(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006849
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】油中水型可塑性油脂組成物の製造方法、ベーカリー食品の製造方法、加熱調理食品の製造方法、および油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を増強する方法
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240110BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20240110BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20240110BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20240110BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20240110BHJP
【FI】
A23D7/00 500
A21D13/80
A21D13/00
A21D2/14
A23L15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132153
(22)【出願日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2022107007
(32)【優先日】2022-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】青木 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】原 勇介
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG04
4B026DH01
4B026DK01
4B026DK05
4B026DP01
4B026DP04
4B026DX05
4B032DB15
4B032DB22
4B032DK18
4B032DP08
4B032DP80
4B042AC03
4B042AD40
4B042AK06
4B042AP14
4B042AP18
(57)【要約】
【課題】 呈味が向上した油中水型可塑性油脂組成物の製造方法を提供する。具体的にはバターらしい後味を感じることができる油中水型可塑性油脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 油中水型可塑性油脂組成物の製造方法であって、
油脂含量が70質量%以上100質量%以下の第一組成物を急冷捏化装置に送液し急冷する工程と、
油脂含量が0質量%以上20質量%未満の第二含水組成物を急冷された前記第一組成物と混合する工程とを含み、
混合する前記工程が、前記急冷捏化装置中に前記第二含水組成物を送液し、連続的に混合する工程であることを特徴とする、前記製造方法である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型可塑性油脂組成物の製造方法であって、
油脂含量が70質量%以上100質量%以下の第一組成物を急冷捏化装置に送液し急冷する工程と、
油脂含量が0質量%以上20質量%未満の第二含水組成物を急冷された前記第一組成物と混合する工程とを含み、
混合する前記工程が、前記急冷捏化装置中に前記第二含水組成物を送液し、連続的に混合する工程であることを特徴とする前記製造方法。
【請求項2】
混合する前記工程において、前記第一組成物100質量部に対して、前記第二含水組成物の混合する量が、0.5質量部以上30質量部以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
混合する前記工程時の前記第一組成物の油相の固体脂含量(SFC1)が、前記第一組成物に含まれる油脂のAOCS Official Method Cd16b-93のMethod Iに則り測定された10℃における固体脂含量(SFC10)に対する割合(SFC1/SFC10)が20%以上100%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
混合する前記工程時の前記第一組成物の温度(T1)と急冷捏化装置からの充填時の油中水型可塑性油脂組成物の温度(T2)との差(T2-T1)が、-10K以上5K以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
乳脂肪を含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記油中水型可塑性油脂組成物がベーカリー及び加熱調理からなる群の1種または2種の用途に使用する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか1項に記載の製造方法で得られた油中水型可塑性油脂組成物を用いたベーカリー食品の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至6いずれか1項に記載の製造方法で得られた油中水型可塑性油脂組成物を用いた加熱調理食品の製造方法。
【請求項9】
油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を増強する方法であって、
油中水可塑性油脂組成物を製造する際に、
油脂含量が70質量%以上100質量%以下の第一組成物を急冷捏化装置に送液し急冷する工程と、
油脂含量が0質量%以上20質量%未満の第二含水組成物を急冷された前記第一組成物と混合する工程とを含み、
混合する前記工程が、前記急冷捏化装置中に前記第二含水組成物を送液し、連続的に混合する工程であることを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型可塑性油脂組成物の製造方法、ベーカリー食品の製造方法、加熱調理食品の製造方法、および油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベーカリー製品に良好なコク味を付与するために、一般的にはバターが使用されてきた。これは、バターがコクのある強い乳風味をもともと持っていることに加え、ベーカリー生地に使用すると、加熱によりさらにその風味、特に飲み込む直前にジワっと広がる濃厚な味の強さが際立つためである。そのため、美味しいベーカリー製品には「バター」を使用し、その名称が接頭語として使用される。例えば、バターロール、バタークロワッサン、バターデニッシュ、バタークッキーなどである。
【0003】
しかし、バターはベーカリー製品に良好な風味を付与するが、日本国内においてはマーガリンに比べて極めて高価なものである。さらに、乳の生産量減等によるバター不足、あるいは、乳牛の生育環境による風味の違いなどの問題があり、安定した品質のバターを安定的に得ることが困難である。そのため、バターを使用しなくても、あるいはバターの使用量は少量であっても、良好なバター風味を有するマーガリンに対する需要が高まってきている。
【0004】
良好なバター風味を有するマーガリンを得るために、通常、マーガリンにバターを5~40質量%配合した、いわゆるコンパウンドマーガリンが使用されている。しかしながら、この方法では、バターの含量分のバター風味しか得られない。また、バター香料をマーガリンに使用する方法もある。しかしながら、この方法では良好なバターのコク味が得られないことに加え、油脂組成物の段階では良好なバター風味を呈するものであっても、ベーカリー製品になった場合は風味が弱くなってしまったり、人工的な風味が感じられるなどの問題があった。
【0005】
このため、バターを使用しなくても、あるいはバターの使用量は少量であっても、良好なバター風味を有するベーカリー製品を得る方法についての研究が各種行われ、様々な提案がなされている。
【0006】
良好なバター風味を有するベーカリー製品を得るため、各種の乳風味増強剤を使用する方法(例えば、特許文献1~7参照)が提案されている。しかし、特許文献1~6の乳風味増強剤を使用する方法は、実際には乳風味自体を増強しているのではなく、単にコク味を付与することにより乳風味を増強させている。特許文献7に記載の乳清ミネラルを使用する方法は、良好なバター風味を付与することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-202492号公報
【特許文献2】特開2010-057434号公報
【特許文献3】特開平07-236451号公報
【特許文献4】特開2000-135055号公報
【特許文献5】特開2008-259447号公報
【特許文献6】特開2000-004822号公報
【特許文献7】特開2014-050336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの技術でも添加量によっては、乳風味以外の風味も増強してしまい、乳風味が目立って増強されたように感じられず、バターらしい後味が充分に感じられない場合もあった。また、従来から汎用に用いられている、予めすべての原材料を予備乳化してから急冷捏化装置に通して製造されたマーガリンやファットスプレッドなどの油中水型可塑性油脂組成物では、バターらしい後味が充分に感じられなかった場合があった。
【0009】
そこで、本発明では、バターや乳脂肪など、特定の素材を用いなくてもバターらしい後味を感じられる油中水型可塑性油脂組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定の油脂含量の第一組成物を急冷捏化装置に送液し急冷する工程と、特定の油脂含量の第二含水組成物を急冷された前記第一組成物と混合する工程とを含み、混合する前記工程が、前記急冷捏化装置中に前記第二含水組成物を送液し、連続的に混合する工程を経て製造された油中水型可塑性油脂組成物はバターらしい後味が強く感じられることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
油中水型可塑性油脂組成物の製造方法であって、
油脂含量が70質量%以上100質量%以下の第一組成物を急冷捏化装置に送液し急冷する工程と、
油脂含量が0質量%以上20質量%未満の第二含水組成物を急冷された前記第一組成物と混合する工程とを含み、
混合する前記工程が、前記急冷捏化装置中に前記第二含水組成物を送液し、連続的に混合する工程であることを特徴とする前記製造方法。
[2]
混合する前記工程において、前記第一組成物100質量部に対して、前記第二含水組成物の混合する量が、0.5質量部以上30質量部以下である、[1]に記載の製造方法。
[3]
混合する前記工程時の前記第一組成物の油相の固体脂含量(SFC1)が、前記第一組成物に含まれる油脂のAOCS Official Method Cd16b-93のMethod Iに則り測定された10℃における固体脂含量(SFC10)に対する割合(SFC1/SFC10)が20%以上100%以下である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]
混合する前記工程時の前記第一組成物の温度(T1)と急冷捏化装置からの充填時の油中水型可塑性油脂組成物の温度(T2)との差(T2-T1)が、-10K以上5K以下である、[1]から[3]いずれか1項に記載の製造方法。
[5]
乳脂肪を含まない、[1]から[4]いずれか1項に記載の製造方法。
[6]
前記油中水型可塑性油脂組成物がベーカリー及び加熱調理からなる群の1種または2種の用途に使用する、[1]から[5]いずれか1項に記載の製造方法。
[7]
[1]から[6]いずれか1項に記載の製造方法で得られた油中水型可塑性油脂組成物を用いたベーカリー食品の製造方法。
[8]
[1]から[6]いずれか1項に記載の製造方法で得られた油中水型可塑性油脂組成物を用いた加熱調理食品の製造方法。
[9]
油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を増強する方法であって、
油中水可塑性油脂組成物を製造する際に、
油脂含量が70質量%以上100質量%以下の第一組成物を急冷捏化装置に送液し急冷する工程と、
油脂含量が0質量%以上20質量%未満の第二含水組成物を急冷された前記第一組成物と混合する工程とを含み、
混合する前記工程が、前記急冷捏化装置中に前記第二含水組成物を送液し、連続的に混合する工程であることを特徴とする、前記方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法により得られた油中水型可塑性油脂組成物はバターらしい後味を強く感じられるものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油中水型可塑性油脂組成物の製造方法、ベーカリー食品の製造方法、加熱調理食品の製造方法、および油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を増強する方法の具体的な実施の形態を以下に説明する。
【0013】
以下では、急冷捏化装置のユニットの一つである密閉型連続式掻き取りチューブ式冷却機(以後Aユニットとも記載)に送入される前の、油相を含有する融液を水相を含む場合も含め、「予備融解液」と記載する場合がある。本実施形態で使用する急冷捏化装置にはAユニット以外にも、ピンマシンや中間結晶管等の捏和装置(以後Bユニットとも記載)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用することができる。
【0014】
本発明の油中水型可塑性油脂組成物の製造方法は、油脂含量が70質量%以上100質量%以下の第一組成物を急冷捏化装置に送液し急冷する工程と、油脂含量が0質量%以上20質量%未満の第二含水組成物を急冷された前記第一組成物と混合する工程とを含み、混合する前記工程が、前記急冷捏化装置中に前記第二含水組成物を送液し、連続的に混合する工程であることを特徴とする。
【0015】
<第一組成物>
第一組成物の油脂含量が70質量%以上100質量%以下であり、好ましくは75質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは82質量%以上100質量%以下であり、さらにより好ましくは86質量%以上100質量%以下であり、殊更好ましくは92質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは98質量%以上100質量%以下である。上記の範囲にあることで、製造された油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を強く感じることができる。なお、下述するその他成分が油脂を含有する場合は、その他成分中の油脂についても、上記の油脂含量に含めるものとする。
【0016】
第一組成物に用いることのできる油脂としては、食用の油脂であれば特に限定されず、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、微細藻類油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、カカオ脂、シア脂、オーツ麦油等の植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられ、これらの内から1種又は2種以上を選択することができる。
【0017】
第一組成物に含まれる前記油脂の10℃における固体脂含量は、10%以上70%以下であることが好ましく、20%以上50%以下であることが好ましい。
第一組成物に含まれる前記油脂の20℃における固体脂含量は、5%以上40上%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることが好ましい。
第一組成物に含まれる前記油脂の30℃における固体脂含量は、3%以上25%以下であることが好ましく、5%以上20%以下であることが好ましい。
第一組成物に含まれる前記油脂の35℃における固体脂含量は、0%以上15%以下であることが好ましく、1%以上10%以下であることが好ましい。
ここで、油脂の固体脂含量は、AOCS Official Method Cd16b-93のMethod Iに則り測定した値である。
【0018】
第一組成物の水分含量が0質量%以上20質量%以下であり、好ましくは0質量%以上18質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上14質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以上2質量%以下である。上記の範囲にあることで、製造された油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を強く感じることができる。なお、下述するその他成分が水分を含有する場合は、その他成分中の水分についても、上記の水分含量に含めるものとする。
【0019】
第一組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、糖類、乳化剤、澱粉類、デキストリン、食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・脱脂濃縮乳、蛋白質濃縮ホエイ等の乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン・パームカロテン・カラメル等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、オートミルク・豆乳・ライスミルク・アーモンドミルク等の植物性ミルク、香料、調味料、pH調整剤、果汁、コーヒー、カカオマス、ココアパウダー等が挙げられる。
【0020】
<第二含水組成物>
第二含水組成物は、水分を含有する組成物である。第二含水組成物の油脂含量は0質量%以上20質量%未満であり、好ましくは0質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上7質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以上5質量%以下であり、さらにより好ましくは0質量%以上4質量%以下である。上記の範囲にあることで、製造された油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を強く感じることができる。
【0021】
第二含水組成物が油脂を含む場合、上述した第一組成物に用いることのできる前記油脂を用いることができる。第二含水組成物が含む油脂は第一組成物が含む油脂と同じでもよく、違っていてもよい。
【0022】
第二含水組成物の水分含量が40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、45質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上98質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上98質量%以上がさらにより好ましい。
【0023】
第二含水組成物は、上述した第一組成物が含有することができるその他の成分を含有することができる。これらのうち、製造された油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を強く感じることができる観点から、バターミルク・バターミルクパウダー・脱脂乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエイなどの乳脂肪を実質的に含まない乳製品および植物ミルクから選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましく、脱脂粉乳およびオートミルクから選ばれる1種または2種以上を含むことがより好ましい。
【0024】
<油中水型可塑性油脂組成物>
油中水型可塑性油脂組成物は、前記第一組成物を前記急冷捏化装置に送液し急冷する工程と、前記第二含水組成物を急冷された前記第一組成物と混合する工程とを含み、混合する前記工程が、前記急冷捏化装置中に前記第二含水組成物を送液し、連続的に混合する工程を経て製造される。ここで、急冷とは第一組成物の予備融解液を少なくとも一つのAユニットを通過させた状態を意味しており、好ましくは冷媒温度が5℃以下のAユニットを通過させた状態である。
【0025】
前記急冷捏化装置は、一般的にマーガリンやファットスプレッド、ショートニングの製造に使用されるものを適用できる。そのような急冷捏化装置としては、パーフェクター、コンビネーター、ボテーター、ネクサスなどが挙げられる。
【0026】
前記急冷捏化装置に送液する第一組成物の予備融解液の温度は、50℃以上であることが好ましく、55℃以上であることがより好ましく、58℃以上であることがさらに好ましい。
【0027】
前記第一組成物の予備融解液は、プランジャーポンプなどの高圧ポンプによって前記急冷捏化装置に送液する。送液後の前記第一組成物はAユニットを通過することで急冷され、第一組成物中の油脂が一部固体脂となる。
【0028】
混合する前記工程において、前記第一組成物100質量部に対して、前記第二含水組成物の混合する量が、0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、1質量部以上28質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以上26質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲にあると製造された油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を強く感じることができる。
【0029】
混合する前記工程は、少なくとも1つ以上のAユニットを通過した第一組成物に対して行われるが、少なくとも2つ以上のAユニットを通過した第一組成物に対して行われることが好ましい。混合する前記工程が、2つ以上のAユニットを通過した第一組成物に対して行われる場合、Aユニットを連続して通過させてもよいし、連続するAユニットの間に、Bユニットなどの別のユニットを設置して通過させてもよい。また、混合する前記工程はAユニットを通過させた後に、Bユニットなどの別のユニットを通過させた第一組成物に対して行ってもよい。
【0030】
混合する前記工程において、急冷された前記第一組成物の油相の固体脂含量(SFC1とも記載)が、前記第一組成物に含まれる油脂のAOCS Official Method Cd16b-93のMethod Iに則った10℃における固体脂含量(SFC10とも記載)に対する割合(SFC1/SFC10とも記載)が20%以上100%以下であることが好ましく、22%以上90%以下であることがより好ましく、30%以上80%以下であることがさらに好ましく、40%以上70%以下であることがさらにより好ましい。上記範囲にあると製造された油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を強く感じることができる。ここで、急冷された前記第一組成物の油相の固体脂含量は後述する実施例に記載の方法で測定された値である。
【0031】
混合する前記工程時の前記第一組成物の温度(T1)と急冷捏化装置からの充填時の油中水型可塑性油脂組成物の温度(T2)との差(T2-T1)が、-10K以上5K以下であることが好ましく、-8K以上3K以下であることがより好ましく、-7K以上2K以下であることがさらに好ましく、-6K以上1K以下であることがさらにより好ましい。上記範囲にあると製造された油中水型可塑性油脂組成物のバターらしい後味を強く感じることができる。なお、Kはケルビンを意味する。
【0032】
混合する前記工程時の前記第一組成物の温度(T1)は、5℃以上25℃以下が好ましく、10℃以上23℃以下がより好ましく、10℃以上17℃以下がさらに好ましい。
【0033】
急冷捏化装置からの充填時の油中水型可塑性油脂組成物の温度(T2)は、5℃以上25℃以下が好ましく、10℃以上23℃以下がより好ましく、12℃以上20℃以下がさらに好ましい。
本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物は、バターや無水乳脂などの乳脂肪を含まなくても、バターらしい後味を強く感じることができるため、乳脂肪を含まない場合に好適に用いることができる。
【0034】
本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物の油脂含量は、好ましくは50質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは75質量%以上90質量%以下である。
本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物の水分含量は、好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上25質量%以下である。
【0035】
本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物は、前記第一組成物を前記急冷捏化装置に送液し急冷する工程と、前記第二含水組成物を急冷された前記第一組成物と混合する工程とを含むことを除き、従来の製造方法と同じように、要求特性に応じて、加温や冷却、混練等を行い、製造ライン出口において状態を適宜調整できる。具体的には、要求特性に応じた、製造ライン出口における適正な状態が得られるように加温や冷却をすることができ、また同時に混練を行うことができる。例えば、練り込み用の油中水型可塑性油脂組成物の製造時に、容器へ流し込み易くするために、Bユニットにより軟化させる場合や、ロールイン用の油中水型可塑性油脂組成物の製造時に、ロールイン適性をもたせるために、冷却する場合等が挙げられる。これらの物性の調整は、AユニットやBユニット、レスティングチューブ、ホールディングチューブ等により、必要に応じて実施される。
【0036】
本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物は、そのままもしくはパンなどに載せて未加熱で食することもできるが、ベーカリー及び加熱調理からなる群の1種または2種の用途に使用してもバターらしい後味を強く感じられることができるため、好ましい。ここで、バターらしい後味とは、バターもしくはバターを使用した食品を食べた時に感じられるような、飲み込む直前にジワっと広がる濃厚な味を意味する。
【0037】
本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物をベーカリー用途に使用する場合、使用方法は特に限定されず、油中水型可塑性油脂組成物を練り込み用、折り込み用として使用したベーカリー食品用生地を焼く、揚げるなどの加熱処理を行うことによりベーカリー食品を得ることができる。本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物を使用したベーカリー食品としては、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、カットパン、ウェハース、サブレ、ラングドシャ、マカロン等の焼き菓子;パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ等のバターケーキ類;ショートケーキ、ロールケーキ、トルテ、デコレーションケーキ、シフォンケーキ等のスポンジケーキ類;シュー菓子、発酵菓子、パイ、ワッフル等の洋生菓子;菓子パン、フランスパン、シュトーレン、パネトーネ、ブリオッシュ、ドーナツ、デニッシュ、クロワッサン等のパンが挙げられる。
【0038】
本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物をベーカリー用途に使用する場合、バターらしい後味を付与できる範囲であれば、特に制限されないが、目安として、前記ベーカリー食品用生地中の油中水型可塑性油脂組成物の含量は、5質量%以上50質量%以下である。
【0039】
本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物を加熱調理用途に使用する場合、食材に熱を加えて調理する方法、例えば、焼く、煮る、炒める、揚げる、蒸すなどの調理方法により調理される加熱調理食品に配合する油脂組成物として好適に用いることができる。本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物を加熱調理食品に配合することで、加熱によりバターらしい後味をより強く感じられ、本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物の特徴をより発揮することができる。このような加熱調理食品としては、バターらしい後味が求められるものであれば特に制限されない。加熱調理食品に配合する油中水型可塑性油脂組成物の配合量は、加熱調理食品にバターらしい後味を付与できる範囲であれば、特に制限されない。目安としては、例えば、加熱調理食品全体に対して、1質量%以上50質量%以下である。
【0040】
また、本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物は、加熱調理用の熱媒体として好適に用いることができる。例えば、食材を、焼く、炒める、揚げるなどの調理方法により加熱調理する際に食材に対して用いられる加熱調理用の油中水型可塑性油脂組成物として好適に用いることができ、特に「炒め」調理に好適に用いることができる。例えば、卵料理、肉料理、魚料理、野菜料理などの料理において、食材の加熱調理用の油中水型可塑性油脂組成物として使用することができる。本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物を用いて加熱調理することにより、加熱調理して得られる食品にバターらしい後味を付与することができる。本実施形態の油中水型可塑性油脂組成物を加熱調理用の熱媒体として用いる場合の使用量は、加熱調理して得られる食品にバターらしい後味を付与することができる範囲であれば、特に制限されない。なお、本発明は、前記加熱調理用の油中水型可塑性油脂組成物で加熱調理することを含む食品の製造方法をも包含するものである。本方法において、加熱調理温度は、加熱調理して得られる食品のバターらしい後味を損なわない温度であることが好ましく、食材や料理によって適宜選択すればよいが、通常120℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以上190℃以下、さらに好ましくは150℃以上180℃以下である。加熱調理時間は、食材や料理によって適宜選択すればよい。
【実施例0041】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0042】
(1)原料
油中水型可塑性油脂組成物の調製に際し、以下のものを使用した。
【0043】
(1-1)原料油脂
菜種油:AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製
大豆油:AJINOMOTO大豆のサラダオイル、株式会社J-オイルミルズ製
パーム油:社内調製の精製パーム油
パーム核油:社内調製の精製パーム核油
パームステアリン:ヨウ素価32、社内調製の精製パームステアリン
パームオレイン:ヨウ素価56、社内調製の精製パームオレイン
エステル交換油脂1:下記の「エステル交換油脂1の製造方法」で得られた油脂
エステル交換油脂2:下記の「エステル交換油脂2の製造方法」で得られた油脂
エステル交換油脂3:下記の「エステル交換油脂3の製造方法」で得られた油脂
【0044】
(1-1-1)エステル交換油脂1の製造方法
パーム油を30質量部及びパーム核油を70質量部混合した混合油に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、水素添加をおこなった。水素添加後、活性白土を用いて脱色し、更に脱臭をおこなってエステル交換油脂1を得た。
【0045】
(1-1-2)エステル交換油脂2の製造方法
パームステアリンを75質量部、パーム油を10質量部及び大豆油を15質量部混合した混合油に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、更に脱臭をおこなってエステル交換油脂2を得た。
【0046】
(1-1-3)エステル交換油脂3の製造方法
パームオレイン100質量部に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、更に脱臭をおこなってエステル交換油脂3を得た。
【0047】
(1-2)乳化剤
レシチン:レシチンFA、株式会社J-オイルミルズ製
グリセリン脂肪酸エステル:エマルジーHRO、理研ビタミン株式会社製
【0048】
(1-3)その他原料
脱脂粉乳:スキムミルク、森永乳業株式会社製
オートミルク:濃縮オートミルクT(水分含量59.1質量%)、株式会社コーセーフーズ製
香料:市販のバターフレーバー
【0049】
(2)配合油脂
油中水型可塑性油脂組成物に用いた配合油脂の配合を表1に、配合油脂の固体脂含量を表2に示した。
【0050】
【0051】
【0052】
(測定方法)
分析項目の測定方法を下記の通りとした。
【0053】
ヨウ素価は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」により測定した。
【0054】
配合油脂の固体脂含量は、AOCS Official Method Cd 16b-93に記載のMETHOD Iにより測定した。
【0055】
油中水型可塑性油脂組成物の製造中に抜き出した試料の油相中の固体脂含量は、下記のように測定した。
1.抜き出した試料を内径8mm、壁厚1mmの平底ガラス試験管に底面から2cmまで詰めた。
2.試料を抜き出してから2分後に、AOCS Official Method Cd 16b-93に記載のMETHOD Iに記載の測定条件に設定したNMR測定装置(minispec mq20、ブルカージャパン株式会社製)に1の試験管を入れて測定した。
3.NMR測定装置の測定値を、抜き出した試料中の油相含量で割ることにより、試料の油相中の固体脂含量を測定した。
【0056】
(3)油中水型可塑性油脂組成物の製造
油中水型可塑性油脂組成物の製造には急冷捏化装置としてPILOT PERFECTOR TYPE57(GERSTENBERG & AGGER A/S社製、以後パーフェクターとも記載)を使用した。本明細書において、パーフェクターの各ユニットは、表面掻き取り式熱交換器をA、中間結晶管をic、ピンローターをB、レスティングチューブをRTとも記載する。油中水型可塑性油脂組成物の製造において、複数の同じユニットを使用する場合は、高圧ポンプに近い側からユニット名1、ユニット名2・・・のように記載する。例えばAユニットの場合は、高圧ポンプに近い側からA1、A2・・・のように記載する。
【0057】
(比較例1)
表3-1の配合にしたがい、油相の原料を60℃に加温し、油相を準備した。表3-1の水相の配合にしたがい、水に脱脂粉乳を溶解後、60℃30分の条件で加熱殺菌し、水相を準備した。次に、前記油相に前記水相を添加し、プロペラ撹拌機で撹拌して混合乳化した乳化液を準備した。パーフェクターは、A1、ic1、ic2、A2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、表3-2に記載の条件により前記乳化液を急冷捏和し、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0058】
【0059】
(実施例1)
表4-1の配合にしたがい、油相の原料を60℃に加温し、第一組成物を準備した。表4-1の水相の配合にしたがい、水に脱脂粉乳を溶解後、60℃30分の条件で加熱殺菌し、第二含水組成物を準備した。次に、パーフェクターは、A1、ic1、ic2、A2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、ic1とic2の間(ic1出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けた。パーフェクターによって表4-2に記載の条件により、第一組成物を急冷捏和し、20℃の第二含水組成物をモーノポンプにより送液することで急冷された第一組成物と混合し、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
各実施例において、第一組成物と第二含水組成物との混合時の第一組成物の温度および固体脂含量、充填時の油中水型可塑性油脂組成物の温度を測定し、各表に記載した。なお、比較例1の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例1の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0060】
【0061】
(比較例2-1)
表3-1の配合に代えて表5-1の比較例2の配合にしたがったことおよび、表3-2に記載の条件に代えて表5-2に記載の条件により急冷捏和したことを除き、比較例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0062】
【0063】
(比較例2-2)
表3-1の配合に代えて表5-1の比較例2の配合にしたがったこと、表3-2に記載の条件に代えて表5-3に記載の条件により急冷捏和したことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べたことを除き、比較例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0064】
(比較例2-3)
表3-1の配合に代えて表5-1の比較例2の配合にしたがったこと、表3-2に記載の条件に代えて表5-3に記載の条件により急冷捏和したことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べたことを除き、比較例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0065】
(実施例2-1)
表4-1の配合に代えて表6-1の配合にしたがったこと、表4-2に代えて表6-2に記載の条件にしたことを除き、実施例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例2の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例2-1の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0066】
【0067】
(実施例2-2)
表4-1の配合に代えて表6-1の配合にしたがったこと、表4-2に代えて表6-2に記載の条件にしたことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、ic2とA3の間(ic2出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けたことを除き、実施例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例2の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例2-2の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0068】
(実施例2-3)
表4-1の配合に代えて表6-1の配合にしたがったこと、表4-2に代えて表6-2に記載の条件にしたことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、ic3とBの間(ic3出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けたことを除き、実施例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例2の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例2-3の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0069】
(比較例3)
表3-1の配合に代えて表7-1の配合にしたがったこと、表3-2に記載の条件に代えて表7-2に記載の条件により急冷捏和したことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べたことを除き、比較例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0070】
【0071】
(実施例3)
表4-1の配合に代えて表8-1の配合にしたがったこと、表4-2に代えて表8-2に記載の条件にしたことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、ic2とA3の間(ic2出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けたことを除き、実施例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例3の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例3の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0072】
【0073】
(比較例4)
表3-1の配合に代えて表9-1の配合にしたがったこと、表3-2に記載の条件に代えて表9-2に記載の条件により急冷捏和したことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べたことを除き、比較例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0074】
【0075】
(実施例4-1~4-3)
表4-1の配合に代えて表10-1の配合にしたがい、第一組成物の油相原料を60℃に加温して準備した油相に、第一組成物の水相原料である、水に脱脂粉乳を溶解後、60℃30分の条件で加熱殺菌した水相を混合し第一組成物を準備し、さらに第二含水組成物を準備したこと、表4-2に代えて表10-2に記載の条件にしたことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、ic2とA3の間(ic2出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けたことを除き、実施例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例4の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例4-1~4-3の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0076】
【0077】
(実施例4-4)
表4-1の配合に代えて表10-1の配合にしたがったこと、表4-2に代えて表10-2に記載の条件にしたことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、ic2とA3の間(ic2出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けたことを除き、実施例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例4の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例4-4の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0078】
(比較例5)
表3-1の配合に代えて表11-1の配合にしたがったこと、脱脂粉乳に代えてオートミルクを使用したこと、表3-2に記載の条件に代えて表11-2に記載の条件により急冷捏和したことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べたことを除き、比較例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0079】
【0080】
(実施例5)
表4-1の配合に代えて表12-1の配合にしたがったこと、第一組成物の水相に水を用いたこと、第二含水組成物としてオートミルクを使用したこと、表4-2に代えて表12-2に記載の条件にしたことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、ic2とA3の間(ic2出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けたことを除き、実施例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例5の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例5の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0081】
【0082】
(比較例6)
表3-1の配合に代えて表13-1の配合にしたがったこと、表3-2に記載の条件に代えて表13-2に記載の条件により急冷捏和したことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べたことを除き、比較例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0083】
【0084】
(実施例6)
表4-1の配合に代えて表14-1の配合にしたがったこと、表4-2に代えて表14-2に記載の条件にしたことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、ic2とA3の間(ic2出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けたことを除き、実施例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例6の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例6の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0085】
【0086】
(比較例7)
表3-1の配合に代えて表15-1の配合にしたがったこと、表3-2に記載の条件に代えて表15-2に記載の条件により急冷捏和したことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べたことを除き、比較例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0087】
【0088】
(実施例7)
表4-1の配合に代えて表16-1の配合にしたがったこと、表4-2に代えて表16-2に記載の条件にしたことおよび、A1、ic1、A2、ic2、A3、ic3、B(容量3L)の順にユニットを並べ、ic2とA3の間(ic2出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けたことを除き、実施例1と同じ方法で、油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例7の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例7の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0089】
【0090】
(比較例8)
表17-1の配合にしたがい、油相の原料を60℃に加温し、油相を準備した。表3の水相の配合にしたがい、水に脱脂粉乳を溶解後、60℃30分の条件で加熱殺菌し、水相を準備した。次に、前記油相に前記水相を添加し、プロペラ撹拌機で撹拌して混合乳化した乳化液を準備した。パーフェクターは、A1、A2、A3、RT(容量3L)の順にユニットを並べ、表17-2に記載の条件により前記乳化液を急冷捏和し、厚み10mm、横210mm、縦240mmのシート状になるように油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。
【0091】
【0092】
(実施例8)
表18-1の配合にしたがい、油相の原料を60℃に加温し、油相を準備した。表18の水相の配合にしたがい、水に脱脂粉乳を溶解後、60℃30分の条件で加熱殺菌し、第二含水組成物を準備した。次にパーフェクターは、A1、A2、A3、RT(容量3L)の順にユニットを並べ、A2とA3の間(A2出口)に第一組成物の抜き出し口および、第二含水組成物の挿入口を取り付けた。パーフェクターによって表18-2に記載の条件により、第一組成物を急冷捏和し、20℃の第二含水組成物をモーノポンプにより送液することで急冷された第一組成物と混合し、厚み10mm、横210mm、縦240mmのシート状になるように油中水型可塑性油脂組成物を充填して得た。得られた油中水型可塑性油脂組成物は5℃の恒温槽に保管した。なお、比較例8の油中水型可塑性油脂組成物の配合と実施例8の油中水型可塑性油脂組成物の配合は同じである。
【0093】
【0094】
(4)油中水型可塑性油脂組成物の評価
得られた油中水型可塑性油脂組成物を用いて、そのまま食す生食、もしくは後述する作製方法にて得たクッキー、スクランブルエッグ、デニッシュを下記評価基準に照らし、それぞれ食して専門パネラー3名の合議により評価した。なお、各評価において、油中水型可塑性油脂組成物に代えてバター(無塩バター、雪印メグミルク株式会社製)もしくはバターを使用して製造したクッキー、スクランブルエッグ、デニッシュを基準とした。評価結果を表21-1~21-3、表22に示す。
【0095】
(評価基準)バターらしい後味の強さ
5:バターと同等の後味を感じる(基準)。
4:バターほどではないがバターらしい後味を感じる
3:バターらしい後味をやや感じる
2:バターらしい後味をわずかに感じる
1:バターらしい後味を感じない
【0096】
(4-1)クッキーの作製
油中水型可塑性油脂組成物を用い、次の手順でクッキーを作製した。表19に示す配合にて、ビータを取り付けたホバートミキサーに油中水型可塑性油脂組成物を入れ、低速3分、中速1分ミキシングし、上白糖と塩を加え中速で1分ミキシングし、水を加え中速1分ミキシングし、強力粉を加え更に低速で30秒ミキシングして、生地を得た。得られた生地は直径4cmの円柱状に成形し、5℃に設定した恒温槽に1時間入れた。恒温槽から出した生地を1cm厚になるように包丁で切り、鉄板に並べた。上部180℃、下部180℃に設定したオーブンに鉄板に並べた生地を入れ19分焼成し、クッキーを作製した。
【0097】
【0098】
(4-2)スクランブルエッグの作製
油中水型可塑性油脂組成物を用い、次の手順でスクランブルエッグを作製した。フライパンをIHヒーター(KZ-PH33、パナソニック株式会社製)に載せ、中火で加熱し、160℃まで加熱した。加熱したフライパンに油中水型可塑性油脂組成物を15g入れて15秒加熱した後、卵液95gをさらに加えた。卵液を加えてから菜箸で5秒かき混ぜてスクランブルエッグを作製した。
【0099】
(4-3)デニッシュの作製
油中水型可塑性油脂組成物を用い、次の手順でデニッシュを作製した。表20に示す配合にて、フックを取り付けた縦型ミキサー(カントーミキサーHMS型30、関東混合機工業株式会社)に油中水型可塑性油脂組成物とショートニングを除いた原料をミキサーにて低速3分ミキシングした後、ショートニングを混合し、更に中低速3分ミキシングし、捏ね上げ温度を23℃で生地を得た。
得られた生地を25℃で20分発酵させた後、-5℃で16時間冷却した。5℃に調温した油中水型可塑性油脂組成物を冷却後の生地で包み、リバースシーターを用いて10mm厚になるまでは5mmごとに段階的に伸展し、その後は1mmごとに段階的に伸展し、最後は3mm厚に伸展した。続けて生地を3つ折りした後、リバースシーターを用い、1mmごとに段階的に伸展し、生地を3mm厚に伸展した。伸展した生地を3つ折りし、-5℃に設定した恒温槽に入れた。恒温槽に入れてから60分後に生地を取り出し、リバースシーターを用い、1mmごとに段階的に伸展し、生地を3mm厚に伸展した。続けて生地を3つ折りし、-5℃に設定した恒温槽に入れた。恒温槽に入れてから60分後に生地を取り出し、リバースシーターを用い、1mmごとに段階的に伸展し、生地を3mm厚に伸展した。進展した生地を縦11cm、横11cmの正方形に成型し、36℃、相対湿度75%のホイロで60分最終発酵した後、上部200℃、下部190℃に設定したオーブンで14分間焼成し、デニッシュを得た。
【0100】
【0101】
【0102】
実施例1の油中水型可塑性油脂組成物を用いて評価した場合、比較例1の油中水型可塑性油脂組成物よりも、生食、クッキー、スクランブルエッグのいずれにおいてもバターらしい後味の強さが感じられた。このことから急冷された第一組成物に第二含水組成物を混合する工程を経た場合、バターらしい後味の強さが強くなることが明らかとなった。
【0103】
実施例2-1~2-3の油中水型可塑性油脂組成物を用いて評価した場合、比較例2-1~2-3の油中水型可塑性油脂組成物よりも、生食、クッキー、スクランブルエッグのいずれにおいてもバターらしい後味の強さが感じられた。特に急冷された第一組成物に第二含水組成物を混合する工程をic2出口(実施例2-2)もしくはic3出口(実施例2-3)で行った場合、バターらしい後味がより強く感じられた。
【0104】
実施例3の油中水型可塑性油脂組成物を用いて評価した場合、比較例3の油中水型可塑性油脂組成物よりも、生食、クッキー、スクランブルエッグのいずれにおいてもバターらしい後味の強さが感じられた。このことから油中水型可塑性油脂組成物中の水分が10質量%の場合においても急冷された第一組成物に第二含水組成物を混合する工程を経た場合、バターらしい後味の強さが強くなることが明らかとなった。
【0105】
実施例4-1~4-4の油中水型可塑性油脂組成物を用いて評価した場合、比較例4の油中水型可塑性油脂組成物よりも、生食、クッキー、スクランブルエッグのいずれにおいてもバターらしい後味の強さが感じられた。このことから第一組成物中の水分が18.38質量%以下含まれていた場合においても、急冷された第一組成物に第二含水組成物を混合する工程を経た場合、バターらしい後味の強さが強くなることが明らかとなった。特に第一組成物中の水分が9.12質量%(実施例4-3)もしくは含まれていない場合(実施例4-4)、バターらしい後味がより強く感じられた。
【0106】
実施例5の油中水型可塑性油脂組成物を用いて評価した場合、比較例5の油中水型可塑性油脂組成物よりも、生食、クッキー、スクランブルエッグのいずれにおいてもバターらしい後味の強さが感じられ、特にクッキーとスクランブルエッグにおいてバターらしい後味が強く感じられた。このことから第一組成物に配合油脂2を用い、且つ第二含水組成物にオートミルクを用いた場合においても、急冷された第一組成物に第二含水組成物を混合する工程を経た場合、バターらしい後味の強さが強くなることが明らかとなった。
【0107】
実施例6の油中水型可塑性油脂組成物を用いて評価した場合、比較例6の油中水型可塑性油脂組成物よりも、クッキー、スクランブルエッグのいずれにおいてもバターらしい後味の強さが感じられた。このことから第一組成物に配合油脂3を用いた場合においても、急冷された第一組成物に第二含水組成物を混合する工程を経た場合、バターらしい後味の強さが強くなることが明らかとなった。
【0108】
実施例7の油中水型可塑性油脂組成物を用いて評価した場合、比較例7の油中水型可塑性油脂組成物よりも、生食、クッキー、スクランブルエッグのいずれにおいてもバターらしい後味の強さが感じられた。このことから第一組成物に配合油脂4を用いた場合においても、急冷された第一組成物に第二含水組成物を混合する工程を経た場合、バターらしい後味の強さが強くなることが明らかとなった。
【0109】
【0110】
実施例8の油中水型可塑性油脂組成物を用いて製造したデニッシュにて評価した場合、比較例8の油中水型可塑性油脂組成物を用いて製造したデニッシュよりもバターらしい後味の強さが感じられた。このことから急冷された第一組成物に第二含水組成物を混合する工程を経て製造された油中水型可塑性油脂組成物を用いて製造したデニッシュは、バターらしい後味の強さが強くなることが明らかとなった。