IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-端子ホルダ及びバッテリー端子構造体 図1
  • 特開-端子ホルダ及びバッテリー端子構造体 図2
  • 特開-端子ホルダ及びバッテリー端子構造体 図3
  • 特開-端子ホルダ及びバッテリー端子構造体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067078
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】端子ホルダ及びバッテリー端子構造体
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/543 20210101AFI20240510BHJP
【FI】
H01M50/543
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176889
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 友嗣
(72)【発明者】
【氏名】田村 祐二
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 総史
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA01
5H043AA12
5H043AA14
5H043BA12
5H043CA04
5H043DA19
5H043JA12D
(57)【要約】
【課題】ブースターケーブルがバッテリー端子に安定的に接続できるようにバッテリー端子を固定する端子ホルダにおいて、更に、バッテリー端子を強固に固定する端子ホルダを提供する。
【解決手段】端子ホルダ4は、バッテリーポストに接続される環状部41を備えるバッテリー端子5を収容し、バッテリーに取り付けられる。端子ホルダ4は、本体部10と、爪部20と、リテーナ部30と、を備える。本体部10には、バッテリー端子5を収容する収容部11が形成される。爪部20は、収容部11に収容されたバッテリー端子5の環状部41又は縁部42aと係合する。リテーナ部30は、バッテリー端子5の係合が解除される方向の爪部20の動きを規制する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーポストに接続される環状部を備えるバッテリー端子を収容し、バッテリーに取り付けられる端子ホルダにおいて、
前記バッテリー端子を収容する収容部が形成された本体部と、
前記収容部に収容された前記バッテリー端子の前記環状部又は当該環状部の周囲の縁部と係合する爪部と、
前記バッテリー端子の係合が解除される方向の前記爪部の動きを規制するリテーナ部と、
を備えることを特徴とする端子ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の端子ホルダであって、
前記爪部を前記バッテリー端子側に押圧することで、前記爪部の動きを規制する押圧部を備えることを特徴とする端子ホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載の端子ホルダであって、
前記押圧部は、弾性変形可能であり、弾性変形の復元力によって前記爪部を前記バッテリー端子側に押圧することを特徴とする端子ホルダ。
【請求項4】
請求項1に記載の端子ホルダであって、
前記リテーナ部は、前記爪部の動きを規制しない待機位置と、前記爪部の動きを規制する規制位置と、の間で位置を切替可能であることを特徴とする端子ホルダ。
【請求項5】
請求項4に記載の端子ホルダであって、
前記本体部にはヒンジが形成されており、
前記ヒンジには、前記リテーナ部が接続されており、
前記ヒンジを中心として前記リテーナ部を回転させることにより、前記待機位置と前記規制位置とを切替可能であることを特徴とする端子ホルダ。
【請求項6】
請求項1に記載の端子ホルダであって、
前記本体部には、前記リテーナ部が係合される開口部が形成されており、
前記リテーナ部は、
前記爪部の動きを規制する規制壁と、
前記バッテリーポストの軸方向で見たときの前記規制壁の長手方向の一端に接続されるとともに、前記開口部の内壁面に係合される被係合部が形成された第1壁と、
前記バッテリーポストの軸方向で見たときの前記規制壁の長手方向の他端に接続されるとともに、前記開口部の内壁面に係合される被係合部が形成された第2壁と、
を備えることを特徴とする端子ホルダ。
【請求項7】
請求項1に記載の端子ホルダであって、
前記本体部には、前記リテーナ部を係合可能な係合部が形成されていることを特徴とする端子ホルダ。
【請求項8】
請求項1に記載の前記端子ホルダと、
前記バッテリー端子と、
を備え、
前記バッテリー端子は、
前記バッテリーポストが挿入される環状部と、
前記環状部を締め付けて、前記環状部を前記バッテリーポストに固定する締付部と、
端子が接続される端子部と、
を備えることを特徴とするバッテリー端子構造体。
【請求項9】
請求項2に記載の端子ホルダであって、
前記押圧部は、楔形状の楔部であり、前記楔部が前記爪部を押圧することで、前記爪部の動きを規制することを特徴とする端子ホルダ。
【請求項10】
請求項1に記載の端子ホルダであって、
前記爪部は、
基端部において前記本体部に接続され、基端部と先端部の間に湾曲部が形成された軸部と、
前記軸部の先端部に形成され、前記バッテリー端子に引っ掛かる引掛け部と、
を備えることを特徴とする端子ホルダ。
【請求項11】
請求項1に記載の端子ホルダであって、
前記本体部には、前記リテーナ部が係合される開口部が形成されており、
前記爪部を前記本体部に係合した状態において、前記リテーナ部の表面の一部と、前記本体部の表面の一部と、の高さが実質的に一致していることを特徴とする端子ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、バッテリーポストに接続されるバッテリー端子を収容し、バッテリーに取り付けられる端子ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バッテリー端子と、バッテリー端子ストッパと、を開示する。バッテリー端子は、バッテリーポストに接続される環状部と、ハーネスの端子に電気的に接続されるスタッドボルトと、を備える。バッテリー端子ストッパは、バッテリー端子の回り止め等を目的として、バッテリー端子に組み付けられる。具体的には、バッテリー端子ストッパは、装着部と、蓋部と、を備える。装着部には、バッテリー端子を装着するための仮ロック爪が形成されている。仮ロック爪は、バッテリー端子のスタッドボルトの近傍に形成された隙間に係合する。蓋部は、環状部の上面の一部を覆うようにして、バッテリー端子に取り付けられる。これにより、蓋部がバッテリー端子を抑えるため、バッテリー端子ストッパは、バッテリー端子を強固に固定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6279307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリーの蓄電量が不足した場合、バッテリー端子にブースターケーブルを接続し、バッテリーを充電する。特許文献1のバッテリー端子は、環状部が蓋部で覆われているため、ブースターケーブルはスタッドボルトに接続される。しかし、ブースターケーブルの端子はクリップ状であるため、ブースターケーブルの端子をスタッドボルトに安定的に接続できない。そのため、車両振動等によって、スタッドボルトに接続したブースターケーブルが外れ易い。一方で、特許文献1の構成から蓋部を除外すれば、ブースターケーブルを環状部に接続できるため、ブースターケーブルを安定的に接続できる。しかし、この場合は、バッテリー端子ストッパ(端子ホルダ)がバッテリー端子を強固に固定できなくなる。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ブースターケーブルがバッテリー端子に安定的に接続できるようにバッテリー端子を固定する端子ホルダにおいて、更に、バッテリー端子を強固に固定する端子ホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の端子ホルダが提供される。即ち、端子ホルダは、バッテリーポストに接続される環状部を備えるバッテリー端子を収容し、バッテリーに取り付けられる。端子ホルダは、本体部と、爪部と、リテーナ部と、を備える。前記本体部には、前記バッテリー端子を収容する収容部が形成される。前記爪部は、前記収容部に収容された前記バッテリー端子の前記環状部又は当該環状部の周囲の縁部と係合する。前記リテーナ部は、前記バッテリー端子の係合が解除される方向の前記爪部の動きを規制する。
【0008】
係合が解除される方向の前記爪部の動きが前記リテーナ部で規制されるため、前記端子ホルダは、前記バッテリー端子を強固に固定できる。また、前記爪部と前記リテーナ部を備えることで、前記バッテリー端子の前記環状部を覆って抑えることなく、前記バッテリー端子を固定できる。その結果、前記バッテリー端子の前記環状部に前記ブースターケーブルを接続できる。これにより、前記ブースターケーブルを前記バッテリー端子に安定的に接続可能である。
【0009】
前記の端子ホルダにおいては、前記爪部を前記バッテリー端子側に押圧することで、前記爪部の動きを規制する押圧部を備えることが好ましい。
【0010】
これにより、前記押圧部が前記爪部を押圧するため、前記端子ホルダに前記バッテリー端子を更に強固に固定できる。
【0011】
前記の端子ホルダにおいては、前記押圧部は、弾性変形可能であり、弾性変形の復元力によって前記爪部を前記バッテリー端子側に押圧することが好ましい。
【0012】
これにより、簡単な構成で前記押圧部が前記爪部を押圧することができる。
【0013】
前記の端子ホルダにおいては、前記リテーナ部は、前記爪部の動きを規制しない待機位置と、前記爪部の動きを規制する規制位置と、の間で位置を切替可能であることが好ましい。
【0014】
前記リテーナ部が待機位置にあるときに前記爪部を前記バッテリー端子と係合させることにより、あまり強い力を掛けることなく前記端子ホルダと前記バッテリー端子を容易に固定できる。
【0015】
前記の端子ホルダにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記本体部にはヒンジが形成されている。前記ヒンジには、前記リテーナ部が接続されている。前記ヒンジを中心として前記リテーナ部を回転させることにより、前記待機位置と前記規制位置とを切替可能である。
【0016】
前記本体部と前記リテーナ部が接続されているため、前記本体部と前記リテーナ部が分離可能である場合と比較して、部品点数を削減できる。
【0017】
前記の端子ホルダにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記本体部には、前記リテーナ部が係合される開口部が形成されている。前記リテーナ部は、規制壁と、第1壁と、第2壁と、を備える。前記規制壁は、前記爪部の動きを規制する。前記第1壁は、前記バッテリーポストの軸方向で見たときの前記規制壁の長手方向の一端に接続されるとともに、前記開口部の内壁面に係合される被係合部が形成されている。前記第2壁は、前記バッテリーポストの軸方向で見たときの前記規制壁の長手方向の他端に接続されるとともに、前記開口部の内壁面に係合される被係合部が形成されている。
【0018】
前記リテーナ部が前記規制壁に加え、前記第1壁及び前記第2壁を備えることにより、前記リテーナ部の剛性を高くすることができる。更に、前記第1壁及び前記第2壁に被係合部が形成されることにより、前記リテーナ部が前記開口部から外れにくくなる。
【0019】
前記の端子ホルダにおいては、前記本体部には、前記リテーナ部を係合可能な係合部が形成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、前記リテーナ部が前記開口部から外れにくくなる。
【0021】
前記のバッテリー端子構造体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、バッテリー端子構造体は、端子ホルダと、バッテリー端子と、を備える。前記バッテリー端子は、環状部と、締付部と、端子部と、を備える。前記環状部には、前記バッテリーポストが挿入される。前記締付部は、前記環状部を締め付けて、前記環状部を前記バッテリーポストに固定する。前記端子部には、端子が接続される。
【0022】
これにより、前記端子ホルダに前記バッテリー端子が強固に固定されたバッテリー端子構造体を実現できる。
【0023】
前記の端子ホルダにおいては、前記押圧部は、楔形状の楔部であり、前記楔部が前記爪部を押圧することで、前記爪部の動きを規制することが好ましい。
【0024】
前記環状部の位置の変更に応じて前記楔部が前記爪部を押圧するため、前記バッテリーポストへの接続時に前記環状部の径が変化した場合であっても、前記爪部を前記バッテリー端子に係合させた状態を維持できる。
【0025】
前記の端子ホルダにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記爪部は、軸部と、引掛け部と、を備える。前記軸部は、基端部において前記本体部に接続され、前記基端部と先端部の間に湾曲部が形成される。前記引掛け部は、前記軸部の前記先端部に形成され、前記バッテリー端子に引っ掛かる。
【0026】
前記湾曲部を介して前記引掛け部が前記本体部に接続されているため、前記引掛け部の変形可能量を大きくすることができる。そのため、前記爪部が破損しにくい。
【0027】
前記の端子ホルダにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記本体部には、前記リテーナ部が係合される開口部が形成されている。前記爪部を前記本体部に係合した状態において、前記リテーナ部の表面の一部と、前記本体部の表面の一部と、の高さが実質的に一致している。
【0028】
これにより、前記バッテリー端子が前記端子ホルダに正しく固定されているか否かを簡単に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係るバッテリー端子構造体がバッテリーポストに取り付けられる状況を示す斜視図。
図2】端子ホルダの斜視図。
図3】バッテリー端子の斜視図。
図4】リテーナ部を待機位置から規制位置に移動させる状況を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1を参照して、バッテリー端子構造体1について説明する。
【0031】
図1に示すように、バッテリー端子構造体1は、バッテリー2のバッテリーポスト3に取り付けられる。バッテリー端子構造体1は、バッテリーポスト3と、図略の端子と、を接続する。この端子は、例えば、電気機器に電力を供給するためのハーネスの端部に設けられた端子である。あるいは、この端子は、、ヒューズ(バッテリー直上に配置されるヒュージブルリンク)の端子であってもよい。
本実施形態のバッテリー端子構造体1は、自動車のバッテリー用である。ただし、バッテリー端子構造体1は、自動車以外に配置されるバッテリーに取り付けられてもよい。
【0032】
バッテリーポスト3は、バッテリー2の上面に形成されている。バッテリーポスト3は、バッテリー2の上面から立設する形状の端子である。本実施形態では、バッテリーポスト3の軸方向を高さ方向と称する。
【0033】
バッテリー端子構造体1は、端子ホルダ4と、バッテリー端子5と、を備える。バッテリー端子5は、端子ホルダ4に固定される。更に、バッテリー端子5は、バッテリーポスト3に電気的及び機械的に接続される。また、端子ホルダ4は、バッテリー2に対して回転しないように構成される。そのため、バッテリー端子5にトルクが掛かった場合であっても、バッテリー端子5が回転することが抑制される。
【0034】
次に、図2及び図4を参照して、端子ホルダ4について詳細に説明する。
【0035】
端子ホルダ4は樹脂製である。従って、端子ホルダ4は、絶縁性を有するとともに、容易に弾性変形可能である。また、端子ホルダ4は、型を用いて一体的に成形されている。図2に示すように、端子ホルダ4は、本体部10と、爪部20と、リテーナ部30と、を備える。
【0036】
本体部10は、バッテリー2の上面に沿う略板状の部分と、バッテリー2の側面に沿う略板状の部分と、を備える。バッテリー2の側面に沿う部分を備えることにより、端子ホルダ4は、バッテリー2に対して回転しない。ただし、本体部10の形状はこれに限られず、本実施形態とは異なる形状であってもよい。図2及び図4に示すように、本体部10には、収容部11と、開口部12と、係合部13と、ヒンジ14と、が形成されている。
【0037】
収容部11は、バッテリー端子5を収容する部分である。本実施形態の収容部11は、バッテリー端子5の形状に応じた貫通孔である。ただし、収容部11は貫通孔に限られず、有底状の凹部であってもよい。
【0038】
開口部12は、リテーナ部30が入り込む部分である。そのため、開口部12の形状とリテーナ部30の形状は対応している。開口部12は、収容部11を挟んで対向する位置に合計2つ形成されている。ただし、開口部12が形成される位置又は数(言い換えればリテーナ部30の位置又は数)はこれに限られず、本実施形態とは異なる位置又は数であってもよい。例えば、開口部12を1つだけ配置したり、4つの開口部12を収容部11を中心にして四方に配置してもよい。
【0039】
係合部13は、開口部12の内壁面に形成された凹部である。係合部13は、開口部12に入り込んだリテーナ部30の突起に係合可能である。本実施形態では、係合部13は、開口部12の対向する2つの内壁面にそれぞれ形成されている。ただし、この係合部13は一例であり、例えば以下のように変更してもよい。即ち、係合部13が突起で、リテーナ部30に凹部が形成されていてもよい。あるいは、係合部13が1つ又は3つ以上形成されてもよい。
【0040】
ヒンジ14には、リテーナ部30が接続される。ヒンジ14は、薄肉状の部分又はスリットが形成された部分であり、容易に折曲げ可能である。これにより、ヒンジ14を中心としてリテーナ部30を回転可能である。ヒンジ14を介してリテーナ部30を回転させることにより、リテーナ部30を本体部10に係合させたり、本体部10からリテーナ部30を外したりすることができる。なお、ヒンジ14を省略し、本体部10とリテーナ部30を分離可能としてもよい。
【0041】
爪部20は、収容部11に収容されたバッテリー端子5と係合する部分である。従って、爪部20は、収容部11の周囲かつ近傍に形成されている。具体的には、収容部11を挟んで対向するように2つの爪部20が配置されている。後述するように、爪部20は楔部31aにより押圧される。そのため、開口部12(リテーナ部30)が形成される位置の近傍に、爪部20が形成されている。詳細には、爪部20は、開口部12の1つの内壁面(具体的には、開口部12の4つの内壁面のうち収容部11側の内壁面)を構成する位置に形成されている。図2及び図4に示すように、爪部20は、軸部21と、引掛け部22と、を備える。
【0042】
軸部21は、本体部10に接続された細長状の部分である。以下では、軸部21のうち、本体部10に接続される部分を基端部と称し、その反対側の端部を先端部と称する。図4に示すように、軸部21の基端部は本体部10に接続される。具体的には、本体部10のうち、高さ方向に平行な面に接続されている。また、軸部21は、基端部から水平方向に延びるとともに、湾曲して高さ方向に延びる。図4に示すように、この湾曲している部分が湾曲部21aである。湾曲部21aが形成されていることにより、軸部21をバッテリー端子5に近接する側又は離間する側に容易に変形可能である。なお、軸部21は、本体部10の水平方向に平行な面に接続されていてもよい。
【0043】
引掛け部22は、軸部21の先端部に形成されている。引掛け部22は、バッテリー端子5側に突出している部分である。引掛け部22は、バッテリー端子5に引っ掛け可能である。具体的には、バッテリー端子5を高さ方向の下側に移動させて、バッテリー端子5を収容部11に近づける。これにより、バッテリー端子5が引掛け部22に接触して押圧され、引掛け部22がバッテリー端子5から離間する側に移動する。その後、バッテリー端子5が更に挿入されて、バッテリー端子5が引掛け部22を超えることにより、引掛け部22が元の位置に戻る。この状態では、引掛け部22がバッテリー端子5に引っ掛かっているため、バッテリー端子5を高さ方向の上側に移動することが規制される。以上により、バッテリー端子5が端子ホルダ4に固定される。
【0044】
リテーナ部30は、バッテリー端子5と爪部20の係合が解除されないように爪部20の動きを規制する部分である。具体的には、ヒンジ14によりリテーナ部30を回転させることで、リテーナ部30が開口部12に入り込む。これにより、リテーナ部30の位置は、爪部20の動きを規制しない待機位置(図4の上図)から、爪部20の動きを規制する規制位置(図4の下図)に変化する。「爪部20の動きを規制する」とは、詳細には、爪部20とバッテリー端子5の係合が解消する方向(具体的には爪部20がバッテリー端子5から離れる方向)に爪部20が移動することがリテーナ部30により規制されるという意味である。その結果、バッテリー端子5と爪部20の係合が解除されにくくなる。
【0045】
なお、リテーナ部30を用いずに、十分な係合力を維持するためには、例えば、軸部21を太くする等して、爪部20の位置が変化しにくい構成を採用する必要がある。しかし、この構成では、バッテリー端子5を端子ホルダ4に固定する作業に大きな力が必要となり、作業者の作業性が悪くなる。この点、本実施形態では、リテーナ部30で爪部20の動きが規制されるため、爪部20自体は弱い力で位置が変化する構成であっても支障が無い。以上により、バッテリー端子5を取り付ける作業性の良さと、バッテリー端子5の取付後の係合力の高さと、を両立できる。
【0046】
図2及び図4に示すように、リテーナ部30は、規制壁31と、第1壁32と、第2壁33と、を備える。
【0047】
規制壁31は、爪部20に干渉して、爪部20の移動を規制する部分である。規制壁31のうち爪部20に干渉する側の面には、楔部(押圧部)31aが形成されている。リテーナ部30を開口部12に入り込ませることにより、規制壁31の楔部31aが爪部20に接触し、楔部31aが爪部20をバッテリー端子5側に押圧する。詳細には、爪部20との接触により楔部31aが弾性変形により収縮し、その復元力により楔部31aが爪部20を押圧する。爪部20が楔部31aに押圧されることにより、爪部20とバッテリー端子の係合力が高くなり、また両者のガタツキを防止できる。詳細は後述するが、バッテリー端子5が爪部20から離れる方向に移動しても、楔部31aが爪部20を押圧するため、爪部20とバッテリー端子5の係合を維持できる。
【0048】
楔部31aは楔形状であり、リテーナ部30を開口部12に入り込ませるに連れて、リテーナ部30が爪部20を押圧する力が徐々に強くなる(言い換えれば干渉が大きくなる)。これにより、リテーナ部30を開口部12に入り込ませる作業に必要な力を抑えつつ、爪部20を押圧することができる。爪部20を押圧することが可能であれば、楔形状に限られない。例えば、楔部31aに代えて、半球状の押圧部が形成されていてもよい。
【0049】
本実施形態では、リテーナ部30を開口部12に入り込ませた状態において、リテーナ部30は爪部20に接触する。これに代えて、リテーナ部30を開口部12に入り込ませた状態では、リテーナ部30が爪部20に近接するだけで非接触であってもよい。この場合、爪部20が外力を受けて、バッテリー端子5の係合を解除する方向に移動した場合に、爪部20がリテーナ部30に接触する。そのため、爪部20が一定以上はバッテリー端子5から離間しないため、爪部20とバッテリー端子5の係合が維持される。
【0050】
リテーナ部30が開口部12に入り込んだ状態において高さ方向で見たときに、規制壁31の長手方向の一端に接続される壁が第1壁32であり、規制壁31の長手方向の他端に接続される壁が第2壁33である。従って、第1壁32と第2壁33は対向するように配置されている。第1壁32及び第2壁33を設けることにより、規制壁31を補強できる。詳細には、規制壁31が爪部20から力を受けた際に、規制壁31が爪部20から離れる方向に変形しにくくなる。また、第1壁32及び第2壁33が形成されていない場合、樹脂による成型時の倒れが発生したときは、規制壁31が、爪部20から離れる方向に傾斜する形状になることがある。この点、本実施形態では第1壁32及び第2壁33が形成されているため、規制壁31を略垂直に立設させることができる。
【0051】
また、第1壁32及び第2壁33には、それぞれ、係合部13と係合可能な突起(被係合部)が形成されている。そのため、リテーナ部30を開口部12に入り込ませることにより、第1壁32の突起と開口部12の内壁面(詳細には係合部13)が係合し、第2壁33の突起と開口部12の別の内壁面(詳細には別の係合部13)が係合する。これにより、開口部12からリテーナ部30が外れにくい。
【0052】
また、図4の下図に示すように、リテーナ部30が開口部12に入り込んだ状態(規制位置にある状態)では、リテーナ部30のリテーナ上面34と、本体部10の本体上面15と、の高さが実質的に一致している。これにより、作業者は、リテーナ部30を開口部12に入り込ませた後に、バッテリー端子構造体1を視認するだけで、リテーナ部30が問題なく係合部13に係合されているか否かを確認できる。
【0053】
次に、図3を参照して、バッテリー端子5について詳細に説明する。
【0054】
バッテリー端子5は金属製であり、導電性を有している。バッテリー端子5は、例えば金属板に打抜き加工及び折曲げ加工を行うことで形成されている。図3に示すように、バッテリー端子5は、環状部41と、第1板部42と、締付部43と、端子部44と、を備える。
【0055】
環状部41は、上下2段の環状(リング状)の部分を有している。環状部41には、バッテリーポスト3が挿入される。また、環状部41は厳密には隙間があり、有端の環状である。規制壁31の端同士は対向するように位置している。そして、外力を掛けて環状部41の端同士を離接させることにより、環状部41の径を変更することができる。
【0056】
第1板部42は、環状部41の径方向の外側に接続される板状の部分である。第1板部42は、環状部41と同様、上下2段の板状の部材を有している。第1板部42のうち、特に環状部41の周囲の部分を縁部42aと称する。図4に示すように、端子ホルダ4の爪部20は、縁部42aに係合する。ただし、爪部20は、環状部41に係合する構成であってもよい。第1板部42は、2つの部材を組み合わせて構成されている。これらの2つの部材は、水平方向に離接可能に構成されている。
【0057】
締付部43は、環状部41を構成する円弧状の部材を離接させる部分である。即ち、締付部43は、ボルト43aと、連結部材43bと、可動部材43cと、を備える。ボルト43aを回転させることにより、連結部材43bが可動部材43cに挿入されていく。連結部材43bは楔形状であり、連結部材43bが可動部材43cに挿入されることにより、連結部材43bの下方に向かう力が水平方向に変換されて可動部材43cに伝達される。可動部材43cは、第1板部42を挟むように位置している。可動部材43cが水平方向に移動することにより、第1板部42は、可動部材43cと連結部材43bに挟み込まれる。これにより、第1板部42の水平方向に離接可能な2つの部材同士が近接する。その結果、環状部41の端同士が近接する。以上により、環状部41の内径が小さくなる。より一般的に説明すると、バッテリーポスト3に端子ホルダ4を挿入する方向から見た面内において、締付けの強さに応じて環状部41の内径が収縮・拡大する。以上により、環状部41の内径が小さくなることで、環状部41がバッテリーポスト3を圧縮し、環状部41がバッテリーポスト3に固定される。
【0058】
また、第1板部42の水平方向に離接可能な2つの部材が近接することにより、縁部42aは爪部20から離間する方向に移動する。しかし、上述したように、爪部20は楔部31aにより縁部42a側に押圧されている。そのため、縁部42aが爪部20から離間しても、爪部20がそれに追従して縁部42aに近接する。その結果、爪部20による縁部42aの係合が維持される。
【0059】
端子部44は、上述の端子を接続する部分である。上述したように、この端子は、電気機器に電力を供給するハーネスの端子か、ヒューズ(バッテリー直上に配置されるヒュージブルリンク)の端子である。端子部44は、第2板部44aと、スタッドボルト44bと、を備える。第2板部44aは板状の部材である。第2板部44aは、第1板部42に接続されている。詳細には、第2板部44aは、第1板部42の上側の部材とは段差を介して接続され、第1板部42の下側の部材とは段差なしで接続されている。スタッドボルト44bは、第2板部44aから立設する向きで配置される。スタッドボルト44bには、U字状又はO字状の端子がセットされ、ナットをスタッドボルト44bに挿入して締め付けることにより、端子と端子部44とが電気的及び機械的に接続される。なお、端子部44はスタッドボルト44bを備えていなくてもよい。例えば、ネジ溝が切られていない棒状の部材に端子が接続されてもよいし、第2板部44aに直接的に端子が接続されてもよい。
【0060】
第2板部44aが第1板部42の下側の部材と段差なしで接続されることにより、端子部44の高さを低くすることができる。その結果、バッテリー2からの端子の高さ方向の突出長さを抑えることができる。
【0061】
また、バッテリーの蓄電量が不足した場合、ブースターケーブルがバッテリー端子5に接続されて、バッテリーが充電される。ブースターケーブルの端子は、クリップ端子であり、バッテリー端子5の所定部分を付勢力で挟み込むようにして、バッテリー端子5に接続される。ここで、本実施形態では、係合部13が環状部41又は縁部42aに係合しており、係合部13による係合がリテーナ部30により補助されている。そのため、環状部41の上部を抑える蓋部のような構成が不要となる。言い換えれば、本実施形態では、端子ホルダ4は環状部41の上部に接触していない。特に本実施形態では、上下2段の下側の部材に締付部43が係合しているため、尚更、環状部41の上部がフリーとなっている。そのため、環状部41の上部(又は縁部42a、以下同じ)を挟み込むようにして、ブースターケーブルのクリップ端子を接続できる。環状部41はスタッドボルト44bと比較して大径であるため、クリップ端子を安定的に接続できる。そのため、例えば車両振動が発生した場合でも、ブースターケーブルがバッテリー端子5から外れにくい。
【0062】
以上に説明したように、本実施形態の端子ホルダ4は、バッテリーポスト3に接続される環状部41を備えるバッテリー端子5を収容し、バッテリー2に取り付けられる。端子ホルダ4は、本体部10と、爪部20と、リテーナ部30と、を備える。本体部10には、バッテリー端子5を収容する収容部11が形成される。爪部20は、収容部11に収容されたバッテリー端子5の環状部41又は縁部42aと係合する。リテーナ部30は、バッテリー端子5の係合が解除される方向の爪部20の動きを規制する。
【0063】
係合が解除される方向の爪部20の動きがリテーナ部30で規制されるため、端子ホルダ4は、バッテリー端子5を強固に固定できる。また、爪部20とリテーナ部30を備えることで、バッテリー端子5の環状部41を覆って抑えることなく、バッテリー端子5を固定できる。その結果、バッテリー端子5の環状部41にブースターケーブルを接続できる。これにより、ブースターケーブルをバッテリー端子5に安定的に接続可能である。
【0064】
本実施形態の端子ホルダ4は、爪部20をバッテリー端子5側に押圧することで、爪部20の動きを規制する楔部31aを備える。
【0065】
これにより、楔部31aが爪部20を押圧するため、端子ホルダ4にバッテリー端子5を更に強固に固定できる。
【0066】
本実施形態の端子ホルダ4において、楔部31aは、弾性変形可能であり、弾性変形の復元力によって爪部20をバッテリー端子5側に押圧する。
【0067】
これにより、簡単な構成で楔部31aが爪部20を押圧することができる。
【0068】
本実施形態の端子ホルダ4において、リテーナ部30は、爪部20の動きを規制しない待機位置と、爪部20の動きを規制する規制位置と、の間で位置を切替可能である。
【0069】
リテーナ部30が待機位置にあるときに爪部20をバッテリー端子5と係合させることにより、あまり強い力を掛けることなく端子ホルダ4とバッテリー端子5を容易に固定できる。
【0070】
本実施形態の端子ホルダ4において、本体部10にはヒンジ14が形成されている。ヒンジ14には、リテーナ部30が接続されている。ヒンジ14を中心としてリテーナ部30を回転させることにより、待機位置と規制位置とを切替可能である。
【0071】
本体部10とリテーナ部30が接続されているため、本体部10とリテーナ部30が分離可能である場合と比較して、部品点数を削減できる。
【0072】
本実施形態の端子ホルダ4において、本体部10には、リテーナ部30が係合される開口部12が形成されている。リテーナ部30は、規制壁31と、第1壁32と、第2壁33と、を備える。規制壁31は、爪部20の動きを規制する。第1壁32は、バッテリーポスト3の軸方向で見たときの規制壁31の長手方向の一端に接続されるとともに、開口部12に係合されるの内壁面に係合される被係合部(突起)が形成されている。第2壁33は、バッテリーポスト3の軸方向で見たときの規制壁31の長手方向の他端に接続されるとともに、開口部12の内壁面に係合される被係合部(突起)が形成されている。
【0073】
リテーナ部30が規制壁31に加え、第1壁32及び第2壁33を備えることにより、リテーナ部30の剛性を高くすることができる。更に、第1壁32及び第2壁33に被係合部(突起)が形成されることにより、リテーナ部30が開口部12から外れにくくなる。
【0074】
本実施形態の端子ホルダ4において、本体部10には、リテーナ部30を係合可能な係合部13が形成されている。
【0075】
これにより、リテーナ部30が開口部12から外れにくくなる。
【0076】
本実施形態のバッテリー端子構造体1は、端子ホルダ4と、バッテリー端子5と、を備える。バッテリー端子5は、環状部41と、締付部43と、端子部44と、を備える。環状部41には、バッテリーポスト3が挿入される。締付部43は、環状部41を締め付けて、環状部41をバッテリーポスト3に固定する。端子部44には、端子が接続される。
【0077】
これにより、端子ホルダ4にバッテリー端子5が強固に固定されたバッテリー端子構造体1を実現できる。
【0078】
本実施形態の端子ホルダ4において、楔部31aは楔形状であり、楔部31aが爪部20を押圧することで、爪部20の動きを規制する。
【0079】
環状部41の位置の変更に応じて楔部31aが爪部20を押圧するため、バッテリーポスト3への接続時に環状部41の径が変化した場合であっても、爪部20をバッテリー端子5に係合させた状態を維持できる。
【0080】
本実施形態の端子ホルダ4において、爪部20は、軸部21と、引掛け部22と、を備える。軸部21は、基端部において本体部10に接続され、基端部と先端部の間に湾曲部21aが形成される。引掛け部22は、軸部21の先端部に形成され、バッテリー端子5に引っ掛かる。
【0081】
湾曲部21aを介して引掛け部22が本体部10に接続されているため、引掛け部22の変形可能量を大きくすることができる。そのため、爪部20が破損しにくい。
【0082】
本実施形態の端子ホルダ4において、本体部10には、リテーナ部30が係合される開口部12が形成されている。爪部20を本体部10に係合した状態において、リテーナ部30の表面の一部と、本体部10の表面の一部と、の高さが実質的に一致している。
【0083】
これにより、バッテリー端子5が端子ホルダ4に正しく固定されているか否かを簡単に確認できる。
【符号の説明】
【0084】
1 バッテリー端子構造体
2 バッテリー
3 バッテリーポスト
4 端子ホルダ
5 バッテリー端子
10 本体部
20 爪部
30 リテーナ部
図1
図2
図3
図4