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特開2024-68374把持位置特定システム、枝肉切断システム、及び、把持位置特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068374
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】把持位置特定システム、枝肉切断システム、及び、把持位置特定方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20240513BHJP
   A22C 17/02 20060101ALI20240513BHJP
   A22C 17/00 20060101ALI20240513BHJP
   B26D 5/32 20060101ALI20240513BHJP
   B26D 5/34 20060101ALI20240513BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20240513BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20240513BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240513BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240513BHJP
   G06V 20/68 20220101ALI20240513BHJP
【FI】
G06T7/70 A
A22C17/02
A22C17/00
B26D5/32
B26D5/34 Z
B26D3/00 602Z
B26D3/00 603Z
B26D7/02 Z
G01B11/00 H
G06T7/00 350B
G06V20/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178764
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平山 潤太
(72)【発明者】
【氏名】日野 和睦
(72)【発明者】
【氏名】徳山 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】栗山 寛子
(72)【発明者】
【氏名】徳本 大
【テーマコード(参考)】
2F065
3C021
4B011
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA52
2F065BB05
2F065CC16
2F065DD03
2F065FF04
2F065JJ03
2F065MM26
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU05
3C021CC04
4B011EA01
5L096AA06
5L096CA04
5L096FA06
5L096FA09
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA69
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】枝肉の把持位置を精度よく特定する。
【解決手段】把持位置特定システムは、背骨の位置で左右に半割りされた枝肉の把持位置を特定するためのシステムである。本システムは、撮像装置と、把持位置特定装置とを備える。撮像装置は、枝肉の切断面を撮像する。把持位置特定装置は、撮像装置によって撮像された画像において、把持位置の基準となる特徴点を切断面の輪郭の内側領域にて特定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背骨の位置で左右に半割りされた枝肉の把持位置を特定するための把持位置特定システムであって、
前記枝肉の切断面を撮像するための撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像において、前記把持位置の基準となる特徴点を前記切断面の輪郭の内側領域にて特定するための把持位置特定装置と
を備える、把持位置特定システム。
【請求項2】
前記把持位置は、前記特徴点から前記枝肉の切断位置とは反対側にオフセットさせた位置に設定される、請求項1に記載の把持位置特定システム。
【請求項3】
前記把持位置特定装置は、前記切断面に含まれる第一肋骨と接続される脊椎を、前記特徴点として特定する、請求項1又は2に記載の把持位置特定システム。
【請求項4】
前記把持位置特定装置は、前記切断面に含まれる胸腔の下端を、前記特徴点として特定する、請求項1又は2に記載の把持位置特定システム。
【請求項5】
前記把持位置特定装置は、前記切断面に含まれる第一肋骨を、前記特徴点として特定する、請求項1又は2に記載の把持位置特定システム。
【請求項6】
前記把持位置特定装置は、過去に取得した前記画像を教師データとして学習した学習モデルを用いて、前記画像に基づいて前記把持位置を特定する、請求項1又は2に記載の把持位置特定システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の把持位置特定システムと、
前記把持位置特定システムで特定された前記把持位置において、前記枝肉を把持するための把持装置と、
前記把持装置によって把持された前記枝肉を切断するための切断装置と、
を備える、枝肉切断システム。
【請求項8】
前記把持装置は、
前記枝肉の表側から当接可能な第1把持部材と、
前記第1把持部材に対して所定の位置関係において、前記枝肉の裏側から当接する第2把持部材と
を備える、請求項7に記載の枝肉切断システム。
【請求項9】
前記把持位置は、前記枝肉に対して設定される前記切断装置による切断可能範囲と干渉しないように特定される、請求項7又は8に記載の枝肉切断システム。
【請求項10】
背骨の位置で左右に半割りされた枝肉の把持位置を特定するための把持位置特定方法であって、
前記枝肉の切断面を撮像する工程と、
前記撮像装置によって撮像された画像において、前記把持位置の基準となる特徴点を前記切断面の輪郭の内側領域にて特定する工程と
を備える、把持位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、把持位置特定システム、枝肉切断システム、及び、把持位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば豚や牛のような比較的大型な家畜の食肉屠体を対象とする食肉加工では、下処理した食肉屠体を脊椎(背骨)の位置で左右に半割りすることで一対の枝肉に切り分け、更に、各枝肉が前躯及び後躯に切り分けられる。このような切断工程は、従来、作業員が刃物を用いて人手で行っていたが、品質の均一性や作業員の安全性の確保、及び、処理効率の向上の観点から、食肉加工機械を利用した自動化が望まれている。例えば特許文献1には、枝肉の大分割工程における切断装置及び方法に関する技術が開示されている。この文献では、切断される一対の枝肉が吊り下げ支持されるとともに、前後から略水平方向に沿って延びる支持バーによって支持されることで、切断時の枝肉の姿勢が固定されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-31916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、自動化された切断工程において枝肉を良好な品質で切断するためには、枝肉に対して例えば棒状の把持部材で枝肉に挟み込むように把持することで、枝肉の姿勢を安定化することが有効である。このような把持部材による枝肉の把持位置は、例えば、枝肉を撮像することにより得られた画像を解析することにより枝肉の特徴部分を抽出し、当該抽出された特徴部分に基づいて決定することができる。このような画像からの特徴部分の抽出は、学習モデルを用いた予測技術を適用することで、精度向上が期待される。この場合、画像と特徴部分との関係を教示する教師データを用意し、教師データを用いて予測モデルを学習することで、学習モデルを構築することができる。
【0005】
ところで切断対象である枝肉は、前処理工程において食肉屠体から頭部が切除される。このような頭部の切除処理は、一般的に作業員による人手で行われ、頭部の切除位置には少なからずバラツキがある。そのため枝肉のうち頭部が切除されて残存する首部の長さには個体差がある。前述のように把持位置を特定するための基準となる特徴部分として、このような枝肉の首部を選定すると、個体差による影響を受けてしまい、把持位置を特定するための予測モデルの精度が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、枝肉の把持位置を精度よく特定可能な把持位置特定システム、枝肉切断システム、及び、把持位置特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る把持位置特定システムは、上記課題を解決するために、
背骨の位置で左右に半割りされた枝肉の把持位置を特定するための把持位置特定システムであって、
前記枝肉の切断面を撮像するための撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像において、前記把持位置の基準となる特徴点を前記切断面の輪郭の内側領域にて特定するための把持位置特定装置と
を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る枝肉切断システムは、上記課題を解決するために、
本開示の少なくとも一実施形態に係る把持位置特定システムと、
前記把持位置特定システムで特定された前記把持位置において、前記枝肉を把持するための把持装置と、
前記把持装置によって把持された前記枝肉を切断するための切断装置と、
を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る把持位置特定方法は、上記課題を解決するために、
背骨の位置で左右に半割りされた枝肉の把持位置を特定するための把持位置特定方法であって、
前記枝肉の切断面を撮像する工程と、
前記撮像装置によって撮像された画像において、前記把持位置の基準となる特徴点を前記切断面の輪郭の内側領域にて特定する工程と
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、枝肉の把持位置を精度よく特定可能な把持位置特定システム、枝肉切断システム、及び、把持位置特定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一対の枝肉を正面から示す模式図である。
図2】一実施形態に係る把持位置特定システムを周辺構成とともに示す構成図である。
図3図2の撮像装置の配置レイアウトを上方から示す模式図である。
図4図1の一対の枝肉で特定され得る特徴点の幾つかの態様を示す模式図である。
図5】一実施形態に係る切断位置特定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
まず図1を参照して、本開示の少なくとも一実施形態に係る把持位置特定システムの特定対象となる枝肉1について説明する。図1は一対の枝肉1を正面から示す模式図である。
【0014】
一対の枝肉1は、例えば豚や牛のような比較的大型な家畜の食肉屠体を脊椎7(背骨)の位置で左右に半割りされる。一対の枝肉1は、左枝肉1A及び右枝肉1Bを含む。一対の枝肉1の各々は、前躯2側を下方(後躯3側を上方)、内側に背側(外側に胸側)にし、且つ、脊椎7及び肋骨8が見える切断面4を手前側になる姿勢で、中心軸Cに対して左右対称に配置される。このような一対の枝肉は、図1において紙面上方にある脚部5を、不図示のクランプ機構によって把持することにより、吊り下げ支持される。
【0015】
このように吊り下げ支持された一対の枝肉1は、不図示の切断装置によって前躯2を切断するための切断工程を実施する際に、その姿勢を安定的に維持するために、把持装置10によって把持される。把持装置10は、第1把持部材10aと、第2把持部材10bとを備える。第1把持部材10aは一対の枝肉1に対して交差するように配置され、一対の枝肉1に対して表側(図1において紙面手前側)から当接可能に配置される。第2把持部材10bは一対の枝肉1に対して交差するように配置され、一対の枝肉1に対して裏側(図1において紙面奥側)から当接可能である。第1把持部材10a及び第2把持部材10bは、不図示のアクチュエータによって奥行方向における互いの間隔を増減するように駆動可能であり、一対の枝肉1を挟み込むように把持する。
【0016】
また図1に示すように、第1把持部材10a及び第2把持部材10bは、不図示の調整機構によって、一対の枝肉1の正面側から見て、上下方向に沿って移動可能であることで、一対の枝肉1に対する把持位置Pが可変となっている。特に、第1把持部材10a及び第2把持部材10bは、一対の枝肉1の正面側から見て、所定間隔Gを有するように上下方向に沿って異なる位置に配置される。そして調整機構によって移動される場合には、当該間隔Gを一定に維持しながら(すなわち第1把持部材10a及び第2把持部材10bの相対的位置関係が一定に維持されながら)、第1把持部材10a及び第2把持部材10bがともに移動可能となる。
【0017】
続いて上記構成を有する一対の枝肉1について把持装置10による把持位置Pを特定するための把持位置特定システム20について説明する。図2は一実施形態に係る把持位置特定システム20を周辺構成とともに示す構成図であり、図3図2の撮像装置22の配置レイアウトを上方から示す模式図である。
【0018】
図2に示すように、把持位置特定システム20は、一対の枝肉1の把持位置Pを特定するためのシステムであり、撮像装置22と、把持位置特定装置24とを備える。尚、図2では、把持位置特定システム20とともに、前述の把持装置10、及び、把持位置特定システム20で特定された把持位置Pを取得して把持装置10を制御するための制御装置26とが示されている。
【0019】
撮像装置22は、図3に示すように、一対の枝肉1の切断面4に対向するように配置されることで、一対の枝肉1を撮像可能なカメラ等の装置である。撮像装置22によって取得される画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。また撮像装置22の数は、単体でもよいし、複数でもよい。
【0020】
把持位置特定装置24は、撮像装置22で撮像された画像を用いて、一対の枝肉1の切断位置Lを特定するための装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0021】
図2では把持位置特定システム20が備える把持位置特定装置24の機能的構成として、画像取得部28と、記憶部30と、特徴点特定部32と、把持位置算出部34とを備える。
【0022】
画像取得部28は、撮像装置22で撮像された画像を取得するための構成である。
【0023】
記憶部30は、把持位置特定装置24の演算処理に必要な各種データを記憶するための構成であり、例えば特徴点特定部32における特徴点Pcの予測に用いられる学習モデル36を記憶する。学習モデル36は、画像取得部28で取得された画像を入力して、当該画像に基づいて特徴点Pcを予測するための予測モデルであり、過去に画像取得部28で取得された画像を教師データとして学習される。
【0024】
特徴点特定部32は、画像取得部28で取得された画像における特徴点Pcを特定するための構成である。特徴点Pcは、把持位置算出部34において把持位置Pを算出する際の基準となる特徴的な点として特定される。
【0025】
ここで特徴点Pcに関する幾つかの態様について説明する。図4図1の一対の枝肉1で特定され得る特徴点Pcの幾つかの態様を示す模式図である。
【0026】
まず図4では、比較例に係る特徴点Pc1´及びPc2´として、各枝肉1の首部が示されている。但し、特徴点Pc1´及びPc2´に示されるように、枝肉1の首部は、一般的に作業員の人手による頭部の切除作業によって形成されるため、個体差が生じやすい(図4では、左枝肉1Aと右枝肉1Bに残存している首部の長さが異なることで、特徴点Pc1´及びPc2´の高さ方向位置が異なっている)。そのため、特徴点Pc1´及びPc2´を基準として把持位置Pを算出すると、個体差の影響を受けやすくなってしまう。このような課題は、以下に説明する各態様に係る特徴点Pcを採用することで好適に解決できる。
【0027】
図4には、特徴点Pcの幾つかの態様として特徴点Pc1~Pc3が示されている。これらの特徴点Pc1~Pc3は、各枝肉1の切断面4の輪郭Rの内側領域Arから特定される。切断面4の輪郭Rの内側領域Arは枝肉の個体差の影響を受けにくいため、当該内側領域Arから特徴点Pcを特定することで、把持位置Pの算出に適した適切な特徴点Pcが得られる。
【0028】
まず特徴点Pc1は、切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる第一肋骨と接続される脊椎を、特徴点Pcとして選択した態様である。また特徴点Pc2は、切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる胸腔の下端(いわゆるスペアリブの下端)を、特徴点Pcとして選択した態様である。また特徴点Pc3は、切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる第一肋骨を、特徴点Pcとして選択した態様である。このように切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる特徴点Pc1~Pc3を選択することにより、把持位置Pを好適に算出するための特徴点Pcを得ることができる。
【0029】
尚、内側領域Arのうち第一肋骨が胸腔に露出していない場合には、第一肋骨に関することがあるため、特徴点Pc1及びPc3に比べて特徴点Pc2を採用することで精度を向上できる。また特徴点Pc2は、算出される把持位置Pに対して比較的近い位置であるため、特徴点Pc2を用いて把持位置Pを算出することで精度向上が期待できる。一方で、内臓や脂肪・肉片がスペアリブ下端に付着している場合には特徴点Pc2に比べて、特徴点Pc1及びPc3を用いることで、精度のよい把持位置Pの算出が期待できる。
また把持位置Pを算出するための特徴点Pcは、前述の特徴点Pc1~Pc3のいずれか1つを採用してもよいし、これらの組み合わせを採用してもよい。
【0030】
本実施形態では、特徴点特定部32は、記憶部30に記憶された学習モデル36に対して、画像取得部28で取得された画像を入力することにより、特徴点Pcの予測結果を求める。学習モデル36は、前述したように、過去に画像取得部28で取得された画像について特徴点Pcを指定することで作成した教師データを用いて予め学習されることで構築される。一般的に、枝肉1の切断面4の輪郭Rの内側領域Ar内にある特徴点Pcは、単純な画像処理では高精度に特定することは難しいが、画像を教師データとして構築された学習モデル36を用いることで、精度のよい特徴点Pcの特定が可能となる。
【0031】
把持位置算出部34は、特徴点特定部32で予測された特徴点Pcを基準として把持位置Pを算出するための構成である。このとき把持位置算出部34は、特徴点特定部32によって特定された特徴点Pcを基準として、枝肉1のうち予め設定された切断位置とは反対側にオフセットするように、把持位置Pを算出する。このオフセット量は、適宜設定可能であるが、好ましくは、把持位置Pが特徴点Pcから離れすぎない位置(ある程度近い位置)になるように設定されるとよい。
【0032】
把持位置Pの算出手法について、具体的に説明する。図1では、一対の枝肉1には、予め設定された切断位置Lが示されている。また特徴点特定部32によって特定された特徴点Pcが切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる胸腔の下端(いわゆるスペアリブの下端)に示されている。この特徴点Pcからみて切断位置Lとは反対側に、把持位置P(図1では、手前側の第1把持部材10aの位置)が設定されている。このように把持位置Pを算出することで、切断位置Lと把持位置Pとの間の距離を基準にして、把持位置Pと特徴点Pcの距離が小さくなるため、枝肉1の個体差の影響を受けにくくし、好適な把持位置Pの特定が可能となる。
【0033】
尚、前述のように第1把持部材10aと第2把持部材10bとの間隔Gは一定であるため、把持位置Pによって第1把持部材10aの位置が決定されると、第2把持部材10bの位置も一義的に決定される。
【0034】
このように把持位置算出部34で算出された把持位置Pは、把持位置特定装置24の特定結果として制御装置26に出力される。制御装置26は、把持装置10の位置を取得した把持位置Pにするための制御信号を生成する。この生成された制御信号は、把持装置10の移動機構(不図示)に送信されることで、移動機構が駆動することによって把持装置10の位置が把持位置Pになる。
【0035】
続いて上記構成を有する把持位置特定システム20によって実施される把持位置特定方法について説明する。図5は一実施形態に係る切断位置特定方法を示すフローチャートである。
【0036】
把持位置特定方法では、まず撮像装置22によって一対の枝肉1の撮像が行われ(ステップS1)。画像取得部28によって撮像装置22で撮像された画像が取得される(ステップS2)。
【0037】
続いて特徴点特定部32は、記憶部30にアクセスすることにより、予め教師データを用いて学習された学習モデル36を取得し(ステップS3)、当該学習モデル36に対して、ステップS2で取得した画像を入力することにより、特徴点Pcを特定する(ステップS4)。そして把持位置算出部34は、ステップS4で特定された特徴点Pcを基準として、把持位置Pを算出する(ステップS5)。ステップS5で算出された把持位置Pは、制御装置26に対して出力されることにより、把持装置10が把持位置Pにおいて一対の枝肉1を把持するように動作する(ステップS6)。
【0038】
以上説明したように上記各実施形態によれば、撮像装置22で撮像された画像を解析することにより、枝肉1の把持位置Pを好適に特定できる。特に切断面4の輪郭Rの内側領域Arは枝肉1の個体差の影響を受けにくいため、当該内側領域Arから特徴点Pcを特定し、特徴点Pcを基準とすることで適切な把持位置Pの特定が可能である。
【0039】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0040】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0041】
(1)一態様に係る把持位置特定システムは、
背骨の位置で左右に半割りされた枝肉の把持位置を特定するための把持位置特定システムであって、
前記枝肉の切断面を撮像するための撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像において、前記把持位置の基準となる特徴点を前記切断面の輪郭の内側領域にて特定するための把持位置特定装置と
を備える。
【0042】
上記(1)の態様によれば、撮像装置で撮像された画像を解析することにより、枝肉の把持位置を好適に特定できる。枝肉の首部の位置は、食肉屠体から頭部が切除される位置の影響で個体差があるため、特徴点として選定すると、これを基準に適切な把持位置の特定が難しい。それに対して、切断面の輪郭の内側領域は枝肉の個体差の影響を受けにくいため、当該領域から特徴点を検出することで、特徴点を基準とした適切な把持位置の特定が可能となる。
【0043】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記把持位置は、前記特徴点から前記枝肉の切断位置とは反対側にオフセットさせた位置に設定される。
【0044】
上記(2)の態様によれば、特徴点を基準として把持位置を特定する際に、特徴点から枝肉の切断位置とは反対側にオフセットさせた位置になるように把持位置が特定される。これにより、切断位置と把持位置との間の距離を基準にして、把持位置と特徴点の距離が小さくなるため、枝肉の個体差の影響を受けにくくし、好適な把持位置の特定が可能となる。
【0045】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記把持位置特定装置は、前記切断面に含まれる第一肋骨と接続される脊椎を、前記特徴点として特定する。
【0046】
上記(3)の態様によれば、把持位置を特定するための基準となる特徴点として、切断面に含まれる第一肋骨と接続される脊椎を選択することにより、好適な把持位置の特定が可能となる。
【0047】
(4)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記把持位置特定装置は、前記切断面に含まれる胸腔の下端を、前記特徴点として特定する。
【0048】
上記(4)の態様によれば、把持位置を特定するための基準となる特徴点として、切断面に含まれる胸腔の下端(いわゆるスペアリブの下端)を選択することにより、好適な把持位置の特定が可能となる。
【0049】
(5)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記把持位置特定装置は、前記切断面に含まれる第一肋骨を、前記特徴点として特定する。
【0050】
上記(5)の態様によれば、把持位置を特定するための基準となる特徴点として、切断面に含まれる第一肋骨を検出することにより、好適な把持位置の特定が可能となる。
【0051】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記把持位置特定装置は、過去に取得した前記画像を教師データとして学習した学習モデルを用いて、前記画像に基づいて前記把持位置を特定する。
【0052】
上記(6)の態様によれば、学習モデルを用いた画像解析により、把持位置を精度よく特定できる。一般的に、枝肉の切断面の輪郭の内側領域内にて特徴点は、単純な画像処理では高精度に特定することは難しいが、画像を教師データとして構築された学習モデルを用いることで、切断面の輪郭の内側の領域内の特徴点を精度よく特定できる。
【0053】
(7)一態様に係る枝肉切断システムは、
上記(1)から(6)のいずれか一態様に係る把持位置特定システムと、
前記把持位置特定システムで特定された前記把持位置において、前記枝肉を把持するための把持装置と、
前記把持装置によって把持された前記枝肉を切断するための切断装置と、
を備える。
【0054】
上記(7)の態様によれば、上記各態様の把持位置特定システムによって精度よく特定された把持位置に基づいて、切断対象である枝肉を把持することにより、切断装置によって品質のよい枝肉の切断処理を行うことができる。
【0055】
(8)他の態様では、上記(7)の態様において、
前記把持装置は、
前記枝肉の表側から当接可能な第1把持部材と、
前記第1把持部材に対して所定の位置関係において、前記枝肉の裏側から当接する第2把持部材と
を備える。
【0056】
上記(8)の態様によれば、枝肉は表側及び裏側の両面を、それぞれ第1把持部材及び第2把持部材によって挟まれるように把持することで、安定した姿勢で枝肉の切断が可能である。
【0057】
(9)他の態様では、上記(7)又は(8)の態様において、
前記把持位置は、前記枝肉に対して設定される前記切断装置による切断可能範囲と干渉しないように特定される。
【0058】
上記(9)の態様によれば、把持位置が切断可能範囲と干渉しないように特定されることで、切断装置と把持部材との干渉を防止しながら、切断に適した把持位置を好適に特定できる。
【0059】
(10)一態様に係る把持位置特定方法は、
背骨の位置で左右に半割りされた枝肉の把持位置を特定するための把持位置特定方法であって、
前記枝肉の切断面を撮像する工程と、
前記撮像装置によって撮像された画像において、前記把持位置の基準となる特徴点を前記切断面の輪郭の内側領域にて特定する工程と
を備える。
【0060】
上記(10)の態様によれば、撮像装置で撮像された画像を解析することにより、枝肉の把持位置を好適に特定できる。枝肉の首部の位置は、食肉屠体から頭部が切除される位置の影響で個体差があるため、特徴点として選定すると、これを基準に適切な把持位置の特定が難しい。それに対して、切断面の輪郭の内側領域は枝肉の個体差の影響を受けにくいため、当該領域から特徴点を検出することで、特徴点を基準とした適切な把持位置の特定が可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 枝肉
1A 左枝肉
1B 右枝肉
2 前躯
3 後躯
4 切断面
5 脚部
7 脊椎
8 肋骨
10 把持装置
10a 第1把持部材
10b 第2把持部材
20 把持位置特定システム
22 撮像装置
24 把持位置特定装置
26 制御装置
28 画像取得部
30 記憶部
32 特徴点特定部
34 把持位置算出部
36 学習モデル
R 輪郭
Ar 内側領域
図1
図2
図3
図4
図5