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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069437
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】光学フィルタおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240514BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20240514BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240514BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20240514BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/26
G02B1/11
H04N23/55
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039407
(22)【出願日】2024-03-13
(62)【分割の表示】P 2023012120の分割
【原出願日】2019-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2018018607
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔子
(72)【発明者】
【氏名】塩野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】保高 弘樹
(57)【要約】
【課題】可視光の透過性が良好で、高入射角における近赤外光の遮蔽性の低下が抑制された光学フィルタの提供。
【解決手段】近赤外線吸収色素及び透明樹脂を含有する吸収層と、反射層とを備え、前記吸収層の厚さが0.3~10μmであり、特定の特性(1)~(5)をすべて満たす光学フィルタ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線吸収色素及び透明樹脂を含有する吸収層と、
反射層と、
リン酸塩系ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、または透明樹脂のいずれかから構成される基板と、を備え、
前記吸収層の厚さが0.3~10μmであり、
下記(1)~(5)をすべて満たす光学フィルタ。
(1)入射角0度において435~480nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である。
(2)入射角0度において490~580nmの波長領域の光の平均透過率が84%以上である。
(3)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の平均透過率が0.1%以下である。
(4)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の最大透過率が2.1%以下である。
(5)入射角0度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-0°が640~690nmの波長領域にあり、入射角30度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-30°と、波長λSHT20-0°との差が10nm以下である。
【請求項2】
少なくとも2種類以上の近赤外線吸収色素及びUV色素及び透明樹脂を含有する吸収層と、
反射層とを備え、
前記吸収層の厚さが0.3~10μmであり、
下記(1)~(5)をすべて満たす光学フィルタ。
(1)入射角0度において435~480nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である。
(2)入射角0度において490~580nmの波長領域の光の平均透過率が84%以上である。
(3)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の平均透過率が0.1%以下である。
(4)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の最大透過率が2.1%以下である。
(5)入射角0度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-0°が640~690nmの波長領域にあり、入射角30度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-30°と、波長λSHT20-0°との差が10nm以下である。
【請求項3】
透明樹脂を含有する2層以上の吸収層と、
反射層とを備え、
前記吸収層のうち少なくとも1層は、厚さが0.3~10μmであり、近赤外線吸収色素を含有し、
下記(1)~(5)をすべて満たす光学フィルタ。
(1)入射角0度において435~480nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である。
(2)入射角0度において490~580nmの波長領域の光の平均透過率が84%以上である。
(3)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の平均透過率が0.1%以下である。
(4)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の最大透過率が2.1%以下である。
(5)入射角0度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-0°が640~690nmの波長領域にあり、入射角30度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-30°と、波長λSHT20-0°との差が10nm以下である。
【請求項4】
前記吸収層は近赤外線吸収色素を少なくとも2種以上含有する請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記吸収層のうち少なくとも1層は、近赤外線吸収色素を少なくとも2種以上含有する請求項3に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記吸収層はUV色素を含有する請求項1または4に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記吸収層のうち少なくとも1層は、UV色素を含有する請求項3または5に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
リン酸塩系ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、または透明樹脂のいずれかから構成される基板をさらに備える、請求項2または3に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
透明樹脂を含有する他の吸収層をさらに備える、請求項1または2に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記反射層の膜厚が2~10μmである、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
さらに反射防止層を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
前記近赤外線吸収色素は最大吸収波長が680~750nmの波長領域にある色素を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
さらに下記(9)を満たす請求項1~12のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
(9)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の最大透過率が1.9%以下である。
【請求項14】
さらに下記(10)を満たす請求項1~13のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
(10)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の最大透過率が0.4%以下である。
【請求項15】
前記近赤外線吸収色素は最大吸収波長が760~900nmの波長領域にある色素を含む請求項1~14のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項16】
さらに下記(11)を満たす請求項1~15のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
(11)入射角50度において435~480nmの波長領域の光の平均透過率が60.6%以上である。
【請求項17】
さらに下記(12)を満たす請求項1~16のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
(12)入射角50度において490~580nmの波長領域の光の平均透過率が77.6%以上である。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の光学フィルタを備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視波長領域の光を透過し、近赤外波長領域の光を遮断する光学フィルタおよび該光学フィルタを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた撮像装置には、色調を良好に再現し鮮明な画像を得るため、可視域の光(以下「可視光」ともいう)を透過し近赤外域の光(以下「近赤外光」ともいう)を遮断する光学フィルタが用いられる。該光学フィルタとしては、近赤外吸収剤を含む吸収層と、近赤外光を遮断する誘電体多層膜からなる反射層とを備えた近赤外カットフィルタが知られている。つまり、誘電体多層膜そのものは、入射角によって分光透過率曲線が変化するため、反射層と吸収層の両方を含む近赤外カットフィルタは、吸収層の吸収特性により入射角依存性が抑制された分光透過率曲線が得られる。
【0003】
近年、撮像装置の小型化や高品質化に伴い、より高い角度で入射した光に対する入射角依存性を抑制する要求がある。例えば、高入射角において波長800~900nmの領域で高反射率を得るべき近赤外光が高透過率化する、光抜けが発生するのを抑制することが求められている。
【0004】
近赤外カットフィルタにおいては、従来から、波長800~900nmの領域に吸収を示す吸収剤を用いる技術が多く知られている。具体的には、銅微粒子(例えば、特許文献1)等の無機吸収剤、シアニン系色素(例えば、特許文献2~4)、ジイモニウム系色素
(例えば、特許文献5)、フタロシアニン系色素(例えば、特許文献6、7)、スクアリリウム系色素(例えば、特許文献8)等の色素を用いる技術が知られている。さらには、
例えば、スクアリリウム系色素とシアニン系色素、フタロシアニン系色素等を組み合わせる(例えば、特許文献9、10)、テトラアザポルフィルリン系色素とジインモニウム系色素とを組み合わせる(例えば、特許文献11)等の近赤外カットフィルタが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/071052号
【特許文献2】日本国特開2007-163644号公報
【特許文献3】日本国特開2015-172102号公報
【特許文献4】国際公開第2015/172004号
【特許文献5】日本国特開2010-266870号公報
【特許文献6】日本国特許第605651号公報
【特許文献7】国際公開第2015/025779号
【特許文献8】日本国特開2016-142891号公報
【特許文献9】国際公開第2013/054864号
【特許文献10】国際公開第2016/158461号
【特許文献11】日本国特開2015-1649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記いずれの近赤外カットフィルタにおいても、可視光の高い透過性と高入射角の光の波長800~900nmの領域における光抜けの抑制を高いレベルで両立できるものはない。
【0007】
本発明は、可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光の遮蔽性において、特に高入射角における近赤外光の遮蔽性の低下が抑制された光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る光学フィルタは、近赤外線吸収色素及び透明樹脂を含有する吸収層と、反射層と、リン酸塩系ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、または透明樹脂のいずれかから構成される基板と、を備え、前記吸収層の厚さが0.3~10μmであり、下記(1)~(5)をすべて満たす。
(1)入射角0度において435~480nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である。
(2)入射角0度において490~580nmの波長領域の光の平均透過率が84%以上である。
(3)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の平均透過率が0.1%以下である。
(4)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の最大透過率が2.1%以下である。
(5)入射角0度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-0°が640~690nmの波長領域にあり、入射角30度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-30°と、波長λSHT20-0°との差が10nm以下である。
本発明の他の態様に係る光学フィルタは、少なくとも2種類以上の近赤外線吸収色素及びUV色素及び透明樹脂を含有する吸収層と、反射層とを備え、前記吸収層の厚さが0.3~10μmであり、下記(1)~(5)をすべて満たす。
(1)入射角0度において435~480nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である。
(2)入射角0度において490~580nmの波長領域の光の平均透過率が84%以上である。
(3)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の平均透過率が0.1%以下である。
(4)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の最大透過率が2.1%以下である。
(5)入射角0度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-0°が640~690nmの波長領域にあり、入射角30度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-30°と、波長λSHT20-0°との差が10nm以下である。
本発明の他の態様に係る光学フィルタは、透明樹脂を含有する2層以上の吸収層と、
反射層とを備え、前記吸収層のうち少なくとも1層は、厚さが0.3~10μmであり、近赤外線吸収色素を含有し、下記(1)~(5)をすべて満たす。
(1)入射角0度において435~480nmの波長領域の光の平均透過率が70%以上である。
(2)入射角0度において490~580nmの波長領域の光の平均透過率が84%以上である。
(3)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の平均透過率が0.1%以下である。
(4)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の最大透過率が2.1%以下である。
(5)入射角0度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-0°が640~690nmの波長領域にあり、入射角30度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-30°と、波長λSHT20-0°との差が10nm以下である。
【0009】
本発明はまた、本発明の光学フィルタを備えた撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光の遮蔽性において、
特に高入射角における近赤外光の遮蔽性の低下が抑制された光学フィルタが得られる。さらに、本発明によれば、該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
図2図2は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
図3図3は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
図4図4は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
図5図5は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
図6図6は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、近赤外線吸収色素を「NIR色素」、紫外線吸収色素を「UV色素」と略記することもある。
本明細書において、式(I)で示される化合物を化合物(I)という。他の式で表される化合物も同様である。化合物(I)からなる色素を色素(I)ともいい、他の色素についても同様である。例えば、後述の式(A1)で示される化合物を化合物(A1)といい、該化合物からなる色素を色素(A1)ともいう。また、例えば、式(1x)で表される基を基(1x)とも記し、他の式で表される基も同様である。
【0013】
本明細書において、特定の波長域について、透過率が例えば90%以上とは、その波長領域全体において透過率が90%を下回らないことをいい、同様に透過率が例えば1%以下とは、その波長領域全体において透過率が1%を超えないことをいう。特定の波長域における平均透過率は、該波長域の1nm毎の透過率の相加平均である。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
本明細書において、ある一般式に同じ記号で表される置換基が複数ある場合、それら複数の置換基は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0014】
<光学フィルタ>
本発明の一実施形態の光学フィルタ(以下、「本フィルタ」ともいう)は、下記(i-1)~(i-5)を満足する、NIR色素である色素(A)と透明樹脂を含有する吸収層と、反射層とを有し、下記(ii-1)を満足する。
【0015】
(i-1)色素(A)は、上記透明樹脂に含有させて測定される波長400~1100nmの分光透過率曲線において、最大吸収波長λmax(A)TRが760~900nmの波長領域にある。
(i-2)色素(A)は、前記透明樹脂に最大吸収波長λmax(A)TRにおける透過率が10%となるように含有させて測定される、波長400~1100nmの分光透過率曲線において、435~480nmの波長領域の光の平均透過率T435-480ave
(A)TRおよび480~590nmの波長領域の光に対する平均透過率T480-590ave(A)TRがともに90%以上である。
(i-3)色素(A)は、ジクロロメタンに溶解して測定される波長400~1100nmの分光透過率曲線において、最大吸収波長λmax(A)DCMが760~900nmの波長領域にある。
(i-4)色素(A)は、ジクロロメタンに最大吸収波長λmax(A)DCMにおける透過率が10%となるように含有させて測定される、波長400~1100nmの分光透過率曲線において、435~480nmの波長領域の光の平均透過率T435-480ave(A)DCMが95%以上、かつ、480~590nmの波長領域の光に対する平均透過率T480-590ave(A)DCMが97%以上である。
(i-5)色素(A)は、平均透過率T435-480ave(A)DCMと平均透過率T435-480ave(A)TRの差および平均透過率T480-590ave(A)DCMと平均透過率T480-590ave(A)TRの差がともに10.5%以下である。
【0016】
(ii-1)光学フィルタは、入射角60度において800~900nmの波長領域の光の平均透過率が5%以下である。
【0017】
本フィルタは、吸収層が(i-1)~(i-5)の特性を有する色素(A)と透明樹脂を含有することで、近赤外光の遮光性に優れるとともに、可視光の透過率が高い。さらに、これにより、本フィルタは、(ii-1)の特性、すなわち、反射層を有することで生じる、高い角度で入射した光に対する入射角依存性を抑制できる。換言すれば、高入射角における近赤外光の遮蔽性の低下が抑制できる。
【0018】
色素(A)は、さらに以下の(i-6)の特性を有することが好ましい。(i-6)色素(A)は、上記透明樹脂に含有させたときの質量吸光係数が1900/(cm・質量%)以上である。
なお、質量吸光係数は、波長350~1200nmの範囲における最大吸収波長での光の内部透過率T[%](=実測透過率[%]/(100-実測反射率[%])×100[%])を算出し、-log10(T/100)によって計算できる。以下、特に断りのない限り、色素の「質量吸光係数」は、上記方法により計算された質量吸光係数である。
【0019】
本フィルタは、透明基板をさらに有してもよい。この場合、吸収層および反射層は、透明基板の主面上に設けられる。本フィルタは、吸収層と反射層を、透明基板の同一主面上に有してもよく、異なる主面上に有してもよい。吸収層と反射層を同一主面上に有する場合、これらの積層順は特に限定されない。
【0020】
本フィルタは、また他の機能層を有してもよい。他の機能層としては、例えば可視光の透過率損失を抑制する反射防止層が挙げられる。特に、吸収層が最表面の構成をとる場合には、吸収層と空気との界面で反射による可視光透過率損失が発生するため、吸収層上に反射防止層を設けるとよい。
【0021】
次に、図面を用いて本フィルタの構成例について説明する。図1は、吸収層11の一方の主面上に反射層12を備えた光学フィルタ10Aの構成例である。光学フィルタ10Aにおいて、吸収層11は、色素(A)と透明樹脂とを含有する層で構成できる。なお、「吸収層11の一方の主面(上)に、反射層12を備える」とは、吸収層11に接触して反射層12が備わる場合に限らず、吸収層11と反射層12との間に、別の機能層が備わる場合も含み、以下の構成も同様である。
【0022】
図2は、透明基板と吸収層と反射層を有する実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。光学フィルタ10Bは、透明基板13と透明基板13の一方の主面上に配置された吸収層11と透明基板13の他方の主面上に設けられた反射層12を有する。光学フィルタ10Bにおいて、吸収層11は、色素(A)と透明樹脂とを含有する層で構成できる。
【0023】
図3は、吸収層11を備え、吸収層11の両主面上に、反射層12aおよび12bをそれぞれ備えた光学フィルタ10Cの構成例である。
図4は、透明基板13の一方の主面に吸収層11を備え、透明基板13の他方の主面上および吸収層11の主面上に、反射層12aおよび12bを備えた光学フィルタ10Dの構成例である。
図5は、透明基板13の両主面に吸収層11aおよび11bを備え、さらに吸収層11aおよび11bの主面上に、反射層12aおよび12bを備えた光学フィルタ10Eの構成例である。
【0024】
図3図4および図5において、組み合わせる2層の反射層12a、12bは、同一でも異なってもよい。例えば、反射層12a、12bは、紫外光および近赤外光を反射し、
可視光を透過する特性を有し、反射層12aが、紫外光と第1の近赤外域の光を反射し、
反射層12bが、紫外光と第2の近赤外域の光を反射する構成でもよい。
【0025】
また、図5において、2層の吸収層11aと11bは、同一でも異なってもよい。吸収層11aと11bが異なる場合、例えば、吸収層11aと11bが、各々、近赤外線吸収層と紫外線吸収層の組合せでもよく、紫外線吸収層と近赤外線吸収層の組合せでもよい。
【0026】
図6は、図2に示す光学フィルタ10Bの吸収層11の主面上に反射防止層14を備えた光学フィルタ10Fの構成例である。反射層が設けられず、吸収層が最表面の構成をとる場合には、吸収層上に反射防止層を設けるとよい。なお、反射防止層は、吸収層の最表面だけでなく、吸収層の側面全体も覆う構成でもよい。その場合、吸収層の防湿の効果を高められる。
【0027】
以下、吸収層、反射層、透明基板および反射防止層について説明する。
(吸収層)
吸収層は、上記(i-1)~(i-5)の特性を有する、好ましくはさらに上記(i-6)の特性を有する色素(A)と透明樹脂を含有する。
【0028】
吸収層は、典型的には、透明樹脂中に色素(A)が均一に溶解または分散した層または
(樹脂)基板である。吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲で色素(A)以外にその他のNIR色素を含有してもよい。さらに、吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲でNIR色素以外の色素、特にはUV色素を含有してもよい。
【0029】
その他のNIR色素としては、下記(iii-1)の要件を満たす色素(D)を含有することが好ましい。
(iii-1)色素(D)は、上記透明樹脂に含有させて測定される波長400~1100nmの分光透過率曲線において、最大吸収波長λmax(D)TRが680~750nmの波長領域にある。
【0030】
さらに、色素(D)は、下記(iii-2)の要件を満たすことが好ましい。(iii-2)色素(D)は、上記透明樹脂に最大吸収波長λmax(D)TRの透過率が10%となる濃度で含有させて測定される波長400~1100nmの分光透過率曲線において、400~500nmの波長領域の光の平均透過率が85%以上である。
【0031】
また、色素(D)の上記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの内部透過率の分光透過率曲線において、λmax(D)TRに吸収の頂点を有する吸収ピーク(以下、「λmax(D)TRの吸収ピーク」という)は、可視光側の傾きが急峻である、すなわち、可視光側の傾きにおいて透過率70%から透過率20%までの波長が、
60nm以下が好ましく、さらに50nm以下が好ましい。
【0032】
[色素(A)]
色素(A)は、(i-1)において、最大吸収波長λmax(A)TRが760~900nmの波長領域にある。最大吸収波長λmax(A)TRは、760~860nmの波長領域にあるのが好ましい。
【0033】
色素(A)は、(i-2)において、平均透過率T435-480ave(A)TRおよび平均透過率T480-590ave(A)TRがともに90%以上である。平均透過率T435-480ave(A)TRは91%以上が好ましく、平均透過率T480-590ave(A)TRは92%以上が好ましい。
【0034】
色素(A)は、(i-3)において、最大吸収波長λmax(A)DCMが760~900nmの波長領域にある。最大吸収波長λmax(A)DCMは、760~860nmの波長領域にあるのが好ましい。
【0035】
色素(A)は、(i-4)において、平均透過率T435-480ave(A)DCMが95%以上、かつ、平均透過率T480-590ave(A)DCMが97%以上である。平均透過率T435-480ave(A)DCMは97%以上が好ましく、平均透過率T480-590ave(A)DCM99%以上が好ましい。
【0036】
色素(A)は、(i-5)において、平均透過率T435-480ave(A)DCMと平均透過率T435-480ave(A)TRの差および平均透過率T480-590ave(A)DCMと平均透過率T480-590ave(A)TRの差がともに10.5%以下である。平均透過率T435-480ave(A)DCMと平均透過率T435-480ave(A)TRの差は7%以下が好ましく、平均透過率T480-590ave(A)DCMと平均透過率T480-590ave(A)TRの差は5%以下が好ましい。
【0037】
色素(A)において、(i-5)を満足することは、ジクロロメタン中の可視光の透過率を、光学フィルタで使用する際の透明樹脂中でも維持できることを意味する。一般的には、最大吸収波長の大きい色素では会合の寄与もあり、ジクロロメタン中のシャープな分光を透明樹脂中では再現しづらいことが知られている。色素(A)は、上記(i-1)~
(i-5)を満足することで、最大吸収波長が大きくかつジクロロメタン中の可視光の透過率が高い吸光特性を有しながら、該吸光特性を透明樹脂中でも維持できるという特徴を示す。
【0038】
色素(A)は、(i-6)において、質量吸光係数が1900/(cm・質量%)以上である。質量吸光係数は2000/(cm・質量%)以上が好ましい。
【0039】
色素(A)としては、(i-1)~(i-5)の要件を満たす限り、分子構造は特に制限されない。具体的には、シアニン系色素が挙げられる。色素(A)として、より具体的には、下記式(A1)または式(A2)で表されるシアニン系色素が好ましい。
【0040】
【化1】
【0041】
ただし、式(A1)および(A2)中の記号は以下のとおりである。
101~R109およびR121~R131は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基もしくはアルコキシ基、または、炭素数5~20のアリール基を示す。R110114およびR132136は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~15のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
各式に含まれる複数のR101~R109およびR121~R131は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
は一価のアニオンを示す。
n1およびn2は0または1である。-(CHn1-を含む炭素環、および、-(CHn2-を含む炭素環に結合する水素原子はハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基または炭素数5~20のアリール基で置換されていてもよい。
【0042】
上記において、アルキル基(アルコキシ基が有するアルキル基を含む)は直鎖であってもよく、分岐構造や飽和環構造を含んでもよい。アリール基は芳香族化合物が有する芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、フラン環、チオフェン環、ピロール環等を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基もしくはアルコキシ基、または、炭素数5~20のアリール基における置換基としては、ハロゲン原子および炭素数1~10のアルコキシ基が挙げられる。
【0043】
式(A1)、式(A2)において、R102~R105、R108、R109、R122~R127、R130およびR131はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~15のアルキル基もしくはアルコキシ基、または炭素数5~20のアリール基が好ましく、高い可視光透過率が得られる観点から水素原子がより好ましい。
【0044】
式(A1)、式(A2)において、R110~R114およびR132~R136はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~15のアルキル基が好ましく、高い可視光透過率が得られる観点から水素原子がより好ましい。
【0045】
106、R107、R128およびR129は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~15のアルキル基、または炭素数5~20のアリール基(鎖状、環状、分岐状のアルキル基を含んでもよい)が好ましく、水素原子、または炭素数1~15のアルキル基がより好ましい。また、R106とR107、R128とR129は、同じ基が好ましい。
【0046】
101およびR121は、炭素数1~15のアルキル基、または炭素数5~20のアリール基が好ましく、透明樹脂中で溶液中と同様に高い可視光透過率を維持する観点から分岐を有する炭素数1~15のアルキル基がより好ましい。
【0047】
としては、I、BF 、PF 、ClO 、式(X1)、および(X2)で示されるアニオン等が挙げられ、好ましくは、BF 、またはPF である。
【0048】
【化2】
【0049】
以下の説明において、色素(A1)における、R101~R114を除く部分を骨格(A1)ともいう。他の色素においても同様である。
【0050】
式(A1)において、n1が1の化合物を下式(A11)に、n1が0の化合物を下式
(A12)に示す。
【0051】
【化3】
【0052】
式(A11)および式(A12)において、R101~R114およびXは、式(A1)の場合と同様である。R115~R120は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基もしくはアルコキシ基、または、
炭素数5~20のアリール基を示す。水素原子、炭素数1~15のアルキル基、または炭素数5~20のアリール基(鎖状、環状、分岐状のアルキル基を含んでもよい)が好ましく、水素原子、または炭素数1~15のアルキル基がより好ましい。また、R115~R120は、同じ基が好ましい。
【0053】
式(A2)において、n2が1の化合物を下式(A21)に、n2が0の化合物を下式
(A22)に示す。
【0054】
【化4】
【0055】
式(A21)および式(A22)において、R121~R136およびXは、式(A2)の場合と同様である。R137~R142は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基もしくはアルコキシ基、または、
炭素数5~20のアリール基を示す。水素原子、炭素数1~15のアルキル基、または炭素数5~20のアリール基(鎖状、環状、分岐状のアルキル基を含んでもよい)が好ましく、水素原子、または炭素数1~15のアルキル基がより好ましい。また、R137~R142は、同じ基が好ましい。
【0056】
式(A11)、式(A12)、式(A21)、式(A22)でそれぞれ示される化合物としては、より具体的には、それぞれ、各骨格に結合する原子または基が、以下の表1~4に示される化合物が挙げられる。表1、表2に示す全ての化合物において、R101~R109は式の左右で全て同一である。表3、表4に示す全ての化合物において、R121~R131は式の左右で同一である。なお、表1~4には左右対称の化合物のみを列挙したが、本願発明はこれに限られず、左右非対称の化合物であってもよい。左右非対称の化合物は樹脂への溶解性が向上する利点を有する。
【0057】
表1、表2におけるR110-R114および表3、表4におけるR132-R136は、各式の中央のベンゼン環に結合する原子または基を示し、5個全てが水素原子の場合「H」と記載した。R110-R114のうち、いずれかが置換基であり、それ以外が水素原子の場合、置換基である符号と置換基の組合せのみを記載した。例えば、「R112-C(CH」の記載はR112が-C(CHであり、それ以外は水素原子であることを示す。R132-R136についても同様である。
【0058】
表1におけるR115-R120および表3におけるR137-R142は、式(A11)、式(A21)における中央のシクロヘキサン環に結合する原子または基を示し、6個全てが水素原子の場合「H」と記載した。R115-R120のうち、いずれかが置換基であり、それ以外が水素原子の場合、置換基である符号と置換基の組合せのみを記載した。R137-R142についても同様である。
【0059】
表2におけるR115-R118および表4におけるR137-R140は、式(A12)、式(A22)における中央のシクロペンタン環に結合する原子または基を示し、4個全てが水素原子の場合「H」と記載した。R115-R118のうち、いずれかが置換基であり、それ以外が水素原子の場合、置換基である符号と置換基の組合せのみを記載した。R137-R140についても同様である。
【0060】
表1~表4には、Xを示さないが、いずれの化合物においてもXはBF またはPF である。色素(A11-1)においてXが、BF の場合を色素(A11-1B)、PF の場合を色素(A11-1P)と示す。表1~表4に示す他の色素においても同様である。表1~表4において、-Cおよび-Cは、直鎖のプロピル基およびブチル基をそれぞれ示す。
【0061】
【表1】
【0062】
色素(A11)としては、これらの中でも、透明樹脂や、透明基板上に吸収層を形成する際に用いる溶媒(以下、「ホスト溶媒」ともいう)への溶解性、可視透過性の点から、
色素(A11-1B)、色素(A11-1P)、色素(A11-2B)、色素(A11-2P)、色素(A11-3B)、色素(A11-3P)、色素(A11-4B)、色素(A11-4P)、色素(A11-5B)、色素(A11-5P)等が好ましい。
【0063】
【表2】
【0064】
色素(A12)としては、これらの中でも、透明樹脂や、透明基板上に吸収層を形成する際に用いる溶媒(以下、「ホスト溶媒」ともいう)への溶解性、可視透過性の点から、
色素(A12-1B)、色素(A12-1P)、色素(A12-2B)、色素(A12-2P)、色素(A12-3B)、色素(A12-3P)、色素(A12-4B)、色素(A12-4P)、色素(A12-5B)、色素(A12-5P)等が好ましい。
【0065】
【表3】
【0066】
色素(A21)としては、これらの中でも、透明樹脂や、透明基板上に吸収層を形成する際に用いる溶媒(以下、「ホスト溶媒」ともいう)への溶解性、可視透過性の点から、
色素(A21-1B)、色素(A21-1P)、色素(A21-2B)、色素(A21-2P)、色素(A21-3B)、色素(A21-3P)、色素(A21-4B)、色素(A21-4P)、色素(A21-5B)、色素(A21-5P)等が好ましい。
【0067】
【表4】
【0068】
色素(A22)としては、これらの中でも、透明樹脂や、透明基板上に吸収層を形成する際に用いる溶媒(以下、「ホスト溶媒」ともいう)への溶解性、可視透過性の点から、
色素(A22-1B)、色素(A22-1P)、色素(A22-2B)、色素(A22-2P)、色素(A22-3B)、色素(A22-3P)、色素(A22-4B)、色素(A22-4P)、色素(A22-5B)、色素(A22-5P)等が好ましい。
【0069】
色素(A1)と色素(A2)においては、上記のとおり骨格が異なり、それにより、最大吸収波長λmax(A)TRの波長領域が異なる。色素(A1)においては、骨格(A1)に結合する原子や基の種類や組み合わせにもよるが、最大吸収波長λmax(A1)TRが、概ね760~830nmの波長領域にある。色素(A2)においては、骨格(A2)に結合する原子や基の種類や組み合わせにもよるが、最大吸収波長λmax(A2)TRが、概ね800~900nmの波長領域にある。
【0070】
さらに、色素(A1)においては、骨格(A1)のn1が1の場合とn1が0の場合で最大吸収波長λmax(A1)TRが異なる。色素(A11)においては、骨格(A11)に結合する原子や基の種類や組み合わせにもよるが、最大吸収波長λmax(A11)TRが、概ね760~800nmの波長領域にある。また、色素(A12)においては、
骨格(A12)に結合する原子や基の種類や組み合わせにもよるが、最大吸収波長λmax(A12)TRが、概ね800~830nmの波長領域にある。
【0071】
同様に、色素(A2)においても、n2が1の場合とn2が0の場合で最大吸収波長λmax(A2)TRが異なる。色素(A21)においては、骨格(A21)に結合する原子や基の種類や組み合わせにもよるが、最大吸収波長λmax(A21)TRが、概ね800~830nmの波長領域にある。また、色素(A22)においては、骨格(A22)に結合する原子や基の種類や組み合わせにもよるが、最大吸収波長λmax(A22)TRが、概ね830~900nmの波長領域にある。
【0072】
吸収層は、色素(A)の1種を単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。2種以上を含有する場合、各色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TRが異なることが好ましい。2種以上の色素(A)における最大吸収波長λmax(A)TRの差は、例えば、20~60nmの範囲が好ましく、30~50nmがより好ましい。なお、色素(A)が2種以上の化合物からなる場合は、個々の化合物が色素(A)の性質を必ずしも有する必要はなく、混合物として、色素(A)の性質を有すればよい。
【0073】
色素(A)の好ましい2種以上の組み合わせとしては、色素(A)のうち比較的短波長側に最大吸収波長を有する色素(A11)を色素Sとし、比較的長波長側に最大吸収波長を有する色素(A22)を色素Lとし、色素Sと色素Lの最大吸収波長の間に最大吸収波長を有する色素(A12)または色素(A21)を色素Mとして、色素S、色素Mおよび色素Lから2種以上を選択して組み合わせるのが好ましい。
【0074】
具体的には、色素Sと色素Mの組み合わせ、色素Sと色素Lの組み合わせ、色素Mと色素Lの組み合わせ、色素Sと色素Mと色素Lの組み合わせが挙げられる。なお、色素Sの最大吸収波長λmax(A)TRは、765~785nmの波長領域にあるのが好ましく、770~780nmの波長領域にあるのがより好ましい。色素Mの最大吸収波長λmax(A)TRは、795~815nmの波長領域にあるのが好ましく、800~810nmの波長領域にあるのがより好ましい。色素Lの最大吸収波長λmax(A)TRは、820~850nmの波長領域にあるのが好ましく、830~850nmの波長領域にあるのがより好ましい。
【0075】
なお、色素(A1)、色素(A2)は、例えば、Dyes and pigments
73(2007) 344-352やJ.Heterocyclic chem,42,959(2005)に記載された方法で製造可能である。また、色素(A11-5P)、色素(A21-5P)は、市販品であるFew Chemicals社製の商品名、S2138およびS2139を使用できる。
【0076】
[色素(D)]
色素(D)としては、(iii-1)の要件を満たし、好ましくは、さらに(iii-2)の要件を満たす、シアニン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ジチオール金属錯体色素、ジイモニウム色素、ポリメチン色素、フタリド色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、インドフェノール色素、スクアリリウム色素からなる群から選ばれる少なくとも1種の色素が挙げられる。
【0077】
これらの中では(iii-1)の要件を満たし、好ましくは(iii-2)の要件を満たすスクアリリウム色素が特に好ましい。スクアリリウム色素からなる色素(D)は、上記吸収スペクトルにおいて、可視光の吸収が少なく、λmax(D)TRの吸収ピークが可視光側で急峻な傾きを有するとともに、保存安定性および光に対する安定性が高い。
【0078】
スクアリリウム色素である色素(D)として、λmax(D)TRが680~750nmの波長領域にある、式(I)~(III)のいずれかで示される化合物が好ましい。また、色素(D)は、透明樹脂に含有させたときの質量吸光係数が、1000/(cm・質量%)以上が好ましく、1500/(cm・質量%)以上がより好ましい。
【0079】
【化5】
【0080】
ただし、式(I)中の記号は以下のとおりである。
24およびR26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、-NR2728(R27およびR28は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-C(=O)-R29(R29は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数6~11のアリール基または、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基)、
-NHR30、または、-SO-R30(R30は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R41、R42は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。
【0081】
【化6】
【0082】
21とR22、R22とR25、およびR21とR23は、互いに連結して窒素原子と共に員数が5または6のそれぞれ複素環A、複素環B、および複素環Cを形成してもよい。
複素環Aが形成される場合のR21とR22は、これらが結合した2価の基-Q-として、水素原子が炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基を示す。
【0083】
複素環Bが形成される場合のR22とR25、および複素環Cが形成される場合のR21とR23は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X-Y-および-X-Y
(窒素に結合する側がXおよびX)として、XおよびXがそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、YおよびYがそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。XおよびXが、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、YおよびYはそれぞれ単結合であってもよく、その場合、
炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0084】
【化7】
【0085】
式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-NR3839(R38およびR39は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す)を示す。R31~R36はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、R37は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
【0086】
27、R28、R29、R31~R37、複素環を形成していない場合のR21~R23、およびR25は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。R31とR36、R31とR37は直接結合してもよい。
複素環を形成していない場合の、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基もしくはアリル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~11のアリール基もしくはアルアリール基を示す。複素環を形成していない場合の、R23およびR25は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0087】
【化8】
【0088】
ただし、式(II)中の記号は以下のとおりである。
環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有し、かつ置換されていてもよい、5員環または6員環であり、
とR、RとR、およびRと環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、
互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1を形成していてもよく、ヘテロ環を形成していない場合、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0089】
【化9】
【0090】
ただし、式(III)中の記号は以下のとおりである。
51は、それぞれ独立にハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、
52~R58は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。
52とR53は、互いに連結して、炭素数5~15の飽和または不飽和の炭化水素環B2を形成していてもよく、炭化水素環B2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよく、
54とR55は、互いに連結してベンゼン環A2を形成していてもよく、ベンゼン環A2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよい。
【0091】
化合物(I)としては、例えば、式(I-1)~(I-4)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0092】
【化10】
【0093】
ただし、式(I-1)~式(I-4)中の記号は、式(I)における同記号の各規定と同じであり、好ましい態様も同様である。
【0094】
化合物(I-1)~(I-4)のうちでも、色素(A)としては、吸収層の可視光透過率を高くできる観点から化合物(I-1)~(I-3)が好ましく、化合物(I-1)が特に好ましい。
【0095】
化合物(I-1)において、Xとしては、基(2x)が好ましく、Yとしては、単結合または基(1y)が好ましい。この場合、R31~R36としては、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。なお、
-Y-X-として、具体的には、式(11-1)~(12-3)で示される2価の有機基が挙げられる。
【0096】
-C(CH-CH(CH)- …(11-1)
-C(CH-CH- …(11-2)
-C(CH-CH(C)- …(11-3)
-C(CH-C(CH)(nC)- …(11-4)
-C(CH-CH-CH- …(12-1)
-C(CH-CH-CH(CH)- …(12-2)
-C(CH-CH(CH)-CH- …(12-3)
【0097】
また、化合物(I-1)において、R21は、溶解性、耐熱性、さらに分光透過率曲線における可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、独立して、式(4-1)または(4-2)で示される基がより好ましい。
【0098】
【化11】
【0099】
式(4-1)および式(4-2)中、R71~R75は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0100】
化合物(I-1)において、R24は-NR2728が好ましい。-NR2728としては、ホスト溶媒や透明樹脂への溶解性の観点から、-NH-C(=O)-R29が好ましい。化合物(I-1)において、R24が-NH-C(=O)-R29の化合物を式(I-11)に示す。
【0101】
【化12】
【0102】
化合物(I-11)における、R23およびR26は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。
【0103】
化合物(I-11)において、R29としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基、または置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基が好ましい。置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフロロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアシルオキシ基等が挙げられる。
【0104】
29としては、フッ素原子で置換されてもよい直鎖状、分岐鎖状、環状の炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~6のフロロアルキル基および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基、および炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18の、末端に炭素数1~6のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基を有するアルアリール基から選ばれる基が好ましい。
【0105】
29としては、独立して1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい、少なくとも1以上の分岐を有する炭素数5~25の炭化水素基である基も好ましく使用できる。このようなR29としては、例えば、下記式(1a)、(1b)、(2a)~(2e)、(3a)~(3e)で示される基が挙げられる。
【0106】
【化13】
【0107】
【化14】
【0108】
化合物(I-11)としては、より具体的に、以下の表5に示す化合物が挙げられる。
なお、表5において、基(11-1)を(11-1)と示す。他の基についても同様である。以下の他の表においても基の表示は同様である。また、表5に示す化合物は、いずれもスクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。以下の他の表に示すスクアリリウム色素においても同様である。
【0109】
【表5】
【0110】
化合物(I-1)において、R24は、可視光の透過率、特に波長430~550nmの光の透過率を高める観点から、-NH-SO-R30が好ましい。化合物(I-1)において、R24が-NH-SO-R30の化合物を式(I-12)に示す。
【0111】
【化15】
【0112】
化合物(I-12)における、R23およびR26は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。
【0113】
化合物(I-12)において、R30は耐光性の点から、独立して、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基、または不飽和の環構造を有する炭素数6~16の炭化水素基が好ましい。不飽和の環構造としては、ベンゼン、トルエン、
キシレン、フラン、ベンゾフラン等が挙げられる。R30は、独立して、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基がより好ましい。なお、R30を示す各基において、水素原子の一部または全部がハロゲン原子、特にはフッ素原子に置換されていてもよい。なお、本フィルタが透明基板を含む構成の場合、水素原子のフッ素原子へ置換は、色素(I-12)を含有する吸収層と透明基板との密着性が落ちない程度とする。
【0114】
不飽和の環構造を有するR30として具体的には、下記式(P1)~(P8)で示される基が挙げられる。
【0115】
【化16】
【0116】
化合物(I-12)としては、より具体的に、以下の表6に示す化合物が挙げられる。
【0117】
【表6】
【0118】
化合物(II)としては、例えば、式(II-1)~(II-3)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0119】
【化17】
【0120】
ただし、式(II-1)、式(II-2)中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基を示し、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。
【0121】
ただし、式(II-3)中、R、R、およびR~R12は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を示す。
【0122】
化合物(II-1)および化合物(II-2)におけるRおよびRは、透明樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数7~15のアルキル基がより好ましく、RとRの少なくとも一方が、炭素数7~15の分岐鎖を有するアルキル基がさらに好ましく、RとRの両方が炭素数8~15の分岐鎖を有するアルキル基が特に好ましい。
【0123】
は、透明樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基がより好ましい。Rは、可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、水素原子、またはハロゲン原子が好ましく、水素原子がとくに好ましい。化合物(II-1)におけるRおよび化合物(II-2)におけるRは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基がより好ましい。
【0124】
化合物(II-1)および化合物(II-2)としては、より具体的に、それぞれ以下の表7および表8に示す化合物が挙げられる。表7および表8において、-C17
-C、-C13は、直鎖のオクチル基、ブチル基、ヘキシル基をそれぞれ示す。
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
化合物(II-3)におけるRは、透明樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、エチル基、またはイソプロピル基が特に好ましい。
【0128】
は、可視光透過性、合成容易性の観点から、水素原子、またはハロゲン原子が好ましく、水素原子が特に好ましい。RおよびRは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基がより好ましい。
【0129】
~R12は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましい。-CR10-CR1112-として、上記基(11-1)~(11-3)または、以下の式(11-5)で示される2価の有機基が挙げられる。
-C(CH)(CH-CH(CH)-CH(CH)-…(11-5)
【0130】
化合物(II-3)としては、より具体的に、以下の表9に示す化合物が挙げられる。
【0131】
【表9】
【0132】
化合物(III)としては、例えば、式(III-1)または式(III-2)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0133】
【化18】
【0134】
ただし、(III-1)、(III-2)中、R52~R62は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。
【0135】
化合物(III-1)、化合物(III-2)中、R52、R53は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基がより好ましい。R58は、
水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基が好ましく、合成容易性の観点から、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。R56、R57、R59~R62は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基が好ましく、合成容易性の観点から、
水素原子がより好ましい。化合物(III-1)、化合物(III-2)としては、より具体的に、以下の表10、表11にそれぞれ示す化合物が挙げられる。
【0136】
【表10】
【0137】
【表11】
【0138】
色素(D)は、1種の化合物からなってもよく、2種以上の化合物からなってもよい。
2種以上の化合物からなる場合は、個々の化合物が色素(D)の性質を必ずしも有する必要はなく、混合物として、色素(D)の性質を有すればよい。
【0139】
化合物(I)~(III)は、それぞれ公知の方法で、製造できる。化合物(I)について、化合物(I-11)は、例えば、米国特許第5,543,086号明細書に記載された方法で製造できる。化合物(I-12)は、例えば、米国特許出願公開第2014/0061505号明細書、国際公開第2014/088063号明細書に記載された方法で製造可能である。化合物(II)については、国際公開第2017/135359号明細書に記載された方法で製造可能である。
【0140】
UV色素は、具体例に、オキサゾール系、メロシアニン系、シアニン系、ナフタルイミド系、オキサジアゾール系、オキサジン系、オキサゾリジン系、ナフタル酸系、スチリル系、アントラセン系、環状カルボニル系、トリアゾール系等の色素が挙げられる。この中でも、オキサゾール系、またはメロシアニン系の色素が好ましい。また、UV色素は、吸収層に1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0141】
透明樹脂は、色素(A)との関係において(i-1)、(i-2)および(i-5)を満足する透明樹脂が用いられる。
【0142】
透明樹脂は、色素(A)の種類に応じて、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、およびポリエステル樹脂等から選ばれる1種以上が使用される。
【0143】
透明樹脂は、これらのなかでも、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、およびアクリルイミド樹脂が好ましい。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。色素(A)が色素(A1)または色素(A2)である場合、特に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、およびアクリルイミド樹脂が好ましい。
【0144】
透明樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、ポリエステル樹脂として、OKP4HT、OKP4、B-OKP2、OKP-850(以上、いずれも大阪ガスケミカル(株)製、商品名)、バイロン(登録商標)103(東洋紡(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0145】
ポリカーボネート樹脂として、LeXan(登録商標)ML9103(sabic社製、商品名)、EP5000(三菱ガス化学(株)社製、商品名)、SP3810(帝人(株)製、商品名)、SP1516(帝人(株)製、商品名)、TS2020(帝人(株)製、商品名)、xylex(登録商標)7507(sabic社製、商品名)等が挙げられる。
【0146】
ポリイミド樹脂として、ネオプリム(登録商標)C3650(三菱ガス化学(株)製、
商品名)、同C3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C3450(三菱ガス化学(株)製、商品名)、JL-20(新日本理化製、商品名)、FPC-0220(三菱ガス化学(株)社製、商品名)(これらのポリイミド樹脂には、シリカが含まれていてもよい)等が挙げられる。アクリルイミド樹脂として、PLEXIMID8817(ダイセルエボニック社製、商品名)等が挙げられる。
【0147】
透明樹脂は、透明性、および色素(A)、さらには色素(D)の溶解性、ならびに耐熱性の観点からは、ガラス転移点(Tg)が高い、例えば、Tgが140℃以上の樹脂が好ましい。
【0148】
吸収層は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性付与剤、色調補正色素、
レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、
可塑剤等の任意成分を有してもよい。
【0149】
本フィルタは、吸収層が(i-1)~(i-5)の特性を有する色素(A)と透明樹脂を含有することで、(ii-1)の特性を有する。言い換えれば、色素(A)は、これを用いた際に得られる、光学フィルタが(ii-1)の特性を満たすことを可能にする化合物である。
【0150】
(ii-1)入射角60度において800~900nmの波長領域の光の平均透過率T800-900ave60°が5%以下である。平均透過率T800-900ave60°は3%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
【0151】
本フィルタにおいて、吸収層が色素(A)に加えて色素(D)を含有する場合、色素(D)は、色素(A)と共に用いて得られる光学フィルタが、以下の(ii-2)~(ii-6)の要件を満たす化合物が好ましい。
【0152】
(ii-2)光学フィルタは、入射角0度において435~480nmの波長領域の光の平均透過率T435-480ave0°が70%以上である。
(ii-3)光学フィルタは、入射角0度において490~580nmの波長領域の光の平均透過率T490-580ave0°が84%以上である。
(ii-4)光学フィルタは、入射角60度において800~900nmの波長領域の光の平均透過率T800-900ave60°が1%以下である。
(ii-5)光学フィルタは、入射角60度において800~900nmの波長領域の光の最大透過率T800-900max60°が10%以下である。
(ii-6)光学フィルタは、入射角0度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-0°が640~690nmの波長領域にあり、入射角30度で透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λSHT20-30°と、波長λSHT20-0°との差が10nm以下である。
【0153】
(ii-2)における平均透過率T435-480ave0°は、75%以上が好ましく、77%以上がより好ましい。(ii-3)における平均透過率T490-580ave0°は、85%以上が好ましく、87%以上がより好ましい。(ii-4)における平均透過率T800-900ave60°は、0.9%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。(ii-5)における最大透過率T800-900max60°は、8.5%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。(ii-6)において、波長λSHT20-30°と、波長λSHT20-0°との差は5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましい。
【0154】
吸収層において色素(A)の含有量は、本フィルタの設計に応じて、本フィルタが(ii-1)を満足する量である。吸収層において色素(A)の含有量は、可視光の透過率を確保しつつ、近赤外光を遮光し、高い角度で入射した光に対する反射層の入射角依存性を抑制する、特に、高入射角での800~900nmの波長域の光漏れを低減する観点から、透明樹脂100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、溶解性の観点から1~20質量部がより好ましい。
【0155】
色素(A)において、色素S、色素Mおよび色素Lから選ばれる2種以上を用いる場合、各色素の含有量は、色素(A)全体の合計含有量を上記範囲とした上で、透明樹脂100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましい。
【0156】
吸収層が色素(A)と色素(D)を含有する場合、その含有量は、それぞれ、本フィルタの設計に応じて、(ii-2)~(ii-6)の特性を満足するように適宜選択される。
【0157】
この場合、吸収層における色素(A)の含有量は上記と同様であり、色素(D)の含有量は、可視光の透過率を確保しつつ、色素(D)の特性を発揮できる観点から、透明樹脂100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましい。
さらに色素(A)と色素(D)の合計含有量は、透明樹脂100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましい。
【0158】
本フィルタにおいて、吸収層の厚さは、0.1~100μmが好ましい。吸収層が複数層からなる場合、各層の合計の厚さは、0.1~100μmが好ましい。厚さが0.1μm未満では、所望の光学特性を十分に発現できないおそれがあり、厚さが100μm超では、層の平坦性が低下し、吸収率の面内バラツキが生じるおそれがある。吸収層の厚さは、0.3~50μmがより好ましい。また、反射層や、反射防止層等の他の機能層を備えた場合、その材質によっては、吸収層が厚すぎると割れ等が生ずるおそれがある。そのため、吸収層の厚さは、0.3~10μmがより好ましい。
【0159】
吸収層は、例えば、色素(A)と、好ましくは色素(A)および色素(D)と、透明樹脂または透明樹脂の原料成分と、必要に応じて配合される各成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを基材に塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させて形成できる。上記基材は、本フィルタに含まれる透明基板でもよいし、吸収層を形成する際にのみ使用する剥離性の基材でもよい。また、溶媒は、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。
【0160】
また、塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、またはスピンコート法等を使用できる。上記塗工液を基材上に塗工後、乾燥させることにより吸収層が形成される。また、塗工液が透明樹脂の原料成分を含有する場合、さらに熱硬化、光硬化等の硬化処理を行う。
【0161】
また、吸収層は、押出成形によりフィルム状に製造可能でもあり、このフィルムを他の部材に積層し熱圧着等により一体化させてもよい。例えば、本フィルタが透明基板を含む場合、このフィルムを透明基板上に貼着してもよい。
【0162】
吸収層は、本フィルタの中に1層有してもよく、2層以上有してもよい。2層以上有する場合、各層は同じ構成であっても異なってもよい。吸収層が色素(A)、色素(D)およびUV色素を含む場合を例とすれば、一方の層を、色素(A)および色素(D)と透明樹脂を含む近赤外吸収層とし、もう一方の層を、UV色素と透明樹脂を含む近紫外吸収層としてもよい。他の例として、一方の層を色素(D)と透明樹脂を含む第1の近赤外吸収層とし、もう一方の層を、色素(A)とUV色素と透明樹脂を含む第2の近赤外吸収層としてもよい。また、吸収層は、それ自体が基板(樹脂基板)として機能するものでもよい。
【0163】
(透明基板)
本フィルタに透明基板を用いる場合、透明基板は、略400~700nmの可視光を透過すれば、構成する材料は特に制限されず、近赤外光や近紫外光を吸収する材料でもよい。例えば、ガラスや結晶等の無機材料や、透明樹脂等の有機材料が挙げられる。
【0164】
透明基板に使用できるガラスとしては、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等に銅イオンを含む吸収型のガラス(近赤外線吸収ガラス)、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。なお、「リン酸塩系ガラス」は、ガラスの骨格の一部がSiOで構成されるケイリン酸塩ガラスも含む。
【0165】
ガラスとしては、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(例えば、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換して得られる化学強化ガラスを使用してもよい。
【0166】
透明基板として使用できる透明樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、
ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0167】
また、透明基板に使用できる結晶材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイア等の複屈折性結晶が挙げられる。透明基板の光学特性は、上記吸収層、反射層等と積層して得られる光学フィルタとして、前述した光学特性を有するとよい。結晶材料としてはサファイアが好ましい。
【0168】
透明基板は、光学フィルタとしての光学特性、機械特性等の長期にわたる信頼性に係る形状安定性の観点、フィルタ製造時のハンドリング性等から、無機材料が好ましく、特にガラス、およびサファイアが好ましい。
【0169】
透明基板の形状は特に限定されず、ブロック状、板状、またはフィルム状でもよく、その厚さは、例えば、0.03~5mmが好ましく、薄型化の観点からは、0.03~0.5mmがより好ましい。加工性の観点から言えば、ガラスからなる板厚0.05~0.5mmの透明基板が好ましい。
【0170】
(反射層)
反射層は、例えば、誘電体多層膜からなり、特定の波長域の光を遮蔽する機能を有する。反射層としては、例えば、可視光を透過し、吸収層の遮光域以外の波長の光を主に反射する波長選択性を有するものが挙げられる。反射層は、近赤外光を反射する反射領域を有することが好ましい。この場合、反射層の反射領域は、吸収層の近赤外域における遮光領域を含んでもよい。反射層は、上記特性に限らず、所定の波長域の光、例えば、近紫外域をさらに遮断する仕様に適宜設計してよい。
【0171】
反射層が近赤外光を反射する反射領域を有する場合、吸収層と反射層は以下の関係を有することが好ましい。
【0172】
吸収層は、入射角0度の光に対して透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λABSHT20-0°が650~720nmの波長領域に有ることが好ましい。そして、λABSHT20-0°は、反射層を含む光学フィルタが、該反射層において入射角0度の光に対して透過率が20%を示す短波長側の波長λRESHT20-0°との関係が(iv-1)を満足することが好ましい。
(iv-1)λABSHT20-0°+30nm≦λRESHT20-0°≦790nm
【0173】
反射層は、さらに(iv-2)を満足することが好ましい。
(iv-2)反射層は、λRESHT20-0°からλRESHT20-0°+300nmまでの波長領域の光における平均透過率が10%以下である。
【0174】
本フィルタは、吸収層が、色素(A)を含有することで、反射層による高い角度で入射した光に対する反射層の入射角依存性を抑制できる、特に、高入射角での800~900nmの波長域の光漏れを低減できる。
【0175】
反射層は、低屈折率の誘電体膜(低屈折率膜)と高屈折率の誘電体膜(高屈折率膜)とを交互に積層した誘電体多層膜から構成される。高屈折率膜は、好ましくは、屈折率が1.6以上であり、より好ましくは2.2~2.5である。高屈折率膜の材料としては、例えばTa、TiO、Nbが挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、TiOが好ましい。
【0176】
一方、低屈折率膜は、好ましくは、屈折率1.6未満であり、より好ましくは1.45以上1.55未満である。低屈折率膜の材料としては、例えばSiO、SiO等が挙げられる。成膜性における再現性、安定性、経済性等の点から、SiOが好ましい。
【0177】
さらに、反射層は、透過域と遮光域の境界波長領域で透過率が急峻に変化することが好ましい。この目的のためには、反射層を構成する誘電体多層膜の合計積層数は、15層以上が好ましく、25層以上がより好ましく、30層以上がさらに好ましい。ただし、合計積層数が多くなると、反り等が発生したり、膜厚が増加したりするため、合計積層数は100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がより一層好ましい。また、誘電体多層膜の膜厚は、2~10μmが好ましい。
【0178】
誘電体多層膜の合計積層数や膜厚が上記範囲内であれば、反射層は小型化の要件を満たし、高い生産性を維持しながら入射角依存性を抑制できる。また、誘電体多層膜の形成には、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
【0179】
反射層は、1層(1群の誘電体多層膜)で所定の光学特性を与えたり、2層で所定の光学特性を与えたりしてもよい。2層以上有する場合、各反射層は同じ構成でも異なる構成でもよい。反射層を2層以上有する場合、通常、反射帯域の異なる複数の反射層で構成される。
【0180】
例として、2層の反射層を設ける場合、一方を、近赤外域のうち短波長帯の光を遮蔽する近赤外反射層とし、他方を、該近赤外域の長波長帯および近紫外域の両領域の光を遮蔽する近赤外・近紫外反射層としてもよい。また、例えば、本フィルタが透明基板を有する場合に、2層以上の反射層を設ける際には、全てを透明基板の一方の主面上に設けてもよく、各反射層を、透明基板を挟んでその両主面上に設けてもよい。
【0181】
(反射防止層)
反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造などが挙げられる。中でも光学的効率、生産性の観点から誘電体多層膜が好ましい。反射防止層は、反射層と同様に誘電体膜を交互に積層して得られる。
【0182】
本フィルタは、他の構成要素として、例えば、特定の波長域の光の透過と吸収を制御する無機微粒子等による吸収を与える構成要素(層)などを備えてもよい。無機微粒子の具体例としては、ITO(Indium TIN Oxides)、ATO(Antimony―doped TIN Oxides)、タングステン酸セシウム、ホウ化ランタン等が挙げられる。ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子は、可視光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域の広範囲に光吸収性を有するため、かかる赤外光の遮蔽性を必要とする場合に使用できる。
【0183】
本フィルタは、反射層と、色素(A)を含有する吸収層とを有することで、高い角度で入射した光に対する入射角依存性を抑制できる、特には、高入射角での800~900nmの波長域の光漏れを低減できるとともに、可視光の透過率が高い。
【0184】
本フィルタは、吸収層が色素(A)を含有したときに、上記(ii-1)を満足する。
本フィルタは、吸収層がさらに色素(D)を含有する場合、上記(ii-2)~(ii-6)の光学特性を満足する。
【0185】
本フィルタは、例えば、デジタルスチルカメラ等の撮像装置に使用した場合に、色再現性に優れる撮像装置を提供できる。本フィルタを用いた撮像装置は、固体撮像素子と、撮像レンズと、本フィルタとを備える。本フィルタは、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置されたり、撮像装置の固体撮像素子、撮像レンズ等に粘着剤層を介して直接貼着されたりして使用できる。
【実施例0186】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0187】
[試験例1~72;吸収層の作製および評価]
(色素)
実施例で使用する色素(A)として、色素(A11-1B)、色素(A12-1B)、
色素(A12-2P)、色素(A21-1B)、色素(A22-1B)、色素(A22-1P)を、Dyes and pigments 73(2007) 344-352に記載の方法で合成した。また、色素(D)として、化合物(I-12-24)を常法により合成した。
【0188】
また、比較例用の色素として、FDN003(山田化学社製、フタロシアニン系色素)、ADS1065A(American dye source社製、ジイモニウム系色素)、ADS-920MC(American dye source社製、Niジチオール錯体系色素)を準備した。また、以下の、スクアリリウム系の色素(Scf)、シアニン系の色素(Acf1)~(Acf7)を合成した。
【0189】
【化19】
【0190】
【化20】
【0191】
【化21】
【0192】
上記各色素をジクロロメタンに溶解して波長400~1100nmの光吸収スペクトルを測定して、最大吸収波長λmax(A)DCMを求めた。さらに、λmax(A)DCMの透過率を10%に濃度調整したときの、435~480nmの波長領域の光の平均透過率T435-480ave(A)DCMおよび480~590nmの波長領域の光に対する平均透過率T480-590ave(A)DCMを求めた。これらの色素の光学特性の評価には、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ社製、U-4100形)を用いた。結果を表12に示す。表中、「DCM中T435-480」は、平均透過率T435-480ave(A)DCMを示し、「DCM中T480-590」は平均透過率T480-590ave(A)DCMを示す。
【0193】
【表12】
【0194】
表12から分かるようにシアニン系色素以外の色素は、ジクロロメタン溶液における分光特性において、可視光の透過率が十分でない。
【0195】
(吸収層の作製)
上記で合成したシアニン系の色素と透明樹脂を用いて吸収層を作製し光学特性を評価した。試験例1~6、14~19、27~32、39~44、51~53が本フィルタに係る試験例であり、試験例7~13、20~26、33~38、45~50、54~72が比較試験例である。透明樹脂として、以下の市販品を用いた。
【0196】
<透明樹脂>
透明樹脂(R1);OKP-850(大阪ガスケミカル(株)製、商品名、ポリエステル樹脂)
透明樹脂(R2);SP3810(帝人(株)製、商品名、ポリカーボネート樹脂)
透明樹脂(R3);PLEXIMID8817(ダイセルエボニック社製、商品名、アクリルイミド樹脂)
透明樹脂(R4);ネオプリム(登録商標)C3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名、ポリイミド樹脂)
透明樹脂(R5);FPC-0220(三菱ガス化学(株)社製、商品名、ポリイミド樹脂)
比較例用透明樹脂(Rcf);BR96(三菱レイヨン(株)製、商品名、アクリル樹脂)
【0197】
色素と、透明樹脂(R1)、シクロヘキサノンを十分に撹拌し、均一に溶解した。得られた溶液をガラス板(D263;SCHOTT製)上に塗布し、乾燥して表13に示す膜厚の吸収層を得た。色素の添加量は最大吸収波長λmax(A)TRでの光の透過率が10%になるように調整した。波長400~1100nmの吸収層付きガラス板の分光透過率曲線とガラス板の分光透過率曲線を用いて、吸収層の分光透過率曲線を得た。
【0198】
分光透過率曲線から435~480nmの波長領域の光の平均透過率T435-480ave(A)TR(表中、「樹脂中T435-480」)および480~590nmの波長領域の光に対する平均透過率T480-590ave(A)TR(表中、「樹脂中T480-590」)を求めた。また、平均透過率T435-480ave(A)TRと平均透過率T435-480ave(A)DCMの差(表中、「T435-480の差」)、
および平均透過率T480-590ave(A)TRと平均透過率T480-590ave(A)DCMの差(表中、「T480-590の差」)を求めた。さらに、質量吸光係数/(cm・質量%)を求めた。結果を表13に示す。表中の色素濃度は、上記λmax
(A)TRでの光の透過率が10%になるように調整した際の、透明樹脂(R1)100質量部に対する質量部である。
【0199】
【表13】
【0200】
上記において透明樹脂(R1)を透明樹脂(R2)~透明樹脂(R5)、または比較例用透明樹脂(Rcf)に代えて同様の評価を行った。結果を透明樹脂(R2)については表14に、透明樹脂(R3)については表15に、透明樹脂(R4)については表16に、透明樹脂(R5)については表17に、比較例用透明樹脂(Rcf)については表18に示す。
【0201】
【表14】
【0202】
【表15】
【0203】
【表16】
【0204】
【表17】
【0205】
【表18】
【0206】
表13~18から色素(A1)または色素(A2)とこれらと組み合わせて好適な透明樹脂を用いれば、(i-1)~(i-5)の要件を満たすことが明らかである。
【0207】
[例1~6;光学フィルタの製造・評価]
(光学フィルタの製造)
厚さ0.3mmのガラス(D263;SCHOTT製)基板に蒸着法により、TiO膜とSiO膜を交互に積層して誘電体多層膜からなる反射層Xを形成した。反射層Xの入射角と各波長域における透過率の関係を表19に示す。また、ガラス基板の反射層Xが形成されたのと反対側の主面上に、表20に示す透明樹脂と色素(A)、色素(D)を組み合わせて、吸収層を形成し、例1~6の光学フィルタ(NIRフィルタ)を得た。なお、表20中の色素含有量は、透明樹脂100質量部に対する色素の質量部である。
【0208】
表19において、TRE435-480aveは、435~480nmの波長領域の光の平均透過率、TRE490-580aveは490~580nmの波長領域の光に対する平均透過率、TRE800-900aveは800~900nmの波長領域の光に対する平均透過率、TRE800-900maxは800~900nmの波長領域の光に対する最大透過率、λRESHT20は反射帯の短波長側で透過率が20%となる波長をそれぞれ示す。
【0209】
【表19】
【0210】
【表20】
【0211】
(評価)
得られた例1~例6の光学フィルタにおける入射角と各波長域における透過率の関係をそれぞれ表21~表26に示す。表中、T435-480aveは、435~480nmの波長領域の光の平均透過率、T490-580aveは490~580nmの波長領域の光に対する平均透過率、T800-900aveは800~900nmの波長領域の光に対する平均透過率、T800-900maxは800~900nmの波長領域の光に対する最大透過率、λSHT20はNIR遮蔽帯の短波長側で透過率が20%となる波長をそれぞれ示す。
【0212】
【表21】
【0213】
【表22】
【0214】
【表23】
【0215】
【表24】
【0216】
【表25】
【0217】
【表26】
【0218】
表21~26より、例1~例6において、入射角0度のλSHT20と入射角30度のλSHT20の差は、いずれも1nm以下であることがわかる。例1~例6の光学フィルタは、(ii-1)~(ii-6)のいずれも満足する光学フィルタである。
【産業上の利用可能性】
【0219】
本発明の光学フィルタは、可視光の透過性が良好であり、特に高い入射角における近赤外光の遮蔽性の低下が抑制された良好な近赤外線遮蔽特性を有するので、近年、高性能化が進むデジタルスチルカメラ等の撮像装置等の用途に有用である。
【0220】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2018年2月5日出願の日本特許出願2018-018607に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0221】
10A,10B,10C,10D,10E,10F…光学フィルタ、11,11a,11b…吸収層、12,12a,12b…反射層、13…透明基板、14…反射防止層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6