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特開2024-68551歯車機構、張力制御装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068551
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】歯車機構、張力制御装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/36 20060101AFI20240513BHJP
   B65H 23/182 20060101ALI20240513BHJP
   B65H 23/195 20060101ALI20240513BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20240513BHJP
   B41J 15/16 20060101ALI20240513BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
F16H1/36
B65H23/182
B65H23/195
B41J15/04
B41J15/16
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179086
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】本多 領
【テーマコード(参考)】
2C056
2C060
3F105
3J027
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EB11
2C056EB35
2C056EB36
2C056FA10
2C056HA27
2C056HA28
2C056HA29
2C060BA01
2C060CA13
2C060CB03
2C060CB15
3F105AA01
3F105AB03
3F105BA02
3F105CA02
3F105CA06
3J027FA19
3J027FA36
3J027FB25
3J027GB03
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE12
(57)【要約】
【課題】小型であり、簡易な構成で、ロールメディアの駆動トルクを切り替える歯車機構を提供する。
【解決手段】入力軸に固定された太陽歯車、太陽歯車のピッチ円に接するように配置された少なくとも一つ以上の遊星歯車、遊星歯車のピッチ円に接するように配置された内歯車、遊星歯車を回転自由に保持するキャリア、キャリアに固定された第一歯車、出力軸に固定された第二歯車、第一歯車と第一歯車とを入力側を駆動連結し、第二歯車と出力側とを駆動連結した双方向クラッチ、キャリアと出力軸を連結する第一トルクリミッタ、双方向クラッチの出力側と出力軸を連結する第二トルクリミッタと、を有する歯車機構による。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と出力軸を有する歯車機構であって、
入力軸に固定された太陽歯車と、
前記太陽歯車のピッチ円に接するように配置された少なくとも一つ以上の遊星歯車と、
前記遊星歯車のピッチ円に接するように配置された内歯車と、
前記遊星歯車を回転自由に保持するキャリアと、
前記キャリアに固定された第一歯車と、
前記出力軸に固定された第二歯車と、
前記第一歯車と前記第一歯車とを入力側を駆動連結し、前記第二歯車と出力側とを駆動連結した双方向クラッチと、
前記キャリアと前記出力軸を連結する第一トルクリミッタと、
前記双方向クラッチの出力側と前記出力軸を連結する第二トルクリミッタと、
を有することを特徴とする歯車機構。
【請求項2】
前記双方向クラッチの許容伝達トルクは、前記第一トルクリミッタの第一スリップトルクT1及び前記第二トルクリミッタの第二スリップトルクT1のいずれよりも大きく、
前記双方向クラッチの空転トルクは、前記第一トルクリミッタの第一スリップトルクT1及び前記第二トルクリミッタの第二スリップトルクT1のいずれよりも小さい、
請求項1に記載の歯車機構。
【請求項3】
回転軸に取り付けられたロール状媒体を回転させて、当該ロール状媒体から送り出された、又は、巻き取られるシート状の媒体に付与する張力を制御する張力制御装置であって、
出力軸を回転駆動させる駆動源と、
前記回転軸に前記駆動源からのトルクを伝達する入力軸と、
前記出力軸と入力軸の間に介在し、前記駆動源からのトルクを切り替えるトルク切替機構と、を備え、
当該トルク切替機構は、請求項1又は2に記載の歯車機構を含む、
ことを特徴とする張力制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の張力制御装置により張力を付与されたシート状の媒体を搬送する搬送機構と、
当該媒体に液体を吐出する液体吐出機構と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車機構、張力制御装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連帳のシート状媒体(以下、「媒体」と表記する。)をロール状に巻いたロールメディアから送り出した媒体に画像を形成し、画像が形成された媒体をロールメディアに巻き取るように構成された画像形成装置が知られている。当該画像形成装置がロールメディアから送り出した媒体を所定の方向に搬送するときに、当該媒体に所定の張力(テンション)を付与する必要がある。そこで、画像形成装置が備える搬送装置において、搬送される媒体に張力を適切に付与するための張力制御装置も知られている。
【0003】
張力制御装置における張力の制御は、ロールメディアからの媒体の送り出しや巻き取りができるように保持するロールメディア保持機構において、ロールメディアを回転させるときのトルクを制御することで行うことがある。
【0004】
媒体に張力を付与するためのトルクの制御機構として、摩擦による駆動伝達を用いて減速比を変化させる構成(特許文献1を参照)や、複数のモータの回転数を制御し減速比を可変させてロールメディアの回転軸へ伝達するトルクを可変する構成(特許文献2を参照)が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成のように、摩擦によって駆動トルクを可変させる場合、大きな摩擦力を生じさせる必要がある。その場合、小型の駆動機構では十分な摩擦力を得られない。そこで、摩擦によって駆動トルクを可変させる場合は、駆動機構が大型になる。また、特許文献2に記載の構成のように、複数のモータの回転数を制御する場合、駆動源(モータ)の制御構成が複雑になる。
【0006】
したがって、従来技術によれば、ロールメディアへの張力の付与を制御するために駆動トルクを可変する場合、制御機構の機械的な構成が大型になり、電気的な構成は複雑になる、という課題がある。
【0007】
本発明は、小型であり、簡易な構成で、ロールメディアの駆動トルクを切り替えることができる歯車機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、入力軸と出力軸を有する歯車機構であって、入力軸に固定された太陽歯車と、前記太陽歯車のピッチ円に接するように配置された少なくとも一つ以上の遊星歯車と、前記遊星歯車のピッチ円に接するように配置された内歯車と、前記遊星歯車を回転自由に保持するキャリアと、前記キャリアに固定された第一歯車と、前記出力軸に固定された第二歯車と、前記第一歯車と前記第一歯車とを入力側を駆動連結し、前記第二歯車と出力側とを駆動連結した双方向クラッチと、前記キャリアと前記出力軸を連結する第一トルクリミッタと、前記双方向クラッチの出力側と前記出力軸を連結する第二トルクリミッタと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型であり、簡易な構成で、ロールメディアの駆動トルクを切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態の概略構成の一部透視斜視図。
図2】上記画像形成装置を側面方向から示す模式図。
図3】上記画像形成装置の一部透視平面図。
図4】上記画像形成装置が備えるロール体保持装置の側面説明図。
図5】本発明に係る張力制御装置の一実施形態を示す側面断面図。
図6】本発明に係る歯車機構の一実施形態を示す側面断面図。
図7】上記歯車機構において入力軸側からのトルク伝達の様子を示す図。
図8】上記歯車機構において出力軸側からのトルク伝達の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態について説明する。まず、本発明に係る被搬送物搬送装置を備える液体吐出装置及び画像形成装置の実施形態であるインクジェットプリンタ100について、図1から図3を用いて説明する。図1は、インクジェットプリンタ100の外観を例示する斜視図である。図2は、インクジェットプリンタ100の側面を示す模式図である。図3は、インクジェットプリンタ100が備える液体吐出装置としての画像形成部104の要部を示す平面図である。
【0012】
図1に示すように、インクジェットプリンタ100はシリアル型画像形成装置であり、装置本体101と、装置本体101の下側に配置した給紙装置102と、給紙装置102とは対向する位置に配置される巻取装置103と、を備える。
【0013】
図1に示すインクジェットプリンタ100において、給紙装置102は、装置本体101と別体である。そして給紙装置102の装置本体101に対する配置は、図1に示すように、装置本体101の下側でもよいし、横側でもよい。なお、装置本体101と給紙装置が図2に示すように、一体に構成されてもよい。巻取装置103は、給紙装置102と同様であって、装置本体101に供給された後の媒体を巻き取ることができるように配置されればよい。したがって、図1図2に示すように、給紙装置102と巻取装置103は、装置本体101を挟んで対向する位置にあればよい。
【0014】
なお、給紙装置102及び巻取装置103のいずれも、本発明に係る被搬送物搬送装置の実施形態に相当する。したがって、給紙装置102及び巻取装置103のいずれも、本発明に係る張力制御装置を含む。
【0015】
図2に示す装置本体101には、内部に、媒体を芯部材の外周に巻き付けたロール紙112を給紙する媒体供給装置としての給紙装置102と、ロール紙112を巻き取る媒体巻取装置としての巻取装置103と、ロール紙112に画像を形成する画像形成部104とが配置されている。
【0016】
画像形成部104は、両側板に掛け渡されたガイド部材であるガイドロッド1及びガイドステー2に支持されたキャリッジ5が図3における矢印A方向(主走査方向、キャリッジ移動方向)に移動可能に構成されている。
【0017】
画像形成部104は、図3に示すように、主走査方向の一方側にはキャリッジ5を往復移動させる駆動源である主走査モータ8が配置されている。この主走査モータ8によって回転駆動される駆動プーリ9と主走査方向の他方側に配置された従動プーリ10との間にタイミングベルト11が掛け回されている。このタイミングベルト11にキャリッジ5のベルト保持部が固定され、主走査モータ8を駆動することによってキャリッジ5を主走査方向に往復移動させる。
【0018】
キャリッジ5には、媒体に液体を吐出して画像を形成されるための液体吐出機構としての液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに液体を供給するヘッドタンクとを一体にした複数の記録ヘッド6a~6dを搭載している。以下の記載において、複数の記録ヘッド6a~6dの個々の区別をしないときは、単に「記録ヘッド6」と記載する。
【0019】
ここで、記録ヘッド6aと記録ヘッド6b~6dは主走査方向と直交する方向である副走査方向(矢印B方向)に1ヘッド分(1ノズル列分)位置をずらして配置されている。また、記録ヘッド6は、液滴を吐出する複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて搭載している。
【0020】
また、記録ヘッド6a~6dはいずれも2列のノズル列を有している。そして、記録ヘッド6a、6bからは、いずれのノズル列からも同色である黒色の液滴が吐出される。また、記録ヘッド6cからは、一方のノズル列からシアン(C)の液滴が吐出され、他方のノズル列は未使用ノズル列としている。さらに、記録ヘッド6dは、一方のノズル列からイエロー(Y)の液滴が吐出され、他方のノズル列からはマゼンタ(M)の液滴が吐出される。
【0021】
これにより、モノクロ画像については記録ヘッド6a、6bを使用して1回のスキャン動作(1回の主走査)で2ヘッド分の幅で画像を形成でき、カラー画像については例えば記録ヘッド6b~6dを使用して形成することができる。なお、ヘッド構成はこれに限るものではなく、複数の記録ヘッドを主走査方向に全て並べて配置するものでもよい。
【0022】
また、キャリッジ5の移動方向に沿ってエンコーダシート12が配置され、キャリッジ5にはエンコーダシート12を読取るエンコーダセンサ13が設けられている。これらのエンコーダシート12及びエンコーダセンサ13によってリニアエンコーダ14を構成し、リニアエンコーダ14の出力からキャリッジ5の位置及び速度を検出する。
【0023】
キャリッジ5の主走査領域のうち、記録領域では、給紙装置102からロール紙112が給送され、搬送手段15(図2参照)によってキャリッジ5の主走査方向と直交する方向(副走査方向、用紙搬送方向:図3における矢印B方向)に間欠的に搬送される。図1に示すように、記録ヘッド6のヘッドタンクには、装置本体101に交換可能に装着されるメインタンクであるインクカートリッジ60から供給チューブを介して各色のインクが供給される。また、キャリッジ5の主走査方向の一方側には、搬送ガイド部材18の側方に記録ヘッド6の維持回復を行う維持回復機構80が配置されている(図1参照)。
【0024】
また、図2に示すように、搬送手段15は、給紙装置102から給紙されるロール状媒体であるロール紙112を搬送する搬送ローラ16及び搬送ローラ16に対向配置した加圧ローラ17を有する。搬送ローラ16と加圧ローラ17が搬送部材に相当する。そして、搬送ローラ16の下流側に、複数の吸引穴が形成された搬送ガイド部材18と、搬送ガイド部材18の吸引穴から吸引を行う吸引手段としての吸引ファン19とを有する。
【0025】
この搬送手段15の下流側には、記録ヘッド6で画像が形成されたロール紙112を所定の長さで切断する切断手段としてのカッタが配置されている。
【0026】
給紙装置102に搭載されるロール紙112は、芯部材である紙管などの中空軸114に長尺のロール状媒体であるシート120(これが上記における「連長のシート状媒体としてのロールメディア」に相当する。)をロール状に巻き付けたものである。本実施形態では、ロール紙112として、ロール紙112の終端を糊付けなどの接着で中空軸114に固定したもの、又はロール紙112の終端を中空軸114に接着していない非固定のものも装着可能である。
【0027】
すでに示した図2に示すように、装置本体101側には、ガイド部材130と、排紙ガイド部材131が配置されている。ガイド部材130は、給紙装置102から引き出されるロール紙112をガイドする。排紙ガイド部材131は、ガイド部材130と搬送ガイド部材18の下流で吸引後のロール紙112をガイドする。
【0028】
巻取装置103は、芯部材である紙管などの中空軸115を有している。ロール紙112の先端が中空軸115にテープなどで接着させている。
【0029】
このように構成されたインクジェットプリンタ100において、画像形成処理を実行しているには、キャリッジ5を主走査方向に移動し、給紙装置102から給送されるロール紙112を、搬送手段15によって間欠的に送られる。そして、記録ヘッド6を画像情報(印字情報)に応じて駆動して液滴を吐出させることによって、ロール紙112上に所要の画像が形成される。この画像が形成されたロール紙112は、排紙ガイド部材131に案内されて、巻取装置103内の中空軸115に巻き取られる。搬送ローラ16上のロール紙112は給紙装置102側、巻取装置103側それぞれからテンションが加えられながら搬送される。そのそれぞれのテンションが搬送精度に影響を与える。
【0030】
[搬送装置の実施形態]
次に、本発明に係る搬送装置の実施形態としてのロール体保持装置20について説明する。図4は、ロール体保持装置20の全体像を例示する側面図である。なお、ロール体保持装置20は、図1に例示したように、ロール紙112の両方の側端部分を保持するように構成されているものである。したがって、一対として対向配置されることでロール体保持装置20が構成される。
【0031】
ロール体保持装置20は、駆動力を付与する駆動源を備えるものと、従動するものによるが、一対で構成されている。以下の説明では、ロール体保持装置20の一方のみを示しながら、その構造及び動作を説明する。同様の構成のものがロール紙112の両方の側端部分を保持する位置に配置されることで、ロール紙112を搬送機構としての搬送手段15によって送り出して搬送することができるように構成されている。
【0032】
図4に示すように、ロール体保持装置20は、側面視外観が略四角柱状の箱体であって、その筐体の外壁面の一部、ロール紙112の部分に対向する壁面には、巻芯保持部材22が設けられている。ロール体保持装置20は、複数のスライダ(図示せず)と、ロックレバー27と、を備える。ロール体保持装置20は、筐体の底面に設けられているスライダを介して、ガイド部材としてガイドレール24に一方向のみに摺動可能に保持されている。ガイドレール24は、図1に示したように、給紙装置102及び巻取装置103の一部を構成し、ロール体保持装置20を、図1の矢印A方向と平行の方向に沿って移動可能に保持する。
【0033】
巻芯保持部材22は、ロール紙112の両端において中空軸内に嵌入される。巻芯保持部材が嵌入されたロール紙112は、ロール体保持装置20によって回転可能な状態で保持される。ロール紙112が回転するとき巻芯保持部材22も、その軸心を回転中心として回転する。
【0034】
ロックレバー27は、スライダによってガイドレール24に保持されているロール体保持装置20の移動を規制する移動規制部材である。ロックレバー27が操作されると、スライダがガイドレール24の溝の内壁に押圧されない状態から内壁に押圧される状態に遷移する。スライダと内壁との摩擦により、ロール体保持装置20の移動が規制される。
【0035】
なお、ロール体保持装置20は、ロックレバー27の操作を逆にすることで、スライダが内壁に押圧される状態から開放されて摩擦が無くなり、ガイドレール24に沿った移動が可能になる。なお、ロックレバー27は、巻芯保持部材22が設けられている面の反対面に設けられている。すなわち、ロックレバー27は、ロール紙112が保持される側の反対側であって、ユーザが操作しやすい側に配置されている。
【0036】
ガイドレール24は、図1に示す給紙装置102及び巻取装置103に含まれる構成であって、給紙装置102に固定される中空軸114及び巻取装置103に固定される中空軸115の長手方向に沿って配置されている。ガイドレール24は、ロール紙112の幅寸法よりも長尺であって、給紙装置102及び巻取装置103の底面を連結する位置に設けられる。
【0037】
ロール体保持装置20を用いてロール紙112を固定するときは、給紙装置102が備える一方のロール体保持装置20にロール紙112の中空部分としての中空軸114の一方の側端部分を保持させる。そして、中空軸114の一方の側端部分にもう一方のロール体保持装置20を保持可能位置に移動させて、ロックレバー27を操作してロール紙112の幅方向Wの位置を固定する。このとき、ロール紙112の軸心位置を固定するようにロール体保持装置20を移動して固定することができるので、簡易な操作によってロール紙112の軸芯位置を固定し保持することができる。
【0038】
[張力制御装置の実施形態]
次に、張力制御装置の実施形態としての駆動機構21の詳細について説明する。すでに説明したとおり、駆動機構21はロール体保持装置20に含まれる構成の一部に相当する。図5は、ロール体保持装置20が備える駆動機構21の構成を概略的に示した構成図である。
【0039】
図5に示すように、駆動機構21は、巻芯保持部材22を端部に固定した巻芯回転軸208を支持する第一面板201と第二面板202を筐体の一部に含む構成を有する。巻芯回転軸208は、第一面板201と第二面板202を貫くように配置されていて、ベアリングを介して第一面板201と第二面板202によって回転可能に支持されている。
【0040】
駆動機構21は、第一面板201と第二面板202に囲まれた空間に設けられた歯車機構としての遊星歯車機構200と、遊星歯車機構200を介して巻芯保持部材22に回転駆動力を伝達するための構造と、遊星歯車機構200に回転駆動力を与える駆動源としてのモータ203と、備えている。
【0041】
モータ203の駆動軸には、第一駆動ギヤ204が固定されている。第一駆動ギヤ204は駆動軸の回転によって回転する。
【0042】
遊星歯車機構200は、出力軸230と入力軸220の間に位置し、出力軸230には第二駆動ギヤ205が固定されている。第二駆動ギヤ205は、第一駆動ギヤ204と噛み合っている。すなわち、出力軸230はモータ203の駆動によって回転する軸である。
【0043】
また、遊星歯車機構200の入力軸220には、第三駆動ギヤ206が固定されている。第三駆動ギヤ206は、巻芯回転軸208に固定されている第四駆動ギヤ207と噛み合っている。すなわち、モータ203の駆動軸の回転が遊星歯車機構200を介して巻芯回転軸208へ伝達し、巻芯保持部材22を回転させる。
【0044】
駆動機構21において、モータ203の駆動力(回転力)は、遊星歯車機構200を介して巻芯回転軸208へと伝達される。この構成において、複数の歯車の組み合わせを例示したが、当該伝達機構の構成を歯車で構成することに限定することはなく、ベルトなどを用いて接続する構成でもよい。
【0045】
したがって、駆動機構21を介して巻芯保持部材22はモータ203の駆動力によって回転するように構成されているので、シート120の送り出しや巻き取りを行うときのトルクは、駆動機構21が備える遊星歯車機構200によって制御される。
【0046】
駆動機構21において巻芯保持部材22に伝達されるトルクを制御することで、シート120の送り出し側や、巻き取り側の張力を制御することができる。
【0047】
[歯車機構の実施形態]
次に、本発明に係る歯車機構の実施形態としての遊星歯車機構200の詳細について、図6から図8を用いて説明する。図6は、遊星歯車機構200側面断面図である。遊星歯車機構200は、入力軸220と出力軸230を有する。図5に示したように、出力軸230は、駆動源としてのモータ203に接続している。そして、入力軸220は、巻芯保持部材22に接続している。これによって、モータ203からの駆動力が遊星歯車機構200を介して入力軸220へと伝達し、巻芯保持部材22を回転させる。
【0048】
遊星歯車機構200は、入力軸220からの駆動、出力軸230からの駆動で駆動トルクを切り替えるトルク切替機構に相当する。
【0049】
入力軸220には、太陽歯車221が固定されている。太陽歯車221は、入力軸220に対して相対的な回転(相対回転)ができないように固定されている。また、太陽歯車221は、入力軸220と同軸になるように配置されている。
【0050】
太陽歯車221の周囲には、遊星歯車222が配置されている。遊星歯車222の外側には、内歯車223が配置されている。内歯車223は、ハウジング228に固定される。遊星歯車222は、遊星歯車222のピッチ円が太陽歯車221のピッチ円に接するように少なくとも一つ以上配置される。そして、内歯車223は、内歯車223のピッチ円と遊星歯車222のピッチ円が接するように配置される。したがって、入力軸220が回転したときの回転力によって、太陽歯車221と内歯車223との間に配置されている遊星歯車222が、入力軸220の周囲(太陽歯車221の周囲)を自転しながら、回転移動(公転)する。
【0051】
遊星歯車222は、キャリア軸231に対して回転自由に保持されている。キャリア軸231は、遊星キャリアであるキャリア232に設けられている。すなわち、キャリア軸231に対して相対回転できる状態(相対回転可能)の遊星歯車222が、入力軸220の回転によって公転すると、キャリア232は回転する。
【0052】
キャリア232は、第一トルクリミッタ233を介して、出力軸230に保持されている。そして、キャリア232の第一トルクリミッタ233が配置されている側の反対側には、第一歯車234が固定されている。
【0053】
第一歯車234は、キャリア232と相対回転ができない状態(相対回転不可)で固定されている。そして、第一歯車234は、出力軸230には接触していない。なお、入力軸220と出力軸230の回転軸の軸芯は同芯である。
【0054】
出力軸230において第一歯車234と離間した位置に、第二歯車235が固定されている。第二歯車235は、出力軸230と相対回転不可であるように固定されている。すなわち、第二歯車235が回転すると出力軸230が回転し、出力軸230が回転する第二歯車235が回転する。
【0055】
そして、第一歯車234と第二歯車235との間に、出力軸230の軸方向と平行する軸を有する双方向クラッチ210が配置されている。双方向クラッチ210の一方の軸には、入力側歯車211が相対回転不可であるように固定されていて、他方の軸には、出力側歯車212が相対回転不可であるように固定されている。
【0056】
キャリア232に固定されている第一歯車234は、双方向クラッチ210の入力側歯車211と連結される。また、出力軸230に固定されている第二歯車235は、双方向クラッチ210の出力側歯車212と連結される。第一歯車234が回転すると入力側歯車211が回転する。第二歯車235が回転すると出力側歯車212が回転する。
【0057】
双方向クラッチ210は、入力側歯車211の回転によって出力側歯車212が回転するように構成されている。そして双方向クラッチ210は、出力側歯車212の回転によって入力側歯車211が回転しない(空転する)ように構成されている。すなわち、入力側歯車211にトルクが加えられた結果、その入力側歯車211による回転によって出力側歯車212が回転する。しかし、出力側歯車212にトルクが加えられて回転しても、その出力側歯車212の回転によって入力側歯車211が回転しないように構成されている。
【0058】
双方向クラッチ210の入力側歯車211と出力側歯車212、及び第一歯車234と第二歯車235の歯数は、キャリア232の回転方向と回転数が、出力軸230の回転方向と回転数と同じになるように設定する。
【0059】
第二トルクリミッタ236の外輪は第二歯車235に固定される。そして、第二トルクリミッタ236の内輪は出力軸230に固定される。
【0060】
以上の構成を備える遊星歯車機構200において、入力軸220から出力軸230へと回転力が伝達される様子を、図7の駆動力伝達図を用いて説明する。回転力Tfによって入力軸220が回転したとき、すなわち、入力軸220に回転力Tfが加わったとき、そのトルクによって太陽歯車221が回転し、その回転によって遊星歯車222が回転する。その結果、キャリア軸231が回転力Tfからのトルクの伝達により入力軸220の同心円上を回動し、これによってキャリア232が回転する。この回転が第一歯車234と入力側歯車211を介して双方向クラッチ210へと伝達する。
【0061】
双方向クラッチ210は、入力側歯車211の回転を出力側歯車212に伝達するので、回転力Tfによる回転は出力側歯車212へと伝達し、第二歯車235を回転させる。
【0062】
第二歯車235の回転は、第二トルクリミッタ236を介して出力軸230へと伝達される。
【0063】
ここで、第二トルクリミッタ236のスリップトルク、すなわち、第二トルクリミッタ236の外輪に加わったトルクが内輪側(出力軸230)へと伝達される上限のトルクを「第二スリップトルクT2」とする。
【0064】
双方向クラッチ210の入力側歯車211の回転におけるトルクは、最大で「許容伝達トルクTa」に相当するトルクまでが出力側歯車212に伝達される。したがって、図7に示すように、回転力Tfによって入力側歯車211が回転するトルクが「許容伝達トルクTa」であるとき、許容伝達トルクTa同じ値のトルクである。
【0065】
第二トルクリミッタ236のスリップトルクである「第二スリップトルクT2」と、双方向クラッチ210の「許容伝達トルクTa」の関係に着目すると、いずれか値が小さい方において、スリップが発生する。つまり、「第二スリップトルクT2<許容伝達トルクTa」の場合、第二トルクリミッタ236はスリップする。
【0066】
そこで、「第二スリップトルクT2<許容伝達トルクTa」となるように、それぞれの値を設定することで、第二トルクリミッタ236のスリップトルク(第二スリップトルクT2)と同じ値のトルクが出力軸230へと伝達されることになる。これが駆動力Tmとなる。
【0067】
以上のとおり、入力軸220から伝達された回転力Tfが出力軸230に伝達される上限(リミット)は、第二トルクリミッタ236のスリップトルクとしての「第二スリップトルクT2」と、第二トルクリミッタ236から入力軸220までの減速比としての「次第一減速比」との掛け算によって決まることになる。この掛け算によって得られる値に基づいて、入力軸220に伝達された回転力Tfは、出力軸230において駆動力Tmとして出力される。
【0068】
そして、双方向クラッチ210を介した遊星歯車機構200を用いることで、入力軸220の回転方向と出力軸230の回転方向は同方向であって、かつ、回転数も同じになる。また、出力軸230の回転とキャリア232の回転を同じとすることで第一トルクリミッタ233をスリップさせないようにできるので、不要な負荷による駆動力の消費を防ぐことができる。
【0069】
以上のように遊星歯車機構200によれば、入力軸220からの駆動、出力軸230からの駆動で駆動トルクを切り替えることができる。
【0070】
次に、遊星歯車機構200において、出力軸230から入力軸220へと回転力が伝達される様子を、図8の駆動力伝達図を用いて説明する。回転力Tfによって出力軸230が回転したとき、すなわち、出力軸230に回転力Tfが加わったとき、その回転力Tfは、出力軸230から第一トルクリミッタ233を介してキャリア232を回転させる。この回転によって、キャリア軸231が入力軸220の同心円上に回動して遊星歯車222が回転する。この回転のトルクによって太陽歯車221が回転して入力軸220が回転する。
【0071】
この場合、出力軸230に加えられた回転力Tfによるトルクが第二歯車235を介して出力側歯車212へと伝達するが、双方向クラッチ210の出力側への伝達になるので、第二歯車235は双方向クラッチ210の空転トルクTbで空転するため、第二トルクリミッタ236におけるスリップはなくなり負荷は発生しない。
【0072】
出力軸230に加わった回転力Tfのトルクは、第一トルクリミッタ233から入力軸220に対して伝達されることになる。つまり回転力Tfは、第一トルクリミッタ233のスリップトルクとしての「第一スリップトルクT1」と、第一トルクリミッタ233から入力軸220までの減速比としての「入力側減速比」との掛け算によって決まることになる。この掛け算によって得られる値に基づいて、出力軸230に伝達された回転力Tfは、入力軸220において駆動力Tmとして出力される。
【0073】
ただし空転トルクTbは第二トルクリミッタ236の第二スリップトルクT2よりも小さく設定する必要がある。
【0074】
以上説明したように、第一トルクリミッタ233、第二トルクリミッタ236で必要なトルクそれぞれ設定することで、遊星歯車機構200を用いたトルクの切り替えを行うことができる。
【0075】
本実施形態に係る遊星歯車機構200によれば、歯車による駆動構成であるためレイアウトが大型になることなく一つの駆動源(モータ203)のみの駆動で構成できる。
【0076】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
22 :巻芯保持部材
200 :遊星歯車機構
201 :第一面板
202 :第二面板
203 :モータ
204 :第一駆動ギヤ
205 :第二駆動ギヤ
206 :第三駆動ギヤ
207 :第四駆動ギヤ
208 :巻芯回転軸
210 :双方向クラッチ
211 :入力側歯車
212 :出力側歯車
220 :入力軸
221 :太陽歯車
222 :遊星歯車
223 :内歯車
228 :ハウジング
230 :出力軸
231 :キャリア軸
232 :キャリア
233 :第一トルクリミッタ
234 :第一歯車
235 :第二歯車
236 :第二トルクリミッタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開2019-163116号
【特許文献2】特開2021-157122号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8