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特開2024-69134半導体成型用離型フィルム及び半導体パッケージの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069134
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】半導体成型用離型フィルム及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
H01L21/56 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106304
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2022179892
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 遼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義政
【テーマコード(参考)】
5F061
【Fターム(参考)】
5F061AA01
5F061BA00
5F061CA21
5F061CA22
5F061DA01
(57)【要約】
【課題】離型層側の表面抵抗率が効果的に低い半導体成型用離型フィルムを提供する。
【解決手段】離型層と導電層と基材層とをこの順に有する半導体成型用離型フィルムであり、前記離型層が導電粒子を含む、又は、前記導電層から前記離型層の表面まで前記導電粒子を介した導通パスが存在する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型層と導電層と基材層とをこの順に有し、
前記離型層が導電粒子を含む、半導体成型用離型フィルム。
【請求項2】
前記導電粒子の平均粒子径(μm)が前記離型層の厚み(μm)の50%~300%である、請求項1に記載の半導体成型用離型フィルム。
【請求項3】
前記導電層から前記離型層の表面まで前記導電粒子を介した導通パスが存在する、請求項1に記載の半導体成型用離型フィルム。
【請求項4】
前記導電粒子が金属粒子を含む、請求項1に記載の半導体成型用離型フィルム。
【請求項5】
前記導電層が金属蒸着層又は導電性ポリマー含有層である、請求項1に記載の半導体成型用離型フィルム。
【請求項6】
前記離型層に含まれる前記導電粒子の含有量が、前記離型層に含まれる前記導電粒子以外の成分の全量に対して0.5質量%~80質量%である、請求項1に記載の半導体成型用離型フィルム。
【請求項7】
前記導電粒子の平均粒子径(μm)が前記離型層の厚み(μm)の100%超300%以下であり、
前記離型層に含まれる前記導電粒子の含有量が、前記離型層に含まれる前記導電粒子以外の成分の全量に対して0.5質量%~50質量%である、請求項1に記載の半導体成型用離型フィルム。
【請求項8】
前記導電粒子の平均粒子径(μm)が前記離型層の厚み(μm)の50%~100%であり、
前記離型層に含まれる前記導電粒子の含有量が、前記離型層に含まれる前記導電粒子以外の成分の全量に対して0.5質量%~80質量%である、請求項1に記載の半導体成型用離型フィルム。
【請求項9】
前記導電粒子の平均粒子径(μm)が前記離型層の厚み(μm)の50%未満であり、
前記離型層に含まれる前記導電粒子の含有量が、前記離型層に含まれる前記導電粒子以外の成分の全量に対して5質量%~80質量%である、請求項1に記載の半導体成型用離型フィルム。
【請求項10】
前記半導体成型用離型フィルムが、トランスファーモールド又はコンプレッションモールドに用いられる、請求項1に記載の半導体成型用離型フィルム。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の半導体成型用離型フィルムを用いて、トランスファーモールド工程又はコンプレッションモールド工程を行う、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体成型用離型フィルム及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは通常、外気からの遮断及び保護のため樹脂で封止され、パッケージと呼ばれる成型品として基板上に実装される。従来、成型品は封止樹脂の流路であるランナーを介して連結した1チップ毎のパッケージとして成型される。金型から成型品が離型する離型性は、金型の構造、封止樹脂への離型剤の添加等により担保されている。
【0003】
近年、パッケージの小型化、多ピン化等の要請から、Ball Grid Array(BGA)方式、Quad Flat Non-leaded(QFN)方式、ウエハレベル-Chip Size Package(WL-CSP)方式等のパッケージが増加している。QFN方式においては、スタンドオフの確保及び端子部への封止材バリ発生を防止するため、一方、BGA方式及びWL-CSP方式においては、金型からのパッケージの離型性向上のため、離型フィルムが用いられる(例えば、特許文献1参照)。このように離型フィルムを使用する成型方法を「フィルムアシスト成型」という。離型フィルムとしては、一般的に樹脂製のフィルムが用いられている。
【0004】
最近では、パッケージの薄型化、放熱性向上等の要請から、半導体チップをフリップチップ接合し、チップの背面を露出させるパッケージが増えている。この成型方法はモールドアンダーフィル(MUF)と呼ばれる。MUFにおいては、半導体チップの保護とマスキングの目的で離型フィルムと半導体チップとが接触した状態で封止が行われる。
【0005】
フィルムアシスト成型においては、離型フィルムをロールから巻き出して使用する際、離型フィルムの剥離時に静電気が発生するので、パッケージの製造雰囲気下に存在する粉塵等の異物が離型フィルムに付着することがある。異物が付着した離型フィルムは、パッケージへの異物付着及びバリ発生の原因になる。
また、MUFにおいては、離型フィルムと半導体チップとが接触した状態で封止が行われるところ、離型フィルムが帯電しやすいと、離型フィルムを半導体チップから剥離する際の帯電及び放電により半導体チップが破壊される懸念がある。
【0006】
離型フィルムの帯電防止対策としては、離型フィルムを構成する基材に帯電防止剤を塗工し、さらに架橋型アクリル系粘着剤を塗工した、基材と帯電防止層と離型層とを有する離型フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-158242号公報
【特許文献2】特開2005-166904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基材と帯電防止層と離型層とをこの順に有する離型フィルムは、帯電防止層が離型層に覆われているので離型フィルムが帯電しやすくなる。その結果、離型フィルムの帯電を十分に抑制できないことがある。
【0009】
本開示の実施形態は、上記状況のもとになされた。
【0010】
本開示の実施形態は、離型層側の表面抵抗率が効果的に低い半導体成型用離型フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
【0012】
<1> 離型層と導電層と基材層とをこの順に有し、
前記離型層が導電粒子を含む、半導体成型用離型フィルム。
<2> 前記導電粒子の平均粒子径(μm)が前記離型層の厚み(μm)の50%~300%である、<1>に記載の半導体成型用離型フィルム。
<3> 前記導電層から前記離型層の表面まで前記導電粒子を介した導通パスが存在する、<1>又は<2>に記載の半導体成型用離型フィルム。
<4> 前記導電粒子が金属粒子を含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の半導体成型用離型フィルム。
<5> 前記導電層が金属蒸着層又は導電性ポリマー含有層である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の半導体成型用離型フィルム。
<6> 前記離型層に含まれる前記導電粒子の含有量が、前記離型層に含まれる前記導電粒子以外の成分の全量に対して0.5質量%~80質量%である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の半導体成型用離型フィルム。
<7> 前記導電粒子の平均粒子径(μm)が前記離型層の厚み(μm)の100%超300%以下であり、
前記離型層に含まれる前記導電粒子の含有量が、前記離型層に含まれる前記導電粒子以外の成分の全量に対して0.5質量%~50質量%である、<1>~<6>に記載の半導体成型用離型フィルム。
<8> 前記導電粒子の平均粒子径(μm)が前記離型層の厚み(μm)の50%~100%であり、
前記離型層に含まれる前記導電粒子の含有量が、前記離型層に含まれる前記導電粒子以外の成分の全量に対して0.5質量%~80質量%である、<1>~<6>に記載の半導体成型用離型フィルム。
<9> 前記導電粒子の平均粒子径(μm)が前記離型層の厚み(μm)の50%未満であり、
前記離型層に含まれる前記導電粒子の含有量が、前記離型層に含まれる前記導電粒子以外の成分の全量に対して5質量%~80質量%である、<1>~<6>に記載の半導体成型用離型フィルム。
<10> 前記離型フィルムが、トランスファーモールド又はコンプレッションモールドに用いられる、<1>~<9>のいずれか1項に記載の半導体成型用離型フィルム。
<11> <1>~<10>のいずれか1項に記載の半導体成型用離型フィルムを用いて、トランスファーモールド工程又はコンプレッションモールド工程を行う、半導体パッケージの製造方法。
<7> 前記離型フィルムが、トランスファーモールド又はコンプレッションモールドに用いられる、<1>~<6>のいずれか1項に記載の半導体成型用離型フィルム。
<8> <1>~<7>のいずれか1項に記載の半導体成型用離型フィルムを用いて、トランスファーモールド工程又はコンプレッションモールド工程を行う、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示の実施形態によれば、離型層側の表面抵抗率が効果的に低い半導体成型用離型フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0015】
<半導体成型用離型フィルム>
本開示は、離型層側の表面抵抗率が効果的に低い半導体成型用離型フィルム(単に「離型フィルム」ともいう。)を開示する。
【0016】
本開示に係る離型フィルムは、離型層と導電層と基材層とをこの順に有し、離型層が導電粒子を含む。
本開示に係る離型フィルムでは、離型層が導電粒子を含むことで、導電層から離型層の表面まで導電粒子を介した導通パスを形成することが可能となり、その結果、離型層側の表面抵抗率を効果的に低くすることができる。
【0017】
本開示に係る離型フィルムは、導電層から離型層の表面まで導電粒子を介した導通パスが存在することが好ましい。離型フィルムにおいて、導電層から離型層の表面まで導電粒子を介した導通パスが存在することは、離型フィルムの離型層側の表面抵抗率を測定することにより判定可能であり、離型層側の表面抵抗率が1.0×10(Ω/sq)未満のとき、導電層から離型層の表面まで導電粒子を介した導通パスが存在すると判定する。
【0018】
以下に、本開示の離型フィルムについて、各層の特性、各層に含まれる成分等を説明する。
【0019】
[導電粒子]
離型層に含まれる導電粒子としては、金属粒子、炭素系導電粒子、有機又は無機のコア粒子の表面に金属層を有する粒子等が挙げられる。導電粒子は1種単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。導電粒子としては、入手の容易さの観点からは、金属粒子及び炭素系導電粒子が好ましく、表面抵抗率の低下の観点からは、金属粒子が好ましい。
【0020】
金属粒子は、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の粉末であってよい。合金は、固溶体、共晶及び金属間化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。合金は、例えば、ステンレス鋼(Fe-Cr系合金、Fe-Ni-Cr系合金)であってよい。金属化合物は、例えば、フェライト等の酸化物であってよい。
【0021】
炭素系導電粒子は、カーボンブラック、黒鉛等の粉末状導電性フィラー、カーボンナノチューブ(CNT)、炭素繊維等の繊維状導電性フィラーなどであってもよい。
【0022】
導電粒子は、一種の金属元素又は複数種の金属元素を含んでよい。導電粒子に含まれる金属元素は、例えば、卑金属元素、貴金属元素、遷移金属元素、及び希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。導電粒子に含まれる金属元素は、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、銀(Ag)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びジスプロシウム(Dy)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0023】
導電粒子は、金属元素以外の元素を含んでもよい。導電粒子は、例えば、酸素、ホウ素、及びケイ素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。導電粒子は、Fe-Si系合金、Fe-Si-Al系合金(センダスト)、Fe-Ni系合金(パーマロイ)、Fe-Cu-Ni系合金(パーマロイ)、Fe-Cr-Si系合金(電磁ステンレス鋼)、Nd-Fe-B系合金(希土類磁石)、Al-Ni-Co系合金(アルニコ磁石)及びフェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の粒子であってよい。フェライトは、例えば、スピネルフェライト、六方晶フェライト、又はガーネットフェライトであってよい。導電粒子は、上記の元素及び組成物の一種を含んでよく、上記の元素及び組成物の複数種を含んでもよい。
【0024】
導電粒子が金属粒子を含む場合、導電粒子の全量に対する金属粒子の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0025】
導電粒子の粒子形状に限定はなく、球状、板状、及び不定形のいずれでもよい。導電粒子は、半導体パッケージ表面を傷つけにくい観点から、球状の粒子であることが好ましい。
【0026】
導電粒子の平均粒子径は、導通パスを効率的に形成する観点から、離型層の厚みの50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。導電粒子の平均粒子径は、半導体パッケージ表面を傷つけにくい観点から、離型層の厚みの300%以下が好ましく、200%以下がより好ましく、150%以下がさらに好ましい。
【0027】
本開示において離型層の厚みとは、下記の測定方法により求める値を意味する。
離型フィルムを一部切り取り、樹脂に包埋した後、離型フィルムの厚み方向に切断して薄片試料を作製する。この薄片試料を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する。SEM画像内の離型層において離型層から導電粒子が突出していない部位Aを無作為に10箇所選び、10箇所の厚み(導電層と離型層との界面から部位Aにおける離型層の表面までの距離)を計測し、10箇所の厚みを平均する。
【0028】
導電粒子の平均粒子径は、0.5μm~100μmが好ましく、1μm~50μmがより好ましく、1μm~20μmがさらに好ましい。導電粒子の平均粒子径が0.5μm以上であると、導通パスの形成のために大量の導電粒子を必要とせず、過剰量の導電粒子が引き起こす離型層の脆弱化又は離型性の悪化の懸念が少ない。導電粒子の平均粒子径が100μm以下であると、離型層の形成に用いる組成物中において導電粒子の沈降が起こりにくく、離型層の形成の作業性がよい。
【0029】
導電粒子の平均粒子径は、下記の測定方法により求める。
離型フィルムを一部切り取り、樹脂に包埋した後、離型フィルムの厚み方向に切断して薄片試料を作製する。この薄片試料を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する。SEM画像において、離型層に含まれる導電粒子(一次粒子、ただし導電粒子が凝集して二次粒子を形成している場合は二次粒子)を無作為に100個選び、100個の長径を計測する。100個の長径の算術平均を、導電粒子の平均粒子径とする。
【0030】
離型層に含まれる導電粒子の含有量は、離型層に含まれる導電粒子以外の成分(固形分)の全量に対して0.5質量%~80質量%であることが好ましい。導電粒子の含有量がそれ以外の成分の全量に対して0.5質量%以上であると、導通パスが形成されやすい。導電粒子の含有量がそれ以外の成分の全量に対して80質量%以下であると、離型層の脆弱化又は離型性の悪化の懸念が少ない。上記の観点から、離型層に含まれる導電粒子の含有量は、離型層に含まれる導電粒子以外の成分の全量に対して5質量%~75質量%であることがより好ましく、10質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
離型層に含まれる導電粒子の含有量は、導電粒子の平均粒子径が離型層の厚みに対して大きいほど少なく、導電粒子の平均粒子径が離型層の厚みに対して小さいほど多いことが好ましい。
導電粒子の平均粒子径が離型層の厚みの100%超300%以下である場合、離型層に含まれる導電粒子の含有量は、離型層に含まれる導電粒子以外の成分の全量に対して0.5質量%~50質量%であることが好ましく、1質量%~30質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
導電粒子の平均粒子径が離型層の厚みの50%~100%である場合、離型層に含まれる導電粒子の含有量は、離型層に含まれる導電粒子以外の成分の全量に対して0.5質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~75質量%であることがより好ましく、10質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
導電粒子の平均粒子径が離型層の厚みの50%未満である場合、離型層に含まれる導電粒子の含有量は、離型層に含まれる導電粒子以外の成分の全量に対して5質量%~80質量%であることが好ましく、8質量%~75質量%であることがより好ましく、10質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
[離型層]
離型層は、半導体パッケージ成型時の離型を担う。離型層は少なくとも導電粒子と樹脂とを含む。離型層の樹脂は特に限定されない。樹脂は、半導体パッケージとの離型性、離型層の耐熱性等の観点から、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂が好ましく、架橋型アクリル樹脂(以下「架橋型アクリル共重合体」ともいう。)がより好ましい。
【0033】
アクリル樹脂は、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、2-エチルヘキシルアクリレート等の低ガラス転移温度(Tg)モノマーを主モノマーとし、主モノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基モノマーとを共重合することで得られるアクリル共重合体であることが好ましい。架橋型アクリル共重合体は、架橋剤を使用して上記モノマーを架橋することにより製造することができる。
【0034】
架橋型アクリル共重合体の製造に使用される架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の公知の架橋剤が挙げられる。アクリル樹脂中に緩やかに広がった網目状構造を形成するために、架橋剤は3官能、4官能等の多官能架橋剤であることが好ましい。
【0035】
離型層は、本開示の離型フィルムの効果が奏される限り、必要に応じて、溶媒、アンカリング向上剤、架橋促進剤、帯電防止剤、フィラー、着色剤等を含んでいてもよい。
【0036】
離型層の厚みは特に限定されず、離型層に含まれる導電粒子の粒子径を考慮して設定してよい。離型層の厚みは、0.1μm~100μmが好ましい。離型層の厚みが0.1μm以上であると、モールド工程において必要とされる柔軟性又は延伸性を発揮するのに十分な樹脂を含有でき、基材層からの離型層の剥離又は離型層の欠落が起きにくい。離型層の厚みが100μm以下であると、熱硬化性樹脂を用いて離型層を形成する場合において熱硬化時の熱収縮が抑えられ、離型フィルムの平坦性が保たれる。離型層の厚みは上記の観点から、1μm~100μmがより好ましく、10μm~50μmがさらに好ましい。
【0037】
離型層の厚みは、離型層の形成(例えば、導電粒子及び樹脂を含有する組成物の塗布と熱硬化による形成)が容易であり、基材層からの剥離又は離型層の欠落が起こりにくいという観点から、10μm~50μmが最も好ましい。導電層上に従来の離型層が配置されている離型フィルムにおいて離型層の厚みが10μm~50μmであると、導電層の帯電防止機能が妨げられる場合があるが、本開示の離型フィルムにおいては、導電層から離型層の表面まで導電粒子を介した導通パスの形成が可能であるため、導電層の帯電防止機能が発揮される。
【0038】
第二の離型フィルムにおいては、離型層側の表面抵抗率が1.0×10(Ω/sq)未満である。第一の離型フィルムにおいても、離型層側の表面抵抗率が1.0×10(Ω/sq)未満であることが好ましい。離型層側の表面抵抗率は、1.0×10(Ω/sq)以下であることがより好ましく、1.0×104(Ω/sq)以下であることがさらに好ましく、1.0×103(Ω/sq)以下であることが特に好ましい。
【0039】
離型フィルムの離型層側の表面抵抗率は、下記の測定方法により測定した値である。
絶縁抵抗計の測定台の上に、離型層を上にして離型フィルムを置き、離型フィルム上に外径50mmの円形電極と、内径70mm且つ外径80mmのリング状電極とを置く。この際、円形電極の中心とリング状電極の中心とを一致させる。両電極に端子をつなぎ、電圧100V、測定時間1分で表面抵抗(Ω)を測定し、下記の式から表面抵抗率(Ω/sq)を算出する。測定環境は、温度23±2℃、相対湿度50±10%である。
表面抵抗率=π×(D+d)/(D-d)×R
ここで、π:円周率、D:リング状電極の内径、d:円形電極の外径、R:表面抵抗である。
【0040】
[導電層]
導電層は、帯電防止機能を担う。導電層としては、例えば、各種の蒸着法、金属箔のラミネート等により形成される金属薄膜層;公知の帯電防止剤を塗付して形成した層;導電性ポリマー含有層が挙げられる。導電層は、金属蒸着層又は導電性ポリマー含有層であることが好ましい。
離型フィルムの表面抵抗率を下げる観点からは、導電層は金属薄膜層であることが好ましく、中でも、形成される層の均一性が高い観点から金属蒸着層であることがより好ましい。他方、基材層からの剥離のしにくさ、作業性、及び酸化劣化を抑える観点からは、導電層は導電性ポリマー含有層であることが好ましい。
【0041】
金属薄膜層を構成する金属としては、特に限定されないが、金属としては比較的軽く、また、蒸着法による薄膜形成が容易であるアルミニウムが好ましい。
【0042】
帯電防止剤としては、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~第3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種カチオン性帯電防止剤、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、スルホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン系帯電防止剤、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性帯電防止剤、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性帯電防止剤などが挙げられる。
【0043】
導電性ポリマー含有層を構成する導電性ポリマーとしては特に限定されないが、上記の各種帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0044】
導電層の厚みは、特に限定されないが、金属蒸着層の場合には、基材層からの導電層の剥離又は導電層の欠落が起きにくい観点から、5nm~1000nmが好ましく、20nm~500nmがより好ましく、30nm~100nmがさらに好ましい。導電性ポリマー含有層の場合には、導電層の厚みは、50nm~1000nmが好ましく、100nm~800nmがより好ましく、200nm~800nmがさらに好ましい。50nm以上の場合には帯電防止効果に優れる傾向にあり、1000nm以下の場合には価格的に優れる傾向にある。
【0045】
[基材層]
基材層は、離型層及び導電層を支持する。基材層としては特に限定されず、本技術分野で使用されている樹脂含有基材から選択することができる。金型の形状に対する追従性の観点からは、延伸性に優れる樹脂含有基材が好ましい。
【0046】
基材層は、半導体パッケージの樹脂成型が高温(100℃~200℃程度)で行われることを考慮すると、この温度以上の耐熱性を有することが望ましい。離型フィルムを金型に装着する際及び成型時に樹脂が流動する際に、封止樹脂のシワ、離型フィルムの破れ等の発生を抑制するために、高温時の弾性率、伸び等を考慮して選択することが望ましい。
【0047】
基材層の材料は、耐熱性及び高温時の弾性率の観点から、ポリエステル樹脂であることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、これらの共重合体又は変性樹脂が挙げられる。
【0048】
基材層としては、ポリエステル樹脂を成型したポリエステルフィルムが好ましく、金型への追従性の観点からは、2軸延伸ポリエステルフィルムがより好ましい。
【0049】
基材層の厚みは特に限定されず、10μm~300μmが好ましく、20μm~100μmがより好ましい。基材層の厚みが10μm以上であると、基材層及び離型フィルムがやぶれにくく取扱い性に優れる。基材層の厚みが100μm以下であると、金型に対する基材層及び離型フィルムの追従性が優れるため、成型された半導体パッケージのシワ等の発生が抑制される。
【0050】
[離型フィルムの製造方法]
本開示の離型フィルムは、基材層となる基材の上に導電層を形成し、さらに、導電層の上に離型層を形成することで得られる。導電層は、例えば、蒸着法、ラミネート法、塗工法により基材上に形成することができる。離型層は、例えば、導電粒子と樹脂と溶媒とを含む組成物を導電層上に塗布し熱硬化させて形成することができる。離型層は、剥離シート上に別途形成し、熱圧着によって導電層上に積層してもよい。
【0051】
本開示の離型フィルムは、必要に応じて、導電層と基材層との間に着色層等の層を設けてもよい。
【0052】
[離型フィルムの用途]
本開示の離型フィルムは、例えば、半導体チップを封止材で封止する際に用いる。本開示の離型フィルムは、トランスファーモールド又はコンプレッションモールドに用いられることが好ましい。
【0053】
本開示の離型フィルムを用いることにより、半導体チップから剥離する際の帯電及び放電を十分に抑えることができる。
【0054】
<半導体パッケージの製造方法>
本開示の半導体パッケージの製造方法では、本発明の離型フィルムを用いて、トランスファーモールド工程又はコンプレッションモールド工程を行う。
【0055】
半導体パッケージの製造方法では、まず、成型装置の金型に前述の本開示の離型フィルムを配置し、離型フィルムを金型の形状に追従させる。離型フィルムを金型の形状に追従させる方法としては、真空吸着等が挙げられる。
【0056】
そして、離型フィルムを追従させた金型内にて半導体チップを封止材で封止する。金型内に半導体チップと離型フィルムとを配置した状態で、半導体チップを封止材で封止することで半導体パッケージを製造することができる。半導体パッケージの製造後、金型を開放して成型された半導体パッケージを取り出す。
【0057】
本開示の半導体パッケージの製造方法では、本開示の離型フィルムを用いるため、半導体チップから剥離する際の帯電及び放電を十分に抑えることができる。
【0058】
上記方法において使用される半導体チップとしては、例えば、半導体素子、コンデンサ、端子等が挙げられる。上記方法において使用する封止材の種類は特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を含む樹脂組成物が挙げられる。
【実施例0059】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>
[粘着剤1の調製]
樹脂製容器にS-43(綜研化学(株)製、アクリル酸エステル共重合物)11.3質量部、コロネートL(東ソー(株)製、多官能イソシアネート架橋剤)0.36質量部、トルエン30.6質量部、メチルエチルケトン7.7質量部を投入し、攪拌し、粘着剤1を調製した。
【0061】
[基材の準備]
SMH-38(ユニチカ(株)製、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、片面鏡面・片面マット仕様)を用意した。
【0062】
[導電層(Al層)の形成]
上記のPETフィルムの鏡面にAl(アルミニウム)蒸着加工を施し、Al蒸着PETフィルムを得た。
【0063】
[離型層の形成]
導電粒子であるSQ(BASF(株)製、鉄粉、平均粒子径6μm)0.30質量部を、50質量部の粘着剤1に投入して攪拌し、塗工液とした。水平な台の上に置いたAl蒸着PETフィルムのAl蒸着面に塗工液をバーコータで塗布した。塗工液を塗布したフィルムを予め100℃に加温した防爆オーブン中に入れ、2分後に取り出した。こうしてAl蒸着層上に離型層を形成し、離型フィルムを得た。
【0064】
<実施例2~6>
表1に記載の配合にて粘着剤1~3を作製し、表2及び表3に記載した配合(質量部)の離型層用塗工液を調製した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
なお、表2及び表3における「導電粒子の含有量」は、粘着剤固形分に対する導電粒子の質量割合である。
【0065】
【表1】
【0066】
<実施例7~10>
[導電層(導電性ポリマー層)の形成]
PETフィルムの鏡面に第4級アンモニウム塩を有するカチオン性帯電防止剤(導電性ポリマー、コニシ株式会社製、ボンディップ(登録商標)PA-100主剤/ボンディップ(登録商標)PA-100硬化剤=100質量部/25質量部)を混合溶剤(質量基準で水/イソプロピルアルコール=1/1)で2.5質量%に希釈したものを塗工、乾燥し、導電性ポリマー層付PETフィルムを得た。
導電層をAl蒸着膜から導電性ポリマー層に変更した以外は実施例3~6と同様にして離型フィルムを作製した。
【0067】
<比較例1~9>
表3に記載した配合の離型層用塗工液を調製した。そして、PETフィルム上にAl蒸着層を形成せず、PETの平滑面に塗工液を塗布した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。表3の導電層の欄における「-」は、導電層を設けていないことを意味する。
【0068】
<比較例10~12>
表3に記載した配合の離型層用塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0069】
<比較例13>
表3に記載した配合の離型層用塗工液を用いた以外は実施例7と同様にして、離型フィルムを得た。
【0070】
<離型フィルムの性能評価>
実施例1~10及び比較例1~13の各離型フィルムに対して下記の評価を実施した。評価結果を表2及び表3に示す。
【0071】
[離型層の厚みの測定]
上述の方法で離型層の厚みを測定した。
【0072】
[離型層の厚みに対する導電粒子の平均粒子径]
上述の方法で導電粒子の粒子径を測定し、平均粒子径を求めた。導電粒子の平均粒子径を離型層の厚みで除算し、百分率(%)に換算した。
【0073】
[表面抵抗率]
上述の方法で表面抵抗率を測定した。
【0074】
[導通パスの有無]
離型フィルムの離型層側の表面抵抗率が1.0×10(Ω/sq)未満の場合、導電層から離型層の表面まで導電粒子を介した導通パスが存在すると判定した。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】

【0077】
比較例1~9はいずれも離型層側の表面抵抗率が1.0×1013(Ω/sq)を超えており、離型層側の表面抵抗率が大きい。
【0078】
比較例10~12から、離型層の厚みが厚いほど離型層側の表面抵抗率(Ω/sq)が大きいことがわかる。離型層を薄くした比較例10であっても、比較例10の離型層は導電粒子を含まないため、離型層側の表面抵抗率が1.0×10(Ω/sq)を超えており、離型層側の表面抵抗率が大きい。
【0079】
他方、実施例1~10はいずれも表面抵抗率が1.0×10(Ω/sq)未満であり、離型層側の表面抵抗率が低い。