(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069114
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】曲面部材用粘着剤組成物、これを用いた曲面部材用粘着剤、及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240514BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240514BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J7/38
B32B27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179933
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】布谷 昌平
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25A
4F100AK25G
4F100AK25J
4F100BA02
4F100CB05A
4F100CB05G
4F100DD11B
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4F100EC182
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4F100JL11
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA04
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4J004CB02
4J004DB01
4J004DB02
4J040DF021
4J040GA07
4J040HB41
4J040HD30
4J040HD36
4J040KA16
4J040KA17
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA32
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA02
4J040MB10
(57)【要約】
【課題】常温下において各種基材に適用可能な粘着力を有するとともに、たとえ曲面部を有する被着体に使用した場合においても-10℃以下の超低温域から常温域に戻した際に浮きや剥がれのない曲面接着性に優れた粘着剤層を形成することができる曲面部材用粘着剤組成物の提供。
【解決手段】炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)とカルボキシル基を有するモノマー(a2)とを由来とする各構成単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有し、-10℃以下で用いられる曲面部材用粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)とカルボキシル基を有するモノマー(a2)とを由来とする各構成単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有し、-10℃以下で用いられる曲面部材用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記モノマー(a1)が2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートである請求項1に記載の曲面部材用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記モノマー(a2)由来の構造単位を、前記アクリル系樹脂(A)を構成する構造単位全体に対して、1重量%以上含有する請求項1に記載の曲面部材用粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の曲面部材用粘着剤組成物が架橋されてなる曲面部材用粘着剤。
【請求項5】
請求項4の曲面部材用粘着剤からなる粘着剤層と他の部材とが積層されている積層体。
【請求項6】
炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)とカルボキシル基を有するモノマー(a2)とを由来とする各構成単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤であって、下記条件で保管試験を行った際の試験片の端部浮きが1mm未満である曲面部材用粘着剤。
式(1)
条件:
試験片:合成紙80μm/粘着剤25μmの積層体(サイズ:25mm×25mm)
被着体への貼付:直径10mmのガラス棒に常温下で貼付する。
保管条件:-30℃×1時間後、25℃×30分間静置を1サイクルとし、合計3サイクルを実施する。
【請求項7】
請求項6の曲面部材用粘着剤からなる粘着剤層と他の部材とが積層されている積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面部材用粘着剤組成物に関し、更に詳しくは、-10℃以下の超低温環境下においても使用できる曲面部材用粘着剤組成物に関する。また本発明は、常温での粘着性に加えて、-10℃以下という超低温環境下での粘着性にも優れ、さらに曲面貼付性に優れる曲面部材用粘着剤、及びその粘着剤を用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種容器の表示ラベルの粘着剤層にはアクリル系粘着剤が用いられている。用途によって容器の保管環境は様々であり、例えば食品関係では5℃~-9℃の低温環境下で保管されることが多く、医薬関係では-10℃~-196℃といった超低温環境下で保管されることがある。特に医薬関係では医薬品を入れたガラス製のバイアル瓶が使われるため、表示ラベルはバイアル瓶の曲面部に貼付することになる。この表示ラベルが被着体(バイアル瓶)から剥がれたり浮きが生じたりすると、その医薬品は使用できなくなり、歩留まりや生産性が低下し、コストアップに繋がってしまう。
【0003】
そのため、超低温環境下で保管される容器、特には曲面部を有する容器に対して、超低温環境に晒された場合でも優れた曲面貼付性を有する粘着剤が求められていた。
このような低温環境下で用いられる粘着剤としては、粘着シートの低温粘着性と曲面貼付性を向上させることを目的に、軟化点の異なる2種の粘着付与樹脂を含むエマルジョン型粘着剤が特許文献1に開示されている。また特許文献2には、多孔質層を有するラベル基材の片面に所定の粘着力を有する粘着剤層を備えた粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-186589号公報
【特許文献2】特開2020-56804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の粘着シート用いた場合、超低温環境下で保管した後に常温に戻すと表示ラベルが剥がれてしまう問題があり、満足のいくものではなかった。
一方、特許文献2では、多孔質基材に対しては優れた曲面貼付性を有するものの、基材が限定されてしまうため、多孔質構造を持たないPET基材やポリオレフィン基材などには不適であり、満足のいくものではなかった。
そこで本発明は、常温下において各種基材に適用可能な粘着力を有するとともに、たとえ曲面部を有する被着体に使用した場合においても-10℃以下の超低温域から常温域に戻した際に浮きや剥がれのない曲面貼付性に優れた粘着剤層を形成することができる曲面部材用粘着剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)とカルボキシル基を含有するモノマー(a2)とを由来とする各構成単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物を用いることにより、超低温環境下(-10℃以下)で保管後に常温に戻した際にも曲面貼付性を維持でき、更には各種基材にも適用可能な粘着剤が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
本発明の態様(1)は、炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)とカルボキシル基を有するモノマー(a2)とを由来とする各構成単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有し、-10℃以下で用いられる曲面部材用粘着剤組成物である。
【0008】
本発明の態様(2)は、態様(1)の粘着剤組成物において、前記モノマー(a1)が2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0009】
本発明の態様(3)は、態様(1)又は(2)の粘着剤組成物において、前記モノマー(a2)由来の構造単位を、前記アクリル系樹脂(A)を構成する構造単位全体に対して、1重量%以上含有する。
【0010】
本発明の態様(4)は、態様(1)~(3)のいずれか一つの粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤である。
【0011】
本発明の態様(5)は、態様(4)の粘着剤からなる粘着剤層と他の部材とが積層されている積層体である。
【0012】
本発明の態様(6)は、炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)とカルボキシル基を有するモノマー(a2)とを由来とする各構成単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤であって、下記条件で保管試験を行った際の試験片の端部浮きが1mm未満である曲面部材用粘着剤である。
式(1)
条件:
試験片:合成紙80μm/粘着剤25μmの積層体(サイズ:25mm×25mm)
被着体への貼付:直径10mmのガラス棒に常温下で貼付する。
保管条件:-30℃×1時間後、25℃×30分間静置を1サイクルとし、合計3サイクルを実施する。
【0013】
本発明の態様(7)は、態様(6)の曲面用粘着剤からなる粘着剤層と他の部材とが積層されている積層体である。
【0014】
本発明において「曲面部材」とは、曲面を一部又は全部に有する部材であり、例えば、球状、円柱状、楕円柱状、円錐状の形状を一部又は全部に有する部材である。例えば、ガラス棒やバイアル瓶などのように円柱状の部分を有する部材の場合、円柱の高さ方向に平行な法線ベクトルに対して垂直をなす仮想平面で当該円柱を切断したときの円の半径が、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、特に好ましくは3mm以上であり、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
【0015】
本発明において「曲面部材用粘着剤」とは、曲面部材の面に貼付される積層体を形成する粘着剤層の構成材料である粘着剤をいい、「曲面部材用粘着剤組成物」が架橋されたものをいう。即ち、「曲面部材用粘着剤」は、曲面部材貼付用積層体における粘着剤層形成用粘着剤と言い換えることもできる。
【0016】
本発明における「積層体」は、基材と、基材上に形成された粘着剤層とを少なくとも有する積層体であり、例えば、粘着フィルム、粘着シート、粘着テープを概念的に包含する。また、本発明における「積層体」における基材は、材質や形状、大きさは特に限定されない。
【0017】
本発明において「-10℃以下で用いられる」とは、当該粘着剤組成物そのもの、又は当該粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤が-10℃以下の環境下に一時的又は恒久的に置かれること、即ち、当該粘着剤組成物又はその粘着剤の使用温度が-10℃以下であることを意味する。また、本明細書において「超低温」は-10℃以下、特には-30℃以下を意味し、その下限温度は通常、-50℃である。「常温」は15~25℃を意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の曲面部材用粘着剤組成物によれば、超低温環境下で保管後に常温に戻した際にも曲面接着性を維持でき、更には各種基材にも適用可能な粘着剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
以下、曲面部材用粘着剤組成物を単に「粘着剤組成物」といい、曲面部材用粘着剤を単に「粘着剤」ということがある。
【0020】
<<粘着剤組成物>>
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)を少なくとも含有する。以下にアクリル系樹脂(A)について説明する。
【0021】
<アクリル系樹脂(A)>
アクリル系樹脂(A)とは、少なくとも1種の(メタ)アクリル系モノマー由来の構造単位を有し、炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)とカルボキシル基を有するモノマー(a2)とを由来とする各構成単位を有する。アクリル系樹脂(A)は、上記モノマー(a1)及び(a2)を少なくとも含み、場合により、他の各種の重合性モノマー(a3)を含有する共重合成分(a)を重合して得られる。したがって、アクリル系樹脂(A)は、上記モノマー(a1)及び(a2)由来の各構造単位に加え、場合により、その他の重合性モノマー(a3)由来の構造単位を有することがある。
【0022】
〔炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)〕
本発明で用いられるモノマー(a1)は、炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマーであって、カルボキシル基を含有するモノマー(以下、「カルボキシル基含有モノマー」ともいう。)(a2)に該当するものは除外される。
モノマー(a1)としては、例えば、炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、iso-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、iso-トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ステアリル(メタ)アクリレート等が例示される。
なかでも、汎用性、粘着特性、曲面接着性の点から、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0023】
モノマー(a1)を由来とする構成単位の含有量は、アクリル系樹脂(A)を構成する構造単位全体に対して、10重量%以上が好ましく、より好ましくは10~99重量%、特に好ましくは20~98.5重量%、更に好ましくは40~98重量%である。
【0024】
モノマー(a1)を由来とする構成単位の含有量は、アクリル系樹脂(A)を調製するための共重合成分(a)におけるモノマー(a1)の含有量を調整することによって調整することができる。なお、以下に説明するモノマー(a2)及び(a3)を由来とする各構成単位の含有量についても同様である。
【0025】
〔カルボキシル基を有するモノマー(a2)〕
本発明で用いられるカルボキシル基含有モノマー(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
なかでも、汎用性、共重合しやすい点で、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0026】
カルボキシル基含有モノマー(a2)を由来とする構成単位の含有量は、粘着力や曲面接着性を上げやすい点から、アクリル系樹脂(A)を構成する構造単位全体に対して、1重量%以上が好ましく、より好ましくは1~30重量%、特に好ましくは1.5~20重量%、更に好ましくは2~15重量%である。
上記カルボキシル基含有モノマー(a2)由来の構造単位の含有量が少なすぎても多すぎても、被着体との密着性が低下し曲面接着性が低下しやすい傾向がある。
【0027】
〔その他の重合性モノマー(a3)〕
モノマー(a1)及び(a2)を除くその他の重合性モノマー(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸の誘導体、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体などが挙げられる。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸の誘導体としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、tert-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル基含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリレート;2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト等の多環式(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基又はフェノキシ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等のオキセタン基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0029】
上記(メタ)アクリルアミドの誘導体としては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN-アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のN-メルカプトアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等の複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体:等が挙げられる。
【0030】
上記以外のその他の重合性モノマー(a3)としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリルアミド-N-グリコール酸などの不飽和カルボン酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルモノマー;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香環を含有するモノマー;等が挙げられ、更に、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等も挙げられる。
【0031】
その他の重合性モノマー(a3)は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その他の重合性モノマー(a3)の中でも、アルキル基含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレートが好適に用いられる。なかでも、粘着特性が安定しやすい点や共重合性の点で、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
その他の重合性モノマー(a3)を由来とする構成単位の含有量は、アクリル系樹脂(A)を構成する構造単位全体に対して、0~85重量%が好ましく、より好ましくは0~70重量%、特に好ましくは0~60重量%である。上限は通常100重量%である。
【0033】
〔アクリル系樹脂(A)の製造方法〕
アクリル系樹脂(A)の製造方法としては、上記共重合成分(a)を用いて、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法を採用することができる。例えば、有機溶媒中に、モノマーを適宜選択してなる共重合成分(a)、重合開始剤を混合あるいは滴下し、所定の重合条件にて重合する方法等が挙げられ、なかでも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、安定にアクリル系樹脂(A)が得られる点で、溶液ラジカル重合がより好ましい。
【0034】
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさ、連鎖移動の効果、粘着剤組成物の塗工時の乾燥のしやすさ、安全上の点から、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が好ましく、なかでも酢酸エチルが好ましい。これらから選ばれる1種を単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
有機溶媒の使用量は、共重合成分(a)100重量部に対して、通常、10~900重量部である。
【0036】
また、かかる溶液ラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、共重合成分(a)100重量部に対して、通常、0.01~5重量部である。
【0037】
このようにして、本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られる。
【0038】
〔アクリル系樹脂(A)の物性〕
上記のようにして得られたアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万以上が好ましく、より好ましくは10万~150万、特に好ましくは15万~100万、更に好ましくは20万~80万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、凝集力が不足し粘着性が低下する傾向がある。また、かかる重量平均分子量が大きすぎると、粘度が高くなりすぎ、重合時のスケーリングが多くなったり、ハンドリング性が低下したりする傾向がある。
【0039】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、10以下であることが好ましく、より好ましくは7以下である。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下する傾向がある。なお、分散度の下限は通常1である。
【0040】
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(日本ウォーターズ社製、「Waters2695(本体)」と「Waters2414(検出器)」)に、カラム:ShodexGPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列に接続して用いることにより測定することができ、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は、上記重量平均分子量と数平均分子量の測定値より求めることができる。
【0041】
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-85℃以上が好ましく、より好ましくは-80~20℃、特に好ましくは-75~0℃、更に好ましくは-70~-10℃、殊に好ましくは-65~-30℃である。かかるガラス転移温度が低すぎると、硬化後の接着強度が低下する傾向にあり、高すぎると硬化前のタックが低くなる傾向がある。
【0042】
なお、ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
【数1】
Tg:重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K)Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K)Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K)Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0043】
即ち、アクリル系樹脂(A)を構成するそれぞれのモノマーから重合されたホモポリマーのガラス転移温度及び重量分率をFoxの式に当てはめて算出した値である。
なお、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーから重合されたホモポリマーのガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121-1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
【0044】
アクリル系樹脂(A)は本発明の粘着剤組成物の主成分であるから、アクリル系樹脂(A)の含有量は、粘着剤組成物に対して、50重量%以上が好ましく、より好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~95重量%、更に好ましくは75~93重量%である。かかる範囲外であると、本発明の効果が得られにくくなる傾向がある。
【0045】
<架橋剤(B)>
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリル系樹脂(A)の他に、架橋剤(B)を含有していてもよい。架橋剤(B)は、粘着剤を形成した際の弾性率を向上させ、基材や被着体との密着性を向上させし、耐久性を向上させる点で好ましい。
【0046】
架橋剤(B)とは、アクリル系樹脂(A)中の官能基と反応し、架橋構造を形成する化合物であり、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも被着体との接着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を用いることが好ましく、特にはイソシアネート系架橋剤が好ましい。
架橋剤(B)は、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0047】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、芳香族系イソシアネート系化合物、脂環族系イソシアネート系化合物、脂肪族系イソシアネート系化合物等が挙げられる。
上記芳香族系イソシアネート系化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート等のジフェニルメタン系化合物;1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート系化合物;等が挙げられる。
上記脂環族系イソシアネート系化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
上記脂肪族系イソシアネート系化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、上記イソシアネート系化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
【0048】
これらイソシアネート系架橋剤の中でも、トリレンジイソシアネート系化合物がポットライフと耐久性の点で好ましく、キシリレンジイソシアネート系化合物及びイソシアヌレート骨格含有イソシアネート系化合物がエージング時間短縮の点で好ましく、芳香環非含有イソシアネート系化合物が耐黄変性の点で好ましい。これら好ましいイソシアネート系架橋剤の具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパンとのアダクト体、並びにトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種のイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパンとのイソシアヌレート体が挙げられ、これらアダクト体及びイソシアヌレート体は、耐久性、ポットライフ、架橋速度のバランスに優れている点で好ましい。
【0049】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0050】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0051】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0052】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0053】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0054】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属と、アセチルアセトンやアセトアセチルエステル等の配位子との配位化合物等が挙げられる。
【0055】
架橋剤(B)を用いる場合、その含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部(固形分)に対して、0.005~30重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~20重量部、特に好ましくは0.03~10重量部、更に好ましくは0.05~5重量部である。かかる含有量が少なすぎると、耐久性を向上させる効果が得られにくい傾向があり、多すぎると応力緩和性が低下して被着体の基板が反りやすくなったり、長時間のエージングが必要となったりする傾向がある。
【0056】
<任意成分>
本発明の粘着剤組成物は、上記各成分の他に、任意成分として各種添加剤を含有していてもよい。任意成分としては、例えば、カーボンや金属等の導電剤;金属粒子やガラス粒子などの無機フィラー;ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂などの粘着付与剤;充填剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;イオン性化合物、過酸化物、ウレタン化触媒などの架橋促進剤;アセチルアセトン等の架橋遅延剤;等の各種添加剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
なお、本発明の粘着剤組成物は、上記任意成分の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料などに含まれる不純物などが本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0058】
本発明の粘着剤組成物は、炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)とカルボキシル基を有するモノマー(a2)とを由来とする各構成単位を有するアクリル系樹脂(A)、必要に応じて、架橋剤(B)やその他任意成分を混合することにより得ることができる。
これらの成分の混合方法については、特に限定されるものではなく、各成分を一括で混合する方法や、任意の成分を混合した後、残りの成分を一括または順次混合する方法など、種々の方法を採用することができる。
【0059】
<<粘着剤、積層体>>
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)が架橋することにより粘着剤とすることができる。また、この粘着剤を含有する粘着剤層をプラスチックフィルム等の基材に積層形成することにより、基材/粘着剤層の積層構造を有する積層体を得ることができる。更に、この粘着剤層を被着体上に積層することにより、被着体/粘着剤層の積層構造を有する積層体を得ることができる。なお、以下では基材と被着体を総括して「部材」ともいう。
【0060】
また本発明の粘着剤は、炭素数8~18の直鎖または分岐アルキル基を有するモノマー(a1)とカルボキシル基を有するモノマー(a2)とを由来とする各構成単位を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤組成物が架橋されてなる粘着剤であって、下記条件で保管試験を行った際の試験片の端部浮きが1mm未満であることが好ましい。
式(1)
条件:
試験片:合成紙80μm/粘着剤25μmの積層体(サイズ:25mm×25mm)
被着体への貼付:直径10mmのガラス棒に常温下で貼付する。
保管条件:-30℃×1時間後、25℃×30分間静置を1サイクルとし、合計3サイクルを実施する。
なお、上記試験片における基材である合成紙としては、例えば、ユポ紙(登録商標)が挙げられる。
【0061】
上記の保管試験における粘着力は、以下のように測定する。
<粘着シートの作製>
粘着剤組成物を、厚み38μmの軽剥離シリコンセパレータ(三井化学東セロ社製、「SPPET01 38BU」)に、乾燥後の厚みが25μmとなるようにアプリケータを用いて塗工し、100℃×3分間乾燥し、粘着剤層を形成する。当該粘着剤層の表面に基材(例えばユポ紙)を貼り合わせた後、40℃で3日間エージングを施し粘着シートを作製する(粘着シート=軽剥離シリコンセパレータ/粘着剤層/基材の積層体)。
【0062】
〔曲面接着性〕
25mm×25mmに切り出した粘着シートから軽剥離シリコンセパレータを剥離し、直径10mmのガラス棒に常温下で張り付ける。このガラス棒を-30℃の冷凍庫に1時間静置し、取り出した後に、常温下で30分静置する。これを1サイクルとして合計3サイクル実施して、剥がれを測定する。
【0063】
上述した式(1)を満たす粘着剤を得るためには、粘着剤組成物のアクリル系樹脂として、上述したアクリル系樹脂(A)が用いられ、これが架橋されることにより得られる。
【0064】
<積層体>
積層体の例として、以下に粘着シートについて説明する。
粘着シートとしては、基材に粘着剤層が積層された片面粘着シートの他に、粘着剤層の両面にセパレータ(剥離シート)を積層した基材レスの両面粘着シートが挙げられ、取り扱い易さの点で片面粘着シートが好適である。
【0065】
上記粘着シートの製造方法としては、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、乾燥させた後、セパレータを貼合し、常温(加温しない状態)でのエージング及び加温状態でのエージングの少なくとも一方によるエージング処理を行う方法等が挙げられる。なお、粘着剤組成物をセパレータに塗工し、乾燥させた後、当該セパレータと剥離力の異なる他のセパレータを貼合し、エージング処理を行なうことにより、基材レスの両面粘着シートを製造することができる。
【0066】
上記エージング処理は、アクリル系樹脂(A)と架橋剤(B)とを化学架橋させて、粘着剤に適度な粘着性を発現させるために行なう処理である。エージングの条件としては、例えば、温度が通常は室温(20±10℃)~40℃、時間が通常は1~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、40℃で1~7日間などの条件が挙げられる。
【0067】
上記粘着剤組成物の塗工に際しては、この粘着剤組成物を溶剤で希釈して塗工することが好ましく、固形分濃度は、好ましくは5~65重量%、より好ましくは20~55重量%である。
また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されない。例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤;等を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から、酢酸エチルが好適に用いられる。
【0068】
上記希釈された粘着剤組成物の粘度は、500~15000mPa・s/25℃が好ましく、1000~10000mPa・s/25℃がより好ましい。粘度が低すぎると比重の重い成分を用いた場合、その成分が沈降し易くなり、粘着剤組成物中の成分の濃度が不均一となる傾向がある。
【0069】
上記粘着剤組成物の塗工方法としては、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。
【0070】
粘着シートにおける粘着剤層の厚みは、好ましくは5~250μm、より好ましくは10~150μm、更に好ましくは20~75μmである。上記粘着剤層が薄すぎると、厚み精度が低下したり粘着力が低くなったりする傾向があり、上記粘着剤層が厚すぎると、粘着シートをロール状にした際に端部から粘着剤層がはみ出す傾向がある。
【0071】
粘着剤層のゲル分率は、部材との密着性、硬化前の仮貼特性の点から、好ましくは1~99重量%未満、より好ましくは15~95重量%以下、特に好ましくは30~90重量%以下である。粘着剤層のゲル分率が高すぎると、被着体との密着性が低下し、曲面接着性が低下しやすい。低すぎると、粘着層の凝集力が劣り粘着特性、曲面接着性ともに低下する傾向がある。なお、ゲル分率の下限値は通常0重量%である。
【0072】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。まず、基材の表面に粘着剤層が積層されている粘着シートから粘着剤をピッキングにより採取し、当該粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み、23℃に調整した酢酸エチル中に24時間浸漬する。酢酸エチル浸漬の前後における粘着剤層の重量をそれぞれ測定し、両重量の差を金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量とする。酢酸エチル浸漬前における粘着剤層の重量に対する、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
【実施例0073】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるアクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度、その他の諸物性は前述の方法に従って測定した。
まず、実施例に先立って下記の成分を用意した。
【0074】
<アクリル系樹脂(A)>
〔アクリル系樹脂(A-1)の調製〕
温度調節機、温度計、撹拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル70部、重合触媒として2,2' -アゾビスイソブチロニトリル(AIBN(熱重合開始剤))0.06部を仕込み、撹拌しながら還流するまで昇温し、内温が安定した段階で、共重合成分(a)として2-エチルヘキシルアクリレート(a1)46部、アクリル酸(a2)8部、n-ブチルアクリレート(a3)45.9部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(a3)0.1部を混合した混合物を2時間にわたって滴下し、還流下で反応させた。次いで、反応開始から3時間後にトルエン8.3部とAIBN0.06部を追加し、反応開始から5.5時間後に反応を終了させて、アクリル系樹脂(A-1)溶液〔ガラス転移温度-54.9、樹脂分38.0%、粘度2,500mPa・s(25℃)、重量平均分子量(Mw)560,000〕を得た。
【0075】
〔アクリル系樹脂(A-2)の調製〕
温度調節機、温度計、撹拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル38部、トルエン1.3部、AIBN0.083部を仕込み、撹拌しながら還流するまで昇温し、内温が安定した段階で、共重合成分として2-エチルヘキシルアクリレート(a1)51.0部、アクリル酸(a2)3.9部、n-ブチルアクリレート(a3)40部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(a3)0.1部、酢酸ビニル(a3)5部を混合した混合物を2時間にわたって滴下し、還流下で反応させた。次いで、反応開始から3時間後にトルエン14.3部とAIBN0.07部を追加し、反応開始から5時間後にトルエン14.3部とAIBN0.07部を追加し、反応開始から7時間後にトルエン7.1部とAIBN0.06部を追加し、反応開始から9時間後に反応を終了させ、アクリル系樹脂(A-2)溶液〔ガラス転移温度-54.7℃、樹脂分50.0%、粘度9,500mPa・s(25℃)、重量平均分子量Mw602,000〕を得た。
【0076】
〔アクリル系樹脂(A-3)の調製〕
温度調節機、温度計、撹拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル30部、アセトン9.4部を仕込み、撹拌しながら還流するまで昇温し、内温が安定した段階で、共重合成分として2-エチルヘキシルアクリレート(a1)93.8部、アクリル酸(a2)3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(a3)0.2部、酢酸ビニル(a3)3部、酢酸エチル4部、AIBN0.03部を混合した混合物を2時間にわたって滴下し、還流下で反応させた。次いで、反応開始から3時間後に酢酸エチル9部とAIBN0.03部を追加し、反応開始から5時間後に酢酸エチル6部とAIBN0.04部を追加し、反応開始から7時間後に反応を終了させ、アクリル系樹脂(A-3)溶液〔ガラス転移温度-64.9℃、樹脂分48.0%、粘度13,000mPa・s(25℃)、重量平均分子量Mw980,000〕を得た。
【0077】
〔アクリル系樹脂(A’-1)の調製〕
温度調節機、温度計、撹拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル70部、AIBN0.04部を仕込み、撹拌しながら還流するまで昇温し、内温が安定した段階で、共重合成分としてn-ブチルアクリレート(a1)91.9部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(a2)0.1部、アクリル酸8部を混合した混合物を2時間にわたって滴下し、還流下で反応させた。次いで、反応開始から3時間後にトルエン13.3部とAIBN0.08部を追加し、反応開始から5.5時間後に反応を終了させ、アクリル系樹脂(A’-1)溶液〔ガラス転移温度-47.3℃、樹脂分35.0%、粘度7,000mPa・s(25℃)、重量平均分子量Mw877,000〕を得た。
【0078】
〔アクリル系樹脂(A’-2)の調製〕
温度調節機、温度計、撹拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル75部を仕込み、撹拌しながら還流するまで昇温し、内温が安定した段階で、共重合成分としてn-ブチルアクリレート(a1)70部、メタクリル酸メチル20部、アクリル酸(a2)9.9部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(a3)0.1部、酢酸エチル3.75部、AIBN0.035部を混合溶解した混合物を2時間にわたって滴下し、還流下で反応させた。次いで、反応開始から3時間後に酢酸エチル22.5部とAIBN0.04部を追加し、反応開始から5時間後に酢酸エチル7.5部、AIBN0.04部を追加して、反応開始から7時間後(重合率約99%)に反応を終了させ、アクリル系樹脂(A’-2)溶液〔ガラス転移温度-23.3℃、樹脂分38.6%、粘度8,500mPa・s(25℃)〕、重量平均分子量Mw456,000を得た。
【0079】
得られたアクリル系樹脂(A-1)~(A-3)、(A’―1)~(A’―2)の詳細を表1に示す。
なお、表1中の英数字は下記モノマーを表す。
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
Aac:アクリル酸
BA:n-ブチルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
Vac:酢酸ビニル
MMA:メタクリル酸メチル
【0080】
【0081】
<実施例1~7、比較例1~3>
上記の成分を後記の表2にしたがって配合し、酢酸エチルを用いて固形分濃度を30~60%の範囲に調整することにより、粘着剤組成物を得た。
【0082】
得られた粘着剤組成物を用いて、以下に示す手順にしたがって粘着シートを作製した。その後、この粘着シートを用いて、下記のとおり、粘着シートにおける粘着剤層のゲル分率、粘着シートの粘着力及び曲面接着性を評価した。
各項目の評価方法と評価基準は下記のとおりである。また、これらの結果を後記の表2に併せて示す。
【0083】
<粘着シートの作製>
粘着剤組成物を、厚み38μmの軽剥離シリコンセパレータ(三井化学東セロ社製、「SPPET01 38BU」)に、乾燥後の厚みが25μmとなるようにアプリケータを用いて塗工し、100℃×3分間乾燥し、粘着剤層を形成した。当該粘着剤層の表面に表2に記載の基材を貼り合わせた後、40℃で3日間エージングを施し粘着シートを作製した(軽剥離シリコンセパレータ/粘着剤層/基材の積層体)。
【0084】
〔ゲル分率〕
5cm×5cmの粘着シートから粘着剤層だけを取り出し、SUS製200メッシュに挟み、酢酸エチルに浸漬し23℃下で24時間静置した。静置後に取り出して、乾燥機を用いて酢酸エチルを完全に揮発させた。以下の計算式を用いて浸漬前後の重量からゲル分率を算出し、以下の基準で評価した。
ゲル分率=[ 粘着剤層の重量(浸漬前)-SUSメッシュ重量]/[粘着剤層の重量(浸漬後)-SUSメッシュ重量]×100
(評価基準)
〇:15%以上、95%以下
△:5%以上、15%未満 又は 95%超
×:5%未満
【0085】
〔粘着力〕
25mm幅に切り出した粘着シートの軽剥離シリコンセパレータを剥離し、粘着剤層側をSUS-BA板に常温下で2kgローラーを2往復して貼り付けた。23℃×50%RH環境下で30分静置後にAUTO Graph AG-X Plus(島津製作所社製)を用いて、300mm/minの速度で180°ピール強度(単位:N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:12N/25mm以上
〇:5N/25mm以上、12N/25mm未満
△:1N/25mm以上、5N/25mm未満
×:1N/25mm未満
【0086】
〔曲面接着性〕
25mm×25mmに切り出した粘着シートから軽剥離シリコンセパレータを剥離し、直径10mmのガラス棒に常温下で張り付けた。このガラス棒を-30℃の冷凍庫に1時間静置し、取り出した後に、常温下で30分静置した。これを1サイクルとして合計3サイクル実施し、各サイクルにおける粘着シートの外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:端部浮きなし
〇:端部浮き1mm未満
△:端部浮き1mm以上、2mm未満
×:端部浮き2mm以上
【0087】
【0088】
ユポ紙/80:ユポタック(登録商標)SGS-80 厚み:80μm(ユポ・コーポレーション社製)
PET/25:ルミラー(登録商標)T-60 厚み:25μm(東レ社製)
PET/50:ルミラー(登録商標)T-60 厚み:50μm(東レ社製)
PO/60:LDPE60 厚み:60μm(タマポリ社製)
【0089】
表2に示すとおり、実施例1~7の粘着シートでは、常温下で各種基材に対して適度な粘着力を示すとともに、-30℃の超低温環境下で保管後に常温に戻した際にも曲面接着性を維持できた。
これに対して、比較例1~3の粘着シートでは、常温下では各種基材に対して適度な粘着力を示すものの、-30℃の超低温環境下で保管後に常温に戻した際の曲面接着性は劣っていた。
本発明の粘着剤組成物から得られた粘着剤層は、常温下での粘着力に優れ、曲面部を有する被着体に貼付した場合においても、-10℃以下の超低温域から常温域の温度差であっても剥離することなく耐えることが可能な優れた曲面接着性を有する。したがって、本発明の粘着剤組成物は、種々の粘着用途、例えば、建材用、医薬用、包装用などに好適に用いることができ、とりわけ、要冷凍医薬品ラベルや冷凍食品ラベル、寒冷地用の粘着テープに有用であり、更にアンプル瓶の曲面に貼付されるラベルに有用である。