(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069296
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】シンチレータアレイ、放射線検出器、および放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
G21K 4/00 20060101AFI20240514BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20240514BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240514BHJP
【FI】
G21K4/00 A
G01T1/20 D
G01T1/20 G
A61B6/42 530S
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024032787
(22)【出願日】2024-03-05
(62)【分割の表示】P 2023024125の分割
【原出願日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2019198878
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘康
(72)【発明者】
【氏名】森本 一光
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加温冷却による寸法変化量が少ないシンチレータアレイが求められている。さらに、加温冷却による寸法変化量の制御が重要になる。
【解決手段】シンチレータアレイ1は、焼結体を含む少なくとも一つのシンチレータセグメント2と、光を反射する第1の反射層3と、を有する構造体と、構造体の表面に設けられ、光を反射する第2の反射層4と、構造体の表面と第2の反射層4との間に設けられ、樹脂を含む厚さ5μm以上30μm以下の接着層5と、を具備し、反りが50μm以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体を含む少なくとも一つのシンチレータセグメントと、光を反射する第1の反射層と、を有する構造体と、
前記構造体の表面に設けられ、光を反射する第2の反射層と、
前記構造体の前記表面と前記第2の反射層との間に設けられ、樹脂を含む厚さ5μm以上30μm以下の接着層と、
を具備し、
反りが50μm以下である、シンチレータアレイ。
【請求項2】
前記少なくとも一つのシンチレータセグメントの体積は、1mm3以下である、請求項1に記載のシンチレータアレイ。
【請求項3】
前記第2の反射層の厚さは、50μm以上250μm以下である、請求項1または請求項2に記載のシンチレータアレイ。
【請求項4】
前記第1および第2の反射層からなる群より選ばれる少なくとも一つの反射層は、
エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む樹脂と、
酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、および酸化ガドリニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含み、光を反射する反射粒子と、
を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項5】
前記少なくとも一つの反射層における前記樹脂は、15%以上60%以下の第1の質量比を有し、
前記少なくとも一つの反射層における前記反射粒子は、40%以上85%以下の第2の質量比を有し、
前記第1の質量比と前記第2の質量比との合計は、100%である、請求項4に記載のシンチレータアレイ。
【請求項6】
前記接着層は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれ、光、熱、または湿気により硬化された少なくとも一つの樹脂を含む、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項7】
前記接着層は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、および酸化シリコンからなる群より選ばれる少なくとも一つをさらに含む、請求項6に記載のシンチレータアレイ。
【請求項8】
前記樹脂フィルムは、白色PETフィルムである、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項9】
前記第1および第2の反射層からなる群より選ばれる少なくとも一つの反射層は、50℃よりも高く120℃以下のガラス転移点を有する、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のシンチレータアレイ。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のシンチレータアレイを具備する、放射線検出器。
【請求項11】
請求項10に記載の放射線検出器を具備する、放射線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、シンチレータアレイ、シンチレータアレイの製造方法、放射線検出器、および放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断や工業用非破壊検査等の分野では、X線断層撮影装置(以下、X線CT装置と記す)のような放射線検査装置を用いた検査を行う。X線CT装置は、扇状のファンビームX線を照射するX線管(X線源)と、多数のX線検出素子を備えるX線検出器とを、被検査体の断層面を挟んで互いに対向して配置する。
【0003】
X線CT装置は、被検査体に対して回転しながらX線管からファンビームX線を照射し、被検査体を透過したX線吸収データをX線検出器で収集する。この後、X線吸収データをコンピュータで解析することによって、断層像を再生する。
【0004】
X線CT装置の放射線検出器は、固体シンチレータを用いた検出素子を広く使用する。固体シンチレータを用いた検出素子を具備する放射線検出器は、検出素子を小型化してチャンネル数を増やすことが容易であることから、X線CT装置等の解像度をより一層高めることができる。
【0005】
X線CT装置等の放射線検査装置は、医療用や工業用等の様々な分野に用いられている。X線CT装置の例は、フォトダイオード等の検出素子を縦横に2次元的に並べ、その上にシンチレータアレイを搭載したマルチスライス型の装置を含む。マルチスライス型の装置は、コンピュータ断層撮影(CT)を重ねることができ、これによりCT画像を立体的に示すことができる。
【0006】
放射線検査装置に搭載される放射線検出器は、縦横複数列に並べられた複数の検出素子を備え、それぞれの検出素子がシンチレータセグメントを有する。放射線検出器は、シンチレータセグメントに入射するX線を可視光に変換し、可視光を検出素子で電気信号に変換して画像を形成する。近年、高解像度を得るために検出素子を小型化し、さらに隣り合う検出素子間のピッチを狭くする。これらに伴って、シンチレータセグメントのサイズも小さくなっている。
【0007】
上述したようなシンチレータセグメントに使用される各種のシンチレータ材料のうち、希土類酸硫化物系の蛍光体セラミックスは、発光効率が高く、シンチレータセグメントに使用するために好適な特性を有する。このため、シンチレータ材料である希土類酸硫化物系蛍光体セラミックスの焼結体(インゴット)から切り出し加工または溝切り加工等の加工法を用いて加工されたシンチレータセグメントと、検出素子としてのフォトダイオードと、を組み合せた放射線検出器が普及しつつある。
【0008】
蛍光体セラミックスを用いたシンチレータの例は、ガドリニウム酸硫化物蛍光体の焼結体からなるシンチレータを含む。上記シンチレータを用いたシンチレータアレイは、例えば以下のようにして製造される。まず、シンチレータ材料である希土類酸硫化物系蛍光体粉末を適当な形状に成形し、これを焼結して焼結体(インゴット)を形成する。この焼結体に切り出し加工または溝切り加工等の切断加工を施して、複数の検出素子に対応するシンチレータセグメントを形成する。さらに、これらのシンチレータセグメント間に光を反射する反射層を形成して一体化してシンチレータアレイを製造する。
【0009】
上述したようなシンチレータアレイを放射線検出器に使用する場合、シンチレータアレイの寸法精度がCT診断画像の解像度に影響する。さらに、X線CT装置に搭載される放射線検出器には最大50℃の温度が加わる。樹脂を含む反射層を有するシンチレータアレイでは、加温による反射層の膨張、および温度低下による収縮が発生し、隣接するシンチレータセグメント間で微小な寸法変化、すなわちシンチレータセグメントのピッチずれ、シンチレータアレイの反りを主な要因とする外形寸法のバラツキ等が生まれてしまう。これらは放射線検査装置による診断画像の解像度を悪化させる原因となる。
【0010】
放射線検査装置による診断画像の高解像度化が進む中、加温冷却による寸法変化量が少ないシンチレータアレイが求められている。さらに、放射線検出器の検出面積の増大に伴ってシンチレータアレイの面積も大きくなるため、加温冷却による寸法変化量の制御が重要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2013/080565号公報
【特許文献2】国際公開第2017/082337号公報
【特許文献3】国際公開第2017/110850号公報
【発明の概要】
【0012】
実施形態のシンチレータアレイは、焼結体を含む少なくとも一つのシンチレータセグメントと、光を反射する第1の反射層と、を有する構造体と、構造体の表面に設けられ、光を反射する第2の反射層と、構造体の表面と第2の反射層との間に設けられ、樹脂を含む厚さ5μm以上30μm以下の接着層と、を具備し、反りが50μm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】シンチレータアレイの構造例を示す平面図である。
【
図2】シンチレータアレイの構造例を示す断面図である。
【
図3】シンチレータアレイの接着層厚と反りの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0015】
以下、実施形態のシンチレータアレイ、放射線検出器、および放射線検査装置について説明する。
【0016】
(シンチレータアレイ)
図1は、シンチレータアレイの構造例を示す平面図である。
図2は、シンチレータアレイの構造例を示す断面図である。
図1および
図2は、シンチレータアレイ1と、シンチレータセグメント2と、反射層3と、反射層4と、接着層5と、を図示する。なお、反射層4および接着層5は、
図1において便宜のため省略される。
【0017】
シンチレータアレイ1は、複数のシンチレータセグメント2と、反射層3と、反射層4と、接着層5と、を具備する。シンチレータセグメント2および反射層3は、X線入射面である表面20aと、表面20aの反対側の表面20bと、を有する構造体20を形成する。なお、シンチレータアレイ1は、少なくとも一つのシンチレータセグメント2を有していればよい。シンチレータセグメント2の個数は、放射線検出器の構造や解像度等に応じて適宜に設定される。
【0018】
シンチレータセグメント2は、入射される放射線(X線)を光(可視光)に変換する。複数のシンチレータセグメント2は、それらに接着する反射層3により一体化されて構造体20を形成する。
【0019】
反射層3は、光(可視光)を反射する。反射層3は、X線を透過してもよい。反射層3は、隣接するシンチレータセグメント2の間に設けられ、それぞれのシンチレータセグメント2に接着する。
【0020】
反射層4は、光(可視光)を反射する。反射層4は、X線を透過してもよい。反射層4は、
図2に示すように、接着層5を介して表面20aの上に設けられるとともに構造体20を覆う。反射層4は、光を反射する反射粒子を含む樹脂をシート状に成型することにより形成される樹脂フィルムを、接着層5を介して表面20aに接着することにより形成される。
【0021】
シンチレータアレイ1は、複数のシンチレータセグメント2を一列に並べた構造、または
図1に示すように複数のシンチレータセグメント2を縦方向および横方向に所定の個数ずつ2次元的に並べた構造のいずれかの構造を有していてもよい。複数のシンチレータセグメント2を2次元的に配列する場合、反射層3は、縦方向に配列されたシンチレータセグメント2間および横方向に配列されたシンチレータセグメント2に設けられる。反射層3は、表面20aに沿ってシンチレータセグメント2を囲んでもよい。
【0022】
シンチレータセグメント2は、希土類酸硫化物蛍光体を含む焼結体を有する。希土類酸硫化物蛍光体の例は、付活剤としてプラセオジム(Pr)を含有する希土類酸硫化物蛍光体を含む。希土類酸硫化物としては、例えばイットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)等の希土類元素の酸硫化物が挙げられる。
【0023】
希土類酸硫化物蛍光体は、
一般式:RE2O2S:Pr …(1)
(REはY、Gd、La、およびLuからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を示す)
で表される組成を有することが好ましい。
【0024】
上述した希土類元素のうち、特にGdはX線吸収係数が大きく、シンチレータアレイ1の光出力の向上に寄与する。従って、シンチレータセグメント2は、Gd2O2S:Pr蛍光体を有することがより好ましい。なお、Gdの一部は他の希土類元素で置換してもよい。このとき、他の希土類元素によるGdの置換量は10モル%以下であることが好ましい。
すなわち、希土類酸硫化物蛍光体は、
一般式:(Gd1-x,REx)2O2S:Pr …(2)
(式中、REはY、La、およびLuからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を示し、xは0≦x≦0.1を満足する数(原子比)である)
で実質的に表される組成を有することが好ましい。
【0025】
シンチレータセグメント2は、光出力を増大させる付活剤として、プラセオジム(Pr)を有する。Prは、他の付活剤に比べてアフターグローを低減できる。従って、付活剤としてPrを含有する希土類酸硫化物蛍光体セラミックスは、放射線検出器の蛍光発生器として有効である。
【0026】
希土類酸硫化物蛍光体におけるPrの含有量は、蛍光体母体(例えばGd2O2SのようなRE2O2S)の含有量に対して0.001モル%以上10モル%以下あることが好ましい。Prの含有量が10モル%を超えると、光出力の低下を招く。Prの含有量が0.001モル%未満では、主付活剤としての効果を十分に得ることができない。Prの含有量は、0.01モル%以上1モル%以下であることがより好ましい。
【0027】
希土類酸硫化物蛍光体は、主付活剤としてのPrに加えて、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、およびリン(P)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を共付活剤として微量含有してもよい。これらの元素は、曝射劣化の抑制、アフターグローの抑制等に対して効果を示す。これら共付活剤の含有量は、総量として、蛍光体母体に対して0.00001モル%以上0.1モル%以下の範囲であることが好ましい。
【0028】
シンチレータセグメント2を構成する焼結体は、高純度な希土類酸硫化物系蛍光体セラミックス(シンチレータ材料)からなることが好ましい。不純物はシンチレータの感度の低下要因となるため、できるだけ不純物量が少ないことが好ましい。特に、燐酸根(PO4)は感度低下の原因となるため、その含有量は100ppm以下であることが好ましい。フッ化物等を焼結助剤として使用して焼結体の密度を高める場合、焼結助剤が不純物として残留するため、感度の低下をもたらす。
【0029】
焼結体は、立方体形状または直方体形状を有する。シンチレータセグメント2の体積は、1mm3以下であることが好ましい。シンチレータセグメント2を小型化することによって、検出される画像を高精細化することができる。シンチレータセグメント2の縦(L)、横(S)、厚さ(T)の各サイズは必ずしも限定されないが、それぞれ1mm以下であることが好ましい。シンチレータセグメント2の体積が1mm3以下である場合、反射層3の幅(W)は100μm以下、さらには50μm以下に薄くすることも可能である。
【0030】
反射層3は、光を透過する樹脂(透光性樹脂)と、樹脂中に分散され、光を反射する反射粒子と、を含有する。樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。反射粒子は、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化シリコン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、および酸化ガドリニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。なお、樹脂中に含まれる気泡も反射粒子としての役割を果たすことがある。
【0031】
反射層4は、反射層3と同様の透光性樹脂および反射粒子を用いることができる。反射層4は、上記透光性樹脂および反射粒子を含む材料を予めシート状に加工して樹脂フィルムを形成し、接着層5を介して樹脂フィルムを構造体20の表面20aに貼り付けることにより形成される。樹脂フィルムとしては市販の白色フィルムを用いることも可能である。
【0032】
反射層4の厚さは、50μm以上250μm以下が好ましい。反射層4の厚さが50μm未満であると、反射効率の向上効果を十分に得ることができない。反射層4の厚さが250μmを超えると、透過するX線量が低下して検出感度が低下する。
【0033】
透光性樹脂は、50℃以上のガラス転移点(転移温度)を有する。X線CT装置の製造プロセス時の温度、X線CT装置の使用時の温度、およびX線CT装置の保管環境の温度は、いずれも18℃以上50℃以下程度であるため、透光性樹脂のガラス転移点が50℃以上であれば、製造時、使用時、および保管時の寸法変化(シンチレータセグメント2のピッチずれ、シンチレータアレイ1の反り、シンチレータアレイ1の外形寸法のバラツキ)を抑制できる。透光性樹脂のガラス転移点は、50℃より高いことがより好ましく、60℃以上がさらに好ましく、85℃以上が特に好ましい。また、透光性樹脂のガラス転移点は、120℃以下であることが好ましい。120℃を超える場合、シンチレータアレイ1の製造時における樹脂の収縮が大きくなり、シンチレータアレイ1の反りや、シンチレータセグメント2のピッチズレが大きくなるおそれがある。
【0034】
反射層3および反射層4を構成する透光性樹脂において、ガラス転移点を超える温度における熱膨張係数(線膨張係数)は2×10-5/℃以下であることが好ましい。上記熱膨張係数が2×10-5/℃を超えると、X線CT装置の製造プロセスにおける温度により、シンチレータアレイ1の仕上がり寸法に変化(シンチレータセグメント2のピッチずれ、シンチレータアレイ1の反り、外形寸法のバラツキ)が生じやすい。上記熱膨張係数は、1.5×10-5/℃以下がさらに好ましい。
【0035】
上記ガラス転移点および上記熱膨張係数を満足させるために、透光性樹脂は、二重構造(二重結合)を含まないシクロ構造を含む分子構造を有することが好ましい。透光性樹脂の分子構造が二重構造を含む場合、ガラス転移点が50℃未満になりやすい。
【0036】
反射層3および反射層4を構成する透光性樹脂は、脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂を用いることによって、上記ガラス転移点および上記熱膨張係数を実現しやすくできる。さらに、透光性樹脂としてのエポキシ樹脂は、上述したシクロ構造を含む分子構造を有することが好ましい。このようなエポキシ樹脂を用いることによって、ガラス転移点を高めやすくなると共に、ガラス転移点を超える温度における熱膨張係数を低下させやすくなる。
【0037】
反射層3および反射層4における透光性樹脂と反射粒子の割合は、透光性樹脂の質量比が15%以上60%以下、反射粒子の質量比が40%以上85%以下であることが好ましい。透光性樹脂の質量比と反射粒子の質量比との合計は100%である。反射粒子の質量比が40%未満では、反射層の反射効率が低下し、波長512nmの光に対する反射層の反射効率が90%よりも低くなりやすい。反射粒子の質量比が85%を超えると、反射層の反射効率は変わらないが、透光性樹脂の質量比が相対的に低下するために、反射層の安定した固体化が難しくなる。
【0038】
接着層5は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれ、光、熱、湿気のいずれかにより硬化された少なくとも一つの樹脂を含む。接着層5は、透光性樹脂でもよいが、接着層5を通して、一つのシンチレータセグメント2からの光が、他の一つのシンチレータセグメント2に進入することを低減するためには、接着層5は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、および酸化シリコンからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0039】
図3は、シンチレータアレイ1の接着層5の厚さ(接着層厚)と、シンチレータアレイ1の反りと、の関係を示す図である。
図3は、シンチレータアレイ1における反りの改善度を示す。シンチレータアレイ1の一例は、縦(L)、横(S)、厚さ(T)がいずれも1mmサイズのシンチレータセグメント2を、幅100μmの反射層3により一体化して長さ76mm、幅25mmの構造体20を形成し、反射層4として白色ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、接着層5としてエポキシ樹脂を用い構造体20に貼り合わせることにより形成される。
図3は、接着層5の厚さに対するシンチレータアレイ1の反りの変化を示す。
【0040】
シンチレータアレイ1の反りは、次のように計測される。反り返ったシンチレータアレイ1は、通常凸側と凹側を有する。反りの測定では、先ずシンチレータアレイ1の凸側を下に平面上に置く。このときシンチレータアレイ1は端部に向かって、設置面から離れ、上にせり上がる状態である。この状態で最もせり上がった点と設置面との鉛直距離を計測し、それを反りと定義する。シンチレータアレイ1の反りは、一般に50μm以下であることが求められる。反りが無い状態とは、シンチレータアレイ1の底面が、全ての点で設置面に接触する状態を示し、このときの反りは0μmである。
【0041】
図3から、接着層5が厚くなるとともに、反りも大きくなることがわかる。これは接着層5の硬化時の収縮によって内部に発生する応力に起因する。反りの値は、±5μm程度の範囲を有するが、接着層5の厚さが50μmを超えると、反りも50μmを超えて大きくなり好ましくない。反りが50μmを超えて大きくなると、通常これを矯正するために、加圧または研磨処理が必要となりプロセスが煩雑となる。
【0042】
シンチレータアレイ1では、反射層4として白色フィルムを適切な接着層厚で貼り合わせることにより、一回の処理で、反りの範囲が好ましい範囲であるシンチレータアレイ1を形成できる。これは、例えば反射層4を厚く塗布、硬化して形成する従来プロセスに対し、予め形成されたフレキシブルな白色フィルムを比較的薄い接着層5で貼り付けた方が、硬化収縮する体積を小さくできるため、反りの原因となる応力が発生しにくいためであると考えられる。
【0043】
接着層5は、厚さが2μm未満であると接着力が弱くなり反射層4の剥がれが起きやすい。従って接着層5の厚さは、2μm以上40μm以下、より好ましくは5μm以上30μm以下の範囲であることが好ましい。40μmを超える場合、硬化収縮する体積が大きくなり、シンチレータアレイ1の反りが大きくなるため好ましくない。また、光透過性を有する接着層5の場合、画素(シンチレータセグメント2)内で発生した光が接着層5を通して、隣接する画素に入射し、クロストークを発生させるため、好ましくない。接着層5の厚さは、厚さ方向の断面を電子顕微鏡または光学顕微鏡によって観察し、その観察画像から測定できる。反射層4と接着層5はそれぞれの層でポリマーのネットワーク構造を形成するため、これらの層の界面が明確である。また顔料濃度が異なる場合、更に明確であるため、厚さを判断しやすい。
【0044】
従来のX線CT装置などに用いられるシンチレータアレイは、X線によって生じた光を画素内に閉じ込めて、フォトダイオード側に効率的に取り出すことが必要である。フォトダイオードと貼り合わせる際に位置合わせ精度が求められるため、画素間のピッチが温度によって変動しにくいことや、特にシンチレータ自体の反りが小さい必要がある。シンチレータの反りが大きい場合、フォトダイオードに貼り付けた際にシンチレータアレイとフォトダイオード間に満たす接着層の厚さが不均一になり、接着層が厚いところでは、隣接する画素に光が入り、クロストークが大きくなることで、X線の検出感度が不均一になる。また、接着層に気泡が入りやすく、シンチレータからの光が散乱するため、X線の検出感度が低下する。
【0045】
これに対し、シンチレータセグメント間の反射層における単位面積(5μm×5μm)当たりの反射粒子の個数と単位面積(10μm×10μm)当たりの反射粒子の凝集体の割合を制御することによって、透光性樹脂が固化したときの反射層部の収縮割合を均一化し、これにより、製造中および製造後にシンチレータアレイの反りを抑制する技術が知られている。
【0046】
また、反射層を構成する透光性樹脂のガラス転移点が50℃以上であり、かつガラス転移点より高い温度における透光性樹脂の熱膨張係数が3.5×10-5/℃以下であるシンチレータアレイが知られている。一般に、透光性樹脂の熱膨張係数は、ガラス転移点を境にして、大きく変化し、この変化に伴って起こる反りを、その条件設定により調整する。
【0047】
また、シンチレータアレイの反りを低減するため、複数のシンチレータセグメントを反射層により一体化し、反射層の透光性樹脂のガラス転移点が50℃以上であり、複数のシンチレータセグメントのX線が入射する面側に配置された第2の反射層の透光性樹脂のガラス転移点が30℃以下である構成のシンチレータアレイが知られている。
【0048】
これらのシンチレータでは、反りはある程度改善されるものの、画質の向上要求に伴って、シンチレータアレイの微細化が求められ、反りに伴って起こるクロストークによる画質低下また検出感度の低下に対する対策がさらに求められる。
【0049】
実施形態のシンチレータアレイは、複数のシンチレータセグメントとともに構造体20を形成する第1の反射層と、複数のシンチレータセグメントのX線が入射する面側に配置された第2の反射層と、を具備する。
【0050】
実施形態のシンチレータアレイにおいて、第2の反射層は、透光性樹脂中に反射粒子を分散させたスラリーをシンチレータアレイのX線入射面側に塗布、熱硬化させて形成する方法に代えて、予め形成した、光を反射するフィルムを接着層を介して貼り付ける方法により形成できる。このような構成のシンチレータアレイは、従来のものと比べ、作製が容易である。さらに、接着層の厚さを所定の範囲に制御することにより、反りを低減できる。
【0051】
次に、シンチレータアレイ1の製造方法例について説明する。シンチレータアレイ1は、例えば以下のように製造される。まず、反射粒子と、透光性樹脂を構成する未硬化状態の樹脂組成物(透光性樹脂の未硬化物)と、を用意し、これらを混合して混合物を調製する。次に、所定形状に加工されたシンチレータセグメント2を一定の間隔で複数個配置する。上記した反射粒子と未硬化状態の樹脂組成物との混合物を、隣接するシンチレータセグメント2の間に塗布または充填する。
【0052】
未硬化状態の樹脂組成物は、0.2Pa・s以上1.0Pa・s以下(200cps以上1000cps以下)の粘度を有することが好ましい。樹脂組成物の粘度が1.0Pa・sを超えると、流動性が悪く、シンチレータセグメント2の間への塗布または充填の作業性が低下する。樹脂組成物の粘度が0.2Pa・s未満では、流動性が高くなりすぎて塗布性または充填性を低下させる。また、透光性樹脂の全光線透過率は85%以上であることが好ましい。透光性樹脂の全光線透過率が85%未満であると、反射層3の反射効率が低下しやすくなる。
【0053】
複数のシンチレータセグメント2間に反射粒子と未硬化状態の樹脂組成物との混合物を塗布または充填した後、混合物中の樹脂組成物を硬化させて反射層3を形成することによって、隣接するシンチレータセグメント2間を結合・一体化して構造体20を形成する。混合物の硬化処理は、未硬化状態の樹脂組成物や硬化剤の種類等に応じて適宜に設定される。例えば、熱硬化性樹脂組成物の場合には、熱処理することにより硬化反応を進行させる。
【0054】
次に、接着層5を介して構造体20の表面20aの上に反射層4を形成する。白色フィルムの製造方法としては、反射層3の形成に使用可能な反射粒子を含む樹脂を、ドクターブレードなどを用いてシート状に加工して硬化させる。これに限定されず、市販されている白色フィルムを用いてもよい。こうした市販の白色フィルムは、酸化チタン、アルミナ、シリカなどの反射粒子をエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの透光性樹脂に練りこみシート状に加工することにより形成される。白色フィルムの厚さは、例えば50μm以上250μm以下である。
【0055】
接着層5として粘度0.2Pa・s以上1.0Pa・s以下の透光性樹脂を構造体20の表面20aの上に塗布し、その上に所定の大きさの白色フィルムを配置し、加圧しながら硬化させる。加圧しながらの硬化は、反射層4に白色フィルムを使用することにより可能となるプロセスであって、従来のプロセスでは困難である。よって、プロセスも反りの低減に寄与すると考えられる。
【0056】
(放射線検出器)
実施形態の放射線検出器は、上述したシンチレータアレイ1を、入射した放射線に応じて光を放射する蛍光発生器として具備し、さらに蛍光発生器からの光を受け、光の出力を電気的出力に変換する光電変換器を具備する。
図4は放射線検出器の構成例を示す図であり、X線検出器を示す。
図4に示すX線検出器6は、蛍光発生器としてシンチレータアレイ1と、光電変換器として光電変換素子7とを具備する。
【0057】
X線検出器6は、構造体20の表面20bに一体的に設けられた光電変換素子7を備える。光電変換素子7は、シンチレータセグメント2においてX線を変換することにより形成された光(可視光)を検出する。光電変換素子7の例は、フォトダイオード等を含む。光電変換素子7は、複数のシンチレータセグメント2のそれぞれに対応するように配置されている。これらの構成要素によって、放射線検出器を構成する。
【0058】
(放射線検査装置)
実施形態の放射線検査装置は、被検査体に向けて放射線を照射する放射線源と、被検査体を透過した放射線を検出する放射線検出器とを具備する。放射線検出器は、上述した実施形態の放射線検出器を用いることができる。
【0059】
図5は、放射線検査装置の構成例を示す図である。
図5は、X線CT装置10と、被検体11と、X線管12と、コンピュータ13と、ディスプレイ14と、被検体画像15と、を図示する。X線CT装置10は、X線検出器6を備えている。X線検出器6は、例えば被検体11の撮像部位が配置される円筒の内壁面に貼り付けられている。X線検出器6が貼り付けられた円筒の円弧の略中心には、X線を出射するX線管12が設置されている。X線検出器6とX線管12との間には被検体11が配置される。X線検出器6のX線入射面側には、図示しないコリメータが設けられている。
【0060】
X線検出器6およびX線管12は、被検体11を中心にしてX線による撮影を行いながら回転するように構成されている。被検体11の画像情報が異なる角度から立体的に集められる。X線撮影により得られた信号(光電変換素子により変換された電気信号)はコンピュータ13で処理され、ディスプレイ14上に被検体画像15として表示される。被検体画像15は、例えば被検体11の断層像である。
図1に示すように、シンチレータセグメント2を2次元的に配置したシンチレータアレイ1を用いることによって、マルチ断層像タイプのX線CT装置10を構成することも可能である。この場合、被検体11の断層像が複数同時に撮影され、例えば撮影結果を立体的に描写することもできる。
【0061】
図5に示すX線CT装置10は、シンチレータアレイ1を有するX線検出器6を具備する。前述したように、シンチレータアレイ1は反射層3および反射層4等の構成に基づいて、シンチレータセグメント2から放射される可視光の反射効率が高いため、優れた光出力を有する。このようなシンチレータアレイ1を有するX線検出器6を使用することによって、X線CT装置10による撮影時間を短くできる。この結果、被検体11の被曝時間を短くすることができ、低被曝化を実現することが可能になる。放射線検査装置(X線CT装置10)は、人体の医療診断用のX線検査に限らず、動物のX線検査や工業用途のX線検査等に対しても適用可能である。さらに、X線非破壊検査装置による検査精度の向上等にも寄与する。
【実施例0062】
シンチレータアレイ1の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。実施例および比較例を示すにあたり、X線入射面の反射層4を形成する前のシンチレータセグメント2と反射層3とを有する構造体20は次のように作製した。
【0063】
Gd2O2S:Pr(Pr濃度=0.05モル%)の組成を有する蛍光体粉末をラバープレスにより仮成形し、この仮成形体をタンタル(Ta)製のカプセル中に脱気密封した後、これを熱間等方圧加圧(HIP)処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1425℃の条件で3時間処理した。このようにして、直径約80mm×高さ約120mmの円柱状の焼結体を作製した。この焼結体から、長さ0.8mm×幅0.7mm×厚さ0.7mmのシンチレータセグメント2を、長さ方向に84個、幅方向に31個のマトリクス状に切り出した。次に、上記した複数のシンチレータセグメント2を、質量比で65%の反射粒子と35%の透光性樹脂との混合物からなる反射層3を介して一体化することにより構造体20を作製した。構造体20の縦方向および横方向にそれぞれ厚さ0.1mmの反射層3を配置した。反射粒子には、質量比で80%の酸化チタン粒子と20%のアルミナ粒子との混合物を用いた。これによって長さ76mm、幅25mm、厚さ0.7mmの構造体20を作製した。
【0064】
(実施例1)
作製した構造体20の表面20a上に、酸化チタンとエポキシ樹脂とを含む接着剤(硬化後のガラス転移点85℃)を厚さ10μmで塗布して接着層5を形成し、接着層5の上に、反射層4として白色PETフィルム(三菱ケミカル製、厚さ100μm)を設置し、16kgの荷重をかけながら常温で24時間硬化させてシンチレータアレイ1を完成させた。荷重の除去後、反りを測定した結果、15μmであった。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例2)
作製した構造体20の表面20a上に、酸化チタンとエポキシ樹脂とを含む接着剤(硬化後のガラス転移点85℃)を厚さ15μmで塗布して接着層5を形成し、接着層5の上に、反射層4として白色PETフィルム(三菱ケミカル製、厚さ100μm)を設置し、10kgの荷重を印加しながら常温で24時間硬化させてシンチレータアレイ1を完成させた。荷重の除去後、反りを測定した結果、20μmであった。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例3)
作製した構造体20の表面20a上に、接着層5としてプリプレグのエポキシ接着シート(厚さ25μm)を介して反射層4として白色PETフィルム(三菱ケミカル製、厚さ100μm)を貼り合わせた。貼り合わせる際には、構造体20、エポキシ接着シート、白色PETフィルムを重ねて、16kgの荷重を印加し、100℃の温度で加熱してこれらを接着した。常温まで冷却後に荷重を除きシンチレータアレイ1を完成させた。反りを測定した結果、20μmであった。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例4)
質量比で65%の酸化チタン粒子と35%のエポキシ樹脂(硬化後のガラス転移点55℃)との混合物をドクターブレードを用いてフッ素樹脂シート上に形成し、常温で24時間硬化させて、白色フィルムを形成した。得られた白色フィルムの厚さは150μmである。次に、作製した構造体20の表面20a上に、接着層5としてプリプレグのエポキシ接着シート(厚さ25μm)を挟んで反射層4として白色フィルムを形成し、20kgの荷重を印加し、100℃の温度で加熱して接着した。常温まで冷却後に荷重を除きシンチレータアレイ1を完成させた。反りを測定した結果、30μmであった。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例5)
質量比で65%の酸化チタン粒子と35%のエポキシ樹脂(硬化後のガラス転移点55℃)との混合物をドクターブレードを用いてフッ素樹脂シート上に形成し、常温で24時間硬化させて、白色フィルムを形成した。得られた白色フィルムの厚さは120μmである。次に、作製した構造体20の表面20a上に、接着層5としてプリプレグのエポキシ接着シート(厚さ25μm)を挟んで白色フィルムを配置し、20kgの荷重を印加し、100℃の温度で加熱して接着した。常温まで冷却後に荷重を除きシンチレータアレイ1を完成させた。反りを測定した結果、25μmであった。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
作製した構造体20の表面20aの上に、酸化チタンとエポキシ樹脂(硬化後のガラス転移点85℃)との混合物を塗布し、100℃の温度で、3時間硬化させた。厚さを150μmにするため、硬化後に研磨し、反射層4を形成した。常温では硬質な樹脂であるため、硬化過程でエポキシ樹脂中に発生した内部応力が大きく、反りを測定した結果、140μmであった。結果を表1に示す。
【0070】
(比較例2)
作製した構造体20の表面20aの上に、酸化チタンとエポキシ樹脂(硬化後のガラス転移点85℃)との混合物を塗布し、100℃の温度で、3時間硬化させた。厚さを130μmにするため、硬化後に研磨し、反射層4を形成した。比較例1と比べ、反射層4の厚さが薄いため、応力が緩和し、反りを測定した結果、132μmであった。結果を表1に示す。
【0071】
(比較例3)
作製した構造体20の表面20aの上に、酸化チタンとニトロセルロースを溶剤に分散させた液をスプレーして、加熱することで溶媒を蒸発させて反射層4となる塗膜を形成した。塗膜の乾燥後の厚さは100μmであった。乾燥収縮に伴い、反りを測定した結果、100μmであった。結果を表1に示す。
【0072】
【0073】
比較例では、実施例と同様の透光性樹脂をX線入射面側に塗布しているが、硬化後の反射層が厚いため、硬化時に発生する内部応力が大きく、反りが大きい。実施例では白色フィルムを用い、接着層を薄くすることにより、硬化時の応力を小さくでき、反りを大きく低減できる。また、実施例では、反りの修正は不要であったが、比較例では、反りを修正するため、さらに熱処理工程、研磨工程を必要とし、シンチレータアレイ1が大きく反っているため、X線入射面の反射層4とシンチレータセグメント2の厚さが面内で不均一になり、出力特性のばらつきが発生しやすい傾向があった。
【0074】
実施形態のシンチレータアレイによれば、反りを大幅に低減でき、光電変換素子との接着面の厚さを均一化できるため、出力特性のばらつき低減できる。また反りを修正するための熱処理、研磨といった工程も削減できるため産業上の利点は極めて大きい。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。