(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069421
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸粉末
(51)【国際特許分類】
C08B 37/08 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024038745
(22)【出願日】2024-03-13
(62)【分割の表示】P 2022552850の分割
【原出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤川 俊一
(72)【発明者】
【氏名】小椋 瑞華
(57)【要約】 (修正有)
【課題】平均分子量が150万以上のヒアルロン酸及び/又はその塩を含みながら、高濃度であっても短時間で溶解可能なヒアルロン酸粉末を提供する。
【解決手段】ヒアルロン酸粒子を含有するヒアルロン酸粉末であって、ヒアルロン酸粒子が、平均分子量が150万以上であるヒアルロン酸及び/又はその塩を含み、粒子径が100μm以下の前記ヒアルロン酸粒子の含有割合が、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上35質量%以下である、ヒアルロン酸粉末とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸粒子を含有する、ヒアルロン酸粉末であって、
前記ヒアルロン酸粒子が、平均分子量が150万以上であるヒアルロン酸及び/又はその塩を含み、
粒子径が100μm以下の前記ヒアルロン酸粒子の含有割合が、前記ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上35質量%以下である、ヒアルロン酸粉末。
【請求項2】
粒度分布の相対標準偏差が0.30%以下である、請求項1に記載のヒアルロン酸粉末。
【請求項3】
粒子径が100μm以下の前記ヒアルロン酸粒子の含有割合が、前記ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上5質量%以下である、請求項1又は2に記載のヒアルロン酸粉末。
【請求項4】
前記ヒアルロン酸及び/又はその塩の平均分子量が、150万以上390万以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒアルロン酸粉末。
【請求項5】
架橋ヒアルロン酸及び又はその塩の製造方法に用いる原料ヒアルロン酸粉末の選択方法であって、
前記原料ヒアルロン酸粉末が、ヒアルロン酸粒子を含有し、
前記ヒアルロン酸粒子が、平均分子量が150万以上であるヒアルロン酸及び/又はその塩を含み、
粒子径が100μm以下の前記ヒアルロン酸粒子の含有割合が、前記ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上35質量%以下である、
架橋ヒアルロン酸及び又はその塩の製造方法に用いる原料ヒアルロン酸粉末の選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、鶏冠、さい帯、皮膚、軟骨、硝子体、関節液等の生体組織中に広く分布しており、例えば、化粧料、医薬品及び食品の成分として広く利用されている。特に、ヒアルロン酸の高い生体適合性、ゲル膨潤性、および粘弾性を利用して、医療材料や美容材料への応用が盛んに行われている。
【0003】
ヒアルロン酸の物性等を改善する技術手段として、これまでにも種々の報告がなされている。例えば、特許文献1には、平均分子量が20万以上であって、平均粒子径が50~500μmである、ヒアルロン酸及び/又はその塩からなる粉末が開示されている。特許文献2には、ヒアルロン酸及び/又はその塩を含む水性液に、水溶性有機溶剤を添加してヒアルロン酸及び/又はその塩を沈殿させて、沈殿物を母液と分離する脱水処理と、水溶性有機溶剤の75~80質量%水溶液で、前記沈殿物を洗浄する洗浄処理と、洗浄後の沈殿物を乾燥する乾燥処理とを順に行う工程を有する、粉末ヒアルロン酸及びその塩の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-84588号公報
【特許文献2】特開2009-256464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療用(特に美容整形用)に用いられる架橋ヒアルロン酸は、原料の高分子ヒアルロン酸粉末を高濃度(例えば、2質量%以上)で溶解して製造される。しかしながら、平均分子量が150万以上のヒアルロン酸及び/又はその塩を含む高分子ヒアルロン酸粉末を高濃度に溶解しようとするとダマが生じやすく(つまり、完全溶解するのに時間がかがる)、ダマがあるまま架橋反応を行うと、得られる架橋ヒアルロン酸の粘度が十分に発現しないことがあった。
【0006】
本発明は、平均分子量が150万以上のヒアルロン酸及び/又はその塩を含みながら、高濃度であっても短時間で溶解可能なヒアルロン酸粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1]ヒアルロン酸粒子を含有する、ヒアルロン酸粉末であって、ヒアルロン酸粒子が、平均分子量が150万以上であるヒアルロン酸及び/又はその塩を含み、粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合が、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上35質量%以下である、ヒアルロン酸粉末。
[2]粒度分布の相対標準偏差が0.30%以下である、[1]に記載のヒアルロン酸粉末。
[3]粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合が、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上5質量%以下である、[1]又は[2]に記載のヒアルロン酸粉末。
[4]ヒアルロン酸及び/又はその塩の平均分子量が、150万以上390万以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のヒアルロン酸粉末。
[5]架橋ヒアルロン酸及び又はその塩の製造方法に用いる原料ヒアルロン酸粉末の選択方法であって、原料ヒアルロン酸粉末が、ヒアルロン酸粒子を含有し、ヒアルロン酸粒子が、平均分子量が150万以上であるヒアルロン酸及び/又はその塩を含み、粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合が、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上35質量%以下である、架橋ヒアルロン酸及び又はその塩の製造方法に用いる原料ヒアルロン酸粉末の選択方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、平均分子量が150万以上のヒアルロン酸及び/又はその塩を含みながら、高濃度であっても短時間で溶解可能なヒアルロン酸粉末を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
<本発明の特徴>
[ヒアルロン酸粉末]
本発明は、ヒアルロン酸粒子を含有する、ヒアルロン酸粉末であって、ヒアルロン酸粒子が、平均分子量が150万以上であるヒアルロン酸及び/又はその塩を含み、粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合が、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上35質量%以下である、ヒアルロン酸粉末を提供することに特徴を有する。
【0011】
[架橋ヒアルロン酸及び又はその塩の製造方法に用いる原料ヒアルロン酸粉末の選択方法]
本発明は、架橋ヒアルロン酸及び又はその塩の製造方法に用いる原料ヒアルロン酸粉末の選択方法であって、原料ヒアルロン酸粉末が、ヒアルロン酸粒子を含有し、ヒアルロン酸粒子が、平均分子量が150万以上であるヒアルロン酸及び/又はその塩を含み、粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合が、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上35質量%以下である、架橋ヒアルロン酸及び又はその塩の製造方法に用いる原料ヒアルロン酸粉末の選択方法を提供することに特徴を有する。
【0012】
<ヒアルロン酸粉末>
ヒアルロン酸粉末は、ヒアルロン酸粒子を複数含む、ヒアルロン酸粒子の集合である。
【0013】
<ヒアルロン酸及び/又はその塩>
「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、食品又は薬学上許容しうる塩であることが好ましい。ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0014】
<平均分子量>
ヒアルロン酸粒子は、平均分子量が150万以上であるヒアルロン酸及び/又はその塩を含む。ヒアルロン酸及び/又はその塩の平均分子量は、150万以上であり、160万以上、170万以上、180万以上、又は190万以上であってよい。ヒアルロン酸及び/又はその塩の平均分子量は、390万以下、350万以下、300万以下、又は280万以下であってよい。
【0015】
<平均分子量の測定方法>
本明細書において、ヒアルロン酸の「平均分子量」は、粘度平均分子量を意味する。平均分子量は、日本薬局方(第十八改正)「精製ヒアルロン酸ナトリウム」平均分子量に記載の方法に従って計算される。
具体的には、ヒアルロン酸粉末を0.2mоl/L塩化ナトリウム試液100mLに溶かした液の流下時間が0.2mоl/L塩化ナトリウム試液の流下時間の2.0~2.4倍となる量を精密に量り、0.2mоl/L塩化ナトリウム試液に溶かして正確に100mLとし、試料溶液(1)とする。試料溶液(1)16mL、12mL及び8mLずつを正確に量り、それぞれに0.2mоl/L塩化ナトリウム試液を加えて正確に20mLとし、試料溶液(2)、試料溶液(3)及び試料溶液(4)とする。
上記試料溶液(1)、試料溶液(2)、試料溶液(3)及び試料溶液(4)につき、0.2mоl/L塩化ナトリウム試液の流下時間が200~300秒であるウベローデ型粘度計を用いて一般試験法の粘度測定法(毛細管粘度計法)により、30℃±0.1℃で一定体積の液体が毛細管を通って流下するのに要する時間を測定し、比粘度(式(1))と各濃度における還元粘度を算出する(式(2))。還元粘度を縦軸に、ヒアルロン酸の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。ここで求められた極限粘度から式(3)により平均分子量を算出する
比粘度={(試料溶液の所要流下秒数)/(0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の所要流下秒数)}
-1 ・・・(1)
還元粘度(dL/g)=比粘度/(本品の換算した乾燥物に対する濃度g/100mL))・・・(2)
【数1】
【0016】
<粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合>
ヒアルロン酸粉末において、粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合は、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、35質量%以下であり、高濃度での溶解時間がより短くなることから、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。ヒアルロン酸粉末において、粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合は、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上であり、0質量%であってもよい。
【0017】
<粒子径が155μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合>
ヒアルロン酸粉末において、粒子径が155μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合は、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、高濃度での溶解時間がより短くなることから、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。ヒアルロン酸粉末において、粒子径が155μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合は、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上であり、0質量%であってもよい。
【0018】
<粒子径が190μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合>
ヒアルロン酸粉末において、粒子径が190μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合は、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、高濃度での溶解時間がより短くなることから、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下であってよい。ヒアルロン酸粉末において、粒子径が190μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合は、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、0質量%以上であり、0.5質量%以上であってもよい。
【0019】
<粒度分布の測定方法>
粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子、粒子径が155μm以下のヒアルロン酸粒子及び粒子径が190μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合は、レーザ回折式粒子径分布測定装置によって測定される。具体的な測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0020】
<粒度分布の相対標準偏差>
粒度分布の相対標準偏差は、高濃度での溶解時間がより短くなることから、0.30%以下、0.28%以下、0.25%以下、0.20%以下、0.15%以下、0.10%以下、又は0.05%以下であってよい。粒度分布の相対標準偏差は、0.01%以上、0.02%以上又は0.03%以上であってよい。粒度分布の相対標準偏差は、次に示す方法によって算出される値を意味する。
相対標準偏差(%)=標準偏差/平均粒子径(μm)×100
標準偏差と平均粒子径は、レーザ回折式粒子径分布測定装置によって測定される。
【0021】
ヒアルロン酸粉末において、粒子径が1mm以上のヒアルロン酸粒子の含有割合は、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、高濃度での溶解時間がより短くなることから、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。ヒアルロン酸粉末において、粒子径が1mm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合は、ヒアルロン酸粉末全質量を基準として、95質量%以上であり、96質量%以上、97質量%以上、98質量%以上、99質量%以上であってよい。
【0022】
<ヒアルロン酸及び/又はその塩の由来>
ヒアルロン酸及び/又はその塩は、動物等の天然物(例えば、鶏冠、さい帯、皮膚、関節液等の生体組織)から抽出されたものであってもよく、微生物、動物細胞又は植物細胞を培養して得られたものであってもよく(例えば、ストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法)、化学的又は酵素的に合成されたものであってもよい。
【0023】
<ヒアルロン酸粉末の製造方法>
本発明のヒアルロン酸粉末の製造方法は、例えば、平均分子量が150万以上であるヒアルロン酸及び/又はその塩を含むヒアルロン酸粒子を含有するヒアルロン酸粉末の製造方法において、粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合を調整することを含む。当該方法は、粒子径が100μm以下のヒアルロン酸粒子の含有割合を調整することの他は、通常の方法を用いることができる。例えば、本発明のヒアルロン酸粉末は、鶏冠抽出法、又は微生物発酵法によって製造することができる。
【0024】
<鶏冠抽出法>
鶏冠に加熱処理を施す。加熱処理した鶏冠をペースト化し、アルカリ処理する。次に、鶏冠のアルカリ処理物に蛋白分解酵素を添加して、プロテアーゼ処理する。得られたプロテアーゼ処理物に活性炭を添加して脱臭・脱色処理を行った後、濾過処理する。得られた濾液に塩化ナトリウムを溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80~95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2~10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで、ヒアルロン酸粉末を得ることができる。
【0025】
<微生物発酵法>
ヒアルロン酸産出ストレプトコッカス属の微生物(Streptococcus Zoopidemicus)の培養液に活性炭を添加して脱臭・脱色処理を行った後、濾過処理する。得られた濾液に塩化ナトリウムを溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80~95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2~10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで、ヒアルロン酸粉末を得ることができる。
【0026】
<ヒアルロン酸溶液>
ヒアルロン酸溶液は、上記ヒアルロン酸粉末と、溶媒とを含む。ヒアルロン酸溶液中で、ヒアルロン酸粉末は、溶媒に溶解している。目視確認により不溶物が確認されない場合に溶媒に溶解していると判断される。
【0027】
<ヒアルロン酸溶液の溶媒>
ヒアルロン酸溶液の溶媒は、例えば、水であってよい。ヒアルロン酸溶液は、溶媒と共に無機塩を含んでいてもよい。無機塩としては、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸塩が挙げられる。
【0028】
<ヒアルロン酸及びその塩の含有量>
ヒアルロン酸溶液中のヒアルロン酸及びその塩の含有量(ヒアルロン酸濃度)は、ヒアルロン酸溶液全量を基準として、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、又は14質量%以上であってよく、20質量%以下、又は18質量%以下であってよい。
【0029】
<ヒアルロン酸溶液の用途>
本発明のヒアルロン酸溶液は、架橋ヒアルロン酸の製造原料として用いることができる。架橋ヒアルロン酸は、医療用途(特に美容整形用途)等に用いることができる。
【実施例0030】
以下、実施例等に基づいて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下、「%」は「質量%」を意味する。
【0031】
<ヒアルロン酸粉末の製造>
前述した微生物発酵法によって、平均分子量が190万である、実施例1のヒアルロン酸粉末を製造した。なお、製造に用いたエタノール濃度は80~95%であり、沈殿物の洗浄回数は10回であった。
【0032】
実施例1のヒアルロン酸を粉砕して、比較例5のヒアルロン酸粉末を得た。以下の表1の質量比率に従って実施例1のヒアルロン酸粉末と、比較例5のヒアルロン酸粉末とを混合し、実施例2のヒアルロン酸粉末、及び、比較例1~4のヒアルロン酸粉末を得た。
【表1】
【0033】
表2に、実施例1~2及び比較例1~4の粒子の割合の測定結果を示す。
【0034】
<粒度分布の測定方法>
レーザ回折式粒子径分布測定装置SALD-2200(株式会社島津製作所)にて、以下の条件で粒度分布を測定した。
回折/散乱光の検出
平均回数 64回
測定回数 1回
測定間隔 2秒
測定吸光度範囲
最大値 0.2000
最小値 0.0100
ブランク領域/測定領域
ブランク測定許容変動最大値 20
測定最適範囲(最大)1500
測定最適範囲(最小) 700
分散溶媒 エタノール
分散剤 なし
分散方法 超音波分散
ポンプスピード 6.0
内蔵超音波照射時間 10秒
【0035】
<試験1:粒度分布と溶解時間の関係>
(溶解性の確認方法)
容量50mLのビーカーに、1%NaOH水溶液20mLを添加し、次いで、実施例又は比較例のヒアルロン酸粉末を添加しながら、マグネチックスターラー(東京硝子器械株式会社製、型番F-601、ダイヤル目盛り4)で撹拌した。ヒアルロン酸粉末を添加した時点から、目視でヒアルロン酸粉末が完全に溶解するまでの時間を測定し、溶解時間として記録した。ヒアルロン酸溶液中のヒアルロン酸の含有量(ヒアルロン酸濃度)は、ヒアルロン酸溶液全量に対して、10質量%とした。
【0036】
(結果)
実施例1~2及び比較例1~5のヒアルロン酸粉末の溶解時間の測定結果を示す。
【表2】
【0037】
100μm以下のヒアルロン酸粒子の割合が35質量%以下であるヒアルロン酸粉末は、高濃度(ヒアルロン酸濃度:10質量%)であっても、短時間で溶解可能であることが確認された
【0038】
<試験2:分子量の影響>
平均分子量が276万であり、粒度分布が実施例1と同じである、実施例3のヒアルロン酸粉末を製造した。実施例3のヒアルロン酸粉末について、試験1と同様の方法で溶解時間を測定した。結果を表3に示す。
【表3】
【0039】
平均分子量を大きくした場合でも、100μm以下のヒアルロン酸粒子の割合が35質量%以下であるヒアルロン酸粉末は、高濃度での溶解を短時間で行うことが可能であった。
【0040】
<試験3:ヒアルロン酸濃度の影響>
実施例1及び比較例5のヒアルロン酸粉末を表4に示すヒアルロン酸濃度となるように1%水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。溶解するまでの時間を表4に示す。
【表4】
【0041】
ヒアルロン酸溶液中のヒアルロン酸の濃度を高くした場合でも、100μm以下のヒアルロン酸粒子の割合が35質量%以下であるヒアルロン酸粉末は、高濃度での溶解を短時間で行うことが可能であった。