容器及び前記各ボールは、ステンレス鋼製であってもよい。
【0017】
この構成によると、ステンレス鋼を構成する鉄、クロム、ニッケル、及びマンガン等が触媒として機能する。これにより、ケイ素とこれらの金属との間で電荷が授受されて、ケイ素にアルコキシ基が結合されやすい状態になる。この結果、効率的にトリアルコキシシランを製造することができる。
【0018】
前記トリアルコキシシランの製造方法において、前記反応工程は、前記ケイ素粒子及び前記アルコール溶媒と共に銅粒子を粉砕混合する工程であってもよい。
【0019】
この構成によると、ケイ素と銅との間で電荷を授受することで、ケイ素にアルコキシ基が結合されやすい状態にすることができる。これにより、効率的にトリアルコキシシランを製造することができる。
【0020】
前記トリアルコキシシランの製造方法において、前記銅粒子の量が4.2原子%~40原子%であると、特に効率的にトリアルコキシシランを効率的に製造することができる。
【0021】
前記トリアルコキシシランの製造方法において、前記反応工程の前に、前記ケイ素粒子と前記銅粒子とを粉砕装置を用いて乾式で粉砕混合させる前処理工程を含む、という構成でもよい。
【0022】
この構成によると、前処理工程により、ケイ素と銅との合金(銅シリサイド)が形成される。ここに特定アルコールを加えて更に粉砕混合することで、メカノケミカル反応により、アルコキシシランが効率的に生成される。このため、効率的にトリアルコキシシランを製造することができる。
【0023】
前記トリアルコキシシランの製造方法において、前記前処理工程は、容器内に粉砕媒体としての複数のボールを有する遊星ボールミルにより、前記ケイ素粒子と前記銅粒子とを粉砕混合させる工程であって、前記銅粒子の量が多いほど、高い回転数で粉砕混合する工程である、という構成でもよい。
【0024】
本願発明者らが、さらに検討したところ、前処理工程における粉砕混合の回転数は、銅粒子の量が多いほど高くした方が、トリアルコキシシランの収率が高くなることが分かった。このため、前処理工程における粉砕混合の回転数を、銅粒子の量が多いほど高い回転数とすることで、効率的にトリアルコキシシランを製造することができる。
【0025】
遊星ボールミルを用いて粉砕混合する前記トリアルコキシシランの製造方法において、トリアルコキシシランの製造方法において、前記反応工程における粉砕時間は、30分間~140分間である、という構成でもよい。
【0026】
本発明者らが、さらに検討したところ、遊星ボールミルを用いた粉砕時間を30分間~140分間とすると、トリアルコキシシランをより効率的に製造することができることが分かった。このため、粉砕時間を30分間~140分間とすることで、効率的にトリアルコキシシランを製造することができる。
【0027】
前記トリアルコキシシランの製造方法において、前記反応工程は、前記ケイ素粒子及び前記アルコール溶媒と共に金属ハロゲン化物を粉砕混合する工程である、という構成でもよい。
【0028】
この構成によると、ケイ素と金属ハロゲン化物との間で電荷を授受することで、ケイ素にアルコキシ基が結合されやすい状態にすることができる。これにより、効率的にトリアルコキシシランを製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、簡易な手法でトリアルコキシシランを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るトリアルコキシシランの製造方法において使用する遊星ボールミル装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の遊星ボールミル装置が備える容器の内部における材料と粉砕媒体の動作を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施形態2における遊星ボールミル装置が備える容器の内部における材料と粉砕媒体の動作を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施例1に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図5】
図5は、比較例1に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図6】
図6は、比較例2に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図7】
図7は、比較例3に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図8】
図8は、比較例4に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図9】
図9は、実施例2に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図10】
図10は、実施例3に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図11】
図11は、実施例4に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図12】
図12は、実施例5に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図13】
図13は、実施例6に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図14】
図14は、遊星ボールミルの回転数とトリイソポキシシランの収率及びテトライソポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【
図15】
図15は、遊星ボールミルの回転数とトリイソプロポキシシランの選択率及びテトライソプロポキシシランの選択率との関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施例7に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図17】
図17は、比較例5に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図18】
図18は、比較例6に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図19】
図19は、容器及び粉砕ボールの材質とトリイソプロポキシシランの収率及びテトライソプロポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【
図20】
図20は、銅の添加量とトリイソプロポキシシランの収率及びテトライソプロポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【
図21】
図21は、銅の添加量が18原子%のときにおいて、乾式での粉砕混合の際の遊星ボールミルの回転数とトリイソプロポキシシランの収率及びテトライソプロポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【
図22】
図22は、銅の添加量が40原子%のときにおいて、乾式での粉砕混合の際の遊星ボールミルの回転数とトリイソプロポキシシランの収率及びテトライソプロポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【
図23】
図23は、金属添加物の種類とトリイソプロポキシシランの収率及びテトライソプロポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【
図24】
図24は、実施例17に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図25】
図25は、実施例18に係るアルコキシシランのGC/MSのトータルイオンクロマトグラムである。
【
図26】
図26は、粉砕時間とトリイソプロポキシシランの収率及びテトライソプロポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【
図27】
図27は、粉砕時間とトリイソプロポキシシランの選択率及びテトライソプロポキシシランの選択率との関係を示すグラフである。
【
図28】
図28は、添加するハロゲン化合物の種類とトリイソプロポキシシランの収率及びテトライソプロポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【
図29】
図29は、塩化銅を添加したときの、粉砕時間とトリイソプロポキシシランの収率及びテトライソプロポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【
図30】
図30は、塩化銅を添加したときの、遊星ボールミルの回転数とトリイソプロポキシシランの収率及びテトライソプロポキシシランの収率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0032】
(実施形態1)
図1は、本実施形態1に係るトリアルコキシシランの製造方法において使用する粉砕装置としての遊星ボールミル装置1の構成を示す断面図である。
【0033】
本実施形態1では、遊星ボールミル1に、金属粒子としてのケイ素粒子と、溶媒としてのアルコールとを投入して、湿式で粉砕混合することでトリアルコキシシランを製造する方法である。特に、本実施形態1では、溶媒として炭素数が3以上でかつ分岐状の特定アルコールを用いる。すなわち、ケイ素粒子と特定アルコールとに、遊星ボールミル1を用いて摩擦や衝撃等による機械的エネルギーを付与する。この機械的エネルギーによるメカノケミカル反応により、ケイ素に特定アルコール由来のアルコキシ基を結合させて、トリアルコキシシランを製造する。なお、「粉砕混合」とは、金属粒子を粉砕しながら、金属粒子と溶媒とを混合することを意味する。
【0034】
遊星ボールミル装置1は、中心軸まわりに回転駆動される回転軸11と、回転軸11と一体回転するテーブル6と、テーブル6にケーシング13を介して回転自在に支持された2つの容器5(ミルポット)と、2つの容器5内にそれぞれ収容される複数個の粉砕媒体2(ボール)とにより構成されている。このテーブル6は、2つの容器5を回転自在に支持した状態で回転可能な支持部材として機能する。
【0035】
容器5は、ケーシング13に上方から挿入して固定される筒状の本体に上蓋を設けたものである。容器5は、上蓋を開けて粉砕媒体2及び材料(特に、ケイ素粒子と特定アルコール)が投入される構成となっている。容器5の大きさは特に限定されず、例えば、40cm3~100cm3の容積を有する容器が使用できる。また、容器5の材質も特に限定されず、例えば、ステンレス鋼(SUS)製、タングステンカーバイト(WC)製、及び二酸化ジルコニウム(ZrO2)製などを使用することができる。
【0036】
粉砕媒体2は、略球形状のものを使用することができる。粉砕媒体2の大きさは特に限定されず、例えば1.6mm、5mm、及び10mmなどの直径を有する粉砕媒体2を使用することができ、種々のサイズの粉砕媒体2を組み合わせてもよい。また、粉砕媒体2の材質も特に限定されず、例えば、ステンレス鋼(SUS)製、タングステンカーバイト(WC)製、及び二酸化ジルコニウム(ZrO2)製のものを使用することができ、種々の材質の粉砕媒体2を組み合わせてもよい。さらに、前述した容器5の材質と粉砕媒体2の材質とは異なっていてもよい。
【0037】
尚、詳しくは後述するが、容器5の材質及び粉砕媒体2の材質としては、前述した材質の中では、ステンレス鋼が特に有用である。
【0038】
遊星ボールミル装置1は、回転軸11の回転速度及び容器5の回転速度を調整することが可能なボールミル装置である。前記各回転速度は、トリアルコキシシランが効率的に製造される値に設定される。
【0039】
遊星ボールミル装置1を用いてトリアルコキシシランを製造する場合は、まず、
図2に示すように、粉砕媒体2が収容された各容器5内に、ケイ素粒子3からなる粉末と特定アルコール4とを投入する。次に、この容器5を、
図1に示すテーブル6に設けられたケーシング13に挿入して固定する。
【0040】
次に、遊星ボールミル装置1を駆動させる。これにより、回転軸11に取り付けられた歯車(図示省略)と各ケーシング13に取り付けられた歯車(図示省略)との噛み合いによって、各容器5が回転軸11の周りを公転しながら、各容器5自身も回転軸11とは別の回転軸(図示省略)周りを自転する。
【0041】
遊星ボールミル装置1によって、ケイ素粒子が粉砕されることで、ケイ素粒子3のサイズが小さくなって、ケイ素粒子3の表面積が増大するとともに、ケイ素粒子3の、反応が進んでいない新鮮な表面が露出し続けるため、容器5内のケイ素粒子3に対してメカノケミカル反応を進行させることができる。特に、未処理のケイ素粒子の表面には、基本的に酸化膜が形成されているが、遊星ボールミル装置1により粉砕すれば、酸化されていない面が露出し続けるため、ケイ素粒子から酸化膜を除去するエッチング処理を行うことなく、トリアルコキシシランの製造が可能になる。
【0042】
本実施形態1では、特定アルコールとして、炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコール、すなわち、直鎖状ではない立体構造を有するアルコールが用いられている。これにより、テトラアルコキシシランと比べて、トリアルコキシシランを効率的に得ることができる。これは、立体構造を有するアルコールを用いることで、この立体構造が立体障害となって、ケイ素と特定アルコールとの反応が穏やかに進み、テトラアルコキシシランに至ることなく、トリアルコキシシランの状態に留まるためと考えられる。特定アルコール、すなわち炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール、2-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの2級以上アルコールを採用することができる。尚、炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコールであれば、1級アルコールであってもよい。
【0043】
したがって、本実施形態1では、ケイ素粒子3と溶媒とを遊星ボールミル1を用いて粉砕混合して、メカノケミカル反応によりトリアルコキシシランを得る反応工程を含み、溶媒は、炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコールである。これにより、簡易な手法でトリアルコキシシランを効率的に製造することができる。
【0044】
(実施形態2)
以下、実施形態2について詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施形態2は、ケイ素粒子及び特定アルコールに加えて、添加物としての銅を一緒に粉砕混合する点で、前記実施形態1とは異なる。
【0046】
具体的には、本実施形態2では、
図3に示すように、ケイ素粒子3、銅粒子200、及び特定アルコール4を容器5に投入して、遊星ボールミル装置1により粉砕混合する。
【0047】
銅粒子200は、ケイ素粒子との間で電荷を授受し、アルコキシシランの生成を促進する。これにより、トリアルコキシシランをより効率的に製造することができる。
【0048】
(実施形態3)
以下、実施形態3について詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1及び2と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0049】
本実施形態3は、ケイ素粒子3と銅粒子200とを乾式で粉砕混合する前処理を行う点で、前記実施形態1及び2とは異なる。
【0050】
具体的には、本実施形態3では、特定アルコールを容器5に投入する前に、ケイ素粒子3及び銅粒子200のみを容器5に投入して、遊星ボールミル装置1により乾式で粉砕混合させる。そして、ケイ素粒子3と銅粒子200との粉砕混合が終了した後に、当該容器5に特定アルコールを追加して、遊星ボールミル装置1により再度粉砕混合する。
【0051】
ケイ素粒子3及び銅粒子200のみを乾式で粉砕混合することにより、ケイ素と銅との合金(銅シリサイド)が生成される。ここに特定アルコールを加えて更に粉砕混合することで、メカノケミカル反応により、アルコキシシランが効率的に製造される。これにより、トリアルコキシシランをより効率的に製造することができる。
【0052】
(実施形態4)
以下、実施形態4について詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態4ケイ素粒子及び特定アルコールに加えて、添加物として、金属塩化物や金属臭化物などの金属ハロゲン化物を一緒に粉砕混合する点で、前記実施形態1~3とは異なる。金属ハロゲン化物は、例えば、塩化銅、塩化ナトリウム、臭化カリウムなどである。
【0054】
金属ハロゲン化物は、ケイ素粒子との間で電荷を授受し、アルコキシシランの生成を促進する。これにより、トリアルコキシシランをより効率的に製造することができる。
【0055】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0056】
例えば、前記実施形態1~4では、粉砕装置として遊星ボールミル装置1を用いていた。これに限らず、粉砕装置は、機械的エネルギーを利用して粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であればよく、例えば、転動ボールミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、コンバージミル及びスパイクミル等を用いることができる。
【実施例0057】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0058】
〈トリアルコキシシランの製造効率と溶媒との関係〉
(実施例1)
遊星ボールミル装置(ドイツ・フリッチュ社製、商品名:プレミアムラインP-7)を使用して、ケイ素の粉末(シグマアルドリッチ社製)と、イソプロピルアルコールと、銅粒子(富士フイルム 和光純薬株式会社製)を湿式で混合粉砕して、アルコキシシランであるイソプロポキシシランを製造した。より具体的には、ステンレス鋼(SUS304)からなる粉砕媒体(粉砕ボール)が収容された容器(ステンレス鋼製(SUS303))内に、ケイ素粒子を500mgとイソプロピルアルコールを10mlとを投入するとともに、銅粒子を18原子%となるように斤量して投入した。イソプロピルアルコールは、モレキュラシーブによって予め脱水した(静置法)ものを用いた。そして、容器内をアルゴンガス雰囲気にして、500rpmの回転速度で、120分間、遊星ボールミルを回転させて、イソプロポキシシランを製造した。
【0059】
(比較例1)
ステンレス鋼(SUS304)からなる粉砕媒体(粉砕ボール)が収容された容器(ステンレス鋼製(SUS303))内に、ケイ素粒子を500mgとメタノールを20mlとを投入するとともに、銅粒子を4.5原子%となるように斤量して投入した。メタノールは、モレキュラシーブによって予め脱水した(静置法)ものを用いた。そして、容器内をアルゴンガス雰囲気にして、500rpmの回転速度で、60分間、遊星ボールミルを回転させて、ケイ素粒子、メタノール及び銅粒子を湿式で混合粉砕して、メトキシシランを製造した。
【0060】
(比較例2)
ステンレス鋼(SUS304)からなる粉砕媒体(粉砕ボール)が収容された容器(ステンレス鋼製(SUS303))内に、ケイ素粒子を500mgとエタノールを10mlとを投入するとともに、銅粒子を31原子%となるように斤量して投入した。エタノールは、モレキュラシーブによって予め脱水した(静置法)ものを用いた。そして、容器内をアルゴンガス雰囲気にして、300rpmの回転速度で、120分間、遊星ボールミルを回転させて、ケイ素粒子、エタノール及び銅粒子を湿式で粉砕混合して、エトキシシランを製造した。
【0061】
(比較例3)
ステンレス鋼(SUS304)からなる粉砕媒体(粉砕ボール)が収容された容器(ステンレス鋼製(SUS303))内に、ケイ素粒子を500mgと直鎖状のアルコールである1-プロピルアルコールを10mlとを投入するとともに、銅粒子を18原子%となるように斤量して投入した。1-プロピルアルコールは、モレキュラシーブによって予め脱水した(静置法)ものを用いた。そして、容器内をアルゴンガス雰囲気にして、500rpmの回転速度で、120分間、遊星ボールミルを回転させて、ケイ素粒子、1-プロピルアルコール及び銅粒子を湿式で粉砕混合して、プロポキシシランを製造した。
【0062】
(比較例4)
ステンレス鋼(SUS304)からなる粉砕媒体(粉砕ボール)が収容された容器(ステンレス鋼製(SUS303))内に、ケイ素粒子を500mgと直鎖状のアルコールである1-ブチルアルコールを10mlとを投入するとともに、銅粒子を18原子%となるように斤量して投入した。1-ブチルアルコールは、モレキュラシーブによって予め脱水した(静置法)ものを用いた。そして、容器内をアルゴンガス雰囲気にして、500rpmの回転速度で、120分間、遊星ボールミルを回転させて、ケイ素粒子、1-ブチルアルコール及び銅粒子を湿式で粉砕混合して、ブトキシシランを製造した。
【0063】
実施例1及び比較例1~4により製造した各アルコキシシランについて、ガスクロマトグラフ質量分析装置(日本電子株式会社製)により得られたGC/MSのトータルイオンクロマトグラムを
図4~
図8に示す。
図4は、前記実施例1により製造したイソプロポキシシランのガスクロマトグラフ質量分析(以下、GC/MS分析という)の結果である。
図5は、前記比較例1により製造したメトキシシランのGC/MS分析の結果である。
図6は、前記比較例2により製造したエトキシシランのGC/MS分析の結果である。
図7は、前記比較例3により製造した1-プロポキシシランのGC/MS分析の結果である。
図8は、前記比較例4により製造した1-ブトキシシランのGC/MS分析の結果である。各GC/MS分析により得られたトータルイオンクロマトグラムと、市販品のトリイソプロポキシシラン(Aaron Chemicals社製)、テトライソプロポキシシラン(Combi-Blocks社製)、メトキシシラン(富士フィルム 和光純薬株式会社製)、エトキシシラン(シグマアルドリッチ社製)、1-プロポキシシラン(東京化成工業株式会社製)、1-ブトキシシラン(東京化成工業株式会社製)のGC/MS分析のトータルイオンクロマトグラム(図示省略)とを比較して、各ピークが示す物質が、トリアルコキシシランであるか、テトラアルコキシシランであるか、又はそれ以外の物質であるかを特定した。図中の「トリ体」はトリアルコキシシランを示し、「テトラ体」はテトラアルコキシシランを示す。以下の説明では、トリアルコキシシランを単純にトリ体ということがあり、テトラアルコキシシランを単純にテトラ体ということがある。
【0064】
図4に示すように、実施例1では、トリ体のイソプロポキシシランとテトラ体のイソプロポキシシランとの両方が得られていることが分かる。一方で、
図5~
図8に示すように、比較例1~4では、アルコキシシランとして、テトラ体のメトキシシラン、エトキシシラン、1-プロポキシシラン、及び1-ブトキシシランのみが得られ、トリ体のアルコキシシランは得られていなかった。尚、同じテトラ体のアルコキシシランであってもピークの位置が異なるのは、各アルコキシシランの分子量の違い、及び構造の違いによるものである。
【0065】
また、詳しくは後述するが、回転数が低いという条件、及び銅の添加量が多いという条件は、どちらもトリ体のアルコキシシランを製造する上で有利な条件である。比較例2については、回転数が300rpmと低く、かつ銅の添加量が31原子%と比較的多いという、トリ体が製造されやすい条件であるにも関わらずトリ体のエトキシシランが得られなかった。また、回転数が低いということが、機械エネルギーを付与する頻度が少ないことを意味することを考慮すると、粉砕時間が短いこともトリ体のアルコキシシランを製造する上で有利な条件であると考えられる。しかしながら、比較例1では、粉砕時間が60分と短くなっているにも関わらずトリ体のメトキシシランが得られなかった。
【0066】
ここから、メカノケミカル反応を利用してアルコキシシランを製造する場合、トリ体のアルコキシシランを得るためには溶媒の選択が重要であることが分かる。特に、イソプロピルアルコールではトリ体のアルコキシシランが得られた一方で、1-プロピルアルコールや1-ブチルアルコールではトリ体のアルコキシシランが得られていないことから、メカノケミカル反応を利用してトリ体のアルコキシシランを得るためには、アルコール溶媒として、イソプロピルアルコールのように立体構造を有するアルコールを用いることが重要であると言える。これは、立体構造を有するアルコールを溶媒として用いると、その立体構造が立体障害となって、ケイ素とアルコールとの反応が穏やかに進み、生成されるアルコキシシランが、テトラ体に至ることなく、トリ体の状態に留まりやすくなるためと考えられる。したがって、立体構造を有するアルコール、詳しくは炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコールとケイ素とを粉砕混合して、メカノケミカル反応させることで、トリ体のアルコキシシランを効率的に得ることができる。
【0067】
〈トリアルコキシシランの収率と回転数との関係〉
(実施例2)
遊星ボールミル装置の回転数を200rpmとしたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0068】
(実施例3)
遊星ボールミル装置の回転数を300rpmとしたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0069】
(実施例4)
遊星ボールミル装置の回転数を400rpmとしたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0070】
(実施例5)
遊星ボールミル装置の回転数を600rpmとしたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0071】
(実施例6)
遊星ボールミル装置の回転数を700rpmとしたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0072】
図9は、前記実施例2により製造したイソプロポキシシランのGC/MS分析の結果である。
図10は、前記実施例3により製造したイソプロポキシシランのGC/MS分析の結果である。
図11は、前記実施例4により製造したイソプロポキシシランのGC/MS分析の結果である。
図12は、前記実施例5により製造したイソプロポキシシランのGC/MS分析の結果である。
図13は、前記実施例6により製造したイソプロポキシシランのGC/MS分析の結果である。各GC/MS分析により得られたトータルイオンクロマトグラムと、市販品のトリイソプロポキシシラン(Aaron Chemicals社製)のGC/MS分析のトータルイオンクロマトグラム(図示省略)、及び市販品のテトライソプロポキシシラン(Combi-Blocks社製)のGC/MS分析のトータルイオンクロマトグラム(図示省略)とを比較して、各ピークが示す物質が、トリイソプロポキシシランであるか、テトライソプロポキシシランであるか、又はそれ以外の物質であるかを特定した。
【0073】
図4、及び
図9~
図13示すように、回転数が高いほどピークの強度が高いことが分かる。これは、回転数が高いほど、機械エネルギーを付与する頻度が増えるとともに、付与する機械エネルギー自体も増えるため、メカノケミカル反応によりアルコキシシランが製造される効率が高くなり、得られるアルコキシシランの量自体が増えることが原因であると考えられる。
【0074】
また、
図4、及び
図9~
図13を参照すると、回転数が300rpmのときからテトラ体のイソプロポキシシランのピークが明確に出現し、回転数が高くなるほど、トリ体のピークに対するテトラ体のピークの比率が大きくなり、回転数が600rpmになるとピーク値が逆転することが分かる。これは、回転数が高ければ、相対遠心加速度が大きくなって機械的なエネルギー自体が大きくなりやすいため、イソプロポキシシランがトリ体から更に反応が進んでテトラ体に至りやすくなることが原因と考えられる。
【0075】
遊星ボールミル装置において、容器の内容物にかかる相対遠心加速度G(G)は、遊星ボールミル装置の回転半径R(mm)、容器の回転速度N(rpm)を用いて、以下の式で求められる。
【0076】
相対遠心加速度G = 1.118×R×N2×10-6
本実施例において遊星ボールミル装置の回転半径(遊星ボールミル装置の中心軸と容器の中心軸との距離)は、70mmであるので、例えば、回転数が200rpmの場合、相対遠心加速度Gは約3.13Gとなる。一方、回転数が600rpmの場合、相対遠心加速度Gは約28.2Gとなる。相対遠心加速度Gが大きければ、ボールが他のボール又は容器と衝突する際の速度が速くなりやすいため、付与される機械的なエネルギーは大きくなりやすい。したがって、機械的なエネルギーが大きくなりやすい高回転数の方が、テトラ体のイソプロポキシシランが製造されやすくなっていると考えられる。
【0077】
図14及び
図15は、GC/MS分析の結果からトリ体のイソプロポキシシランの収率とテトラ体のイソプロポキシシランの収率とを算出するとともに、それぞれの収率に基づいて選択率を算出した結果である。
【0078】
収率を算出するために、まず、GC/MS分析により得られたトータルイオンクロマトグラムのピーク面積から製造されたトリ体及びテトラ体のイソプロポキシシランの物質量をそれぞれ算出した。具体的には、トリ体については、市販品のトリイソプロポキシシランを適当な分量だけGC/MS分析して、そのGC/MS分析により得られたトータルイオンクロマトグラムのピーク面積を算出する。次に、GC/MS分析装置内における市販品のトリイソプロポキシシランの濃度を算出する。次いで、トリイソプロポキシシランの濃度を横軸とし、ピーク面積を縦軸とするグラフ上に、算出結果をプロットし、当該プロットと原点とを結んで検量線を作成する。そして、実際に製造したトリイソプロポキシシランのピーク面積から、製造したトリイソプロポキシシランの濃度を算出することで、製造されたトリイソプロポキシシランの物質量を算出した。ピーク面積が市販品のトリイソプロポキシシランよりも大きいときには、検量線を外装して製造したトリイソプロポキシシランの濃度を算出した。尚、テトラ体の物質量についても同様に算出した。
【0079】
トリ体の物質量及びテトラ体の物質量を算出した後は、以下の式に基づいてそれぞれの収率Yを算出した。
【0080】
収率Y = (niso/nsi)×100
nisoは、イソプロポキシシランの物質量(mol)であり、nsiは、ケイ素の物質量(mol)である。
【0081】
選択率は、算出したトリ体の収率Ytri及びテトラ体の収率Ytetraに基づいて、それぞれ以下の式により算出した。
【0082】
選択率S
tri = Y
tri/(Y
tri+Y
tetra)
選択率S
tetra = Y
tetra/(Y
tri+Y
tetra)
図14に示すように、トリ体及びテトラ体共に回転数が高くなるほど、収率Yが高くなるが、その傾向がトリ体とテトラ体とで異なることが分かる。具体的には、トリ体の収率Y
triについては回転数に対してほぼ直線的に増加している一方で、テトラ体の収率Y
tetraについては、回転数が400rpm以上になると急激に増加することが分かる。これは、前述した相対遠心加速度Gが回転数の2乗に比例して増加すること、すなわち、回転数が高くなると急激に増加することとも対応している。
【0083】
図14及び
図15を参照すると、トリ体とテトラ体との収率Yが逆転して、テトラ体の方が製造されやすくなるのは、回転数が580rpm付近である。すなわち、効率的にトリ体のアルコキシシラン(ここではイソプロポキシシラン)を得るには、回転数が200rpm以上でかつ580rpm未満であることが好ましいと言える。特に、回転数が200rpm以上でかつ430rpm未満であれば、トリ体の選択率が80%を超えるためより好ましい。
【0084】
〈トリアルコキシシランの収率と容器の材質との関係〉
(実施例7)
銅粒子を添加しなかったこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0085】
(比較例5)
容器及び粉砕媒体の材質をタングステンカーバイト製にしたこと以外は、前述の実施例7と同様にしてイソプロポキシシランを製造した。
【0086】
(比較例6)
容器及び粉砕媒体の材質を二酸化ジルコニウム製にしたこと以外は、前述の実施例7と同様にしてイソプロポキシシランを製造した。
【0087】
実施例7、比較例5及び6により製造した各イソプロポキシシランについて、GC/MS分析により得られたトータルイオンクロマトグラムを
図16~
図18に示す。
図16は、前記実施例7により製造したイソプロポキシシランのGC/MS分析の結果である。
図17は、前記比較例5により製造したイソプロポキシシランのGC/MS分析の結果である。
図18は、前記比較例6により製造したイソプロポキシシランのGC/MS分析の結果である。各GC/MS分析により得られたトータルイオンクロマトグラムと、市販品のトリイソプロポキシシラン(Aaron Chemicals社製)及びテトライソプロポキシシラン(Combi-Blocks社製)のGC/MS分析のトータルイオンクロマトグラムとを比較して、ピークが示す物質が、トリアルコキシシランであるか、テトラアルコキシシランであるか、又はそれ以外の物質であるかを特定した。
【0088】
図16~
図18に示すように、容器及び粉砕媒体の材質がタングステンカーバイト製及び二酸化ジルコニウム製の場合、容器及び粉砕媒体の材質がステンレス鋼製である場合と比較して、トリ体及びテトラ体共にピーク値がかなり小さいことが分かる。これは、容器及び粉砕媒体の材質がステンレス鋼である場合、ステンレス鋼を構成する鉄、クロム、ニッケル、及びマンガン等が触媒として機能して、ケイ素にアルコキシ基が結合されやすい状態になるためと考えられる。
【0089】
図19は、実施例7、比較例5及び6により製造したトリイソプロポキシシラン及びテトライソプロポキシシランの収率をそれぞれ示す。横軸のSUSは実施例7に対応し、WCは比較例5に対応し、ZrO
2は比較例6に対応する。実施例7は、GC/MS分析ではテトラ体のピークの方がトリ体のピークと比較して高いピーク値となっているにも関わらず、収率はトリ体の方が高いという結果になっている。これは、前述したようにピーク値ではなく、ピーク面積から算出した物質量に基づいて収率を算出しているためである。
【0090】
図19を参照すると、容器及び粉砕媒体の材質がタングステンカーバイト製及び二酸化ジルコニウム製の場合、容器及び粉砕媒体の材質がステンレス鋼製である場合と比較して、トリ体及びテトラ体共に、収率がかなり低下することが分かる。一方で、容器の材質がいずれのものであっても、テトラ体よりもトリ体の方が収率が高いことが分かる。このことから、イソプロポキシシランの収率自体は容器の材質に大きく依存するが、トリ体の選択性については、収率と比較すると、容器の材質に対する依存性が小さいことが分かる。このことからしても、メカノケミカル反応によりトリ体のアルコキシシランを効率的に得るには、イソプロピルアルコールのような、炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコールを溶媒として用いることが重要であるといえる。
【0091】
〈トリアルコキシシランの収率と銅の添加量との関係〉
(実施例8)
銅粒子の添加量を4.2原子%としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0092】
(実施例9)
銅粒子の添加量を40原子%としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0093】
(実施例10)
ステンレス鋼(SUS304)からなる粉砕媒体(粉砕ボール)が収容された容器(ステンレス鋼製(SUS303))内に、ケイ素粒子を500mgと4.2原子%の銅粒子を投入して、500rpmの回転数で30分、容器内をアルゴンガス雰囲気にして乾式で混合粉砕した。その後、前記容器内にイソプロピルアルコールを10ml追加して、500rpmの回転速度で、120分間、遊星ボールミルを回転させて、ケイ素粒子、イソプロピルアルコール及び銅粒子を湿式で粉砕混合して、イソプロポキシシランを製造した。
【0094】
(実施例11)
銅粒子の添加量を18原子%としたこと以外は、前述の実施例10と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0095】
(実施例12)
銅粒子の添加量を40原子%としたこと以外は、前述の実施例10と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0096】
(実施例13)
乾式での粉砕混合の際の遊星ボールミル装置の回転数を150rpmとしたこと以外は、前述の実施例11と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0097】
(実施例14)
乾式での粉砕混合の際の遊星ボールミル装置の回転数を300rpmとしたこと以外は、前述の実施例11と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0098】
(実施例15)
乾式での粉砕混合の際の遊星ボールミル装置の回転数を700rpmとしたこと以外は、前述の実施例11と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0099】
(実施例16)
乾式での粉砕混合の際の遊星ボールミル装置の回転数を150rpmとしたこと以外は、前述の実施例12と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0100】
図20には、実施例1,7~12により製造されたイソプロポキシシランについてトリ体の収率とテトラ体の収率とを算出した結果である。図中の「前処理あり」は、実施例10~12に相当するものであり、ケイ素粒子と銅粒子とを乾式で混合粉砕する工程を導入したものである。図中の「前処理なし」は、実施例1,7,8,及び9に相当するものであり、ケイ素粒子と銅粒子との乾式での粉砕混合をせずに、ケイ素粒子、銅粒子、及びイソプロピルアルコールを容器に入れて湿式で粉砕混合したものである。
【0101】
図20に示すように、トリ体は、銅の添加量が多くなると収率が増加する一方で、テトラ体は、銅の添加量が増加したとしても収率がほとんど変化していないことが分かる。
【0102】
また、銅の添加量が0原子%以上かつ20原子%未満の範囲では、500rpmの回転数での前処理をしない方が収率が若干高いが、銅の添加量が20原子%以上の範囲では、500rpmの回転数での前処理を行った方が収率が大きく向上することが分かる。
【0103】
ここで、ケイ素と銅とを乾式で粉砕混合すると、ケイ素と銅との合金(銅シリサイド)が形成される。ここに特定アルコールを加えて粉砕混合することで、メカノケミカル反応により、アルコキシシランが効率的に生成される。このため、銅シリサイドを効率的に生成できれば、基本的にはイソプロポキシシランの収率は増加すると考えられる。前処理時の回転数が500rpmのときには、銅の添加量が20原子%~40原子%にあるときに効率的に銅シリサイドが生成されると考えられる。
【0104】
図21は、実施例1,11,13~15により製造されたイソプロポキシシランについてトリ体の収率とテトラ体の収率とを算出した結果である。
図21に示すように、トリ体及びテトラ体の両方とも、前処理時の回転数が150rpm付近のときに収率が最大になり、その後は、回転数が増加するにつれて収率が低下することが分かる。特に、回転数が380rpmを超えると、前処理無し(回転数が0rpm)のときよりも収率が低くなることが分かる。
【0105】
このことから、銅の添加量が20原子%未満であるときには、前処理時の回転数を低くすれば、具体的には380rpm未満にすれば、前処理を行わないときと比較して、前処理を行ったときの方がトリ体のアルコキシシランを効率的に製造することができるといえる。
【0106】
図22は、実施例12及び実施例16により製造されたイソプロポキシシランについてトリ体の収率とテトラ体の収率とを算出した結果である。
図22に示すように、前処理時の回転数が高い方が、前処理時の回転数が低いときと比較して、収率が高いことが分かる。一方で、テトラ体については、前処理時の回転数が高い方が、前処理時の回転数が低いときと比較して、収率が低いことが分かる。つまり、銅の添加量が40原子%であるときには、前処理時の回転数が高い方が、前処理時の回転数が低いときと比較して、トリ体のアルコキシシランを効率的に製造することができるといえる。
【0107】
これらの結果から、トリ体のアルコキシシランを効率的に製造するためには、前処理における乾式での粉砕混合の回転数は、銅の添加量に応じて変更することが好ましいといえる。具体的には、銅の添加量が多いほど、前処理における乾式での粉砕混合の回転数を高くすることが好ましいといえる。
【0108】
〈トリアルコキシシランの収率と金属触媒の種類との関係〉
(比較例7)
銅の代わりに、モリブデンを18原子%添加したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0109】
(比較例8)
銅の代わりに、クロムを18原子%添加したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0110】
(比較例9)
銅の代わりに、鉄を18原子%添加したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0111】
(比較例10)
銅の代わりに、ニッケルを18原子%添加したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0112】
図23は、実施例1及び比較例7~10により製造されたイソプロポキシシランの収率を算出した結果である。グラフ中の白塗り部分がトリ体を示し、黒塗り部分がテトラ体を示す。白塗り部分と黒塗り部分との割合は、製造されたイソプロポキシシラン全体におけるトリ体の割合とテトラ体の割合と表す。
【0113】
図23に示すように、銅の場合はトリ体の収率が3%程度ある一方で、銅以外の金属では、トリ体の収率が2%前後であることが分かる。これは、添加物が銅の場合は、銅シリサイドが生成されることでアルコキシシランの製造効率が上昇するためであると考えられる。したがって、種々の金属のなかでも、銅を添加することで、アルコキシシランの製造効率を向上させることができる。
【0114】
〈他の特定アルコールを用いた場合の製造効率〉
(実施例17)
ステンレス鋼(SUS304)からなる粉砕媒体(粉砕ボール)が収容された容器(ステンレス鋼製(SUS303))内に、ケイ素粒子を500mgと2-ブタノールを10mlとを投入するとともに、銅粒子を18原子%となるように斤量して投入した。2-ブタノールは、モレキュラシーブによって予め脱水した(静置法)ものを用いた。そして、容器内をアルゴンガス雰囲気にして、500rpmの回転速度で、120分間、遊星ボールミルを回転させて、ケイ素粒子、2-ブタノール及び銅粒子を湿式で粉砕混合して、アルコキシシランを製造した。
【0115】
(実施例18)
遊星ボールミル装置の回転数を300rpmとしたこと以外は、前述の実施例17と同様にして、アルコキシシランを製造した。
【0116】
図24は、前記実施例17により製造したアルコキシシランのGC/MS分析の結果である。
図25は、前記実施例18により製造したアルコキシシランのGC/MS分析の結果である。
【0117】
図24及び
図25に示すように、15.0min付近のピークと18.7min付近のピークとに注目すると、回転数が高いほどピークの強度が高いことが分かる。また、回転数が低いときと比較して回転数が高い時の方が、15.0min付近のピーク強度に対する18.7min付近のピーク強度の比率が高いことが分かる。これらは、溶媒としてイソプロピルアルコールを用いたときと同様の傾向である。
【0118】
各ピークが示す物質の調査は、メトキシシラン,エトキシシラン,1-ブトキシランにおける,トリ体とテトラ体におけるGC/MS分析のトータルイオンクロマトグラフの結果をもとに行った。調査の結果、15.0min付近に表れるピークを、トリ体の1-メチルプロポキシシラン、18.7minに表れるピークを、テトラ体の1-メチルプロポキシシランであると同定した。なお、初期に現れるピーク群は、溶媒由来のピークである。
【0119】
この結果から、2-ブタノールでも、イソプロピルアルコールと同様に、トリ体のアルコキシシランを効率的に得られることが分かった。2-ブタノールは、炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコールであって、立体構造を有する。つまり、2-ブタノールの場合も、立体構造が立体障害となって、生成されるアルコキシシランが、テトラ体に至ることなく、トリ体の状態に留まりやすくなったため、トリ体のアルコキシシランを効率的に得られたと考えられる。したがって、トリ体のアルコキシシランを効率的に得るためには、炭素数が3以上でかつ分岐状のアルコールとケイ素とを粉砕混合して、メカノケミカル反応させることが重要であるといえる。
【0120】
〈トリアルコキシシランの収率と粉砕時間との関係〉
(実施例19)
粉砕時間を30分間とし、銅粒子の添加量を4.2原子%としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0121】
(実施例20)
粉砕時間を60分間としたこと以外は、前述の実施例19と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0122】
(実施例21)
粉砕時間を90分間としたこと以外は、前述の実施例19と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0123】
(実施例22)
粉砕時間を150分間としたこと以外は、前述の実施例19と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0124】
(実施例23)
粉砕時間を180分間としたこと以外は、前述の実施例19と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0125】
(実施例24)
粉砕時間を300分間としたこと以外は、前述の実施例19と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0126】
図26及び
図27は、実施例8,19~24により製造されたイソプロポキシシランについてトリ体の収率とテトラ体の収率とを算出するとともに、それぞれの収率に基づいて選択率を算出した結果である。
【0127】
図26及び
図27に示すように、トリ体については、粉砕時間が90分間を超えたあたりから収率がほぼ一定になる一方で、テトラ体については、粉砕時間が長くなるほど収率が上がることが分かる。また、粉砕時間が140分間を超えたあたりで、トリ体の収率とテトラ体の収率とが逆転し、これに伴い選択率も逆転することが分かる。これは、粉砕時間が長くなることで、機械エネルギーを付与する頻度が多くなり、テトラ体が生成されるまで反応が進行したためと考えられる。
【0128】
したがって、効率的にトリ体のアルコキシシラン(ここではイソプロポキシシラン)を得るには、粉砕時間が30分間~140分間であることが好ましいと言える。
【0129】
〈トリアルコキシシランの収率と金属ハロゲン化物触媒との関係〉
(実施例25)
銅の代わりに、金属ハロゲン化物である塩化銅を4.2原子%添加したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0130】
(実施例26)
銅の代わりに、金属ハロゲン化物である塩化ナトリウムを4.2原子%添加したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0131】
(実施例27)
銅の代わりに、金属ハロゲン化物である臭化カリウムを4.2原子%添加したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0132】
(実施例28)
粉砕時間を300分間としたこと以外は、前述の実施例25と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0133】
(実施例29)
遊星ボールミル装置の回転数を700rpmとしたこと以外は、前述の実施例25と同様にして、イソプロポキシシランを製造した。
【0134】
図28は、実施例8,25,26,27により製造されたイソプロポキシシランの収率を算出した結果である。グラフ中の白塗り部分がトリ体を示し、黒塗り部分がテトラ体を示す。白塗り部分と黒塗り部分との割合は、製造されたイソプロポキシシラン全体におけるトリ体の割合とテトラ体の割合と表す。
【0135】
図28に示すように、添加物が塩化銅であるときには、添加物が銅であるときと比較して、全体的な収率は低下するもののトリ体の収率は同程度であることが分かる。一方で、添加物が塩化ナトリウムであるときには、添加物が銅であるときと比較して、全体的な収率が増加しかつトリ体の収率も増加することが分かる。また、添加物が臭化カリウムであるときには、添加物が銅であるときと比較して、全体的な収率は同程度であるがトリ体の収率が増加することが分かる。これらの結果から、添加物として金属ハロゲン化物を用いることによって、トリ体のアルコキシシランを効率的に得ることができるといえる。
【0136】
図29は、実施例25及び実施例28により製造されたイソプロポキシシランについてトリ体の収率とテトラ体の収率とを算出した結果である。
図29中の白丸及び白抜きの四角は、添加物が銅であるときのトリ体の収率とテトラ体の収率とであって、
図26に示す結果と同じである。
図30は、実施例25及び実施例29により製造されたイソプロポキシシランについてトリ体の収率とテトラ体の収率とを算出した結果である。
【0137】
図29及び
図30を参照すると、添加物が塩化銅であるときには、粉砕時間を300分間としたり、回転数を700rpmとしたりしても、トリ体の収率が増加していることが分かる。これは、添加物が銅であるときとは異なる傾向である。これらの結果から、添加物として金属ハロゲン化物を用いることによって、トリ体のアルコキシシランをより効率的に得ることが期待できる。