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特開2024-69317二酸化炭素分離用組成物、及び二酸化炭素の分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069317
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離用組成物、及び二酸化炭素の分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240514BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20240514BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240514BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240514BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240514BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/68
B01D53/78
B01D53/96
C01B32/50
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033767
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2021574092の分割
【原出願日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2020011936
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020049127
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020110107
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】迫田 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 学
(72)【発明者】
【氏名】木曾 浩之
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)と窒素酸化物耐久性に優れた二酸化炭素分離用組成物、及び二酸化炭素の分離方法の提供。
【解決手段】窒素酸化物及び二酸化炭素を含む混合ガスを、式(2)で示されるアミン化合物、及び水を含む二酸化炭素分離用組成物に接触させて、混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる工程を含む、二酸化炭素の分離方法。前記アミン化合物が二酸化炭素を吸収、放散し、前記水の濃度が二酸化炭素分離用組成物全量に対して20~95重量%である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物及び二酸化炭素を含む混合ガスを、下記一般式(2)
【化1】
[一般式(2)中、R10、R11、R12、R13及びR14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。
15は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。]
で示されるアミン化合物、及び水を含む二酸化炭素分離用組成物であって、
前記アミン化合物が二酸化炭素を吸収、及び放散する役割を担い、前記水の濃度が二酸化炭素分離用組成物全量に対して20~95重量%である二酸化炭素分離用組成物に接触させて、前記混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる工程を含むことを特徴とする、二酸化炭素の分離方法。
【請求項2】
前記の一般式(2)で示されるアミン化合物が、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(R10=R11=R12=R13=R14=R15=水素原子、a=0、b=1)であることを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素の分離方法。
【請求項3】
請求項1に記載の二酸化炭素の分離方法であって、前記水の濃度が二酸化炭素分離用組成物全量に対して30~95重量%である、二酸化炭素の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素含有混合ガスからの二酸化炭素を選択的に分離するための二酸化炭素分離用組成物、及び該組成物を用いた二酸化炭素の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題のため、二酸化炭素の分離・回収が注目されており、二酸化炭素吸収液の開発が盛んにおこなわれている。
【0003】
二酸化炭素吸収液として、モノエタノールアミン水溶液が最も一般的である。モノエタノールアミンは、安価で工業的に入手しやすいが、低温で吸収した二酸化炭素を120℃以上の高温にしないと放散しないという特性がある。そして、二酸化炭素放散温度を水の沸点以上にすると、水の高い潜熱、比熱のため、二酸化炭素の回収に多くのエネルギーを要することになる。
【0004】
そのため、モノエタノールアミンより二酸化炭素放散温度が低く、二酸化炭素回収エネルギーの低いアミンの開発がおこなわれている。例えば、N-メチルジエタノールアミン(特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国 特表2006-528062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、さらに二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れた二酸化炭素吸収液が求められている。また、二酸化炭素回収設備の安定運転の観点から、窒素酸化物の混入があっても沈殿物を生じにくい二酸化炭素吸収液が求められている。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れ、尚且つ窒素酸化物の混入があっても沈殿物を生じにくい二酸化炭素分離用組成物、並びに二酸化炭素の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のアミン化合物を含有する二酸化炭素分離用組成物が、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れ、且つ窒素酸化物の混入があっても沈殿物を生じにくいという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]乃至[8]に存する。
[1] 下記一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
[上記一般式(1)中、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。]
で示されるアミン化合物、及び下記一般式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
[一般式(2)中、R10、R11、R12、R13及びR14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。
15は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。]
で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物を含むことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物。
【0014】
[2] 前記の一般式(1)で示されるアミン化合物と前記の一般式(2)で示されるアミン化合物との混合物を含むことを特徴とする、前記の[1]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0015】
[3] 前記の一般式(1)で示されるアミン化合物と前記の一般式(2)で示されるアミン化合物との混合比率が、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物 100重量部に対して、前記の一般式(2)で示されるアミン化合物が0.1~99.9重量部の混合比率であることを特徴とする、前記の[2]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0016】
[4] 前記の一般式(1)で示されるアミン化合物が、
1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン(R=R=R=水素原子)、
1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペラジン(R=メチル基、R=R=水素原子)、
1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペラジン(R=エチル基、R=R=水素原子)、
1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペラジン(R=プロピル基、R=R=水素原子)、
1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペラジン(R=ブチル基、R=R=水素原子)、
1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピペラジン(R=R=水素原子、R=メチル基)、
1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペラジン(R=メチル基、R=水素原子、R=メチル基)、
1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペラジン(R=エチル基、R=水素原子、R=メチル基)、
1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン(R=プロピル基、R=水素原子、R=メチル基)、
1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン(R=ブチル基、R=水素原子、R=メチル基)、
1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピペラジン(R=水素原子、R=メチル基、R=メチル基)、
1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペラジン(R=メチル基、R=メチル基、R=メチル基)、
1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペラジン(R=エチル基、R=メチル基、R=メチル基)、
1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン(R=プロピル基、R=メチル基、R=メチル基)、及び
1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン(R=ブチル基、R=メチル基、R=メチル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記の[1]又は[2]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0017】
[5] 前記の一般式(2)で示されるアミン化合物が、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(R10=R11=R12=R13=R14=R15=水素原子、a=0、b=1)であることを特徴とする、前記の[1]又は[2]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0018】
[6] 前記の[1]又は[2]に記載の二酸化炭素分離用組成物であって、さらに水を含み、当該水の濃度が二酸化炭素分離用組成物全量に対して20~95重量%であることを特徴とする二酸化炭素分離用組成物。
【0019】
[7] 前記の[1]又は[2]に記載の二酸化炭素分離用組成物であって、さらに水を含み、当該水の濃度が二酸化炭素分離用組成物全量に対して30~95重量%であることを特徴とする二酸化炭素分離用組成物。
【0020】
[8] 二酸化炭素を含むガスを、前記の[1]乃至[7]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる工程を含むことを特徴とする、二酸化炭素の分離方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、従来公知の材料に比べて、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)が高く、従来公知の材料に比べて、低温(低エネルギー)での二酸化炭素ガスの回収分離が可能となり、環境負荷影響を低減できる(エネルギー効率が高い)という効果を有する。
【0022】
また、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、従来公知の材料に比べて単位時間当たりの二酸化炭素吸収速度が速く、尚且つ単位時間当たりの放散速度も速いという特徴があり、大量の二酸化炭素を高速で吸収分離処理することができるという効果を有する。このため、本発明は、大規模火力発電などで大量に排出される二酸化炭素を効率よく吸収分離することができるという点で、工業的に極めて有用である。
【0023】
さらに、本発明の二酸化炭素分離用組成物に対して窒素酸化物(典型的には二酸化窒素)含有ガスを吹き込んでも、従来公知の材料に比べて沈殿物(二酸化炭素分離用組成物の劣化生成物と推測)を生じにくいという特長がある。そのため、本願発明の二酸化炭素分離用組成物は、従来公知の材料に比べて二酸化炭素分離設備における固形物の堆積や配管の閉塞といったリスクを低減できる、という効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の二酸化炭素分離用組成物について説明する。
【0025】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明において上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物は、二酸化炭素を吸着、脱着する役割を担う。
【0027】
本発明は、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物、及び前記の一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物であるが、当該二酸化炭素分離用組成物については、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物を含む二酸化炭素分離用組成物であってもよいし、前記の一般式(2)で示されるアミン化合物を含む二酸化炭素分離用組成物であってもよいし、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物と前記の一般式(2)で示されるアミン化合物との混合物を含む(前記の一般式(1)で示されるアミン化合物と前記の一般式(2)で示されるアミン化合物の両方を含む)二酸化炭素分離用組成物であってもよい。ただし、本発明の二酸化炭素分離用組成物については、二酸化炭素分離性能に優れる点で、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物と前記の一般式(2)で示されるアミン化合物の両方を含むものであることが好ましい。
【0028】
本発明の二酸化炭素分離用組成物が、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物と前記の一般式(2)で示されるアミン化合物の両方を含む場合、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物と前記の一般式(2)で示されるアミン化合物の混合比率は、特に限定するものではないが、二酸化炭素分離性能に優れる点で、前記の一般式(1)で示されるアミン化合物 100重量部に対して、前記の一般式(2)で示されるアミン化合物が0.1~99.9重量部の混合比率であることが好ましく、1~90重量部であることがより好ましく、1~75重量部であることがより好ましく、5~50重量部であることがさらに好ましく、10~30重量部であることが特に好ましい。
【0029】
本発明において、上記一般式(1)における、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0030】
上記の炭素数1~4のアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、又はターシャリーブチル基等を例示することができる。
【0031】
前記のRについては、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れる点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はブチル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0032】
前記のR又はRについては、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又はブチル基であることが好ましく、各々独立して、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明において、上記一般式(1)で示されるアミン化合物としては、具体例としては、例えば、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン(R=R=R=水素原子)、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペラジン(R=メチル基、R=R=水素原子)、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペラジン(R=エチル基、R=R=水素原子)、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペラジン(R=プロピル基、R=R=水素原子)、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペラジン(R=ブチル基、R=R=水素原子)、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピペラジン(R=R=水素原子、R=メチル基)、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペラジン(R=メチル基、R=水素原子、R=メチル基)、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペラジン(R=エチル基、R=水素原子、R=メチル基)、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン(R=プロピル基、R=水素原子、R=メチル基)、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン(R=ブチル基、R=水素原子、R=メチル基)、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピペラジン(R=水素原子、R=メチル基、R=メチル基)、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペラジン(R=メチル基、R=メチル基、R=メチル基)、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペラジン(R=エチル基、R=メチル基、R=メチル基)、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン(R=プロピル基、R=メチル基、R=メチル基)、又は1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン(R=ブチル基、R=メチル基、R=メチル基)等を挙げることができる。
【0034】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物については、入手容易性の観点から、下記式で示されるアミン化合物すなわち、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン(上記の一般式(1)において、R=R=R=水素原子、以下、DHPPとも称す)であることが好ましい。
【0035】
【化3】
【0036】
本発明において、上記一般式(1)で示されるアミン化合物は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、上記一般式(1)で示されるアミン化合物の純度としては、特に限定するものではないが、95重量%以上が好ましく、99重量%以上が特に好ましい。
【0037】
なお、上記の1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジンについては、ピペラジンと2,3-ジヒドロキシクロロプロパンを反応させることによって製造することができる。
【0038】
本発明において、上記一般式(2)における、R10、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
【0039】
本発明において、上記一般式(2)における、R10、R11、R12、R13、及びR14は、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、各々独立して、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、又はsec-ブトキシ基を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基、又はメトキシ基である。
【0040】
また、本発明において、上記一般式(2)における、R15は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。
【0041】
本発明において、上記一般式(2)におけるR15は、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基である。
【0042】
上記の一般式(2)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物(例示化合物1~28)を挙げる事ができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化4】
【0044】
前記の一般式(2)において、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15については、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又はブチル基であることが好ましく、各々独立して、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0045】
さらに、前記のR10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、入手容易性の観点から、水素原子であることがより好ましい。
【0046】
上記一般式(2)で示されるアミン化合物については、入手容易性の観点から、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(R10=R11=R12=R13=R14=R15=水素原子、a=0、b=1、上記の例示化合物1、以下、DABCOMとも称す)であることが好ましい。
【0047】
本発明において、上記一般式(2)で示されるアミン化合物は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、上記一般式(2)で示されるアミン化合物の純度としては、特に限定するものではないが、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。純度が95%を下回ると、二酸化炭素の吸収量が低下する恐れがある。
【0048】
なお、上記一般式(2)で示されるアミン化合物は、特に限定するものではないが、例えば、ジヒドロキシアルキルピペラジン類(例えば、2,3-ジヒドロキシプロピルピペラジン)の環化反応により製造することができる(例えば、特開2010-37325公報参照)。
【0049】
本発明の、上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物を含む二酸化炭素分離用組成物については、本発明の効果を奏する範囲で、さらに、前記アミン化合物とは異なる、アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(A)を含んでいてもよい。当該アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、又はポリエチレンポリアミン類を共存させることで、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりのN原子含有量を増やすことができ、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりの二酸化炭素吸収量を増やすことができるという効果が期待される。
【0050】
前記のアルカノールアミン類としては、具体例としては、例えば、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル],N-メチルエタノールアミン、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル],N-エチルエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、2-[2-(ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール、N-[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エタノールアミン、N-[2-{2-(ジメチルアミノ)エトキシ}エチル],N-メチルエタノールアミン、又はN-[2-{2-(ジエチルアミノ)エトキシ}エチル],N-エチルエタノールアミンが挙げられる。これらのうち、入手のし易さ、及び製造コストの観点から、アルカノールアミン類としては、エタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、及び2-(2-アミノエトキシ)エタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0051】
前記のプロピレンジアミン類としては、具体例としては、例えば、1,3-プロパンジアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン、及び1,3-ビス(ジエチルアミノ)プロパン等が挙げられる。これらのうち、入手のし易さ、及び製造コストの観点から、プロピレンジアミン類としては、1,3-プロパンジアミン、及び3-(ジメチルアミノ)プロピルアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0052】
前記のピペラジン類としては、具体例としては、例えば、ピペラジン、2-メチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、1,4-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0053】
前記のピペリジン類としては、具体例としては、例えば、ピペリジン、2-メチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、又は1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペリジン等が挙げられる。
【0054】
前記のモルホリン類としては、具体例としては、例えば、モルホリン、2-メチルモルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-モルホリン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-モルホリン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-モルホリン等が挙げられる。
【0055】
前記のピロリジン類としては、具体例としては、例えば、ピロリジン、2-メチルピロリジン、2,5-ジメチルピロリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピロリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピロリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピロリジン、又は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。
【0056】
前記のアゼパン類としては、具体例としては、例えば、アゼパン、2-メチルアゼパン、2,7-ジメチルアゼパン、又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる。
【0057】
前記のポリエチレンポリアミン類としては、具体例としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)、及び8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミン等が挙げられる。
【0058】
ここで、「TETA」とは、4つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を4つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。TETAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10-テトラアザデカン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、1、4-ビス(2-アミノエチル)-ピペラジン等が挙げられる。
【0059】
また、「TEPA」とは、5つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を5つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。TEPAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13-ペンタアザトリデカン、N,N,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]アミン等が挙げられる。
【0060】
また、「PEHA」とは、6つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を6つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。PEHAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザヘキサデカン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-N’-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[2-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、N,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミン等が挙げられる。
【0061】
また、「HEHA」とは、7つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を7つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。HEHAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13,16,19-ヘプタアザノナデカン、N-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-N,N’,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-N,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミン等が挙げられる。
【0062】
また、「8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミン」とは、8つ以上のアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を8つ以上有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミンの具体例としては、例えば、商品名「Poly8」(東ソー株式会社製)、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0063】
これらのうち、入手のし易さ、及び取得コストの観点から、ポリエチレンポリアミン類としては、ジエチレントリアミン(DETA)、
1,4,7,10-テトラアザデカン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、及び1、4-ビス(2-アミノエチル)-ピペラジンの混合物よりなるトリエチレンテトラミン(TETA)、
1,4,7,10,13-ペンタアザトリデカン、N,N,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、及びビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]アミンの混合物よりなるテトラエチレンペンタミン(TEPA)、
1,4,7,10,13,16-ヘキサアザヘキサデカン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-N’-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[2-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、及びN,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミンの混合物よりなるペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、
1,4,7,10,13,16,19-ヘプタアザノナデカン、N-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-N,N’,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-N,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミンの混合物よりなるヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)、並びに8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミンである商品名「Poly8」(東ソー株式会社製)からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0064】
本発明において、アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、又はポリエチレンポリアミン類は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、又はポリエチレンポリアミン類の純度としては、特に限定するものではないが、95重量%以上が好ましく、99重量%以上が特に好ましい。
【0065】
本発明の二酸化炭素分離用組成物が、上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物と、アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(A)の両方を含む場合、それらの重量比率は、本発明の効果を奏する範囲であれば、特に制限されるものではない。当該重量比率については、単位重量当たりの二酸化炭素吸収量を増やすという観点から、上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物 100重量部に対して、アミン化合物(A)含有量が0.1~99.9重量部であることが好ましく、0.5~90重量部であることがより好ましく、1~75重量部であることがより好ましく、1~50重量部であることがさらに好ましく、5~40重量部であることが特に好ましい。
【0066】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、そのままその目的用途に使用することもできるが、操作性の観点から、通常、溶媒をさらに含ませた溶液として使用することが好ましい。なお、当該二酸化炭素分離用組成物に用いる溶媒については、特に限定するものではないが、例えば、水、アルコール化合物、ポリオール化合物(特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、又はポリエチレングリコール等)等を挙げることができ、これらの混合物を用いてもよい。これらのうち、二酸化炭素ガスを重炭酸塩として吸収分離する効率性に優れる点で、水が好ましい。
【0067】
本発明の二酸化炭素分離用組成物が、上記の溶媒(例えば、水)を含む場合、当該溶媒の濃度については、二酸化炭素分離用組成物の操作性に優れる点で、二酸化炭素分離用組成物全量に対して20~95重量%であることが好ましく、30~95重量%であることがより好ましく、30~85重量%であることがさらに好ましく、40~75重量%であることが特に好ましい。
【0068】
なお、本発明の二酸化炭素分離用組成物については、窒素酸化物に対する劣化耐久性に優れる点で、上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物と、水のみからなる組成物であることが好ましい。このとき、化合物の好ましい範囲や組成の好ましい範囲については、上記の通りである。
【0069】
前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において、上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物については、二酸化炭素の吸収速度と吸収量が大きくなる点で、上記一般式(1)で示されるアミン化合物であることが好ましい。すなわち、上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物が好ましい。例えば、より具体的には、上記一般式(1)で示されるアミン化合物を水等の溶媒に溶解させることで、好ましい二酸化炭素分離用組成物が調製される。
【0070】
ここでは、以下、上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物について説明する。
前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において上記一般式(1)で示されるアミン化合物は、二酸化炭素を吸着、脱着する役割を担う。
前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において、一般式(1)で示されるアミン化合物の定義、好ましい範囲、及び製造方法等は上述の通りである。
【0071】
前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物は、本発明の効果を奏する範囲で、上記一般式(1)で示されるアミン化合物に加え、さらにアルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(A’)を含んでいてもよい。当該アミン化合物(A’)におけるプロピレンジアミン類、又はポリエチレンポリアミン類の定義、及び好ましい範囲については、上記の通りである。また、当該アミン化合物(A’)におけるアルコアノールアミン類の定義及び好ましい範囲については、後述の通りである。なお、この場合、当該アミン化合物(A’)に上記一般式(1)で示されるアミン化合物は含まれない。当該アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、又はポリエチレンポリアミン類を共存させることで、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりのN原子含有量を増やすことができ、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりの二酸化炭素吸収量を増やすことができるという効果が期待される。
【0072】
前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において、前記のアルカノールアミン類としては、具体例としては、例えば、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル],N-メチルエタノールアミン、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル],N-エチルエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、2-[2-(ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール、N-[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エタノールアミン、N-[2-{2-(ジメチルアミノ)エトキシ}エチル],N-メチルエタノールアミン、N-[2-{2-(ジエチルアミノ)エトキシ}エチル],N-エチルエタノールアミン、又は下記一般式(2)
【0073】
【化5】
【0074】
[式中、R10、R11、R12、R13及びR14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。
15は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。]
で表されるアミン化合物等が挙げられる。これらのうち、入手のし易さ、及び製造コストの観点から、アルカノールアミン類としては、エタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、及び上記一般式(2)で表されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0075】
当該一般式(2)で表されるアミンの定義及び好ましい範囲については、上記の一般式(2)で表されるアミンの定義及び好ましい範囲と同義であるが、以下の通り再度説明する。
【0076】
上記一般式(2)における、R10、R11、R12、R13、及びR14は、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、各々独立して、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、又はsec-ブトキシ基を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基、又はメトキシ基である。
【0077】
また、上記一般式(2)におけるR15は、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基である。
【0078】
上記一般式(2)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物(例示化合物1~28)を挙げる事ができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
【化6】
【0080】
前記のR10、R11、R12、R13、R14、及びR15については、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又はブチル基であることが好ましく、各々独立して、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0081】
前記のR10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、入手容易性の観点から、水素原子であることがより好ましい。
【0082】
上記一般式(2)で示されるアミン化合物については、入手容易性の観点から、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(R10=R11=R12=R13=R14=R15=水素原子、a=0、b=1)、すなわち上記の例示化合物1であることが好ましい。
【0083】
前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において、アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、又はポリエチレンポリアミン類は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、又はポリエチレンポリアミン類の純度としては、特に限定するものではないが、95重量%以上が好ましく、99重量%以上が特に好ましい。
【0084】
前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物が、上記一般式(1)で示されるアミン化合物と、アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(A’)の両方を含む場合、それらの重量比率は、特に制限されるものではない。当該重量比率については、単位重量当たりの二酸化炭素吸収量を増やすという観点から、一般式(1)で示されるアミン化合物 100重量部に対して、アミン化合物(A’)含有量が0.1~99.9重量部であることが好ましく、0.5~90重量部であることがより好ましく、1~75重量部であることがより好ましく、1~50重量部であることがさらに好ましく、5~40重量部であることが特に好ましい。
【0085】
前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物は、そのままその目的用途に使用することもできるが、操作性の観点から、通常、溶媒をさらに含ませた溶液として使用することが好ましい。なお、当該二酸化炭素分離用組成物に用いる溶媒については、特に限定するものではないが、例えば、水、アルコール化合物、ポリオール化合物(特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、又はポリエチレングリコール等)等を挙げることができ、これらの混合物を用いてもよい。これらのうち、二酸化炭素ガスを重炭酸塩として吸収分離する効率性に優れる点、吸収剤や分離剤の粘度上昇や固形分生成抑制に優れる点、二酸化炭素の放散エネルギーがあまり高くならない点で、水が好ましい。
【0086】
溶媒(例えば、水)を用いる場合において、当該溶媒の濃度については、前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物の操作性に優れる点で、二酸化炭素分離用組成物全量に対して20~95重量%であることが好ましく、30~95重量%であることがより好ましく、30~85重量%であることがさらに好ましく、40~75重量%であることが特に好ましい。
【0087】
前記の上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において、上記一般式(1)で示されるアミン化合物、及び上記一般式(2)で示されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物については、二酸化炭素の放散を促進し、放散効率(二酸化炭素放散量/二酸化炭素吸収量)を上げる点で、上記一般式(2)で示されるアミン化合物であることが好ましい。すなわち、上記一般式(2)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物が好ましい。例えば、より具体的には、上記一般式(2)で示されるアミン化合物を水等の溶媒に溶解させることで、好ましい二酸化炭素分離用組成物が調製される。
【0088】
ここでは、以下、上記一般式(2)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物について説明する。
前記の一般式(2)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において上記一般式(2)で示されるアミン化合物は、二酸化炭素の放散を促進し、放散効率(二酸化炭素放散量/二酸化炭素吸収量)を上げる役割を担う。
前記の一般式(2)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において、一般式(2)で示されるアミン化合物の定義、好ましい範囲、及び製造方法等については、前述のとおりである。
【0089】
前記の一般式(2)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物については、本発明の効果を奏する範囲で、一般式(2)で示されるアミン化合物に加えて、さらに、アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(A)を含んでいてもよい。当該アミン化合物(A)の定義、及び好ましい範囲については、上記の通りである。なお、この場合、当該アミン化合物(A)に上記一般式(2)で示されるアミン化合物は含まれない。当該アミン化合物(A)を共存させることで、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりのN原子含有量を増やすことができ、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりの二酸化炭素吸収量を増やすことができるという効果が期待される。
【0090】
前記の一般式(2)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において、含まれていてもよい前記のアミン化合物(A)は、市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、前記のアミン化合物(A)の純度としては、特に限定するものではないが、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。純度が95%を下回ると、二酸化炭素の吸収量が低下する恐れがある。
【0091】
前記の一般式(2)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物において、当該二酸化炭素分離用組成物が前記のアミン化合物(A)を含有する場合、上記一般式(2)で示されるアミン化合物と、アミン化合物(A)との重量分率は、特に制限されるものではない。単位重量当たりの二酸化炭素吸収量を増やすという観点から、上記一般式(2)で示されるアミン化合物の重量分率(上記一般式(2)で示されるアミン化合物とアミン化合物(A)の合計を100重量%と仮定する)が50~99.9重量%であることが好ましく、80~99重量%であることがより好ましい。
【0092】
前記の一般式(2)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物は、そのままその目的用途に使用することもできるが、操作性の観点から、別途、溶媒をさらに含ませた組成物として使用することができる。なお、当該二酸化炭素分離用組成物に用いる溶媒については、特に限定するものではないが、例えば、水、アルコール化合物、又はポリオール化合物(特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、又はポリエチレングリコール等)等を挙げることができ、これらの混合物を用いてもよい。これらのうち、二酸化炭素ガスを重炭酸塩として吸収分離する効率性に優れる点、吸収剤や分離剤の粘度上昇や固形分生成抑制に優れる点、二酸化炭素の放散エネルギーがあまり高くならない点で、水が好ましい。
【0093】
溶媒(例えば、水)を用いる場合において、当該溶媒の濃度については、前記の上記一般式(2)で示されるアミン化合物を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物の操作性に優れる点で、二酸化炭素分離用組成物全量に対して20~95重量%であることが好ましく、30~95重量%であることがより好ましく、30~85重量%であることがさらに好ましく、50~80重量%であることが特に好ましい。
【0094】
次に、本発明の二酸化炭素分離用組成物を用いた二酸化炭素の分離方法について説明する。
【0095】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、上記の二酸化炭素分離用組成物と二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素を前記二酸化炭素分離用組成物に高選択的に吸収させる工程を有することを特徴とし、このように吸収させた後、前記の二酸化炭素分離用組成物を加熱する及び/又は減圧環境に晒すことにより、吸収された二酸化炭素を放散させる工程を含んでいてもよい。
【0096】
本発明の二酸化炭素の分離方法において、二酸化炭素を含むガスを、上記の二酸化炭素分離用組成物に接触させる方法については、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。公知の方法としては、バブリング法や、充填塔又は棚段塔を用いた対向接触法などが挙げられる。
【0097】
本発明の二酸化炭素の分離方法において、二酸化炭素を含むガスを、上記の二酸化炭素分離用組成物に吸収させる際の温度としては、特に制限するものではないが、通常0℃~50℃の範囲を挙げることができる。
【0098】
本発明の二酸化炭素の分離方法において、二酸化炭素を上記の二酸化炭素分離用組成物から放散させる温度は、特に制限するものではないが、通常60~150℃の範囲を挙げることができる。但し、省エネルギーの観点から、100℃以下とすることが好ましい。
また、上記の二酸化炭素分離用組成物については、二酸化炭素吸収放散剤として、二酸化炭素の化学吸収法に用いることができる。
【0099】
当該化学吸収法は、上記の二酸化炭素分離用組成物と二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素を吸収させた後、高温又は減圧することにより吸収された二酸化炭素を放散させる方法を表す。この際、二酸化炭素を放散させる温度は、特に限定するものではないが、例えば、60℃以上であってもよく、放散効率に優れる点で、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましく、100℃以上が特に好ましい。
また、上記の二酸化炭素分離用組成物については、担体に担持させたうえで、二酸化炭素吸収放散剤として使用することもできる。
【0100】
前記の担体としては、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、多孔性ガラス、活性炭、ポリメチルメタクリレート系の多孔性樹脂、又は繊維などを用いることができる。
【0101】
前記のシリカとしては、結晶状のもの、非結晶状(アモルファス)のもの、細孔を有するもの(例えば、メソポーラスシリカ)等が知られている。上記の二酸化炭素吸収放散剤において、使用できるシリカには特に制限はなく、工業的に流通しているものを使用することができるが、表面積が大きいシリカが好ましい。
【0102】
上記の二酸化炭素吸収放散剤における二酸化炭素分離用組成物の担持量は、二酸化炭素の吸収量及び二酸化炭素分離用組成物の担持操作に優れる点で、担体重量 100重量部に対し5~70重量部であることが好ましく、更に好ましくは10~60重量部である。
上記の二酸化炭素吸収放散剤においては、更に水を含有させてもよい。
【0103】
上記の二酸化炭素吸収放散剤は固体吸収法として広く知られた二酸化炭素分離方法に適用できる。固体吸収法は、二酸化炭素吸収放散剤と二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素吸収放散剤に二酸化炭素を吸収させた後、当該二酸化炭素吸収放散剤を加熱する又は減圧環境に晒すことにより吸収された二酸化炭素を放散させる方法を表す。この際、二酸化炭素を放散させる温度は、特に限定するものではないが、例えば、60℃以上であってもよく、放散効率に優れる点で、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましく、100℃以上が特に好ましい。
【0104】
上記の二酸化炭素を含むガスについては、純粋な二酸化炭素ガスであってもよいし、二酸化炭素とその他ガスを含む混合ガスであってもよい。前記のその他のガスとしては、特に限定するものではないが、例えば、大気、窒素、酸素、水素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、一酸化炭素、水蒸気、メタン、又は窒素酸化物等が挙げられる。
【0105】
本発明の二酸化炭素の分離方法に適用できる混合ガスについては、二酸化炭素を含む混合ガスであれば特に制限されないが、二酸化炭素と他のガスとの分離性能を向上させるためには、二酸化炭素濃度が5容量%以上であるものが好ましく、より好ましくは10容量%以上であるものが望ましい。
【0106】
本発明の二酸化炭素の分離方法においては、上記の工程(吸収工程、放散工程)以外の工程を追加して実施しても一向に差し支えない。例えば、冷却工程、加熱工程、洗浄工程、抽出工程、超音波処理工程、蒸留工程、その他薬液で処理する工程などを適宜実施することができる。
【0107】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、特に限定するものではないが、例えば、火力発電所、鉄鋼プラント、及びセメント工場などで発生する燃焼排ガスからの二酸化炭素(CO)の分離や、水蒸気改質プロセスで得られる水蒸気改質ガスからの二酸化炭素(CO)の分離に適用することができる。
【実施例0108】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0109】
<二酸化炭素ガスの放散効率の測定方法>
後述する実施例で調製した二酸化炭素吸収液 100g(容量200mLのガス吸収瓶に入った状態)を水浴で40℃に調温した。この二酸化炭素吸収液に100mL/分の二酸化炭素ガスと400mL/分の窒素ガスの混合気体(500mL/分)を1時間、バブリングさせながら吹き込んだ。この時の二酸化炭素ガスの吸収量(1時間のCO吸収量(L))を、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて測定した。この1時間のCO吸収量(L)を用いて、二酸化炭素吸収液1kg当たりのCO吸収量(L)を算出した。
【0110】
次いで、この二酸化炭素吸収液を水浴で70℃に調温した。この二酸化炭素吸収液に500mL/分の窒素ガスを2時間、バブリングさせながら吹き込んだ。この時の二酸化炭素ガスの放散量(2時間のCO放散量(L))を、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて測定した。この2時間のCO放散量(L)を用いて、二酸化炭素吸収液1kg当たりのCO放散量(L)を算出した。
【0111】
前記の2時間のCO放散量(L)と前記の1時間のCO吸収量(L)から、二酸化炭素ガス放散効率(=2時間のCO放散量(L)÷1時間のCO吸収量(L))を算出した。
【0112】
<窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認方法>
後述する実施例で調製した二酸化炭素吸収液 100g(容量200mLのガス吸収瓶に入った状態)を油浴で30℃に調温した。この二酸化炭素吸収液に650mL/分の二酸化炭素ガスと15.7mL/分の窒素ガスと0.32mL/分の二酸化窒素(NO)ガスの混合気体(666mL/分)を32時間、バブリングさせながら吹き込んだ。次いで、この二酸化炭素吸収液を、105℃油浴で加熱し、1時間還流させた。次いで、この二酸化炭素吸収液を30℃まで冷却した後、前記の還流時に損失した水分を補給した。上記のガス32時間吹き込み→加熱還流→冷却・補水の操作を合計7回繰り返し、ガス吸収瓶の内容物を目視で確認した。
<評価に用いた材料>
以下の実験に用いた化合物について、略称及びその構造を示す。
【0113】
PIP :ピペラジン(Sigma-Aldrich製)
DHPP :1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン(Sigma-Aldrich社製)
DABCOM:1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー社製)
MDEA :N-メチルジエタノールアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0114】
【化7】
【0115】
[実施例1]
DHPP 30gに純水 70gを加えて混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mLのガス吸収瓶に入れ、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。
【0116】
1時間のCO吸収量(L)は、標準状態換算で2.45Lであった。すなわち、二酸化炭素吸収液1kg当たりの1時間のCO吸収量(L)は、標準状態換算で24.5Lであった。二酸化炭素吸収液1kg当たりの単位時間当たりの1時間のCO吸収量(mL/分)は、409mL/分(=24.5[L/時間]×1000[mL/L]÷60[分/時間])であった。
【0117】
2時間のCO放散量(L)は、標準状態換算で1.24Lであった。すなわち、二酸化炭素吸収液1kg当たりの2時間のCO放散量(L)は、標準状態換算で12.4Lであった。二酸化炭素吸収液1kg当たりの単位時間当たりの2時間のCO放散量(mL/分)は、103mL/分(=12.4[L/2時間]×1000[mL/L]÷120[分/時間])であった。
【0118】
二酸化炭素ガスの放散効率(=2時間のCO放散量(L)÷1時間のCO吸収量(L))は0.51であった。
窒素酸化物の影響による沈殿物の発生は無かった。
以上の結果を表1に示した。
【0119】
[実施例2]
DHPP 32.6g、DABCOM 7.4g、及び純水 60gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表1に示した。
【0120】
[実施例3]
DHPP 50.0g、DABCOM 7.4g、及び純水 42.6gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表1に示した。
【0121】
[実施例4]
DABCOM 30g、及び純水 70gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表1に示した。
【0122】
[実施例5]
DHPP 36.7g、DABCOM 8.3g、及び純水 55gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表2に示した。
【0123】
[実施例6]
DHPP 28.6g、DABCOM 6.4g、及び純水 65gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表2に示した。
【0124】
[実施例7]
DHPP 24.5g、DABCOM 5.5g、及び純水 70gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表2に示した。
【0125】
[実施例8]
DHPP 40.8g、DABCOM 9.2g、及び純水 50gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表2に示した。
【0126】
[実施例9]
DHPP 34.7g、DABCOM 7.8g、及び純水 57.5gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表2に示した。
【0127】
[実施例10]
DHPP 38.8g、DABCOM 8.7g、及び純水 52.5gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表2に示した。
【0128】
[比較例1]
MDEA 30g、及び純水 70gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表1に示した。
【0129】
[比較例2]
MDEA 32.6g、PIP 7.4g、及び純水 60gを混合撹拌して二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、実施例1と同様に、二酸化炭素ガスの放散効率の測定と窒素酸化物の影響による沈殿物の発生有無の確認を行った。評価結果を表1に示した。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
上記の実施例に記載の通り、本願発明の二酸化炭素分離用組成物は、従来公知の二酸化炭素分離用組成物に比べて、二酸化炭素の放散効率(放散量/吸収量)に優れ、且つ窒素酸化物の混入があっても沈殿物を生じにくいという効果を奏するものである。
【0133】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の本質と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0134】
なお、2020年1月28日に出願された日本特許出願2020-011936号、2020年3月19日に出願された日本特許出願2020-049127号、2020年6月26日に出願された日本特許出願2020-110107号、の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の組成物は、火力発電所、鉄鋼プラント、及びセメント工場などで発生する燃焼排ガスからの二酸化炭素の分離・精製や、水蒸気改質プロセスで得られる水蒸気改質ガスからの二酸化炭素の分離・精製に使用できる。