(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067983
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】流体紫外光処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20240510BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20240510BHJP
C09K 3/00 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
C02F1/32
B01D53/26 210
C09K3/00 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178450
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】宮島 俊祐
【テーマコード(参考)】
4D037
4D052
【Fターム(参考)】
4D037AB03
4D037BA18
4D052AA00
4D052CA01
4D052HA01
4D052HA03
4D052HA21
(57)【要約】
【課題】光源部の周辺にある水分を除湿可能で小型の流体紫外光処理装置を提供すること。
【解決手段】流体紫外光処理装置は、流路管を流れる流体に、紫外光を照射する流体紫外光処理装置であって、基板と、前記基板上に配置され、紫外光を発する光源部と、前記光源部と前記流路管との間に配置され、前記光源部からの紫外光を透過する透光部材と、前記基板に固定され、水分を吸着する吸着物質を含む吸着部材を保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記光源部と前記保持部材により保持された前記吸着部材との間に位置し、前記光源部からの紫外光を前記透光部材へ反射する反射面を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路管を流れる流体に、紫外光を照射する流体紫外光処理装置であって、
基板と、
前記基板上に配置され、紫外光を発する光源部と、
前記光源部と前記流路管との間に配置され、前記光源部からの紫外光を透過する透光部材と、
前記基板に固定され、水分を吸着する吸着物質を含む吸着部材を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記光源部と前記保持部材により保持された前記吸着部材との間に位置し、前記光源部からの紫外光を前記透光部材へ反射する反射面を有する、流体紫外光処理装置。
【請求項2】
前記保持部材に保持された前記吸着部材の上端は、前記保持部材の上端よりも下方に位置する、請求項1に記載の流体紫外光処理装置。
【請求項3】
前記吸着部材は、前記透光部材の法線方向から見た場合に、前記透光部材と重なるように配置される、請求項1または請求項2に記載の流体紫外光処理装置。
【請求項4】
前記反射面は、前記光源部の周囲に配置され、
前記吸着部材は、前記反射面の周囲に配置される、請求項1または請求項2に記載の流体紫外光処理装置。
【請求項5】
前記吸着部材は、前記反射面の周囲に繋がって配置される、請求項4に記載の流体紫外光処理装置。
【請求項6】
前記保持部材は、前記透光部材の法線方向から見た場合に、前記保持部材の外縁よりも内側で前記吸着部材と重ならない位置に取付孔を有し、
前記保持部材は、前記取付孔に挿入された固定部材によって前記基板に固定される、請求項1または請求項2に記載の流体紫外光処理装置。
【請求項7】
前記吸着部材は、前記吸着物質を含有する樹脂である、請求項1または請求項2に記載の流体紫外光処理装置。
【請求項8】
前記吸着物質は、シリカゲル、活性炭および珪酸塩鉱物の少なくとも1つから構成される多孔質材料を含む、請求項1または請求項2に記載の流体紫外光処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体紫外光処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子と、二次リフレクタと、を有し、発光素子が収められた空間部の乾燥状態を保持するために、吸湿剤をさらに有する流体紫外光処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、光源部の周辺にある水分を吸湿可能で小型の流体紫外光処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、流体紫外光処理装置は、流路管を流れる流体に、紫外光を照射する流体紫外光処理装置であって、基板と、前記基板上に配置され、紫外光を発する光源部と、前記光源部と前記流路管との間に配置され、前記光源部からの紫外光を透過する透光部材と、前記基板に固定され、水分を吸着する吸着物質を含む吸着部材を保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記光源部と前記保持部材により保持された前記吸着部材との間に位置し、前記光源部からの紫外光を前記透光部材へ反射する反射面を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、光源部の周辺にある水分を吸湿可能で小型の流体紫外光処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】流路管内の流体に紫外光を照射可能に配置された実施形態に係る流体紫外光処理装置を示す模式的断面斜視図である。
【
図2】
図1における流体紫外光処理装置近傍の模式的断面図である。
【
図3】
図1における流体紫外光処理装置の模式的拡大断面図である。
【
図4】
図3における光源部が配置された基板を示す模式的平面図である。
【
図5】
図3における基板に固定された保持部材を示す模式的斜視図である。
【
図6】
図5における保持部材および基板の模式的分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態に係る流体紫外光処理装置について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための流体紫外光処理装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。断面図として、切断面のみを示す端面図を用いる場合がある。
【0009】
各図面において、方向表現として、X軸、Y軸およびZ軸を有する直交座標を用いる。X軸、Y軸およびZ軸は互いに直交する。本明細書では、実施形態に係る流体紫外光処理装置が有する透光部材の法線方向に沿う軸をZ軸とする。該透光部材の法線は、実施形態に係る流体紫外光処理装置が有する光源部の発光面に直交する。該透光部材の法線方向に直交する軸をX軸およびY軸とする。
【0010】
X軸に沿うX方向で矢印が向いている方向を+X方向または+X側、+X方向の反対方向を-X方向または-X側と表記する。Y軸に沿うY方向で矢印が向いている方向を+Y方向または+Y側、+Y方向の反対方向を-Y方向または-Y側と表記する。Z軸に沿うZ方向で矢印が向いている方向を+Z方向または+Z側、+Z方向の反対方向を-Z方向または-Z側と表記する。但し、これらの方向表現は、本開示の実施形態の方向を限定するものではない。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において、平面視とは、Z方向、すなわち実施形態に係る流体紫外光処理装置が有する透光部材の法線方向から、対象を見ることをいう。また本明細書および特許請求の範囲において、+Z方向または+Z側を上、-Z方向または-Z側を下といい、+Z方向または+Z側の端部を上端という。また本明細書において、X軸、Y軸およびZ軸に沿うとは、対象がこれら軸に対して±10°の範囲内の傾きを有することを含む。また直交は、90°に対して±10°以内の誤差を含んでもよい。
【0012】
<流体紫外光処理装置100の全体構成例>
図1~
図3を参照して、実施形態に係る流体紫外光処理装置100の全体構成を説明する。
図1は、流路管200内の流体に紫外光を照射可能に配置された流体紫外光処理装置100を示す模式的断面斜視図である。
図2は、
図1における流体紫外光処理装置100近傍の模式的断面図である。
図3は、
図1における流体紫外光処理装置100の模式的拡大断面図である。
図1~
図3における断面は、Y軸およびZ軸に平行であり、且つX軸に直交する断面を示している。
【0013】
流体紫外光処理装置100は、流路管を流れる流体に紫外光を照射する装置である。流体には、液体、気体等が含まれる。
図1~
図3に示すように、流体紫外光処理装置100は、流路管200を流れる流体に対して紫外光Lを照射することで流体を処理し、例えば、処理前に比べて処理後の水の中の菌やウイルスの数を減らすことができる。
【0014】
流体紫外光処理装置100は、光源部1と、基板2と、透光部材3と、保持部材4と、を有する。光源部1は、基板2上に配置され、紫外光Lを発する。透光部材3は、光源部1と流路管200との間に配置され、光源部1からの紫外光Lを透過する。保持部材4は、基板2に固定され、水分を吸着する吸着物質を含む吸着部材5を保持する。
【0015】
透光部材3は、光源部1からの紫外光Lを流体紫外光処理装置100の外側へ透過する窓部として機能する。透光部材3は、光源部1からの紫外光Lの80%以上を透過することが好ましい。透光部材3は、平面視において略円形の外形形状を有する。但し、透光部材3は、平面視において、略楕円形、略矩形、略多角形等の略円形以外の形状を有してもよい。透光部材3に含まれる材料としては、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、フッ化カルシウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、オキシナイトライドガラス、カルコゲナイドガラスおよびサファイアからなる群から選択された少なくとも1種からなる無機材料を例示できる。
【0016】
図1および
図2に示すように、流体紫外光処理装置100および流路管200は、フランジ300に固定される。フランジ300は、フランジ300をZ方向に貫通する貫通孔301を含む。平面視における貫通孔301の開口部の形状は略円形である。但し、貫通孔301は、平面視において、略楕円形、略矩形、略多角形等の略円形以外の形状を有してもよい。
【0017】
流路管200は、内部を流体が流れる管状部材である。流路管200は、内部を流れる流体が貫通孔301内に浸入できるようにフランジ300に固定される。
図1において、矢印で示した流れ210は、流路管200内における流体の流れを表している。また矢印で示した流れ220は、流路管200内から貫通孔301に浸入した流体の流れを表している。
【0018】
図1に示した例では、流路管200内の流体は、-Z方向に進んだ後、分岐部201で一部が-Y方向に流れ、他の一部は透光部材3に向けて貫通孔301内に浸入する。流れ220は、貫通孔301に浸入した流体が透光部材3に当たって跳ね返り滞留すること等によって透光部材3の近傍で生じる。透光部材3の近傍で滞留した流体の一部は、滞留後に+Z方向に流れた後、分岐部201で-Y方向に流れる。なお、流路管200の形状、流体が流れる方向等は
図1に示したものに限定されず、流体紫外光処理装置100の用途等に応じて適宜変更できる。
【0019】
流体紫外光処理装置100は、取付部材500を介してヒートシンク400に固定される。ヒートシンク400は、流体紫外光処理装置100が取り付けられた取付部材500を流路管200の固定側とは反対側から貫通孔301に挿入した状態で、ネジ部材、接着部材等を用いてフランジ300に固定される。ヒートシンク400がフランジ300に固定されることにより、流体紫外光処理装置100は、Z方向に沿って流路管200内を流れる流体に対向配置される。
【0020】
フランジ300に取付部材500が取り付けられた状態で貫通孔301内に配置された取付部材500と、貫通孔301を画定する内側面と、の間の隙間は、封止部材等により封止されることが好ましい。該隙間が封止されることにより、流路管200から貫通孔301に浸入した流体が、該隙間を通ってフランジ300の外部に漏れ出すことを防止できる。
【0021】
ヒートシンク400は、アルミニウム等の熱伝導率が高い材料を含んで構成される。ヒートシンク400は、取付部材500を通って伝導されてきた発光駆動等に伴う光源部1の発熱を放熱することができる。
【0022】
図2に示すように、取付部材500は、本体部501と、蓋部502と、を有する。取付部材500は、平面視において略円形の外形形状を有する。但し、取付部材500は、平面視において、略楕円形、略矩形、略多角形等の略円形以外の外形形状を有してもよい。取付部材500は、金属材料、樹脂材料等を含んで構成される。
【0023】
本体部501は、凹部511を含む。平面視における凹部511の形状は略円形である。蓋部502は、平面視における形状が略円形である開口521と、開口521の縁部分に形成された凹部である保持部522と、を含む環状部材である。保持部522は、透光部材3が保持部522に嵌ることにより、透光部材3を保持できる。透光部材3は、接着部材等を用いて保持部522に固定できる。なお、凹部511および開口521のそれぞれは、平面視において、略楕円形、略矩形、略多角形等の略円形以外の形状を有してもよい。
【0024】
基板2は、光源部1が配置された面(+Z側の面)とは反対側の面(-Z側の面)が取付部材500の凹部511の底部503の+Z側の面に当接した状態で、接着部材等を用いて凹部511の底部503に固定される。蓋部502は、保持部522により透光部材3を保持した状態で、取付部材500の本体部501の+Z側の面上に載置され、ネジ部材、接着部材等を用いて本体部501に固定される。平面視において、基板2は、略矩形の外形形状を有する。基板2の平面視における外形形状は、例えば、1辺が1cm以上3cm以下の正方形とすることができる。
【0025】
取付部材500が貫通孔301内に配置されることにより、透光部材3は、凹部511の開口を塞いだ状態で、流路管200と光源部1との間に配置される。これにより、流体紫外光処理装置100は、流路管200内を流れる流体202に光源部1からの紫外光Lを、透光部材3を透過させて照射することができる。また、流路管200と光源部1との間に透光部材3が配置されることで、流体紫外光処理装置100は、流路管200内を流れる流体202が、取付部材500における凹部511の内部に浸入することを防止することができる。これにより、例えば流体202が液体である場合に、光源部1、基板2、保持部材4等が流体202で濡れることを防止できる。
【0026】
本体部501に蓋部502が取り付けられた状態における、本体部501の上面(+Z側の面)と蓋部502の下面(-Z側の面)との間の隙間は、封止部材等により封止されることが好ましい。また、蓋部502の保持部522に透光部材3が保持された状態における、蓋部502と透光部材3との間の隙間は、封止部材等により封止されることが好ましい。これらの隙間を封止することにより、流体紫外光処理装置100は、取付部材500の凹部511の内部へ流体202が浸入することを防止できる。
【0027】
図3に示すように、光源部1は、複数の発光部10を有する。複数の発光部10のそれぞれは、発光面11を含む。光源部1は、複数の発光部10それぞれの主に発光面11から紫外光Lを発する。平面視において、発光部10は、略矩形の外形形状を有する。発光部10の平面視における外形形状は、例えば、1辺が0.1cm以上0.2cm以下の正方形とすることができる。
【0028】
保持部材4は、反射面41と、貫通孔42と、凹部43と、を有する。保持部材4は、基板2と透光部材3との間に配置される。保持部材4は、樹脂材料、金属材料等を含んで構成される。
【0029】
保持部材4は、フッ素樹脂(polytetrafluoroethylene:PTFE)により構成されてもよい。絶縁性を有するフッ素樹脂により保持部材4を構成することで、流体紫外光処理装置100は、保持部材4が基板2に接触した場合にも、漏電、電気ノイズの発生等を防止できる。またフッ素樹脂は、紫外光に対する反射率が高いため、フッ素樹脂により保持部材4を構成することで、反射面41における紫外光Lの反射光の光量が大きくなる。これにより、流体紫外光処理装置100は、紫外光Lの照射効率を高くし、処理効率を高くすることができる。保持部材4の上端は、発光部10の発光面11よりも高い位置に配置される。保持部材4の高さは、例えば、0.1cm以上0.6cm以下とすることができる。なお、保持部材4の高さとは、Z軸における保持部材4の最長長さである。
【0030】
反射面41は、光源部1と、保持部材4により保持された吸着部材5と、の間に位置し、光源部1からの紫外光Lを透光部材3へ反射する。例えば反射面41は、複数の発光部10それぞれの発光面11から放射状に発せられる紫外光Lを透光部材3へ反射する。反射面41で反射された紫外光Lは、透光部材3が位置する方向に伝搬し、透光部材3を透過されて流路管200内の流体202に照射される。
【0031】
反射面41における紫外光Lの反射光の光量を大きくして紫外光Lの照射効率を高くする観点では、反射面41での光散乱を低減するために、反射面41は鏡面であることが好ましい。ここでの鏡面は、算術平均粗さRaが0.3μm以下の面であることを意味する。また、反射面41での光吸収を低減するために、反射面41の表面が金属膜等により被覆されてもよい。紫外光Lの反射率を高くする観点では、金属膜にはアルミニウム膜が用いられてもよい。反射面41表面に被覆される膜は、1つの材料からなる単層であってもよいし、1つ以上の材料からなる多層であってもよい。
【0032】
保持部材4の貫通孔42は、基板2上に配置された光源部1を平面視において内側に配置するように、接着部材等を用いて基板2上に固定される。貫通孔42は、光源部1からの光を透光部材3に向けて通過させる。
図3に示す例では、貫通孔42を画定する内側面の全面は、上記の反射面41に対応する。貫通孔42は、光源部1から発せられ、反射面41で反射された光を透光部材3に向けて通過させる。貫通孔42は、平面視において、略円形形状を有する。但し、貫通孔42は、平面視において、略楕円形、略矩形、略多角形等の略円形以外の形状を有してもよい。
【0033】
保持部材4の凹部43は、平面視において、貫通孔42の外側に配置される凹部である。保持部材4は、例えば凹部43の内部に配置される吸着部材5を保持する。保持部材4の凹部43の深さは、例えば、0.05cm以上0.5cm以下とすることができる。
【0034】
吸着部材5は、水分を吸着する吸着物質を含む。吸着部材5は、保持部材4により保持された状態で、光源部1及び透光部材3の近傍に配置される。吸着部材5を光源部1の近傍に配置することで、光源部1の周辺にある水分を除湿することができる。本実施形態では、吸着部材5は、透光部材3の法線方向から見た場合に、透光部材3と重なるように配置されてもよい。この配置により、吸着部材5は、透光部材3において結露した水分を効率よく吸着できるため、透光部材3に付着した水分を効率よく除去できる。これにより、透光部材3の表面に付着した水分が光源部1からの紫外光Lを反射したり屈折したりすることによる紫外光Lの光量低下が低減されるため、流体紫外光処理装置100は、紫外光Lの照射効率を高くし、処理効率を高くすることができる。
【0035】
吸着部材5に含まれる吸着物質は、シリカゲル、活性炭および珪酸塩鉱物の少なくとも1つから構成される多孔質材料を含んでもよい。この構成により、吸着部材5による水分の吸着効率を高くすることができ、光源部1の周辺にある水分を効率的に除湿することができる。なお、吸着部材5は、多孔質材料の粉体であってもよい。多孔質材料には、ゼオライト等が挙げられる。
【0036】
吸着部材5は、吸着物質を含有する樹脂であってもよい。吸着部材5は、光源部1からの紫外光Lが吸着部材5に対して照射されると、劣化して水分の吸着性が低下する場合がある。吸着物質を含有する樹脂から吸着部材5を構成することにより、吸着部材5の外周を樹脂で覆うことができる。これにより、樹脂に含有させずに保持部材4で吸着部材5単体を保持する場合と比較して、吸着部材5に照射される紫外光Lが低減され、吸着部材5の劣化が低減される。吸着部材5の劣化が低減されることで、吸着部材5は、光源部1の周辺にある水分を効率よく除湿可能になる。
【0037】
また、吸着物質を含有する樹脂により吸着部材5を構成するとともに、該樹脂に流動性をもたせると、該樹脂を凹部43に流し込むことで保持部材4の全体に吸着部材5を行き渡らせ、保持部材4に吸着部材5を保持させることができる。これにより、保持部材4により吸着部材5を保持させる工程の時間を短縮し、流体紫外光処理装置100の製造効率を高くすることができる。なお、吸着部材5は、凹部43に流し込まれた後、例えば加熱されることにより固化させることができる。吸着部材5を固化させることで、吸着部材5の凹部43からの漏出が低減される。また、吸着部材5が凹部43内で固化された状態とすることで、吸着部材5が飛散して光源部1に付着することが低減されるため、吸着部材5の付着による光源部1の劣化が低減される。これにより、流体紫外光処理装置100は、光源部1の劣化に伴う処理効率の低下を低減し、処理効率を高くすることができる。
【0038】
流体紫外光処理装置100は、保持部材4を有することにより、光源部1からの紫外光Lを透光部材3へ反射する反射面41と吸着部材5とを一体に配置できるため、反射面41と吸着部材5とを離隔して配置した場合と比較して、流体紫外光処理装置を小型化できる。これにより、光源部の周辺にある水分を効率よく吸着できる上述した効果と併せて、本実施形態では、光源部の周辺にある水分を除湿可能な小型の流体紫外光処理装置を提供することができる。
【0039】
また、本実施形態では、保持部材4に保持された吸着部材5の上端51は、保持部材4の上端44よりも下方に位置してもよい。この構成により、光源部1から吸着部材5が位置する方向へ向かう紫外光Lは、凹部43において、光源部1と吸着部材5との間に位置する壁部45により遮られるため、凹部43内の吸着部材5に照射される紫外光Lを低減できる。この結果、紫外光Lが照射されることによる吸着部材5の劣化を低減し、光源部1の周辺にある水分を効率よく除湿することができる。
【0040】
吸着部材5の上端51は、保持部材4の上端44よりも下方で、且つ保持部材4の上端44の近くに配置されることが好ましい。この配置により、保持部材4の上方(+Z側)に配置される透光部材3に吸着部材5を近づけることができ、透光部材3上の水分を効率よく除去することができる。吸着部材5の上端51と保持部材4の上端44との間の距離は、例えば0.1mm以上0.3mm以下とすることができる。
【0041】
<光源部1および基板2の詳細構成例>
図4は、
図3における光源部1が配置された基板2の模式的平面図である。
図4に示すように、基板2は、平面視において、略矩形状の外形形状を有する。但し、基板2は、平面視において、略楕円形、略矩形、略多角形等の略円形以外の形状を有してもよい。
【0042】
基板2の+Z側の面上には、光源部1と、2つの電極21と、電極21と電気的に接続された配線23と、が配置される。2つの電極21は、基板2における一方の対角線上にそれぞれ配置される。基板2における他方の対角線上には、2つのネジ穴22が形成される。ネジ穴22を画定する内側面には、ネジ部材と結合するネジ部が形成されている。ネジ穴22は、ネジ部材と結合し、基板2上に保持部材4を固定するために用いられる。
【0043】
基板2は、母材として絶縁性材料を用いることが好ましく、且つ光源部1から発せられる光や外光等を透過しにくい材料を用いることが好ましい。具体的には、基板2は、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト、窒化珪素等のセラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン(bismaleimide triazine resin)、ポリフタルアミド、ポリエステル樹脂等の樹脂を母材として構成することができる。
【0044】
本明細書に示す例では、光源部1は、発光部10-1、10-2、10-3、10-4、10-5、10-6、10-7、10-8および10-9の9つの発光部10を有する。9つの発光部10-1~10-9は、行列状に配置される。複数の発光部10は、X方向に沿って配置される、または、X方向およびX方向と直交するY方向に沿って配置される。
図4では、9つの発光部10は、X方向およびY方向に沿って設けられる。
【0045】
9つの発光部10は、9つの発光面11を含む。すなわち、発光部10-1は発光面11-1を、発光部10-2は発光面11-2を、発光部10-3は発光面11-3を、発光部10-4は発光面11-4を、発光部10-5は発光面11-5を、それぞれ含む。また、発光部10-6は発光面11-6を、発光部10-7は発光面11-7を、発光部10―8は発光面11-8を、発光部10―9は発光面11-9を、それぞれ含む。9つの発光面11-1~11-9は、平面視において保持部材4の貫通孔42の内側に配置される。なお、平面視において発光部10と発光面11は重なるため、
図4では、発光部10の符号と発光面11の符号を併記している。
【0046】
光源部1は、電極21から配線23を介して供給される駆動電圧または駆動電流に応じて紫外光Lを発する。
図4において、2つの電極21のうちの電極21aから供給された駆動電圧または駆動電流は、配線23を通って、発光部10-3、発光部10-2、発光部10-1、発光部10-4、発光部10-5、発光部10-6、発光部10-9、発光部10-8および発光部10-7の順に供給される。
【0047】
光源部1が発する紫外光Lのピーク波長は、例えば、10nm以上400nm以下である。光源部1は、発光素子を含む。発光素子として、例えば、LED(Light Emitting Diode)またはLD(Laser Diode)を用いることができる。光源部1は、基板2等の上に発光素子が載置された発光装置、基板2等の上に発光素子を含む筐体が載置された発光装置等を用いることができる。
【0048】
光源部1に含まれる発光部10の個数は、9つに限定されず、処理対象となる流体の種類等に応じて適宜変更可能である。発光部10、電極21およびネジ穴22それぞれの配置も、
図4に示したものに限定されず、保持部材4の形状等に応じて適宜変更可能である。
【0049】
<保持部材4の詳細構成例>
図5および
図6を参照して、保持部材4の詳細構成について説明する。
図5は、
図3における基板2に固定された保持部材4を示す模式的斜視図である。
図6は、
図5における保持部材4および基板2の模式的分解斜視図である。
【0050】
図5に示すように、本実施形態では、保持部材4の反射面41は光源部1の周囲に配置され、吸着部材5は反射面41の周囲に配置されてもよい。
図5に示す例では、吸着部材5では、平面視において、反射面41の+Y側、-Y側、+X側および-X側のそれぞれに凹部43が配置され、主にこれら4つの凹部43により吸着部材5が保持される。これらの配置により、流体紫外光処理装置100は、光源部1からの紫外光を反射面41で反射することで、該紫外光が吸着部材5に直接照射されることを低減できる。また流体紫外光処理装置100は、透光部材3と重なる広い範囲に吸着部材5を近接させやすくなることで、透光部材3上の結露した水分を効率的に除去できる。
【0051】
図5に示すように、本実施形態では、吸着部材5は、反射面41の周囲に繋がって配置されてもよい。具体的には、反射面41の+Y側、-Y側、+X側および-X側のそれぞれに配置された4つの凹部43のうちの隣り合う凹部43同士は、離隔せず、接続部46を介して繋がっていてもよい。この構成により、接続部46に対応する部分がなく、吸着部材5が光源部1の周囲に離隔して配置される場合と比較して、光源部1の周囲に吸着部材5を配置する面積を、接続部46の面積分大きくできる。この結果、流体紫外光処理装置100は、透光部材3上で結露した水分に対する吸着部材5の吸着効率を高くすることができる。
【0052】
また、上記の構成では、例えば吸着部材5を含有する流動性樹脂を凹部43に流し込むことで凹部43に吸着部材5を保持させる場合に、該流動性樹脂を流し込む位置を変えることなく、接続部46を介して凹部43全体に吸着部材5を行き渡らせることができる。これにより、光源部1の周囲に離隔配置された複数の凹部43のそれぞれに流動性樹脂を流し込む場合と比較して、保持部材4により吸着部材5を保持させる工程の時間を短縮し、流体紫外光処理装置100の製造効率を高くすることができる。
【0053】
図5に示すように、保持部材4は、保持部材4が基板2に固定された際に、電極21が保持部材4に重ならない形状を有していてもよい。この形状により、保持部材4が基板2に固定された状態において、電極21を露出させることができ、駆動電圧または駆動電流を供給させやすくなる。また、保持部材4が基板2に固定された状態において、電極21に向き合う部分を除去した形状で保持部材4を形成することにより、流体紫外光処理装置100を小型化しつつ、電極21を露出させることができる。
【0054】
図5および
図6に示すように、本実施形態では、保持部材4は、平面視において、保持部材4の外縁47よりも内側で吸着部材5と重ならない位置に取付孔48を有してもよい。保持部材4は、取付孔48に挿入される固定部材49によって基板2に固定される。なお、
図6では、加熱等によって固化した後の吸着部材5を示している。
【0055】
固定部材49は、例えばネジ部材である。
図6では、ネジ部材である固定部材49が取付孔48に挿入される方向を表す矢印によって、固定部材49を簡略化して表示している。保持部材4は、固定部材49が取付孔48に挿入され、基板2のネジ穴22に結合することで、基板2に固定される。この構成により、保持部材4の外縁47よりも外側に取付孔48を配置する場合と比較して、保持部材4の中心に近い位置に取付孔48を配置できるため、流体紫外光処理装置100を小型化することができる。
【0056】
以上、具体例を参照しつつ、本開示の実施形態について説明した。しかし、本開示は、これらの具体例に限定されるものではない。本開示の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本開示の要旨を包含する限り、本開示の範囲に属する。その他、本開示の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本開示の範囲に属するものである。
【0057】
本開示の態様は、例えば、以下のとおりである。
<項1> 流路管を流れる流体に、紫外光を照射する流体紫外光処理装置であって、基板と、前記基板上に配置され、紫外光を発する光源部と、前記光源部と前記流路管との間に配置され、前記光源部からの紫外光を透過する透光部材と、前記基板に固定され、水分を吸着する吸着物質を含む吸着部材を保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記光源部と前記保持部材により保持された前記吸着部材との間に位置し、前記光源部からの紫外光を前記透光部材へ反射する反射面を有する、流体紫外光処理装置である。
<項2> 前記保持部材に保持された前記吸着部材の上端は、前記保持部材の上端よりも下方に位置する、前記<項1>に記載の流体紫外光処理装置である。
<項3> 前記吸着部材は、前記透光部材の法線方向から見た場合に、前記透光部材と重なるように配置される、前記<項1>または前記<項2>に記載の流体紫外光処理装置である。
<項4> 前記反射面は、前記光源部の周囲に配置され、前記吸着部材は、前記反射面の周囲に配置される、前記<項1>から前記<項3>のいずれか1つに記載の流体紫外光処理装置である。
<項5> 前記吸着部材は、前記反射面の周囲に繋がって配置される、前記<項4>に記載の流体紫外光処理装置である。
<項6> 前記保持部材は、前記透光部材の法線方向から見た場合に、前記保持部材の外縁よりも内側において、前記吸着部材と重ならない位置に取付孔を有し、前記保持部材は、前記取付孔に挿入された固定部材によって前記基板に固定される、前記<項1>から前記<項5>のいずれか1つに記載の流体紫外光処理装置である。
<項7> 前記吸着部材は、前記吸着物質を含有する樹脂である、前記<項1>から前記<項6>のいずれか1つに記載の流体紫外光処理装置である。
<項8> 前記吸着物質は、シリカゲル、活性炭および珪酸塩鉱物の少なくとも1つから構成される多孔質材料を含む、前記<項1>から前記<項7>のいずれか1つに記載の流体紫外光処理装置である。
【符号の説明】
【0058】
1 光源部
10、10-1~10-9 発光部
11、11-1~11-9 発光面
2 基板
21 電極
21a、21b 電極
22 ネジ穴
23 配線
3 透光部材
4 保持部材
41 反射面
42 貫通孔
43 凹部
44 保持部材の上端
45 壁部
46 接続部
47 外縁
48 取付孔
49 固定部材
5 吸着部材
51 吸着部材の上端
100 流体紫外光処理装置
200 流路管
201 分岐部
202 流体
210、220 流れ
300 フランジ
301 貫通孔
400 ヒートシンク
500 取付部材
501 本体部
502 蓋部
503 底部
511 凹部
521 開口
522 保持部
L 紫外光