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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068576
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】振動センサ及び振動検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01H 11/08 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
G01H11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179126
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】関谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 雄一
(72)【発明者】
【氏名】本田 中
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064BD18
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】所定方向の振動の検出精度を確保することができる振動センサ及び振動検出システムを提供する。
【解決手段】振動センサ26は、検出板部38と、検出板部38を支持する検出板支持部40とを備えており、主桁14の振動が検出板支持部40を介して検出板部38に伝達されると共に、検出板部38の変形が圧電体32で検出されるようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状とされた圧電体と、
前記圧電体の厚さ方向一方側の第1面に設けられた第1電極部と、
前記圧電体の厚さ方向他方側の第2面に設けられた第2電極部と、
前記第2電極部における前記圧電体と反対側の面に設けられると共に、外周が前記圧電体の外周よりも大きい板状とされた検出板部と、
前記検出板部における前記圧電体と反対側の面に設けられると共に、外周が前記圧電体の外周よりも小さい検出板支持部と、
を有する振動センサ。
【請求項2】
前記圧電体の外周、前記検出板部の外周及び前記検出板支持部の外周が、それぞれ円形とされている、
請求項1に記載の振動センサ。
【請求項3】
前記圧電体、前記第1電極部及び前記第2電極部の中央部のそれぞれには、前記厚さ方向から見て円形の貫通部が形成されている、
請求項2に記載の振動センサ。
【請求項4】
前記第1電極部の前記厚さ方向一方側に配置された金属製の蓋部と、
前記検出板支持部の前記厚さ方向他方側に配置されて当該検出板支持部と密着した底部を備えると共に、前記圧電体、前記第1電極部、前記第2電極部、前記検出板部及び前記検出板支持部が格納された金属製のケース本体部と、
を備えたケース部をさらに備え、
前記蓋部の中央部と前記検出板部の中央部とが前記貫通部に挿通された支柱部で繋がれると共に、
前記第1電極部から延出された第1導線と、前記第2電極部から延出された第2導線と、が前記蓋部及び前記支柱部に沿って配置されている、
請求項3に記載の振動センサ。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の振動センサと、
前記振動センサと隣接して配置され、前記第1電極部及び前記第2電極部を介して前記圧電体と電気的に接続されると共に、当該圧電体から出力された電荷信号に比例する電圧信号を出力可能な信号変換装置と、
を備えている、
振動検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動センサ及び振動検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、振動センサに関する発明が記載されている。この振動センサは、薄膜状の圧電体と、圧電体の上面に設けられた上側電極と、圧電体の下面に設けられた下側電極と、上側電極の上面に設けられた錘とを備えている。そして、下記特許文献1に記載の先行技術では、振動検出対象物から振動センサに上下方向の振動が入力されると、この振動によって錘が上下方向に振動することで圧電体に電圧が発生し、この電圧を検出することで振動検出対象物に発生した振動を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-14530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の先行技術では、上下方向の振動のみでなく上下方向と直交する方向の振動によっても錘が振動するため、上下方向と直交する方向の振動も検出されることとなる。つまり、上記特許文献1に記載の先行技術では、所定方向の振動の検出精度を確保するという観点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、所定方向の振動の検出精度を確保することができる振動センサ及び振動検出システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る振動センサは、シート状とされた圧電体と、前記圧電体の厚さ方向一方側の第1面に設けられた第1電極部と、前記圧電体の厚さ方向他方側の第2面に設けられた第2電極部と、前記第2電極部における前記圧電体と反対側の面に設けられると共に、外周が前記圧電体の外周よりも大きい板状とされた検出板部と、前記検出板部における前記圧電体と反対側の面に設けられると共に、外周が前記圧電体の外周よりも小さい検出板支持部と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る振動センサによれば、シート状とされた圧電体における当該圧電体の厚さ方向一方側の第1面に第1電極部が設けられており、当該厚さ方向他方側の第2面に第2電極部が設けられている。そして、圧電体にその厚さ方向の力が加えられると、当該力の大きさに応じた電荷信号が、圧電体から第1電極部及び第2電極部を介して出力される。このため、圧電体を振動検出対象物の振動が伝達されるように配置することで、当該振動の大きさに応じた電荷信号が圧電体から出力され、当該振動を検出することができる。
【0008】
ところで、所定方向の振動の検出精度を確保するという観点において、振動検出対象物が所定方向に振動するときには、圧電体に力が加えられると共に、当該振動検出対象物が当該所定方向と直交する方向に振動するときには、圧電体に力が加えられるのを抑制できることが好ましい。
【0009】
ここで、本態様では、検出板部と、検出板部を支持する検出板支持部とを備えており、振動検出対象物の振動が検出板支持部を介して検出板部に伝達されると共に、検出板部の変形が圧電体で検出されるようになっている。
【0010】
詳しくは、本態様では、検出板部は、その外周が圧電体の外周よりも大きい板状とされると共に、第2電極部における圧電体と反対側の面に設けられている。
【0011】
一方、検出板支持部は、検出板部における圧電体と反対側の面に設けられると共に、その外周が圧電体の外周よりも小さくなっている。このため、本態様では、圧電体の厚さ方向から見て検出板支持部の外周が圧電体の外周の内側に位置することとなる。
【0012】
そして、上記のような構成では、検出板支持部を振動検出対象物側に配置して、振動検出対象物から検出板支持部を介して検出板部に振動が伝達されるとき、当該振動の方向が圧電体の厚さ方向である場合には、検出板部における当該厚さ方向から見て検出板支持部の外周側の部分が当該厚さ方向に振動して変形することとなる。
【0013】
このとき、圧電体も検出板部の変形に伴って変形するものの、圧電体の体積は一定であるため、圧電体は、その厚さ方向において膨張変形又は収縮変形することで分極し、圧電体から電荷信号が出力されることとなる。
【0014】
一方、振動検出対象物から検出板支持部を介して検出板部に伝達される振動の方向が圧電体の厚さ方向と直交する方向であるとき、検出板部は、当該振動の方向に沿って変位するものの、当該振動による検出板部の当該厚さ方向の変形は抑制される。このため、振動検出対象物から検出板部に伝達される振動の方向が、圧電体の厚さ方向と直交する方向であるとき、圧電体からの電荷信号の出力が抑制されることとなる。
【0015】
つまり、本態様では、振動検出対象物の振動の方向が圧電体の厚さ方向である場合に当該振動が検出される確度を高めると共に、当該振動の方向が当該厚さ方向と直交する方向である場合に当該振動が検出されることを抑制することができる。
【0016】
第2の態様に係る振動センサは、第1の態様に係る振動センサにおいて、前記圧電体の外周、前記検出板部の外周及び前記検出板支持部の外周が、それぞれ円形とされている。
【0017】
第2の態様に係る振動センサによれば、圧電体、検出板部及び検出板支持部の外周の形状がそれぞれ円形とされており、振動検出対象物の振動に起因する変形が、これらに局部的に発生することを抑制することができる。このため、振動検出対象物における圧電体の厚さ方向の振動が圧電体によって検出される確度を高めることができる。
【0018】
第3の態様に係る振動センサは、第2の態様に係る振動センサにおいて、前記圧電体、前記第1電極部及び前記第2電極部の中央部のそれぞれには、前記厚さ方向から見て円形の貫通部が形成されている。
【0019】
第3の態様に係る振動センサによれば、上述したように、圧電体の厚さ方向から見て検出板部における検出板支持部の外周側の部分の変形を圧電体で検出することによって、振動検出対象物の振動を検出している。
【0020】
つまり、圧電体が円板状であった場合、外周側の部分は、検出板部の変形の検出に寄与するものの、中央部は、当該変形の検出に寄与しないことが考えられる。換言すれば、圧電体の中央部は、検出板部の変形に追従しないため、当該中央部によって圧電体の外周部の変形が阻害されることが考えられる。
【0021】
ここで、本態様では、圧電体、第1電極部及び第2電極部の中央部のそれぞれに、圧電体の厚さ方向から見て円形の貫通部が形成されているため、圧電体の外周部の変形が阻害されることを抑制することができる。
【0022】
第4の態様に係る振動センサは、第3の態様に係る振動センサにおいて、前記第1電極部の前記厚さ方向一方側に配置された金属製の蓋部と、前記検出板支持部の前記厚さ方向他方側に配置されて当該検出板支持部と密着した底部を備えると共に、前記圧電体、前記第1電極部、前記第2電極部、前記検出板部及び前記検出板支持部が格納された金属製のケース本体部と、を備えたケース部をさらに備え、前記蓋部の中央部と前記検出板部の中央部とが前記貫通部に挿通された支柱部で繋がれると共に、前記第1電極部から延出された第1導線と、前記第2電極部から延出された第2導線と、が前記蓋部及び前記支柱部に沿って配置されている。
【0023】
第4の態様に係る振動センサによれば、金属製の蓋部と、金属製のケース本体部とを備えたケース部を備えている。そして、蓋部は、第1電極部における圧電体の厚さ方向一方側に配置されており、ケース本体部には、圧電体、第1電極部、第2電極部、検出板部及び検出板支持部が格納されている。また、ケース本体部の底部は、検出板支持部の圧電体の厚さ方向他方側に配置されて当該検出板支持部と密着している。
【0024】
このため、本態様では、ケース部によって、第1電極部及び第2電極部等を外部から放射される電磁波から保護し、圧電体から出力される電荷信号にノイズが含まれることを抑制することができる。
【0025】
また、本態様では、蓋部の中央部と検出板部の中央部とが、圧電体、第1電極部及び第2電極部の貫通部に挿通された支柱部で繋がれているため、蓋部が支柱部によって補強された状態となっている。このため、振動検出対象物側からの振動によって蓋部が振動することを抑制することができる。
【0026】
さらに、本態様では、第1電極部から延出された第1導線と、第2電極部から延出された第2導線とが、蓋部及び支柱部に沿って配置されている。このため、振動検出対象物側からの振動によって、第1導線及び第2導線が振動することを抑制し、ひいては、圧電体から出力される電荷信号に振動検出対象物側からの振動に起因するノイズが含まれることを抑制することができる。
【0027】
第5の態様に係る振動検出システムは、第1の態様~第4の態様の何れか1態様に係る振動センサと、前記振動センサと隣接して配置され、前記第1電極部及び前記第2電極部を介して前記圧電体と電気的に接続されると共に、当該圧電体から出力された電荷信号に比例する電圧信号を出力可能な信号変換装置と、を備えている。
【0028】
第5の態様に係る振動検出システムによれば、信号変換装置を備えており、当該信号変換装置は、第1電極部及び第2電極部を介して圧電体と電気的に接続されている。そして、信号変換装置は、圧電体から出力された電荷信号に比例する電圧信号を出力する。
【0029】
ところで、圧電体と信号変換装置とが離れていると、第1電極部及び第2電極部と信号変換装置とを電気的に接続するのに用いられる導線が長くなり、当該導線の伸縮等によって圧電体から出力される電荷信号にノイズが含まれることが考えられる。
【0030】
ここで、本態様では、振動センサと信号変換装置とが隣接して配置されているため、第1電極部及び第2電極部と信号変換装置とを接続するのに必要な導線の長さを短くし、ひいては、当該導線の伸縮等によって圧電体から出力される電荷信号にノイズが含まれることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明に係る振動センサ及び振動検出システムは、所定方向の振動の検出精度を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態に係る振動センサの構成を模式的に示す断面図(図2の1-1線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
図2】本実施形態に係る振動センサの構成を模式的に示す断面図(図1の2-2線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
図3】本実施形態に係る振動センサの要部の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図4】本実施形態に係る振動検出システムの一部を構成する振動検出ユニットの構成を模式的に示す側面図である。
図5】本実施形態に係る振動検出システムが橋に設置された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図1図5を用いて、本発明に係る振動センサ及び振動検出システムの実施形態の一例について説明する。
【0034】
図5に示されるように、本実施形態に係る「振動検出システム10」は、振動検出対象物である橋12の主桁14の下面に主桁14の長手方向に沿って配置された複数の振動検出ユニット16、複数の情報集積部18、通信部20、外部サーバ22及び監視コンピュータ24を備えている。
【0035】
図4に示されるように、振動検出ユニット16は、「振動センサ26」と、信号変換装置としての「チャージアンプ28」と、これらを主桁14に対して固定する金属製のベースプレート30とを備えている。
【0036】
振動センサ26は、図1図3に示されるように、「圧電体32」、「第1電極部34」、「第2電極部36」、「検出板部38」、「検出板支持部40」及びこれらが格納されたケース部としての「シールドケース42」を備えている。
【0037】
圧電体32は、平面視において、外周が円形とされると共に中央部に円形の「貫通部44」が形成されたシート状とされている。この圧電体32は、その厚さ方向に力が加えられると当該厚さ方向において分極し、この力の大きさに応じて当該厚さ方向の表面に電荷が生じるようになっている。
【0038】
また、圧電体32は、一例として、PVDF(Polyvinylidene Fluoride)すなわちポリフッ化ビニリデン含んで構成された薄膜状のピエゾフィルムシートで構成されている。なお、圧電体32は、圧電セラミックスを含んで構成されていてもよい。また、以下では、特に断りのない限り、圧電体32の厚さ方向を単に厚さ方向と称することとする。
【0039】
第1電極部34は、圧電体32の厚さ方向一方側の「第1面32A」に設けられると共に、圧電体32と電気的に接続された導電性の膜であり、一例として、銀や銀を含む合金で構成されている。なお、第1電極部34は、白金等の金属や炭素繊維等で構成されていてもよい。この第1電極部34は、厚さ方向から見てその外周が圧電体32の外周よりも小さい円形とされると共に、その中央部には、厚さ方向から見て直径が貫通部44よりも大きい円形の「貫通部46」が形成されている。また、第1電極部34からは、第1電極部34と電気的に接続された「第1導線56」が貫通部46側に延出されている。
【0040】
一方、第2電極部36は、圧電体32の厚さ方向他方側の「第2面32B」に設けられると共に第1電極部34と同様の構成とされている。また、第2電極部36の中央部には、第1電極部34と同様に厚さ方向から見て直径が貫通部44よりも大きい円形の「貫通部48」が形成されている。また、第2電極部36からは、第2電極部36と電気的に接続された「第2導線58」が貫通部48側に延出されている。
【0041】
検出板部38は、第2電極部36における厚さ方向他方側の面すなわち圧電体32と反対側の面に沿って配置されると共に、厚さ方向から見て外周が圧電体32の外周よりも大きい円形の板状とされている。この検出板部38は、第2電極部36における厚さ方向他方側の面に密着した状態で、当該面に接着剤等の図示しない接合部で接合されている。
【0042】
検出板支持部40は、検出板部38に対して厚さ方向他方側すなわち圧電体32の反対側に配置されており、厚さ方向から見て外周が圧電体32の外周よりも小さい円形の板状又は柱状とされている。この検出板支持部40は、検出板部38における厚さ方向他方側の面に密着した状態で、当該面に接着剤等の図示しない接合部で接合されている。
【0043】
なお、検出板部38及び検出板支持部40は、厚さ方向から見て、その中心が貫通部44の中心と一致するように配置されている。また、本実施形態では、検出板部38及び検出板支持部40が、一例として、アルミニウムやアルミニウムを含む合金で構成されているが、これらは、マグネシウム等の切削加工が容易な金属等で構成されていてもよい。
【0044】
シールドケース42は、それぞれアルミニウム合金等の電磁波を遮断可能な金属で構成された「蓋部50」と、「ケース本体部52」とを備えており、その外形が直方体状とされている。
【0045】
詳しくは、蓋部50は、厚さ方向から見て正方形の板状とされており、その厚さ方向他方側の面における中央部には、当該面から厚さ方向他方側に延出された円柱状の「支柱部54」が設けられている。そして、支柱部54は、貫通部44、貫通部46及び貫通部48に挿通されると共に、その先端部が接着剤等の図示しない接合部で検出板部38の厚さ方向一方側の面の中央部に接合されている。なお、支柱部54は、蓋部50と別体とされていてもよい。
【0046】
また、蓋部50の厚さ方向他方側の面及び支柱部54には、第1導線56及び第2導線58がこれらに沿って配置された状態で、接着剤等の図示しない接合部で接合されている。
【0047】
一方、ケース本体部52は、厚さ方向から見て正方形の板状とされた「底部52A」と、底部52Aの周縁部から厚さ方向一方側に延出された外周部52Bとを含んで構成されており、ケース本体部52には、圧電体32、第1電極部34、第2電極部36、検出板部38及び検出板支持部40が格納されている。
【0048】
また、底部52Aの厚さ方向一方側の面には、検出板支持部40の厚さ方向他方側の面が密着した状態で接着剤等の図示しない接合部で接合されている。一方、底部52Aの厚さ方向他方側の面には、ベースプレート30が当接されており、ケース本体部52は、ベースプレート30に図示しない取付部材で取り付けられている。つまり、振動センサ26は、検出板支持部40が主桁14側に位置するように配置されている。
【0049】
一方、外周部52Bの厚さ方向一方側の周縁部は、蓋部50と接着剤等の図示しない接合部で接合されている。また、外周部52Bの厚さ方向一方側の周縁部には、その一部が厚さ方向他方側に凹むことで凹部60が形成されており、凹部60からは、第1導線56及び第2導線58がシールドケース42の外側に延出されている。
【0050】
図4に戻り、チャージアンプ28は、振動センサ26と隣接して配置されると共に、その外郭を構成するアルミニウム合金製のケース62と、ケース62に格納された図示しない信号変換部とを備えている。そして、チャージアンプ28の信号変換部は、第1電極部34、第2電極部36、第1導線56及び第2導線58を介して圧電体32と電気的に接続されており、圧電体32から出力された電荷信号に比例する電圧信号を出力するようになっている。そして、信号変換部から出力された電圧信号は、図5にも示されるように、信号線64を介して情報集積部18に入力されるようになっている。
【0051】
情報集積部18は、図示しないアナログ-デジタル変換器を備えており、複数の振動検出ユニット16から入力された電圧信号すなわち振動センサ26による検出結果をアナログ信号からデジタル信号に変換すると共に、当該検出結果を一時的に記憶可能とされている。そして、情報集積部18は、振動センサ26による検出結果を通信部20に送信するようになっており、当該検出結果は、通信部20からネットワークNを介して外部サーバ22に送信されると共に、外部サーバ22に記憶されるようになっている。
【0052】
また、外部サーバ22は、ネットワークNを介して監視コンピュータ24と通信可能とされている。そして、監視コンピュータ24は、外部サーバ22に記憶された振動センサ26による検出結果から異常値が検出された場合、監視コンピュータ24のモニタ66に警告を表示するようになっている。
【0053】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0054】
本実施形態では、図1に示されるように、シート状とされた圧電体32における厚さ方向一方側の第1面32Aに第1電極部34が設けられており、厚さ方向他方側の第2面32Bに第2電極部36が設けられている。そして、圧電体32に厚さ方向の力が加えられると、当該力の大きさに応じた電荷信号が、圧電体32から第1電極部34及び第2電極部36を介して出力される。このため、圧電体32を橋12の主桁14の振動が伝達されるように配置することで、当該振動の大きさに応じた電荷信号が圧電体32から出力され、当該振動を検出することができる。
【0055】
ところで、所定方向の振動の検出精度を確保するという観点において、主桁14が所定方向、例えば鉛直方向に振動するときには、圧電体32に力が加えられると共に、主桁14が水平方向に振動するときには、圧電体32に力が加えられるのを抑制できることが好ましい。
【0056】
ここで、本実施形態では、検出板部38と、検出板部38を支持する検出板支持部40とを備えており、主桁14の振動が検出板支持部40を介して検出板部38に伝達されると共に、検出板部38の変形が圧電体32で検出されるようになっている。
【0057】
詳しくは、本実施形態では、図2にも示されるように、検出板部38は、その外周が圧電体32の外周よりも大きい板状とされると共に、第2電極部36における圧電体32と反対側の面に設けられている。
【0058】
一方、検出板支持部40は、検出板部38における圧電体32と反対側の面に設けられると共に、その外周が圧電体32の外周よりも小さくなっている。このため、本実施形態では、圧電体32の厚さ方向から見て検出板支持部40の外周が圧電体32の外周の内側に位置することとなる。
【0059】
そして、上記のような構成では、検出板支持部40を主桁14側に配置して、主桁14から検出板支持部40を介して検出板部38に振動が伝達されるとき、当該振動の方向が鉛直方向すなわち厚さ方向である場合には、検出板部38における厚さ方向から見て検出板支持部40の外周側の部分が厚さ方向に振動して変形することとなる。
【0060】
このとき、圧電体32も検出板部38の変形に伴って変形するものの、圧電体32の体積は一定であるため、圧電体32は、厚さ方向において膨張変形又は収縮変形することで分極し、圧電体32から電荷信号が出力されることとなる。
【0061】
一方、主桁14から検出板支持部40を介して検出板部38に伝達される振動の方向が水平方向であるとき、検出板部38は、当該振動の方向に沿って変位するものの、当該振動による検出板部38の鉛直方向の変形は抑制される。このため、主桁14から検出板部38に伝達される振動の方向が、水平方向すなわち厚さ方向と直交する方向であるとき、圧電体32からの電荷信号の出力が抑制されることとなる。
【0062】
つまり、本実施形態では、主桁14の振動の方向が厚さ方向である場合に当該振動が検出される確度を高めると共に、当該振動の方向が厚さ方向と直交する方向である場合に当該振動が検出されることを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、圧電体32、検出板部38及び検出板支持部40の外周の形状がそれぞれ円形とされており、主桁14の振動に起因する変形が、これらに局部的に発生することを抑制することができる。このため、主桁14における鉛直方向の振動が圧電体32によって検出される確度を高めることができる。
【0064】
また、本実施形態では、上述したように、厚さ方向から見て検出板部38における検出板支持部40の外周側の部分の変形を圧電体32で検出することによって、主桁14の振動を検出している。
【0065】
つまり、圧電体32が円板状であった場合、外周側の部分は、検出板部38の変形の検出に寄与するものの、中央部は、当該変形の検出に寄与しないことが考えられる。換言すれば、圧電体32の中央部は、検出板部38の変形に追従しないため、当該中央部によって圧電体32の外周部の変形が阻害されることが考えられる。
【0066】
ここで、本実施形態では、圧電体32、第1電極部34及び第2電極部36の中央部のそれぞれに、厚さ方向から見て円形の貫通部が形成されているため、圧電体32の外周部の変形が阻害されることを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、金属製の蓋部50と、金属製のケース本体部52とを備えたシールドケース42を備えている。そして、蓋部50は、第1電極部34の厚さ方向一方側に配置されており、ケース本体部52には、圧電体32、第1電極部34、第2電極部36、検出板部38及び検出板支持部40が格納されている。また、ケース本体部52の底部52Aは、検出板支持部40の厚さ方向他方側に配置されて検出板支持部40と密着している。
【0068】
このため、本実施形態では、シールドケース42によって、第1電極部34及び第2電極部36等を外部から放射される電磁波から保護し、圧電体32から出力される電荷信号にノイズが含まれることを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、蓋部50の中央部と検出板部38の中央部とが、圧電体32の貫通部44、第1電極部34の貫通部46及び第2電極部36の貫通部48に挿通された支柱部54で繋がれているため、蓋部50が支柱部54によって補強された状態となっている。このため、主桁14側からの振動によって蓋部50が振動することを抑制することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、第1電極部34から延出された第1導線56と、第2電極部36から延出された第2導線58とが、蓋部50及び支柱部54に沿って配置されている。このため、主桁14側からの振動によって、第1導線56及び第2導線58が振動することを抑制し、ひいては、圧電体32から出力される電荷信号に主桁14側からの振動に起因するノイズが含まれることを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、チャージアンプ28を備えており、チャージアンプ28は、第1電極部34及び第2電極部36を介して圧電体32と電気的に接続されている。そして、チャージアンプ28は、圧電体32から出力された電荷信号に比例する電圧信号を出力する。
【0072】
ところで、圧電体32とチャージアンプ28とが離れていると、第1電極部34及び第2電極部36とチャージアンプ28とを電気的に接続するのに用いられる第1導線56及び第2導線58が長くなり、これらの伸縮等によって圧電体32から出力される電荷信号にノイズが含まれることが考えられる。
【0073】
ここで、本実施形態では、振動センサ26とチャージアンプ28とが隣接して配置されているため、第1電極部34及び第2電極部36とチャージアンプ28とを接続するのに必要な第1導線56及び第2導線58の長さを短くし、ひいては、これらの伸縮等によって圧電体32から出力される電荷信号にノイズが含まれることを抑制することができる。
【0074】
このように、本実施形態に係る振動センサ26及び振動検出システム10では、所定方向の振動の検出精度を確保することができる。
【0075】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、振動センサ26及び振動検出システム10を橋12の鉛直方向の振動の検出に用いていたが、振動センサ26及び振動検出システム10の振動検出対象物は、建物等であってもよい。また、振動センサ26の設置方向を適宜変更することで、任意の方向の振動を検出することが可能である。
【0076】
(2) また、上述した実施形態では、圧電体32、第1電極部34及び第2電極部36に貫通部が形成されていたが、検出対象となる振動の周波数や振動センサ26の仕様如何によっては、これらに貫通部を設けない構成としてもよい。なお、この場合には、第1導線56及び第2導線58をケース本体部52の内面に沿って配置してもよい。
【0077】
(3) さらに、上述した実施形態では、検出板部38と検出板支持部40とが別体で構成されていたが、検出対象となる振動の周波数や振動センサ26の仕様如何によっては、これらを一体としてもよい。また、検出対象となる振動の周波数に応じて、検出板部38や検出板支持部40の形状や材質を変更してもよいし、圧電体32、第1電極部34及び第2電極部36の形状や材質を変更してもよい。例えば、圧電体32、第1電極部34、第2電極部36、検出板部38及び検出板支持部40は、厚さ方向から見て多角形状とされていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 振動検出システム
26 振動センサ
28 チャージアンプ(信号変換装置)
32 圧電体
32A 第1面
32B 第2面
34 第1電極部
36 第2電極部
38 検出板部
40 検出板支持部
42 シールドケース(ケース部)
44 貫通部
46 貫通部
48 貫通部
50 蓋部
52 ケース本体部
52A 底部
54 支柱部
56 第1導線
58 第2導線
図1
図2
図3
図4
図5