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特開2024-67065レーザーアブレーション用の試料チャンバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067065
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】レーザーアブレーション用の試料チャンバー
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20240510BHJP
   G01N 21/71 20060101ALI20240510BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G01N1/28 T
G01N21/71
G01N1/00 101Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176863
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】昆 慶明
(72)【発明者】
【氏名】槇納 好岐
【テーマコード(参考)】
2G043
2G052
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043EA08
2G043EA10
2G043KA09
2G052AD22
2G052AD42
2G052CA14
2G052DA09
2G052FD07
2G052GA15
2G052GA24
2G052JA07
(57)【要約】
【課題】レーザーアブレーション用の試料チャンバーにおいて分析可能領域をより広げる。
【解決手段】本発明に係るレーザーアブレーション用の試料チャンバーは、(A)レーザー光の照射対象となる試料を収容する収容部と、(B)収容部に対して搬送ガスを送り出す吹出し部と、(C)試料に対してレーザー光を照射することにより収容部内で発生したエアロゾルを搬送ガスと共に分析装置に排出するための吐き出し部とを有し、上で述べた吹出し部は、(c1)搬送ガスの配管と接続され、搬送ガスの流路を収容部に向かって枝分かれさせて、搬送ガスを枝先に分配する分配部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光の照射対象となる試料を収容する収容部と、
前記収容部に対して搬送ガスを送り出す吹出し部と、
前記試料に対してレーザー光を照射することにより前記収容部内で発生したエアロゾルを前記搬送ガスと共に分析装置に排出するための吐き出し部と、
を有し、
前記吹出し部は、
前記搬送ガスの配管と接続され、前記搬送ガスの流路を前記収容部に向かって枝分かれさせて、前記搬送ガスを枝先に分配する分配部
を有する
レーザーアブレーション用の試料チャンバー。
【請求項2】
前記枝分かれは、前記収容部の幅方向に広がりつつ前記収容部に向かってなされる
請求項1記載の試料チャンバー。
【請求項3】
前記吹出し部は、
前記枝先まで到達した前記搬送ガスの流れを、前記吹出し部から前記吐き出し部への方向に揃える整流部
をさらに含む請求項1記載の試料チャンバー。
【請求項4】
前記吐き出し部は、
分析装置に接続される第2の配管に接続され、前記第2の配管に向かって前記搬送ガス及び前記エアロゾルの枝分かれした流路を集約させて、前記搬送ガス及びエアロゾルを前記第2の配管から排出させる排出部
を有する請求項1記載の試料チャンバー。
【請求項5】
前記枝分かれした流路は、前記収容部側で前記収容部の幅方向に広がっていた枝先から、根元に対応する前記第2の配管に向かって集約される
請求項4記載の試料チャンバー。
【請求項6】
前記吐き出し部は、
前記搬送ガス及び前記エアロゾルの流れを整えて前記排出部における前記枝先に流す第2の整流部
をさらに有する請求項4記載の試料チャンバー。
【請求項7】
前記排出部は、
前記第2の配管に接続する前の部分に、付加ガスを混合させる混合部
を有する請求項4記載の試料チャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーアブレーション用の試料チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、レーザーアブレーション用のセル(試料チャンバーとも呼ぶ)として、レーザー光が照射されてアブレーションされる試料が収容される収容部と、アブレーションされた試料を搬送する搬送ガスが導入される導入部と、アブレーションされた試料とともに搬送ガスが導出される導出部と、導入部と収容部との間に配置され、導入部から導入された搬送ガスが接触して、導入部と導出部とを結ぶ方向に対して交差する方向に搬送ガスを拡散させる拡散部とを備えたものが開示されている。この特許文献1によれば、従来に比べて広い領域をアブレーション可能となるというものである。拡散部の具体例としては、複数のビーズが充填されて構成される例や、ガス流れ方向の下流側に末広がりとなる衝立状の拡散壁を複数配置する構成や、流路抵抗となるフィルタ部材を複数設置する構成が示されている。
【0003】
しかしながら、本特許文献で開示されている拡散部では、ビーズ、衝立状の拡散壁やフィルタ部材に搬送ガスが衝突して、一部は外側に拡散するが一部は内側に戻るような形で流れ、結局のところ中央部分に搬送ガスが集まるようになるので、十分にアブレーション可能な領域が広がらないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報WO2019/202690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、一側面として、レーザーアブレーション用の試料チャンバーにおいて分析可能領域をより広げるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザーアブレーション用の試料チャンバーは、(A)レーザー光の照射対象となる試料を収容する収容部と、(B)収容部に対して搬送ガスを送り出す吹出し部と、(C)試料に対してレーザー光を照射することにより収容部内で発生したエアロゾルを搬送ガスと共に分析装置に排出するための吐き出し部とを有する。そして、上記吹出し部は、(c1)搬送ガスの配管と接続され、搬送ガスの流路を収容部に向かって枝分かれさせて、搬送ガスを枝先に分配する分配部を有する。
【発明の効果】
【0007】
一側面によれば、より広い分析可能領域を有する、レーザーアブレーション用のチャンバーを提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係るシステム全体構成例を示す図である。
図2図2は、試料チャンバーの上面透視図である。
図3図3は、試料チャンバーの側面透視図である。
図4図4は、AA’断面における試料チャンバーの吐き出し側の透視図である。
図5図5は、AA’断面における試料チャンバーの吹出し側の断面図である。
図6図6は、試料チャンバーの透視斜視図である。
図7図7は、収容部における分析可能領域を説明するための図である。
図8図8(a)乃至(d)は、分析可能領域について複数の構成例を比較するための図である。
図9図9は、従来例と本実施の形態とで搬送ガスの滞留時間を比較するための図である。
図10図10(a)及び(b)は、Arガスの混入を試料チャンバー内で行うことの意義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、本発明の実施の形態に係る、レーザーアブレーション用のチャンバーを含むシステム全体構成例を示す。本システムは、試料1が収容される試料チャンバー2と、He等の搬送ガスを試料チャンバー2に送り込む質量流量制御器5と、試料1にレーザー光を照射するレーザー照射機構4と、レーザーアブレーションにより試料1から発生したエアロゾルを試料チャンバー2から取り込んで分析を行う分析装置7と、Ar等の付加ガス(メイクアップガスとも呼ぶ)を試料チャンバー2に送り込む質量流量制御器6とを含む。
【0010】
本実施の形態に係る試料チャンバー2については、以下にその詳細な構成を示すが、特徴の1つとして、質量流量制御器6からの付加ガスを、搬送ガス及びエアロゾルと混合するためのガス混合部3を含む、という点がある。質量流量制御器5は、配管にて試料チャンバー2に接続されている。レーザー照射機構4は、例えば2次元的に広がる試料1の各位置にレーザー光を照射する。分析装置7は、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)質量分析計やICP発光分光分析計であり、配管により試料チャンバー2に接続されている。質量流量制御器6は、配管により試料チャンバー2に接続されている。このほか、質量流量制御器5及び6、レーザ照射機構4及び分析装置7を統合的に制御する制御装置をさらに有する場合もある。なお、質量流量制御器6は、分析装置7に含まれる場合もある。
【0011】
図2に、試料チャンバー2の上面透視図を示す。本実施の形態に係る試料チャンバー2は、試料1を収容するおおよそ矩形の収容部240と、収容部240の上面窓230と、質量流量制御器6に配管を介して接続して搬送ガスを収容部240に送り込む吹出し部210と、分析装置7に配管で接続して収容部240から搬送ガス及びエアロゾルを分析装置7に排出する吐き出し部220とを有する。レーザ照射機構4からのレーザー光は、透明な上面窓230を介して収容部240に収容されている試料1に照射される。
【0012】
吹出し部210は、質量流量制御器5と接続する配管から、搬送ガスの流路を収容部240に向かって枝分かれさせて、搬送ガスを枝先に分配する分配部211と、枝先まで到達した搬送ガスの流れを吹出し部210から吐き出し部220への方向に揃える整流部212とを含む。図2における分配部211では、収容部240の幅方向(矢印245で表す方向であって、吹出し部210から吐き出し部220への方向とは直交する方向)に段階的に広がりつつ、配管から3段階で分岐するような枝分かれがなされている。より具体的には、1本の配管から2つの流路に分岐し、次にこの2つの流路がそれぞれ2つの流路に分岐し、さらにこの4つの流路がそれぞれ4つの流路、すなわち合計16の流路に分岐している。なお、3段階目では、後の図で示すように図2の奥行き方向(収容部240の高さ方向とも呼ぶ)にも2段に分岐しているので、4つの流路がそれぞれ2×2=4つの流路に分岐している。このような枝分かれでは、各段階の分岐先では、流路が合流することは無い。流路が合流することが無いため、収容部240の幅の中央部付近に搬送ガスが集中するような問題を回避できる。
【0013】
整流部212は、分配部211で枝分かれしながら流れてきた搬送ガスの流れを整えるために、ある程度の長さを有する直線状の管である。整流部212は、搬送ガスの流れを整えることに寄与するものであるので、収容部240における分析可能範囲の拡大への寄与は大きくないが、収容部240におけるガスの流れを均一化したり、搬送ガス及びエアロゾルの滞留時間の短縮などに寄与している。
【0014】
吐き出し部220は、吹出し部210と類似の構造を有しており、整流部221と、排出部222とを有している。整流部221は、整流部212と同様の構成を有しており、搬送ガス及びエアロゾルの流れを整えて排出部222における枝先に流すようになっている。より具体的には、上側8本及び下側8本の直線状の流路が設けられている。排出部222は、分配部211に類似の枝分かれ構造を有している。排出部222は、分析装置7に接続される配管に接続され、この配管に向かって搬送ガス及びエアロゾルの枝分かれした流路を集約又は収斂させて、搬送ガス及びエアロゾルなどを配管から分析装置7へ排出させるものである。図2における排出部222における枝分かれは、分配部211と同様に、分析装置7に接続される配管から3段階で分岐するようになっており、整流部221から3段階で1本の配管に集約又は収斂されるようになっている。具体的には、1本の配管から2つの流路に分岐し、次にこの2つの流路がそれぞれ2つの流路に分岐し、さらにこの4つの流路が各々上下2つずつ4つの流路、合計16本の流路に分岐している。分配部211の分岐形状はT字で、2つの経路が対称になっており、均等にガスを分岐するようになっている。一方、排出部222では、搬送ガス及びエアロゾルの流路としては段階的に合流する形になっているが、これは配管が1本であるためである。排出部222の分岐形状はY字で、収容部240で生成される試料のエアロゾルが壁面に衝突するのを抑制するものである。整流部212は収容部240の幅方向に広がっているが、排出部222は、枝分かれの枝先から、根元に対応する1本の配管に向かって集約又は収斂するようになっている。
【0015】
吐き出し部220の構造についても、収容部240の分析可能範囲を広げることに寄与している。このような吐き出し部220が存在しない場合には、収容部240におけるガスの流れが、分析装置7に接続される配管に向かって先細るようになるためである。整流部221が、収容部240の幅方向のいずれの部分についても、搬送ガス及びエアロゾルを均等に引き込むように作用して、それを排出部222によって適切に排出するためである。
【0016】
図2の例では、分配部211における1段階目及び2段階目の分岐では、収容部240の幅方向に流路を効率的に広げてゆくために略直角に流路を分岐させているが、排出部222では、搬送ガス及びエアロゾルを滞留無く速やかに流し出すために、流路を斜めに集約又は収斂させている。
【0017】
本実施の形態においては、排出部222は、付加ガスを搬送ガスなどに混合させるガス混合部3を備える。従来技術では試料チャンバー2と分析装置7とを繋ぐ配管において、付加ガスを混合させていたが、本実施の形態では、試料チャンバー2において、付加ガスを混合させるようになっており、これによって搬送ガスの滞留時間を短縮する効果が得られる。これについては後に説明する。なお、図2の例では、排出部222における1段目の分岐部分に、付加ガスを混合するための配管を、収容部240側から繋ぐことでガス混合部3を付加している。付加ガスを試料チャンバー2において注入することで、搬送ガス及びエアロゾルの排出を補助して、搬送ガス等の滞留時間の短縮に寄与している。
【0018】
図3に、試料チャンバー2の側面透視図を示す。図3によれば、整流部211及び221は、上下2段になっていることが分かる。また、そのため、分配部211の最後の部分では、収容部240の高さ方向にも搬送ガスの排出範囲を広げている。同様に、排出部222は、収容部240の高さ方向に吸入範囲が広がっているが、収納部240側の1段目で2段の流路から1段の流路に集約されている。図3の例では、質量流量制御器6と接続して付加ガスを混合させるための配管は、収容部240の底面より低い位置で且つガス混合部3よりも収容部240側で試料チャンバー2に接続して、そこからガス混合部3に、付加ガスを流し込むようになっている。
【0019】
図4に、図2のAA’断面から左を見た透視図を示す。整流部221における上下8本ずつの矩形の管が最前面に配置されており、奥側にはそれに繋がる流路の管が示されている。なお、質量流量制御器6と接続して付加ガスを混合させるための配管は、左側から試料チャンバー2内の管に接続されており、当該管は試料チャンバー2の中央部に延びており、中央部で上側へ向いた後、ガス混合部3に連結される。一方、図5に、図2のAA’断面から右を見た断面図を示す。ここでも、整流部211における上下8本ずつの矩形の管が最前面に配置されている。
【0020】
図6に、試料チャンバー2全体の透視斜視図を示す。図2乃至図5と併せれば、本実施の形態における特徴的な吹出し部210及び吐き出し部220の構成が明確に把握される。なお、試料チャンバー2の大きさは、例えば3cm×6cmであるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本実施の形態における特徴的な吹出し部210及び吐き出し部220を採用することで、図7に示すように、収容部240の大部分が分析可能領域241となる。分析可能領域241内に矢印で示すように、収容部240内において、収容部240の幅のほぼ全ての範囲において、搬送ガスは吹出し部210から吐き出し部220へ直線的且つ平行に流れるようになる。よって、収容部240において、分析可能領域241内であれば、どのような位置の試料に対してレーザー光を照射したとしても、レーザー光の照射により発生するエアロゾルは、そのまま吐き出し部220に搬送ガスで運ばれることになる。
【0022】
図8(a)乃至(d)を用いて、本実施の形態に係る試料チャンバー2の効果について説明する。なお、図8(a)乃至(d)では、搬送ガスが左から右に流れる場合を示している。図8(a)は、図7と同様であり、本実施の形態における分析可能範囲を点線で示している。一方、図8(b)は、本実施の形態における吹出し部210のみを導入し、吐き出し部220を実装しない場合を示している。このような場合、吐き出し部220ではなく、単にロート状の吐き出し部となっているため、搬送ガスは、ロートの管部分、すなわち吐き出し口に向かって集まるようになるので、点線で表される台形状の分析可能領域が得られる。これは、図8(a)に示す場合に比して分析可能領域は狭くなる。さらに、図8(c)は、特許文献1のようなビーズを並べるような拡散部のみを実装する場合を示している。この場合には、拡散部の出口、すなわち試料の収容部の入り口部分でも、既に搬送ガスは、中央部に集まってしまっており、そこからさらに吐き出し口に向かって集まるようになるので、点線で示されるより小さい台形状の分析可能領域が得られる。このように、上で述べた吹出し部210及び吐き出し部220により、分析可能領域を広げることが出来るようになる。なお、図8(d)では、吹出し部210の整流部211を除去して分配部211のみにし、吐き出し部220の整流部221を除去して排出部222のみにした場合を示している。この場合、分配部211のみでは、図8(d)で波打った矢印で示すように、分配部211から吹き出す搬送ガスのガス流が不安定になるので、搬送ガスの滞留時間が長くなる場合もあるが、収容部240の幅のほぼ全ての範囲において搬送ガスが流れるのは変わらないので、分析可能領域は、ほぼ図8(a)で示した場合と同様である。
【0023】
このように、本実施の形態において分析可能領域の広さという観点においては、分配部211の寄与が大きく、分配部211及び整流部212の組み合わせ、分配部211及び排出部222の組み合わせ、分配部211と整流部212と排出部222との組み合わせであっても、効果を得られる。
【0024】
次に、図9を用いて、搬送ガスの滞留時間という観点でも効果があることを示す。図9(a)は、本実施の形態に係るデータを表し、図9(b)は、特許文献1に係るデータを表している。図9(a)及び(b)共に、縦軸は信号強度を表しており、横軸は時間[s]を表している。この波形は、搬送ガスを2秒間試料チャンバーに注入した後、搬送ガスがいつまで検出されるかを示しており、図9(a)の方が、図9(b)よりも早期に信号が減衰しており、搬送ガスが早期に排出されることが分かる。すなわち、本実施の形態に係る試料チャンバー2の方が、搬送ガスの滞留時間が短いことを表している。
【0025】
また、図10を用いてガス混合部3を試料チャンバー2内に設けることの意義について説明する。図10(b)は、図1に示したシステム全体構成例と同じであるが、図10(a)は、試料チャンバー2の外部の配管で、Ar等の付加ガスを混合する例を示している。質量流量制御器6からAr等の付加ガスが所定の圧力で送り込まれているので、Ar等の付加ガスが搬送ガスを押し出すように作用して、全ガスの流速が速くなる。よって、図10(a)に示すように、試料チャンバー2外の配管で、質量流量制御器6からAr等の付加ガスを混合させると、そもそも収容部240から離れており、混合部分から分析装置7までの、流速が速い区間が短くなって、搬送ガスの滞留時間の短縮には、あまり寄与しない。一方、図10(b)に示すように、試料チャンバー2内にガス混合部3を形成すると、収容部240からの距離が短く、ガス混合部3から分析装置までの、流速が速い区間が長くなるので、搬送ガスの滞留時間が、図10(a)の場合よりも短くなる。このように、滞留時間短縮のため試料チャンバー2内にガス混合部3を導入する意義がある。
【0026】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、一部の構成要素を削除したり、他の構成要素と置換することでも、残余の構成要素で得られる効果を奏することが出来る。また、試料チャンバー2以外の構成も一例であって、同様の機能を有する他の装置と用いられる場合もある。
【0027】
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0028】
本実施の形態に係るレーザーアブレーション用の試料チャンバーは、(A)レーザー光の照射対象となる試料を収容する収容部と、(B)収容部に対して搬送ガスを送り出す吹出し部と、(C)試料に対してレーザー光を照射することにより収容部内で発生したエアロゾルを搬送ガスと共に分析装置に排出するための吐き出し部とを有する。そして、上で述べた吹出し部は、(c1)搬送ガスの配管と接続され、搬送ガスの流路を収容部に向かって枝分かれさせて、搬送ガスを枝先に分配する分配部を有する。
【0029】
分配部では、搬送ガスの流路が枝分かれしており、合流する流路がないので、搬送ガスが一部の領域に集まると行ったことが無くなり、分析可能領域を広くすることが出来るようになる。
【0030】
なお、上で述べた枝分かれは、収容部の幅方向に広がりつつ収容部に向かってなされる場合もある。収容部の幅方向は、例えば、吹出し部から吐き出し部への方向とは直交する方向である。収容部の幅方向の隅の方でも、搬送ガスが安定的に流れるため、分析可能領域を広げることに寄与する。なお、収容部の幅方向だけではなく、収容部の高さ方向への枝分かれを含む場合もある。このような枝分かれは、流路の段階的な分岐と表現される場合もある。
【0031】
また、上で述べた吹出し部は、(c2)枝先まで到達した搬送ガスの流れを、吹出し部から吐き出し部への方向に揃える整流部をさらに含むようにしても良い。これによって、収容部における搬送ガスの流れを安定化させることができ、搬送ガス等の滞留時間を短くすることが出来るようになる。
【0032】
さらに、上で述べた吐き出し部は、(d1)分析装置に接続される第2の配管に接続され、第2の配管に向かって搬送ガス及びエアロゾルの枝分かれした流路を集約(又は収斂)させて、搬送ガス及びエアロゾルを第2の配管から排出させる排出部を有するようにしても良い。すなわち、排出部は、分析装置に接続される第2の配管に接続され、流路を収容部に向かって枝分かれさせて、枝先から搬送ガス及びエアロゾルを収集して、第2の配管から排出するものである。このような排出部を有することで、分配部との組み合わせにおいて、分析可能領域を広げることが出来るようになる。
【0033】
さらに、枝分かれした流路は、収容部側で収容部の幅方向に広がっていた枝先から、根元に対応する第2の配管に向かって集約される場合もある。収容部の幅方向の隅の方でも、搬送ガスが安定的に流れるようになるため、分析可能領域を広げることができるようになる。
【0034】
また、上で述べた吐き出し部は、(d2)搬送ガス及びエアロゾルの流れを整えて排出部における枝先に流す第2の整流部をさらに有するようにしても良い。収容部からの搬送ガス及びエアロゾルを安定的に排出部に流すことが出来るようになる。
【0035】
さらに、上で述べた排出部は、第2の配管に接続する前の部分に、付加ガスを混合させる混合部を有するようにしても良い。このようにすれば、搬送ガス等の滞留時間を短くすることが出来るようになる。
【符号の説明】
【0036】
2 試料チャンバー
210 吹出し部
211 分配部 212 整流部
220 吐き出し部
221 整流部 222 排出部
3 ガス混合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10