(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067935
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20240510BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240510BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K8/46
A61Q11/00
A61K8/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178365
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩明
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 忠杜
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB242
4C083AB282
4C083AB472
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC582
4C083AC622
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD302
4C083AD352
4C083AD551
4C083AD552
4C083CC41
4C083DD22
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含み、当該成分の保存安定性が向上している口腔用組成物を提供することである。
【解決手段】(A)アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)水を含有し、(B)水の含有量が20重量%以下であり、且つpHが8.0以上である、口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)水を含有し、
(B)水の含有量が20重量%以下であり、且つpHが8.0以上である、口腔用組成物。
【請求項2】
更に(C)水溶性アルミニウム塩を含有する、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記(C)水溶性アルミニウム塩が乳酸アルミニウムである、請求項2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記(C)水溶性アルミニウム塩を0.5重量%以上含有する、請求項2又は3に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
練歯磨剤である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含み、当該成分の保存安定性が向上している口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アズレンスルホン酸及びその塩は、抗炎症作用、上皮組織修復作用等があることが知られており、歯磨剤や洗口剤等の口腔用組成物に広く使用されている。また、ヒノキチオールは、低毒性で幅広い抗菌スペクトルを示すことが知られており、口腔用組成物に広く使用されている。しかしながら、アズレンスルホン酸及びその塩は、熱により分解され易く、保存安定性が低いという欠点がある。また、ヒノキチオールについても、保存安定性に難があることが知られている。
【0003】
従来、アズレンスルホン酸及びその塩やヒノキチオールの保存安定性を向上させる製剤技術について種々検討されている。例えば、特許文献1では、アズレン誘導体を含有する液状薬を脱気し溶液中の溶存酸素を除去して充填容器に入れ、該容器のヘッドスペースを不活性ガスで置換し、該容器中の酸素を除去することによって、アズレン誘導体の保存安定性を向上できることが記載されている。また、特許文献2には、非イオン性界面活性剤、ゼラチン、水溶性高分子およびグリセリンを配合し、エマルジョン化してなる石油系炭化水素中に水溶性アズレンを含有させることにより、水溶性アズレン製剤の保存安定性を向上できることが記載されている。また、特許文献3には、エデト酸を配合することによって、ヒノキチオールの保存安定性を向上できることが記載されている。近年、消費者の口腔用組成物に対する消費者の要望は多様化しており、それに伴って多様な製剤処方の開発が望まれているので、製剤処方も多様化に対応するために、アズレンスルホン酸及び/又はその塩、或はヒノキチオールを含む口腔用組成物において、これらの保存安定性を向上させる製剤技術の更なる開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-130141号公報
【特許文献2】特開平7-89850号公報
【特許文献3】特開2002-20253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的はアズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含み、当該成分の保存安定性が向上している口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、アズレンスルホン酸及び/又はその塩、並びにヒノキチオールを含む口腔用組成物において、水の含有量を20重量%以下且つpHを8.0以上に設定することにより、前記成分の保存安定性が向上することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)水を含有し、
(B)水の含有量が20重量%以下であり、且つpHが8.0以上である、口腔用組成物。
項2. 更に(C)水溶性アルミニウム塩を含有する、項1に記載の口腔用組成物。
項3. 前記(C)水溶性アルミニウム塩が乳酸アルミニウムである、項2に記載の口腔用組成物。
項4. 前記(C)水溶性アルミニウム塩を0.5重量%以上含有する、項2又は3に記載の口腔用組成物。
項5. 練歯磨剤である、項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種の成分の保存による分解を抑制できるので、アズレンスルホン酸及び/又はその塩、並びにヒノキチオールを含む口腔用組成物に優れた保存安定性を備えさせることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.口腔用組成物
本発明の口腔用組成物は、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに水を含有し、水の含有量が20重量%以下且つpHが8.0以上であることを特徴とする。以下、本発明の口腔用組成物について詳述する。
【0010】
[(A)アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及び/又はヒノキチオール]
本発明の口腔用組成物は、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種の成分((A)成分と表記することもある)を含有する。
【0011】
アズレンスルホン酸は、1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン-3-スルホン酸とも称される公知の抗炎症成分である。アズレンスルホン酸の塩の種類については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等のその他の金属塩;アンモニウム塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等の有機スルホン酸塩;メチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、ピロリジン塩、トリピリジン塩、ピコリン塩等の有機アミン塩;塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩等が挙げられる。
【0012】
ヒノキチオールは、殺菌剤として公知の成分である。
【0013】
本発明の口腔用組成物は、(A)成分として、アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールの中から1種の成分を単独で使用してもよく、また2種以上の成分を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
(A)成分の中でも、好ましくはアズレンスルホン酸の塩及び/又ヒノキチオール、より好ましくはアズレンスルホン酸のアルカリ金属塩及び/又ヒノキチオール、更に好ましくはアズレンスルホン酸ナトリウム及び/又ヒノキチオールが挙げられる。
【0015】
本発明の口腔用組成物における(A)成分の含有量については、口腔用組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量で0.0001~1重量%、好ましくは0.002~0.7重量%、より好ましくは0.02~0.15重量%が挙げられる。より具体的には、アズレンスルホン酸及び/又はその塩の場合であれば、本発明の口腔用組成物におけるアズレンスルホン酸及び/又はその塩の含有量として、好ましくは0.001~0.5重量%、より好ましくは0.01~0.1重量%が挙げられる。また、ヒノキチオールの場合であれば、本発明の口腔用組成物におけるヒノキチオールの含有量として、好ましくは0.001~0.2重量%、より好ましくは0.01~0.05重量%が挙げられる。
【0016】
[(B)水及び口腔用組成物のpH]
本発明の口腔用組成物では、水を20重量%以下の含有量で含み、且つpHが8.0以上である。このような水分含有量及びpHを満たすことにより、(A)成分の保存安定性を向上させることが可能になる。
【0017】
本発明の口腔用組成物における水分含有量は20重量%以下であればよいが、(A)成分の保存安定性をより一層効果的に向上させるという観点から、水分含有量として、好ましくは5~19重量%、より好ましくは10~18重量%、更に好ましくは12~17重量%が挙げられる。
【0018】
また、本発明の口腔用組成物のpHは、8.0以上であればよいが、(A)成分の保存安定性をより一層効果的に向上させるという観点から、pHとして、好ましくは8.0~9.0、より好ましくは8.1~8.5、更に好ましくは8.2~8.4が挙げられる。本発明において、口腔用組成物のpHは、25℃の温度条件で測定される値である。pHを前述する範囲に調整するには、緩衝剤、pH調節剤等を使用すればよい。
【0019】
[(C)水溶性アルミニウム塩]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、水溶性アルミニウム塩((C)成分と表記することもある)を含んでもよい。水溶性アルミニウム塩を含む場合には、(A)成分の保存安定性をより効果的に向上させることが可能になる。
【0020】
水溶性アルミニウム塩の種類については、口腔内に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、乳酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、アラントインヒドロキシアルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ミョウバン、硝酸アルミニウム等が挙げられる。
【0021】
これらの水溶性アルミニウム塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
これらの(C)成分の中でも、(A)成分の保存安定性をより一層効果的に向上させるという観点から、好ましくは乳酸アルミニウムが挙げられる。
【0023】
本発明の口腔用組成物に(C)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.01~5重量%が挙げられる。また、本発明の口腔用組成物に(C)成分が0.5重量%以上含まれている場合には、(A)成分の保存安定性を格段顕著に向上させることが可能になる。このように保存安定性を格段顕著に向上させるという観点から、本発明の口腔用組成物における(C)成分の含有量として、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは0.7~3重量%、更に好ましくは0.8~1.5重量%が挙げられる。
【0024】
[(D)第四級アンモニウム塩]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、第四級アンモニウム塩((D)成分と表記することもある)を含有してもよい。本発明で使用される第四級アンモニウム塩の種類については、口腔内に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、殺菌作用を有する第四級アンモニウム塩を好適に使用できる。このような第四級アンモニウム塩としては、具体的には、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。また、本発明で使用される第四級アンモニウム塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。
【0025】
これらの(D)成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
これらの(D)成分の中でも、好ましくは塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、より好ましくは塩化セチルピリジニウムが挙げられる。
【0027】
本発明の口腔用組成物に(D)成分を含有させる場合、その含有量については、口腔用組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~5重量%、好ましくは0.005~2重量%、より好ましくは0.01~1重量%が挙げられる。
【0028】
[(E)フッ素化合物]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、フッ素化合物((E)成分と表記することもある)を含有してもよい。
【0029】
本発明の口腔用組成物で使用されるフッ素化合物の種類については、特に制限されないが、例えば、アルカリ金属のフッ化物、フルオロリン酸、及びフルオロリン酸の塩等が挙げられる。
【0030】
アルカリ金属のフッ化物の種類については、口腔内に適用できることを限度として特に制限されないが、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等が挙げられる。
【0031】
フルオロリン酸の種類については、口腔内に適用できることを限度として特に制限されないが、例えば、モノフルオロリン酸、ジフルオロリン酸等が挙げられる。
【0032】
フルオロリン酸の塩の種類については、口腔内に適用できることを限度として特に制限されないが、例えば、前記フルオロリン酸のアルカリ金属塩、より具体的には、前記フルオロリン酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0033】
これらの(E)成分は、1種のものを選択して単独で使用してもよく、また2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。
【0034】
これらの(E)成分の中でも、好ましくはフルオロリン酸の塩、より好ましくはモノフルオロリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0035】
本発明の口腔用組成物に(E)成分を含有させる場合、その含有量については、口腔用組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~5重量%、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.1~2重量%が挙げられる。
【0036】
[(F)アニオン性界面活性剤]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、アニオン性界面活性剤((F)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。
【0037】
本発明で使用されるアニオン性界面活性剤の種類については、口腔内に適用可能であることを限度として特に限定されないが、例えば、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、セチル硫酸、オレイル硫酸等のアルキル硫酸エステルの塩;ラウロイルメチルタウリン、ミリストイルメチルタウリン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン、ラウリルメチルタウリン等の高級脂肪酸アミドスルホン酸の塩;αオレフィンスルホン酸の塩;N-ミリストイルグルタミン酸、ココイルグルタミン酸、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ステアロイルグルタミン酸、ココイルグリシン等のN-アシルアミノ酸の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸の塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルの塩;ラウロイルサルコシン等のN-アシルサルコシン酸の塩等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤の塩の形態としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、1種のものを選択して単独で使用してもよく、また2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。これらのアニオン性界面活性剤の中でも、好ましくはアルキル硫酸エステルの塩、より好ましくはラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0038】
本発明の口腔用組成物に(F)成分を含有させる場合、その含有量については、口腔用組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~5重量%、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.1~2重量%が挙げられる。
【0039】
[(G)両性界面活性剤]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、両性界面活性剤((G)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。
【0040】
本発明で使用される両性界面活性剤の種類については、口腔内に適用可能であることを限度として特に限定されないが、例えば、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-ヤシ油脂肪酸-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルエチレンジアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシエトキシエチル-N-カルボキシエチルエチレンジアミンム、及びこれらの塩等のイミダゾリン型両性界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、パルミチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸ジメチルアミノ酢酸ベタイン、パーム核油脂肪酸ジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン、及びこれらの塩等のアルキルベタイン型両性界面活性剤;ラウリルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、パルミチルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液)、パーム核油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインラウリルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びこれらの塩等のアミドベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性剤の塩の形態としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらの両性界面活性剤の中でも、好ましくはイミダゾリン型両性界面活性剤、より好ましくはN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン及びその塩、更に好ましくはN-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムが挙げられる。これらの両性界面活性剤は、1種のものを選択して単独で使用してもよく、また2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。これらの両性界面活性剤の中でも、好ましくはアミドベタイン型両性界面活性剤、より好ましくはヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液が挙げられる。
【0041】
本発明の口腔用組成物に(G)成分を含有させる場合、その含有量については、口腔用組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~5重量%、好ましくは0.01~2重量%、より好ましくは0.1~1重量%が挙げられる。
【0042】
[(H)ノニオン性界面活性剤]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、ノニオン性界面活性剤((H)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。
【0043】
本発明で使用されるノニオン性界面活性剤の種類については、口腔内に適用可能であることを限度として特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤は、1種のものを選択して単独で使用してもよく、また2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。これらのノニオン性界面活性剤の中でも、好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0044】
本発明の口腔用組成物に(H)成分を含有させる場合、その含有量については、口腔用組成物の製剤形態や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは1~6重量%が挙げられる。
【0045】
[(I)多価アルコール]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて多価アルコール((I)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。
【0046】
本発明で使用される多価アルコールの種類については、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの多価アルコールの中でも、好ましくはプロピレングリコール、グリセリンが挙げられる。
【0047】
本発明の口腔用組成物に(I)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(I)成分の総量で1~75重量%、好ましくは10~70重量%、更に好ましくは30~60重量%が挙げられる。
【0048】
[(J)糖アルコール]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、糖アルコール((J)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。
【0049】
本発明で使用される糖アルコールの種類については、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。これらの糖アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの糖アルコールの中でも、好ましくはソルビトールが挙げられる。
【0050】
本発明の口腔用組成物に(J)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは3~10重量%が挙げられる。
【0051】
[(K)1価低級アルコール]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、1価低級アルコール((K)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。
【0052】
本発明で使用される1価低級アルコールとしては、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、炭素数2~5の1価アルコール、具体的には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらの1価低級アルコールの中でも、好ましくはエタノールが挙げられる。これらの1価低級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
本発明の口腔用組成物に(K)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.001~15重量%、好ましくは0.01~10重量%、更に好ましくは0.1~5重量%が挙げられる。
【0054】
[(L)増粘剤]
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、増粘剤((L)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。
【0055】
本発明で使用される増粘剤としては、口腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系増粘剤;アルギン酸、グアガム、トラガントガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、カラギーナン等の増粘多糖類;アルキルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体等のビニル系増粘剤等が挙げられる。これらの増粘剤の中でも、好ましくはセルロース系増粘剤、より好ましくはヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
本発明の口腔用組成物に(L)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.001~15重量%、好ましくは0.01~10重量%、更に好ましくは0.1~5重量%が挙げられる。
【0057】
[その他の含有成分]
本発明の口腔用組成物は、前述する成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物の形態に応じて、当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、研磨剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、局所麻酔剤、血行促進剤湿潤剤、甘味剤、色素、消臭剤等が挙げられる。
【0058】
[剤型・形態]
本発明の口腔用組成物の剤型については、口腔内への適用が可能であることを限度として特に制限されず、例えば、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)であればよいが、好ましくは半固形状である。
【0059】
本発明の口腔用組成物の形態については、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り特に制限されないが、例えば、液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液(液体歯磨剤、洗口液は、一般にマウスリンス、マウスウォッシュ、デンタルリンス等と呼称されることがある)、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用軟膏剤等の口腔衛生剤が挙げられる。これらの中でも、好ましくは練歯磨剤が挙げられる。
【0060】
2.アズレンスルホン酸及び/又はその塩、並びにヒノキチオールの安定性の向上方法
本発明は、更に、口腔用組成物におけるアズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種の成分の安定性を向上させる方法であって、口腔用組成物に、(A)アズレンスルホン酸、アズレンスルホン酸の塩、及びヒノキチオールよりなる群から選択される少なくとも1種と、(B)20重量%以下の水を配合し、pHを8.0以上にする、安定性の向上方法を提供する。
【0061】
本発明の安定性の向上方法において、アズレンスルホン酸及び/又はその塩の種類や配合量、ヒノキチオールの種類や配合量、水の配合量、pH、口腔用組成物の剤型や形態等については、前記「1.口腔用組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例0062】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
試験例1
表1に示す組成のペースト状歯磨剤を調製した。得られたペースト状歯磨剤の約40gをアルミラミネートチューブに充填して密封し、50℃、60%RHの条件下で1カ月間保存した。保存前後のペースト状歯磨剤中のアズレンスルホン酸ナトリウム及びヒノキチオールの含有量を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、保存前の含有量を100%として、保存後の含有量の割合を残存率として求めた。
【0064】
得られた結果を表1に示す。アズレンスルホン酸ナトリウム及びヒノキチオールを含むペースト状歯磨剤において、水分含量が20重量%以下且つpHが8.0以上を満たす場合には、保存後のヒノキチオールの残存率が97%以上、保存後のアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率が95%以上であり、保存安定性に優れていた(実施例1及び2)。これに対して、水分含量が20重量%超且つpHが8.0未満の場合には、保存後のヒノキチオールの残存率が95%程度に止まり、更に保存後のアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率が90%未満にまで低下していた(比較例1)。また、pHが8.0以上であっても、水分含量が20重量%超の場合には、保存後のアズレンスルホン酸ナトリウムとヒノキチオールの各残存率が90%前後にまで低下していた(比較例2)。
【0065】
【0066】
処方例
表2に示す組成のペースト状歯磨剤を調製した。得られたペースト状歯磨剤について、前記試験例1と同様の方法で保存安定性を評価したところ、いずれも、アズレンスルホン酸ナトリウム及びヒノキチオールの残存率が高く、優れた保存安定性を有していることが確認できた。
【0067】