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  • 特開-放射線式レベル測定器の校正方法 図1
  • 特開-放射線式レベル測定器の校正方法 図2
  • 特開-放射線式レベル測定器の校正方法 図3
  • 特開-放射線式レベル測定器の校正方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066787
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】放射線式レベル測定器の校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/288 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G01F23/288
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176483
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AA05
2F014FD00
(57)【要約】
【課題】 校正作業に要する時間を短縮可能な校正方法を提供する。
【解決手段】 容器Vを挟んで配置された線源部1及び検出部2から構成される放射線式レベル測定器の校正方法であって、容器V内の測定対象物Xの異なる液位において該測定器で測定を行なってそれらの測定値と該液位との関係を求める第1工程と、段階的に放射線を遮るべく線源部1と内部が空の容器Vとの間に介在させる遮蔽板11の厚みを段階的に変えながら、その都度該測定器で測定を行なってそれらの測定値と該介在させた遮蔽板11の厚みとの関係を求めた後、この関係を該第1工程で求めた関係と関連づけて遮蔽板11の厚みと液位との相関関係を求める第2工程と、線源部1と内部が空の容器Vとの間に遮蔽板11を介在させたときに該測定器で測定して得た測定値を該相関関係に照合することで校正を行なう第3工程とからなる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物が装入される容器を挟んで互いに対向するように配置された放射線を放射する線源部、及び該放射線の線量を検出する検出部から構成される放射線式のレベル測定器の校正方法であって、該容器内に装入した該測定対象物の少なくとも2つの異なる液位において該レベル測定器で測定を行なって測定値と液位との関係を求める第1工程と、放射線を段階的に遮るべく該線源部と内部が空の該容器との間に介在させる遮蔽板の厚みを段階的に変えながら、その都度該レベル測定器で測定を行なって測定値と遮蔽板の厚みとの関係を求めた後、この関係を該第1工程で求めた関係と関連づけることにより遮蔽板の厚みと液位との相関関係を求める第2工程と、該線源部と内部が空の該容器との間に遮蔽板を介在させたときに該レベル測定器で測定して得た測定値を該相関関係に照合することで校正を行なう第3工程とからなることを特徴とする放射線式レベル測定器の校正方法。
【請求項2】
前記遮蔽板の高さが前記レベル測定器の測定レンジの10%以上30%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の放射線式レベル測定器の校正方法。
【請求項3】
前記遮蔽板を介在させるための前記線源部と前記容器との間に確保する隙間の奥行きが150mm以上300mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射線式レベル測定器の校正方法。
【請求項4】
前記遮蔽板の材質が鉄又は放射線遮蔽ゴムであることを特徴とする、請求項3に記載の放射線式レベル測定器の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線式レベル測定器の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法として、例えば特許文献1に記載のように、略円筒形の圧力容器を横向きにした横長形状のオートクレーブを利用した高圧酸浸出法(HPAL法)が知られている。このオートクレーブの内部は、堰によって長手方向に連続する複数の貯留部に仕切らており、原料のニッケル酸化鉱石は、前処理工程における粉砕及び湿式篩により所定の粒度及び固形分濃度を有する鉱石スラリーに調製された後、硫酸と共にオートクレーブに装入される。オートクレーブ内に装入された鉱石スラリーは、堰をオーバーフローすることにより上記の複数の貯留部を上流側から下流側に順次移送され、その際、オートクレーブ内に吹き込まれる高圧蒸気により例えば230~270℃、3~5MPaGの高温高圧の条件下で酸浸出処理が施される。なお、上記堰には開閉自在なスラリー移送用通液口が設けられており、一部の鉱石スラリーは、この通液口を通過して下流側の貯留部に移送される。
【0003】
上記の複数の貯留部で段階的に酸浸出処理が施された鉱石スラリーは、最も下流側の貯留部において、その上部から垂下する抜出管によって浸出スラリーとしてオートクレーブから抜き出される。このオートクレーブからの浸出スラリーの抜出量は、上記の最も下流側の貯留部の液面レベル(液面高さ又は液位とも称する)によって制御されるため、この最も下流側の貯留部には液面レベルの測定器が必要になる。しかしながら、オートクレーブ内は前述したように高温高圧雰囲気で且つ硫酸を含む極めて過酷な腐食環境にあるので、超音波式レベル計やマイクロウェーブ式レベル計等のオートクレーブ内にセンサーを設けるタイプのレベル測定器を用いるのは好ましくない。そこで、例えば特許文献2に示すように、オートクレーブ内の測定対象物の液面レベルを外部から安定的に測定することが可能な放射線式レベル測定器が一般的に用いられている。
【0004】
上記の放射線式レベル測定器は、放射線が物質を透過する際に吸収により減衰する原理を利用したものであり、点状の放射線源からガンマ線を放射する線源部と、該線源部から放射されたガンマ線のうち容器及びその内部の測定対象物を透過したものの線量を検出するシンチレーションカウンターに代表される棒状の検出部とから構成される。これら線源部及び検出部を、該容器を挟んで互いに対向するように該容器の外部に配置することで、該容器内の測定対象物の液面レベルの高低に応じて検出部で検出されるカウント数が増減するので、これを換算することで液面レベルを求めることができる。
【0005】
上記のように、放射線式レベル測定器を用いることで、測定対象物に対して非接触で液位を測定することができるので、高温高圧雰囲気の容器内の液位測定のみならず、高粘度の液体の液面レベルや粉体のレベルの測定にも使用できる。但し、放射線式レベル測定器は、その放射線源から放射されるガンマ線が時間経過と共に弱まるため、正確な液位測定を継続して担保するためには定期的な校正が必要になる。従来の校正では、先ず放射線式レベル測定器が設けられている容器内に既知の液面レベルまで測定対象物を装入することが必要になる。そして、この液面レベルで測定した放射線式レベル測定器が該既知の液面レベルを表示するように測定器内部の換算変数を調整することで校正を行なう。この校正では、放射線式レベル測定器の測定スパンの0%に対応する容器の最低液面レベルから100%に対応する容器の最高液面レベルまでを例えば10分割し、0%から開始して100%に到達するまで10%ずつ測定対象物を装入したときの各々において、放射線式レベル測定器で測定したときに表示される液面レベルが実際の液面レベルに一致するように上記の換算変数を調整することでより厳密に校正することができる。
【0006】
上記のように、従来の校正作業では容器やタンク等の内部に測定対象物を張り込む必要があるので、ニッケル酸化鉱石をHPAL法で処理する製錬工場において採用されるオートクレーブのように、内径が数メートル、長さ数十メートルに及ぶ極めて大容量の大型容器に設けた放射線式レベル測定器の校正の場合は、オートクレーブの運転停止後に行なわれる校正の準備段階から校正作業後の復旧までに長時間を要していた。その結果、製錬工場の生産性に影響する年間設備稼働率が低下するので問題になっていた。
【0007】
上記問題の対策として、特許文献3には、放射線式レベル測定器の校正用に作製した治具を用いることで校正作業に要する時間を短縮させる技術が提案されている。具体的には、この特許文献3の技術は、堰で区分されたオートクレーブ内の複数の貯留部のうち、放射線式レベル測定器が設けられている最も下流側の貯留部とその1つ上流側の貯留部とを仕切る最下流堰に設けられているマンウェイ及びスラリー移送用通液口を共に閉じると共に、該最下流堰の下部に位置するマンホールのうち、最も下流側の貯留部に通じる開口部を特殊な形状の板状部材で閉じた後、目視による液位測定用の透明チューブを最も下流側の貯留部に連通させると共に、この最も下流側の貯留部の最低液面レベルから最高液面レベルまでの範囲をカバーするように該透明チューブを鉛直方向に延在させて校正を行なうものである。これにより、最も下流側の貯留部のみに水を導入するだけで液面レベル測定器の校正を行なうことができるので、校正時間を短縮できると記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、連続鋳造設備のモールド内における溶鋼レベル測定装置に関するものであるが、放射線(γ線)透過方式の溶鋼レベル測定装置の校正方法が提案されている。この特許文献4の校正方法は、先ずモールド内で冷鋼を上下動させてレベル位置と放射線の減衰量との関係を求め、次に厚さ一定の基準板を1枚ずつ順次モールド内に挿入し、上記関係に基づきレベル位置に換算して基準板の挿入枚数とレベル位置との相関関係を予め定める。そして、溶鋼レベル測定装置の検定時には基準板を順次挿入してその時の放射線減衰量を上記相関関係に基づいてレベル位置に換算することで校正を行なうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-025143号公報
【特許文献2】特開2017-146221号公報
【特許文献3】特開2019-215257号公報
【特許文献4】特開昭60-190816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献3の技術を採用することにより、放射線式レベル測定器の校正作業に要する時間を従来の校正方法に比べてある程度短縮することが可能になると考えられるものの、依然として校正を行なう度に容器内の一部の貯留部に水を張り込む必要があるうえ、特殊な形状の板状部材や透明チューブを着脱する作業が必要になるため、校正作業の時間短縮の効果は限られていた。また、特許文献4の基準板を用いた校正方法は、連続鋳造設備のモールドと同じサイズの基準板が必要になるため、レベル測定装置が設けられている容器の容量が大きくなれば、これに伴って基準板も大型化してしまい、そのハンドリングに手間と時間がかかることが問題になると考えられる。
【0011】
本発明は上記したニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出処理を行なう製錬工場において採用されるオートクレーブのように、極めて多量の流体を貯留する大型容器に設けられる放射線式レベル測定器が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、一般的に定期整備期間に行なわれる放射線式レベル測定器の校正に際して、その準備段階から校正作業後の復旧までに要する時間を短縮することで、生産性に影響する製錬工場の設備稼働率を高めることが可能な放射線式レベル測定器の校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る放射線式レベル測定器の校正方法は、測定対象物が装入される容器を挟んで互いに対向するように配置された放射線の線源部、及び該放射線の線量を検出する検出部から構成される放射線式のレベル測定器の校正方法であって、該容器内に装入した該測定対象物の少なくとも2つの異なる液位において該レベル測定器で測定を行なってその測定値と液位との関係を求める第1工程と、放射線を段階的に遮るべく該線源部と内部が空の該容器との間に介在させる遮蔽板の厚みを段階的に変えながら、その都度該レベル測定器で測定を行なってその測定値と遮蔽板の厚みとの関係を求めた後、この関係を該第1工程で求めた関係と関連づけることにより遮蔽板の厚みと液位との相関関係を求める第2工程と、該線源部と内部が空の該容器との間に遮蔽板を介在させたときに該レベル測定器で測定して得た測定値を該相関関係に照合することで校正を行なう第3工程とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大型容器に設けた放射線式レベル測定器であっても、その校正時間を従来の校正方法に比べて大幅に短縮化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の校正方法の対象となる放射線式レベル測定器が設けられている容器の断面図である。
図2図1の放射線式レベル測定器の線源部側の部分拡大分解斜視図である。
図3】本発明の実施例の校正方法で作成した遮蔽板の枚数と液位との相関関係を示すグラフである。
図4】本発明の実施例の校正方法の際に測定した液位と実際の液位との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る放射線式レベル測定器の校正方法の実施形態について、該レベル測定器が設けられている大型容器がオートクレーブである場合を例に挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施形態の校正方法が対象とする放射線式レベル測定器は、放射線源から放射されるガンマ線が物質を透過する際に吸収される原理を利用してタンク等の容器内の液面レベルを検出するものであり、図1に示すように、容器V内の液位測定対象物Xの最高液面レベルHLLと最低液面レベルLLLとをカバーする上下方向の所定の範囲に向けてガンマ線などの放射線を照射する線源部1と、線源部1から照射される放射線を検出できるように上下方向に延在する棒状の検出部2とが容器Vを挟んで互いに対向する位置に配置されている。
【0016】
かかる構成により、容器V内の液位測定対象物Xの液面レベルがHLLでほぼ液満状態であれば、線源部1から照射した放射線は容器Vの壁部及び液位測定対象物Xによって遮蔽されるため、検出部2で検出する放射線の線量(受線量とも称する)は小さくなり、この満液状態から容器V内の該液面レベルが低くなればなるほど、線源部1から照射した放射線を遮蔽する液位測定対象物Xの量が減るので、検出部2の受線量が増大していく。このように、検出部2によって検出される放射線の線量は、容器V内の液面レベルに応じて増減するので、この定量的に計測した放射線の線量から容器V内の液面レベルを知ることができる。
【0017】
しかしながら、放射線式レベル測定器の特性は時間の経過と共に変化するので、定期的又は必要に応じて校正を行なう必要がある。上記の放射線式レベル測定器の校正を行なう場合、従来はその都度液位測定対象物の実液又は水を容器V内の所定の液位まで張り込んで該放射線式レベル測定器で実際に測定し、その検出器の例えばシンチレーションカウンターから出力されるカウント数を換算することで得られる液位が該所定の液位に一致するように換算変数を調整する校正方法が一般的に採用されていた。この従来の校正方法は、HPAL法で用いるオートクレーブのように大型の容器であれば容器全体に実液又は水を満たす必要があるため、その準備と校正後の後処理に多大な手間と時間がかかることが問題になっていた。
【0018】
オートクレーブの場合は、前述したように内部が堰によって複数の貯留部に仕切られているため、放射線式レベル測定器が設けられている最も下流側の貯留部にのみ水が貯まるように準備することで校正に使用する水の量を減らすことが可能になる。しかしながら、この場合は、最も下流側の貯留部のみに水が貯まるようにするために特殊な治具を準備してオートクレーブの内側に取り付ける必要があるため、準備段階から校正作業後の復旧まで含めると依然として時間のかかる煩雑な作業が必要であった。なお、放射線式レベル測定器の校正を行なう場合は、容器に装入する液には実液を用いることがより正確に校正できる点から好ましいが、オートクレーブの場合は、実液に代えて水を用いても特に問題はない。これが問題になる場合は、別途求めた水と実液との減衰量の差を水を用いて校正した結果に反映させればよい。
【0019】
上記の従来の校正方法に対して、本発明の実施形態の校正方法においては、放射線式レベル測定器の線源部1と検出部2との間に鉄等の金属製又は放射線遮蔽ゴム製の遮蔽板を介在させ、線源部1から放射されるガンマ線をこの遮蔽板を透過させる際に吸収させることで校正を行なうものである。すなわち、上記の線源部1と検出部2との間に介在させる遮蔽板の厚さを様々に変えることで検出部2が受信するガンマ線の線量を変化させることができるので、この介在させる遮蔽板の厚みと容器V内の液位測定対象物Xの液位との相関関係を予め求めておくことで、以降は校正の度に容器V内に液位測定対象物Xを装入する必要がなく、単に遮蔽板を挿入して放射線式レベル測定器で測定するだけでその校正を行なうことが可能になる。これにより、例えばHPAL法で用いるオートクレーブの場合は、放射線式レベル測定器の校正の度に大量の鉱石スラリーや水を準備して該オートクレーブに装入する必要がなくなるので、該放射線式レベル測定器の校正作業に要する時間を従来に比べて大幅に短縮することが可能になる。
【0020】
具体的には、本発明の実施形態のレベル測定器の校正方法は、先ず第1工程として、図1に示す線源部1及び検出部2からなる校正対象の放射線式レベル測定器が設けられている容器V内に液位測定対象物Xとして例えば水を装入し、その少なくとも2つの異なる液位において該放射線式レベル測定器で測定を行なって、それらの測定値と該少なくとも2つの液位との関係を求める。上記の少なくとも2つの液位は、例えば最低液面レベルLLL及び最高液面レベルHLLの2つの液面レベルでもよいが、より正確に校正するには、最低液面レベルLLLの液位0%から最高液面レベルHLLの液位100%まで測定スパンを10%ごとに10分割した11の液位で測定するのが好ましい。
【0021】
次に、第2工程として、容器Vから液位測定対象物Xの水を抜いて容器V内を空にし、線源部1と容器Vの壁部との間の隙間に遮蔽板を挿入した状態で放射線式レベル測定器で測定を行なう。その際、線源部1から放射される放射線を遮る厚みが段階的に異なるように、図1に示すように同じ肉厚の遮蔽板11を1枚ずつ追加しながら挿入してもよいし、肉厚の異なる遮蔽板を順次交換しながら挿入してもよい。上記の隙間は、図2に示すように、幅150~300mm程度の略矩形板状の金属製の基台10aの両端部に、基台10aと同じ幅を有する高さ300~400mm程度の断面コ字状の2個の金属製の立設部10bを互いに150~250mm程度離間させてそれぞれ溶接により取り付けたスペーサー10を作製し、これを線源部1の支持台12及び容器Vの壁部に取り付けられている容器側架台13にそれぞれボルトナットで取り付けることで確保することができる。この場合、上記の2個の立設部10bの間に遮蔽板11用の奥行き150~300mm程度の隙間を確保することが可能になる。
【0022】
なお、遮蔽板11の高さは放射線式レベル測定器の測定レンジの10%以上30%以下であることが好ましい。この高さが10%未満では線源部1から放射される放射線を効果的に遮ることができなくなるおそれがあり、逆に30%を超えても放射線を遮る効果がほとんど変わらないので不経済であるうえ、取扱いが困難になるので好ましくない。例えば容器Vの最高液面レベルHLLと最低液面レベルLLLとの差が1000mmの場合、この1000mmの測定レンジをカバーする放射線式レベル測定器に対しては、遮蔽板11の高さが100mm以上300mm以下であるのが好ましい。また、遮蔽板11の肉厚は、複数の同じ肉厚のものを用いる場合は10mm程度であるのが好ましい。この場合は、前述した奥行き150~300mm程度の隙間を有するスペーサー10に遮蔽板11を最大15~30枚程度まで挿入することが可能になる。あるいは、肉厚10mmから肉厚150~300mmまで10mmずつ厚くなる複数の遮蔽板11を用意してもよい。更に、遮蔽板11の上端部に、スペーサー10に対して容易に出し入れできるように、例えば略T字形状又は略逆U字形状の把持部を設けるのが好ましい。
【0023】
このスペーサー10内に挿入される遮蔽板11の材質は、線源部1から検出部2に向けて放射されるガンマ線の透過を吸収によりある程度遮ることができるものであれば特に限定はないが、鉄板や早川ゴム株式会社製の放射線遮蔽ゴムが好ましい。これらの材質からなる遮蔽板11をスペーサー10に挿入して線源部1から放射される放射線を遮る厚さを変えることで、検出部2で検出する線量を効果的に増減させることが可能になる。このようにして線源部1から放射される放射線を段階的に遮るべく線源部1と内部が空の容器Vとの間に介在させる遮蔽板11の厚みを段階的に変えながらその都度放射線式レベル測定器で測定を行なってそれらの測定値と該介在させた遮蔽板11の厚みとの関係を求める。そして、この関係を前述した第1工程で求めた測定値と液位との関係に測定値を介して関連づけることにより、該介在させた遮蔽板11の厚みと液位との相関関係を求める。
【0024】
上記のようにして遮蔽板11の厚みと液位との相関関係を予め求めておくことで、以降は容器Vに液位測定対象物Xを張り込むことなく単に遮蔽板11をスペーサー10の隙間に挿入して放射線式レベル測定器で測定するだけで校正を行なうことができる。すなわち、第3工程として、定期的又は必要に応じてスペーサー10の隙間に遮蔽板11を挿入することで線源部1と内部が空の容器Vとの間に介在させる遮蔽板11の厚みを任意に変えていき、その際、放射線式レベル測定器で測定することで得られる液位を上記の第2工程で求めた相関関係の液位に照合する。そして、これら両者がほぼ一致していれば問題ないと判断し、一致していなければ放射線式レベル測定器の換算変数を適宜調整することで校正を行なう。
【0025】
以上説明したように、本発明の実施形態の放射線式レベル測定器の校正方法を用いることで、所定の液面レベルまで液位測定対象物を張り込んだときに検出器によって検出される放射線の線量と、この線量にほぼ一致する線量が検出される遮蔽板の厚みとを予め把握しておくことができるので、以降は校正の度に容器内に液位測定対象物を張り込むことなく簡易且つ短時間に校正を行なうことが可能になる。
【実施例0026】
内部が堰によって複数の貯留部に仕切られた容器Vからなるオートクレーブの外部に配置されている線源部1及び測定レンジ2000mmの棒状の検出部2から構成される放射線式レベル測定器に対して、定期整備時に下記第1工程~第3工程の手順で校正を行なった。線源部1と容器Vの壁部との間には、線源部1からその中心線に関して約250mm離間する位置に図2に示す構造のスペーサー10が設けられており、このスペーサー10により確保される奥行き150mmの隙間に挿入させる遮蔽板11として、縦345mm×横150mm×厚み10mmの鉄製の矩形板状体を13枚作製した。このとき、遮蔽板11の高さは検出部2の上記測定レンジの17%になる。なお、この矩形板状体の上端部には略T字状の把持部を設けた。
【0027】
先ず第1工程として、容器V内に液位測定対象物Xとしての水を導入しながら様々な液位で放射線式レベル測定器で測定を行なった。これにより、液位と放射線式レベル測定器の測定値との関係を求めた。次に第2工程として、容器Vから液位測定対象物Xとしての水を全て抜いて容器V内を空にし、この状態でスペーサー10の隙間に遮蔽板11を1枚ずつ挿入しながら放射線式レベル測定器で測定を行なった。そして、この関係を上記第1工程で求めた関係と測定値を介して関連づけることにより、図3に示すように、遮蔽板11の厚みと液位との相関関係を求めた。
【0028】
最後に第3工程として、スペーサー10の隙間に遮蔽板11を挿入することで線源部1と内部が空の容器Vとの間に遮蔽板11を介在させ、この状態で放射線式レベル測定器により測定を行なった。そして、検出部2で得た測定値を上記の第2工程で求めた相関関係に照合することで校正を行なった。具体的には、図3に示すように、スペーサー10の隙間に例えば遮蔽板11を5枚挿入したときの合計厚み50mmのときは、特に問題がなければ一点鎖線で示すように放射線式レベル測定器は液位72%を表示するはずであるので、放射線式レベル測定器が液位72%を表示した場合は問題なしと判断し、液位72%よりも±1%を超えてずれた値を表示した場合は放射線式レベル測定器の換算変数を調整した。上記の校正を行なうことで、図4に示すように実液運転時の液位を校正時の液位にほぼ一致させることが可能になる。
【符号の説明】
【0029】
1 線源部
2 検出部
10 スペーサー
10a 基台
10b 立設部
11 遮蔽板
12 支持台
13 容器側架台
V 容器
X 液位測定対象物
図1
図2
図3
図4