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  • 特開-懸濁物の吸引体 図1
  • 特開-懸濁物の吸引体 図2
  • 特開-懸濁物の吸引体 図3
  • 特開-懸濁物の吸引体 図4
  • 特開-懸濁物の吸引体 図5
  • 特開-懸濁物の吸引体 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067617
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】懸濁物の吸引体
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A01K63/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177829
(22)【出願日】2022-11-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152180
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】島袋 亮道
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CA01
2B104CA03
2B104EA01
2B104EB04
2B104EB27
(57)【要約】
【課題】本発明は、魚類等を飼育、養殖する水槽内の水を泡沫分離装置に送る際に水槽内に設置される、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に回収する吸引体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、泡沫分離装置に接続する吸水管の先端に取り付けられる取付板と、取付板と、任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる合わせ板と、からなり、取付板に、吸水管の先端に取り付けられる部分に開口部が形成されており、取付板と合わせ板の一部が、水面に没する高さに配置されることで、取付板と合わせ板の隙間から、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に吸引できることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡沫分離装置に接続する吸水管の先端に取り付けられる取付板と、
取付板と、任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる合わせ板と、
取付板と合わせ板の間隔を保持するスペーサーと、
からなり、
取付板に、吸水管の先端に取り付けられる部分に開口部が形成されており、
取付板と合わせ板の一部が、水面に没する高さに配置されることで、
取付板と合わせ板の隙間から、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に吸引できる
ことを特徴とする懸濁物の吸引体。
【請求項2】
泡沫分離装置に接続する吸水管の先端に取り付けられる取付板と、
取付板と、任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる合わせ板と、
取付板と合わせ板の間隔を保持するスペーサーと、
からなり、
取付板に、吸水管の先端に取り付けられる部分に開口部が形成されており、
取付板と合わせ板の一部が、水面に没する高さに、水面に対して仰角または伏角をなした状態で配置されることで、
取付板と合わせ板の隙間から、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に吸引できる
ことを特徴とする懸濁物の吸引体。
【請求項3】
泡沫分離装置に接続する吸水管の先端に取り付けられる取付板と、
取付板と、任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる合わせ板と、
取付板と合わせ板の間隔を保持するスペーサーと、
からなり、
取付板に、吸水管の先端に取り付けられる部分に開口部が形成されており、
取付板の天端部及び底端部が、重ね合わされる合わせ板の天端部及び底端部よりも、それぞれ高い位置にあり、
取付板と合わせ板の一部が、水面に没する高さに、水面に対して仰角または伏角をなした状態で配置されることで、
取付板と合わせ板の隙間から、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に吸引できる
ことを特徴とする懸濁物の吸引体。
【請求項4】
泡沫分離装置に接続する吸水管の先端に取り付けられる取付板と、
取付板と、任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる2枚以上の合わせ板と、
取付板と合わせ板、合わせ板と合わせ板、のそれぞれの間隔を保持するスペーサーと、
からなり、
取付板に、吸水管の先端に取り付けられる部分に開口部が形成され、
合わせ板のうち、取付板から最も離れて重ね合わされる合わせ板を除いた全ての合わせ板に、取付板の開口部と重なる位置に開口部が形成されており、
取付板の天端部及び底端部が、重ね合わされる合わせ板の天端部及び底端部よりも、それぞれ高い位置にあり、
取付板と合わせ板の一部が、水面に没する高さに、水面に対して仰角または伏角をなした状態で配置されることで、
取付板と合わせ板の隙間から、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に吸引できる
ことを特徴とする懸濁物の吸引体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類等を飼育、養殖する水槽内の水を泡沫分離装置に送る際に水槽内に設置される、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に回収する吸引体に関する。
【背景技術】
【0002】
魚類等を飼育、養殖する水槽では、曝気の際に発生する気泡のほか、泡状の懸濁物が水面を浮遊する。
この泡状の懸濁物は、一般的には、水槽の水面高さの壁面部分に排水口を設けることで、排水と一緒にオーバーフローさせて経路外に排出することができる。
しかし、ゴムシートを敷設する構造の繊維強化プラスチック(FRP)などによる水槽では、水密を保つために、壁面部分に穴を開けることができない。
このような水槽では、水槽内から直接懸濁物を吸引して、水槽外に排出する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、曝気槽等の水面に浮遊する泡の層を吸引除去できる泡除去装置が開示されている。
この装置は、先端を閉鎖し、側面にスリットを設けた吸引管を、スリットの下端が曝気槽の水面に没する高さで上下方向に向けて送風機の吸引配管に接続し、水面に波立ちがあっても安定した吸引ができるように構成されており、吸引管の周りに連続した泡の層が形成されると、泡自体の付着力により、水面の広い範囲から泡の層を引き寄せて吸引することができる。
また、泡の層が、水生動物飼育用水の曝気によって生じる蛋白質浮滓のように、腐敗性の懸濁物を含む場合には、吸引配管の途中に泡分離器を設けて泡を除去し、送風機の汚染を防止することができる。
【0004】
しかし、魚類等を飼育、養殖する水槽の懸濁物は、水面に浮遊するだけでなく、水中にも多く存在するが、特に、水中の懸濁物は、主に、飼料の残査や魚類等の排泄物などの蛋白質を主成分とする老廃物であり、これを放置すると、アンモニア化して水が汚染され、病原性のバクテリア等が発生し易い環境になってしまうため、水面を浮遊する泡状の懸濁物だけでなく、水中に浮遊する懸濁物も回収しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-061460公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため、魚類等を飼育、養殖する水槽内の水を泡沫分離装置に送る際に水槽内に設置される、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に回収する吸引体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる懸濁物の吸引体は、
泡沫分離装置に接続する吸水管の先端に取り付けられる取付板と、
取付板と、任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる合わせ板と、
取付板と合わせ板の間隔を保持するスペーサーと、
からなり、
取付板に、吸水管の先端に取り付けられる部分に開口部が形成されており、
取付板と合わせ板の一部が、水面に没する高さに配置されることで、
取付板と合わせ板の隙間から、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に吸引できる
ことを特徴とする。
【0008】
取付板と合わせ板を、任意の間隔に保持した状態で重ね合わせることで、その隙間を通過できる大きさの懸濁物のみを吸引できる。
間隔は、任意に設定でき、例えば、5~10mm程度が望ましい。
吸引体を、一部が、水面に没する高さに配置させることで、水面と水中の両方から同時に懸濁物を吸引できる。
【0009】
本発明にかかる懸濁物の吸引体は、
泡沫分離装置に接続する吸水管の先端に取り付けられる取付板と、
取付板と、任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる合わせ板と、
取付板と合わせ板の間隔を保持するスペーサーと、
からなり、
取付板に、吸水管の先端に取り付けられる部分に開口部が形成されており、
取付板と合わせ板の一部が、水面に没する高さに、水面に対して仰角または伏角をなした状態で配置されることで、
取付板と合わせ板の隙間から、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に吸引できる
ことを特徴とする
【0010】
吸引体が、水面に対して仰角または伏角をなしていることで、懸濁物が吸引されやすくなる。
【0011】
本発明にかかる懸濁物の吸引体は、
泡沫分離装置に接続する吸水管の先端に取り付けられる取付板と、
取付板と、任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる合わせ板と、
取付板と合わせ板の間隔を保持するスペーサーと、
からなり、
取付板に、吸水管の先端に取り付けられる部分に開口部が形成されており、
取付板の天端部及び底端部が、重ね合わされる合わせ板の天端部及び底端部よりも、それぞれ高い位置にあり、
取付板と合わせ板の一部が、水面に没する高さに、水面に対して仰角または伏角をなした状態で配置されることで、
取付板と合わせ板の隙間から、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に吸引できる
ことを特徴とする。
【0012】
吸引体を構成する取付板と合わせ板が、ずれた位置で重ね合わされていることで、懸濁物が吸引されやすくなる。
【0013】
本発明にかかる懸濁物の吸引体は、
泡沫分離装置に接続する吸水管の先端に取り付けられる取付板と、
取付板と、任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる2枚以上の合わせ板と、
取付板と合わせ板、合わせ板と合わせ板、のそれぞれの間隔を保持するスペーサーと、
からなり、
取付板に、吸水管の先端に取り付けられる部分に開口部が形成され、
合わせ板のうち、取付板から最も離れて重ね合わされる合わせ板を除いた全ての合わせ板に、取付板の開口部と重なる位置に開口部が形成されており、
取付板の天端部及び底端部が、重ね合わされる合わせ板の天端部及び底端部よりも、それぞれ高い位置にあり、
取付板と合わせ板の一部が、水面に没する高さに、水面に対して仰角または伏角をなした状態で配置されることで、
取付板と合わせ板の隙間から、水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に吸引できる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
魚類等を飼育、養殖する水槽内の水中及び水面に浮遊する懸濁物を同時に回収して、泡沫分離装置に送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】吸引体の使用例を示す概略構成図
図2】吸水管の先端に取り付けた吸引体の構成を側方から示した概略断面図
図3】吸引体の吸水管への取り付け例を示す概略構成図
図4】吸引体の構成を示す平面図
図5】吸水管の先端に取り付けた吸引体の構成を天端部(底端部)側から示した概略断面図
図6】吸引体の吸水管への図3とは別の取り付け例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施例にかかる懸濁物の吸引体1は、図1に示すように、泡沫分離装置2に接続する吸水管3の先端に取り付けられる。
吸引体1は、一部が、水槽4中で、水面に没する高さに、水面に対して仰角をなした状態で配置される。
吸引体1は、1の泡沫分離装置2に対して、2以上設置することもでき、泡沫分離装置2に接続する1の吸水管3に、2以上設置することもできる。
【0017】
吸引体1は、図2及び3に示すように、泡沫分離装置2に接続する吸水管3の先端に取り付けられる取付板5と、取付板5と任意の間隔に保持した状態で重ね合わされる合わせ板6と、からなる。
取付板5と合わせ板6の形状は、図1から6のすべての実施例において、方形であるが、楕円形でも円形でも任意の形状を選択することができ、取付板5と合わせ板6は、同じ形状ではなく、異なる形状を選択することもできるし、形状だけでなく、それぞれの大きさも自由に選択することができる。
また、取付板5と合わせ板6は、平板ではなく、湾曲した形状の部材を選択でき、それぞれが異なる材質の部材を選択できる。
さらに、取付板5と合わせ板6の厚さは、自由に選択できる。
【0018】
取付板5と合わせ板6の間には、間隔を保持するためのスペーサー7が設置されている。
スペーサー7の厚さ、つまり、取付板5と合わせ板6の間隔は、懸濁物の吸引の目的を果たすことができれば、自由に選択できる。
スペーサー7の設置場所は、図2の実施例では、水平方向に対向する2辺の縁に設置されているが、任意の場所に設置することができ、複数設置することもできる。
吸引体1は、取付板5と合わせ板6の間隔を保持できれば、スペーサー7を設けない構成にすることもできる。
【0019】
スペーサー7は、これを取付板5と合わせ板6の辺の縁に設置する場合、例えば、1以上の任意の辺に設置することができるし、4辺の全てに設置することもできる。
スペーサー7を任意の辺の縁に設置する場合、辺の縁の途中に1以上の空隙を設けることもできるし、4辺の縁に設置されたスペーサー7が交差する吸引体1の角部に空隙を設けることもできる。
空隙が設けられる場合、水槽4内の水は、辺の縁の途中の空隙部分や、スペーサー7が交差する吸引体1の角部の空隙から吸引される。
【0020】
取付板5には、図4及び5に示すように、吸水管3の先端に取り付けられる部分に開口部9が形成されている。
そのため、取付板5と合わせ板6の隙間から吸引された、懸濁物8を含む水槽4内の水は、取付板5の開口部9から吸水管3内に吸引され、泡沫分離装置2に送られる。
合わせ板6を2以上、使用する場合、2以上の合わせ板6のうち、取付板5から最も離れて重ね合わされる合わせ板6を除いた全ての合わせ板6に、取付板5の開口部9と重なる位置に開口部9が形成される。
それにより、取付板5と合わせ板6の隙間、合わせ板6と合わせ板6の隙間、のそれぞれから吸引された、懸濁物8を含む水槽4内の水が、取付板5の開口部9から吸水管3内に吸引され、泡沫分離装置2に送られる。
【0021】
取付板5は、その天端部及び底端部または天端部のみが、重ね合わされる合わせ板6の天端部及び底端部または天端部のみよりも、それぞれ高く位置するように設置される。
つまり、取付板5と合わせ板6は、完全に輪郭が一致するように重ね合わされて設置されるのではなく、少しずらして重ね合わされる。
これにより、水槽4内の水面が波打っても、水面に浮遊する懸濁物8を取付板5の天端部が補足することができ、懸濁物8の吸引効率を高めることができる。
なお、懸濁物8の吸引効率を求めなければ、取付板5の天端部は、重ね合わされる合わせ板6の天端部より低い位置に設置することもできるし、取付板5と合わせ板6を、完全に輪郭が一致するように重ね合わせることもできる。
【0022】
吸引体1は、一部が、水面に没する高さに配置される。
これにより、水中及び水面に浮遊する懸濁物8を同時に吸引できる。
また、吸引体1は、水面に対して仰角をなした状態で配置される。
これにより、水中及び水面に浮遊する懸濁物8が、取付板との反発の抵抗力を受けにくくなり、吸引されやすくなる。
なお、吸引体1は、図6に示すように、図3とは異なり、水面に対して伏角をなした状態で配置することもできる。
【0023】
また、合わせ板6は、2枚以上使用することもできる。
この場合、スペーサー7は、取付板5と合わせ板6の間、及び、合わせ板6と別の合わせ板6の間、のそれぞれに設置される。
なお、開口部9は、取付板5の吸水管3の先端に取り付けられる部分に形成されるほか、取付板5から最も離れて重ね合わされる合わせ板6を除いた全ての合わせ板6に、取付板5の開口部9と重なる位置に開口部9が形成される。
【0024】
以上の構成からなる懸濁物の吸引体は、魚類等を飼育、養殖する水槽内で使用できるが、懸濁物が発生する水の中であれば、どのような施設、環境においても使用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 吸引体
2 泡沫分離装置
3 吸水管
4 水槽
5 取付板
6 合わせ板
7 スペーサー
8 (水中または水面を浮遊する)縣濁物
9 (取付板または合わせ板の)開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6