IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立金属株式会社の特許一覧 ▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電気ペネトレーション 図1
  • 特開-電気ペネトレーション 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067432
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】電気ペネトレーション
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20240510BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20240510BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H02G3/22
F16L5/02 N
G21D1/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177497
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 政之
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 進
(72)【発明者】
【氏名】割ヶ谷 篤志
(72)【発明者】
【氏名】井戸沼 正倫
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】後藤 靖之
(72)【発明者】
【氏名】久保田 哲平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸春
【テーマコード(参考)】
5G363
【Fターム(参考)】
5G363AA03
5G363BA01
5G363BA07
5G363CA06
5G363CB05
(57)【要約】
【課題】重大事故の条件下を想定した設計がなされる原子力発電所で使用することが可能な電気ペネトレーションを提供する。
【解決手段】筒状に形成されたスリーブ部材10と、スリーブ部材10の内部に互いに間隔を空けて配置された少なくとも2つの絶縁シール部材20A,20Bと、スリーブ部材10の長手方向に沿って2つの絶縁シール部材20A,20Bに渡って配置される配線部材60,60と、スリーブ部材10の内部で2つの絶縁シール部材20A,20Bの最外部分に設けられた外側シール部材と、を備え、配線部材60,60は、外側シール部材21A,21Bと同じ材料からなる絶縁体で被覆されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されたスリーブ部材と、
前記スリーブ部材の内部に互いに間隔を空けて配置された少なくとも2つの絶縁シール部材と、
前記スリーブ部材の長手方向に沿って前記2つの絶縁シール部材に渡って配置される配線部材と、
前記スリーブ部材の内部で前記2つの絶縁シール部材の最外部分に設けられた外側シール部材と、を備え、
前記配線部材は、前記外側シール部材と同じ材料からなる絶縁体で被覆されている、
電気ペネトレーション。
【請求項2】
前記外側シール部材は、前記絶縁体と同じ熱膨張係数を有する、
請求項1に記載の電気ペネトレーション。
【請求項3】
前記配線部材は、絶縁体が四フッ化エチレンを成分として含む重合体、またはエチレンプロピレンジエンゴムからなる、
請求項1に記載の電気ペネトレーション。
【請求項4】
前記外側シール部材は、四フッ化エチレンを成分として含む重合体、またはエチレンプロピレンジエンゴムからなる、
請求項1に記載の電気ペネトレーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ペネトレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や、核燃料再処理施設など(以下「原子力発電所等」とも表記する。)で使用される電気配線貫通部(以下「電気ペネトレーション」とも表記する。)として、不具合が生じたケーブルのみを交換可能な電気ペネトレーションが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-048229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力発電所等で使用される電気ペネトレーションには、上述のケーブル交換性の他に絶縁性能も求められる。原子力発電所で使用される電気ペネトレーションの場合には、原子力発電所の商用運転期間に事故が発生したときにも電気ペネトレーションに接続される計測機器等の機器が動作することが求められる。
【0005】
原子力発電所では、例えば、2011年の東日本大震災時の福島第1原子力発電所で発生した事故を重大事故(以下、シビアアクシデント、または、SAとも表記する。)とし、この重大事故を想定した設計が検討されている。そして、原子炉格納容器に使用される機器では、重大事故の条件下において動作が可能であることが求められている。当該機器に接続される電気ペネトレーションでは、重大事故においても機器を動作させるために必要な所望の電気特性を有することが求められている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、重大事故の条件下を想定した設計がなされる原子力発電所で使用することが可能な電気ペネトレーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の電気ペネトレーションは、筒状に形成されたスリーブ部材と、前記スリーブ部材の内部に互いに間隔を空けて配置された少なくとも2つの絶縁シール部材と、前記スリーブ部材の長手方向に沿って前記2つの絶縁シール部材に渡って配置される配線部材と、前記スリーブ部材の内部で前記2つの絶縁シール部材の最外部分に設けられた外側シール部材と、を備え、前記配線部材は、前記外側シール部材と同じ材料からなる絶縁体で被覆されている。
【0008】
本発明の電気ペネトレーションによれば、配線部材は外側シール部材と同じ材料からなる絶縁体で被覆されていることで、重大事故においても機器を動作させるために必要な所望の電気特性を有することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気ペネトレーションによれば、配線部材は外側シール部材と同じ材料からなる絶縁体で被覆されているため、重大事故の条件下を想定した設計がなされる原子力発電所で使用することが可能を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電気ペネトレーションの構成を説明する横断面視図である。
図2】電気ペネトレーションが格納容器の壁に配置された状態を説明する横断面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る電気ペネトレーション1について、図1を参照して説明する。本実施形態の電気ペネトレーション1は、放射線環境下、特に原子力発電所で使用されるものである。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気ペネトレーション1の構成を説明する横断面視図である。電気ペネトレーション1には、図1に示すように、スリーブ部材10と、2つの絶縁シール部材20A,20Bと、配線部材60,60と、が設けられている。
【0013】
スリーブ部材10は、ステンレス鋼等の金属材料を用いて筒状に形成された部材である。本実施形態では、スリーブ部材10が、円筒状に形成された部材である例に適用して説明する。
【0014】
電気ペネトレーション1における絶縁シール部材20Aを有する内部方向の半分を一次シール部2Aとも表記する。また、絶縁シール部材20Bを有する外部方向の半分を二次シール部2Bとも表記する。
【0015】
フランジ部11は、スリーブ部材10を格納容器の壁貫通部に取り付ける際に用いられる部材である。フランジ部11は、スリーブ部材10の外周面から径方向外側に向かって突出し、かつ、外周面の周方向にわたって延びる形状を有している。
【0016】
絶縁シール部材20A,20Bは、スリーブ部材10の内部に互いに間隔を開けて配置された部材である。また、絶縁シール部材20A,20Bは、内側と外側との間を気密に封止する部材である。絶縁シール部材20Aは、スリーブ部材10における内側の開口端に配置され、絶縁シール部材20Bは、スリーブ部材10における外側の開口端に配置される。
【0017】
絶縁シール部材20A,20Bには、スリーブ部材10の外部から内部に向かって順に、外側シール部材21A,21Bと、樹脂部材22A,22Bと、板部材23A,23Bと、が設けられている。
【0018】
外側シール部材21A,21Bは、樹脂部材22A,22Bにおける開口端側の面を覆う層状に形成された部材である。
【0019】
外層シール部材21A,21Bは、配線部材60を構成する絶縁体と同じ材料で構成されることがよい。これにより、重大事故時において配線部材60の絶縁抵抗が低下しにくくなり、電気ペネトレーション1に接続された周辺機器が動作する状態を維持することができる。また、外層シール部材21A,21Bは、配線部材60を構成する絶縁体と同じ熱膨張係数を有する材料で構成されることがよい。これにより、電気ペネトレーション1の内部の気密性を高めることができる。
【0020】
外側シール部材21A,21Bを構成する材料としては、例えば、四フッ化エチレンを成分として含む重合体またはエチレンプロピレンジエンゴムが挙げられる。四フッ化エチレンを成分として含む重合体としては、例えば、四フッ化エチレンとポリオレフィンとで構成された架橋型の共重合体が挙げられる。
【0021】
外層シール部材21A,21Bの厚さは、重大事故時における圧力差に耐え、外側シール部材21A,21Bへの高温水蒸気の透過を防止することができ、また、施工上の品質を確保することができる厚さにすることがよい。
【0022】
本実施形態では、外側シール部材21A,21Bが単層で形成されている例に適用して説明する。なお、外側シール部材21A,21Bは多層構造を有してもよい。
【0023】
樹脂部材22A,22Bは、外側シール部材21A,21Bと板部材23A,23Bとの間に配置され、外側シール部材21A,21Bと板部材23A,23Bとの間を密封する部材である。樹脂部材22A,22Bは、熱硬化樹脂を用いて形成される。本実施形態では、エポキシ樹脂を用いて形成される例に適用して説明する。
【0024】
板部材23A,23Bは、樹脂部材22A,22Bにおける中央側の面を覆う板状に形成された部材である。板部材23A,23Bは、例えばセラミック等を用いて形成される。
【0025】
配線部材60,60は、スリーブ部材10の開口端から外部に向かって延びる部材である。配線部材60の数は、導体50の数に応じて変更されてもよい。
【0026】
2本の配線部材60,60は、スリーブ部材10の内部方向の開口端から外部方向の開口端から外部に向かって延びて配置される。
【0027】
配線部材60は、シビアアクシデント(すなわち、重大事故)を想定した蒸気暴露試験に合格する絶縁抵抗を有するものである。配線部材60,60には、錫めっき軟銅線からなる素線を用いて形成された配線部材用導体(図示せず。)と、当該配線部材用導体の周囲を被覆する絶縁体61と、が設けられている。本実施形態の配線部材用導体は、錫めっき軟銅線などからなる複数本の金属素線が同心撚りまたは集合撚りによって撚り合わされて形成されたものからなる。
【0028】
絶縁体61は、外層シール部材21A,21Bを構成する材料と同じ材料で構成されることがよい。また、絶縁体61は、外層シール部材21A,21Bを構成する材料と同じ材料で構成されることがよい。絶縁体61を構成する材料としては、例えば、四フッ化エチレンを成分として含む重合体またはエチレンプロピレンジエンゴムが挙げられる。四フッ化エチレンを成分として含む重合体としては、四フッ化エチレンとポリオレフィンとで構成された架橋型の共重合体が挙げられる。
【0029】
このような材料で絶縁体61が構成されることにより、配線部材60は、電気ペネトレーション1に接続されている周辺機器が重大事故の条件下においても動作することが可能な電気特性を有することができる。すなわち、配線部材60は、重大事故を想定した蒸気曝露試験に合格する絶縁抵抗を有することができる。そのため、重大事故が発生した場合であっても、電気ペネトレーション1に接続される周辺機器が重大事故の条件下で動作することができる。
【0030】
特に、絶縁体61が、四フッ化エチレンとポリオレフィンとで構成された架橋型の共重合体からなり、さらに上記の架橋型の共重合体におけるポリオレフィンがポリプロピレンである場合、上記の架橋型の共重合体におけるポリオレフィンがポリプロピレン以外である場合と比較して、電気ペネトレーション1がSAに基づいて条件が定められた蒸気曝露試験中および蒸気曝露試験後において高い絶縁抵抗値を有することができ、また、高い耐電圧特性や耐漏洩特性も有することができる。
【0031】
本実施形態では、絶縁体61が架橋型の共重合体のうち、ポリオレフィンがポリプロピレンである共重合体を用いて形成された例に適用して説明する。
【0032】
本実施形態では、絶縁体61が単層で形成されている例に適用して説明する。なお、絶縁体61は多層構造を有してもよい。
【0033】
次に、上記の構成を有する電気ペネトレーション1における評価結果について説明する。評価結果の比較のために、比較対象となる構成を有する電気ペネトレーション201の構成を図2に示す。
【0034】
電気ペネトレーション201には、図3に示すように、2つの絶縁シール部材120A,120Bと、配線部材260,260が電気ペネトレーション1と異なり、他の構成は電気ペネトレーション1と同じである。
【0035】
配線部材260は、周囲を被覆する絶縁体261が配線部材60と異なり、他の構成は配線部材60と同じである。絶縁体261は、ポリオレフィン樹脂組成物を用いて形成される点が配線部材60と異なる。
【0036】
絶縁シール部材120A,120Bは、外側シール部材121A,121Bがクロロスルホン化ポリエチレンを用いて形成される点が、絶縁シール部材20A,20Bと異なる。
【0037】
次に、本実施形態の電気ペネトレーション1、および電気ペネトレーション201に対して行った蒸気暴露試験の結果について説明する。蒸気曝露試験に用いた電気ペネトレーション1には、10本の配線部材60が設けられている。
【0038】
なお、蒸気曝露試験としては、対象の電気ペネトレーションを240℃の雰囲気中に10分曝露し、その後200℃の雰囲気中に168時間(7日間)曝露する条件(沸騰水型原子炉の場合)で蒸気曝露が行われた。電気ペネトレーション1における蒸気曝露前の絶縁抵抗の値および蒸気曝露後の絶縁抵抗の値が、比較対象である電気ペネトレーション201における蒸気曝露後における絶縁抵抗の値よりも大きい場合を、重大事故を想定した蒸気曝露試験に合格する絶縁抵抗を有すると判定した。
【0039】
蒸気曝露前の絶縁抵抗の値は、電気ペネトレーション1が電気ペネトレーション201よりも1.0×10倍以上大きい値であった。電気ペネトレーション1の蒸気曝露前の絶縁抵抗の値は、10本の配線部材60における絶縁抵抗の値の平均値である。
【0040】
蒸気曝露後の絶縁抵抗の値は、電気ペネトレーション1が電気ペネトレーション201よりも1.0×10倍以上大きい値であった。電気ペネトレーション1の蒸気曝露後の絶縁抵抗の値は、10本の配線部材60における絶縁抵抗の値の平均値である。
【0041】
この結果から、電気ペネトレーション1は、重大事故を想定した蒸気曝露試験に合格する絶縁抵抗を有することが分かった。つまり、電気ペネトレーション1は、SA発生時にも絶縁性能の保持が可能な電気ペネトレーションとして好適であることが分かった。
【0042】
電気ペネトレーション1は、SAに基づいて条件が定められた曝露試験中および曝露試験後に基準で定める絶縁抵抗値を保持することができる。また、蒸気曝露後において高い耐電圧特性や耐漏洩特性も有することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明を上記の実施形態に適用したものに限られることなく、これらの実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0044】
1…電気ペネトレーション、 10…スリーブ部材、 20A,20B…絶縁シール部材、 21A,21B…外側シール部材、 60,60…配線部材、 61…絶縁体
図1
図2