(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068471
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240513BHJP
G03G 15/14 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178963
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 文洋
【テーマコード(参考)】
2H033
2H200
【Fターム(参考)】
2H033BA08
2H033BA09
2H033BA11
2H033BA12
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA35
2H200JB12
2H200JB18
(57)【要約】
【課題】転写ニップでの振動とシートの後端のシワや画像乱れとを共に抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着ニップを有する定着装置300と、平坦なストレート部でシートを保持して定着装置にシートを搬送する搬送装置100とを備えた画像形成装置において、ストレート部の位置を変更するストレート部変更手段13と、ストレート部変更手段を駆動制御するストレート部制御手段と、定着ニップへのシート先端の進入タイミングを把握する進入時把握手段16とを設ける。ストレート部制御手段は、進入時把握手段16の把握結果に基づいて、進入タイミング後であって進入したシートの後端側がストレート部で保持されている期間中に、ストレート部変更手段13を駆動制御してストレート部の位置を変更させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ニップを有する定着装置と、平坦なストレート部でシートを保持して定着装置にシートを搬送する搬送装置とを備えた画像形成装置において、
前記ストレート部の位置を変更するストレート部変更手段と、
前記ストレート部変更手段を駆動制御するストレート部制御手段と、
前記定着ニップへのシート先端の進入タイミングを把握する進入時把握手段とを設け、
前記ストレート部制御手段は、前記進入時把握手段の把握結果に基づいて、進入タイミング後であって進入したシートの後端側が前記ストレート部で保持されている期間中に、前記ストレート部変更手段を駆動制御して前記位置を変更させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記定着装置の入口ガイド部材の位置を変更するガイド部材変更手段と、
前記ガイド部材変更手段を駆動制御するガイド部材制御手段とを設け、
前記ガイド部材制御手段は、前記進入時把握手段の把握結果に基づいて、進入タイミング後であって進入したシートの前記定着ニップの通過中に、前記ガイド部材変更手段を駆動制御して前記位置を変更させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記ストレート部変更手段は、前記ストレート部の下流端と前記定着ニップの入り口とを結ぶ第一仮想直線と、前記定着ニップの入り口と出口とを結ぶ第二仮想直線との間の角度を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像形成装置において、
変更する前記入口ガイド部材の位置は、中心位置及び又は姿勢であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記第一仮想直線と前記第二仮想直線との間の前記ストレート部のシート保持側における角度を、変更後に0°以上、180°以下の範囲にすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記入口ガイド部材のガイド面と、前記定着ニップの入り口と出口とを結ぶ第二仮想直線との間の角度との間の前記ガイド面のシートガイド側における角度が、進入タイミングで0°以上、5°未満の範囲にすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、
前記ガイド面と、前記定着ニップの入口と出口とを結ぶ第二仮想直線との間の距離が変更後に小さくなるように前記位置を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記ストレート部変更手段はカムと、カムの回転駆動装置とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一に記載の画像形成装置において、
シートの種類と前記ストレート部制御手段で用いる変更情報との対応情報を記憶する記憶手段と、シートの種類の情報を取得するシート種別取得手段とを設け、
前記ストレート部制御手段は、前記記憶手段の記憶情報と、前記シート種別取得手段の取得情報を、制御に用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項2、4、6又は7に記載の画像形成装置において、
シートの種類と前記ガイド部材制御手段で用いる変更情報との対応情報を記憶する記憶手段と、シートの種類の情報を取得するシート種別取得手段とを設け、
前記ガイド部材制御手段は、前記記憶手段の記憶情報と、前記シート種別取得手段の取得情報を、制御に用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、定着ニップを有する定着装置と、平坦なストレート部でシートを保持して定着装置にシートを搬送する搬送装置とを備えた画像形成装置が知られている。
例えば特許文献1には係る画像形成装置であって、搬送ベルト(搬送装置)を支持する定着装置側の支持ローラを上下に移動可能に構成し、定着するシートの種類によって支持ローラの高さを切り替えるものが記載されている。具体的には、転写ニップと定着ニップとの距離よりも長いシートを定着する場合には、支持ローラに低い位置を取らせる。これより、後端が転写ニップに存在するシートの先端が直線的に定着ニップに進入しないようにし、定着ニップ突入の際の転写ニップでの振動を防止する。転写ニップと定着ニップとの距離よりも短い厚紙を定着する場合には、支持ローラに高い位置を取らせる。これより、シートを搬送ベルトに接触しやすくし搬送ベルトのみで搬送しながら定着入口ガイド板に進入しやすくする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、装置の小型化など定着装置までの搬送経路や定着装置についてのレイアウトの制約によっては、転写ニップでの振動を防止しようとすると、シートの後端にシワや画像乱れが生じる恐れがあることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、定着ニップを有する定着装置と、平坦なストレート部でシートを保持して定着装置にシートを搬送する搬送装置とを備えた画像形成装置において、前記ストレート部の位置を変更するストレート部変更手段と、前記ストレート部変更手段を駆動制御するストレート部制御手段と、前記定着ニップへのシート先端の進入タイミングを把握する進入時把握手段とを設け、前記ストレート部制御手段は、前記進入時把握手段の把握結果に基づいて、進入タイミング後であって進入したシートの後端側が前記ストレート部で保持されている期間中に、前記ストレート部変更手段を駆動制御して前記位置を変更させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、転写ニップでの振動とシートの後端のシワや画像乱れとを共に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】定着入口ガイド板のガイド面の位置の説明図。
【
図5】ストレート部の位置を上方に変更した後の状態の他の例の説明図。
【
図6】ストレート部先端の高さと定着入口ガイド板の高さとの組み合わせを示す表。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る画像形成装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態における画像形成装置は、電子写真方式の画像形成部を備えるプリンタである。このプリンタは、画像形成部が4つの感光体を備える中間転写方式のタンデム型のプリンタであるが、他のカラープリンタやモノクロプリンタであってもよい。画像形成装置は、スキャナ部を備えた複写機であってもよい。
【0008】
図1は本実施形態の複写機の構成を示す模式図である。本実施形態のプリンタ200は、シートあるいは記録媒体である用紙上に画像を形成するプリンタ部200Aと、複数の給紙カセット220を有した給紙部200Bとを備える。プリンタ部200Aは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の色ごとの作像部が中間転写体としての中間転写ベルト210の回転方向に沿って配列されている。
【0009】
各作像部は、それぞれ、潜像担持体としての感光体205を備えている。感光体205の周囲には、帯電装置202、光書込装置201、現像装置203、一次転写装置204、感光体クリーニング装置206などを備えている。符号の添え字(Y,M,C,K)は色を区別するためのものである。このプリンタ200は、中継搬送装置100、定着装置300、搬送ローラ対213、排出ローラ対214、排出トレイ215も備えている。
【0010】
中継搬送装置100は、上流ローラ10と下流ローラ11とで無端状の搬送ベルト12を支持したベルト搬送装置である。例えば上流ローラ10を駆動ローラとし、下流ローラ11を従動ローラとする。平坦なストレート部としての両ローラ間のベルト展張部でシートを保持して定着装置にシートを搬送する搬送装置に相当する。
【0011】
定着装置300は、定着部材であるとともに無端ベルトである定着ベルト31、定着ベルトの支持部材であるとともにニップ形成部材であるニップ形成ローラ32と、定着ベルトの支持部材である加熱ローラ33と、加圧部材である加圧ローラ34とを備えている。ニップ形成ローラ32と加圧ローラ34の少なくもと一方が表面に弾性を有し、加圧により所定幅の定着ニップを形成する。定着装置300は、定着入口ガイド板35も備えている。
【0012】
プリンタ部200Aにおいて、各感光体205上に形成された各色トナー像は、一次転写装置204によって、表面が移動する中間転写ベルト210上に互いに重なり合うように一次転写され、中間転写ベルト210上にカラートナー像が形成される。中間転写ベルト210上のカラートナー像は、中間転写ベルト210の回転に伴って二次転写バックアップローラ211と二次転写対向ローラ212からなる二次転写領域へと搬送される。両ローラの間には二次転写電界が形成される。
【0013】
中間転写ベルト210のカラートナー像は、二次転写領域において、所定のタイミングで給紙部200Bにより給紙カセット220から搬送されてくる用紙上に二次転写される。カラートナー像が形成された用紙は、中継搬送装置100で定着装置300へと搬送され、熱と圧力の作用により、カラートナー像が用紙上に定着される。定着後の用紙は、搬送ローラ対213で搬送され、排出ローラ対214で排出トレイ215へと排出される。
【0014】
図2は定着入口ガイド板35のガイド面の位置の説明図である。ガイド面の位置とはガイド面の搬送方向中央の位置及びガイド面の角度である。
図2(a)のように、定着入口ガイド板35のガイド面と定着ニップ向きAが1直線(角度0°)の場合、さらに好ましくは、搬送ローラ対213のニップも含めて1直線(角度0°)の場合、用紙は定着ニップ進入後も定着入口ガイド板35に沿って搬送される。ここで、定着ニップ向きAは、定着ニップの入口N1と出口N2とを結ぶ直線の方向をいう。
図2(a)では定着ニップ向きAが水平ではなく、下流側ほど高くなるよう傾斜している。
【0015】
図2(b)はプリンタのレイアウトの制約で、定着ニップ向きAと定着入口ガイド板35のガイド面との間のガイド面のシートガイド側の角度θ1が0°よりも大きくなるレイアウトを示す。この図では定着ニップ向きAが水平になっている。定着ニップの入口N1に対する定着入口ガイド板35の先端位置やガイド面の装置内における傾斜角度自体は、
図2(a)と同じである。しかし、定着ニップ向きAが
図2(a)異なり、角度θ1が0°ではなくなっている。
【0016】
本発明者の研究により、定着ニップ向きAを考慮することが重要であり、定着ニップ向きAが関係する角度θ1が5°以上になると、しわや画像乱れが発生しやすくなることが判明した。用紙は、先端が定着ニップに進入すると用紙が定着ニップ向きAに沿おうとする。定着ニップの入口N1よりも上流側の用紙部分がこの沿おうとする姿勢よりも低い姿勢だと、この用紙部分に上方に浮く力が発生して浮き上がる。浮き上がった用紙部分は高温の定着ベルトに31に接触しトナー像が乱れて画像みを生じたり、浮き上がりの衝撃でしわも生じたりするものと考えられる。以上のことから用紙の先端が定着ニップに進入するタイミングでは、角度θ1は0°以上5度未満の範囲にすることが好ましい。
【0017】
図3は中継搬送装置100のストレート部である搬送ベルト12の展張部の位置の説明図である。
図3(a)のように、下流ローラ11のベルト巻き付き開始点が相当するストレート部先端Pと定着ニップの入口N1とを結ぶ仮想直線と、定着ニップ向きAとの間のシート保持側の角度θ2は、0°以上、180°以下の範囲にすることが好ましいことが判明した。これは次の理由によるものと考えられる。角度θ2が、180°より小さいと、定着ニップに進入した箇所よりも上流側の用紙部分には白抜矢印Bのように下向きの力が働きく。この結果、この用紙部分は、定着入口ガイド板35のガイド面から浮き上がりにくくなり、定着入口ガイド板35に沿って搬送される。
【0018】
一方、
図3(b)のように、レイアウトの制約で角度θ2が180°より大きいレイアウトの場合、定着ニップに進入した箇所よりも上流側の用紙部分には定着入口ガイド板35から浮き上がる方向に力が働く。この結果、定着ニップへの用紙の進入が進んで、定着ニップよりも上流側の用紙部分が少なく自重も小さくなって浮き上がる力の方がまさった段階で搬送ベルトから浮き上がってしまい、しわや画像乱れが発生しやすくなる。よって、上記範囲にするのが好ましいのである。
【0019】
このような角度θ2が180°よりも大きいことによる不具合を回避することのみに着目した場合には、
図3(b)に示すように例えば水平な方向である定着ニップ向きAに応じて角度θ2を180°以下にすべく、搬送ベルト12の下流ローラ11を高い位置に設定すればよい。しかし、このような設定では、上述した特許文献1の画像形成装置で達成している、転写ニップと定着ニップとの距離よりも長いシートを定着する場合の、定着ニップ突入の際の転写ニップでの振動防止が困難になる。
【0020】
更に、特許文献1に記載されているように搬送ベルトに比較的低い位置を取らせることは、転写ニップと定着ニップとの距離よりも短いシートであっても、先端に上向きのカールが生じている場合、比較的急角度で上昇させながらガイドする定着入口ガイド板に対し、スムーズに搬送するためにも好ましい。これらの転写ニップでの振動防止や、先端カールの用紙の搬送性向上といった要請と、角度θ2を180°以下にしたという要請とがトレードオフの関係になってしまう。
【0021】
本実施形態では、以上の問題を解決するため、ストレート部の位置を変更するストレート部変更手段と、ストレート部変更手段を駆動制御するストレート部制御手段と、定着ニップへのシート先端の進入タイミングを把握する進入時把握手段とを設ける。ストレート部制御手段は、進入時把握手段の把握結果に基づいて、進入タイミング後であって進入したシートの後端側が前記ストレート部で保持されている期間中に、ストレート部変更手段を駆動制御してストレート部の位置を変更させる。このように、シート先端の進入タイミングと、その後の所定の期間とで、それぞれの時期に応じた要請を満足できるストレート部の位置を取らせる。これにより、上述のトレードオフの関係の要請を共に満足させることができるようにする。
【0022】
図4は具体的な構成例を示すものである。
図4(a)は用紙が定着ニップに進入するタイミングの状態を示し、
図4(b)はストレート部の位置を上方に変更した後の状態を示す。
図4(a)の状態では、
図3(b)にと同様に、角度θ2が180°よりも大きい。
図4(b)の状態では、角度θ2が0°以上、180°以下の範囲にある。
【0023】
図4(a)のように、搬送装置の先端位置であるとともに、ストレート部の下流端でもストレート部先端Pの位置を変える第1カム13を設置する。この第1カム13は、搬送ベルトの支持ローラの両端を保持する両側板14に取り付けられており、搬送ユニットの底板15に当接する。両側板14は上流ローラ10の軸10aの回りで揺動可能になっており、第1カムモータM1で回転駆動される第1カム13の回転位置に応じて下流ローラ11を上下移動させる。揺動可能な両側板14、第1カム13、第1カムモータM1などでストレート部変更手段を構成する。
【0024】
定着ニップよりも搬送方向上流側に用紙検知センサ16を配置している。この用紙検知センサ16による用紙先端の検知から一定時間経過後に定着ニップへシート先端が進入する。用紙検知センサ16の信号は後述する制御部400(
図7参照)に送られる。この用紙検知センサ16と制御部400による進入タイミングを計算する処理部とで、進入時把握手段を構成する。この制御部400は、第1カムモータM1の駆動も制御する。
【0025】
具体的には、用紙先端が定着ニップに進入するタイミングでは、
図4(a)の状態になるように第1カム13の回転位置を取らせ、進入タイミング後であって進入したシートの後端側がストレート部で保持されている期間中に、第1カム13を回転させ、ストレート部を上昇させて
図4(b)の状態にする。この回転のタイミングは、用紙検知センサ16の信号を用いて定着ニップ進入タイミングを計算処理するのと同様に、用紙のサイズを考慮する等して制御部400による計算処理によって求める。この制御部400の第1カム13の回転駆動制御の処理部で、ストレート部制御手段を構成する。
【0026】
この構成例は、定着入口ガイド板35の角度を変える第2カム40も備えている。第2カム40は定着入口ガイド板35をその先端近傍の揺動中心回りで揺動可能な揺動アームに保持されている。第2カム40を回転駆動する第2カムモータM2も備えている。揺動アーム、第2カム40、第2カムモータM2などで定着入口ガイド板35の位置(特に姿勢)を変更するガイド部材変更手段を構成する。
【0027】
図4(b)の定着入口ガイド板35のガイド面は、定着ニップの向き4に沿う仮想直線(図中で水平な直線)との距離が、
図4(a)に比して小さくなる。これにより、
図4(b)のストレート部先端Pが
図4(a)に比して上方に位置するのにあわせて定着入口ガイド板35のガイド面(特に先端中心で揺動する揺動端側である上両側面部)も上昇さて、ストレート部から定着入口ガイド板35のガイド面にスムーズに沿わせて用紙を搬送できるようにする。
【0028】
定着入口ガイド板35が固定されたホルダ41は、揺動アームに進退可能に取り付けられている。図示の例では、ホルダ41に固定された進退ガイド42が揺動アームに固定されたピン43にガイドされることにより、ホルダ41が揺動アームに対して進退可能になっている。揺動アームにはホルダ41を進退させる第3カム44の軸も取り付けられている。第3カム44を回転駆動する第3カムモータM3も備えている。進退ガイド42、ピン43、第3カム44、第3カムモータM3で、定着入口ガイド板35の位置(特に中心位置)を変更するガイド部変更手段を構成する。このガイド変更手段は、定着入口ガイド板35の角度は変化させずに進退方向の移動をさせる。
【0029】
第2カムモータM2や第3カムモータM3も制御部400で制御される。
図4(a)と
図4(b)では第3カム44の回転位置の変更はなく、第2カム40の回転位置を変更して定着入口ガイド板35についてのθ1を変更している。制御部400は用紙検知センサ16の信号を用いて第1カム13の回転制御と同様に、第2カム40や第3カム44の回転制御を行う。この制御部400の第2カム40や第3カム44の回転駆動制御の処理部で、ガイド部材制御手段を構成する。
【0030】
図4に示す例では、用紙が定着ニップに進入した後に、第1カム13及び第2カム40を動作させ、
図4(b)のように定着入口ガイド板35の角度と搬送ユニット高さ(角度)を調整し、角度θ2を180°より小さくし、用紙の真ん中から後端でも定着入口ガイド板35に沿って用紙搬送されるようにし、用紙の浮き上がりを防止する。
【0031】
図5は
図4(b)のストレート部の位置を上方に変更した後の角度θ2が0°以上、180°以下の範囲にある状態の他の例である。この状態は、第1カム13の回転位置は、ストレート部先端Pが、
図4(a)よりは高いが
図4(b)よりは低くなる回転位置に変更されている。これに合わせ、第2カム40に加えて第3カム44を回転させて、白抜矢印Cで示す進退方向のうち定着ニップの向きに平行な仮想直線(図中の水平方向)との距離が大きくなる(高さは低くなる)向きに高さ調整している。これにより、ストレート部先端Pが上方方向で中間的な高さを取る場合にも、それに合わせて定着入口ガイド板35の上両側ガイド面部の高さを調整し、用紙の真ん中から後端でも定着入口ガイド板35に沿って用紙搬送されるようにしている。
【0032】
図6は、用紙が定着ニップ進入後の所定期間中に、θ2が0°以上、180°以下の範囲にストレート部先端Pの高さ(搬送ユニット位置)を変更した状態の、ストレート部先端Pの高さ(搬送ユニット位置)と定着入口ガイド板35の高さ(定着入口ガイド板位置)との組み合わせを示す表である。各組み合わせ毎の、メリット・デメリットを記載している。定着入口ガイド板35の角度だけでは対応できない障害もあり、この表のように、高さを変えることにより、色々な用紙の搬送障害、画像障害に対応できるようにする。
【0033】
表中の「モヤムラ」とは、定着ニップの入口側で用紙の浮きが発生した場合、用紙が定着ニップ部へ進入するときに画像面が定着ベルトに接触することにより、画像が乱れる異常画像である。「ミミズ」とは大きなサイズの薄紙で生じやすい異常画像であり、用紙が定着ニップへ進入し、搬送される際に、用紙の一部が重なりあい、折れてシワの発生する前段階の画像が乱れる異常画像である。
【0034】
この表のメリットを生じさせ・デメリットを避ける高さの組み合わせを、紙種(厚みや材質)やサイズなど(シートの種類)に応じてあらかじめ実験で求めておき、プリンタに用いる用紙の紙種・サイズの情報に応じて、最適な高さの組み合わせになるように第1カム13や第3カム44の回転位置を設定する。この組み合わせの情報を記憶装置に記憶しておく。この記憶装置が、シートの種類と前記ストレート部制御手段で用いる変更情報との対応情報を記憶する記憶手段や、シートの種類と前記ガイド部材制御手段で用いる変更情報との対応情報を記憶する記憶手段に相当する。後述する制御部400のROM403(
図7参照)をこの記憶手段として用いてもよいし、外部の記録装置を用いてもよい。
【0035】
プリンタで用いる用紙の種類の情報は、操作パネルなどから操作者に入力させるようにしたり、紙厚などやサイズは装置内で検出するようにしてもよい。これらが、シートの種類の情報を取得するシート種別取得手段に相当する。取得した用紙の紙種・サイズ情報に応じて記憶装置から読みだした組み合わせの情報に基づいて、カムを回転制御する。
【0036】
図7はこのような制御のための制御部400の構成図である。この制御部400はCPU401、RAM402、ROM403などからなる。この制御部400は用紙検知センサ16や用紙情報取得手段404から情報を取得し、第1カムモータM1、第2カムモータM2、第3カムモータM3の駆動を制御する。
【0037】
以上の例では、定着ガイド板36の角度や高さを変更したが、これは固定で、搬送ベルトの高さを変更してもよい。角度や位置の変更にカムを用いたが他のアクチュエータを用いてもよい。定着装置として定着ベルト方式のものを用いたが他の方式の定着装置でもよい。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0039】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
定着ニップを有する定着装置(300)と、平坦なストレート部でシートを保持して定着装置300にシートを搬送する搬送装置(100)とを備えた画像形成装置において、前記ストレート部の位置を変更するストレート部変更手段(13)と、前記ストレート部変更手段を駆動制御するストレート部制御手段(400)と、前記定着ニップへのシート先端の進入タイミングを把握する進入時把握手段(16)とを設ける。前記ストレート部制御手段は、前記進入時把握手段の把握結果に基づいて、進入タイミング後であって進入したシートの後端側が前記ストレート部で保持されている期間中に、前記ストレート部変更手段を駆動制御して前記位置を変更させる。これにより、転写ニップでの振動とシートの後端のシワや画像乱れとを共に抑制できる。
【0040】
(態様2)
態様1に記載の画像形成装置において、前記定着装置の入口ガイド部材(35)の位置を変更するガイド部材変更手段(40、44)と、前記ガイド部材変更手段を駆動制御するガイド部材制御手段(400)とを設ける。前記ガイド部材制御手段は、前記進入時把握手段の把握結果に基づいて、進入タイミング後であって進入したシートの前記定着ニップの通過中に、前記ガイド部材変更手段を駆動制御して前記位置を変更させる。これにより、変更後のストレート部先端の位置に応じて入口ガイド部材の位置を変更し、用紙の良好に搬送できるようにする。
【0041】
(態様3)
態様1に記載の画像形成装置において、前記ストレート部変更手段は、前記ストレート部の下流端と前記定着ニップの入り口とを結ぶ第一仮想直線と、前記定着ニップの入り口と出口とを結ぶ第二仮想直線との間の角度を変更する。これにより、変更後の角度をシートの後端のシワや画像乱れを生じない角度にできる。
【0042】
(態様4)
態様2に記載の画像形成装置において、変更する前記入口ガイド部材の位置は、中心位置及び又は姿勢である。これにより、入口ガイド部材の中心位置及び又は姿勢を、変更後のストレート部先端の位置に応じて中心位置及び又は姿勢にできる。
【0043】
(態様5)
態様1乃至3の何れか一に記載の画像形成装置において、前記第一仮想直線と前記第二仮想直線との間の前記ストレート部のシート保持側における角度を、変更後に0°以上、180°以下の範囲にする。これにより、シートの後端のシワや画像乱れを抑制できる。
【0044】
(態様6)
態様2又は4に記載の画像形成装置において、前記入口ガイド部材のガイド面と、前記定着ニップの入り口と出口とを結ぶ第二仮想直線との間の角度との間の前記ガイド面のシートガイド側における角度が、進入タイミングで0°以上、5°未満の範囲にする。これにより、シートの定着ニップ進入時の浮きによるシワや画像乱れを抑制できる。
【0045】
(態様7)
態様2、4又は6に記載の画像形成装置において、前記ガイド面と、前記定着ニップの入口と出口とを結ぶ第二仮想直線との間の距離が変更後に小さくなるように前記位置を変更する。これにより、第二仮想直線との間の距離を、変更後のストレート部先端の位置に応じて距離にできる。
【0046】
(態様8)
態様1乃至7の何れか一に記載の画像形成装置において、前記ストレート部変更手段はカムと、カムの回転駆動装置とを有する。これにより、カムという簡易な構成で位置を変更できる。
【0047】
(態様9)
態様1乃至8の何れか一に記載の画像形成装置において、シートの種類と前記ストレート部制御手段で用いる変更情報との対応情報を記憶する記憶手段(403)と、シートの種類の情報を取得するシート種別取得手段(404)とを設ける。前記ストレート部制御手段は、前記記憶手段の記憶情報と、前記シート種別取得手段の取得情報を、制御に用いる。これにより、シートの種類に応じたストレート部変更手段の制御を行うことができる。
【0048】
(態様10)
態様2、4、6又は7に記載の画像形成装置において、シートの種類と前記ガイド部材制御手段で用いる変更情報との対応情報を記憶する記憶手段と、シートの種類の情報を取得するシート種別取得手段(404)とを設ける。前記ガイド部材制御手段は、前記記憶手段の記憶情報と、前記シート種別取得手段の取得情報を、制御に用いる。これにより、シートの種類に応じたガイド部材変更手段の制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
10 :上流ローラ
10a :軸
11 :下流ローラ
12 :搬送ベルト
13 :第1カム
14 :両側板
15 :底板
16 :用紙検知センサ
31 :定着ベルト
32 :ニップ形成ローラ
33 :加熱ローラ
34 :加圧ローラ
35 :定着入口ガイド板
36 :定着ガイド板
40 :第2カム
41 :ホルダ
42 :進退ガイド
43 :ピン
44 :第3カム
100 :中継搬送装置
200 :プリンタ
200A :プリンタ部
200B :給紙部
201 :光書込装置
202 :帯電装置
203 :現像装置
204 :一次転写装置
205 :感光体
206 :感光体クリーニング装置
210 :中間転写ベルト
211 :二次転写バックアップローラ
212 :二次転写対向ローラ
213 :搬送ローラ対
214 :排出ローラ対
215 :排出トレイ
220 :給紙カセット
300 :定着装置
400 :制御部
401 :CPU
402 :RAM
403 :ROM
404 :用紙情報取得手段
A :定着ニップ向き
M1 :第1カムモータ
M2 :第2カムモータ
M3 :第3カムモータ
N1 :入口
N2 :出口
P :ストレート部先端
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】