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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068398
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】乳房塗布用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20240513BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240513BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240513BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20240513BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P31/04 171
A61P43/00 105
A61K31/353
C12N5/071
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178821
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】津上 優作
(72)【発明者】
【氏名】磯部 直樹
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BB06
4B065CA44
4B065CA50
4B065CA60
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
4C086ZC41
4C086ZC61
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206CA20
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB35
4C206ZC41
4C206ZC61
(57)【要約】
【課題】ポリフェノールを経皮吸収し、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制する作用を得るための乳房塗布用組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る乳房塗布用組成物は、分子量500Da以下のポリフェノールを有効成分として含み、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制するための乳房塗布用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量500Da以下のポリフェノールを有効成分として含む、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制するための乳房塗布用組成物。
【請求項2】
乳腺上皮細胞におけるタイトジャンクションの機能を増強又は抑制するための、請求項1に記載の乳房塗布用組成物。
【請求項3】
前記分子量500Da以下のポリフェノールは、レスベラトロール、エクオール及びジンゲロールからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の乳房塗布用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房塗布用組成物に関し、特にタイトジャンクションの機能を増強又は抑制するための乳房塗布用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノールは、様々な細胞において抗酸化作用や抗炎症性作用を示すことが一般に知られている。このため、ポリフェノールは健康食品などに広く利用されており、生活習慣病の予防などに役立っている。
【0003】
さらに近年の研究により、例えば非特許文献1において、乳腺上皮細胞にポリフェノールを添加する実験(in vitro)において、ポリフェノールが細胞間隙に形成されるタイトジャンクションの機能を増強又は抑制したことが報告されている。詳細は後述するが、タイトジャンクションとは隣り合う細胞同士を密着させる接着構造を指す。このタイトジャンクションの機能を増強又は抑制することによって細胞間の間隙を狭める又は広げることができ、細胞内外における物質及び体細胞の自由な通過を促進又は抑制できることが知られている。
【0004】
一方、非特許文献2において、ポリフェノールを経口摂取すると、肝臓や腸管などで代謝されるか又はグルクロン酸や硫酸との抱合体が形成され、標的器官においてポリフェノールの生理活性が低減することが報告されている。また非特許文献3では、経皮吸収する成分の分子量限界は500ダルトン(Da)であることが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y. Tsugami, H. Wakasa, M. Kawahara, T. Nishimura, K. Kobayashi (2022). Isoflavones and their metabolites influence the milk production ability of bovine mammary epithelial cells in a type-specific manner. Anim Sci J. 93, e13720.
【非特許文献2】T. Walle, F. Hsieh, M. H. DeLegge, J. E. Oatis, Jr., and U. K. Walle (2004). High absorption but very low bioavailability of oral resveratrol in humans, Drug Metab Dspos 32, 1377-1382.
【非特許文献3】J. D. Bos and M. M. H. M. Meinardi (2000). The 500 Dalton rule for the skin penetration of chemical compounds and drugs, Exp Dermatol, 9, 165-169.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、非特許文献1では、ポリフェノールがin vitroにおいてタイトジャンクションの機能を増強又は抑制する作用を有することが知られている。しかし、in vivoでは、非特許文献2に記載の通り、例えばポリフェノールを経口摂取したとすると、生体内において代謝されるか又は抱合体が形成されることにより、ポリフェノールの生理活性が低減してしまうことから、乳腺においてタイトジャンクションの機能を増強又は抑制する作用は期待できない。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乳腺においてポリフェノールの作用を失うことなく、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制する作用を得るための乳房塗布用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、分子量500Da以下のポリフェノールを有効成分とし、乳房塗布用組成物とすることで、乳腺に対する該ポリフェノールの作用を失うことなく、乳腺上皮細胞においてタイトジャンクションの機能を増強又は抑制できることを見出して本発明を完成した。
【0009】
具体的に、本発明に係る乳房塗布用組成物は、分子量500Da以下のポリフェノールを有効成分として含み、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制するための組成物であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る乳房塗布用組成物によると、乳房に塗布することで分子量500Da以下のポリフェノールを経皮吸収することができ、経口投与の場合のような代謝等がなされることなく、乳腺上皮細胞におけるタイトジャンクションの機能を増強又は抑制することができる。このタイトジャンクションの機能の増強又は抑制は、細胞内外における物質及び体細胞の自由な通過を促進又は抑制できる。具体的には、タイトジャンクションの機能を増強すると、細胞間の間隙を狭めて物質及び体細胞の自由な通過を抑制し、一方で、タイトジャンクションの機能を抑制すると、細胞間の間隙を広げて物質及び体細胞の自由な通過を促進する。本発明に係る乳房塗布用組成物では、乳腺上皮細胞におけるタイトジャンクションの機能を所望の方向に増強又は抑制することができる。従って、本発明に係る乳房塗布用組成物は、タイトジャンクションの機能を所望の方向に増強又は抑制をすることを通して、細胞間の間隙を任意に調節することができる。
【0011】
本発明に係る乳房塗布用組成物において、乳腺上皮細胞におけるタイトジャンクションの機能を増強又は抑制することができる。
【0012】
本発明に係る乳房塗布用組成物において、前記分子量500Da以下のポリフェノールは、レスベラトロール、エクオール及びジンゲロールからなる群から選択することができる。
【0013】
本発明に係る乳房塗布用組成物によると、レスベラトロール及びエクオールは、タイトジャンクションの機能を増強し、一方で、ジンゲロールは、タイトジャンクションの機能を抑制することができる。このように、所望の方向にタイトジャンクションの機能を増強又は抑制することができるため、細胞間の間隙を任意に調節することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る乳房塗布用組成物によると、乳房に塗布することで分子量500Da以下のポリフェノールを経皮吸収することができ、経口投与の場合のような代謝等がなされることなく、乳腺上皮細胞におけるタイトジャンクションの機能を増強又は抑制することができる。このタイトジャンクションの機能の増強又は抑制は、細胞内外における物質及び体細胞の自由な通過を促進又は抑制できる。具体的には、タイトジャンクションの機能を増強すると、細胞間の間隙を狭めて物質及び体細胞の自由な通過を抑制し、一方で、タイトジャンクションの機能を抑制すると、細胞間の間隙を広げて物質及び体細胞の自由な通過を促進する。本発明に係る乳房塗布用組成物では、乳腺上皮細胞におけるタイトジャンクションの機能を所望の方向に増強又は抑制することができる。従って、本発明に係る乳房塗布用組成物は、タイトジャンクションの機能を所望の方向に増強又は抑制をすることを通して、細胞間の間隙を任意に調節することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
≪タイトジャンクションの機能を増強又は抑制するための乳房塗布用組成物≫
本発明の一実施形態は、分子量500Da以下のポリフェノールを有効成分として含み、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制するための乳房塗布用組成物である。
【0017】
本明細書においてポリフェノールとは、同一分子内に2個以上のフェノール性水酸基をもつ化合物の総称を意味する。本実施形態において、乳房塗布用組成物の有効成分として含まれるポリフェノールは、分子量500Da以下のポリフェノールであれば特に制限されず、その種類は任意である。例えば、分子量500Da以下のポリフェノールとして、レスベラトロール(分子量228Da)、エクオール(分子量242Da)及びジンゲロール(分子量294Da)などが挙げられる。ポリフェノールの分子量が500Daを超過すると、分子のサイズが大きくて経皮吸収されず、タイトジャンクションの機能の増強又は抑制を行うことが難しい。また、乳房塗布用組成物の有効成分として含まれるポリフェノールは、上述したような分子量500Da以下のポリフェノールを組み合わせたものでもよい。
【0018】
本明細書において「タイトジャンクションの機能を増強する」とは、細胞の頂端部における細胞間結合を強くし、細胞間の間隙を狭めることを意味する。また、「タイトジャンクションの機能を抑制する」とは、細胞の頂端部における細胞間結合を弱くし、細胞間の間隙を広げることを意味する。
【0019】
本実施形態において、乳房塗布用組成物中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度は、特に制限されず、任意である。例えば、乳房塗布用組成物中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度は、0.5μM以上、好ましくは100μM以上、さらに好ましくは200μM以上とすることができる。ポリフェノールの濃度が0.5μM未満であると、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制することが難しい。
【0020】
本実施形態において、乳房塗布用組成物は、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制できる限りにおいて、添加物を含みうる。添加物の種類及び含有量は特に制限されず、例えば賦形剤、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、pH安定剤、ビヒクル及び防腐剤などが挙げられ、任意の量で含むことができる。
【0021】
本実施形態において、乳房塗布用組成物は、溶媒を含むものであってよい。溶媒は、例えば水、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを用いることができ、特に制限されない。
【0022】
本実施形態に係る乳房塗布用組成物によると、乳房に塗布することで分子量500Da以下のポリフェノールを経皮吸収することができ、クローディンの量を増加又は低減することにより、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制することができる。具体的には、クローディンの量を増加してタイトジャンクションの機能を増強すると、細胞の頂端部における細胞間の間隙を狭めて物質及び体細胞の自由な通過を抑制し、一方で、クローディンの量を低減してタイトジャンクションの機能を抑制すると、細胞の頂端部における細胞間の間隙を広げて物質及び体細胞の自由な通過を促進する。このため、乳房塗布用組成物は、タイトジャンクションの機能を増強することによって、乳腺中への菌やウイルスの侵入を防ぐことができ、一方で、タイトジャンクションの機能を抑制することによって、乳腺中に他の薬剤を浸透させるなどして利用することができる。なお、クローディンは、クローディンファミリーであれば特に制限されず、例えばクローディン-3及びクローディン-4などが挙げられる。
【0023】
本実施形態において、乳房塗布用組成物は、公知の方法により種々の形態に製剤化されうる。例えば、乳房塗布用組成物は、好適な剤形とすることができ、剤形の種類は特に制限されず、任意である。例えば、軟膏、クリーム剤、外用液剤又は貼付剤とすることができる。また、これらの剤形にするために用いる添加物は、公知のものを使用することができ、特に制限されない。
【0024】
本実施形態において、乳房塗布用組成物の1日当たりの塗布量及び1日当たりの塗布回数は特に制限されず、任意である。また、乳房塗布用組成物全体中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度に応じて、対象の一乳房への1日当たりの塗布量及び1日当たりの塗布回数を適宜変更することができる。例えば、対象の一乳房に対して、乳房塗布用組成物中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度が100μM以上である乳房塗布用組成物を、1回/日で0.1~10mL、好ましくは0.5~10mL、さらに好ましくは1~10mL塗布するものであってよく、乳房塗布用組成物中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度が200μM以上である乳房塗布用組成物を、1回/日で0.1~10mL、好ましくは0.5~10mL、さらに好ましくは1~10mL塗布するものであってもよい。1日当たりの塗布量は0.1~10mLに限定されず、適宜変更することができる。また、1日当たりの塗布回数は、1回/日に限定されず、例えば2回/日、3回/日、4回/日、5回/日、6回/日、7回/日、8回/日、9回/日、10回/日などとすることができる。
【0025】
本実施形態において、乳房塗布用組成物は、数日から数週間にわたって継続的に塗布することが好ましい。例えば、対象の一乳房に対して、1日当たり0.1~10mL、好ましくは0.5~10mL、さらに好ましくは1~10mLを2日間、好ましくは3日間、より好ましくは5日間、さらに好ましくは7日間にわたって、継続的に塗布することができる。
【0026】
本実施形態において、乳房塗布用組成物は、他の乳房用薬剤と組み合わせて用いるものであってもよい。乳房塗布用組成物によってタイトジャンクションの機能を抑制することにより、細胞間の間隙を広げて物質の自由な通過を促進し、乳腺中に他の乳房用薬剤を浸透させることができるため、好適である。この場合、乳房塗布用組成物の有効成分である500Da以下のポリフェノールは、ジンゲロールを使用することが好ましい。
【0027】
本実施形態において、乳房塗布用組成物が適用される対象は、乳房を有する対象であれば特に制限されず、任意である。例えば、対象は哺乳類動物などである。哺乳類動物も特に制限されないが、例えばヒト、ウシ及びヤギなどである。
【0028】
本実施形態に係る乳房塗布用組成物の製造方法は、特に制限されず、任意である。例えば、本実施形態に係る乳房塗布用組成物の有効成分である、市販されている分子量500Da以下のポリフェノールを購入し、適宜精製を行ったうえで添加物と混合させて製造することができる。なお添加物は必須ではないため、分子量500Da以下のポリフェノールのみを用いて製造するものであってもよい。また、市販されている分子量500Da以下のポリフェノールのかわりに、化学合成した分子量500Da以下のポリフェノールを用いるものであってもよい。分子量500Da以下のポリフェノールの化学合成方法は特に制限されず、当業者において既知の合成方法であれば適宜使用することができる。
【0029】
≪抗菌因子を増加させるための乳房塗布用組成物≫
本発明の一実施形態は、分子量500Da以下のポリフェノールを有効成分として含み、対象の乳房中の抗菌因子を増加させるための乳房塗布用組成物である。
【0030】
乳汁中には、様々な抗菌因子が含まれていることが知られている。例えば牛乳の場合、抗菌因子としてリゾチームやラクトフェリンなどが含まれている。このような抗菌因子は、乳房内に侵入してきた病原菌に対して攻撃するとともに、病原菌に応じて乳房中の抗菌因子の濃度が適宜増加し、病原菌を完全に死滅させるように作用する。このように、乳房中の抗菌因子は、乳房炎などの感染症から予防する役割を果たしている。このため、乳房中の抗菌因子を増加させることにより、乳房炎などの感染症を予防する効果が期待される。
【0031】
しかし、このような乳房中の抗菌因子を増加させる物質は、これまでのところ発見されておらず、乳房中の抗菌因子を増加させることは難しいという問題があった。このような問題に鑑み、本発明の一実施形態では、対象の乳房中の抗菌因子を増加させるための乳房塗布用組成物を提供するものである。
【0032】
本実施形態において、ポリフェノールの種類は、上述した実施形態と同様であり、分子量500Da以下のポリフェノールであれば特に制限されない。例えば、分子量500Da以下のポリフェノールとして、レスベラトロール(分子量228Da)、エクオール(分子量242Da)及びジンゲロール(分子量294Da)などが挙げられる。ポリフェノールの分子量が500Daを超過すると、分子のサイズが大きくて経皮吸収されず、乳房中の抗菌因子を増加させることが難しい。また、乳房塗布用組成物の有効成分として含まれるポリフェノールは、上述したような分子量500Da以下のポリフェノールを組み合わせたものでもよい。
【0033】
本実施形態において、乳房塗布用組成物中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度は、特に制限されず、任意である。例えば、乳房塗布用組成物中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度は、0.5μM以上、好ましくは100μM以上、さらに好ましくは200μM以上とすることができる。ポリフェノールの濃度が0.5μM未満であると、対象の乳房中の抗菌因子を増加させることが難しい。
【0034】
本実施形態において、乳房塗布用組成物は、乳房中の抗菌因子を増加できる限りにおいて、添加物を含みうる。添加物の種類及び含有量は特に制限されず、例えば賦形剤、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、pH安定剤、ビヒクル及び防腐剤などが挙げられ、任意の量で含むことができる。
【0035】
本実施形態において、乳房塗布用組成物は、溶媒を含むものであってよい。溶媒は、例えば水、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを用いることができ、特に制限されない。
【0036】
本実施形態に係る乳房塗布用組成物によると、乳房に塗布することで分子量500Da以下のポリフェノールを経皮吸収することができ、乳房中の抗菌因子を増加させることができる。これにより、乳房内の病原菌に対する抗菌力を向上させ、乳房炎などの感染症を予防することができる。なお抗菌因子は特に制限されず、任意である。例えば、抗菌因子はβ-ディフェンシン-1又はS100A7などである。また、抗菌因子は少なくともβ-ディフェンシン-1及びS100A7を含むことが好ましい。また、乳房の感染症は乳房炎に限定されず、乳房の感染症として知られているものは全て含む。
【0037】
本実施形態において、乳房塗布用組成物は、公知の方法により種々の形態に製剤化されうる。例えば、乳房塗布用組成物は、好適な剤形とすることができ、剤形の種類は特に制限されず、任意である。例えば、軟膏、クリーム剤、外用液剤又は貼付剤とすることができる。また、これらの剤形にするために用いる添加物は、公知のものを使用することができ、特に制限されない。
【0038】
本実施形態において、乳房塗布用組成物の1日当たりの塗布量及び1日当たりの塗布回数は特に制限されず、任意である。また、乳房塗布用組成物全体中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度に応じて、対象の一乳房への1日当たりの塗布量及び1日当たりの塗布回数を適宜変更することができる。例えば、対象の一乳房に対して、乳房塗布用組成物中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度が100μM以上である乳房塗布用組成物を、1回/日で0.1~10mL、好ましくは0.5~10mL、さらに好ましくは1~10mL塗布するものであってよく、乳房塗布用組成物中の分子量500Da以下のポリフェノールの濃度が200μM以上である乳房塗布用組成物を、1回/日で0.1~10mL、好ましくは0.5~10mL、さらに好ましくは1~10mL塗布するものであってもよい。1日当たりの塗布量は0.1~10mLに限定されず、適宜変更することができる。また、1日当たりの塗布回数は、1回/日に限定されず、例えば2回/日、3回/日、4回/日、5回/日、6回/日、7回/日、8回/日、9回/日、10回/日などとすることができる。
【0039】
本実施形態において、乳房塗布用組成物は、数日から数週間にわたって継続的に塗布することが好ましい。例えば、対象の一乳房に対して、1日当たり0.1~10mL、好ましくは0.5~10mL、さらに好ましくは1~10mLを2日間、好ましくは3日間、より好ましくは5日間、さらに好ましくは7日間にわたって、継続的に塗布することができる。
【0040】
本実施形態において、乳房塗布用組成物が適用される対象は、乳房を有する対象であれば特に制限されず、任意である。例えば、対象は哺乳類動物などである。哺乳類動物も特に制限されないが、例えばヒト、ウシ及びヤギなどである。
【0041】
本実施形態に係る乳房塗布用組成物の製造方法は、特に制限されず、任意である。例えば、本実施形態に係る乳房塗布用組成物の有効成分である、市販されている分子量500Da以下のポリフェノールを購入し、適宜精製を行ったうえで添加物と混合させて製造することができる。なお添加物は必須ではないため、分子量500Da以下のポリフェノールのみを用いて製造するものであってもよい。また、市販されている分子量500Da以下のポリフェノールのかわりに、化学合成した分子量500Da以下のポリフェノールを用いるものであってもよい。分子量500Da以下のポリフェノールの化学合成方法は特に制限されず、当業者において既知の合成方法であれば適宜使用することができる。
【実施例0042】
以下に、本発明に係る乳房塗布用組成物について詳細に説明するための実施例を示す。
【0043】
実施例1
レスベラトロール(東京化成工業)を購入し、乳房塗布用組成物として用いた。
【0044】
実施例2
エクオール(Toronto Research Chemicals)を購入し、乳房塗布用組成物として用いた。
【0045】
実施例3
ジンゲロール(東京化成工業)を購入し、乳房塗布用組成物として用いた。
【0046】
実施例4
レスベラトロール(東京化成工業)から、乳房塗布用組成物中の濃度が100μMとなるように、70%エタノール(Sigma-Aldrich)と0.2%ジメチルスルホキシド(ナカライテスク)からなる溶媒(エタノール70mL、脱イオン水29.8mL、ジメチルスルホキシド0.2mL)に加えて、十分に溶解させ、乳房塗布用組成物を作製した。
【0047】
実施例5
エクオール(Toronto Research Chemicals)を用いて、乳房塗布用組成物中の濃度を200μMとしたこと以外は、実施例4と同様の方法により、乳房塗布用組成物を作製した。
【0048】
実施例6
ジンゲロール(東京化成工業)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法により、乳房塗布用組成物を作製した。
【0049】
比較例1
0.1%ジメチルスルホキシド(ナカライテスク)を乳房塗布用組成物のコントロールとして用いた。
【0050】
比較例2
イカリイン(東京化成工業)を購入し、乳房塗布用組成物として用いた。
【0051】
比較例3
オレウロペイン(東京化成工業)を購入し、乳房塗布用組成物として用いた。
【0052】
比較例4
イカリイン(東京化成工業)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法により、乳房塗布用組成物を作製した。
【0053】
比較例5
オレウロペイン(東京化成工業)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法により、乳房塗布用組成物を作製した。
【0054】
[タイトジャンクションの機能及び抗菌因子への影響を確認するin vitro試験]
上記実施例1~3及び比較例1~3の乳房塗布用組成物を用いて、in vitroにおいて、タイトジャンクションの機能への影響に対する確認試験を行った。また、抗菌因子に対する影響についても検討した。
【0055】
(ヤギ乳腺上皮細胞の培養)
乳房塗布用組成物による乳腺上皮細胞への影響を確認するために、乳房塗布用組成物を含む又は含まない培地上でヤギ乳腺上皮細胞の培養を以下のように行った。まず、泌乳期トカラヤギから乳腺を採材し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄後、メスを用いて細切した。続いて、1mg/mLコラゲナーゼを含むDMEM/F12培地(Sigma-Aldrich)中で3時間振盪した。その後、トリプシン処理と密度勾配遠心を2回行い、ヤギ乳腺上皮細胞塊を単離して使用時まで凍結保存した。使用時において、ヤギ乳腺上皮細胞塊を解凍後、24ウェルプレート上に播種し、増殖培地(5%ウシ胎児血清、5μg/mL ITS-X、10ng/mL上皮成長因子、5mM 酢酸ナトリウムを含むDMEM/F12)でコンフルエントになるまで培養した。続いて、分化培地(1%ウシ胎児血清、5μg/mL ITS-X、1ng/mL上皮成長因子、5mM 酢酸ナトリウム、1μg/mLプロラクチン、1μMデキサメタゾンを含むDMEM/F12)に変更し、2日間培養した。その後、培地中の各ポリフェノール濃度が0.5、1、5、10、50μMとなるように、各実施例1~3の乳房塗布用組成物を分化培地に溶解して得られた溶液をウェルプレート上に添加し、3日間培養した。一方、コントロールとして比較例1の0.1%DMSOをウェルプレート上に添加し、また、培地中の各ポリフェノール濃度が10、100μMとなるように、比較例2、3の乳房塗布用組成物を分化培地に溶解して得られた溶液をウェルプレート上に添加し、それぞれ3日間培養した。
【0056】
(培養細胞におけるクローディン量の測定)
培養したヤギ乳腺上皮細胞中のクローディン-3とクローディン-4の量を測定するためにウェスタンブロッティングを以下のように行った。まず、培養が終了した各乳腺上皮細胞層を回収し、タンパク質抽出用バッファーに溶解して得られた細胞溶解液に対してSDS-PAGEを行い、その後に、SDS-PAGEにより分離されたタンパク質をPVDF膜に転写した。ブロッキング溶液として4%スキムミルク/PBS-T溶液を使用した。一次抗体には、抗クローディン-3抗体(Thermo Fisher Scientific)、抗クローディン-4抗体(Thermo Fisher Scientific)および抗α-tubulin抗体(GeneTex)を使用した。二次抗体は、Bio-Radから購入したHorseradish peroxidase標識した抗ウサギあるいは抗マウスIgG抗体(×2500-5000)を使用した。バンドの検出には、発光基質溶液であるImmobilon Forte Western HRP Substrate(Millipore)とEz-Capture II(ATTO)を用いた。最後に、内部標準であるα-tubulinにより規格化したクローディン-3とクローディン-4の量を、比較例1のクローディン-3とクローディン-4の量で除することにより相対強度比を算出した。結果は後述する表1に示す。
【0057】
(培養細胞における抗菌因子濃度の測定)
培養したヤギ乳腺上皮細胞中の抗菌因子であるβ-ディフェンシン-1とS100A7の量を測定するために、上記細胞溶解液を用いて競合ELISAを以下のように行った。まず、抗β-ディフェンシン-1抗体と抗S100A7抗体は、合成ペプチドをウサギへ免疫して作製した。ペプチドへのHorseradish peroxidase標識は、Peroxidase Labeling Kit-NH2もしくはKit-SH(Dojindo Laboratories)を用い、発色にはTMBを用いて行った。測定したβ-ディフェンシン-1とS100A7の量を、比較例1のβ-ディフェンシン-1とS100A7の量で除することにより相対強度比を算出した。結果は後述する表1に示す。
【0058】
[タイトジャンクションの機能及び抗菌因子への影響を確認するin vivo試験]
上記実施例4~6及び比較例4、5の乳房塗布用組成物を用いて、in vivoにおいて、タイトジャンクションの機能への影響に対する確認試験を行った。また、抗菌因子に対する影響についても検討した。
【0059】
(乳房への塗布と乳汁の採取)
ヤギ乳腺におけるタイトジャンクションの機能への影響を確認するために、ヤギ乳房に乳房塗布用組成物の塗布を行った。まず、搾乳後の泌乳期トカラヤギの乳房に、各実施例4~6及び比較例4、5の乳房塗布用組成物を1mL塗布した。具体的には、実施例4、6及び比較例4、5の乳房塗布用組成物は100μMで7日間、実施例5の乳房塗布用組成物は200μMで5日間、1日1回塗布した。また、実施例4、6の場合、反対側の乳房にコントロールとして0.2%DMSOを含む70%エタノールを1mL塗布した。実施例5及び比較例4、5の場合、塗布3日前(-day2)から塗布1日前(day0)の期間内に0.2%DMSOを含む70%エタノールを1mL塗布し、その後に実施例5及び比較例4、5の乳房塗布用組成物を塗布した。そして、規定期間の経過後に、各トカラヤギの乳房から乳汁を採取した。
【0060】
(乳中体細胞数及び乳中抗菌因子濃度の測定)
乳中体細胞数、乳中β-ディフェンシン-1濃度及び乳中S100A7濃度を確認するために、以下の測定を行った。まず、採取した乳汁を、Countess II FL Automated Cell Counter (Thermo Fisher Scientific)を用いる乳中体細胞数(SCC)の測定に供した。測定した乳中体細胞数をコントロールの乳中体細胞数で除することにより相対強度比を算出した。また、採取した乳汁を、上述した競合ELISAによる抗菌因子濃度の測定に供した。測定した乳中β-ディフェンシン-1濃度と乳中S100A7濃度を、コントロールのβ-ディフェンシン-1濃度と乳中S100A7濃度で除することにより相対強度比を算出した。結果は後述する表2に示す。
【0061】
以下、上述した試験の結果について説明する。表1は、実施例1~3及び比較例1~3の乳房塗布用組成物を含む培地上で3日間ヤギ乳腺上皮細胞を培養したときの、in vitroにおけるタイトジャンクションの機能及び抗菌因子への影響に対する結果をまとめた表である。なお、表1中、NDは測定しなかったこと(Not Determined)を意味する。
【0062】
【表1】
【0063】
表1を参照しつつ、タイトジャンクションの機能への影響について説明する。まず、表1の実施例1の欄に示すように、培地中のレスベラトロールの濃度が0.5μM以上の場合に、タイトジャンクションの構成タンパク質であるクローディン-3の量が増加することが確認された。また、表1の実施例2の欄に示すように、培地中のエクオールの濃度が0.5μM以上の場合に、クローディン-3の量が増加することが確認された。クローディン-3の量の増加はタイトジャンクションの機能の増強を示すため、これらの結果から、実施例1のレスベラトロールと実施例2のエクオールはタイトジャンクションの機能を増強する作用を有することが確認された。一方、表1の実施例3の欄に示すように、培地中のジンゲロールの濃度が0.5μM以上の場合に、クローディン-3とクローディン-4の両方の量が低下することが確認された。なお、クローディン-4もタイトジャンクションの構成タンパク質である。クローディン-3とクローディン-4の量の減少はタイトジャンクションの機能の抑制を示すため、実施例3のジンゲロールはタイトジャンクションの機能を抑制する作用を有することが確認された。また、比較例2の欄に示すように、培地中のイカリインの濃度が10μM以上の場合において、クローディン-3の量に変化は見られなかったものの、クローディン-4の量は減少することが確認された。従って、比較例2のイカリインはタイトジャンクションの機能を抑制する作用を有することが確認された。また、表1の比較例3の欄に示すように、培地中のオレウロペインの濃度が10μM以上の場合において、クローディン-4の量に変化は見られなかったものの、クローディン-3の量は減少することが確認された。従って、比較例3のオレウロペインもタイトジャンクションの機能を抑制する作用を有することが確認された。
【0064】
続いて、表1を参照しつつ、抗菌因子への影響について説明する。まず、表1の実施例1の欄に示すように、培地中にレスベラトロールが0.5μM以上の濃度で存在する場合において、抗菌因子であるβ-ディフェンシン-1とS100A7の量が増加することが確認された。このため、実施例1のレスベラトロールは、抗菌因子を増加する作用を有することが確認された。なお、乳房塗布用組成物の塗布による抗菌因子の増加は、タイトジャンクションの機能への影響とは全く別の現象であるものと推察される。また、表1の実施例2の欄に示すように、培地中にエクオールが0.5μM以上の濃度で存在する場合においても、β-ディフェンシンの量が増加することが確認された。このため、エクオールも抗菌因子を増加する作用を有することが確認された。また、表1の実施例3の欄に示すように、培地中にジンゲロールが50μMの濃度で存在する場合において、β-ディフェンシン-1の量が1.35倍に増加することが確認された。このため、実施例3のジンゲロールも抗菌因子を増加する作用を有することが確認された。
【0065】
表1の結果から、in vitroにおいては、分子量500Da以下のポリフェノールを含む実施例1~3及び分子量500Da超過のポリフェノールを含む比較例2、3に係る乳房塗布用組成物を培地に添加することで、両者においてヤギ乳腺上皮細胞におけるタイトジャンクションの機能を増強又は抑制した他、抗菌因子を増加することが確認された。
【0066】
続いて、表2は、実施例4~6及び比較例4、5の乳房塗布用組成物を用いた、in vivoにおけるタイトジャンクションの機能及び抗菌因子への影響に対する結果をまとめた表である。なお、表2中、NDは測定しなかったこと(Not Determined)を意味する。
【0067】
【表2】
【0068】
表2を参照しつつ、タイトジャンクションの機能への影響について説明する。まず、表2の実施例4、5の欄に示すように、分子量228Daのレスベラトロールを含む実施例4の乳房塗布用組成物の乳房への塗布後1~7日目(day1~day7)において、また、分子量242Daのエクオールを含む実施例5の乳房塗布用組成物の乳房への塗布後1~5日目(day1~day5)において、乳中体細胞数が低下することが確認された。表1の結果にて上述したように、レスベラトロールとエクオールは、タイトジャンクションの構成タンパク質であるクローディン-3の量を増加し、タイトジャンクションの機能を増強することが既に確認されている。従って、これらの結果から、実施例4、5に係る乳房塗布用組成物の乳房への塗布により、乳腺上皮細胞のタイトジャンクションの機能が増強され、細胞間の間隙が狭くなり、細胞間隙を通過して乳腺内腔側へ移行する体細胞数が減少したものと推察される。また、表2の実施例6の欄に示すように、分子量294Daのジンゲロールを含む実施例6の乳房塗布用組成物の乳房への塗布後1~7日目(day1~day7)において、乳中体細胞数の量が増加することが確認された。表1の結果にて上述したように、ジンゲロールは、タイトジャンクションの構成タンパク質であるクローディン-3とクローディン-4の量を減少させ、タイトジャンクションの機能を抑制することが既に確認されている。従って、これらの結果から、実施例6に係る乳房塗布用組成物の乳房への塗布により、乳腺上皮細胞のタイトジャンクションの機能が抑制され、細胞間の間隙が広くなり、細胞間隙を通過して乳腺内腔側へ移行する体細胞数が増加したものと推察される。このように、乳房塗布用組成物が分子量500Da以下のポリフェノールを含む場合は、in vivoにおいても乳腺上皮細胞のタイトジャンクションの機能を増強又は抑制できることが確認された。しかし、表2の比較例4、5の欄に示すように、分子量676Daのイカリインを含む比較例4及び分子量540Daのオレウロペインを含む比較例5の乳房塗布用組成物の乳房への塗布後1~7日目(day1~day7)においては、両者とも乳中体細胞数に変化が見られないことが確認された。表1の結果にて上述したように、in vitroにおいて、イカリインとオレウロペインは、タイトジャンクションの機能を抑制する作用を有することが確認されていたにもかかわらず、乳房塗布用組成物を乳房に塗布したin vivoにおいてタイトジャンクションの機能を抑制できないことが確認された。この理由としては、分子量500Da超過のポリフェノールが含まれている場合、分子サイズの大きさのために経皮吸収されなかったものと考えられる。以上の結果から、分子量500Da超過のポリフェノールを有効成分として含む乳房塗布用組成物を用いる場合は、タイトジャンクションの機能の増強又は抑制を行うことが難しいことが示された。
【0069】
続いて、表2を参照しつつ、乳中抗菌因子への影響について説明する。まず、表2の実施例4の欄に示すように、実施例4に係る乳房塗布用組成物の乳房への塗布後1~7日目(day1~day7)において、乳中β-ディフェンシン-1濃度と乳中S100A7濃度がともに増加することが確認された。また、表2の実施例5、6の欄に示すように、実施例5に係る乳房塗布用組成物では乳房への塗布後2~5日目(day2~day5)において乳中β-ディフェンシン-1濃度の増加が確認され、実施例6に係る乳房塗布用組成物では乳房への塗布後1~7日目(day1~day7)において乳中β-ディフェンシン-1濃度の増加が確認された。これらの結果から、分子量500Da以下のポリフェノールを含む乳房塗布用組成物は、in vivoにおいても、該ポリフェノールが乳房中に経皮吸収され、乳房中の抗菌因子を増加させる作用を有することが分かった。
【0070】
表2の結果から、in vivoにおいても、分子量500Da以下のポリフェノールを含む乳房塗布用組成物を乳房に塗布することで、該ポリフェノールを経皮吸収することができ、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制した他、抗菌因子を増加させることが確認された。
【0071】
以上の結果から、タイトジャンクションの機能を増強又は抑制するための乳房塗布用生物として有用であり、また、抗菌因子を増加させるための乳房塗布用組成物としても有用であることが示された。