(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066972
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】凹部構造を有する部材を製造する方法および凹部構造を有する部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240509BHJP
H01L 21/302 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 201A
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089928
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2022176336
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】小野 良貴
(72)【発明者】
【氏名】林 泰夫
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA09
5F004BA19
5F004BB03
5F004BB26
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA20
5F004DB01
5F004DB03
5F004DB08
5F004DB10
5F004EA28
5F004EA34
5F004EA37
5F004EB01
5F004EB04
5F004FA08
(57)【要約】
【課題】本発明では、垂直に近い凹部構造を有する部材を比較的容易に製造することが可能な方法を提供することを目的とする。
【解決手段】凹部構造を有する部材を製造する方法であって、(1)被処理体の第1の表面の一部に触媒材料を設置するステップであって、前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下である元素で構成され、前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含む、ステップと、(2)波長が380nm以下の深紫外線を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップと、(3)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップと、を有し、前記(3)のステップの後に、前記第1の表面の前記触媒材料の下側に凹部構造が形成される、方法。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部構造を有する部材を製造する方法であって、
(1)被処理体の第1の表面の一部に触媒材料を設置するステップであって、前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下である元素で構成され、前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含む、ステップと、
(2)波長が380nm以下の深紫外線を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップと、
(3)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップと、
を有し、
前記(3)のステップの後に、前記第1の表面の前記触媒材料の下側に凹部構造が形成される、方法。
【請求項2】
前記極性官能基は、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、アミド結合、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、エーテル結合、およびエステル結合からなる群から選定された、少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素含有ガスは、フッ化水素ガスまたはフッ素ガスである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記(3)のステップは、200℃から450℃の範囲で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の表面は、H、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Br、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記凹部構造は、有底構造および/または貫通構造を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記凹部構造は、有底孔、貫通孔、有底溝、および貫通溝の少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被処理体は、単一の部材で構成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記被処理体は、SiO2を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記被処理体は、1または2以上の層を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
凹部構造を有する部材を製造する方法であって、
(1)被処理体の第1の表面の第1の領域および第2の領域に触媒材料を設置するステップであって、前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下である元素で構成され、前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含み、前記第2の領域に設置される前記触媒材料は、前記第1の領域に設置される前記触媒材料よりも厚い、ステップと、
(2)波長が380nm以下の深紫外線を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップと、
(3)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップと、
を有し、
前記(3)のステップの後に、前記第1の表面の前記第1の領域において、前記触媒材料の下側に第1の凹部構造が形成され、前記第2の領域において、前記触媒材料の下側に第2の凹部構造が形成され、前記第2の凹部構造は、前記第1の凹部構造よりも深さが深い、方法。
【請求項12】
前記極性官能基は、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、アミド結合、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、エーテル結合、およびエステル結合からなる群から選定された、少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フッ素含有ガスは、フッ化水素ガスまたはフッ素ガスである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記(3)のステップは、200℃から450℃の範囲で実施される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の表面は、H、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Br、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の凹部構造は、有底孔、貫通孔、有底溝、および貫通溝の少なくとも1つである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項17】
前記被処理体は、単一の部材で構成される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項18】
前記被処理体は、SiO2を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記被処理体は、1または2以上の層を有する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項20】
第1の表面に凹部構造を有する部材であって、
前記凹部構造は、有底構造および/または貫通構造であり、
前記第1の表面は、B、C、Si、P、S、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含み、
前記凹部構造は、前記第1の表面に形成された第1の開口と、周囲の側壁と、底面または第2の開口とで区画され、
前記側壁は、5nm以下の表面粗さ(算術平均粗さRa)を有する、部材。
【請求項21】
前記側壁は、前記第1の開口から、前記底面または前記第2の開口まで延在する少なくとも1本の筋(streak)を有する、請求項20に記載の部材。
【請求項22】
前記第1の表面は、さらに、H、N、Cl、Br、およびOからなる群から選定された、少なくとも1つを有する、請求項20または21に記載の部材。
【請求項23】
前記第1の開口の最小寸法をaとし、前記凹部構造の底面の最小寸法をbとし、前記凹部構造の深さをcとし、以下の式(1)で表される角度θをテーパ角と称したとき、
【数1】
前記テーパ角θは、0゜≦θ≦2゜である、請求項20または21に記載の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部構造を有する部材を製造する方法および凹部構造を有する部材に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の表面に微細な凹部構造を形成することができる微細加工技術は、様々な分野にニーズがある。微細加工技術として、これまでに様々な方法が提案され、実用化されている。
【0003】
微細加工技術の1つにドライエッチング法があり、この方法では、反応性の気体、イオン、および/またはラジカル等の反応体を用いて、試料の表面がエッチングされる。
【0004】
例えば、誘導結合型反応性イオンエッチング(ICP-RIE:Inductive Coupled Plasma-RIE)法に代表される、反応性イオンエッチング(RIE)法では、エッチングガスをプラズマ化させ、これを試料に衝突させることにより、エッチングが行われる。そのようなRIE法では、試料に対して極めて微細な加工が可能であることが報告されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】xiao Li,King Yuk Chan and Rodica Ramer,"Fabrication of Through via Holes in Ultra-Thin Fused SilicaWafers for Microwave and Millimeter-Wave Applications",micromachines,2018,9,138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、RIE法では、試料の表面に凹部構造を形成した際に、側壁にテーパ形状ができ易く、理想形状(垂直構造)に近い凹部構造を形成することは難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、垂直に近い凹部構造を有する部材を比較的容易に製造することが可能な方法を提供することを目的とする。また、本発明では、凹部構造を有する部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、
凹部構造を有する部材を製造する方法であって、
(1)被処理体の第1の表面の一部に触媒材料を設置するステップであって、前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下である元素で構成され、前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含む、ステップと、
(2)波長が380nm以下の深紫外線を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップと、
(3)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップと、
を有し、
前記(3)のステップの後に、前記第1の表面の前記触媒材料の下側に凹部構造が形成される、方法が提供される。
【0009】
また、本発明では、
凹部構造を有する部材を製造する方法であって、
(1)被処理体の第1の表面の第1の領域および第2の領域に触媒材料を設置するステップであって、前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下である元素で構成され、前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含み、前記第2の領域に設置される前記触媒材料は、前記第1の領域に設置される前記触媒材料よりも厚い、ステップと、
(2)波長が380nm以下の深紫外線を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップと、
(3)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップと、
を有し、
前記(3)のステップの後に、前記第1の表面の前記第1の領域において、前記触媒材料の下側に第1の凹部構造が形成され、前記第2の領域において、前記触媒材料の下側に第2の凹部構造が形成され、前記第2の凹部構造は、前記第1の凹部構造よりも深さが深い、方法が提供される。
【0010】
さらに、本発明では、第1の表面に凹部構造を有する部材であって、
前記凹部構造は、有底構造および/または貫通構造であり、
前記第1の表面は、B、C、Si、P、S、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含み、
前記凹部構造は、前記第1の表面に形成された第1の開口と、周囲の側壁と、底面または第2の開口とで区画され、
前記側壁は、5nm以下の表面粗さ(算術平均粗さRa)を有する、部材が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、垂直に近い凹部構造を有する部材を比較的容易に製造することが可能な方法を提供することができる。また、本発明では、凹部構造を有する部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】有機化合物が極性官能基を有さない場合の、被処理体の第1の表面において生じ得る反応機構を模式的に示した図である。
【
図2】有機化合物が極性官能基を有する場合の、被処理体の第1の表面において生じ得る反応機構を模式的に示した図である。
【
図3】有機化合物が別の極性官能基を有する場合の、被処理体の第1の表面において生じ得る反応機構を模式的に示した図である。
【
図4】ガラスのフッ化水素(HF)ガスエッチングの際の処理温度とエッチング反応速度の関係を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態による方法の一過程を模式的に示した断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による方法の一過程を模式的に示した断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法のフローを概略的に示した図である。
【
図8】本発明の一実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法において、被処理体に触媒材料が設置された様子を模式的に示した斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法において、エッチングプロセス後の被処理体の一例を模式的に示した断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態による部材の斜視図である。
【
図11】
図10に示した本発明の一実施形態による部材のA-A線に沿った模式的な断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態による部材における凹部構造の側壁の表面の形態を模式的に示した図である。
【
図13】凹部構造のテーパ角θを説明するための概略図である。
【
図14】本発明の別の実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法のフローを概略的に示した図である。
【
図15】本発明の別の実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法において、被処理体に触媒材料が設置された様子を模式的に示した斜視図である。
【
図16】本発明の別の実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法において、エッチングプロセス後の被処理体の一例を模式的に示した断面図である。
【
図17】本発明の一実施形態(サンプル1)による凹部構造の断面の一例を示した写真である。
【
図18】本発明の別の実施形態(サンプル2)による凹部構造の断面の一例を示した写真である。
【
図19】本発明のさらに別の実施形態(サンプル3)による凹部構造の断面の一例を示した写真である。
【
図20】本発明のさらに別の実施形態(サンプル4)による凹部構造の断面の一例を示した写真である。
【
図21】本発明のさらに別の実施形態(サンプル5)による凹部構造の断面の一例を示した写真である。
【
図22】本発明の一実施形態により得られた照射光の照射量Pとエッチング速度の関係を示したグラフである。
【
図23】触媒材料の厚さとエッチング速度の間の関係を示したグラフである。
【
図24】本発明の別の実施形態(サンプル34)による凹部構造の断面の一例を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
前述のように、従来のRIE法では、試料の表面に凹部構造を形成した際に、凹部構造の側壁に「テーパ形状」ができ易く、垂直に近い凹部構造を形成することは難しいという問題がある。
【0015】
ここで、「テーパ形状」とは、凹部構造の深さ方向の延伸軸に対して、凹部構造を区画する側壁が傾斜した形態を意味する。例えば、凹部構造が有底構造の場合、「テーパ形状」を有する凹部構造は、底部側ほど断面が小さくなる形態を有する。
【0016】
このような従来の問題に対処するため、本願発明者らは鋭意研究開発を実施し、垂直に近い凹部構造をより簡単に形成できる微細加工技術を見出した。
【0017】
本願発明者らが開発したこの新たな微細加工技術(以下、「第1の加工技術」と称する)では、第1の表面に触媒材料が設置された被処理体を、80℃以上の処理温度で、フッ素含有ガスに暴露するプロセス(以下、「エッチングプロセス」と称する)を有する。後に詳しく説明するように、このような「エッチングプロセス」を実施することにより、第1の加工技術では、被処理体の第1の表面において、触媒材料が設置されている領域(以下、「被覆領域」と称する)を選択的にエッチングすることができる。
【0018】
ただし、本願発明者らによるさらなる研究によれば、第1の加工技術では、被処理体に対するエッチング速度が、例えば、20nm/秒等、極めて高速となる傾向にある。そのような高いエッチング速度は、被処理体の迅速加工には好ましいものの、被処理体に対して比較的浅い加工を実施する際に問題となり得る。あまりにも高いエッチング速度では、所定の加工深さで正確にエッチングを停止させることは難しいからである。
【0019】
本願発明者らは、第1の加工技術に関するこのような課題に対しても鋭意研究を進めた。そして、被処理体に対してエッチングプロセスを実施する前に、特定の照射光を触媒材料に照射することにより、その後のエッチングプロセスでのエッチング速度を制御できることを見出し、本発明に至った。
【0020】
すなわち、本発明の一実施形態では、
凹部構造を有する部材を製造する方法であって、
(1)被処理体の第1の表面の一部に触媒材料を設置するステップであって、前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下である元素で構成され、前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含む、ステップと、
(2)波長が380nm以下の深紫外線を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップと、
(3)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップと、
を有し、
前記(3)のステップの後に、前記第1の表面の前記触媒材料の下側に凹部構造が形成される、方法が提供される。
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による方法について、より詳しく説明する。
【0022】
まず、本発明の一実施形態による方法についてより良く理解するため、前述の第1の加工技術における触媒材料の役割および処理温度の効果について、説明する。
【0023】
なお、以下の記載は、現時点で考察されるメカニズムに基づくものであるが、実際の現象は、その他のメカニズムで生じていてもよい。
【0024】
(触媒材料の役割)
第1の加工技術では、触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を有する。そのような極性官能基を有する有機化合物は、被処理体の表面でのフッ化物形成の活性化エネルギーを下げる役割を有すると考えられる。
【0025】
以下、
図1~
図3を用いて、この役割について説明する。
図1~
図3には、触媒材料が設置された被処理体の表面での反応の様子を模式的に示す。
【0026】
なお、以下の説明では、一例として、被処理体は、SiO2とし、被処理体の被処理表面(第1の表面)は、水素終端化されていると仮定する。
【0027】
まず、
図1には、有機化合物が極性官能基を有さない場合の、被処理体の第1の表面において想定されるエッチング機構を模式的に示す。
【0028】
被処理体であるSiO2の表面において、触媒材料が設置されている領域、すなわち「被覆領域」に環境からフッ化水素(HF)ガスが供給された場合、(i)に示すように、HF分子(a)がSi原子(b)に対して求核攻撃する。
【0029】
ただし、被処理体の表面でSi原子(b)がF原子と反応するためには、(ii)に示すように、表面のOH基(c)がHF分子(a)のH原子と相互作用して、H-F結合を弱める必要がある。すなわち、HF分子(a)におけるH-F結合を切断するようなエネルギーが提供されなければ、(iii)に示すような、H2O(g)の脱離を伴うSi-Fの結合(d)は生じない。
【0030】
しかしながら、本反応系では、Si-Fの結合(d)の活性化エネルギーの低下に寄与する物質は存在しない。そのため、被覆領域において、有意なエッチング反応は、進行しない。
【0031】
なお、この系では、通常のマスクパターン処理のように、被処理体がHFガスと直接接触する部分、すなわち表面の触媒材料が設置されていない領域(以下、「非被覆領域」と称する)の方が、エッチング速度が高まる傾向となる。
【0032】
一方、
図2には、有機化合物が極性官能基を有する場合の、被処理体の第1の表面での反応機構を模式的に示す。ここでは、極性官能基として、ヒドロキシ基を想定している。
【0033】
この場合も、触媒材料の被覆領域に環境からHFガスが供給された場合、(i)に示すように、HF分子(a)がSi原子(b)に対して求核攻撃する。
【0034】
ただし、今度の場合、これに加えて、極性官能基の-δ部(e)のO原子が、HF分子(a)のHと相互作用する。また、極性官能基の+δ部(f)のH原子が、表面のOH基(c)と相互作用する。
【0035】
従って、(ii)に示すように、HF分子(a)のH-F結合が弱められる。また、Si(b)-OH(c)の結合も弱められる。これにより、Si原子とF原子の結合反応に必要な活性化エネルギーが低下する。
【0036】
その結果、(iii)に示すように、極性官能基の-δ部(e)のO原子により、HF分子(a)のH原子が奪われるとともに、+δ部(f)のH原子が表面のOH基と反応して、H2O(g)の脱離が生じる。
【0037】
これにより、Si原子(b)がフッ素原子と結合される。最終的に、以下の反応式(1)により、SiF4およびH2Oが形成される。
SiO2+4HF → SiF4↑+ 2H2O↑ (1)
反応で生じたSiF4およびH2Oは、いずれも処理温度では気体であり、速やかに系外に逸散される。
【0038】
以上の反応機構により、被処理体において、触媒材料の被覆領域の直下が選択的にエッチングされる。
【0039】
なお、上記の反応は、極性官能基がヒドロキシ基を含む場合に限られない。例えば、極性官能基が、アルデヒド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、およびアミド結合の少なくとも1つを有する場合も、同様の反応が生じ得る。
【0040】
また、
図2では、有機化合物の極性官能基がH原子を含む場合を例に、その反応機構を説明した。しかしながら、有機化合物の極性官能基は、必ずしもH原子を有するものに限られない。
【0041】
図3には、有機化合物が別の極性官能基を有する場合の反応機構を模式的に示す。ここでは、極性官能基として、H原子を有さないカルボニル基(>C=O)を想定している。
【0042】
この例においても、触媒材料の被覆領域に環境からHFガスが供給された場合、(i)に示すように、HF分子(a)がSi原子(b)に対して求核攻撃する。また、極性官能基の-δ部(e)のO原子が、HF分子(a)のH原子と相互作用する。
【0043】
これにより、(ii)に示すように、HF分子(a)のH-F結合が弱められる。
【0044】
次に、(iii)に示すように、極性官能基の-δ部(e)のO原子によりHF分子(a)から離脱したH原子は、OH基(c)と結合し、H2O(g)が生成される。
【0045】
このように、この場合も、Si原子とF原子の結合反応に必要な活性化エネルギーが低下する。その結果、前述の反応式(1)に示した反応が生じ、被処理体において、被覆領域の直下が選択的にエッチングされる。
【0046】
同様の反応機構は、例えば、極性官能基がカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、エーテル結合、およびエステル結合の少なくとも1つを有する場合も、生じ得る。
【0047】
このように、第1の加工技術では、触媒材料に含まれる極性官能基を有する有機化合物の存在により、被処理体の被覆領域においてフッ化物生成反応が促進され、被覆領域の直下を選択的にエッチングすることができる。
【0048】
(処理温度の影響)
次に、処理温度の影響について説明する。
【0049】
第1の加工技術では、処理温度は、80℃以上である。これは、80℃未満では、被処理体の第1の表面において、被覆領域と非被覆領域との間に、適正なエッチング選択性が生じないためである。
【0050】
以下、
図4を参照して、処理温度の影響をより詳しく説明する。
【0051】
図4には、本願発明者らにより取得された、ガラスのフッ化水素(HF)ガスエッチングの際の処理温度とエッチング反応速度の関係を示す。
【0052】
図4から、ガラスのエッチング速度は、処理温度が80℃までは、温度に対して徐々に増加する。ただし、処理温度が80℃以上になると、エッチング速度は、急激に減少する。その結果、エッチング速度は、80℃未満の温度でピークを示す。
【0053】
この現象は、HFガスの会合/非会合状態に対応していると考えられる。すなわち、HFガスは、80℃未満では、会合状態にあるが、80℃以上では、非会合(単体)状態となる。また、HFガスが会合状態にある場合、1つの分子で見たとき、H-F結合の結合力が相対的に弱まっている。従って、HF分子のF原子は、被処理体の表面と結合し易くなり、フッ化物を形成し易くなる。このような挙動により、80℃未満では、高いエッチング速度が得られるものと考えられる。
【0054】
第1の加工技術において、仮に処理温度を80℃未満とした場合、このようなHFガスの会合状態の影響が生じ、触媒材料の非被覆領域において、被処理体がエッチングされてしまう。従って、前述の反応機構による被覆領域でのエッチング選択性が低下してしまう。
【0055】
これに対して、処理温度を80℃以上とした場合、触媒材料の非被覆領域において、会合状態のHFガスによる高いエッチング力を抑制できる。また、前述の反応機構に基づき、被覆領域の直下では、被処理体のエッチングが可能となる。その結果、80℃以上の処理温度では、触媒材料の被覆領域/非被覆領域の間で、高いエッチング選択性を得ることができる。また、これにより、第1の加工技術では、被覆領域を選択的にエッチングすることができる。
【0056】
(形成される凹部構造)
従来のRIE法では、凹部構造の側壁に「テーパ形状」ができ易く、垂直に近い凹部構造を形成することは難しい。
【0057】
これに対して、第1の加工技術では、「テーパ形状」を有さず、深さ方向の延伸軸に沿って実質的に平行に延在する側壁を有する凹部構造(以下、「垂直凹部構造」と称する)を、比較的容易に形成できる。
【0058】
以下、
図5および
図6を参照して、この理由について説明する。
【0059】
図5および
図6には、第1の加工技術の一過程を模式的に示す。
【0060】
図5には、被処理体1の表面に触媒材料3が設置された状態を模式的に示す。なお、
図5および
図6では、表示の関係上、被処理体1と触媒材料3とは、相互に離間されているように示されているが、実際には、両者は接触している。
【0061】
前述のように、被処理体1は、SiO2であると仮定し、表面は、H終端化されていると仮定している。
【0062】
触媒材料3は、極性官能基を有する有機化合物であり、ここでは、極性官能基としてOH基を仮定している。被処理体1の表面への触媒材料3の設置により、被処理体1には、被覆領域8aおよび非被覆領域8bが形成される。
【0063】
前述のように、80℃以上に加熱された被処理体1をHFガスに暴露することにより、触媒材料3が設置された被覆領域8aの直下で、選択的にエッチングが進行する。これにより、被覆領域8aの直下に、凹部構造が形成される。
【0064】
図6には、被処理体1のエッチングがある程度進行し、ある深さの凹部構造5が形成された状態を示す。
【0065】
前述のように、被覆領域8aには、触媒材料3が設置されている。このため、エッチング反応が進行しても、凹部構造5の底面6の上には、依然として触媒材料3が存在する。すなわち、エッチング処理を継続する間、凹部構造5の底面6は、触媒材料3と接触し続ける。これにより、凹部構造5の底面6は、前述の反応機構でエッチングされ続け、底面6は、深さ方向に進行し続ける。
【0066】
一方、凹部構造5の側壁7に着目した場合、いったんエッチングが開始されると、該側壁7の触媒材料3と接触する部分では、前述の機構に従って、エッチング反応が進行する。より正確に言えば、被処理体1の触媒材料3の側面と接触する部分のみがエッチングされる。これにより、触媒材料3の側面と接触する箇所では、側壁7により区画された凹部構造5が形成される。
【0067】
ただし、触媒材料3は、より深く下降し続けるため、ある時点以降、側壁7の上側の部分は、触媒材料3の側面ともはや接触しなくなる。以下、このような、触媒材料3の側面と非接触となった側壁7を「第1の側壁部分7a」と称する。
【0068】
ここで、前述のように、非被覆領域8bのような、触媒材料3が存在しない箇所では、実質的にエッチングが進行しない。換言すれば、被処理体1において、エッチング反応は、触媒材料3と接触しているときにのみ発生し、それ以外の状態では生じない。このため、側壁7において、第1の側壁部分7aのような、一度触媒材料3と非接触となった箇所は、それ以降、エッチングの進行が事実上停止される。
【0069】
これは、従来のRIE法のようなドライエッチング法とは決定的に異なる特徴である。すなわち、RIE法では、エッチング処理中は、処理体の表面の開口近傍のような、エッチングが既に完了した領域も、依然として反応ガスに暴露され続ける。そのため、エッチング処理の継続により、テーパ形状を有する凹部構造が形成される可能性が高くなる。
【0070】
第1の加工技術では、このような触媒材料3と接触しない第1の側壁部分7aでのエッチング停止作用の結果、触媒材料3の直下でのみ、被処理体1のエッチングが選択的に進行し、最終的に垂直凹部構造を形成することができる。
【0071】
以上の効果により、第1の加工技術では、凹部構造5として、特徴的な垂直凹部構造を形成することが可能となる。
【0072】
ただし、第1の加工技術では、被処理体に対するエッチング速度が、例えば、20nm/秒等、極めて高速となる傾向にある。そのような高いエッチング速度は、被処理体の迅速加工には好ましいものの、被処理体に対して比較的浅い凹部加工を実施する際に問題となり得る。あまりにも高いエッチング速度では、所定の加工深さで正確にエッチングを停止させることは難しいからである。
【0073】
しかしながら、本発明の一実施形態による方法では、被処理体に対してエッチングプロセスを実施する前に、波長が380nm以下の深紫外線(DUV)を含む照射光を触媒材料に照射するステップ(以下、「DUV照射工程」と称する)を有する。このようなDUV照射工程を追加した場合、後続のエッチングプロセスの際に、被処理体のエッチング速度を制御することが可能となる。
【0074】
なお、本発明の一実施形態による方法において、DUV照射工程を実施した後にエッチングプロセスを実施することにより、被処理体のエッチング速度が制御できるのは、DUV照射工程によって極性官能基の数が変化するためであると考えられる。
【0075】
以下、前述の
図5を再度参照して、係る現象について説明する。
【0076】
図5に示すように、被処理体1の表面に触媒材料3が設置された場合、被処理体1には、被覆領域8aおよび非被覆領域8bが形成される。
【0077】
前述のように被覆領域8aでは、触媒材料3の存在により、反応式(1)における反応障壁が低くなり、エッチングプロセスの際に、被覆領域8aで選択的にエッチングが進行する。
【0078】
ただし、DUV照射工程を実施した場合、波長が380nm以下の深紫外線に対する暴露の結果、触媒材料3内で架橋反応が生じる。架橋反応により、触媒材料3に含まれる極性官能基(例えば、C-OH基)の数が減少する。そのため、その後のエッチングプロセスの際に、前述の反応式(1)の反応における反応障壁の低減効果が弱まり、エッチング速度が低下するものと考えられる。
【0079】
また、この場合、DUV照射工程において、深紫外線を含む照射光の照射強度、および照射光の照射時間を変えることにより、触媒材料3に含まれる極性官能基の数も変化する。従って、DUV照射工程における照射条件を変更することにより、エッチングプロセスにおいて、被処理体1のエッチング速度を制御することができる。
【0080】
例えば、比較的深さの浅い凹部構造を形成する場合には、DUV照射工程における照射光の照射強度を高め、および/または照射時間を長くしてもよい。これにより、エッチングプロセスでのエッチング速度が有意に低減され、被処理体に対するオーバーエッチングを防止することが可能となる。
【0081】
また、比較的深い凹部構造を形成する場合には、DUV照射工程における照射光の照射強度を弱め、および/または照射時間を短くしてもよい。これにより、エッチングプロセスでのエッチング速度が高まり、加工時間を短縮することができる。
【0082】
このように、本発明の一実施形態による方法では、垂直に近い凹部構造を有する部材を各種エッチング速度で製造することができる。
【0083】
また、従来のRIE法では、SiO2に対するエッチング深さに限界があり、例えば、フォトレジストをマスク剤とした場合、20μm以上のような、深い垂直凹部構造を精密に形成することは難しいという問題がある。
【0084】
しかしながら、本発明の一実施形態では、被覆領域にフッ素含有ガスの供給が継続される限り、エッチング反応が進行する。このため、高いアスペクト比の凹部構造を形成することができる。例えば、10以上のようなアスペクト比も実現できる。
【0085】
なお、「アスペクト比」とは、凹部構造における開口部の最小寸法に対する深さ方向の寸法を意味する。
【0086】
(本発明の一実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法)
次に、
図7~
図9を参照して、本発明の一実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法について、より詳しく説明する。
【0087】
図7には、本発明の一実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法(以下、単に「第1の方法」と称する)のフローを概略的に示す。
【0088】
図7に示すように、第1の方法は、
(1)第1の表面を有する被処理体を提供するステップであって、
前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下となる元素を含む、ステップ(S110)と、
(2)前記被処理体の前記第1の表面の一部に触媒材料を設置するステップであって、
前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含む、ステップ(S120)と、
(3)波長が380nm以下の深紫外線(DUV)を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップ(S130)と、
(4)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップ(S140)と、
を有する。
【0089】
以下、各ステップについて説明する。
【0090】
(ステップS110)
まず、被処理体が準備される。
【0091】
被処理体は、単一の部材で構成されても、複数の部材で構成されてもよい。
【0092】
被処理体が単一の部材で構成される場合、被処理体は、フッ素(F)との反応により、沸点が550℃以下のフッ化物が形成される元素で構成される。
【0093】
例えば、被処理体は、B、C、Si、P、S、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含んでもよい。また、被処理体は、さらに、H、N、Cl、Br、およびOからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含んでもよい。
【0094】
特に、被処理体は、フッ素との反応により、沸点が200℃以下のフッ化物が形成される元素で構成されることが好ましい。
【0095】
例えば、ケイ素(Si)は、フッ化物SiF4の沸点が-86℃であり、ケイ素を含む被処理体は、第1の方法における被処理体として、好適に使用することができる。
【0096】
なお、AlおよびCaは、それぞれ、フッ化物(AlF3)および(CaF2)の沸点が550℃を超える。従って、AlおよびCaは、フッ素(F)との反応により、沸点が550℃以下のフッ化物が形成される元素とは言えない。
【0097】
被処理体は、例えば、石英ガラス基板、水晶基板、またはケイ素基板であってもよい。
【0098】
一方、被処理体が複数の部材の積層体で構成される場合、被処理体は、最表面(以下、「第1の表面」と称する)に、フッ化物の沸点が550℃以下である元素を含む。
【0099】
前述のように、そのような元素は、例えば、B、C、Si、P、S、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定されてもよい。また、第1の表面は、さらに、H、N、Cl、Br、およびOからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含んでもよい。
【0100】
例えば、被処理体は、基板の上に設置された1または2以上の膜を有し、最表面の膜が、前述の特徴を満たしてもよい。あるいは、複数の膜全体が、前述の特徴を満たしてもよい。
【0101】
そのような膜は、例えば、SiO2、Si3N4、およびSiCの少なくとも1つを有してもよい。
【0102】
あるいは、膜とともに、基板も、前述の特徴を有してもよい。この場合、第1の方法により、基板の内部にまで凹部構造が形成された部材を製造できる。基板は、例えば、石英ガラス基板、水晶基板、またはケイ素基板であってもよい。
【0103】
なお、以降の説明では、煩雑化を避けるため、被処理体は、単一の石英ガラスで構成され、該石英ガラスの第1の表面に、凹部構造が形成されるものと仮定する。
【0104】
(ステップS120)
次に、被処理体の第1の表面に触媒材料が設置される。触媒材料は、第1の表面の所定の領域に設置される。
【0105】
触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含む。極性官能基は、例えば、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、アミド結合、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、エーテル結合、およびエステル結合からなる群から選定された、少なくとも1つを含んでもよい。
【0106】
そのような有機化合物の代表例は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、およびメタクリル樹脂などである。
【0107】
触媒材料は、前述の極性官能基を有する有機化合物のみで構成されても、他の添加剤との混合物として提供されてもよい。
【0108】
後者の場合、触媒材料は、溶媒、バインダ、および/または微粒子等を含んでもよい。
【0109】
触媒材料の設置方法は、特に限られない。
【0110】
触媒材料は、例えば、塗布法、印刷法、スピンコート法、またはスプレー法などを用いて、被処理体の第1の表面に設置されてもよい。
【0111】
図8には、被処理体に触媒材料が設置された様子を模式的に示す。
【0112】
図8に示すように、被処理体110は、第1の表面112および第2の表面114を有する。触媒材料130は、被処理体110の第1の表面112の一部に設置される。
【0113】
なお、
図8に示した例では、触媒材料130は、複数の平行な線状のパターン131として設置されている。しかしながら、これは、単なる一例であって、触媒材料130は、必要な凹部構造に応じて、いかなる態様で設置されてもよい。触媒材料130は、例えば、一本の直線として配置されてもよい。あるいは、触媒材料130は、例えば、丸い点状のパターン、または1つの丸い点として配置されてもよい。
【0114】
触媒材料130の厚さは、特に限られないが、例えば、0.1μm~4μmの範囲であってもよい。前述の定義により、第1の表面112において、触媒材料130が設置された領域は、被覆領域140aと称され、その他の領域は、非被覆領域140bと称される。
【0115】
(ステップS130)
次に、触媒材料130に対して照射光が照射される。照射光は、波長が380nm以下の深紫外線(DUV)を含む。深紫外線の波長は、200nm~365nmの範囲であってもよい。
【0116】
通常の場合、照射光は、光源から照射される。そのような光源は、単一波長(または単一の波長範囲)の光を放射する光源であっても、複数の波長(または複数の波長範囲)の光を放射する光源であってもよい。
【0117】
照射光の照射強度および照射時間等の照射条件は、以降のステップS140において採用されるエッチング速度により定められる。すなわち、照射光の照射強度を強くし、照射時間を長くするほど、ステップS140における被処理体のエッチング速度が低下する。
【0118】
例えば、照射光の照射量P(mJ/cm2)は、20mJ/cm2以上であってもよい。
【0119】
ここで、照射光の照射量Pは、以下の式(2)で表される:
照射量P(mJ/cm2)=
ランプAの照射強度(mW/cm2)×照射時間(sec) (2)
(ステップS140)
次に、触媒材料130が設置された被処理体110が処理チャンバ内に収容される。その後、被処理体のエッチングプロセスのため、処理チャンバ内が所定の温度まで加熱され、処理ガスが供給される。
【0120】
処理ガスは、フッ化水素ガスまたはフッ素ガスを含む。例えば、処理ガスは、アルゴンガスまたは窒素ガスのようなキャリアガスにより、所定の濃度に調整されてもよい。この場合、フッ化水素ガスまたはフッ素ガスの濃度は、例えば、0.1vol%~100vol%の範囲であってもよい。
【0121】
前述のように、処理温度は、80℃以上である。実際の処理温度は、被処理体110(特に、第1の表面112)に含まれる元素、ならびに凹部構造の種類および深さ等により変化するが、通常の場合、200℃~450℃の範囲であり、250℃~400℃の範囲であることが好ましい。処理温度を450℃以下とすることにより、触媒材料130に含まれる有機化合物の変質を抑制することができる。
【0122】
前述のように、このような環境下での被処理体110のエッチング処理により、被覆領域140aにおいて、前述の反応式(1)が生じる。また、反応により生じたフッ化物および水は、気体となって系外に逸散する。その結果、第1の表面112の被覆領域140aに凹部構造が形成される。
【0123】
凹部構造は、有底構造であっても、貫通構造であってもよい。有底構造は、例えば、有底孔および/または有底溝であってもよい。また、貫通構造は、貫通孔であっても、貫通溝であってもよい。
【0124】
図9には、エッチング処理後の被処理体110の断面の一例を模式的に示す。
【0125】
図9に示した例では、凹部構造150は、溝として構成され、上面視、各溝は、平行に延在する。この例では、各溝は、第1の表面112から深さ方向に延伸するものの、第2の表面114までは到達しておらず、従って、有底溝である。
【0126】
なお、ステップS140の後に、凹部構造150の底面に残留する触媒材料130を除去する工程を実施してもよい。例えば、被処理体110を酸溶液、アルカリ溶液、有機溶剤、腐食性ガスまたはプラズマで洗浄することにより、触媒材料130を除去してもよい。
【0127】
以上の工程により、第1の表面112に凹部構造150を有する部材100が製造できる。
【0128】
前述のように、第1の加工技術では、被処理体に対するエッチング速度は、極めて高速となり得る。従って、第1の加工技術は、浅い凹部構造150を正確な深さに形成することは難しいという一面がある。
【0129】
しかしながら、上記のような第1の方法では、ステップS130において、照射光による照射条件を制御することにより、ステップS140における被処理体のエッチング速度を調節できる。
【0130】
従って、第1の方法では、凹部構造150の深さに関わらず、垂直に近い凹部構造150を形成できる。
【0131】
凹部構造150の深さは、例えば、10μm以下であり、5μm以下であってもよい。あるいは、凹部構造150の深さは、例えば、20μm以上であり、100μm以上であってもよい。
【0132】
(本発明の一実施形態による凹部構造を有する部材)
次に、
図10~
図13を参照して、本発明の一実施形態による凹部構造を有する部材について説明する。
【0133】
図10には、本発明の一実施形態による凹部構造を有する部材(以下、「第1の部材300」と称する)の斜視図を示す。また、
図11には、
図10に示した第1の部材300のA-A線に沿った模式的な断面図を示す。
【0134】
図10に示すように、第1の部材300は、相互に対向する第1の表面302および第2の表面304を有する。また、第1の部材300は、第1の表面302の側に、凹部構造350を有する。
【0135】
なお、
図10に示した例では、第1の部材300の第1の表面302および第2の表面304は、略矩形状である。しかしながら、第1の表面302および第2の表面304の形状は、特に限られない。
【0136】
また、
図10に示した例では、凹部構造350は、一方向に延在する有底溝の形状を有し、3つの凹部構造350が平行に配置されている。
【0137】
しかしながら、これは単なる一例であり、凹部構造350の形状および配置は、特に限られない。例えば、凹部構造350は、有底構造であっても、貫通構造であってもよい。有底構造は、例えば、有底孔および/または有底溝であってもよい。また、貫通構造は、貫通孔であっても、貫通溝であってもよい。同様に、凹部構造350のパターンは、いかなる形態であってもよい。
【0138】
図11に示すように、凹部構造350は、第1の表面302に開口352を有する。また、凹部構造350は、底面356および側壁357を有する。換言すれば、凹部構造350は、開口352、底面356および側壁357により区画される。
【0139】
第1の部材300は、例えば、前述の第1の方法により製造することができる。
【0140】
ここで、第1の部材300は、凹部構造350における側壁357が比較的平滑であり、5nm以下の表面粗さ(算術平均粗さRa)を有するという特徴を有する。特に、側壁357の表面粗さRaは、4.5nm以下であることが好ましく、4.0nm以下であることがさらに好ましい。
【0141】
以下、この特徴について説明する。
【0142】
前述の
図5および
図6を参照して説明したように、第1の方法では、被覆領域8a上に設置された触媒材料3により、被覆領域8aが選択的にエッチングされる。また、触媒材料3と被覆領域8aの関係が継続される限り、凹部構造5は、深さ方向に進展し続ける。
【0143】
このようなエッチング機構の場合、エッチングにより生じる凹部構造5の側壁7は、該側壁7が接触する触媒材料3の側面の状態の影響を受ける。
【0144】
一般に、触媒材料3の側面は、凹凸が少なく比較的平滑な表面であると考えられる。そのような触媒材料3の側面の凹凸の影響を反映して、凹部構造5の側壁7も、比較的平滑な表面となる。その結果、凹部構造5の側壁7には、表面粗さが有意に抑制された表面が得られると考えられる。
【0145】
このような平滑性は、従来のエッチング処理された部材では認められない有意なものである。例えば、一般的なRIE法では、凹部の側壁は、加工の間、イオンの衝突の影響を受けるため、比較的大きな凹凸を有し得る。
【0146】
また、第1の部材300は、側壁357に、深さ方向に沿った筋(streak)模様が存在するという特徴を有し得る。
【0147】
以下、
図12を参照して、この特徴について説明する。
【0148】
図12には、凹部構造350の側壁357の表面の形態を模式的に示す。
図12には、凹部構造350において、第1の部材300の第1の表面302に沿った方向の延伸軸および深さ方向の延伸軸を通るように切断した際に得られる側壁357の一部が模式的に示されている。
【0149】
図12に示すように、第1の部材300において、凹部構造350の側壁357には、開口352から底面356まで続く、途切れない連続的な筋(以下、「連続筋」と称する)380が形成されている。
【0150】
なお、
図12では、連続筋380は、3本示されている。しかしながら、これは単なる一例であって、連続筋380の数は、特に限られない。
【0151】
このような連続筋380の模様も、前述の機構により形成されると考えられる。
【0152】
すなわち、エッチングにより生じる凹部構造5の側壁7は、該側壁7が接触する触媒材料3の側面の状態の影響を受ける。
【0153】
また、第1の方法では、側面にそのような凹凸を有する触媒材料3が、凹部構造5の深さ方向に沿って、凹部構造5の底面6にまで進行する。従って、最終的に得られる凹部構造5の側壁7にも、そのような凹凸に対応した連続筋380の模様が形成され易くなる。
【0154】
その結果、側壁357に、深さ方向に沿った筋が生じるものと考えられる。
【0155】
上記のような特徴に加えて、第1の部材300は、凹部構造5のテーパ角θが0゜~2゜の範囲であるという特徴を有し得る。
【0156】
以下、
図13を参照して、この特徴について説明する。
【0157】
図13には、ある凹部の延伸軸Lに沿った断面を模式的に示す。
【0158】
この凹部50は、部材の第1の表面に開口52を有する。また、凹部50は、底面56および側壁57を有する。
【0159】
なお、
図13からは明確ではないが、凹部50は、上面視、丸い孔形状であっても、矩形状の溝形状であってもよい。また、凹部50は、貫通構造であってもよい。その場合、凹部50は、底面56の代わりに、第2の開口を有してもよい。
【0160】
このような凹部50に対して、テーパ角θは、以下のように定められる:
【0161】
【数1】
ここで、aは、開口52の最小寸法である。また、bは、底面56の最小寸法である。また、cは、第1の開口52と底面56との間の距離、すなわち凹部50の深さである。
【0162】
式(3)で表されるテーパ角θは、凹部50の「垂直度」の指標となる。すなわち、テーパ角θが小さいほど、凹部50の側壁57の延伸軸Lに対する傾斜が抑制されていることを示すため、そのような凹部50は、「垂直凹部構造」に近いと言える。特に、第1の部材300において、凹部構造350のテーパ角θが0゜~2゜の範囲にある場合、凹部構造350は、垂直凹部構造を有すると言える。
【0163】
第1の部材300において、凹部構造350のテーパ角θは、1゜以下であってもよい。
【0164】
また、第1の部材300において、凹部構造350の深さは、1μm以上であってもよい。特に、第1の部材300において、凹部構造350の深さは、例えば、2μm以上であり、3μm以上であることが好ましい。
【0165】
(第1の部材300のその他の特徴)
第1の部材300は、単一の部材であっても、複数の部材で構成されてもよい。
【0166】
第1の部材300が単一の部材で構成される場合、第1の部材300は、フッ素(F)との反応により、沸点が550℃以下のフッ化物が形成される元素で構成される。
【0167】
例えば、第1の部材300は、B、C、Si、P、S、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含んでもよい。また、被処理体は、さらに、H、N、Cl、Br、およびOからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含んでもよい。
【0168】
第1の部材300が単一の部材で構成される場合、第1の部材300は、例えば、石英ガラス基板または水晶基板であってもよい。
【0169】
一方、第1の部材300が複数の部材で構成される場合、第1の部材300は、第1の表面302に、フッ化物の沸点が550℃以下となる元素を含む。
【0170】
前述のように、そのような元素は、例えば、B、C、Si、P、S、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定されてもよい。また、第1の表面302は、さらに、H、N、Cl、Br、およびOからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含んでもよい。
【0171】
例えば、第1の部材300は、基板材料の上に設置された1または2以上の膜を有し、最表面の膜が、前述の特徴を満たしてもよい。あるいは、複数の膜全体が、前述の特徴を満たしてもよい。
【0172】
そのような膜は、例えば、SiO2、Si3N4、およびSiCの少なくとも1つを有してもよい。あるいは、膜とともに、基板材料も、前述の特徴を有してもよい。
【0173】
このような特徴を有する第1の部材300は、例えば、MEMSデバイス、マイクロ流体デバイス、半導体デバイス、光学デバイス、メタサーフェスデバイス、樹脂成型用モールド、窓ガラス、およびカバーガラスなど、各種用途に適用できる。
【0174】
(本発明の別の実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法)
次に、
図14~
図16を参照して、本発明の別の実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法について、より詳しく説明する。
【0175】
図14には、本発明の別の実施形態による凹部構造を有する部材を製造する方法(以下、単に「第2の方法」と称する)のフローを概略的に示す。
【0176】
図14に示すように、第2の方法は、
(1)第1の表面を有する被処理体を提供するステップであって、
前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下となる元素を含む、ステップ(S210)と、
(2)前記被処理体の前記第1の表面の第1の領域および第2の領域に触媒材料を設置するステップであって、
前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含み、前記第2の領域に設置される前記触媒材料は、前記第1の領域に設置される前記触媒材料よりも厚い、ステップ(S220)と、
(3)波長が380nm以下の深紫外線(DUV)を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップ(S230)と、
(4)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップ(S240)と、
を有する。
【0177】
以下、各ステップについて説明する。
【0178】
(ステップS210)
まず、被処理体が準備される。なお、このステップS210は、前述の第1の方法におけるステップS110と同様である。従って、ここでは、被処理体の詳細についての記載は省略する。
【0179】
(ステップS220)
次に、被処理体の第1の表面の少なくとも2つの領域に、それぞれ、厚さの異なる触媒材料が設置される。
【0180】
図15には、ステップS220後の被処理体410の一例を模式的に示す。
【0181】
図15に示した例では、被処理体410の第1の表面412上の異なる3つの領域に触媒材料430が設置されている。すなわち、被処理体410の第1の表面412上の、第1の領域419-1には第1の触媒材料430-1が設置され、第2の領域419-2には第2の触媒材料430-2が設置され、第3の領域419-3には第3の触媒材料430-3が設置されている。また、第3の触媒材料430-3は、第2の触媒材料430-2よりも厚さが大きく、第2の触媒材料430-2は、第1の触媒材料430-1よりも厚さが大きくなっている。
【0182】
なお、このような厚さの異なる触媒材料430は、例えば、グレースケール露光法等により設置できる。すなわち、触媒材料430として、前述の第1の方法において説明したような有機化合物を採用した場合、露光プロセスの際の照射強度を面内で変化させることにより、その後の現像プロセスにおいて、面内に厚さの異なる触媒材料430のパターンを形成できる。
【0183】
(ステップS230)
次に、被処理体410の第1の表面412に、深紫外線を含む照射光が照射される。
なお、このステップS230は、前述の第1の方法におけるステップS130と同様である。従って、ここでは、詳細を省略する。
【0184】
(ステップS240)
次に、被処理体410がフッ素含有ガスに暴露される。なお、このステップS240は、前述の第1の方法におけるステップS140と同様である。従って、ここでは、プロセス条件等の記載は省略する。
【0185】
ただし、第2の方法では、ステップS240により、深さの異なる凹部構造を形成することができることに留意する必要がある。
【0186】
図16には、ステップS240後に得られる被処理体410の断面の一例を模式的に示す。
【0187】
図16に示すように、被処理体410の第1の表面412には、3つの凹部構造450-1~450-3が形成されている。このうち、第1の凹部構造450-1は、第1の領域419-1に形成され、第2の凹部構造450-2は、第2の領域419-2に形成され、第3の凹部構造450-3は、第3の領域419-3に形成されている。また、第3の凹部構造450-3は、第2の凹部構造450-2よりも深く形成され、第2の凹部構造450-2は、第1の凹部構造450-1よりも深く形成されている。
【0188】
なお、第2の方法において、ステップS240後に形成される凹部構造450-1~450-3の深さが、ステップS220で設置される触媒材料430の厚さによって変化するのは、DUV照射後に、それぞれの触媒材料430-1~430-3に含まれる極性官能基の量が異なるためであると予想される。すなわち、DUV照射後に、薄い触媒材料430-1に含まれる極性官能基の量は、厚い触媒材料430-2に比べてより少なくなっていると考えられる。そのため、薄い触媒材料430-1が設置された第1の領域419-1では、ステップS240におけるエッチング速度が低下し、凹部構造450-1がより浅くなるものと考えられる。
【0189】
このように、第2の方法では、ステップS220において第1の表面412の各領域419-1~419-3に設置される触媒材料430の厚さを変更することにより、深さの異なる凹部構造450-1~450-3を形成することができる。
【実施例0190】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下の記載において、例1~例5は実施例であり、例11は比較例である。また、例21~例26、例31~例36は実施例であり、例41および例42は比較例である。
【0191】
(例1)
以下の方法で、被処理体の一方の表面(第1の表面)に凹部構造を形成した。
【0192】
まず、被処理体として、石英ガラス製の基板を準備した。また、触媒材料を含む塗工液を準備した。触媒材料にはi線レジストを使用し、これを溶媒(乳酸エチル、酢酸-n-ブチル)と混合することにより、塗工液を調製した。
【0193】
使用したi線レジストは、以下の化学式で表されるノボラック樹脂を含む。
【0194】
【化1】
従って、i線レジストは、極性官能基としてヒドロキシ基を有する。
【0195】
次に、スピンコート法により、基板の第1の表面に塗工液を設置した。さらに、露光および現像処理により、基板の第1の表面に触媒材料のパターンを設置した。パターンは、直径約10μmのドット状パターンとした。
【0196】
次に、低圧水銀ランプ(以下、「ランプA」と称する)を用いて、触媒材料のパターンに照射光を照射した。
【0197】
ランプAは、主波長が254nmのDUVランプであり、触媒材料に対する照射量Pは、72000mJ/cm2とした。
【0198】
次に、基板を約20mm×約20mmの寸法に切断し、切断した試料を触媒材料の側が上向きとなるようにして、処理チャンバ内に設置した。また、処理チャンバ内で試料のガスエッチング処理を実施した。処理ガスには、窒素ガスとフッ化水素ガスの混合ガス(HF/N2=20vol%)を使用した。処理温度は、250℃とした。
【0199】
エッチング処理後に得られた被処理体を、「サンプル1」と称する。
【0200】
サンプル1において、基板の第1の表面には、凹部構造として、複数の円柱状の溝が形成されていることが確認された。
【0201】
(例2)
例1と同様の方法により、基板の第1の表面に凹部構造を形成した。ただし、この例2では、例1の場合とは照射光の照射量Pを変えて、凹部構造を形成した。
【0202】
エッチング処理後に得られた被処理体を、「サンプル2」と称する。
【0203】
サンプル2において、基板の第1の表面には、凹部構造として、複数の円柱状の溝が形成されていることが確認された。
【0204】
(例3)
例1と同様の方法により、基板の第1の表面に凹部構造を形成した。ただし、この例3では、触媒材料のパターンは、幅約10μm、ピッチ約30μmの平行ライン状パターンとした。
【0205】
また、例3では、ランプAの代わりに、高圧水銀ランプ(以下、「ランプB」と称する)を用いて、触媒材料のパターンに照射光を照射した。ランプBは、主波長が365nmのDUVランプであり、触媒材料に対する照射量Pは、104580mJ/cm2とした。
【0206】
エッチング処理後に得られた処理体を、「サンプル3」と称する。
【0207】
サンプル3において、基板の第1の表面には、凹部構造として、複数の平行に延在する溝が形成されていることが確認された。
【0208】
(例4~例5)
例3と同様の方法により、基板の第1の表面に凹部構造を形成した。ただし、例4~例5では、例3の場合とは照射光の照射量Pを変えて、凹部構造を形成した。
【0209】
エッチング処理後に得られた被処理体を、それぞれ、「サンプル4」~「サンプル5」と称する。
【0210】
サンプル4およびサンプル5において、基板の第1の表面には、凹部構造として、複数の平行に延在する溝が形成されていることが確認された。
【0211】
(例11)
以下のように、ICP-RIE法により、被処理体の一方の表面(第1の表面)に凹部構造を形成した。
【0212】
被処理体には、例1と同様の石英ガラス基板を使用した。
【0213】
基板の第1の表面に3層レジストプロセスで厚さ約7μmの平行ライン状マスクパターンを形成した。
【0214】
次に、ICP-RIE法により、基板の第1の表面をエッチング処理した。これにより、第1の表面のマスクパターンが設置されていない領域がエッチングされ、複数の平行に延在する溝が形成された。
【0215】
処理後に得られた被処理体を、「サンプル11」と称する。
【0216】
以下の表1には、各サンプルの作製条件をまとめて示した。
【0217】
【表1】
(評価)
各サンプルにおいて、凹部構造の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、各種寸法を測定した。また、得られた結果から、各サンプルにおけるエッチング速度を算定した。なお、エッチング速度は、凹部構造の深さ(nm)/エッチング時間(sec)から算出した。さらに、前述の方法で、凹部構造の側壁のテーパ角θを測定した。
【0218】
以下の表2には、各サンプルにおいて得られた評価結果をまとめて示す。
【0219】
【表2】
表2から、サンプル11では、凹部構造のテーパ角θが4゜以上と比較的大きくなっており、テーパ形状が生じていることがわかった。これに対して、サンプル1~サンプル5では、凹部構造として、テーパ角θが有意に抑制された「垂直凹部構造」が形成されていることがわかった。
【0220】
図17~
図21には、それぞれ、サンプル1~サンプル5において得られた凹部構造の断面の一例を示した。
【0221】
表2から、サンプル1~サンプル5の間で、エッチング速度が異なることがわかる。例えば、凹部の深さが最大のサンプル1では、22.7nm/secのエッチング速度が得られた。一方、凹部の深さが最小のサンプル5では、4.3nm/secのエッチング速度が得られた。
【0222】
図22には、サンプル1~サンプル5により得られたエッチング速度の測定結果をまとめて示す。
【0223】
図22において、横軸は照射量Pであり、縦軸はエッチング速度である。また、
図22において、破線は、ランプAを使用した際の結果であり、実線は、ランプBを使用した際の結果である。
【0224】
図22から、いずれのランプにおいても、照射量Pを変化させることにより、凹部構造のエッチング速度を制御できることがわかる。特に、照射量Pを大きくする程、エッチング速度が低下する傾向にあることがわかる。
【0225】
このように、ランプの種類によらず、触媒材料に照射される照射量Pを変化させることにより、凹部構造のエッチング速度を制御できることが確認された。
【0226】
(例21)
例3と同様の方法で、被処理体の第1の表面に凹部構造を形成した。
【0227】
ただし、この例21では、以下の手順により、第1の表面の各領域に、3種類の厚さの触媒材料を設置した。
【0228】
まず、スピンコート法により、基板の第1の表面に触媒材料を含む塗工液を設置した。触媒材料には、前述のi線レジストを使用した。
【0229】
次に、グレースケール露光、およびその後の現像処理により、基板の第1の表面に、3本の触媒材料のラインパターン(幅10μm)を設置した。
【0230】
第1のラインパターンの厚さは、0.13μmであり、第2のラインパターンの厚さは、0.54μmであり、第3のラインパターンの厚さは、1.22μmであった。
【0231】
その後、例3の場合と同様の方法により、基板にDUVを照射した。なお、DUV照射には、前述の低圧水銀ランプ(ランプA)を使用した。照射量Pは、72000mJ/cm2(以下、「照射量A」と称する)とした。
【0232】
その後、例3と同様のエッチング処理を実施した。これにより、各ラインパターンに対応する3種類の凹部構造が形成された。
【0233】
以降、第1のラインパターンに対応する凹部構造を「サンプル21-1」と称し、第2のラインパターンに対応する凹部構造を「サンプル21-2」と称し、第3のラインパターンに対応する凹部構造を「サンプル21-3」と称する。
【0234】
(例22)
例21と同様の方法により、触媒材料の厚さの異なる4種類のラインパターンを用いて、被処理体に4つの凹部構造を形成した。
【0235】
得られた4つの凹部構造を、それぞれ、「サンプル22-1」~「サンプル22-4」と称する。
【0236】
(例23)
例21と同様の方法により、触媒材料の厚さの異なる5種類のラインパターンを用いて、被処理体に5つの凹部構造を形成した。ただし、この例23では、基板に対するDUVの照射量Pを144000mJ/cm2(以下、「照射量B」と称する)とした。
【0237】
得られた各凹部構造を、それぞれ、「サンプル23-1」~「サンプル23-5」と称する。
【0238】
(例24)
例21と同様の方法により、触媒材料の厚さの異なる5種類のラインパターンを用いて、被処理体に5つの凹部構造を形成した。ただし、この例24では、基板に対するDUVの照射量Pを216000mJ/cm2(以下、「照射量C」と称する)とした。
【0239】
得られた各凹部構造を、それぞれ、「サンプル24-1」~「サンプル24-5」と称する。
【0240】
(例25)
例21と同様の方法により、触媒材料の厚さの異なる4種類のラインパターンを用いて、被処理体に4つの凹部構造を形成した。ただし、この例25では、基板に対するDUVの照射量Pを216000mJ/cm2(以下、「照射量D」と称する)とした。
【0241】
得られた各凹部構造を、それぞれ、「サンプル25-1」~「サンプル25-4」と称する。
【0242】
(例26)
例25と同様の方法により、触媒材料の厚さの異なる3種類のラインパターンを用いて、被処理体に3つの凹部構造を形成した。
【0243】
得られた各凹部構造を、それぞれ、「サンプル26-1」~「サンプル26-3」と称する。
【0244】
(評価)
SEMを用いて、各サンプルのエッチング深さを測定した。また、得られた結果から、各サンプルの平均エッチング速度を算定した。
【0245】
以下の表3には、各サンプルにおいて使用された触媒材料の厚さおよび得られた評価結果をまとめて示す。
【0246】
【表3】
また、
図23には、評価結果から得られた触媒材料の厚さとエッチング速度の間の関係を示す。
【0247】
図23から、同一のDUV照射条件で比較した場合、触媒材料の厚さを厚くすることにより、エッチング速度が高くなり、得られる凹部構造の深さが増加することが確認された。また、触媒材料を同一の厚さとした場合、前述のように、DUV照射量の増加により、エッチング速度が低下する傾向にあることがわかった。
【0248】
(例31)
例3と同様の方法で、被処理体の第1の表面に凹部構造を形成した。
【0249】
まず、スピンコート法により、基板の第1の表面に触媒材料を含む塗工液を設置した。触媒材料には、前述のi線レジストを使用した。さらに、露光および現像処理により、基板の第1の表面に触媒材料のパターンを設置した。パターンは、幅7.5μmのライン形状とした。
【0250】
その後、例3の場合と同様の方法により、基板にDUVを照射した。なお、DUV照射には、前述の低圧水銀ランプ(ランプA)を使用した。照射量Pは、36000mJ/cm2とした。
【0251】
その後、例3と同様のエッチング処理を実施した。エッチング処理の温度は250℃とし、エッチング時間は500秒とした。これにより、ラインパターンに対応する凹部構造が形成された。
【0252】
エッチング処理後に得られた被処理体を、「サンプル31」と称する。
【0253】
(例32~例36)
例31と同様の方法により、被処理体の第1の表面に凹部構造を形成した。
【0254】
ただし、これらの例では、表面に設置される触媒材料の幅寸法およびエッチング処理条件を変更した。
【0255】
エッチング処理後に得られた被処理体を、それぞれ、「サンプル31」~「サンプル36」と称する。
【0256】
(例41)
以下のように、ICP-RIE法により、被処理体の一方の表面(第1の表面)に凹部構造を形成した。
【0257】
被処理体には、例1と同様の石英ガラス基板を使用した。
【0258】
以下の方法により、基板の第1の表面にマスクパターンを形成した。
【0259】
まず、スパッタプロセスにより、厚さ約1μmのCr膜を作製した。次にフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーおよびウェットエッチングを組み合わせることにより、幅10μmの平行ライン形状のCr膜マスクパターンを形成した。フォトレジストは、その後、アセトンで除去した。
【0260】
次に、ICP-RIE法により、マスクパターンが形成された基板の第1の表面をエッチング処理した。
【0261】
これにより、第1の表面のマスクパターンが設置されていない領域がエッチングされ、複数の平行に延在する溝が形成された。
【0262】
処理後に得られた被処理体を、「サンプル41」と称する。
【0263】
(例42)
以下のように、UVパルスレーザを用いて、処理体の一方の表面(第1の表面)に凹部構造を形成した。
【0264】
被処理体には、例1と同様の石英ガラス基板を使用した。レーザー出力は15μJとし、周波数は40KHzとし、走査速度は100mm/sとした。レーザーを200回走査することにより、第1の表面に溝が形成された。
【0265】
加工後に得られた被処理体を、「サンプル42」と称する。
【0266】
(評価)
各サンプルを用いて、凹部構造の側壁の表面粗さを測定した。側壁の表面粗さは、3D-AFM装置(NX―3DM:Parksystems社)により測定した。
【0267】
なお、表面粗さは、算術平均粗さRaの平均値(Raave)とし、以下のように測定した:
凹部構造の長さ方向(サンプルの表面視、凹部構造が延伸する方向)をX方向とし、幅方向(約7.5μmの寸法の方向)をY方向とし、深さ方向をZ方向とする;
凹部構造の幅が7.5μm以上のサンプルについては、Z=zの深さレベル(すなわち底面)で任意に選定した、X方向に沿った5μmの領域で、表面粗さ測定を実施する;
次に、深さレベルを19.5nmだけ減少させ(すなわち、ピッチ19.5nmで)、同様にX方向に沿った5μmの領域で表面粗さ測定を実施する;
これを順次繰り返し、最後にZ=0の深さレベル(すなわち表面側)で、X方向に沿った5μmの領域で表面粗さ測定を実施する;
このようにして測定された結果のうち、Z=0.2z~0.8zの範囲で得られた値を平均して、算術平均粗さの平均値Raaveを求めた。
【0268】
一方、凹部構造の幅が2.5μmのサンプルについては、Z=5μmの深さレベルで任意に選定した、X方向に沿った5μmの領域で、表面粗さ測定を実施する;
次に、深さレベルを19.5nmだけ減少させ(すなわち、ピッチ19.5nmで)、同様にX方向に沿った5μmの領域で表面粗さ測定を実施する;
これを順次繰り返し、最後にZ=0の深さレベル(すなわち表面側)で、X方向に沿った5μmの領域で表面粗さ測定を実施する;
このようにして測定された結果のうち、Z=1μm~4μmの範囲で得られた値を平均して、算術平均粗さの平均値Raaveを求めた。
【0269】
また、各サンプルにおいて、凹部構造の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、各種寸法を測定した。また、前述の方法で、凹部構造の側壁のテーパ角θを測定した。
【0270】
以下の表4には、各サンプルの作製条件および評価結果をまとめて示す。
【0271】
【表4】
表4に示すように、サンプル31~サンプル36では、凹部構造のテーパ角θは、1゜以下であり、「垂直凹部構造」が形成されていることがわかった。
【0272】
また、サンプル31~サンプル36では、凹部構造の側壁の表面粗さRaは、2.3nm~4.4nmの範囲にあり、極めて平滑な側面が形成されていることがわかった。
【0273】
また、サンプル31~サンプル36では、側壁に「連続筋」が生じていることが確認された。
【0274】
図24には、サンプル34における凹部構造の断面の形態を示す。この図から、サンプル34において、垂直凹部構造が形成されていることがわかる。また、サンプル31~サンプル33、およびサンプル35~サンプル36においても、垂直凹部構造が形成されていることが確認された。
【0275】
(本発明の態様)
本発明は、以下の態様を含む。
【0276】
(態様1)
凹部構造を有する部材を製造する方法であって、
(1)被処理体の第1の表面の一部に触媒材料を設置するステップであって、前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下である元素で構成され、前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含む、ステップと、
(2)波長が380nm以下の深紫外線を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップと、
(3)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップと、
を有し、
前記(3)のステップの後に、前記第1の表面の前記触媒材料の下側に凹部構造が形成される、方法。
【0277】
(態様2)
前記極性官能基は、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、アミド結合、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、エーテル結合、およびエステル結合からなる群から選定された、少なくとも1つを含む、態様1に記載の方法。
【0278】
(態様3)
前記フッ素含有ガスは、フッ化水素ガスまたはフッ素ガスである、態様1または2に記載の方法。
【0279】
(態様4)
前記(3)のステップは、200℃から450℃の範囲で実施される、態様1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【0280】
(態様5)
前記第1の表面は、H、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Br、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含む、態様1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【0281】
(態様6)
前記凹部構造は、有底構造および/または貫通構造を含む、態様1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
【0282】
(態様7)
前記凹部構造は、有底孔、貫通孔、有底溝、および貫通溝の少なくとも1つである、態様6に記載の方法。
【0283】
(態様8)
前記被処理体は、単一の部材で構成される、態様1乃至7のいずれか一つに記載の方法。
【0284】
(態様9)
前記被処理体は、SiO2を有する、態様8に記載の方法。
【0285】
(態様10)
前記被処理体は、1または2以上の層を有する、態様1乃至7のいずれか一つに記載の方法。
【0286】
(態様11)
凹部構造を有する部材を製造する方法であって、
(1)被処理体の第1の表面の第1の領域および第2の領域に触媒材料を設置するステップであって、前記第1の表面は、フッ化物の沸点が550℃以下である元素で構成され、前記触媒材料は、極性官能基を有する有機化合物を含み、前記第2の領域に設置される前記触媒材料は、前記第1の領域に設置される前記触媒材料よりも厚い、ステップと、
(2)波長が380nm以下の深紫外線を含む照射光を前記触媒材料に照射するステップと、
(3)80℃以上で、前記被処理体をフッ素含有ガスに暴露するステップと、
を有し、
前記(3)のステップの後に、前記第1の表面の前記第1の領域において、前記触媒材料の下側に第1の凹部構造が形成され、前記第2の領域において、前記触媒材料の下側に第2の凹部構造が形成され、前記第2の凹部構造は、前記第1の凹部構造よりも深さが深い、方法。
【0287】
(態様12)
前記極性官能基は、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、アミド結合、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、エーテル結合、およびエステル結合からなる群から選定された、少なくとも1つを含む、態様11に記載の方法。
【0288】
(態様13)
前記フッ素含有ガスは、フッ化水素ガスまたはフッ素ガスである、態様11または12に記載の方法。
【0289】
(態様14)
前記(3)のステップは、200℃から450℃の範囲で実施される、態様11乃至13のいずれか一つに記載の方法。
【0290】
(態様15)
前記第1の表面は、H、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Br、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含む、態様11乃至14のいずれか一つに記載の方法。
【0291】
(態様16)
前記第2の凹部構造は、有底孔、貫通孔、有底溝、および貫通溝の少なくとも1つである、態様11乃至15のいずれか一つに記載の方法。
【0292】
(態様17)
前記被処理体は、単一の部材で構成される、態様11乃至16のいずれか一つに記載の方法。
【0293】
(態様18)
前記被処理体は、SiO2を有する、態様17に記載の方法。
【0294】
(態様19)
前記被処理体は、1または2以上の層を有する、態様11乃至16のいずれか一つに記載の方法。
【0295】
(態様20)
第1の表面に凹部構造を有する部材であって、
前記凹部構造は、有底構造および/または貫通構造であり、
前記第1の表面は、B、C、Si、P、S、Ti、V、Cr、Ge、As、Se、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Sn、Sb、Te、I、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuからなる群から選定された、少なくとも1つの元素を含み、
前記凹部構造は、前記第1の表面に形成された第1の開口と、周囲の側壁と、底面または第2の開口とで区画され、
前記側壁は、5nm以下の表面粗さRaを有する、部材。
【0296】
(態様21)
前記側壁は、前記第1の開口から、前記底面または前記第2の開口まで延在する少なくとも1本の筋(streak)を有する、態様20に記載の部材。
【0297】
(態様22)
前記第1の表面は、さらに、H、N、Cl、Br、およびOからなる群から選定された、少なくとも1つを有する、態様20または21に記載の部材。
【0298】
(態様23)
前記第1の開口の最小寸法をaとし、前記凹部構造の底面の最小寸法をbとし、前記凹部構造の深さをcとし、以下の式(3)で表される角度θをテーパ角と称したとき、
【0299】
【数2】
前記テーパ角θは、0゜≦θ≦2゜である、態様20乃至22のいずれか一つに記載の部材。