(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067811
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】空吐出受け、画像形成装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178153
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】黒羽 みずき
(72)【発明者】
【氏名】横濱 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 有希子
(72)【発明者】
【氏名】児玉 裕美
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA20
2C056EA22
2C056EB36
2C056EB37
2C056EC26
2C056FA13
2C056HA47
2C056JA01
2C056JA04
2C056JA17
2C056JC11
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】吸収体の液体吐出部側への膨出及び吸収体のつぶれを抑制する。
【解決手段】液体吐出部20から吐出される液体を受ける空吐出受け30であって、液体を吸収する複数の吸収体31が液体吐出部20が配置される液体吐出部側へ向かって積層されて成る吸収体積層群40と、吸収体積層群40を液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構60と、を備え、位置調整機構60は、吸収体積層群40の液体吐出部側とは反対側の面を押圧する押圧部材50と、吸収体積層群40の液体吐出部側の面の一部に接触し、押圧部材50の押圧力に抗して吸収体積層群40の位置を規制する位置規制部35と、を備え、吸収体31の一部又は全部のアスカーE硬度が10以上である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出部から吐出される液体を受ける空吐出受けであって、
前記液体を吸収する複数の吸収体が前記液体吐出部が配置される液体吐出部側へ向かって積層されて成る吸収体積層群と、
前記吸収体積層群を前記液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構と、
を備え、
前記位置調整機構は、
前記吸収体積層群の前記液体吐出部側とは反対側の面を押圧する押圧部材と、
前記吸収体積層群の前記液体吐出部側の面の一部に接触し、前記押圧部材の押圧力に抗して前記吸収体積層群の位置を規制する位置規制部と、
を備え、
前記吸収体の一部又は全部のアスカーE硬度が10以上であることを特徴とする空吐出受け。
【請求項2】
液体吐出部から吐出される液体を受ける空吐出受けであって、
前記液体を吸収する複数の吸収体が前記液体吐出部が配置される液体吐出部側へ向かって積層されて成る吸収体積層群と、
前記吸収体積層群を前記液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構と、
を備え、
前記位置調整機構は、
前記吸収体積層群の前記液体吐出部側とは反対側の面を支持し、前記液体吐出部側及びその反対側へ移動可能な可動支持部材と、
前記可動支持部材を介して前記吸収体積層群の前記液体吐出部側とは反対側の面を押圧する押圧部材と、
前記可動支持部材よりも前記液体吐出部側で前記可動支持部材と対向するように配置される位置規制部と、
前記可動支持部材と前記位置規制部との間に介在し、前記可動支持部材と前記位置規制部との間隔を変更可能に保持するスペーサ部材と、
を備えることを特徴とする空吐出受け。
【請求項3】
液体吐出部から吐出される液体を受ける空吐出受けであって、
前記液体を吸収する複数の吸収体が前記液体吐出部が配置される液体吐出部側へ向かって積層されて成る吸収体積層群と、
前記吸収体積層群を前記液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構と、
を備え、
前記位置調整機構は、
前記吸収体積層群の前記液体吐出部側とは反対側の面を支持し、前記液体吐出部側及びその反対側へ移動可能な可動支持部材と、
前記可動支持部材を前記液体吐出部側及びその反対側に移動させ、移動させた位置で前記可動支持部材の位置を保持する高さ調整手段と、
を備えることを特徴とする空吐出受け。
【請求項4】
前記吸収体のうち、少なくとも前記位置規制部が接触する部分を含む一部が、アスカーE硬度10以上である請求項1に記載の空吐出受け。
【請求項5】
前記吸収体積層群は、少なくともその長手方向において複数のブロックに分割される請求項1から3のいずれか1項に記載の空吐出受け。
【請求項6】
前記位置調機構は、前記吸収体積層群の分割されたブロックごとに設けられる請求項5に記載の空吐出受け。
【請求項7】
前記吸収体に生じる堆積物の堆積高さを検知する高さ検知センサを備える請求項1から3のいずれか1項に記載の空吐出受け。
【請求項8】
シートに液体を吐出して画像を形成する液体吐出部と、
前記液体吐出部から吐出される前記液体を受ける請求項1から3のいずれか1項に記載の空吐出受けと、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出部から吐出される前記液体を受ける請求項1から3のいずれか1項に記載の空吐出受けと、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空吐出受け、画像形成装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置の一例として、紙などのシートに液体のインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット式の画像形成装置においては、液体を吐出する液体吐出部の性能維持回復のため、定期的に液体吐出部から画像形成に寄与しない液体を吐出する空吐出動作が行われる。これにより、液体吐出部のノズル(吐出口)から増粘した液体が排出され、ノズルの詰まりなどの不具合が解消される。
【0004】
また、空吐出動作を行う画像形成装置においては、一般的に、空吐出された液体を受ける空吐出受けが設けられている。空吐出受けには、液体を吸収する吸収体が収容されており、経時的に吸収体の液体吸収量が限界に達した場合は、ユーザー又はサービスマンなどの作業者によって吸収体の交換作業が行われる。
【0005】
例えば、特許文献1(特公平7-14640号公報)においては、吸収体の交換作業を容易にするため、
図15に示されるように、あらかじめ複数の吸収体310を重ね合わせて保持する噴射インク受容手段の構成が提案されている。この構成においては、複数の吸収体310から成る吸収体積層群400が、ばねなどの押圧部材500によって液体吐出部側へ押圧されているため、最上位の吸収体310を引き抜くと、残りの吸収体310が押圧部材500によって上方(液体吐出部側)へ押し上げられ、位置規制部350によって所定の位置で保持される。
【0006】
また、特許文献2(特開2022-64145号公報)においては、吸収体の交換作業を容易にする別の方法として、複数の吸収体を上下方向に移動可能な保持手段によって個別に保持し、保持手段を上昇させることにより目的の吸収体のみを取り出すことができるようにした構成が提案されている。
【0007】
ここで、上記特許文献1に記載の構成においては、最上位の吸収体310が引き抜かれた場合に、新たに最上位となる吸収体310が必要以上に押し出されないようにするため、
図15に示されるように、吸収体310の位置を規制する位置規制部350が設けられている。しかしながら、位置規制部350を吸収体310に接触させて吸収体310の位置を規制すると、スポンジなどの柔らかい部材により構成される吸収体310は、位置規制部350との接触部分において圧縮され、位置規制部350と接触しない部分においては反対に液体吐出部側へ膨出する。
【0008】
このように、吸収体310の一部が膨出すると、その膨出部分が液体吐出部と空吐出受けとの間を通過するシートに近づくため、膨出部分がシートに接触し、シートにインクなどの液体が付着する虞がある。また、位置規制部350との接触部分においては、吸収体310が圧縮されることにより吸収体310の空隙がつぶれ、液体吸収性が低下したり、吸収された液体が染み出したりする虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明においては、吸収体の液体吐出部側への膨出及び吸収体のつぶれを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明、液体吐出部から吐出される液体を受ける空吐出受けであって、前記液体を吸収する複数の吸収体が前記液体吐出部が配置される液体吐出部側へ向かって積層されて成る吸収体積層群と、前記吸収体積層群を前記液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構と、を備え、前記位置調整機構は、前記吸収体積層群の前記液体吐出部側とは反対側の面を押圧する押圧部材と、前記吸収体積層群の前記液体吐出部側の面の一部に接触し、前記押圧部材の押圧力に抗して前記吸収体積層群の位置を規制する位置規制部と、を備え、前記吸収体の一部又は全部のアスカーE硬度が10以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸収体の液体吐出部側への膨出及び吸収体のつぶれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るインクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
【
図3】本実施形態に係るヘッドユニットの一例を示す平面図である。
【
図4】本実施形態に係る空吐出受けの外観斜視図である。
【
図5】空吐出動作が行われている様子をシート搬送方向の下流側又は上流側から見た図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る空吐出受けの概略断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る空吐出受けの外観斜視図である。
【
図8】第1実施形態の変形例を示す概略断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る空吐出受けの概略断面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る空吐出受けの概略断面図である。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る空吐出受けの外観斜視図である。
【
図12】本発明の第4実施形態に係る空吐出受けの概略断面図である。
【
図13】本発明の第5実施形態に係る空吐出受けの概略断面図である。
【
図14】堆積物の高さ検知動作のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0014】
まず、
図1~
図3に基づき、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態であるインクジェット式画像形成装置の構成について説明する。
図1は、インクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図、
図2は、インクジェット画像形成装置全体の制御システムを示す図である。また、
図3は、インクジェット画像形成装置が備えるヘッドユニットの一例を示す平面図である。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、画像形成用のシートSを供給するシート供給部1と、シートSの表側の面に画像を形成する第1画像形成部2と、シートSの裏側の面に画像を形成する第2画像形成部3と、シートSを乾燥させる第1乾燥部4及び第2乾燥部5と、シートSの表裏を反転させる表裏反転部6と、シートSを冷却する冷却部7と、画像が形成されたシートSを回収するシート回収部8を備えている。また、本実施形態に係る画像形成装置100は、シート供給部1、第1画像形成部2、第2画像形成部3、第1乾燥部4、第2乾燥部5、表裏反転部6、冷却部7、シート回収部8を制御するための制御部9(
図2参照)を備えている。
【0016】
シート供給部1は、長尺のシートSがロール状に巻回された供給ローラ11を有している。供給ローラ11は、
図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、供給ローラ11が回転することにより、シートSが繰り出され、第1画像形成部2へ供給される。
【0017】
第1画像形成部2は、シートSに対して液体のインクを吐出するヘッドユニット12を有している。ヘッドユニット12には、例えば、シート搬送方向A(
図3参照)の上流側から、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどの4色分のフルライン型のヘッドアレイ20が配置されている。各ヘッドアレイ20は、液体(インク)を吐出する液体吐出部であり、例えば、
図3に示されるように、複数のノズル22(ノズル列)を有する複数の液体吐出ヘッド21がベース部材23上に千鳥状に配列されて構成されている。なお、ヘッドアレイ20によって吐出される液体の色、及びヘッドアレイ20の数は、これに限らない。
【0018】
シート供給部1から第1画像形成部2へシートSが供給されると、制御部9によって生成される画像データのうち、シートSの表側の面に形成される画像データに基づいて各ヘッドアレイ20がインクを吐出する。これにより、シートSの表側の面に画像が形成される。表側の面に画像が形成されたシートSは、搬送ローラなどの搬送手段によって第1乾燥部4へ搬送される。
【0019】
第1乾燥部4は、シートSを加熱するヒートローラ13を有している。ヒートローラ13は、ヒータなどの加熱源を内部に有し、回転可能に構成されている。シートSが回転するヒートローラ13の外周面に巻きつけられながら搬送されることにより、シートSが加熱され、シートS上のインクの乾燥が促進される。また、シートS上のインクを乾燥させる手段として、シートSに温風を吹き付ける温風ファンなどを用いてもよい。第1乾燥部4において乾燥処理がなされたシートSは、表裏反転部6へ搬送される。
【0020】
表裏反転部6は、シートSの表側と裏側の位置を反転させる公知の装置により構成される。シートSが表裏反転部6へ搬送されると、シートSは表裏反転部6を通過する際に表裏反転され、冷却部7へ搬送される。すなわち、シートSの表側の面が上向きの状態で搬送されると、表側の面が下向き(裏側の面が上向き)となるように反転されて搬送される。
【0021】
冷却部7は、送風ファンなどの冷却手段を有している。シートSが冷却部7に搬送されると、シートSに対して冷風などが吹き付けられることによりシートSが冷却される。その後、シートSは、第2画像形成部3へ搬送される。
【0022】
第2画像形成部3は、基本的に第1画像形成部2と同じ構成であり、複数のヘッドアレイ20を備えるヘッドユニット12を有している。ただし、第2画像形成部3においては、第1画像形成部2とは異なり、シートSの裏側の面に対して画像が形成される。すなわち、シートSは、表裏反転部6によって表裏反転された状態で第2画像形成部3へ搬送されるので、第2画像形成部3においては、シートSの裏側の面に画像が形成される。従って、シートSが第2画像形成部3へ搬送されると、制御部9によって生成される画像データのうち、シートSの裏側の面に形成される画像データに基づいて各ヘッドアレイ20からシートSの裏側の面にインクが吐出され、シートSに画像が形成される。そして、シートSは、第2乾燥部5へ搬送される。
【0023】
第2乾燥部5は、上記第1乾燥部4と同じように、ヒートローラ13を有している。シートSが第2乾燥部5へ搬送されると、ヒートローラ13によってシートSが加熱され、シートS上のインクの乾燥が促進される。その後、シートSは、シート回収部8へ搬送される。
【0024】
シート回収部8は、シートSを巻き取って回収する回収ローラ14を有している。回収ローラ14が、
図1に示される矢印方向に回転可能することにより、回収ローラ14によってシートSがロール状に巻き取られて回収される。
【0025】
制御部9は、シートSに形成される画像データを生成するほか、シート供給部1、第1画像形成部2、第2画像形成部3、第1乾燥部4、第2乾燥部5、表裏反転部6、冷却部7、シート回収部8の各種動作を制御する部分であり、PC(Personal Computer)などの情報処理装置によって構成される。例えば、制御部9は、シート供給部1における供給ローラ11の回転速度、各画像形成部2,3における各ヘッドアレイ20のインク吐出動作、各乾燥部4,5におけるヒートローラ13の温度、冷却部7における送風動作(冷却動作)、シート回収部8における回収ローラ14の回転速度などを制御する。
【0026】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置において行われる空吐出動作、及び、空吐出動作により吐出された液体を受ける空吐出受けについて説明する。
【0027】
図1に示されるように、第1画像形成部2及び第2画像形成部3が有する複数のヘッドアレイ20の下方には、各ヘッドアレイ20に対向するように空吐出受け30が配置されている。
【0028】
図4に示されるように、空吐出受け30は、空吐出された液体を吸収する吸収体31と、吸収体31が収容される受け部材32を備えている。吸収体31は、液体吸収性の良いスポンジ又は布など、内部に多数の空隙を有する素材(多孔質材)によって構成されている。受け部材32は、吸収体31の下面を支持する底壁部と、吸収体31の側面部を覆う側壁部などから成るトレイ状の部材である。吸収体31が受け部材32に収容された状態では、吸収体31の上面(ヘッドアレイ20側の面)が露出するように配置される。
図4に示される例においては、受け部材32の側壁部に作業者が把持可能な取っ手33が設けられているため、メンテナンス時の空吐出受け30の取り出し作業を容易に行える。
【0029】
図5は、空吐出動作が行われている様子をシート搬送方向の下流側又は上流側から見た図である。
【0030】
本実施形態のように、長尺の連続紙(ロール紙)に対して画像を形成する画像形成装置においては、
図5に示されるように、シートSがヘッドアレイ20に対向しているときに空吐出動作が行われる。このとき、ヘッドアレイ20と空吐出受け30との間にシートSが介在する領域においては、空吐出された液体がシートSに着弾する。一方、ヘッドアレイ20と空吐出受け30との間にシートSが介在しない領域においては、空吐出された液体が空吐出受け30に着弾し、吸収体31によって吸収される。
【0031】
その後、空吐出動作が繰り返し行われることにより、吸収体31の液体吸収量が限界に達すると、吸収体31の交換作業を行う必要がある。また、特に粘度が高い液体の場合は、液体が吸収体31に吸収されにくいため、液体が吸収体31の表面に付着し、付着した液体が乾燥して堆積することがある。その場合、吸収体31上の堆積物の堆積が進行すると、堆積物がシートSに付着する虞があるため、吸収体31を交換する必要がある。
【0032】
従来では、吸収体の交換作業を容易に行う方法として、上記特許文献1に記載の方法が提案されているが(
図15参照)、この構成の場合、最上位の吸収体310が押圧部材500の押圧力を受けて位置規制部350に押し付けられることにより、吸収体310が膨出する課題がある。また、吸収体310が位置規制部350に押し付けられることにより、吸収体310の空隙がつぶれ、液体吸収性が低下したり、吸収された液体が染み出したりする課題がある。
【0033】
そこで、本実施形態に係る空吐出受け30においては、吸収体31の膨出及びつぶれを抑制するため、次のような構成を採用している。以下、本実施形態に係る空吐出受け30の構成について詳しく説明する。
【0034】
図6は、本実施形態に係る空吐出受け30の概略断面図、
図7は、本実施形態に係る空吐出受け30の外観斜視図である。
【0035】
図6及び
図7に示されるように、本実施形態に係る空吐出受け30は、複数の吸収体31と、複数の吸収体31を支持する支持板34と、支持板34を介して複数の吸収体31を押圧するコイルばね50と、複数の吸収体31と支持板34とコイルばね50を収容する受け部材32とを備えている。
【0036】
複数の吸収体31は、ヘッドアレイ20が配置される液体吐出部側(
図6における上方)に向かって積層されており、積層された複数の吸収体31によって1つの吸収体積層群40が構成されている。
図6に示される例においては、3つの吸収体31が積層されて1つの吸収体積層群40が構成されているが、吸収体31が積層される数は、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。なお、各吸収体31は、互いに分離可能に積層されている。
【0037】
支持板34は、吸収体積層群40を移動可能に支持する可動支持部材である。すなわち、支持板34は、吸収体積層群40の液体吐出側とは反対側の面(
図6における下面)を支持し、コイルばね50の弾性力によって液体吐出部側及びその反対側へ移動可能に構成されている。
【0038】
コイルばね50は、支持板34を介して吸収体積層群40の液体吐出部側とは反対側の面を押圧する押圧部材である。本実施形態においては、
図7に示されるように、吸収体積層群40の長手方向に渡ってコイルばね50が複数配置されている。押圧部材としては、コイルばね50以外に、板ばねなど、他の弾性部材を用いてもよい。
【0039】
受け部材32は、吸収体積層群40と支持板34とコイルばね50を収容するケースとして機能するほか、吸収体積層群40の位置を規制する位置規制部35を有している。位置規制部35は、吸収体積層群40の液体吐出部側の面(
図6における上面)に接触するように設けられており、コイルばね50の押圧力に抗して吸収体積層群40を所定の位置に保持する。また、位置規制部35は、吸収体積層群40による液体吸収作用を妨げないように、吸収体積層群40の液体吐出部側の面のうち、中央側の部分を除く縁側の一部に接触するように配置されている。
【0040】
また、
図7に示されるように、受け部材32の取っ手33が設けられている側壁部には、その一部を切り欠くようにして開口部36が形成されている。吸収体積層群40を構成する複数の吸収体31のうち、最も液体吐出部側に配置される最上位の吸収体31の液体吸収量が限界に達した場合、あるいは、最上位の吸収体31に付着する堆積物の堆積高さが閾値以上となった場合など、最上位の吸収体31を交換する(取り出す)必要性が生じた場合は、開口部36を通して最上位の吸収体31をその長手方向に引き抜くことにより取り出すことができる。このように、受け部材32が、最上位の吸収体31を引き抜くための開口部36を有していることにより、吸収体31の取り出し作業を容易に行える。また、受け部材32の位置規制部35を含む受け部材32の上側部分をそれ以外の下側部分に対して分離可能に構成してもよい。この場合、受け部材32の上側部分を分離することにより、最上位の吸収体31を容易に取り出すことができる。
【0041】
最上位の吸収体31が取り出された場合は、残りの吸収体31がコイルばね50の押圧力により液体吐出部側へ押し上げられる。そして、残りの吸収体31(吸収体積層群40)の液体吐出部側の面が位置規制部35に接触することにより、吸収体31(吸収体積層群40)が位置規制される。このように、本実施形態においては、最上位の吸収体31が取り出されると、支持板34によって支持される残りの吸収体31(吸収体積層群40)がコイルばね50の押圧力によって押し上げられ、位置規制部35によって所定の位置で保持されるため、支持板34、コイルばね50及び位置規制部35は、吸収体積層群40を液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構60として機能する。
【0042】
ここで、本実施形態においては、位置規制部35が吸収体積層群40の液体吐出部側の面の一部に接触しているため、特に位置規制部35が接触する部分においては、吸収体31が加圧される。しかしながら、本実施形態においては、位置規制部35が接触する部分において吸収体31が部分的に圧縮されたり、反対に位置規制部35が接触しない部分において吸収体31が膨出したりするのを抑制するため、吸収体31のアスカーE硬度を10以上に設定している。すなわち、吸収体31のアスカーE硬度を10以上とすることにより、吸収体31を変形しにくくしている。なお、アスカーE硬度は、ISO7619-1に基づきアスカーE型硬度計を用いて測定される硬度である。
【0043】
このように、本実施形態においては、吸収体31のアスカーE硬度を10以上に設定することにより、吸収体31がコイルばね50の押圧力を受けて位置規制部35に押し付けられても、吸収体31の膨出及び空隙のつぶれを抑制できるようになる。これにより、本実施形態においては、吸収体31(吸収体積層群40)とヘッドアレイ20(液体吐出部)との距離を適切に維持できるようになると共に、吸収体31とシートSとの接触を回避できるようになる。従って、本実施形態においては、吸収体31がシートSに接触することによるシートSの汚れを防止できるようになる。また、吸収体31の空隙がつぶれることによる液体吸収性の低下、及び、液体の染み出しも抑制できるようになる。
【0044】
吸収体31の材料としては、アスカーE硬度が10以上のものであれば、特に制限はない。具体的に、吸収体31の材料としては、ポリエチレンスポンジ、ウレタンスポンジ、メラミンスポンジ、セルロース繊維により形成される不織布、ポリエチレン繊維により形成される不織布などを用いることができる。
【0045】
また、アスカーE硬度を10以上とする部分は、吸収体31全体であってもよいし、その一部であってもよい。
【0046】
例えば、
図8に示される例のように、吸収体31の少なくとも位置規制部35が接触する部分を含む一部(縁側の部分)31aのみ、アスカーE硬度を10以上としてもよい。この場合、吸収体31の位置規制部35に押し付けられる部分が変形しにくくなるので、吸収体31の膨出及び空隙のつぶれを抑制できるようになる。
【0047】
また、
図8において、アスカーE硬度が10以上となる部分31aは、位置規制部35によって覆われているため、液体吸収性が良い材料により構成されていなくてもよい。従って、アスカーE硬度が10以上となる部分31aは、それ以外の部分(位置規制部35と接触しない中央側の部分)31bに比べて液体吸収性が低くても構わない。一方、吸収体31のうち、位置規制部35が接触しない中央側の部分31bにおいては、アスカーE硬度を10以上としなくてもよい(10未満であればよい)ので、液体吸収性の良い材料を選択できる。
【0048】
具体的に、アスカーE硬度が10以上となる部分31aの材料としては、上記のようなスポンジなどの多孔質材のほか、プラスチック、ゴム、金属などの材料から成る多孔質材以外のものを用いてもよい。また、アスカーE硬度が10以上となる部分31aは、それ以外の部分31bと一体に構成されていればよく、これらを一体に構成する手段としては接着などの任意の方法を適用できる。
【0049】
続いて、上記実施形態(第1実施形態)とは異なる他の実施形態について説明する。以下、主に上記実施形態とは異なる部分について説明し、同じ部分については適宜説明を省略する。
【0050】
図9は、本発明の第2実施形態に係る空吐出受け30の概略断面図である。
【0051】
図9に示される第2実施形態においては、複数の吸収体31から成る吸収体積層群40の両側に、吸収体31とは別体の複数のスペーサ部材37が配置されている。複数のスペーサ部材37は、吸収体31と同じように、液体吐出部側へ向かって重なり合うように配置され、支持板34と位置規制部35とが対向する部分の間に介在している。すなわち、各スペーサ部材37は、支持板34と、支持板34よりも液体吐出部側(上方)で支持板34と対向するように配置される各位置規制部35との間に介在している。また、各スペーサ部材37は、吸収体31と同じ程度の厚さに形成されており、吸収体31の積層数と同じ数だけ(
図9に示される例においては3段)積層されている。
【0052】
スペーサ部材37は、吸収体31よりも硬度が高い材料(例えば、アスカーE硬度が10以上の材料)により構成されている。従って、スペーサ部材37が支持板34と位置規制部35との間に介在していることにより、支持板34と位置規制部35との間隔が所定の間隔に保持される。これにより、支持板34上に設置される吸収体積層群40も所定の位置に保持される。
【0053】
このように、第2実施形態においては、スペーサ部材37が支持板34と位置規制部35との間に介在していることにより、位置規制部35によって吸収体31(吸収体積層群40)を直接位置規制しなくても、吸収体31(吸収体積層群40)を所定の位置に保持できる。すなわち、本実施形態においては、吸収体31(吸収体積層群40)を位置規制部35に対して接触させなくてもよいので、吸収体31が位置規制部35に押し付けられることよる吸収体31の膨出及び空隙のつぶれを抑制できるようになる。また、第2実施形態の場合、吸収体31のアスカーE硬度を10以上にしなくてもよいので、吸収体31の材料選択の自由度が広がる。
【0054】
また、第2実施形態において、吸収体31の交換作業を行う場合は、最上位の吸収体31を取り出す際に、スペーサ部材37も1段分取り除くことにより、支持板34の位置調整を行うことができる。すなわち、支持板34と位置規制部35との間からスペーサ部材37を1段分取り除くことにより、支持板34が取り除かれたスペーサ部材37の厚さ分(1段分)の距離だけ液体吐出部側へ押し上げられ、押し上げられた位置において支持板34が残りのスペーサ部材37によって位置保持される。これにより、支持板34上の吸収体積層群40も所定の位置で保持される。このように、第2実施形態においては、スペーサ部材37を取り除くことにより、支持板34によって支持される残りの吸収体31(吸収体積層群40)がコイルばね50の押圧力によって押し上げられ、位置規制部35によって所定の位置で保持されるため、支持板34、コイルばね50、位置規制部35及びスペーサ部材37が、吸収体積層群40を液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構60として機能する。
【0055】
また、スペーサ部材37の紛失を防止するため、受け部材32の空いているスペース内に取り除かれたスペーサ部材37を収容できるようにしてもよい。これより、取り除かれたスペーサ部材37の紛失を防止でき、スペーサ部材37を再度使用することができるようになる。また、支持板34と位置規制部35との間に、分離可能な複数のスペーサ部材37を介在させる代わりに、伸縮可能な1つのスペーサ部材を介在させて支持板34の位置調整を行えるようにしてもよい。
【0056】
図10は、本発明の第3実施形態に係る空吐出受け30の概略断面図である。
【0057】
図10に示される第3実施形態においては、受け部材32が、上記のような位置規制部35を備えていない。また、本実施形態においては、上記コイルばね50に代えて、高さ調整手段としてのアジャストボルト38が設けられている。アジャストボルト38は、支持板34の下面と受け部材32の底壁部との間に介在し、これらの間の間隔を任意に調整することができる部材である。すなわち、アジャストボルト38は、その高さ調整を行うことにより、支持板34を液体吐出部側及びその反対側に移動させ、移動させた位置で支持板34の位置を保持することができる。
【0058】
従って、第3実施形態において、最上位の吸収体31を取り出したときは、アジャストボルト38の高さ調整を行うことにより、支持板34を移動させて吸収体積層群40を所定の位置に保持できる。このように、本実施形態において、支持板34と、アジャストボルト38は、吸収体積層群40を液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構60として機能する。なお、アジャストボルト38に代えて、ジャッキなどの他の高さ調整手段を用いてもよい。
【0059】
上記のように、第3実施形態においては、アジャストボルト38などの高さ調整手段を用いて支持板34を移動させ、移動させた位置で支持板34を位置保持することができるので、位置規制部35によって吸収体31(吸収体積層群40)を直接位置規制しなくても、吸収体31(吸収体積層群40)を所定の位置に保持できる。従って、第3実施形態においては、上記第2実施形態と同じように、吸収体31が位置規制部35に押し付けられることがないので、位置規制部35に吸収体31が押し付けられることによる吸収体31の膨出及び空隙のつぶれを抑制できるようになる。また、第3実施形態においても、吸収体31のアスカーE硬度を10以上にしなくてもよいので、吸収体31の材料選択の自由度が広がる。
【0060】
図11及び
図12に、本発明の第4実施形態に係る空吐出受け30の構成を示す。
【0061】
図11に示されるように、第4実施形態においては、吸収体積層群40が、少なくともその長手方向において複数のブロック40A~40Hに分割されている。
図11に示される例においては、吸収体積層群40が、長手方向(シート幅方向)のほか、これと直交する短手方向(シート搬送方向)にも分割されている。このように、吸収体積層群40が、複数のブロック40A~40Hに分割されていることにより、吸収体31の取り出し又は交換をブロック40A~40Hごとに行うことができる。
【0062】
図12に示されるように、ヘッドアレイ20から空吐出される液体は、ヘッドアレイ20と空吐出受け30との間にシートSが介在しない領域において吸収体31に着弾する。吸収体31における液体の着弾が多い領域は、搬送されるシートSの幅によって変化するが、
図12に示される例の場合、長手方向の両端に配置されるブロック40A,40Dにおいて液体が多く着弾する。従って、この場合、特に両端のブロック40A,40Dにおいて吸収体31の交換作業を早期に行う必要が生じる。
【0063】
両端のブロック40A,40Dにおいて、最上位の吸収体31の液体吸収量が限界に達した場合、あるいは、最上位の吸収体31に付着する堆積物の堆積高さが閾値以上となった場合は、両端のブロック40A,40Dにおいてのみ、最上位の吸収体31を取り出せばよい。一方、それ以外のブロックにおいては、吸収体31を取り出す作業を行わなくてもよい。このように、本実施形態においては、吸収体積層群40を複数のブロックに分割することにより、交換作業が必要なブロックにおいてのみ吸収体31を個別に取り出すことができるので、不要な吸収体31の消費を抑えることができ、メンテナンスコストの削減を図れる。
【0064】
また、
図12に示されるように、吸収体積層群40の位置調整を行う位置調整機構(アジャストボルト38)は、ブロック40A~40Hごとに設けられていることが好ましい。なお、この例の場合、位置調整機構として、アジャストボルト38を備える構成(上記第3実施形態の構成)が採用されているが、これに代えて他の実施形態の位置調整機構を用いることも可能である。
【0065】
また、
図12に示されるように、隣り合うブロックの吸収体積層群40同士の間に、仕切部39が設けられていてもよい。このような仕切部39が設けられていることにより、隣り合うブロック同士の吸収体積層群40の干渉を防止できるため、吸収体積層群40の位置調整を円滑に行えるようになる。
【0066】
図13は、本発明の第5実施形態に係る空吐出受け30の概略断面図である。
【0067】
図13に示される第5実施形態においては、空吐出受け30が、吸収体31に生じる堆積物51の堆積高さを検知する高さ検知センサ45を備えている。高さ検知センサ45は、例えば、光学式又は超音波式などのセンサなどにより構成される。なお、ここでいう「堆積物」は、粘度の高い液体などが吸収体31に吐出された場合に吸収体31の表面に堆積する堆積物のことであり、「堆積物の堆積高さ」とは、任意の基準位置(例えば最上位の吸収体31の表面)から堆積物の頂点部分までの高さt(
図13参照)を意味する。
【0068】
図14のフローチャートに示されるように、高さ検知センサ45によって堆積物51の高さtを検知し、その検知された高さtがあらかじめ設定されている閾値以上となった場合は、堆積物がシートに接触するのを未然に防ぐため、ユーザーなどに吸収体の交換作業を促す通知を行う。これにより、堆積物51がシートに接触することによるシートの汚れを防止できるようになる。一方、検知された高さtが閾値未満であった場合は、ユーザーへの交換作業の通知を行わず、高さ検知動作を終了する。ユーザーなどへの通知手段は、画像形成装置本体に設けられている操作パネルなどの表示部よる表示のほか、音声などの他の通知手段であってもよい。
【0069】
なお、高さ検知センサ45の検知動作は、画像形成動作が行われている間、継続して行われてもよいし、あらかじめ設定されたタイミングで定期的に行われてもよい。
【0070】
また、
図13に示される例においては、位置調整機構として、アジャストボルト38を備える構成(上記第3実施形態の構成)が採用されているが、これに代えて他の実施形態の位置調整機構を用いることも可能である。また、高さ検知センサ45を用いる構成は、
図13に示されるような吸収体積層群40が複数のブロックに分割されていない構成のほか、
図11及び
図12に示されるような吸収体積層群40が複数のブロックに分割されている構成にも適用可能である。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限らず、発明の内容を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【0072】
上記実施形態においては、本発明に係る空吐出受けが、液体吐出装置の一例であるインクジェット式の画像形成装置に搭載されている場合を例に説明したが、本発明に係る空吐出受けは画像形成装置以外の液体吐出装置にも適用可能である。
【0073】
本発明において、「液体吐出装置」とは、液体吐出部を備え、液体吐出部を駆動させて、シートなどの対象物に液体を吐出する装置を意味し、「液体吐出装置」には、対象物の給送、搬送、排出に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含まれる。
【0074】
また、本発明に係る「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像を可視化するものに限らない。例えば、「液体吐出装置」には、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するもの、さらにはシートの表面を改質するなどの目的でシートの表面に処理液を吐出する処理液吐出装置なども含まれる。
【0075】
上記「シート」は、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどが含まれる。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板がある。また、「シート」は、上記のような長尺の連続紙(ロール紙)に限らず、シート搬送方向に所定のサイズに裁断された用紙(カット紙)であってもよい。
【0076】
「シート」の材質としては、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0077】
また、本発明に係る「液体吐出装置」には、装飾又は文字情報などを施すために食品に液体を吐出する液体吐出装置も含まれる。食品に吐出される液体としては、食用色素及び食用乳化剤などを含む液体などが挙げられる。
【0078】
また、本発明に係る「液体吐出装置」によって吐出される「液体」は、液体吐出部から吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒などの溶媒、染料、顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子、発光素子の構成要素、電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液、食品用インクなどの用途で用いることができる。
【0079】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備える加熱装置、画像形成装置、液体吐出装置が含まれる。
【0080】
[第1の構成]
第1の構成は、液体吐出部から吐出される液体を受ける空吐出受けであって、前記液体を吸収する複数の吸収体が前記液体吐出部が配置される液体吐出部側へ向かって積層されて成る吸収体積層群と、前記吸収体積層群を前記液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構と、を備え、前記位置調整機構は、前記吸収体積層群の前記液体吐出部側とは反対側の面を押圧する押圧部材と、前記吸収体積層群の前記液体吐出部側の面の一部に接触し、前記押圧部材の押圧力に抗して前記吸収体積層群の位置を規制する位置規制部と、を備え、前記吸収体の一部又は全部のアスカーE硬度が10以上の空吐出受けである。
【0081】
[第2の構成]
第2の構成は、液体吐出部から吐出される液体を受ける空吐出受けであって、前記液体を吸収する複数の吸収体が前記液体吐出部が配置される液体吐出部側へ向かって積層されて成る吸収体積層群と、前記吸収体積層群を前記液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構と、を備え、前記位置調整機構は、前記吸収体積層群の前記液体吐出部側とは反対側の面を支持し、前記液体吐出部側及びその反対側へ移動可能な可動支持部材と、前記可動支持部材を介して前記吸収体積層群の前記液体吐出部側とは反対側の面を押圧する押圧部材と、前記可動支持部材よりも前記液体吐出部側で前記可動支持部材と対向するように配置される位置規制部と、前記可動支持部材と前記位置規制部との間に介在し、前記可動支持部材と前記位置規制部との間隔を変更可能に保持するスペーサ部材と、を備える空吐出受けである。
【0082】
[第3の構成]
第3の構成は、液体吐出部から吐出される液体を受ける空吐出受けであって、前記液体を吸収する複数の吸収体が前記液体吐出部が配置される液体吐出部側へ向かって積層されて成る吸収体積層群と、前記吸収体積層群を前記液体吐出部側へ動かして所定の位置で保持する位置調整機構と、を備え、前記位置調整機構は、前記吸収体積層群の前記液体吐出部側とは反対側の面を支持し、前記液体吐出部側及びその反対側へ移動可能な可動支持部材と、前記可動支持部材を前記液体吐出部側及びその反対側に移動させ、移動させた位置で前記可動支持部材の位置を保持する高さ調整手段と、を備える空吐出受けである。
【0083】
[第4の構成]
第4の構成は、前記第1の構成において、前記吸収体のうち、少なくとも前記位置規制部が接触する部分を含む一部が、アスカーE硬度10以上の空吐出受けである。
【0084】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第1から第4のいずれか1つの構成において、前記吸収体積層群は、少なくともその長手方向において複数のブロックに分割される空吐出受けである。
【0085】
[第6の構成]
第6の構成は、前記第5の構成において、前記位置調機構は、前記吸収体積層群の分割されたブロックごとに設けられる空吐出受けである。
【0086】
[第7の構成]
第7の構成は、前記第1から第6のいずれか1つの構成において、前記吸収体に生じる堆積物の堆積高さを検知する高さ検知センサを備える空吐出受けである。
【0087】
[第8の構成]
第8の構成は、シートに液体を吐出して画像を形成する液体吐出部と、前記液体吐出部から吐出される前記液体を受ける前記第1から第7のいずれか1つの構成の空吐出受けと、を備える画像形成装置である。
【0088】
[第9の構成]
第9の構成は、液体を吐出する液体吐出部と、前記液体吐出部から吐出される前記液体を受ける前記第1から第7のいずれか1つの構成の空吐出受けと、を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【符号の説明】
【0089】
20 ヘッドアレイ(液体吐出部)
30 空吐出受け
31 吸収体
34 支持板(可動支持部材)
35 位置規制部
37 スペーサ部材
38 アジャストボルト(高さ調整手段)
40 吸収体積層群
45 高さ検知センサ
50 コイルばね(押圧部材)
51 堆積物
60 位置調整機構
100 画像形成装置
S シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特公平7-14640号公報
【特許文献2】特開2022-64145号公報