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特開2024-68382切断位置特定システム、及び、切断位置特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068382
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】切断位置特定システム、及び、切断位置特定方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 17/00 20060101AFI20240513BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20240513BHJP
   B26D 5/24 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A22C17/00
B26D7/02 Z
B26D5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178775
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野明 智也
(72)【発明者】
【氏名】平山 潤太
(72)【発明者】
【氏名】徳本 大
(72)【発明者】
【氏名】日野 和睦
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 勝美
【テーマコード(参考)】
3C021
4B011
【Fターム(参考)】
3C021CC04
4B011EA03
(57)【要約】
【課題】画像に基づいて枝肉の切断位置を精度よく特定する。
【解決手段】切断位置特定システム脊椎の位置で左右に半割りされた一対の枝肉の切断位置を特定するために、撮像装置と、特定装置とを備える。撮像装置は、一対の枝肉の少なくとも一方について、脊椎から枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも枝肉の胸側に配置される。特定装置は、撮像装置で撮像された画像を用いて、肋骨間を通る切断位置を特定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎の位置で左右に半割りされた一対の枝肉の切断位置を特定するための切断位置特定システムであって、
前記一対の枝肉の少なくとも一方について、前記脊椎から前記枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも前記枝肉の胸側に配置された少なくとも1つの撮像装置と、
前記少なくとも1つの撮像装置で撮像された画像を用いて、前記肋骨間を通る前記切断位置を特定するための特定装置と、
を備える、切断位置特定システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの撮像装置は、前記脊椎及び前記肋骨の接続部の少なくとも一部が映り込むように配置される、請求項1に記載の切断位置特定システム。
【請求項3】
前記基準線に対して、前記脊椎及び前記撮像装置を通る線分がなす角度は、0~80度の範囲である、請求項1又は2に記載の切断位置特定システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの撮像装置は、
前記一対の枝肉の一方に対応する位置に配置された第1撮像装置と、
前記一対の枝肉の他方に対応する位置に配置された第2撮像装置と、
を含む、請求項1又は2に記載の切断位置特定システム。
【請求項5】
前記第1撮像装置及び前記第2撮像装置は、それぞれ前記一対の枝肉を撮像範囲に含むように配置される、請求項4に記載の切断位置特定システム。
【請求項6】
前記一対の枝肉の把持角度が可変である、請求項1又は2に記載の切断位置特定システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの撮像装置は、前記枝肉に対して相対的に位置又は角度を可変である、請求項1又は2に記載の切断位置特定システム。
【請求項8】
前記特定装置は、過去に取得した前記画像を教師データとして学習した学習モデルを用いて、前記画像に基づいて前記切断位置を特定する、請求項1又は2に記載の切断位置特定システム。
【請求項9】
脊椎の位置で左右に半割りされた一対の枝肉の切断位置を特定するための切断位置特定方法であって、
前記一対の枝肉の少なくとも一方について、前記脊椎から前記枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも前記枝肉の胸側に配置された少なくとも1つの撮像装置を用いて撮像する工程と、
前記画像を用いて、前記肋骨間を通る前記切断位置を特定する工程と、
を備える、切断位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切断位置特定システム、及び、切断位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば豚や牛のような比較的大型な家畜の食肉屠体を対象とする食肉加工では、下処理した食肉屠体を脊椎(背骨)の位置で左右に半割りすることで一対の枝肉に切り分け、更に、各枝肉が前躯及び後躯に切り分けられる。このような切断工程は、従来、作業員が刃物を用いて人手で行っていたが、品質の均一性や作業員の安全性の確保、及び、処理効率の向上の観点から、食肉加工機械を利用した自動化が望まれている。例えば特許文献1には、枝肉の大分割工程における切断装置及び方法に関する技術が開示されている。この文献では、切断される一対の枝肉が吊り下げ支持されるとともに、前後から略水平方向に沿って延びる支持バーによって支持されることで、切断時の枝肉の姿勢が固定されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-31916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、枝肉の切断工程を自動化する場合、枝肉を切断する際の前行程として、枝肉の切断位置を特定する必要がある。切断位置を特定するための一手法として、枝肉を撮像することにより得られた画像を解析することにより枝肉の特徴部分を抽出し、当該抽出された特徴部分に基づいて切断位置を決定することができる。このような画像からの特徴部分の抽出は、学習モデルを用いた予測技術を適用することで、精度向上が期待される。この場合、画像と特徴部分との関係を教示する教師データを用意し、教師データを用いて予測モデルを学習することで、学習モデルを構築することができる。
【0005】
枝肉の切断位置を特定する際の特徴部分として、枝肉の背側に位置する脊椎を構成する各椎骨と、枝肉の胸側に位置する肋骨とを用いることにより、特定の椎骨と肋骨とを結ぶ切断ラインを決定することができる。このような切断ラインを学習モデルを用いて特定しようとする場合、学習モデルの学習に用いる教師データを、撮像装置によって撮像した画像上で、特定の椎骨と肋骨とを指定する必要がある。しかしながら、枝肉の正面に配置された撮像装置で取得された画像では、湾曲する肋骨と脊椎との接続部が、撮像装置の死角又は影となって認識が困難である。そのため、教師データを作成するための特定の椎骨と肋骨とを正確に指定することが困難である。仮に、このような画像に基づいて学習された学習モデルでは、切断位置の予測精度が低下してしまう。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、枝肉の切断位置を精度よく特定可能な切断位置特定システム、及び、切断位置特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る切断位置特定システムは、上記課題を解決するために、
脊椎の位置で左右に半割りされた一対の枝肉の切断位置を特定するための切断位置特定システムであって、
前記一対の枝肉の少なくとも一方について、前記脊椎から前記枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも前記枝肉の胸側に配置された少なくとも1つの撮像装置と、
前記少なくとも1つの撮像装置で撮像された画像を用いて、前記肋骨間を通る前記切断位置を特定するための特定装置と、
を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る切断位置特定方法は、上記課題を解決するために、
脊椎の位置で左右に半割りされた一対の枝肉の切断位置を特定するための切断位置特定方法であって、
前記一対の枝肉の少なくとも一方について、前記脊椎から前記枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも前記枝肉の胸側に配置された少なくとも1つの撮像装置を用いて撮像する工程と、
前記画像を用いて、前記肋骨間を通る前記切断位置を特定する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、枝肉の切断位置を精度よく特定可能な切断位置特定システム、及び、切断位置特定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一対の枝肉を正面から示す模式図である。
図2】一実施形態に係る切断位置特定システムの構成図である。
図3図2の切断位置特定システムによって実施される切断位置特定方法を示すフローチャートである。
図4】参考技術に係る撮像装置の配置レイアウトを一対の枝肉の上方から示す模式図である。
図5図4の撮像装置によって撮像された画像の一例である。
図6】一実施形態に係る撮像装置の配置レイアウトを一対の枝肉の上方から示す模式図である。
図7図6の撮像装置によって撮像された画像の一例である。
図8】他の実施形態に係る撮像装置の配置レイアウトを一対の枝肉の上方から示す模式図である。
図9図8の変形例である。
図10】他の実施形態に係る撮像装置の配置レイアウトを一対の枝肉の上方から示す模式図である。
図11】他の実施形態に係る撮像装置の配置レイアウトを一対の枝肉の上方から示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
まず図1を参照して、本開示の少なくとも一実施形態に係る切断位置特定装置の特定対象となる枝肉1について説明する。図1は一対の枝肉1を正面から示す模式図である。
【0013】
一対の枝肉1は、例えば豚や牛のような比較的大型な家畜の食肉屠体を脊椎7(背骨)の位置で左右に半割りされる。一対の枝肉1は、左枝肉1A及び右枝肉1Bを含む。対の枝肉1の各々は、前躯2側を下方(後躯3側を上方)、内側に背側(外側に胸側)にし、且つ、脊椎7及び肋骨8が見える切断面4を手前側になる姿勢で、中心軸Cに対して左右対称に配置される。左枝肉1A及び右枝肉1Bは厳密には異なる部位があることもあるが、以下の説明では略等しい形状を有するとして述べる。このような一対の枝肉は、図1において紙面上方にある脚部5を、不図示のクランプ機構によって把持することにより、吊り下げ支持される。
【0014】
続いて上記構成を有する一対の枝肉1について切断位置を特定するための切断位置特定システム10について説明する。切断位置特定システム10は、一対の枝肉1について前躯2を切り分けるための切断位置Lを特定するためのシステムである。切断位置Lは、後述するように、切断位置特定システム10が備える撮像装置12によって撮像された画像を用いた画像解析により特定される。以下の説明では、画像解析によって、枝肉1のうち背側において特定の椎骨及び肋骨の接続部(図1では下方から3番目と4番目の接続部の間)に対応する第1特徴点P1と、枝肉1のうち胸側において特定の肋骨(図1では下方から3番目と4番目の肋骨の間)に対応する第2特徴点P2とを結ぶ直線として切断位置Lが特定される場合を例示する。但し、切断位置Lの特定手法は画像解析によって抽出される他の特徴点に基づいて特定されてもよい。
【0015】
続いて上述の切断位置Lを特定するための切断位置特定システム10について説明する。図2は一実施形態に係る切断位置特定システム10の構成図であり、図3図2の切断位置特定システム10によって実施される切断位置特定方法を示すフローチャートである。
【0016】
切断位置特定システム10は、一対の枝肉1の切断位置Lを特定するためのシステムであり、少なくとも1つの撮像装置12と、切断位置特定装置14とを備える。
【0017】
撮像装置12は、一対の枝肉1の切断面4に対向するように配置されることで、一対の枝肉1を撮像可能なカメラ等の装置である。撮像装置12によって取得される画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。また撮像装置12の数は、単体でもよいし、複数でもよい(撮像装置12の具体的な配置レイアウトについては後述する)。
【0018】
切断位置特定装置14は、撮像装置12で撮像された画像を用いて、一対の枝肉1の切断位置Lを特定するための装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0019】
図2では切断位置特定システム10が備える切断位置特定装置14の機能的構成として、画像取得部18と、記憶部20と、切断位置予測部22とを備える。
【0020】
画像取得部18は、撮像装置12で撮像された画像を取得するための構成である。
【0021】
記憶部20は、切断位置特定装置14の演算処理に必要な各種データを記憶するための構成であり、切断位置Lの予測に用いられる学習モデル24を記憶する。学習モデル24は、画像取得部18で取得された画像を入力として、当該画像に基づいて切断位置Lを予測するための予測モデルであり、予め教師データを用いて学習される。学習モデル24の学習は、教師データとして用意された十分なサンプル画像の各々において切断位置Lを特定するための第1特徴点P1及び第2特徴点P2を指定することにより行われる。
【0022】
切断位置予測部22は、画像取得部18で取得された画像における切断位置Lを予測するための構成である。具体的には、切断位置予測部22は、記憶部20に記憶された学習モデル24に対して、画像取得部18で取得された画像を入力することにより、切断位置Lの予測結果を求める。切断位置予測部22で予測された切断位置Lは、切断位置特定装置14の特定結果として出力される。
【0023】
切断位置特定方法では、まず撮像装置12によって一対の枝肉1の撮像が行われ(ステップS1)。画像取得部18によって撮像装置12で撮像された画像が取得される(ステップS2)。
【0024】
続いて切断位置予測部22は、記憶部20にアクセスすることにより、予め教師データを用いて学習された学習モデル24を取得し(ステップS3)、当該学習モデル24に対して、ステップS2で取得した画像を入力することにより、切断位置Lを予測する(ステップS4)。
【0025】
ステップS4で予測された切断位置Lは、正常範囲内であるか否かが判定される(ステップS5)。ステップS5では、例えば、ステップS4で予測された切断位置Lを、ステップS2で取得された画像に重ねて表示することにより、オペレータが確認することで行われる。切断位置Lが正常範囲から外れている場合には(ステップS5:NO)、オペレータの操作によって切断位置Lが補正され(ステップS6)、補正後の切断位置Lが特定結果として出力される(ステップS7)。
尚、切断位置Lが正常範囲内である場合には(ステップS5:YES)、切断位置予測部22による予測結果がそのまま出力される(ステップS7)。
【0026】
続いて切断位置特定システム10における撮像装置12の具体的な配置レイアウトについて説明する。まず本開示の幾つかの実施形態に係る撮像装置12の配置レイアウトについて述べる前に、参考技術に係る撮像装置12の配置レイアウトについて説明する。図4は参考技術に係る撮像装置12の配置レイアウトを一対の枝肉1の上方から示す模式図であり、図5図4の撮像装置12によって撮像された画像の一例である。
【0027】
図4に示すように、参考技術では、撮像装置は、一対の枝肉1に対して正面(後述の基準線Lrefより背側)に配置される。枝肉1において肋骨8は脊椎7に対して、図5において紙面裏側において湾曲して接続される。そのため、参考技術の配置レイアウトがなされた撮像装置12で撮像された画像では、図5に示すように、湾曲する肋骨8と脊椎7との接続部9が、撮像装置12の死角又は影となって認識が困難である。そのため図4に示す配置レイアウトがなされた撮像装置12によって取得された画像を教師データとする学習モデル24を用いると、切断位置Lの予測精度が低下してしまう。本願発明者の検証によれば、その予測精度は60~85%程度しか得られなかった。このような課題は、以下に説明する撮像装置12の配置レイアウトによって好適に解決可能である。
【0028】
次に図6は一実施形態に係る撮像装置12の配置レイアウトを一対の枝肉1の上方から示す模式図であり、図7図6の撮像装置12によって撮像された画像の一例である。尚、図6及び図7では、一対の枝肉1のうち右枝肉1Bに着目して示しているが、特段の記載がない限りにおいて、左枝肉1Aについても同様である。
【0029】
図6に示すように、撮像装置12は、脊椎7から枝肉1の切断面4の直交方向に延ばした基準線Lrefよりも枝肉1の胸側に配置される。これにより、図4のように基準線Lrefより背側に撮像装置12が配置された場合に比べて、接続部9が死角や影になりにくい画像の撮像が可能となる。言い換えると本実施形態では、撮像装置12は、脊椎7及び肋骨8の接続部9の少なくとも一部が映り込むように配置される。
【0030】
より好ましくは、撮像装置12の配置は、基準線Lrefに対して、脊椎7及び撮像装置12を通る線分がなす角度をθと定義すると、角度θは0~80度の範囲になるように設定されるとよい。これにより、接続部9の少なくとも一部が映り込む画像を好適に撮像できる。
【0031】
切断位置特定システム10では、このように配置された撮像装置12で取得された画像を教師データとして用いた学習モデル24を用いることで、枝肉1の切断位置Lを精度よく特定できる。本願発明者の検証によれば、その予測精度は95%以上を達成でき、前述の参考技術と比較して、著しい精度向上が確認された。
【0032】
図8は他の実施形態に係る撮像装置12の配置レイアウトを一対の枝肉1の上方から示す模式図である。この実施形態では、切断位置特定システム10は複数の撮像装置12を備える。複数の撮像装置12は、一対の枝肉1の一方(左枝肉1A)に対応する位置に配置された第1撮像装置12Aと、他方(右枝肉1B)に対応する位置に配置された第2撮像装置12Bとを含む。第1撮像装置12Aは、左枝肉1Aに対応する基準線Lrefよりも左枝肉1Aの胸側に配置される。第2撮像装置12Bは、右枝肉1Bに対応する基準線Lrefよりも右枝肉1Bの胸側に配置される。これにより、2つの撮像装置12では、前述のように、各枝肉1の接続部9が移りやすい画像がそれぞれ撮像可能となる。
【0033】
尚、図8に示す上記実施形態では、複数の撮像装置12の各々は、それぞれ対応する枝肉1を撮像範囲に含むように配置される。すなわち、第1撮像装置12Aは、その撮像範囲に左枝肉1Aのみが含まれるように配置されるとともに、第2撮像装置12Bは、その撮像範囲に右枝肉1Bのみが含まれるように配置される。
【0034】
図9図8の変形例である。この変形例では、図8に示す実施形態と同様に2つの撮像装置12(第1撮像装置12A及び第2撮像装置12B)が用いられるが、第1撮像装置12A及び第2撮像装置12Bは、それぞれ一対の枝肉1を撮像範囲に含むように配置される。つまり、各撮像装置の撮像範囲に両方の枝肉(左枝肉1A及び右枝肉1B)が含まれるように、第1撮像装置12A及び第2撮像装置12Bが配置される。
【0035】
図10は他の実施形態に係る撮像装置12の配置レイアウトを一対の枝肉1の上方から示す模式図である。この実施形態では、撮像装置12の位置は前述の参考技術(図4を参照)と同様であるが、撮像対象となる一対の枝肉1の把持角度が可変であることにより、撮像装置12が基準線Lrefよりも各枝肉1の胸側に配置される。つまり、前述の各実施形態では、撮像装置12の配置を参考技術から変更することで撮像装置12が基準線Lrefよりも各枝肉1の胸側になるようにしたが、このように撮像対象である枝肉1の位置又は角度を参考技術から変更することで撮像装置12が基準線Lrefよりも各枝肉1の胸側になるようにしてもよい。
尚、枝肉1の位置又は角度の変更は、枝肉1を把持する不図示のクランプ機構を制御することにより実現可能である。
【0036】
図11は他の実施形態に係る撮像装置の配置レイアウトを一対の枝肉1の上方から示す模式図である。この実施形態では、撮像装置12が単体であり、且つ、撮像対象である一対の枝肉1に対して移動可能である。具体的には、左枝肉1Aを撮像対象とする場合には、図11において左側の位置になるように撮像装置12を移動することで、撮像装置12が基準線Lrefよりも枝肉1Aの胸側になるように配置される。一方、右枝肉1Bを撮像対象とする場合には、図11において右側の位置になるように撮像装置12を移動することで、撮像装置12が基準線Lrefよりも枝肉1Bの胸側になるように配置される。このように単体の撮像装置12を移動することにより、その位置又は角度の少なくとも一方を変更することで、撮像装置12が基準線Lrefよりも各枝肉1の胸側になるように配置してもよい。
【0037】
以上説明したように上記各実施形態によれば、脊椎7から枝肉1の切断面4の直交方向に延ばした基準線Lrefよりも枝肉1の胸側に配置された撮像装置12によって撮像された画像を用いて、切断位置Lを精度よく特定可能な切断位置特定システム10及び、切断位置特定方法を実現できる。
【0038】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0039】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)一態様に係る切断位置特定システムは、
脊椎の位置で左右に半割りされた一対の枝肉の切断位置を特定するための切断位置特定システムであって、
前記一対の枝肉の少なくとも一方について、前記脊椎から前記枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも前記枝肉の胸側に配置された少なくとも1つの撮像装置と、
前記少なくとも1つの撮像装置で撮像された画像を用いて、前記肋骨間を通る前記切断位置を特定するための特定装置と、
を備える。
【0041】
上記(1)の態様によれば、枝肉の切断面における切断位置が、撮像装置によって撮像された画像を用いて特定される。撮像装置は、脊椎から枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも枝肉の胸側に配置される。これにより、枝肉のうち正面からでは死角や影になりやすい脊椎と肋骨との接続部の少なくとも一部、又は、その近傍を画像として撮像することができる。このように撮像された画像を用いることで、脊椎と肋骨との位置関係に基づいて、切断位置を精度よく特定することができる。
【0042】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記少なくとも1つの撮像装置は、前記脊椎及び前記肋骨の接続部の少なくとも一部が映り込むように配置される。
【0043】
上記(2)の態様によれば、撮像装置によって撮像された画像には、脊椎及び肋骨の接続部の少なくとも一部が映り込む。このような画像を用いて、脊椎を構成する各椎骨と肋骨との位置関係を良好に認識することができるため、枝肉の切断位置を精度よく特定できる。
【0044】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記基準線に対して、前記脊椎及び前記撮像装置を通る線分がなす角度は、0~80度の範囲である。
【0045】
上記(3)の態様によれば、当該角度が0~80度の範囲になる位置に撮像装置を配置することにより、脊椎及び肋骨の接続部の少なくとも一部が映り込む画像を好適に撮像できる。
【0046】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記少なくとも1つの撮像装置は、
前記一対の枝肉の一方に対応する位置に配置された第1撮像装置と、
前記一対の枝肉の他方に対応する位置に配置された第2撮像装置と、
を含む。
【0047】
上記(4)の態様によれば、一対の枝肉にそれぞれ対応する2台の撮像装置を用いることで、各枝肉における切断位置を好適に特定できる。
【0048】
(5)他の態様では、上記(4)の態様において、
前記第1撮像装置及び前記第2撮像装置は、それぞれ前記一対の枝肉を撮像範囲に含むように配置される。
【0049】
上記(5)の態様によれば、2台の撮像装置を用いる場合には、各撮像装置の撮像範囲に一対の枝肉の両方を含まれるように撮像装置の位置を設定してもよい。
【0050】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記一対の枝肉の把持角度が可変である。
【0051】
上記(6)の態様によれば、撮像対象である枝肉の把持角度を可変とすることで、撮像装置の位置が、脊椎から枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも枝肉の胸側になるように配置できる。
【0052】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記少なくとも1つの撮像装置は、前記枝肉に対して相対的に位置又は角度を可変である。
【0053】
上記(7)の態様によれば、撮像装置の枝肉に対する相対的な位置又は角度を可変とすることで、撮像装置の位置が、脊椎から枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも枝肉の胸側になるように配置できる。
【0054】
(8)他の態様では、上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記特定装置は、過去に取得した前記画像を教師データとして学習した学習モデルを用いて、前記画像に基づいて前記切断位置を特定する。
【0055】
上記(8)の態様によれば、上記のように画像を用いて切断位置を特定した結果を教師データとして、画像から切断位置を予測するための学習モデルを構築できる。このように構築された学習モデルを用いることで、画像に基づいて枝肉の切断位置を精度よく特定することができる。
【0056】
(9)一態様に係る切断位置特定方法は、
脊椎の位置で左右に半割りされた一対の枝肉の切断位置を特定するための切断位置特定方法であって、
前記一対の枝肉の少なくとも一方について、前記脊椎から前記枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも前記枝肉の胸側に配置された少なくとも1つの撮像装置を用いて撮像する工程と、
前記画像を用いて、前記肋骨間を通る前記切断位置を特定する工程と、
を備える。
【0057】
上記(9)の態様によれば、枝肉の切断面における切断位置が、撮像装置によって撮像された画像を用いて特定される。撮像装置は、脊椎から枝肉の切断面の直交方向に延ばした基準線よりも枝肉の胸側に配置される。これにより、枝肉のうち正面からでは死角や影になりやすい脊椎と肋骨との接続部の少なくとも一部、又は、その近傍を画像として撮像することができる。このように撮像された画像を用いることで、脊椎と肋骨との位置関係に基づいて、切断位置を精度よく特定することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 枝肉
1A 左枝肉
1B 右枝肉
2 前躯
3 後躯
4 切断面
5 脚部
7 脊椎
8 肋骨
9 接続部
10 切断位置特定システム
12 撮像装置
12A 第1撮像装置
12B 第2撮像装置
14 切断位置特定装置
18 画像取得部
20 記憶部
22 切断位置予測部
24 学習モデル
L 切断位置
Lref 基準線
図1
図2
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図11